JP2004353772A - 高粘性液体封入式防振装置 - Google Patents
高粘性液体封入式防振装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004353772A JP2004353772A JP2003152995A JP2003152995A JP2004353772A JP 2004353772 A JP2004353772 A JP 2004353772A JP 2003152995 A JP2003152995 A JP 2003152995A JP 2003152995 A JP2003152995 A JP 2003152995A JP 2004353772 A JP2004353772 A JP 2004353772A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- vibration
- viscosity liquid
- stud
- elastic material
- filled
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Combined Devices Of Dampers And Springs (AREA)
Abstract
【課題】振幅の大小にかかわらず、広い周波数域に亘って高い防振性能を発揮させることができ、また、スタッドが傾斜するような過大な荷重が掛かった場合の部材の破損を防いで不慮時における防振機能の喪失を回避できるようにする。
【解決手段】ゴム状弾性材製弾性体3とケース2とにより形成される空間部7に高粘性液体4が封入されているとともに、高粘性液体4が封入された空間部7まで突出させたスタッド1の一端に、振動付加に伴ってスタッド1と共に軸方向(a−b方向)に往復変位する加振板5が取付けられている高粘性液体封入式防振装置10において、その加振板5の全体を弾性変形可能な弾性材から構成している。
【選択図】 図1
【解決手段】ゴム状弾性材製弾性体3とケース2とにより形成される空間部7に高粘性液体4が封入されているとともに、高粘性液体4が封入された空間部7まで突出させたスタッド1の一端に、振動付加に伴ってスタッド1と共に軸方向(a−b方向)に往復変位する加振板5が取付けられている高粘性液体封入式防振装置10において、その加振板5の全体を弾性変形可能な弾性材から構成している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して機体フレームに加わる振動を減衰し、キャビンに伝達される振動を減少するといったような防振性能を発揮させるべく用いられる高粘性液体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の一般的な高粘性液体封入式防振装置は、例えばキャビン等への取付部を構成するスタッドと機体フレーム等への取付部を構成するケースとをゴム状弾性材製の弾性体を介して連結し、前記ケースとゴム状弾性材製弾性体とにより形成される空間部にシリコーンオイル等の高粘性液体を封入するとともに、前記空間部にまで突出させたスタッドの一端に、そのスタッドへの振動付加に伴い該スタッドと共にスタッド軸方向へ往復変位する加振板を取付けて構成されている。
【0003】
そして、低周波数域の振動付加時には、スタッドと共に加振板が軸方向に往復変位して高粘性流体を振動方向に対して略直角方向に流動させることにより、高粘性流体に生じるずりせん断応力の働きで減衰力が発揮されて低周波振動に対して良好な振動絶縁性、つまり、防振性能を発揮させるものである。
【0004】
上記した一般的な高粘性液体封入式防振装置では、スタッドと加振板とが振動周波数の大小に関係なく、振動付加に伴って常に一体に軸方向に往復変位するものであるから、上述のように低周波振動に対しては良好な防振性能が得られるものの、振動周波数が大きく振幅の小さい高周波数域になるに従って動ばね定数が高くなり、高周波振動に対する防振性能が低下するという問題がある。
【0005】
このような一般的な高粘性液体封入式防振装置の有する問題を解消するものとして、従来、スタッドの先端部にその軸方向の一定範囲内で摺動可能に加振板を嵌着させる、あるいは、弾性材を介して軸方向の一定範囲内で相対移動可能に取付けるなどのガタ機構を設けることにより、振幅が前記一定範囲未満の高周波数域の振動付加時には、加振板を高粘性液体内に浮遊させる、あるいは、加振板は変位させず弾性材を弾性変形させる状態にして、スタットのみを高粘性液体の抵抗を殆ど受けることなく変位させて動ばね定数を低く保持し、これによって、ゴム状弾性材製弾性体が本来有している振動絶縁性を有効に活用させて高周波振動に対しても優れた防振性能を発揮させることができるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−60684号公報の図1,図2
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようにスタッドの先端部に軸方向に一定範囲のガタ機構を介して加振板を取付けた従来の高粘性液体封入式防振装置においては、振幅が前記ガタ機構における一定範囲未満の低周波数域の振動付加時には加振板自体が高粘性液体内を変位しないために、ロスファクタは、図3の点線で示すように、ゴム状弾性材製弾性体のロスファクタ相当分だけの非常に小さいものとなり、また、振幅が前記ガタ機構の一定範囲を越える高周波域の振動付加時には加振板がその全面積を保ったままで高粘性液体内を変位するために、動ばね定数が大きくなり、したがって、広い周波数域に亘り振幅の大小に関係なく良好な防振性能を発揮させるには未だ十分なものといえなかった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、振幅の大小にかかわらず、広い周波数域に亘って高い防振性能を発揮させることができ、しかも、スタッドが傾斜するような過大な荷重が掛かった場合の部材の破損を防いで不慮時における防振機能の喪失を回避することができる高粘性液体封入式防振装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る高粘性液体封入式防振ゴム装置は、一方の取付部を構成するスタッドと他方の取付部を構成するケースとがゴム状弾性材製の弾性体を介して連結され、前記ケースとゴム状弾性材製弾性体とにより形成される空間部には高粘性液体が封入されているとともに、前記空間部にまで突出させたスタッドの一端には、そのスタッドへの振動付加に伴い該スタッドと共にスタッド軸方向へ往復変位する加振板が取付けられている高粘性液体封入式防振装置において、前記加振板の全体が、高粘性液体により一定以上の抵抗力を受けたとき、弾性変形可能な弾性材から構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成の本発明によれば、低周波数域の振動付加時には、スタッドと加振板とが共に軸方向に往復変位して高粘性液体を振動方向に対して略直角方向に流動させることにより、高粘性液体に生じるずりせん断応力の働きで減衰力が発揮されて低周波振動に対して良好な振動絶縁性が得られる。