JP2004354235A - ステンレス鋼板のリジング評価方法および装置 - Google Patents
ステンレス鋼板のリジング評価方法および装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004354235A JP2004354235A JP2003152904A JP2003152904A JP2004354235A JP 2004354235 A JP2004354235 A JP 2004354235A JP 2003152904 A JP2003152904 A JP 2003152904A JP 2003152904 A JP2003152904 A JP 2003152904A JP 2004354235 A JP2004354235 A JP 2004354235A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- stainless steel
- steel plate
- ridging
- respect
- steel sheet
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Length Measuring Devices By Optical Means (AREA)
- Investigating Materials By The Use Of Optical Means Adapted For Particular Applications (AREA)
Abstract
【課題】簡単な光学系と処理ロジックにより、人間の感性に頼ることなく、定量的かつ再現性の良いリジングの程度の測定、評価を可能とする。
【解決手段】ステンレス鋼板のサンプル1に対して、サンプル表面内のある方向に対して、サンプル表面内への投影が交叉角αをもつ方向でかつ、該サンプル表面に対して仰角θをもつ方向から、サンプル表面に光を照射し、サンプル表面での反射光を、サンプル表面の法線方向に略等しい(β≒0°)方向から、2次元撮像素子8を用いて撮像し、撮像された画像の該サンプル表面内の該ある方向に対して略90°をなすX方向の輝度変動を演算処理することによって得られる値を用いて、リジングの程度を測定する。
【選択図】 図1
【解決手段】ステンレス鋼板のサンプル1に対して、サンプル表面内のある方向に対して、サンプル表面内への投影が交叉角αをもつ方向でかつ、該サンプル表面に対して仰角θをもつ方向から、サンプル表面に光を照射し、サンプル表面での反射光を、サンプル表面の法線方向に略等しい(β≒0°)方向から、2次元撮像素子8を用いて撮像し、撮像された画像の該サンプル表面内の該ある方向に対して略90°をなすX方向の輝度変動を演算処理することによって得られる値を用いて、リジングの程度を測定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼板を加工したときに生ずるリジングと呼ばれる皺状の表面凹凸の程度を測定してリジングを評価する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板は、耐候性、耐腐食性や表面の美観に優れていることなどから種々の製品に利用されているが、特に食器や厨房機器等の用途に利用される際には、表面品質、すなわち光沢や白色度に優れ、かつそれらがステンレス鋼板表面内で均一なことが要求される。
【0003】
また、先述の食器や厨房機器等はもとより、その他の用途に供されるものでも、プレス成形その他の加工が施されるものが少なくないため、それに耐え得る、すなわち、穴が空いたり割れたりしない、優れた加工性も同時に要求される。
【0004】
優れた加工性を得るには、伸びをはじめとする優れた機械的性質が付与される必要がある。そこで、ステンレス鋼板を製造する際には、所定範囲の成分に調整された鋼塊に所定圧下率の熱間圧延、冷間圧延が施されたのち、焼鈍などの熱処理が施され、あるいは更に所定伸び率の調質圧延が施される等するが、それらの条件を適正化することで加工性の向上が図られている。
【0005】
ところで、鋼塊製造時には結晶が主に、その厚さ方向に成長していくが、圧延されると、その厚さ方向に成長した結晶は、ステンレス鋼板の長さ方向に倒れ、長く伸ばされる。圧延時に長く伸ばされることにより受ける引張の力や、圧延が終わった後に、次の製造段階の熱処理に伴って生ずる熱応力の影響により、ステンレス鋼板の表面には凹凸状の皺が発生する場合がある。鋼塊製造時に結晶が厚さ方向に成長する速度には、場所により違いがあるため、引張の力や、熱応力が作用したときの単位伸び率当たりの幅方向絞り率にも違いが生じるため、その影響がステンレス鋼板表面に凹凸状の起伏、すなわち皺状となって現れるのである。
【0006】
この製造段階で発生する皺をローピングと称するが、材料特性を把握するための引張試験等の材料試験段階やプレス加工等の加工段階で発生する、より顕著な皺をリジングと称している。
【0007】
SUS430をはじめとするフェライト系ステンレスで、このリジングは顕著に発生する。SUS304をはじめとするオーステナイト系ステンレスでも、比較的軽微ではあるが発生することがある。マルテンサイト系ステンレスも同様である。
【0008】
これらローピングやリジングは製品の表面品質を著しく損なうことになるので、熱処理条件や成分の適正化により、それらの抑制が図られている。
【0009】
一方、それらの発生の程度を定量的に測定し把握することで製品の表面品質を評価することも重要である。現状のリジングの測定、評価方法としては、観察者が目視検査を行い、別途同様に目視検査により得られた評点付けされた限界サンプル見本との比較により、表面に発生している皺の明瞭さ(凹凸深さや皺の鮮明さの程度等)を、評点として表す目視評価方法、指での接触により表面の凹凸や皺の状況を感覚的に把握する触覚試験方法(これら両方の評価方法を組合わせる場合もある。また、目視評価方法の場合は複数評価者による合意により評点を決める場合や評点の平均値で判定する場合もある)、更には、より定量的な試験方法として、1次元表面粗さ測定による最大粗さや最大うねりの測定値で代替する方法などがある。これらの測定、評価は、ステンレス鋼板の生産ラインを一時停止し、サンプルを切り出して行う。サンプルは以下のようにして作成する。
【0010】
(1)JIS Z2201「引張試験」に準拠して5号試験片を作成。
(2)エメリー研磨#600(研磨せずそのままで実施の場合もあり)。
【0011】
そして、そのサンプルを以下のようにして引張試験に供することにより、研磨面を対象に測定、評価する。
【0012】
(3)25%引張(研磨した場合は研磨面の裏面に20mm間隔で3本のケガキ線を入れておき、どちらかの間隔が25mmになった段階で引張終了)。
【0013】