特に、振幅の小さい低周波振動時にも加振板が変位するために、ゴム状弾性材製弾性体のロスファクタに高粘性液体に生じるずりせん断応力の働きによる減衰(ロスファクタ)が加わって、全体として大きなロスファクタが得られる。一方、高周波数域の振動付加時には、加振板自体が高粘性液体の抵抗を受けて弾性変形しその受液面積を縮小した状態となり、変位動作がスムーズでスタッドから加振板が絶縁されるために、動ばね定数の上昇を抑制することが可能である。特に、振幅の大きい高周波振動時には加振板が振幅の大きさにほぼ比例して大きく弾性変形するので、スタッドの変位に対する高粘性液体の抵抗は小さく、ゴム状弾性材製弾性体が本来有している振動絶縁性を有効に活用して振幅の大きい高周波振動に対しても優れた防振性能を発揮させることが可能である。
【0011】
また、既述した油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いるような場合において、キャビンが傾くなどして過大な荷重が掛かり、スタッドが大きく傾斜して加振板の外周とケースが接触するような不慮事態になった場合でも、加振板が弾性変形することにより、加振板やケース等の部材の破損を防いで、不慮時及びそれ以降の防振機能の喪失を回避して装置の耐久寿命を増大することが可能である。
【0012】
上記構成の本発明に係る高粘性液体封入式防振装置において、請求項2に記載のように、前記弾性材製の加振板に、高粘性液体のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔を形成することが望ましい。この場合は、高周波振動付加に伴うスタッド及び加振板の一体変位時に高粘性液体が貫通孔を通じて流動されることにより、それらの変位動作がよりスムーズとなり、動ばね定数を一層低下させることができる。
【0013】
また、上記構成の本発明に係る高粘性液体封入式防振装置において、請求項3に記載のように、前記弾性材製の加振板をスタッドの一端に弾性材を介して取付けることにより、加振板自体のばね定数を最適にしつつ、振動付加時の変位動作をスムーズにして動ばね定数を一層低下させることができる。
【0014】
さらに、弾性材性の加振板をスタッドの一端に取付けるにあたっては、加振板をその中央部でスタッドに支持させるように取付けてもよいが、請求項4に記載のように、加振板の外周においてスタッドに支持させるように取付けることによって、加振板全体を低周波数域での減衰特性を確保するに適切な比較的高いばね定数に設定しながらも、高周波数域の振動付加時には弾性変形しやすくして動ばね定数の低下を図ることができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係る高粘性液体封入式防振装置を構成するにあたって、請求項5に記載のように、前記ケースと弾性体とをゴム状弾性体から一体に形成し、その一体弾性体の内部空間部に高粘性液体を封入するとともに、弾性材製の加振板を内装する形態に構成することによって、防振装置全体の構成部品数を少なくして低コスト化、コンパクト化を図ることができるだけでなく、高周波振動に対する防振性能を一層高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第1実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10は、一方の取付部となる雌ねじ部6が溶接等により固着されている軸状のスタッド1と、他方の取付部となり一方が開放された円筒形のケース2とが、円錐台形のゴム状弾性材製の弾性体3を介して同心状に固定連結されている。
【0017】
前記ケース2とゴム状弾性材製の弾性体3とにより形成される空間部7にはシリコーンオイル等の高粘性液体4が封入されているとともに、前記スタッド1の一端が空間部7にまで突出されている。この空間部7にまで突出されたスタッド1の一端中央部には円形の加振板5が取付けられており、この加振板5は前記スタッド1への振動付加に伴い該スタッド1と共に矢印a−bで示すスタッド軸方向に往復変位する。
【0018】
上記のごとき構成の高粘性液体封入式防振装置10において、本第1実施例では、前記加振板5の全体が、振動付加に伴いスタッド1と共に該加振板5がスタッド軸方向(a−b方向)に往復変位して高粘性液体4により一定以上の抵抗力を受けたとき、弾性変形可能な弾性ゴム等の弾性体から構成されている。
【0019】
このような第1実施例の高粘性液体封入式防振装置10に低周波数域の振動が付加された時には、スタッド1と共に加振板5がスタッド軸方向(a−b方向)に往復変位して高粘性液体4が振動方向に対して略直角方向に流動し、この流動により、高粘性液体4にずりせん断応力が働いて減衰力が発揮されるため、低周波振動に対して良好な振動絶縁性が得られる。特に、振幅の小さい低周波振動時にも加振板5が変位するために、ゴム状弾性材製弾性体3のロスファクタに高粘性液体4に生じるずりせん断応力の働きによる減衰(ロスファクタ)が加わり、図3の実線で示すように、全体として大きなロスファクタが得られる。
【0020】
一方、第1実施例の高粘性液体封入式防振装置10に高周波数域の振動が付加された時には、加振板5自体が高粘性液体4の抵抗を受けて図2に示すように弾性変形して受液面積が縮小された状態となり、変位動作がスムーズでスタッド1から加振板5が絶縁されるために、動ばね定数の上昇が抑制される。特に、振幅の大きい高周波振動時には加振板5が振幅の大きさにほぼ比例して大きく弾性変形するので、スタッド1の変位に対する高粘性液体4の抵抗は非常に小さく、ゴム状弾性材製弾性体3が本来有している振動絶縁性を有効に活用して振幅の大きい高周波振動に対しても優れた防振性能を発揮させることができる。
【0021】
また、第1実施例の高粘性液体封入式防振装置10を既述した油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いる場合において、キャビンが傾くなどして過大な荷重が掛かり、図4に示すように、スタッド1がゴム状弾性材製弾性体3を圧縮して大きく傾斜し、そのために加振板5の外周とケース2が接触するような不慮の事態になった場合でも、加振板5が弾性変形してその衝撃を吸収することになり、加振板5やケース2等の部材の破損を防いで、不慮時及びそれ以降の防振機能の喪失を回避し該防振装置10の耐久寿命を増大することが可能である。
【0022】
図5は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第2実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、前記弾性材製の円形加振板5の径方向中間位置で円周方向に等間隔を隔てて複数箇所に、高粘性流体4のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔8を形成したものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0023】
この第2実施例の高粘性液体封入式防振装置10も基本的に第1実施例と同様に、広い周波数域において優れた防振性能を発揮させることが可能であるが、特に、高周波振動付加に伴うスタッド1及び加振板5の一体変位時に高粘性液体4が貫通孔8を通じて流動されることにより、それら部材1,5の変位動作がよりスムーズとなり、動ばね定数を一層低下させることができる。
【0024】
図6は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第3実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、前記弾性材製の円形加振板5がその中心部において径小の円筒状弾性体9を介してスタッド1の一端に取付けられたものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0025】
この第3実施例の高粘性液体封入式防振装置10も基本的に第1実施例と同様に、広い周波数域において優れた防振性能を発揮させることが可能であるが、特に、加振板5自体を低周波数域の振動付加時において高粘性液体4の抵抗を受けて所定の減衰特性を確保するに適したばね定数に設定しつつ、高周波数域の振動付加時には、加振板5自体の弾性変形と該加振板5のスタッド1への取付部の弾性変形とにより加振板5全体の変形動作がスムーズとなり、動ばね定数を一層低下させることができる。
【0026】
図7は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第4実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、前記弾性材からなる加振板5がそれの外周において支持部材11を介してスタッド1の一端に支持され取付けられたものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0027】
この第4実施例の高粘性液体封入式防振装置10も基本的に第1実施例と同様に、広い周波数域において優れた防振性能を発揮させることが可能であるが、特に、弾性材製の加振板5全体をその外周側で拘束させることによって、加振板5自体のばね定数は低周波数域での減衰特性を確保するに適切な比較的高い値に設定しながらも、高周波数域の振動付加時には加振板5が弾性変形しやすくなり動ばね定数の低下を図ることができる。
【0028】
図8は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第5実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、弾性材製の防振板5を第4実施例と同様に、支持部材11を介してその外周においてスタッド1の一端に支持され取付けられているとともに、この加振板5の径方向中間位置で円周方向に等間隔を隔てて複数箇所に、第2実施例と同様に、高粘性流体4のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔8が形成されたものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0029】
この第5実施例の高粘性液体封入式防振装置10においては、高周波振動付加に伴うスタッド1及び加振板5の一体変位時に高粘性液体4が貫通孔8を通じて流動することと、加振板5自体が高周波数域の振動付加時に弾性変形しやすいこととが相俟って、高周波数域での動ばね定数を更に低くすることができる。
【0030】
図9及び図10は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第6実施例及び第7実施例を示す縦断面図であり、これら防振装置10では、弾性材製の円形加振板5を上下分割加振板5A,5Bとそれらを繋ぐ中心部材5Cとからなる断面エの字形状に形成するとともに、この断面エの字形状の加振板5を、スタッド1の一端に固定された断面略角Cの字形の支持部材12に上下方向に僅かな隙間13を持たせて支持させ、かつ、支持部材12の上下分割加振板5A,5B間に位置する部分に高粘性液体4の流動を許容する貫通孔14を形成し、さらに、第7実施例のものでは中心部材5Cにも貫通孔15を形成したものである。
【0031】
これら第6実施例及び第7実施例の高粘性液体封入式防振装置10においては、加振板5が上下に分割され、かつ、それら上下分割加振板5A,5Bと支持部材12との間に隙間13が存在しているので、振幅の大きい高周波数域の振動付加時に弾性材製の加振板5全体が非常にスムーズに弾性変形しやすいことと、スタッド1及び加振板5の一体変位時に高粘性液体4が貫通孔14または14及び15を通じて流動されてそれら部材1,5の変位動作がスムーズであることとの相乗作用により、高周波数域での動ばね定数を一段と低くして、広い周波数域での防振性能を一層高めることができる。