また、ステンレス鋼板の表面性状を定量測定、評価する指標として鏡面光沢度や白色度などが品質管理に利用されてきた。特許文献1には、白色光の正反射方向の最大光強度や、最大光強度を示す正反射方向に対して一定角度内に位置する拡散反射光強度の測定値から、光沢度や白色度を測定する方法が提案されている。また、特許文献2には、圧延方向(長さ方向)に沿って光を照射し、その反射光の強度に基づく写像性測定値を得るとともに、白色度または圧延方向(長さ方向)に対して直角な方向に沿った鏡面光沢測定値を得て、写像性測定値と白色度との組み合わせ、および写像性測定値と鏡面光沢測定値との組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに基づき、クロム系ステンレス鋼板の表面性状を判定する方法が提案されている。
【0014】
【特許文献1】
特開平4−72551号公報
【特許文献2】
特許第3239793号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法のうち目視評価方法や触覚試験方法は、定量的でない、再現性が十分でない、個人差が大きい等の問題がある。一方、1次元表面粗さ測定は、測定に時間がかかり、作業負荷が大きいこと等の問題があるため、更には、そのことに起因してサンプルの測定数を増やすことが難しいため、品質管理に向かないという問題もあった。また、特許文献1や特許文献2にて提案されている方法は、いずれも、白色光の正反射光強度や、拡散反射光強度の測定により、ステンレス鋼板全面的に見て光沢が良い、悪いとか、ステンレス鋼板全面的に見て白っぽい、黒っぽいということの判定は可能であっても、リジングのような凹凸状の皺の程度の大小を測定、評価できるものではない、という問題があった。
【0016】
本発明は、上記の問題点を解決するべくなされたもので、簡単な光学系と処理ロジックにより、人間の感性に頼ることなく、定量的かつ再現性の良いリジングの程度の測定が可能となる方法および装置を提供するもので、クロム系(フェライト系)をはじめとするステンレス鋼板のリジングの程度の測定、評価を行えるようにすることを課題としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための請求項1に係る本発明は、ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角をもつ方向でかつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角をもつ方向から、該ステンレス鋼板表面に光を照射し、該ステンレス鋼板表面での反射光を、該ステンレス鋼板表面の法線方向に略等しい方向から、2次元撮像素子を用いて撮像し、撮像された画像の該ステンレス鋼板表面内の該ある方向に対して略90°をなす方向の輝度変動を演算処理することによって得られる値を用いて、リジングの程度を表すことを特徴とするステンレス鋼板のリジング評価方法である。
【0018】
そして、請求項2に係る本発明は、撮像した画像の、前記ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内にあって略90°をなす方向の輝度変動をシェーディング補正した後に、同方向に所定距離離れた画素における輝度どうしで差をとる演算を施し、その標準偏差を前記の撮像した画像中の、該ステンレス鋼板表面内のある方向に対して該ステンレス鋼板表面内にあって略90°をなす方向に伸びる走査線ごとに算出し、しかる後に平均値を求め、その値によりリジングの程度を表すことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼板のリジング評価方法である。
【0019】
また、請求項3に係る本発明は、ステンレス鋼板を引張試験片の形状のものとし、前記2次元撮像素子の走査線の伸びる方向を、引張試験片の引張方向と略垂直にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンレス鋼板のリジング評価方法である。
【0020】
最後に、請求項4に係る本発明は、ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角をもつ方向でかつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角をもつ方向から、該ステンレス鋼板表面に光を照射する光源と、該ステンレス鋼板表面での反射光を、該ステンレス鋼板表面の法線方向に略等しい方向から撮像する2次元撮像素子と、撮像された画像の該ステンレス鋼板表面内の該ある方向に対して略90°をなす方向の輝度変動を演算処理する演算手段と、を備えたことを特徴とするステンレス鋼板のリジング評価装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、測定対象となっているステンレス鋼板1の表面内のある方向に対して、ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角αをもつ方向で、かつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角θを持つ方向から、ステンレス鋼板に対して光源2により光を照射し、その拡散反射光をステンレス鋼板1の表面の法線方向に略等しい(β≒略0°)方向から2次元撮像素子8を用いて撮像する。拡大して撮像してもよい。
【0023】
光は、ステンレス鋼板1の表面内のある方向に対して、ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角αをもつ方向から照射する。このαは厳密な意味で90°から外れたとしても、45°から135°の範囲であれば適用できる。70°から110°の範囲が好ましく、80°から100°の範囲が更に好ましい。90°が最も望ましい。
【0024】
また、仰角をもつとは、図中のθが0°を超えるという意味であるが、あまり大きな角度にはしない。0°を超え5°以下の範囲であれば適用できるが、可及的に0°に近い程好ましい。
【0025】
光源2としては、図1に示した第1実施形態のように、棒状白色光源3から発せられる光をシリンドリカルレンズ4を通して平行光としたものを用いるなどしてもよいし、図2に示す第2実施形態のように、白色電球5から発せられる光をスリット6を通した光を用いるなど、広がりをもつ光を発する光源も適用することができる。とはいえ、平行光を発するものが測定には最も望ましく、この意味からすると、矩形断面のレーザ光を発するものが最も望ましいが、費用やメンテナンス負荷の面から、適宜選択してよい。あるいは、ここに紹介しない、その他の物も適用することができる。
【0026】
前記棒状白色光源3としてはメタルハライドファイバ照明が、2次元撮像素子8としては、標準レンズを装着したCCDカメラなどが好適である。
【0027】
2次元撮像素子8は、サンプルの表面を、その法線方向に略等しい方向から撮像するように配置する。略とは、厳密な意味で法線方向から外れたとしても、適用することができるという意味である。外れる範囲βは0°から45°の範囲に収めるのが好ましい。0°から30°の範囲に収めるのが更に好ましく、法線方向が最も好ましい。
【0028】