【0032】
図11は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第8実施例を示す半縦断面図であり、この防振装置10では、前記ケース2と弾性体3とをゴム状弾性体16から一体に形成し、その一体弾性体16の内部空間部に高粘性液体4を封入するとともに、高粘性液体4の封入空間部に弾性材製の加振板5を内装する形態に構成したものである。
【0033】
この第8実施例の高粘性液体封入式防振装置10は、ケース2と弾性体3との共用化構成によって、防振装置全体の構成部品数を少なくして低コスト化、コンパクト化を図ることができるだけでなく、一体弾性体16の振動絶縁性を高めて高周波振動に対する防振性能の一層の向上を図ることができる。
【0034】
なお、本発明は、油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いられる防振装置として特に有効であるが、これに限定されるものでなく、例えば自動車用エンジンマウント等にも適用可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上要するに、本発明によれば、低周波数域の振動付加時、特に、振幅の小さい低周波振動時にも、スタッドと共に加振板が軸方向に往復変位することに伴い高粘性液体に生じるずりせん断応力の働きによるロスファクタとゴム状弾性材製弾性体のロスファクタとによって、全体として大きなロスファクタが得られて低周波振動に対して良好な振動絶縁性を確保できるだけでなく、高周波数域の振動付加時、特に、振幅の大きい高周波振動時には加振板が大きく弾性変形することで、スタッドの変位に対する高粘性液体の抵抗を小さくして変位をスムーズとし、ゴム状弾性材製弾性体が本来有している振動絶縁性を最大限有効に活用することができる。したがって、振幅の大小にかかわらず、広い周波数域に亘って高い防振性能を発揮させることができる。
【0036】
加えて、油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いるような場合において、キャビンが傾くなどして過大な荷重が掛かり、スタッドが大きく傾斜して加振板の外周とケースが接触するような不慮事態が発生した場合でも、加振板の弾性変形により衝撃を吸収できるので、加振板やケース等の部材の破損を防いで、不慮時及びそれ以降の防振機能の喪失を回避して装置の耐久寿命を増大することができるという効果を奏する。
【0037】
特に、請求項2〜4の構成を採用することにより、高周波数域でのばね定数を一層低く保ち、高周波振動に対する防振性能をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第1実施例を示す縦断面図である。
【図2】同上第1実施例の高粘性液体封入式防振装置に高周波振動が付加された時の状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置における周波数に対するロスファクタの関係を従来のものと比較して説明する図である。
【図4】同上第1実施例の高粘性液体封入式防振装置におけるスタッドが傾斜した場合の状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第2実施例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第3実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第4実施例を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第5実施例を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第6実施例を示す縦断面図である。
【図10】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第7実施例を示す縦断面図である。
【図11】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第8実施例を示す半縦断面図である。
【符号の説明】
10 高粘性液体封入式防振装置
1 スタッド
2 ケース
3 ゴム状弾性材製弾性体
4 高粘性液体
5 加振板
6 雌ねじ部(一方の取付部)
7 空間部
8,14,15 貫通孔
9 筒状弾性体
16 一体弾性体
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して機体フレームに加わる振動を減衰し、キャビンに伝達される振動を減少するといったような防振性能を発揮させるべく用いられる高粘性液体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の一般的な高粘性液体封入式防振装置は、例えばキャビン等への取付部を構成するスタッドと機体フレーム等への取付部を構成するケースとをゴム状弾性材製の弾性体を介して連結し、前記ケースとゴム状弾性材製弾性体とにより形成される空間部にシリコーンオイル等の高粘性液体を封入するとともに、前記空間部にまで突出させたスタッドの一端に、そのスタッドへの振動付加に伴い該スタッドと共にスタッド軸方向へ往復変位する加振板を取付けて構成されている。
【0003】
そして、低周波数域の振動付加時には、スタッドと共に加振板が軸方向に往復変位して高粘性流体を振動方向に対して略直角方向に流動させることにより、高粘性流体に生じるずりせん断応力の働きで減衰力が発揮されて低周波振動に対して良好な振動絶縁性、つまり、防振性能を発揮させるものである。
【0004】
上記した一般的な高粘性液体封入式防振装置では、スタッドと加振板とが振動周波数の大小に関係なく、振動付加に伴って常に一体に軸方向に往復変位するものであるから、上述のように低周波振動に対しては良好な防振性能が得られるものの、振動周波数が大きく振幅の小さい高周波数域になるに従って動ばね定数が高くなり、高周波振動に対する防振性能が低下するという問題がある。
【0005】
このような一般的な高粘性液体封入式防振装置の有する問題を解消するものとして、従来、スタッドの先端部にその軸方向の一定範囲内で摺動可能に加振板を嵌着させる、あるいは、弾性材を介して軸方向の一定範囲内で相対移動可能に取付けるなどのガタ機構を設けることにより、振幅が前記一定範囲未満の高周波数域の振動付加時には、加振板を高粘性液体内に浮遊させる、あるいは、加振板は変位させず弾性材を弾性変形させる状態にして、スタットのみを高粘性液体の抵抗を殆ど受けることなく変位させて動ばね定数を低く保持し、これによって、ゴム状弾性材製弾性体が本来有している振動絶縁性を有効に活用させて高周波振動に対しても優れた防振性能を発揮させることができるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−60684号公報の図1,図2
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようにスタッドの先端部に軸方向に一定範囲のガタ機構を介して加振板を取付けた従来の高粘性液体封入式防振装置においては、振幅が前記ガタ機構における一定範囲未満の低周波数域の振動付加時には加振板自体が高粘性液体内を変位しないために、ロスファクタは、図3の点線で示すように、ゴム状弾性材製弾性体のロスファクタ相当分だけの非常に小さいものとなり、また、振幅が前記ガタ機構の一定範囲を越える高周波域の振動付加時には加振板がその全面積を保ったままで高粘性液体内を変位するために、動ばね定数が大きくなり、したがって、広い周波数域に亘り振幅の大小に関係なく良好な防振性能を発揮させるには未だ十分なものといえなかった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、振幅の大小にかかわらず、広い周波数域に亘って高い防振性能を発揮させることができ、しかも、スタッドが傾斜するような過大な荷重が掛かった場合の部材の破損を防いで不慮時における防振機能の喪失を回避することができる高粘性液体封入式防振装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る高粘性液体封入式防振ゴム装置は、一方の取付部を構成するスタッドと他方の取付部を構成するケースとがゴム状弾性材製の弾性体を介して連結され、前記ケースとゴム状弾性材製弾性体とにより形成される空間部には高粘性液体が封入されているとともに、前記空間部にまで突出させたスタッドの一端には、そのスタッドへの振動付加に伴い該スタッドと共にスタッド軸方向へ往復変位する加振板が取付けられている高粘性液体封入式防振装置において、前記加振板の全体が、高粘性液体により一定以上の抵抗力を受けたとき、弾性変形可能な弾性材から構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成の本発明によれば、低周波数域の振動付加時には、スタッドと加振板とが共に軸方向に往復変位して高粘性液体を振動方向に対して略直角方向に流動させることにより、高粘性液体に生じるずりせん断応力の働きで減衰力が発揮されて低周波振動に対して良好な振動絶縁性が得られる。特に、振幅の小さい低周波振動時にも加振板が変位するために、ゴム状弾性材製弾性体のロスファクタに高粘性液体に生じるずりせん断応力の働きによる減衰(ロスファクタ)が加わって、全体として大きなロスファクタが得られる。一方、高周波数域の振動付加時には、加振板自体が高粘性液体の抵抗を受けて弾性変形しその受液面積を縮小した状態となり、変位動作がスムーズでスタッドから加振板が絶縁されるために、動ばね定数の上昇を抑制することが可能である。特に、振幅の大きい高周波振動時には加振板が振幅の大きさにほぼ比例して大きく弾性変形するので、スタッドの変位に対する高粘性液体の抵抗は小さく、ゴム状弾性材製弾性体が本来有している振動絶縁性を有効に活用して振幅の大きい高周波振動に対しても優れた防振性能を発揮させることが可能である。
【0011】
また、既述した油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いるような場合において、キャビンが傾くなどして過大な荷重が掛かり、スタッドが大きく傾斜して加振板の外周とケースが接触するような不慮事態になった場合でも、加振板が弾性変形することにより、加振板やケース等の部材の破損を防いで、不慮時及びそれ以降の防振機能の喪失を回避して装置の耐久寿命を増大することが可能である。
【0012】
上記構成の本発明に係る高粘性液体封入式防振装置において、請求項2に記載のように、前記弾性材製の加振板に、高粘性液体のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔を形成することが望ましい。この場合は、高周波振動付加に伴うスタッド及び加振板の一体変位時に高粘性液体が貫通孔を通じて流動されることにより、それらの変位動作がよりスムーズとなり、動ばね定数を一層低下させることができる。
【0013】
また、上記構成の本発明に係る高粘性液体封入式防振装置において、請求項3に記載のように、前記弾性材製の加振板をスタッドの一端に弾性材を介して取付けることにより、加振板自体のばね定数を最適にしつつ、振動付加時の変位動作をスムーズにして動ばね定数を一層低下させることができる。
【0014】
さらに、弾性材性の加振板をスタッドの一端に取付けるにあたっては、加振板をその中央部でスタッドに支持させるように取付けてもよいが、請求項4に記載のように、加振板の外周においてスタッドに支持させるように取付けることによって、加振板全体を低周波数域での減衰特性を確保するに適切な比較的高いばね定数に設定しながらも、高周波数域の振動付加時には弾性変形しやすくして動ばね定数の低下を図ることができる。
【0015】
さらにまた、本発明に係る高粘性液体封入式防振装置を構成するにあたって、請求項5に記載のように、前記ケースと弾性体とをゴム状弾性体から一体に形成し、その一体弾性体の内部空間部に高粘性液体を封入するとともに、弾性材製の加振板を内装する形態に構成することによって、防振装置全体の構成部品数を少なくして低コスト化、コンパクト化を図ることができるだけでなく、高周波振動に対する防振性能を一層高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第1実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10は、一方の取付部となる雌ねじ部6が溶接等により固着されている軸状のスタッド1と、他方の取付部となり一方が開放された円筒形のケース2とが、円錐台形のゴム状弾性材製の弾性体3を介して同心状に固定連結されている。