以下、2次元撮像素子8で撮像した画像の縦方向が、リジングが伸びている方向と一致するように、ステンレス鋼板1と撮像装置8とを配置した場合を例に説明する。ステンレス鋼板のサンプルとして引張試験片を用いる場合は、リジングが伸びている方向は引張方向であるから、2次元撮像素子で撮像した画像の縦方向と一致するようにサンプルと撮像装置とを配置するのがよい。
【0029】
撮像装置で撮影された2次元画像は、画像ボード10を介して演算処理装置12に取込まれ、必要な演算処理が行われた後、出力装置14に出力される。
【0030】
前記2次元画像の一例を図3(a)に示す。図中縦方向に伸びているのがリジングである。リジングが伸びている方向すなわち図中縦方向をY方向とし、図中のそれと直角な方向をX方向とする。この例では、2次元撮像素子の画素数は512(X方向)×482(Y方向)である。一部を拡大したようすを図3(b)に模式的に示すが、一つの画素のX方向の長さが0.05mmとなるように拡大率が調整されている。
【0031】
今、Y方向のある座標に位置するX方向に伸びる走査ラインを、Yj番目のライン(1≦Yj≦482、Yj:整数)と呼ぶことにする。Yj番目のラインでの輝度をZとすると、ZはXのI番目の画素:XiとYjの関数:Z(Xi,Yj)と表すことができ、サンプルに対して小さな仰角θをなす方向から入射する光がサンプル表面でその法線(β=0)方向に拡散反射する強さの2次元的な分布をとらえることができる。ここで、1≦Xi≦512,Xi:整数 である。
【0032】
ここで今、あるYj番目のラインでのZの分布を図4(a)に示す。光源から発せられる光が厳密な意味で平行であれば、ステンレス鋼板の表面がリジングの全くない平坦な状態のもとでは、Z(Xi,Yj)は一様になるが、実際には、光の広がりや、あるいは光の強さのむら等に起因して、図4(a)にて左肩が下がって見えるように、Z(Xi,Yj)は、X方向のリジングによる変動よりも巨視的な範囲でX方向に増減することがある。
【0033】
このような場合、その巨視的な範囲でのZの増減は、除去した方が、Zのより妥当な値が得られる。そのためには、図5に示す第3実施形態のように、フィルタ11を画像ボード10と演算処理装置12の間に間挿し、特定のカットオフ周波数を規定してフィルタリング処理(ローパスフィルタ処理)を行うことで増減を補正できる。この処理をシェーディング補正と呼ぶ。シェーディング補正後の各画素ごとのZ(Xi,Yj)をZ1(Xi,Yj)とする。
【0034】
上述のようにして測定したX方向の輝度の変動のデータを用いて、リジングの程度を表すための、本発明における好ましい演算処理の方法について、以下に説明する。
【0035】
異なるXについてのZ(Xi,Yj)またはZ1(Xi,Yj)どうしで、例えば差をとる演算処理を施す。この場合、実際にはXiとXi+pでのZの値の差を計算することになる。pの値としては例えば2又は4あるいはその他の値にすることができる。差をとった後の値をZ2とすると、
Z2(Xi,Yj)=Z(Xi+p,Yj)−Z(Xi,Yj)
あるいは、
Z2(Xi,Yj)=Z1(Xi+p,Yj)−Z1(Xi,Yj)
と表せる。以上のZ1,Z2を元のデータZと対応させて図4(b)、図4(c)に示す。
【0036】
ここで例えば、Z2の値の標準偏差を算出することができ、この値σjを以ってYjラインでの輝度の変動の大きさの指標として表すことができる。
【0037】
同様に全てのjについてσj値を算出することができ、それらの平均値をσとする。すなわち、σ=Σσj ÷482(1≦j≦482) である。
【0038】
以上の一連の処理を行うことで、サンプル表面を2次元的に撮像した画像内における、リジング起因の明暗の変動の大小程度に応じた指標σが算出されることになる。
【0039】
ここで、上記の説明では、Z(Xi,Yj)またはZ1(Xi,Yj)どうしで、差をとる演算を行う、本発明における好ましい演算処理の方法について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば微分値をとる、あるいはその他の方法による等、要は輝度ZのX方向の変動を表せる方法であればいかなる方法をとってもよい。更に、σそのものを指標とするのではなく、σの2倍、σの3倍を指標とする等しても勿論良い。又、標準偏差σは分散の平方根をとったものであるが、標準偏差σのかわりに分散そのものを用いても良いし、とにかく分布の大きさを表す指標でさえあれば、その他のものを指標としても良い。
【0040】
なお、i,jの範囲であるが、全画素を対象とするのではなく、例えば、20≦Xi≦480,100≦Yj≦400 などのように、撮像した画像内の一部、例えば、撮像した画像の中心付近のみを演算処理の対象にすることもできる。そのようにすれば、例えば、引張試験で生じるリジングが最も強調されて発生する部分のみを演算処理の対象とすることができるので、算出される指標σが、リジングの程度をより実態的に表すようにできる。
【0041】
又、引張試験片が図6に示すように、引張の力により湾曲する場合もあるので、面の中心付近のみでの処理を行うことで端部に生じる影の部分を除くことも可能となる。
【0042】
ここでは、上述の本発明における好ましい演算処理の方法を適用した場合について、上記の演算処理により得られたσをリジングの程度の異なる引張試験片について、グラフに表したものを図7に示す。この結果より、σがリジングの程度と良い相関を示すことが分かり、σにてリジングの程度を評価可能であることが確認された。ここで、図7に示したグラフ中の横軸は、予め複数の人が目視判定した結果を持ち寄って協議した結果、得られたリジングの程度の目視評価値である。
【0043】
また、サンプルの表裏を反転させて測定したσを平均した値や、あるいは更にαまたはθを変え、光の照射方向を反対側に変えて180°+αとして測定した値等、計4つのσを平均した値で1つのサンプルのリジングの程度の測定値として代表させることも可能である。
【0044】
光の照射方向を反対側に変えて測定すると、ただ一つの方向から光を照射して測定した場合と比較して評点とσの値との相関関係がより良く相関するようになり、より正確にリジングの程度を測定できるようになる。これはサンプルが引張試験後の引張試験片であったような場合、引張試験後にエッジ部が多少湾曲していて、照射された光の影になることがあり、輝度の変動を実際よりも大きく測定してしまう場合があるところ、光の照射方向を反対側に変えて再度測定し、それにより得られるσとの平均をとると、その影響を低減できるからである。
【0045】
図7に示した相関関係から近似直線を算出し、その直線を検量線として測定したσの値を検量線に代入することで得られた、リジングの程度の評価値と目視評価値との関係を図8に示した。これより、本発明による方法を用いることにより目視評価値の最小分解レベルである0.25の差以内で推定できることが確認された。
【0046】
いくつかの同じサンプルのセットを複数の観察者が別々に評価した結果では、最大で0.75も目視評価値がばらつくことがあったが、本発明による評価方法は高い分解能で再現性良くリジングの程度を測定できるので、定量的な測定に利用できる。