【0017】
前記ケース2とゴム状弾性材製の弾性体3とにより形成される空間部7にはシリコーンオイル等の高粘性液体4が封入されているとともに、前記スタッド1の一端が空間部7にまで突出されている。この空間部7にまで突出されたスタッド1の一端中央部には円形の加振板5が取付けられており、この加振板5は前記スタッド1への振動付加に伴い該スタッド1と共に矢印a−bで示すスタッド軸方向に往復変位する。
【0018】
上記のごとき構成の高粘性液体封入式防振装置10において、本第1実施例では、前記加振板5の全体が、振動付加に伴いスタッド1と共に該加振板5がスタッド軸方向(a−b方向)に往復変位して高粘性液体4により一定以上の抵抗力を受けたとき、弾性変形可能な弾性ゴム等の弾性体から構成されている。
【0019】
このような第1実施例の高粘性液体封入式防振装置10に低周波数域の振動が付加された時には、スタッド1と共に加振板5がスタッド軸方向(a−b方向)に往復変位して高粘性液体4が振動方向に対して略直角方向に流動し、この流動により、高粘性液体4にずりせん断応力が働いて減衰力が発揮されるため、低周波振動に対して良好な振動絶縁性が得られる。特に、振幅の小さい低周波振動時にも加振板5が変位するために、ゴム状弾性材製弾性体3のロスファクタに高粘性液体4に生じるずりせん断応力の働きによる減衰(ロスファクタ)が加わり、図3の実線で示すように、全体として大きなロスファクタが得られる。
【0020】
一方、第1実施例の高粘性液体封入式防振装置10に高周波数域の振動が付加された時には、加振板5自体が高粘性液体4の抵抗を受けて図2に示すように弾性変形して受液面積が縮小された状態となり、変位動作がスムーズでスタッド1から加振板5が絶縁されるために、動ばね定数の上昇が抑制される。特に、振幅の大きい高周波振動時には加振板5が振幅の大きさにほぼ比例して大きく弾性変形するので、スタッド1の変位に対する高粘性液体4の抵抗は非常に小さく、ゴム状弾性材製弾性体3が本来有している振動絶縁性を有効に活用して振幅の大きい高周波振動に対しても優れた防振性能を発揮させることができる。
【0021】
また、第1実施例の高粘性液体封入式防振装置10を既述した油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いる場合において、キャビンが傾くなどして過大な荷重が掛かり、図4に示すように、スタッド1がゴム状弾性材製弾性体3を圧縮して大きく傾斜し、そのために加振板5の外周とケース2が接触するような不慮の事態になった場合でも、加振板5が弾性変形してその衝撃を吸収することになり、加振板5やケース2等の部材の破損を防いで、不慮時及びそれ以降の防振機能の喪失を回避し該防振装置10の耐久寿命を増大することが可能である。
【0022】
図5は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第2実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、前記弾性材製の円形加振板5の径方向中間位置で円周方向に等間隔を隔てて複数箇所に、高粘性流体4のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔8を形成したものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0023】
この第2実施例の高粘性液体封入式防振装置10も基本的に第1実施例と同様に、広い周波数域において優れた防振性能を発揮させることが可能であるが、特に、高周波振動付加に伴うスタッド1及び加振板5の一体変位時に高粘性液体4が貫通孔8を通じて流動されることにより、それら部材1,5の変位動作がよりスムーズとなり、動ばね定数を一層低下させることができる。
【0024】
図6は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第3実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、前記弾性材製の円形加振板5がその中心部において径小の円筒状弾性体9を介してスタッド1の一端に取付けられたものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0025】
この第3実施例の高粘性液体封入式防振装置10も基本的に第1実施例と同様に、広い周波数域において優れた防振性能を発揮させることが可能であるが、特に、加振板5自体を低周波数域の振動付加時において高粘性液体4の抵抗を受けて所定の減衰特性を確保するに適したばね定数に設定しつつ、高周波数域の振動付加時には、加振板5自体の弾性変形と該加振板5のスタッド1への取付部の弾性変形とにより加振板5全体の変形動作がスムーズとなり、動ばね定数を一層低下させることができる。
【0026】
図7は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第4実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、前記弾性材からなる加振板5がそれの外周において支持部材11を介してスタッド1の一端に支持され取付けられたものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0027】
この第4実施例の高粘性液体封入式防振装置10も基本的に第1実施例と同様に、広い周波数域において優れた防振性能を発揮させることが可能であるが、特に、弾性材製の加振板5全体をその外周側で拘束させることによって、加振板5自体のばね定数は低周波数域での減衰特性を確保するに適切な比較的高い値に設定しながらも、高周波数域の振動付加時には加振板5が弾性変形しやすくなり動ばね定数の低下を図ることができる。
【0028】
図8は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第5実施例を示す縦断面図であり、この防振装置10では、弾性材製の防振板5を第4実施例と同様に、支持部材11を介してその外周においてスタッド1の一端に支持され取付けられているとともに、この加振板5の径方向中間位置で円周方向に等間隔を隔てて複数箇所に、第2実施例と同様に、高粘性流体4のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔8が形成されたものであり、その他の構成は図1に示した第1実施例と同一であるため、該当部分に同一の符号を付して、それらの説明を省略する。
【0029】
この第5実施例の高粘性液体封入式防振装置10においては、高周波振動付加に伴うスタッド1及び加振板5の一体変位時に高粘性液体4が貫通孔8を通じて流動することと、加振板5自体が高周波数域の振動付加時に弾性変形しやすいこととが相俟って、高周波数域での動ばね定数を更に低くすることができる。
【0030】
図9及び図10は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第6実施例及び第7実施例を示す縦断面図であり、これら防振装置10では、弾性材製の円形加振板5を上下分割加振板5A,5Bとそれらを繋ぐ中心部材5Cとからなる断面エの字形状に形成するとともに、この断面エの字形状の加振板5を、スタッド1の一端に固定された断面略角Cの字形の支持部材12に上下方向に僅かな隙間13を持たせて支持させ、かつ、支持部材12の上下分割加振板5A,5B間に位置する部分に高粘性液体4の流動を許容する貫通孔14を形成し、さらに、第7実施例のものでは中心部材5Cにも貫通孔15を形成したものである。
【0031】
これら第6実施例及び第7実施例の高粘性液体封入式防振装置10においては、加振板5が上下に分割され、かつ、それら上下分割加振板5A,5Bと支持部材12との間に隙間13が存在しているので、振幅の大きい高周波数域の振動付加時に弾性材製の加振板5全体が非常にスムーズに弾性変形しやすいことと、スタッド1及び加振板5の一体変位時に高粘性液体4が貫通孔14または14及び15を通じて流動されてそれら部材1,5の変位動作がスムーズであることとの相乗作用により、高周波数域での動ばね定数を一段と低くして、広い周波数域での防振性能を一層高めることができる。
【0032】
図11は本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第8実施例を示す半縦断面図であり、この防振装置10では、前記ケース2と弾性体3とをゴム状弾性体16から一体に形成し、その一体弾性体16の内部空間部に高粘性液体4を封入するとともに、高粘性液体4の封入空間部に弾性材製の加振板5を内装する形態に構成したものである。
【0033】
この第8実施例の高粘性液体封入式防振装置10は、ケース2と弾性体3との共用化構成によって、防振装置全体の構成部品数を少なくして低コスト化、コンパクト化を図ることができるだけでなく、一体弾性体16の振動絶縁性を高めて高周波振動に対する防振性能の一層の向上を図ることができる。
【0034】
なお、本発明は、油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いられる防振装置として特に有効であるが、これに限定されるものでなく、例えば自動車用エンジンマウント等にも適用可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上要するに、本発明によれば、低周波数域の振動付加時、特に、振幅の小さい低周波振動時にも、スタッドと共に加振板が軸方向に往復変位することに伴い高粘性液体に生じるずりせん断応力の働きによるロスファクタとゴム状弾性材製弾性体のロスファクタとによって、全体として大きなロスファクタが得られて低周波振動に対して良好な振動絶縁性を確保できるだけでなく、高周波数域の振動付加時、特に、振幅の大きい高周波振動時には加振板が大きく弾性変形することで、スタッドの変位に対する高粘性液体の抵抗を小さくして変位をスムーズとし、ゴム状弾性材製弾性体が本来有している振動絶縁性を最大限有効に活用することができる。したがって、振幅の大小にかかわらず、広い周波数域に亘って高い防振性能を発揮させることができる。
【0036】
加えて、油圧ショベル等の建設機械における機体フレームとキャビンとの間に介装して用いるような場合において、キャビンが傾くなどして過大な荷重が掛かり、スタッドが大きく傾斜して加振板の外周とケースが接触するような不慮事態が発生した場合でも、加振板の弾性変形により衝撃を吸収できるので、加振板やケース等の部材の破損を防いで、不慮時及びそれ以降の防振機能の喪失を回避して装置の耐久寿命を増大することができるという効果を奏する。
【0037】
特に、請求項2〜4の構成を採用することにより、高周波数域でのばね定数を一層低く保ち、高周波振動に対する防振性能をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第1実施例を示す縦断面図である。
【図2】同上第1実施例の高粘性液体封入式防振装置に高周波振動が付加された時の状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置における周波数に対するロスファクタの関係を従来のものと比較して説明する図である。
【図4】同上第1実施例の高粘性液体封入式防振装置におけるスタッドが傾斜した場合の状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第2実施例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第3実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第4実施例を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第5実施例を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第6実施例を示す縦断面図である。
【図10】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第7実施例を示す縦断面図である。
【図11】本発明に係る高粘性液体封入式防振装置の第8実施例を示す半縦断面図である。
【符号の説明】
10 高粘性液体封入式防振装置
1 スタッド
2 ケース
3 ゴム状弾性材製弾性体
4 高粘性液体
5 加振板
6 雌ねじ部(一方の取付部)
7 空間部
8,14,15 貫通孔
9 筒状弾性体
16 一体弾性体
Claims (5)