【0047】
なお、生産ラインに本発明の装置を設置し、搬送されるステンレス鋼板のローピングの程度を測定したり、ベルトコンベアにて搬送されるプレス加工後のステンレス製品のリジングの程度を評価する場合等の、より実際的な面を考慮して、本発明による方法の信頼性を向上するには、光源から発せられる光の強さが変化したような場合でも、演算結果が一定している必要がある。そのためには、例えば、標準板として表面に人工的に皺を付与した疑似サンプルを作成し、それを使って予め作成しておいた、光の強さの変化とσの値の変化の関係を用いることとし、実際に測定する際は、光の強さを測定の都度計測し、演算により得たσの値を補正する等すれば良い。
【0048】
リジングの程度を測定するためのσの値を算出する処理フローをまとめて図9に示す。
【0049】
【実施例】
図10に具体的な実施例を示す。本実施例では、ステンレス鋼板の引張試験片21(以下サンプル)の表面に、サンプル表面内にあってα=90°でかつ仰角θ=0°の方向からサンプルに対してメタルハライドファイバ光源22の光をシリンドリカルレンズ24を通して照射し、その拡散反射光をサンプル表面の法線(β=0°)方向からレンズを装着したCCDカメラ28を用いて拡大撮像する配置としている。また、CCDカメラ28の走査方向(図中にX方向軸として表示)がサンプルの引張方向(図中にY方向軸として表示)と垂直に交叉するようなサンプルとCCDカメラとの配置としている。
【0050】
撮像された拡散反射光の強さは、画像ボード30に記憶され、図9に示した処理フローに従って、演算装置32によって前述したσ値が算出され、リジングの程度の測定、評価がなされ、出力装置34から出力される。
【0051】
なお、本発明は、これに限定されず、光源としては、先述のメタルハライドファイバ光源のほかに、ハロゲン棒状光源等も用いることができる。更に、本発明の装置は引張試験装置と一体に組み込むことで、ステンレス鋼板の引張試験片を引っ張りながら測定して、皺の発生状況の時間的な変化を捉えることができ、測定を迅速に行うこともできる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な光学系と処理ロジックにより、人間の感性に頼ることなく、定量的かつ再現性の良いステンレス鋼板のリジングの程度の測定、評価ができるようになる。それにより、製品に発生するリジングの程度の品質管理ができるようになり、製品品質安定化、製造条件の最適化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す斜視図
【図2】本発明の第2実施形態を示す斜視図
【図3】本発明により撮像されたステンレス鋼板表面の画像の例を示す図
【図4】本発明の原理を説明するための、
(a)ある走査線の各画素ごとの拡散反射光強度の測定データの例を示す図
(b)(a)をシェーディング補正したデータの例を示す図
(c)(b)をもとに、X方向にある程度離れた画素どうしで輝度の差をとったデータの例を示す図
【図5】本発明の第3実施形態を示す斜視図
【図6】引張試験片の湾曲の様子を示す図
【図7】本発明の方法により算出されたリジングの程度の評価値σと目視評価値との相関を示す図
【図8】図5に示した相関関係から近似直線を算出し、その直線を検量線として直線上の値から外れる分について標準偏差を求め、それをσの値として置き換えて得られる、リジングの程度の評価値と目視評価値との相関を示す図
【図9】本発明の実施形態における処理フローの例を示す図
【図10】本発明の装置の実施例を示す、一部ブロック図を含む斜視図
【符号の説明】
1…ステンレス鋼板
2…光源
3…棒状白色光源
4、24…シリンドリカルレンズ
5…白色電球
6…スリット
8…2次元撮像素子
10、30…画像ボード
12、32…演算装置
14、34…出力装置
11…フィルタ
21…ステンレス鋼板の引張試験片
22…メタルハライドファイバ光源
28…CCDカメラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼板を加工したときに生ずるリジングと呼ばれる皺状の表面凹凸の程度を測定してリジングを評価する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板は、耐候性、耐腐食性や表面の美観に優れていることなどから種々の製品に利用されているが、特に食器や厨房機器等の用途に利用される際には、表面品質、すなわち光沢や白色度に優れ、かつそれらがステンレス鋼板表面内で均一なことが要求される。
【0003】
また、先述の食器や厨房機器等はもとより、その他の用途に供されるものでも、プレス成形その他の加工が施されるものが少なくないため、それに耐え得る、すなわち、穴が空いたり割れたりしない、優れた加工性も同時に要求される。
【0004】
優れた加工性を得るには、伸びをはじめとする優れた機械的性質が付与される必要がある。そこで、ステンレス鋼板を製造する際には、所定範囲の成分に調整された鋼塊に所定圧下率の熱間圧延、冷間圧延が施されたのち、焼鈍などの熱処理が施され、あるいは更に所定伸び率の調質圧延が施される等するが、それらの条件を適正化することで加工性の向上が図られている。
【0005】
ところで、鋼塊製造時には結晶が主に、その厚さ方向に成長していくが、圧延されると、その厚さ方向に成長した結晶は、ステンレス鋼板の長さ方向に倒れ、長く伸ばされる。圧延時に長く伸ばされることにより受ける引張の力や、圧延が終わった後に、次の製造段階の熱処理に伴って生ずる熱応力の影響により、ステンレス鋼板の表面には凹凸状の皺が発生する場合がある。鋼塊製造時に結晶が厚さ方向に成長する速度には、場所により違いがあるため、引張の力や、熱応力が作用したときの単位伸び率当たりの幅方向絞り率にも違いが生じるため、その影響がステンレス鋼板表面に凹凸状の起伏、すなわち皺状となって現れるのである。
【0006】
この製造段階で発生する皺をローピングと称するが、材料特性を把握するための引張試験等の材料試験段階やプレス加工等の加工段階で発生する、より顕著な皺をリジングと称している。
【0007】
SUS430をはじめとするフェライト系ステンレスで、このリジングは顕著に発生する。SUS304をはじめとするオーステナイト系ステンレスでも、比較的軽微ではあるが発生することがある。マルテンサイト系ステンレスも同様である。
【0008】
これらローピングやリジングは製品の表面品質を著しく損なうことになるので、熱処理条件や成分の適正化により、それらの抑制が図られている。
【0009】