- 一方の取付部を構成するスタッドと他方の取付部を構成するケースとがゴム状弾性材製の弾性体を介して連結され、前記ケースとゴム状弾性材製弾性体とにより形成される空間部には高粘性液体が封入されているとともに、前記空間部にまで突出させたスタッドの一端には、そのスタッドへの振動付加に伴い該スタッドと共にスタッド軸方向へ往復変位する加振板が取付けられている高粘性液体封入式防振装置において、
前記加振板の全体が、高粘性液体により一定以上の抵抗力を受けたとき、弾性変形可能な弾性材から構成されていることを特徴とする高粘性液体封入式防振装置。 - 前記弾性材製の加振板には、高粘性液体のスタッド軸方向への流動を許容する貫通孔が形成されている請求項1に記載の高粘性液体封入式防振装置。
- 前記弾性材製の加振板が、スタッドの一端に弾性材を介して取付けられている請求項1または2に記載の高粘性液体封入式防振装置。
- 前記弾性材製の加振板が、その外周においてスタッドの一端に支持されるように取付けられている請求項1または2に記載の高粘性液体封入式防振装置。
- 前記ケースと弾性体とがゴム状弾性材から一体に形成されており、その一体弾性体の内部空間部に高粘性液体が封入されているとともに、前記弾性材製の加振板が内装されている請求項1ないし4のいずれかに記載の高粘性液体封入式防振装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152995A JP2004353772A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 高粘性液体封入式防振装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003152995A JP2004353772A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 高粘性液体封入式防振装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004353772A true JP2004353772A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34048080
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003152995A Withdrawn JP2004353772A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 高粘性液体封入式防振装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004353772A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010090923A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | Komatsu Ltd | 液体封入マウント |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003152995A patent/JP2004353772A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010090923A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | Komatsu Ltd | 液体封入マウント |
CN102171482A (zh) * | 2008-10-03 | 2011-08-31 | 株式会社小松制作所 | 液体封入式支座 |
CN102171482B (zh) * | 2008-10-03 | 2014-06-11 | 株式会社小松制作所 | 液体封入式支座 |
US9086114B2 (en) | 2008-10-03 | 2015-07-21 | Komatsu Ltd. | Liquid sealed mount |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5016495B2 (ja) | 液体封入式マウントおよびその組み立て方法 | |
JP2005226745A (ja) | エンジンマウント | |
CN109424680B (zh) | 防振构造 | |
KR100907056B1 (ko) | 유체봉입형 엔진 마운팅 유닛 | |
WO2019187368A1 (ja) | 筒形防振装置 | |
JPH02225837A (ja) | 防振装置 | |
JP2006258217A (ja) | 流体封入式防振装置 | |
JP2009108912A (ja) | ダイナミックダンパ及びダイナミックダンパ構成部材の組合せ構造体 | |
JP7182635B2 (ja) | 流体封入式防振装置 | |
JP2004353772A (ja) | 高粘性液体封入式防振装置 | |
JP6063348B2 (ja) | 防振装置 | |
JP2007064353A (ja) | 揺動型制振装置 | |
JP5693386B2 (ja) | 防振装置 | |
JP3661060B2 (ja) | 防振装置 | |
JP2004353817A (ja) | 高粘性液体封入式防振装置 | |
JP7408472B2 (ja) | 防振装置 | |
JP2004353771A (ja) | 高粘性液体封入式防振装置 | |
KR100501361B1 (ko) | 차량의 반 능동 마운트 장치 | |
JP2004353816A (ja) | 高粘性液体封入式防振装置 | |
JP2019158138A (ja) | 防振装置 | |
JP4365004B2 (ja) | 防振装置 | |
JP3767009B2 (ja) | 粘性流体封入式防振装置 | |
JPH1163106A (ja) | 防振支持体 | |
JP2022129997A (ja) | 防振マウント | |
JP2005172242A (ja) | 防振装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060314 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20070612 |