一方、それらの発生の程度を定量的に測定し把握することで製品の表面品質を評価することも重要である。現状のリジングの測定、評価方法としては、観察者が目視検査を行い、別途同様に目視検査により得られた評点付けされた限界サンプル見本との比較により、表面に発生している皺の明瞭さ(凹凸深さや皺の鮮明さの程度等)を、評点として表す目視評価方法、指での接触により表面の凹凸や皺の状況を感覚的に把握する触覚試験方法(これら両方の評価方法を組合わせる場合もある。また、目視評価方法の場合は複数評価者による合意により評点を決める場合や評点の平均値で判定する場合もある)、更には、より定量的な試験方法として、1次元表面粗さ測定による最大粗さや最大うねりの測定値で代替する方法などがある。これらの測定、評価は、ステンレス鋼板の生産ラインを一時停止し、サンプルを切り出して行う。サンプルは以下のようにして作成する。
【0010】
(1)JIS Z2201「引張試験」に準拠して5号試験片を作成。
(2)エメリー研磨#600(研磨せずそのままで実施の場合もあり)。
【0011】
そして、そのサンプルを以下のようにして引張試験に供することにより、研磨面を対象に測定、評価する。
【0012】
(3)25%引張(研磨した場合は研磨面の裏面に20mm間隔で3本のケガキ線を入れておき、どちらかの間隔が25mmになった段階で引張終了)。
【0013】
また、ステンレス鋼板の表面性状を定量測定、評価する指標として鏡面光沢度や白色度などが品質管理に利用されてきた。特許文献1には、白色光の正反射方向の最大光強度や、最大光強度を示す正反射方向に対して一定角度内に位置する拡散反射光強度の測定値から、光沢度や白色度を測定する方法が提案されている。また、特許文献2には、圧延方向(長さ方向)に沿って光を照射し、その反射光の強度に基づく写像性測定値を得るとともに、白色度または圧延方向(長さ方向)に対して直角な方向に沿った鏡面光沢測定値を得て、写像性測定値と白色度との組み合わせ、および写像性測定値と鏡面光沢測定値との組み合わせのうち、少なくとも一方の組み合わせに基づき、クロム系ステンレス鋼板の表面性状を判定する方法が提案されている。
【0014】
【特許文献1】
特開平4−72551号公報
【特許文献2】
特許第3239793号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法のうち目視評価方法や触覚試験方法は、定量的でない、再現性が十分でない、個人差が大きい等の問題がある。一方、1次元表面粗さ測定は、測定に時間がかかり、作業負荷が大きいこと等の問題があるため、更には、そのことに起因してサンプルの測定数を増やすことが難しいため、品質管理に向かないという問題もあった。また、特許文献1や特許文献2にて提案されている方法は、いずれも、白色光の正反射光強度や、拡散反射光強度の測定により、ステンレス鋼板全面的に見て光沢が良い、悪いとか、ステンレス鋼板全面的に見て白っぽい、黒っぽいということの判定は可能であっても、リジングのような凹凸状の皺の程度の大小を測定、評価できるものではない、という問題があった。
【0016】
本発明は、上記の問題点を解決するべくなされたもので、簡単な光学系と処理ロジックにより、人間の感性に頼ることなく、定量的かつ再現性の良いリジングの程度の測定が可能となる方法および装置を提供するもので、クロム系(フェライト系)をはじめとするステンレス鋼板のリジングの程度の測定、評価を行えるようにすることを課題としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための請求項1に係る本発明は、ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角をもつ方向でかつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角をもつ方向から、該ステンレス鋼板表面に光を照射し、該ステンレス鋼板表面での反射光を、該ステンレス鋼板表面の法線方向に略等しい方向から、2次元撮像素子を用いて撮像し、撮像された画像の該ステンレス鋼板表面内の該ある方向に対して略90°をなす方向の輝度変動を演算処理することによって得られる値を用いて、リジングの程度を表すことを特徴とするステンレス鋼板のリジング評価方法である。
【0018】
そして、請求項2に係る本発明は、撮像した画像の、前記ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内にあって略90°をなす方向の輝度変動をシェーディング補正した後に、同方向に所定距離離れた画素における輝度どうしで差をとる演算を施し、その標準偏差を前記の撮像した画像中の、該ステンレス鋼板表面内のある方向に対して該ステンレス鋼板表面内にあって略90°をなす方向に伸びる走査線ごとに算出し、しかる後に平均値を求め、その値によりリジングの程度を表すことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼板のリジング評価方法である。
【0019】
また、請求項3に係る本発明は、ステンレス鋼板を引張試験片の形状のものとし、前記2次元撮像素子の走査線の伸びる方向を、引張試験片の引張方向と略垂直にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンレス鋼板のリジング評価方法である。
【0020】
最後に、請求項4に係る本発明は、ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角をもつ方向でかつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角をもつ方向から、該ステンレス鋼板表面に光を照射する光源と、該ステンレス鋼板表面での反射光を、該ステンレス鋼板表面の法線方向に略等しい方向から撮像する2次元撮像素子と、撮像された画像の該ステンレス鋼板表面内の該ある方向に対して略90°をなす方向の輝度変動を演算処理する演算手段と、を備えたことを特徴とするステンレス鋼板のリジング評価装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、測定対象となっているステンレス鋼板1の表面内のある方向に対して、ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角αをもつ方向で、かつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角θを持つ方向から、ステンレス鋼板に対して光源2により光を照射し、その拡散反射光をステンレス鋼板1の表面の法線方向に略等しい(β≒略0°)方向から2次元撮像素子8を用いて撮像する。拡大して撮像してもよい。
【0023】
光は、ステンレス鋼板1の表面内のある方向に対して、ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角αをもつ方向から照射する。このαは厳密な意味で90°から外れたとしても、45°から135°の範囲であれば適用できる。70°から110°の範囲が好ましく、80°から100°の範囲が更に好ましい。90°が最も望ましい。
【0024】
また、仰角をもつとは、図中のθが0°を超えるという意味であるが、あまり大きな角度にはしない。0°を超え5°以下の範囲であれば適用できるが、可及的に0°に近い程好ましい。
【0025】
光源2としては、図1に示した第1実施形態のように、棒状白色光源3から発せられる光をシリンドリカルレンズ4を通して平行光としたものを用いるなどしてもよいし、図2に示す第2実施形態のように、白色電球5から発せられる光をスリット6を通した光を用いるなど、広がりをもつ光を発する光源も適用することができる。とはいえ、平行光を発するものが測定には最も望ましく、この意味からすると、矩形断面のレーザ光を発するものが最も望ましいが、費用やメンテナンス負荷の面から、適宜選択してよい。あるいは、ここに紹介しない、その他の物も適用することができる。
【0026】
前記棒状白色光源3としてはメタルハライドファイバ照明が、2次元撮像素子8としては、標準レンズを装着したCCDカメラなどが好適である。
【0027】
2次元撮像素子8は、サンプルの表面を、その法線方向に略等しい方向から撮像するように配置する。略とは、厳密な意味で法線方向から外れたとしても、適用することができるという意味である。外れる範囲βは0°から45°の範囲に収めるのが好ましい。0°から30°の範囲に収めるのが更に好ましく、法線方向が最も好ましい。
【0028】
以下、2次元撮像素子8で撮像した画像の縦方向が、リジングが伸びている方向と一致するように、ステンレス鋼板1と撮像装置8とを配置した場合を例に説明する。ステンレス鋼板のサンプルとして引張試験片を用いる場合は、リジングが伸びている方向は引張方向であるから、2次元撮像素子で撮像した画像の縦方向と一致するようにサンプルと撮像装置とを配置するのがよい。
【0029】
撮像装置で撮影された2次元画像は、画像ボード10を介して演算処理装置12に取込まれ、必要な演算処理が行われた後、出力装置14に出力される。
【0030】
前記2次元画像の一例を図3(a)に示す。図中縦方向に伸びているのがリジングである。リジングが伸びている方向すなわち図中縦方向をY方向とし、図中のそれと直角な方向をX方向とする。この例では、2次元撮像素子の画素数は512(X方向)×482(Y方向)である。一部を拡大したようすを図3(b)に模式的に示すが、一つの画素のX方向の長さが0.05mmとなるように拡大率が調整されている。
【0031】
今、Y方向のある座標に位置するX方向に伸びる走査ラインを、Yj番目のライン(1≦Yj≦482、Yj:整数)と呼ぶことにする。Yj番目のラインでの輝度をZとすると、ZはXのI番目の画素:XiとYjの関数:Z(Xi,Yj)と表すことができ、サンプルに対して小さな仰角θをなす方向から入射する光がサンプル表面でその法線(β=0)方向に拡散反射する強さの2次元的な分布をとらえることができる。ここで、1≦Xi≦512,Xi:整数 である。
【0032】
ここで今、あるYj番目のラインでのZの分布を図4(a)に示す。光源から発せられる光が厳密な意味で平行であれば、ステンレス鋼板の表面がリジングの全くない平坦な状態のもとでは、Z(Xi,Yj)は一様になるが、実際には、光の広がりや、あるいは光の強さのむら等に起因して、図4(a)にて左肩が下がって見えるように、Z(Xi,Yj)は、X方向のリジングによる変動よりも巨視的な範囲でX方向に増減することがある。
【0033】
このような場合、その巨視的な範囲でのZの増減は、除去した方が、Zのより妥当な値が得られる。そのためには、図5に示す第3実施形態のように、フィルタ11を画像ボード10と演算処理装置12の間に間挿し、特定のカットオフ周波数を規定してフィルタリング処理(ローパスフィルタ処理)を行うことで増減を補正できる。この処理をシェーディング補正と呼ぶ。シェーディング補正後の各画素ごとのZ(Xi,Yj)をZ1(Xi,Yj)とする。
【0034】
上述のようにして測定したX方向の輝度の変動のデータを用いて、リジングの程度を表すための、本発明における好ましい演算処理の方法について、以下に説明する。
【0035】
異なるXについてのZ(Xi,Yj)またはZ1(Xi,Yj)どうしで、例えば差をとる演算処理を施す。この場合、実際にはXiとXi+pでのZの値の差を計算することになる。pの値としては例えば2又は4あるいはその他の値にすることができる。差をとった後の値をZ2とすると、
Z2(Xi,Yj)=Z(Xi+p,Yj)−Z(Xi,Yj)
あるいは、
Z2(Xi,Yj)=Z1(Xi+p,Yj)−Z1(Xi,Yj)
と表せる。以上のZ1,Z2を元のデータZと対応させて図4(b)、図4(c)に示す。
【0036】
ここで例えば、Z2の値の標準偏差を算出することができ、この値σjを以ってYjラインでの輝度の変動の大きさの指標として表すことができる。
【0037】
同様に全てのjについてσj値を算出することができ、それらの平均値をσとする。すなわち、σ=Σσj ÷482(1≦j≦482) である。
【0038】
以上の一連の処理を行うことで、サンプル表面を2次元的に撮像した画像内における、リジング起因の明暗の変動の大小程度に応じた指標σが算出されることになる。
【0039】
ここで、上記の説明では、Z(Xi,Yj)またはZ1(Xi,Yj)どうしで、差をとる演算を行う、本発明における好ましい演算処理の方法について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば微分値をとる、あるいはその他の方法による等、要は輝度ZのX方向の変動を表せる方法であればいかなる方法をとってもよい。更に、σそのものを指標とするのではなく、σの2倍、σの3倍を指標とする等しても勿論良い。又、標準偏差σは分散の平方根をとったものであるが、標準偏差σのかわりに分散そのものを用いても良いし、とにかく分布の大きさを表す指標でさえあれば、その他のものを指標としても良い。
【0040】
なお、i,jの範囲であるが、全画素を対象とするのではなく、例えば、20≦Xi≦480,100≦Yj≦400 などのように、撮像した画像内の一部、例えば、撮像した画像の中心付近のみを演算処理の対象にすることもできる。そのようにすれば、例えば、引張試験で生じるリジングが最も強調されて発生する部分のみを演算処理の対象とすることができるので、算出される指標σが、リジングの程度をより実態的に表すようにできる。
【0041】
又、引張試験片が図6に示すように、引張の力により湾曲する場合もあるので、面の中心付近のみでの処理を行うことで端部に生じる影の部分を除くことも可能となる。
【0042】
ここでは、上述の本発明における好ましい演算処理の方法を適用した場合について、上記の演算処理により得られたσをリジングの程度の異なる引張試験片について、グラフに表したものを図7に示す。この結果より、σがリジングの程度と良い相関を示すことが分かり、σにてリジングの程度を評価可能であることが確認された。ここで、図7に示したグラフ中の横軸は、予め複数の人が目視判定した結果を持ち寄って協議した結果、得られたリジングの程度の目視評価値である。
【0043】
また、サンプルの表裏を反転させて測定したσを平均した値や、あるいは更にαまたはθを変え、光の照射方向を反対側に変えて180°+αとして測定した値等、計4つのσを平均した値で1つのサンプルのリジングの程度の測定値として代表させることも可能である。
【0044】
光の照射方向を反対側に変えて測定すると、ただ一つの方向から光を照射して測定した場合と比較して評点とσの値との相関関係がより良く相関するようになり、より正確にリジングの程度を測定できるようになる。これはサンプルが引張試験後の引張試験片であったような場合、引張試験後にエッジ部が多少湾曲していて、照射された光の影になることがあり、輝度の変動を実際よりも大きく測定してしまう場合があるところ、光の照射方向を反対側に変えて再度測定し、それにより得られるσとの平均をとると、その影響を低減できるからである。
【0045】
図7に示した相関関係から近似直線を算出し、その直線を検量線として測定したσの値を検量線に代入することで得られた、リジングの程度の評価値と目視評価値との関係を図8に示した。これより、本発明による方法を用いることにより目視評価値の最小分解レベルである0.25の差以内で推定できることが確認された。
【0046】
いくつかの同じサンプルのセットを複数の観察者が別々に評価した結果では、最大で0.75も目視評価値がばらつくことがあったが、本発明による評価方法は高い分解能で再現性良くリジングの程度を測定できるので、定量的な測定に利用できる。
【0047】
なお、生産ラインに本発明の装置を設置し、搬送されるステンレス鋼板のローピングの程度を測定したり、ベルトコンベアにて搬送されるプレス加工後のステンレス製品のリジングの程度を評価する場合等の、より実際的な面を考慮して、本発明による方法の信頼性を向上するには、光源から発せられる光の強さが変化したような場合でも、演算結果が一定している必要がある。そのためには、例えば、標準板として表面に人工的に皺を付与した疑似サンプルを作成し、それを使って予め作成しておいた、光の強さの変化とσの値の変化の関係を用いることとし、実際に測定する際は、光の強さを測定の都度計測し、演算により得たσの値を補正する等すれば良い。
【0048】
リジングの程度を測定するためのσの値を算出する処理フローをまとめて図9に示す。
【0049】
【実施例】
図10に具体的な実施例を示す。本実施例では、ステンレス鋼板の引張試験片21(以下サンプル)の表面に、サンプル表面内にあってα=90°でかつ仰角θ=0°の方向からサンプルに対してメタルハライドファイバ光源22の光をシリンドリカルレンズ24を通して照射し、その拡散反射光をサンプル表面の法線(β=0°)方向からレンズを装着したCCDカメラ28を用いて拡大撮像する配置としている。また、CCDカメラ28の走査方向(図中にX方向軸として表示)がサンプルの引張方向(図中にY方向軸として表示)と垂直に交叉するようなサンプルとCCDカメラとの配置としている。
【0050】
撮像された拡散反射光の強さは、画像ボード30に記憶され、図9に示した処理フローに従って、演算装置32によって前述したσ値が算出され、リジングの程度の測定、評価がなされ、出力装置34から出力される。
【0051】
なお、本発明は、これに限定されず、光源としては、先述のメタルハライドファイバ光源のほかに、ハロゲン棒状光源等も用いることができる。更に、本発明の装置は引張試験装置と一体に組み込むことで、ステンレス鋼板の引張試験片を引っ張りながら測定して、皺の発生状況の時間的な変化を捉えることができ、測定を迅速に行うこともできる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な光学系と処理ロジックにより、人間の感性に頼ることなく、定量的かつ再現性の良いステンレス鋼板のリジングの程度の測定、評価ができるようになる。それにより、製品に発生するリジングの程度の品質管理ができるようになり、製品品質安定化、製造条件の最適化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す斜視図
【図2】本発明の第2実施形態を示す斜視図
【図3】本発明により撮像されたステンレス鋼板表面の画像の例を示す図
【図4】本発明の原理を説明するための、
(a)ある走査線の各画素ごとの拡散反射光強度の測定データの例を示す図
(b)(a)をシェーディング補正したデータの例を示す図
(c)(b)をもとに、X方向にある程度離れた画素どうしで輝度の差をとったデータの例を示す図
【図5】本発明の第3実施形態を示す斜視図
【図6】引張試験片の湾曲の様子を示す図
【図7】本発明の方法により算出されたリジングの程度の評価値σと目視評価値との相関を示す図
【図8】図5に示した相関関係から近似直線を算出し、その直線を検量線として直線上の値から外れる分について標準偏差を求め、それをσの値として置き換えて得られる、リジングの程度の評価値と目視評価値との相関を示す図
【図9】本発明の実施形態における処理フローの例を示す図
【図10】本発明の装置の実施例を示す、一部ブロック図を含む斜視図
【符号の説明】
1…ステンレス鋼板
2…光源
3…棒状白色光源
4、24…シリンドリカルレンズ
5…白色電球
6…スリット
8…2次元撮像素子
10、30…画像ボード
12、32…演算装置
14、34…出力装置
11…フィルタ
21…ステンレス鋼板の引張試験片
22…メタルハライドファイバ光源
28…CCDカメラ
Claims (4)
- ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角をもつ方向でかつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角をもつ方向から、該ステンレス鋼板表面に光を照射し、
該ステンレス鋼板表面での反射光を、該ステンレス鋼板表面の法線方向に略等しい方向から、2次元撮像素子を用いて撮像し、
撮像された画像の該ステンレス鋼板表面内の該ある方向に対して略90°をなす方向の輝度変動を演算処理することによって得られる値を用いて、リジングの程度を表すことを特徴とするステンレス鋼板のリジング評価方法。 - 撮像した画像の、前記ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内にあって略90°をなす方向の輝度変動をシェーディング補正した後に、
同方向に所定距離離れた画素における輝度どうしで差をとる演算を施し、
その標準偏差を前記の撮像した画像中の、該ステンレス鋼板表面内のある方向に対して該ステンレス鋼板表面内にあって略90°をなす方向に伸びる走査線ごとに算出し、
しかる後に平均値を求め、
その値によりリジングの程度を表すことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼板のリジング評価方法。 - ステンレス鋼板を引張試験片の形状のものとし、
前記2次元撮像素子の走査線の伸びる方向を、引張試験片の引張方向と略垂直にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のステンレス鋼板のリジング評価方法。 - ステンレス鋼板表面内のある方向に対して、該ステンレス鋼板表面内への投影が交叉角をもつ方向でかつ、該ステンレス鋼板表面に対して仰角をもつ方向から、該ステンレス鋼板表面に光を照射する光源と、
該ステンレス鋼板表面での反射光を、該ステンレス鋼板表面の法線方向に略等しい方向から撮像する2次元撮像素子と、
撮像された画像の該ステンレス鋼板表面内の該ある方向に対して略90°をなす方向の輝度変動を演算処理する演算手段と、
を備えたことを特徴とするステンレス鋼板のリジング評価装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152904A JP2004354235A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | ステンレス鋼板のリジング評価方法および装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152904A JP2004354235A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | ステンレス鋼板のリジング評価方法および装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004354235A true JP2004354235A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34048007
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003152904A Pending JP2004354235A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | ステンレス鋼板のリジング評価方法および装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004354235A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006275618A (ja) * | 2005-03-28 | 2006-10-12 | Nec Robotics Eng Ltd | ラベル検査装置 |
JP2010117322A (ja) * | 2008-11-14 | 2010-05-27 | Nippon Steel Corp | 表面疵検査装置、表面疵検査方法及びプログラム |
KR100981576B1 (ko) | 2008-12-23 | 2010-09-10 | 주식회사 포스코 | 금속 판재로 가공된 성형품의 리징성 평가방법 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152904A patent/JP2004354235A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006275618A (ja) * | 2005-03-28 | 2006-10-12 | Nec Robotics Eng Ltd | ラベル検査装置 |
JP2010117322A (ja) * | 2008-11-14 | 2010-05-27 | Nippon Steel Corp | 表面疵検査装置、表面疵検査方法及びプログラム |
KR100981576B1 (ko) | 2008-12-23 | 2010-09-10 | 주식회사 포스코 | 금속 판재로 가공된 성형품의 리징성 평가방법 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8459073B2 (en) | Method for measuring sheet material flatness and method for producing steel sheet using said measuring method | |
JP5488953B2 (ja) | 凹凸疵検査方法及び装置 | |
JP2010513925A (ja) | 車両用成形ガラスのひずみを反射された光学像により自動的に定量分析する方法 | |
JP2012215486A (ja) | 表面性状測定装置および表面性状総合評価方法 | |
JP2008275424A (ja) | 表面検査装置 | |
JP5347661B2 (ja) | 帯状体の表面検査装置、表面検査方法及びプログラム | |
JP2012229928A (ja) | 表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出装置 | |
JP5557586B2 (ja) | 表面性状測定装置および表面性状測定方法 | |
JP2008096429A (ja) | 表面処理鋼板の腐食部の面積率測定装置、亜鉛めっき鋼板の白錆部の面積率測定装置及びその測定方法 | |
JP3899915B2 (ja) | 光学歪の評価方法および評価装置 | |
JP2004354235A (ja) | ステンレス鋼板のリジング評価方法および装置 | |
JP2001209798A (ja) | 外観検査方法及び検査装置 | |
JP4108829B2 (ja) | 厚み欠陥検査装置及びその検査方法 | |
KR20160058152A (ko) | 코팅 평판 제품의 마모 특성을 결정하기 위한 방법 및 장치 | |
JP4534507B2 (ja) | 表面凹凸の測定・評価方法およびシステム、表面凹凸評価装置並びに表面凹凸の測定・評価方法のプログラム | |
JP5181912B2 (ja) | 表面欠陥の検査方法、表面欠陥検査装置、鋼板の製造方法、及び鋼板の製造装置 | |
JP2001272341A (ja) | 金属板の光沢むら測定方法 | |
JPH1194767A (ja) | 地合検査方法および装置 | |
JPH08297024A (ja) | 金属表面性状測定方法および装置 | |
JPH109836A (ja) | 物体の表面性状、ガラスの表面の粗度およびガラス成形型の評価方法 | |
JP2007506072A (ja) | シート表面の分析装置と分析方法 | |
JP4035558B2 (ja) | 表面検査装置 | |
JP4520794B2 (ja) | 線条検査方法および装置 | |
JPH11279936A (ja) | シボ織物のシボ立ち性測定装置および方法 | |
JP5392903B2 (ja) | 表面疵検査装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060315 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20081030 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081104 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20090303 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |