JP2004353704A - 自己保持型マイクロ流路用バルブ及びそれを用いた光学バイオセンサ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低い消費電力で、確実に開閉状態を切り替えることができる自己保持型マイクロ流路用バルブと、その自己保持型マイクロ流路用バルブを用い、精度よく試料の検出・測定を行える光学バイオセンサ装置を提供する。
【解決手段】自己保持型マイクロ流路用バルブ38は、試料流通管路28cが形成されている流路プレート28と、試料流通管路28cを開閉する押圧部材66と、押圧部材66と連結する軸69と、軸69の外周を囲むソレノイド73と、軸69を吸引して押圧部材66が試料流通管路28cを閉状態にする位置に保持する磁石71とを有する。さらに、押圧部材66と軸69とがバネ64を介して連結されている。バネ64により、弁体としての押圧部材66が、開状態および閉状態とで移動する距離が少ないマイクロ流路用バルブの場合でも、磁石71による自己保持機能を奏することができる。
【選択図】 図4
【解決手段】自己保持型マイクロ流路用バルブ38は、試料流通管路28cが形成されている流路プレート28と、試料流通管路28cを開閉する押圧部材66と、押圧部材66と連結する軸69と、軸69の外周を囲むソレノイド73と、軸69を吸引して押圧部材66が試料流通管路28cを閉状態にする位置に保持する磁石71とを有する。さらに、押圧部材66と軸69とがバネ64を介して連結されている。バネ64により、弁体としての押圧部材66が、開状態および閉状態とで移動する距離が少ないマイクロ流路用バルブの場合でも、磁石71による自己保持機能を奏することができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己保持型マイクロ流路用バルブ及びそれを用いた光学バイオセンサ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体物質を分離・分析する場合、極微量の試料を高速で測定できるようにすることが要求される。しかしながら、液体状の試料を分離・分析する場合、試料を供給するバルブやポンプが大型であると、測定試料が一定量以上必要となったり、測定時間が長くなるなどの不具合がある。そのため、例えばシリコン基板上に、微小な流路溝を設けて、この流路溝にマイクロポンプやマイクロバルブを形成して、極微量の試料を高速で測定できるようにした技術が例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、シリコン基板と、該シリコン基板に形成されている液体の流路導出穴を覆う形態で配置されているシリコンゴムシートと、このシリコンゴムシートを流路導出穴に押圧して、流路導出穴を塞ぐアクチュエータを有するマイクロバルブが開示されている。アクチュエータとしては、具体的に圧電素子を採用している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、圧電効果を利用して、圧電素子の変形により流路導出穴を塞ぐ方法を採用すると、圧電素子に電流を流し続けない限り、流路導出穴の閉状態を維持できない。そのため、消費電力が多くなったり、圧電素子が加熱されるという問題がある。このようなマイクロバルブを、生体物質等の試料を液体とともにマイクロ流路に流動させて、該試料を検出・測定するような光学バイオセンサ装置に使用すると、圧電素子等のバルブ機構が加熱して、試料の温度が変動するため、精度のよい検出・測定が行えない場合がある。
【0005】
このように、アクチュエータに電流を流し続けることで、バルブの開状態あるいは閉状態を保持するようなマイクロバルブは、下記特許文献2にも開示されている。さらに、特許文献2には、弁体にガス圧を働かせて弁体を移動させる技術も開示されているが、ガス圧により、弁体を移動させようとすると、ガスを供給するための配管を取付けなければならず、バルブ全体の機構が大型となる問題がある。
【0006】
一方、通常のバルブとしては、下記特許文献3に開示されているような、自己保持型のバルブがある。特許文献3に開示されているバルブは、軸心方向に往復動可能な軸と、この軸に連結されている弁体とを有し、軸の往復動により、弁体が流体の流路を開閉するようになっている。さらに、この軸の軸方向に、所定の間隔をあけて並べられた3個の固定磁極と、この3個の固定磁極をN−S−N及びS−N−Sと励磁する磁化ソレノイドとを有し、さらに、軸には軸方向にS−Nと磁化された永久磁石が取付けられている。このような自己保持型のバルブによれば、固定磁極の磁性をN−S−Nとしたときに、3個の固定磁極のうちN−Sとなっている固定磁極の間に永久磁石が安定して配置される。一方固定磁極の磁性をS−N−Sとしたときには、3個の固定磁極のうちS−Nとなっている固定磁極間に永久磁石が安定して配置される。そのため、励磁ソレノイドに電流を流すことにより、固定磁極の磁性を切り替えることで、永久磁石と接続された軸が軸方向に往復動することができるようになっている。さらに、励磁ソレノイドに電流を流し、固定磁極の磁性を切り替えて、軸を移動させた後に、励磁ソレノイドに流れる電流を切っても、固定磁極と永久磁石との吸引力により、軸の位置は保持されることになる。そのため、バルブの開閉を切り替えるときのみ励磁ソレノイドに電流を流せばよいので、低消費電力を実現することができる。
【0007】
【特許文献1】
特許第2912372号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2002−228033号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平5−087267号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、特許文献1や特許文献2に開示されているようなマイクロバルブにおいて、消費電力の低減を目的として、特許文献3に開示されているような自己保持型のバルブを採用しようとすると、以下のような問題がある。つまり、マイクロバルブのように、弁体やこの弁体を移動させる軸の移動距離が短いバルブに、特許文献3のような磁力により弁体(軸)を位置決めする自己保持機能を付与すると、弁の開状態と閉状態とで、弁体(軸)を位置決めするのが困難となる。そのため、弁体に押圧力を加えて閉状態とし流路を塞ぐようなバルブの場合に、弁体に安定した押圧力を働かせることができないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、弁の開閉状態を少ない電力で切り替えることが可能であり、かつ、開状態と閉状態とにおける弁体の移動距離が小さいようなマイクロバルブにおいても、安定的に弁体に押圧力を与えることができる自己保持型マイクロ流路用バルブを提供することを課題とする。また、低い消費電力でバルブの開閉を切り替えることができるとともに、試料の検出・測定を精度よく行うことができる光学バイオセンサ装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記課題を解決するために本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、流体の流通管路を塞いだり、連通させたりする弁体の移動距離が、例えば0.1mm以下となるようなマイクロ流路用バルブ(以下、マイクロバルブともいう)において、弁体が閉状態となる位置(閉位置)と開状態となる位置(開位置)とで移動可能とする軸の位置決めを、自己保持型としたことに特徴がある。そして、マイクロバルブの弁体の位置決めを自己保持型とする場合の従来の問題点を以下のような構成により解決したことを特徴とする。つまり、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、流体が流通する流通管路が形成されている流路部材と、前記流通管路を閉状態とする閉位置と前記流通管路を開状態とする開位置との間で移動可能とされる弁体と、前記弁体に連結され、軸心の方向に往復動する軸と、前記軸の外周を囲む形態で配置されるソレノイドと、前記軸の一端側に配置され、前記弁体が前記閉位置あるいは前記開位置の少なくともいずれかに位置するときに、前記軸を吸引して位置決めする磁石と、を有し、前記軸は、前記弁体と弾性部材を介して接続されていることを特徴とする。
【0013】
上記のような自己保持型マイクロバルブにおいては、弁体と軸とが連結され、前記ソレノイドに電流を流し、軸を、当該軸の軸方向に移動させることにより、弁体の開閉状態を切り替えることができる。さらに、弁体が開状態となる開位置と、閉状態となる閉位置とのいずれかに位置するときに、軸を吸引して位置決めする磁石を有するので、ソレノイドに常時電流を流しておかなくても、磁石に軸の少なくとも一端が吸引され、弁体の閉状態あるいは開状態を維持することができる。そのため、弁体の開状態と閉状態との切り替えを、低い消費電力で行うことができる。なお、本明細書において、弁体と軸とが連結されているとは、弁体と軸とが結合して一体となることを含むものであるが、それ以外に、弁体と軸とが単に当接しており、互いが連動して移動するものも指すものとする。
【0014】
また、本発明の特徴は、弁体と軸とを弾性部材を介して接続したことにもある。このように、弁体と軸とを弾性部材を介して接続することにより、弁体を開状態と閉状態との間で、その状態を切り替える際に、弁体と連結する軸の移動距離を、閉状態の位置(閉位置)と開状態の位置(開位置)との間で弁体が移動する距離に対して長くしても、弁体の移動距離に対する軸の移動距離の過剰分が弾性部材の伸長・収縮により緩衝されることになる。そのため、マイクロ流路用バルブの場合に弁体の閉位置と開位置との間の距離が、例えば0.1mm以下となるような微小な距離であっても、軸の移動距離を長くすることができ、軸の一端側に配置される磁石による軸の位置決めを、確実に行うことができる。本発明は、このように弁体の開閉を切り替える際の当該弁体の移動距離が極端に少ないマイクロバルブにおいて、特に顕著な効果を奏する。なお、ガス圧を利用して弁体の閉状態と開状態とを切り替えるような場合のように、ガス配管等を設ける必要がないので、例えば生態物質等の検出・測定を行う光学バイオセンサ装置に組み付けても、装置が大型化しない。
【0015】
さらに、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブにおいては、前記流路部材は、表面に流路溝が形成されている流路プレートと、該流路プレートの前記流路溝が形成されている表面に当接される薄膜とを有し、前記流路溝が前記薄膜に覆われて前記流通管路が形成されているのがよい。
【0016】
このような流路部材によれば、流路プレートの表面に流路溝を形成し、薄膜を流路プレートの流路溝が形成されている側の表面に当接することで、薄膜の表面と流路溝により流通管路を容易に形成することができる。
【0017】
さらに、上記のような流路部材を採用する場合、前記弁体は、前記薄膜の前記流路溝とは反対側で、前記流通管路が形成されている領域に配置されており、前記流通管路に前記薄膜を押し込むように、前記流通管路に対して接近して、前記閉位置に移動するものであるとすることができる。
【0018】
さらに、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブにおいては、前記磁石は、前記弁体が前記閉位置に位置するときに、前記軸と接触するように配置されており、前記閉位置に前記弁体を保持するものであるとすることができる。
【0019】
さらに、本発明は、上記のような自己保持型マイクロ流路用バルブを用いた光学バイオセンサを提供する。すなわち、本発明の光学バイオセンサ装置は、液体状の試料が流通する流通管路を有する流路部材と、前記流路部材を開閉するバルブと、前記流通管路を流動する試料に対して測定光を照射する光供給手段と、前記測定光に対する試料の光学応答を検出する検出手段とを、有する光学バイオセンサ装置において、前記バルブは、前記流通管路を閉状態とする閉位置と前記流通管路を開状態とする開位置との間で移動可能とされる弁体と、前記弁体に連結され、軸心の方向に往復動する軸と、前記軸の外周を囲む形態で配置されるソレノイドと、前記軸の一端側に配置され、前記弁体が前記閉位置あるいは前記開位置の少なくともいずれかに位置するときに、前記軸を吸引する磁石と、を備え、かつ、前記軸は、前記弁体と弾性部材を介して接続されている自己保持型マイクロ流路用バルブであることを特徴とする。
【0020】
液体状の試料をサンプルとして測定を行う光学バイオセンサ装置においては、流路部材の流通管路を流動する試料を流通管路に流動させたり、流通管路を塞いだりするバルブが必要となるが、本発明の光学バイオセンサ装置は、この流通管路の開閉状態を制御するバルブとして、前述した本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブを採用したことが特徴である。
【0021】
前述した本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、前記ソレノイドに電流を流すことで、該ソレノイドに囲まれた軸を、軸方向に移動させることができ、そして、この軸に接続されている弁体を移動させることができる。そして、弁体を、流通管路を開状態とする開位置と流通管路を閉状態とする閉位置との間で移動可能としておき、ソレノイドによる軸の移動により、弁体が流通管路を開閉するようになっている。さらに、軸の一端側には、弁体が開状態となる開位置と、閉状態となる閉位置との少なくともいずれかに弁体が位置するときに、軸を吸引して位置決めするための磁石が配置されているので、一端弁体が閉位置あるいは開位置に移動すれば、ソレノイドに電流を流さなくても軸が位置決めされ、弁体を閉位置あるいは開位置に保持することができる。そのため、圧電素子により弁体を移動させるような従来のマイクロ流路用バルブとは異なり、消費電力を大幅に削減することができる。さらに、弁体と軸とは弾性部材を介して連結されているため、ソレノイドによる軸の移動距離を比較的大きくしても、軸の移動距離の過剰分が弾性部材の伸縮により緩衝されることになり、弁体の閉位置と開位置との距離が短いマイクロ流路用バルブでも、確実に安定した弁体の開閉を行うことができるのである。ソレノイドによる軸の移動距離を大きくすることで、軸の一端側に配置される磁石による軸の位置決めを確実に行うことができるようになり、自己保持型バルブとしての機能を果たすことができる。
【0022】
このような、自己保持型マイクロ流路用バルブを用いた光学バイオセンサ装置は、バルブの切換を安定して行うことができるとともに、電力の消費も少なく、そのため弁体を移動させるアクチュエータが加熱されにくいので、例えば、生体物質等の試料が加熱されて、精密な測定が行えないという装置上のトラブルも起こりにくい。
【0023】
また、本発明の光学バイオセンサ装置においては、ガス圧等を利用しなくても、弁体の開閉状態を精度よく切り替えることができるので、配管等の容積が嵩張る部材を配置する必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態の自己保持型マイクロ流路用バルブは、特に光学バイオセンサ装置に採用されるものである。図1は、本発明の自己保持型マイクロ流路バルブを用いた本発明の光学バイオセンサ装置を示すものである。図1に示す光学バイオセンサ装置は、特に表面プラズモン共鳴測定装置50(以下、SPR装置とする50)である。図1は、SPR装置50の概略を示す模式図である。また、図2は、図1のSPR装置50のA−A断面図である。図2は断面図であるが、図面の見易さを優先して装置の説明上必要のないものにはハッチングをしていない。また、説明上不要と思われるものは削除しているものもある。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のSPR装置50は、透明基板としてのガラス基板11の第一主表面に金属膜としての金膜12が形成されてなるセンサチップ10と、該センサチップ10の金膜12側に試料を接触させるために、試料を流すための流路プレート28と、ガラス基板11と同一の屈折率であり、ガラス基板11の、金膜12が形成されている第一主表面とは反対側の第二主表面側に配備されるプリズム13と、光供給手段としての発光素子14(以下LD14とする)と、検出手段としてのフォトデテクタ15(以下PD15とする)と、を有する。LD14からは測定光としての入射光線がプリズム13を介してガラス基板11の金膜12側に照射されるようになっており、入射光線は金膜12とガラス基板11との界面において反射され、その反射光線をPD15により検出するようになっている。また、金膜12のガラス基板11と反対側の表面には、測定用の試料が接触するようになっており、本実施形態における検出面とされている。以下、金膜12のガラス基板11とは反対側の表面を表面プラズモン検出面(SP検出面46)とする。図1中のL1は入射光線の経路を示し、L2は反射光線の経路を示す。入射光線は経路L1を通り、ガラス基板11と金膜12との界面近傍において反射され、反射光線は経路L2を通りPD15の受光面に照射される。なお、センサチップ10への入射光線以外の光は、遮光手段としてのカバー31により遮断されている。
【0026】
このように、センサチップ10のガラス基板11と金膜12との界面で全反射するように、LD14から入射光線を照射すると、金膜12側にエバネッセント波と呼ばれるエネルギー波が生じる。エバネッセント波では、金膜12の自由電子がプラズモンの共鳴に使われるため、反射光線の特定の角度に、エネルギーの消失がみられ、反射光線の強度を測定すると、ある特定の角度で反射光線の強度が減衰するのが認められる。この光学現象がSPR(表面プラズモン共鳴)である。
【0027】
反射光線の消失角度は、金膜12の試料と接触する側の表面近傍における、試料の屈折率に依存して変化する。SPR装置50では、この現象を利用して、2分子の結合・解離を測定する。具体的には、金膜12のガラス基板11とは反対側の表面に形成した自己組織化膜に抗体を固定し、この抗体が固定された領域に、この抗体が特異的に認識する抗原TGを含む試料を、流路プレート28の試料流通管路を介して流動させる。そして、特異的抗体・抗原反応により、センサチップ10の表面の質量が増加し、その結果として、センサチップ10の表面の屈折率が増加する。この屈折率の変化に応じて、反射光線の強度が減衰する入射光線の角度は変化するが、この入射角度の径時変化をセンサグラムと呼ぶグラフとして表示することにより、センサチップ10の表面での分子の相互作用をリアルタイムにモニタすることができる。
【0028】
また、LD14は、LD14からの入射光線が、ガラスセンサ11の金膜12近傍に照射されるように、LD固定板16に固定されており、PD15は、前記SP検出面46からの反射光線を検出できるように、SP検出面46の照射点P1を向くように、PD固定板17に固定されている。また、図1に示すように、LD固定部材16には、LD保持台24が固定されており、このLD保持台24に固定されるLD収納ケース44にLD14と、スプリッタ20と、偏向板21と、ピンホール22とが収納されている。これらLD14、スプリッタ20、偏向板21、ピンホール22はLD収納ケース44に位置固定されている。一方、PD固定板17には、PD保持台25が固定されており、このPD保持台25に固定されるPD収納ケース45にPD15と、ピンホール23とが収納されている。これらPD15とピンホール23とはPD収納ケース45に位置固定されている。
【0029】
また、LD固定板16には、第一支持点P3において、第一リンク部材18の一端側が支持部材30により取付けられており、第一支持点P3を中心として、第一リンク部材18がLD固定板16に対して回動可能とされている。また、PD固定板17には、第二支持点P4において、第二リンク部材19の一端側が支持部材29により取付けられており、第二支持点P4を中心として第二リンク部材19がPD固定板17に対して、図1の紙面上において回動可能とされている。さらに、第一リンク部材18の他端側と第二リンク部材19の他端側とは、支点P2において、支持部材27により連結されている。なお、第一リンク部材18と第二リンク部材19とは、支点P2を中心として相対的に回動できるように連結されている。
【0030】
また、本実施形態のSPR装置50としては、図2に示すように、LD固定板16とPD固定板17とのいずれかひとつを、照射点P1を中心として回動させる駆動機構として、モータ35を有する。このモータ35のモータ軸36は、その軸心O2がガラス基板11と金膜12との界面と同一平面上に位置し、さらに軸心O2が図1の照射点P1を通るように配置されている。さらに、図2に示すように、このモータ軸36とLD固定部材16とは固定されており、本実施形態の場合、モータ35はLD固定部材16を照射点P1を中心として回動するように駆動するものである。より具体的には、LD固定部材16に形成される円筒部16aがモータ軸36を覆い、円筒部16aの底部から固定部材34により、LD固定板16がモータ軸36に固定されている。そして、PD固定部材17に形成されている挿通孔17aにLD固定部材16の円筒部16aが挿通する形でPD固定部材17が位置決めされている。なお、LD固定板16とPD固定板17との間、及びPD固定板17と固定部材34との間には、スラスト軸受32、33が配置されており、PD固定板17は、LD固定板16とは独立して、照射点P1(モータ軸36の軸心O2)を中心に回動できるようになっている。
【0031】
また、本実施形態のSPR装置50においては、図2に示すように、流路プレート28に流通管路としての試料流通管路28cが形成されている。この試料流通管路28cは、その一部が金膜12側に露出するように形成されており、この試料流通管路28cを溶媒に混合された試料が流動することにより、金膜12に試料が接触して、試料に対して表面プラズモン共鳴測定を行うことができるようになっている。より具体的には、流路プレート28は、上側プレート28aと下側プレート28bとにより構成されており、試料流通管路28cの一部は、上側プレート28aに形成された溝部が下側プレート28bの表面と重ねあわされることにより形成されるようになっている。
【0032】
また、流路プレート28の下方には、該流路プレート28と接触する形態で、試料の温度を調節するための温度調節機が備えられている。
【0033】
また、本実施形態のSPR装置50においては、図2に示すように、流路部材としての流路プレート28に形成されている流通管路としての試料流通管路28cへの試料の流動を制御するバルブ機構を備える。このバルブ機構は、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブ38を有するものである。マイクロ流路用バルブ38により、試料流通管路28cに流動する試料を、表面プラズモン共鳴測定が行われる試料流通管路28cの試料検出領域に流動させたり、あるいは、該試料流通管路に試料が混合されていないバッファ液のみを流動させたりして、試料検出領域における試料の流動形態を切り替えることができる。
【0034】
以下、図4を用いて本実施形態の自己保持型マイクロ流路用バルブ38(以下、単にマイクロバルブ38とする)について、詳細に説明する。図4に示すように、本実施形態のマイクロバルブ38は、流路部材としての流路プレート28と、弁体としての押圧部材66と、押圧部材66に接続され、押圧部材66と連動して移動する軸69とを有する。さらに、押圧部材66と軸69とは弾性部材としてのバネ64により接続されている。
【0035】
押圧部材66と軸69との連結形態について具体的に説明する。押圧部材66は、二つのピン65を有し、この二つのピン65が板状部材61に接合され、この板状部材61のピン65とは反対側の表面の中央にシャフト67が取付けられている。そして、この円柱上のシャフト67に対応する形状の有底開口部63aが形成されているヘッド部63が、有底開口部63aにシャフト67を挿入する形で配置されている。さらに、ヘッド部63の有底開口部63aが形成されている表面は、シャフト67が取付けられている板状部材61の表面に対向するようになっており、この対向する表面同士が弾性部材としてのバネ64により接続されている。つまり、バネ64が伸縮する範囲内において、押圧部材66とヘッド部63とがシャフト67の軸方向に相対的に移動できるようになっている。さらに、ヘッド部63の下方には、棒状部材68が配置されている、この棒状部材68はその中心部が支点Sに固定されており、この支点Sを中心として回動できるようになっている。また、棒状部材68の一端側はヘッド部63の下端と連結しており、他端側は軸69の上端に連結されている。特に、棒状部材68が支点Sを中心として回動したとき、棒状部材68のそれぞれの端部に連結されている軸69とヘッド部63とがそれぞれ逆方向に移動するようになっている。
【0036】
さらに、軸69の下端側は、ソレノイドハウジング72内に挿入されている。このソレノイドハウジング72内には、軸69の下端側の外周を覆うソレノイド73が配置されている。また、ソレノイドハウジング72の底面には、軸69の下端を吸引する磁石71が配置されている。これらソレノイド73と磁石71は、固定部材70によりソレノイドハウジング72内に位置決めされている。このソレノイド73に電流を流すことにより、電磁力により、軸69が該軸69の軸方向(上下方向)に移動できるようになっている。
【0037】
流路プレート28は、上側プレート28aと、下側プレート28bとを有し、これら上側プレート28aと下側プレート28bとの間に挟まれる形態で薄膜としてのフィルム62が配置されている。上側プレート28aの下側プレート28b側の表面には溝部が形成されており、この溝部が形成されている上側プレート28bの表面に薄膜としてのフィルム62が当接されて、溝部とフィルム62とにより、流通通路としての試料流通管路28cが構成されている。このフィルム62は、本実施形態においては、ポリウレタンにより構成されており、ある程度の伸縮が許容されている。
【0038】
下側プレート28bとフィルム62とは、下側プレート28bの上側プレート28aと対向する表面において、脱着可能に当接されている。また、下側プレート28bには、フィルム62と接合する表面から反対側の表面に向かって貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔に、押圧部材66が、二つのピン65がフィルム側となるように収納されている。さらに、押圧部材66のシャフト67側は、下側プレート28bのフィルム62とは反対側の下面側に配置されるようになっており、このシャフト67が有底開口部63aに挿通されるヘッド部63が、下側プレート28bの下面から、露出する形態で配置されている。
【0039】
ピン65は、ソレノイド73による軸の移動により、フィルム62と上側プレート28aにより形成される試料流通管路28cに接近・離間するように移動することになる。ピン65が試料流通管路28cに接近するように移動する(図4では上方に移動する)と、ピン65により、フィルム62が試料流通管路28c側に押されて、最終的に、試料流通管路28cの壁部にフィルム62が押し付けられる形となり、試料流通管路28cが塞がれる。フィルム62が試料流通管路28cに押し付けられ、試料流通管路28cが閉状態となるときの弁体としての押圧部材66の位置を閉位置とする。一方、試料流通管路28cが塞がれている閉状態から、押圧部材66を試料流通管路28cから離間するように移動する(図4において下方に移動する)と、試料流通管路28cの壁部に押し付けられていたフィルム62が弾性復帰して、試料流通管路28cが開状態となる。フィルム62の弾性復帰が完全に回復して、試料流通管路28cが完全に開状態となるときの、弁体としての押圧部材66の位置を開位置とする。
【0040】
流路プレート28、特に上側プレート28aに形成されている試料流通管路28cは、少なくとも一端が上側プレート28aの上方に形成される開口部に連通している。この上側プレート28aの試料流通管路28cが連通する開口部には、チューブ74が接続されている。より具体的には、上側プレート28aの開口部が形成されている近傍には、開口部を中心とするネジ穴部78が形成されている。このネジ穴部78内には、上側プレート28aに形成されている開口部とチューブ74とをシールするシール部材79が配置されている。このシール部材79は、外径がネジ穴部78の内径とほとんど同じものであって、内径がチューブ74の外径とほとんど同じである。さらに、上側プレート28aの開口部と一端が連結しあうチューブ74は、シール部材79を介してネジ穴部78に挿通されている。そして、中心部に挿通孔75aが形成されているボルト75が、挿通孔75aにチューブ74を挿通する状態で、ネジ穴部78にねじ込まれている。ネジ穴部78内に配置されるシール部材79が、ボルト75により上側プレート28a側に押えつけられるとともに、ボルト75がネジ穴部78により締め付けられることにより、チューブ74とシール部材79とが位置決めされ、チューブ74と上側プレート28aの開口部がシールされることになる。
【0041】
以下、上記のような本実施形態のマイクロバルブ38の作動形態について説明する。図5は、弁体としての押圧部材66が試料流通管路28cを開状態とする開位置に位置するときの、マイクロバルブ38を示すものである。下側プレート28bの、押圧部材66が収納される挿通孔28dの内周面は、下側プレート28bの下面側が縮径する形態の階段状とされており、この階段状の部分が板状部材61が載置される保持台部28eとされている。押圧部材66が開位置に位置するとき、押圧部材66の板状部材61が保持台部28e上に載置されるようになっており、なんの操作もされないと、押圧部材66が開位置に位置する状態を常に維持できるようになっている。さらに、弁体としての押圧部材66とヘッド部63とを接続するバネ64は、自然長かあるいは若干収縮している状態である。板状部材61が保持台部28eに載置されているので、ヘッド部63は、下側プレート28bの下面よりも、比較的下方に位置するようになっている。そして、ヘッド部63が比較的下方に移動しているのに伴って、棒状部材68のヘッド部63と接続される一端側も下方に移動している。そのため、ヘッド部63側の一端が下方に移動していることにより、支点Sを中心に回動可能な棒状部材68の他端側は、比較的上方に移動している。そして、棒状部材68の他端側に接続される軸69も、比較的上方に移動している状態である。そのため、軸69の下端に配置されている磁石71と、軸69の下端部とが接触していない。
【0042】
上記のような押圧部材66が開位置に位置している状態で、ソレノイド73に電流を流すと、電流に起因する電磁力が軸69に働き、軸69が軸方向に移動することになる。そして、ソレノイド73に軸69を下方に移動させるような電流を流すと、軸69が下方に移動され、軸69の下端部が磁石に接近することになる。そして、図4に示すように、磁石71の磁力により軸69が吸引され軸69が位置決めされる。この状態で、ソレノイド73に流れる電流を停止しても、軸69を吸引する磁石71の磁力は変化しないので、軸69の下端部は磁石71に吸引され続けることになり、軸69の位置を保持することができる。
【0043】
上記のように、軸69がソレノイド73により下方に移動されると、軸69の上端部で連結する棒状部材68の他端部も下方に移動する。そのため、支点Sを中心に回動可能とされる棒状部材68のヘッド部63側の一端が上方に移動することになり、その結果ヘッド部63が上方に押し上げられる。これにより、ヘッド部63に接続される押圧部材66も上方に移動することになり、押圧部材66の二つのピン65が、フィルム62を試料流通管路28cに押し込まれて、試料流通管路28cを閉状態とする。このときの、弁体としての押圧部材66の位置を閉位置とする。
【0044】
本実施形態においては、試料流通管路28cの、流路プレート28の厚さ方向の幅が、例えば0.1mm以下とされ、弁体としての押圧部材66の閉位置と開位置との距離が極端に短い。一方、軸69の軸方向での移動距離は、弁体としての押圧部材66の移動距離(閉位置と開位置との距離)に比べて大きく設定されている。これは、軸69の移動距離が短い場合、弁体としての押圧部材66が閉位置あるいは開位置に位置するそれぞれで、軸69を位置決めするのが困難となるからである。つまり、弁体(押圧部材66)が閉位置のときに軸69を磁石71の磁力により吸引して軸69を位置決めする場合、軸69の移動距離が短いと、弁体が開状態となったときに、軸69の下端部が磁石71から離間しても、軸69が磁石71により吸引され続ける場合があり、ソレノイドの電流を停止すると弁体の開状態を維持できないことがあるからである。
【0045】
上記のように、本実施形態のマイクロバルブにおいては、弁体としての押圧部材66の移動距離と、軸69との移動距離との間に大きな差異があるが、この移動距離の差異は、押圧部材66と軸69とを接続するバネ64の弾性変形に吸収される。つまり、軸69の移動距離の過剰分が、バネ64の収縮量に含まれることになる。具体的には、フィルム62が試料流通管路28cの壁部まで押し込まれると、押圧部材66の上方への移動は停止するが、バネ64が収縮するので、ヘッド部63、ひいては軸69は上方への移動を継続することになる。
【0046】
このように、本実施形態のマイクロバルブ38によれば、試料流通管路28cを開閉する弁体(押圧部材66)の移動距離が、例えば0.1mmと小さくても、押圧部材66を移動させる軸69の移動距離を比較的大きく設定することができる。そのため、マイクロバルブにおいて、軸69の位置決めを磁石の磁力により行う自己保持機能を備えさせることができる。そのため、弁体の閉状態を維持するのに、常時電力を必要としないので、消費電力を低減することができる。
【0047】
さらに、バネ64により、押圧部材66の移動距離と軸69の移動距離との間に遊びを持たせることができるため、確実に安定した押圧力をフィルム62に付与することができる。
【0048】
以上、本発明のマイクロバルブの一例を図面を用いて説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、次のような形態を採用することもできる。図6は、本発明のマイクロバルブの図4とは異なる実施形態を示したものである。図6に示すマイクロバルブ80は、図4に示すマイクロバルブ38とは、ヘッド部83が軸88に直接連結されている点が異なる。つまり、軸88が上方に移動したときに、バネ84により軸88と接続された弁体としての押圧部材86が上方に移動するようになっている。
【0049】
以下、図6に示すマイクロバルブ80の構成について詳細に説明する。図4のマイクロバルブ38と同様の構成のものは同じ符号を用いるとともに、その説明を省略する。本実施形態のマイクロバルブ80において、下側プレート28bの下面には、ソレノイドハウジング92を保持するための固定部材96が設置されている。そして、下側プレート28bに収納されている弁体としての押圧部材86の直下に、ソレノイドハウジング92が配置されている。押圧部材86のシャフト87は、ヘッド部83に形成されている有底開口部83aに挿通されており、ヘッド部83が下側プレート28cの下面から露出する形態となっている。ヘッド部83の下面には、軸88の上端が接続されており、軸88の下端はソレノイドハウジング92内に配置されている。ソレノイドハウジング92内には、軸88を囲む形態でソレノイド93が配置されており、このソレノイド93の下方にはソレノイド93を固定する固定部材90が配置されている。さらに、軸88のソレノイド93に囲まれる領域には、フランジ88aが形成されている。また、ソレノイドハウジング92内の上面には、軸88のフランジ88aを吸引する磁石91が設置されている。
【0050】
以下、図6に示すマイクロバルブ80の作動形態について説明する。図7は、弁体としての押圧部材86が試料流通管路28cを開状態とする開位置に位置するときの、マイクロバルブ80を示すものである。下側プレート28bの、押圧部材86が収納される挿通孔28dの内周面は、下側プレート28bの下面側が縮径する形態の階段状とされており、この階段状の部分が板状部材81を載置する保持台部28eとされている。押圧部材86が開位置に位置するとき、押圧部材86の板状部材81が保持台部28e上に載置されるようになっており、なんの操作もされないと、押圧部材86が開位置に位置する状態を常に維持できるようになっている。また、板状部材81が保持台部28eに載置されている状態では、ヘッド部83は、下側プレート28bの下面よりも、比較的下方に位置するようになっている。そして、ヘッド部83が比較的下方に位置しているので、そのヘッド部83の下面に接続されている軸88も比較的下方に位置するようになっており、軸88のフランジ部88aも、比較的下方に位置するようになっている。そのため、ソレノイドハウジング92の内部上面に配置されている磁石91とフランジ部88aとが、ある程度の距離を保って位置している。このように、試料流通管路28cを弁体としての押圧部材86が塞いでいない状態、つまり押圧部材86が開状態となる、当該押圧部材86の位置を開位置としている。
【0051】
上記のように押圧部材86が開位置に位置している状態で、ソレノイド93に電流を流すと、電流に起因する電磁力が軸88に働き、軸88が軸方向に移動する。そして、ソレノイド93に軸88を上方に移動させるような電流を流すと、軸88が上方に移動され、軸88に形成されているフランジ部88aが磁石91に接近することになる。そして、図6に示すように、磁石91の磁力により軸88が吸引され軸88が位置決めされる。この状態で、ソレノイド93に流れる電流を停止しても、軸88を吸引する磁石91の磁力は変化しないので、軸88のフランジ部88aは磁石91に吸引され続けることになり、軸88の位置を保持することができる。
【0052】
上記のように、軸88がソレノイド93により上方に移動されると、軸88の上端部で連結するヘッド部83も上方に移動する。そして、このヘッド部83と押圧部材86とは弾性部材としてのバネ84により接続されているので、ヘッド部83に接続される押圧部材86も上方に移動することになる。押圧部材86が上方に移動すると、押圧部材86の二つのピン85が、フィルム62を試料流通管路28cに押し込むことになり、試料流通管路28cがフィルム62により塞がれる。このように、弁体としての押圧部材86が、試料流通管路28cを塞ぐように位置するときの、当該押圧部材86の位置を閉位置とする。
【0053】
図6、図7で示される本実施形態のマイクロバルブ80においても、図4、図5で示されるマイクロバルブ38と同様に、試料流通管路28cの、流路プレート28の厚さ方向の幅が、例えば0.1mm以下とされ、弁体としての押圧部材86の閉位置と開位置との距離が極端に短い。一方、軸88の軸方向での移動距離は、弁体としての押圧部材86の移動距離(閉位置と開位置との距離)に比べて大きく設定されている。このような弁体としての押圧部材86の移動距離と、軸88との移動距離との差異は、押圧部材86と軸88とを接続するバネ84の弾性変形に吸収される。つまり、軸88の移動距離の過剰分が、バネ84の収縮量に含まれることになる。具体的には、フィルム62が試料流通管路28cの壁部まで押し込まれると、押圧部材86の上方への移動は停止するが、バネ64が収縮するので、ヘッド部83、ひいては軸88は上方への移動を継続することになる。
【0054】
このように、本実施形態のマイクロバルブ80によれば、試料流通管路28cを開閉する弁体(押圧部材86)の移動距離が、例えば0.1mm以下と小さくても、押圧部材86を移動させる軸88の移動距離を比較的大きく設定することができる。そのため、マイクロバルブ80において、軸88の位置決めを磁石91の磁力により行う自己保持機能を付与することができる。ひいては、弁体の閉状態を維持するのに、常時電力を必要としないので、消費電力を低減することができる。
【0055】
さらに、バネ84により、押圧部材86の移動距離と軸88の移動距離との間に遊びを持たせることができるため、確実に安定した押圧力をフィルム62に付与することができる。
【0056】
図3は、本実施形態のSPR装置50における流路プレート28の流通管路としての試料流通管路の形態を模式的に示すものである。流路プレート28には、図3に示すように、複数本の試料流通管路28cが形成されており、バッファタンク102に充填されているバッファ液104をポンプ101によりくみ上げて、試料流通管路28cに供給するようになっている。さらに流路プレート28の試料流通管路28cの経路上には、試料流通管路28cに、試料としての抗原を供給するための試料供給口が設けられている。この試料供給口は、図4〜図7において説明したネジ穴部78により形成されるものである。このネジ穴部78には、図4〜図7において示したように、チューブ74が挿入されており、このチューブ74の他端に図3に示す抗原供給機器107を取り付け、抗原供給機器107に充填されている抗原106をチューブ74を介して試料流通管路28cを流れるバッファ液中に混入することができるようになっている。流路プレート28には、このような試料供給口が、試料流通管路28cの経路上に複数設けられている。そして、試料流通管路28cには、試料としての抗原を一時的に蓄えておく為の試料貯蔵流路105が設けられており、例えば図4のマイクロバルブ38のピン65により、試料流通管路28cの試料の流動をとめることで、試料貯蔵流路105に抗原が一時的に貯蔵されることになる。そして、前述したように、マイクロバルブ38を操作することにより、マイクロバルブ38を開状態として、試料としての抗原を試料流通管路28cの測定領域104に供給することができるようになっている。この測定領域104は、流路プレート28の金膜12と接触する側の表面に露出する形態で形成されており、この部分に入射光線を照射することにより、表面プラズモン共鳴測定ができるようになっている。そして、この流路プレート28と接触する金膜12の、測定領域104と対応する領域には、抗体が取り付けられており、抗原・抗体反応における試料の質量変化をリアルタイムにモニタすることができるようになっている。
【0057】
さらに、試料流路プレート28には、2本の独立した試料流通管路が形成されており、一方には、前述したように試料としての抗原が供給されるようになっており、他方には、端にバッファ液のみが供給されて、バッファ液のみの表面プラズモン共鳴測定が行われて、リファレンス測定を行うことができるようになっている。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、弁体と連結する軸が、該軸を囲むソレノイドに電流を流すことにより軸方向に移動可能であるとし、軸の一端側に磁石を配置するようにしているので、ソレノイドにより軸を磁石側に移動させ、磁石の磁力により軸を吸引することで、軸を位置決めすることができる。そのため、軸が位置決めされた後、ソレノイドに流れる電流を停止しても、軸は磁石に吸引され続けるので、自己保持型のマイクロバルブを実現することができる。さらに、弁体と軸とを弾性部材を介して接続するようにしているので、流体の流通管路を開閉する弁体の、流通管路の開閉を切り替えるときの移動距離が小さいマイクロ流路用バルブにも、上記の自己保持機能を付与することが可能となる。つまり、弁体の移動距離と、軸の移動距離との間に大きな差異があっても、この移動距離の差異が弾性部材の弾性変形に包含されることになるので、弁体の移動距離に比べて軸の移動距離を大きく設定することができる。したがって、軸を磁石の磁力により吸引して位置決めする場合に、確実に軸の位置決めを行うことができ、マイクロ流路用バルブのように、弁体の移動距離が小さいバルブでも自己保持機能を付与することができるのである。そのため、低消費電力のマイクロバルブを提供することができる。
【0059】
さらに、上記のような自己保持型マイクロ流路用バルブを使用する本発明の光学バイオセンサ装置は、試料が流動する流通管路の開閉を制御するバルブの切換を、低い消費電力で行うことができるとともに、弁体を移動させるアクチュエータ等に熱が生じることもないので、例えば、生体物質が加熱されて、精密な検出・測定が行えない等の装置上のトラブルも起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学バイオセンサ装置の一例を示す概略図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】流路プレートにおける試料流通管路の形態を説明する図。
【図4】本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブの一例を示す図。
【図5】図4に示す自己保持型マイクロ流路用バルブの作動形態を、図4とともに説明する図。
【図6】本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブの図4とは異なる一例を示す図。
【図7】図6に示す自己保持型マイクロ流路用バルブの作動形態を、図6とともに説明する図。
【符号の説明】
14 発光素子(光供給手段)
15 受光素子(検出手段)
28 流路プレート(流路部材)
28c 試料流通管路(流通管路)
38、80 マイクロバルブ(自己保持型マイクロ流路用バルブ)
50 表面プラズモン共鳴測定装置(光学バイオセンサ装置)
62 フィルム
64、84 バネ(弾性部材)
66、86 押圧部材(弁体)
69、88 軸
73、93 ソレノイド
71、91 磁石
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己保持型マイクロ流路用バルブ及びそれを用いた光学バイオセンサ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体物質を分離・分析する場合、極微量の試料を高速で測定できるようにすることが要求される。しかしながら、液体状の試料を分離・分析する場合、試料を供給するバルブやポンプが大型であると、測定試料が一定量以上必要となったり、測定時間が長くなるなどの不具合がある。そのため、例えばシリコン基板上に、微小な流路溝を設けて、この流路溝にマイクロポンプやマイクロバルブを形成して、極微量の試料を高速で測定できるようにした技術が例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、シリコン基板と、該シリコン基板に形成されている液体の流路導出穴を覆う形態で配置されているシリコンゴムシートと、このシリコンゴムシートを流路導出穴に押圧して、流路導出穴を塞ぐアクチュエータを有するマイクロバルブが開示されている。アクチュエータとしては、具体的に圧電素子を採用している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、圧電効果を利用して、圧電素子の変形により流路導出穴を塞ぐ方法を採用すると、圧電素子に電流を流し続けない限り、流路導出穴の閉状態を維持できない。そのため、消費電力が多くなったり、圧電素子が加熱されるという問題がある。このようなマイクロバルブを、生体物質等の試料を液体とともにマイクロ流路に流動させて、該試料を検出・測定するような光学バイオセンサ装置に使用すると、圧電素子等のバルブ機構が加熱して、試料の温度が変動するため、精度のよい検出・測定が行えない場合がある。
【0005】
このように、アクチュエータに電流を流し続けることで、バルブの開状態あるいは閉状態を保持するようなマイクロバルブは、下記特許文献2にも開示されている。さらに、特許文献2には、弁体にガス圧を働かせて弁体を移動させる技術も開示されているが、ガス圧により、弁体を移動させようとすると、ガスを供給するための配管を取付けなければならず、バルブ全体の機構が大型となる問題がある。
【0006】
一方、通常のバルブとしては、下記特許文献3に開示されているような、自己保持型のバルブがある。特許文献3に開示されているバルブは、軸心方向に往復動可能な軸と、この軸に連結されている弁体とを有し、軸の往復動により、弁体が流体の流路を開閉するようになっている。さらに、この軸の軸方向に、所定の間隔をあけて並べられた3個の固定磁極と、この3個の固定磁極をN−S−N及びS−N−Sと励磁する磁化ソレノイドとを有し、さらに、軸には軸方向にS−Nと磁化された永久磁石が取付けられている。このような自己保持型のバルブによれば、固定磁極の磁性をN−S−Nとしたときに、3個の固定磁極のうちN−Sとなっている固定磁極の間に永久磁石が安定して配置される。一方固定磁極の磁性をS−N−Sとしたときには、3個の固定磁極のうちS−Nとなっている固定磁極間に永久磁石が安定して配置される。そのため、励磁ソレノイドに電流を流すことにより、固定磁極の磁性を切り替えることで、永久磁石と接続された軸が軸方向に往復動することができるようになっている。さらに、励磁ソレノイドに電流を流し、固定磁極の磁性を切り替えて、軸を移動させた後に、励磁ソレノイドに流れる電流を切っても、固定磁極と永久磁石との吸引力により、軸の位置は保持されることになる。そのため、バルブの開閉を切り替えるときのみ励磁ソレノイドに電流を流せばよいので、低消費電力を実現することができる。
【0007】
【特許文献1】
特許第2912372号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2002−228033号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平5−087267号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、特許文献1や特許文献2に開示されているようなマイクロバルブにおいて、消費電力の低減を目的として、特許文献3に開示されているような自己保持型のバルブを採用しようとすると、以下のような問題がある。つまり、マイクロバルブのように、弁体やこの弁体を移動させる軸の移動距離が短いバルブに、特許文献3のような磁力により弁体(軸)を位置決めする自己保持機能を付与すると、弁の開状態と閉状態とで、弁体(軸)を位置決めするのが困難となる。そのため、弁体に押圧力を加えて閉状態とし流路を塞ぐようなバルブの場合に、弁体に安定した押圧力を働かせることができないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、弁の開閉状態を少ない電力で切り替えることが可能であり、かつ、開状態と閉状態とにおける弁体の移動距離が小さいようなマイクロバルブにおいても、安定的に弁体に押圧力を与えることができる自己保持型マイクロ流路用バルブを提供することを課題とする。また、低い消費電力でバルブの開閉を切り替えることができるとともに、試料の検出・測定を精度よく行うことができる光学バイオセンサ装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記課題を解決するために本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、流体の流通管路を塞いだり、連通させたりする弁体の移動距離が、例えば0.1mm以下となるようなマイクロ流路用バルブ(以下、マイクロバルブともいう)において、弁体が閉状態となる位置(閉位置)と開状態となる位置(開位置)とで移動可能とする軸の位置決めを、自己保持型としたことに特徴がある。そして、マイクロバルブの弁体の位置決めを自己保持型とする場合の従来の問題点を以下のような構成により解決したことを特徴とする。つまり、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、流体が流通する流通管路が形成されている流路部材と、前記流通管路を閉状態とする閉位置と前記流通管路を開状態とする開位置との間で移動可能とされる弁体と、前記弁体に連結され、軸心の方向に往復動する軸と、前記軸の外周を囲む形態で配置されるソレノイドと、前記軸の一端側に配置され、前記弁体が前記閉位置あるいは前記開位置の少なくともいずれかに位置するときに、前記軸を吸引して位置決めする磁石と、を有し、前記軸は、前記弁体と弾性部材を介して接続されていることを特徴とする。
【0013】
上記のような自己保持型マイクロバルブにおいては、弁体と軸とが連結され、前記ソレノイドに電流を流し、軸を、当該軸の軸方向に移動させることにより、弁体の開閉状態を切り替えることができる。さらに、弁体が開状態となる開位置と、閉状態となる閉位置とのいずれかに位置するときに、軸を吸引して位置決めする磁石を有するので、ソレノイドに常時電流を流しておかなくても、磁石に軸の少なくとも一端が吸引され、弁体の閉状態あるいは開状態を維持することができる。そのため、弁体の開状態と閉状態との切り替えを、低い消費電力で行うことができる。なお、本明細書において、弁体と軸とが連結されているとは、弁体と軸とが結合して一体となることを含むものであるが、それ以外に、弁体と軸とが単に当接しており、互いが連動して移動するものも指すものとする。
【0014】
また、本発明の特徴は、弁体と軸とを弾性部材を介して接続したことにもある。このように、弁体と軸とを弾性部材を介して接続することにより、弁体を開状態と閉状態との間で、その状態を切り替える際に、弁体と連結する軸の移動距離を、閉状態の位置(閉位置)と開状態の位置(開位置)との間で弁体が移動する距離に対して長くしても、弁体の移動距離に対する軸の移動距離の過剰分が弾性部材の伸長・収縮により緩衝されることになる。そのため、マイクロ流路用バルブの場合に弁体の閉位置と開位置との間の距離が、例えば0.1mm以下となるような微小な距離であっても、軸の移動距離を長くすることができ、軸の一端側に配置される磁石による軸の位置決めを、確実に行うことができる。本発明は、このように弁体の開閉を切り替える際の当該弁体の移動距離が極端に少ないマイクロバルブにおいて、特に顕著な効果を奏する。なお、ガス圧を利用して弁体の閉状態と開状態とを切り替えるような場合のように、ガス配管等を設ける必要がないので、例えば生態物質等の検出・測定を行う光学バイオセンサ装置に組み付けても、装置が大型化しない。
【0015】
さらに、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブにおいては、前記流路部材は、表面に流路溝が形成されている流路プレートと、該流路プレートの前記流路溝が形成されている表面に当接される薄膜とを有し、前記流路溝が前記薄膜に覆われて前記流通管路が形成されているのがよい。
【0016】
このような流路部材によれば、流路プレートの表面に流路溝を形成し、薄膜を流路プレートの流路溝が形成されている側の表面に当接することで、薄膜の表面と流路溝により流通管路を容易に形成することができる。
【0017】
さらに、上記のような流路部材を採用する場合、前記弁体は、前記薄膜の前記流路溝とは反対側で、前記流通管路が形成されている領域に配置されており、前記流通管路に前記薄膜を押し込むように、前記流通管路に対して接近して、前記閉位置に移動するものであるとすることができる。
【0018】
さらに、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブにおいては、前記磁石は、前記弁体が前記閉位置に位置するときに、前記軸と接触するように配置されており、前記閉位置に前記弁体を保持するものであるとすることができる。
【0019】
さらに、本発明は、上記のような自己保持型マイクロ流路用バルブを用いた光学バイオセンサを提供する。すなわち、本発明の光学バイオセンサ装置は、液体状の試料が流通する流通管路を有する流路部材と、前記流路部材を開閉するバルブと、前記流通管路を流動する試料に対して測定光を照射する光供給手段と、前記測定光に対する試料の光学応答を検出する検出手段とを、有する光学バイオセンサ装置において、前記バルブは、前記流通管路を閉状態とする閉位置と前記流通管路を開状態とする開位置との間で移動可能とされる弁体と、前記弁体に連結され、軸心の方向に往復動する軸と、前記軸の外周を囲む形態で配置されるソレノイドと、前記軸の一端側に配置され、前記弁体が前記閉位置あるいは前記開位置の少なくともいずれかに位置するときに、前記軸を吸引する磁石と、を備え、かつ、前記軸は、前記弁体と弾性部材を介して接続されている自己保持型マイクロ流路用バルブであることを特徴とする。
【0020】
液体状の試料をサンプルとして測定を行う光学バイオセンサ装置においては、流路部材の流通管路を流動する試料を流通管路に流動させたり、流通管路を塞いだりするバルブが必要となるが、本発明の光学バイオセンサ装置は、この流通管路の開閉状態を制御するバルブとして、前述した本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブを採用したことが特徴である。
【0021】
前述した本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、前記ソレノイドに電流を流すことで、該ソレノイドに囲まれた軸を、軸方向に移動させることができ、そして、この軸に接続されている弁体を移動させることができる。そして、弁体を、流通管路を開状態とする開位置と流通管路を閉状態とする閉位置との間で移動可能としておき、ソレノイドによる軸の移動により、弁体が流通管路を開閉するようになっている。さらに、軸の一端側には、弁体が開状態となる開位置と、閉状態となる閉位置との少なくともいずれかに弁体が位置するときに、軸を吸引して位置決めするための磁石が配置されているので、一端弁体が閉位置あるいは開位置に移動すれば、ソレノイドに電流を流さなくても軸が位置決めされ、弁体を閉位置あるいは開位置に保持することができる。そのため、圧電素子により弁体を移動させるような従来のマイクロ流路用バルブとは異なり、消費電力を大幅に削減することができる。さらに、弁体と軸とは弾性部材を介して連結されているため、ソレノイドによる軸の移動距離を比較的大きくしても、軸の移動距離の過剰分が弾性部材の伸縮により緩衝されることになり、弁体の閉位置と開位置との距離が短いマイクロ流路用バルブでも、確実に安定した弁体の開閉を行うことができるのである。ソレノイドによる軸の移動距離を大きくすることで、軸の一端側に配置される磁石による軸の位置決めを確実に行うことができるようになり、自己保持型バルブとしての機能を果たすことができる。
【0022】
このような、自己保持型マイクロ流路用バルブを用いた光学バイオセンサ装置は、バルブの切換を安定して行うことができるとともに、電力の消費も少なく、そのため弁体を移動させるアクチュエータが加熱されにくいので、例えば、生体物質等の試料が加熱されて、精密な測定が行えないという装置上のトラブルも起こりにくい。
【0023】
また、本発明の光学バイオセンサ装置においては、ガス圧等を利用しなくても、弁体の開閉状態を精度よく切り替えることができるので、配管等の容積が嵩張る部材を配置する必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態の自己保持型マイクロ流路用バルブは、特に光学バイオセンサ装置に採用されるものである。図1は、本発明の自己保持型マイクロ流路バルブを用いた本発明の光学バイオセンサ装置を示すものである。図1に示す光学バイオセンサ装置は、特に表面プラズモン共鳴測定装置50(以下、SPR装置とする50)である。図1は、SPR装置50の概略を示す模式図である。また、図2は、図1のSPR装置50のA−A断面図である。図2は断面図であるが、図面の見易さを優先して装置の説明上必要のないものにはハッチングをしていない。また、説明上不要と思われるものは削除しているものもある。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のSPR装置50は、透明基板としてのガラス基板11の第一主表面に金属膜としての金膜12が形成されてなるセンサチップ10と、該センサチップ10の金膜12側に試料を接触させるために、試料を流すための流路プレート28と、ガラス基板11と同一の屈折率であり、ガラス基板11の、金膜12が形成されている第一主表面とは反対側の第二主表面側に配備されるプリズム13と、光供給手段としての発光素子14(以下LD14とする)と、検出手段としてのフォトデテクタ15(以下PD15とする)と、を有する。LD14からは測定光としての入射光線がプリズム13を介してガラス基板11の金膜12側に照射されるようになっており、入射光線は金膜12とガラス基板11との界面において反射され、その反射光線をPD15により検出するようになっている。また、金膜12のガラス基板11と反対側の表面には、測定用の試料が接触するようになっており、本実施形態における検出面とされている。以下、金膜12のガラス基板11とは反対側の表面を表面プラズモン検出面(SP検出面46)とする。図1中のL1は入射光線の経路を示し、L2は反射光線の経路を示す。入射光線は経路L1を通り、ガラス基板11と金膜12との界面近傍において反射され、反射光線は経路L2を通りPD15の受光面に照射される。なお、センサチップ10への入射光線以外の光は、遮光手段としてのカバー31により遮断されている。
【0026】
このように、センサチップ10のガラス基板11と金膜12との界面で全反射するように、LD14から入射光線を照射すると、金膜12側にエバネッセント波と呼ばれるエネルギー波が生じる。エバネッセント波では、金膜12の自由電子がプラズモンの共鳴に使われるため、反射光線の特定の角度に、エネルギーの消失がみられ、反射光線の強度を測定すると、ある特定の角度で反射光線の強度が減衰するのが認められる。この光学現象がSPR(表面プラズモン共鳴)である。
【0027】
反射光線の消失角度は、金膜12の試料と接触する側の表面近傍における、試料の屈折率に依存して変化する。SPR装置50では、この現象を利用して、2分子の結合・解離を測定する。具体的には、金膜12のガラス基板11とは反対側の表面に形成した自己組織化膜に抗体を固定し、この抗体が固定された領域に、この抗体が特異的に認識する抗原TGを含む試料を、流路プレート28の試料流通管路を介して流動させる。そして、特異的抗体・抗原反応により、センサチップ10の表面の質量が増加し、その結果として、センサチップ10の表面の屈折率が増加する。この屈折率の変化に応じて、反射光線の強度が減衰する入射光線の角度は変化するが、この入射角度の径時変化をセンサグラムと呼ぶグラフとして表示することにより、センサチップ10の表面での分子の相互作用をリアルタイムにモニタすることができる。
【0028】
また、LD14は、LD14からの入射光線が、ガラスセンサ11の金膜12近傍に照射されるように、LD固定板16に固定されており、PD15は、前記SP検出面46からの反射光線を検出できるように、SP検出面46の照射点P1を向くように、PD固定板17に固定されている。また、図1に示すように、LD固定部材16には、LD保持台24が固定されており、このLD保持台24に固定されるLD収納ケース44にLD14と、スプリッタ20と、偏向板21と、ピンホール22とが収納されている。これらLD14、スプリッタ20、偏向板21、ピンホール22はLD収納ケース44に位置固定されている。一方、PD固定板17には、PD保持台25が固定されており、このPD保持台25に固定されるPD収納ケース45にPD15と、ピンホール23とが収納されている。これらPD15とピンホール23とはPD収納ケース45に位置固定されている。
【0029】
また、LD固定板16には、第一支持点P3において、第一リンク部材18の一端側が支持部材30により取付けられており、第一支持点P3を中心として、第一リンク部材18がLD固定板16に対して回動可能とされている。また、PD固定板17には、第二支持点P4において、第二リンク部材19の一端側が支持部材29により取付けられており、第二支持点P4を中心として第二リンク部材19がPD固定板17に対して、図1の紙面上において回動可能とされている。さらに、第一リンク部材18の他端側と第二リンク部材19の他端側とは、支点P2において、支持部材27により連結されている。なお、第一リンク部材18と第二リンク部材19とは、支点P2を中心として相対的に回動できるように連結されている。
【0030】
また、本実施形態のSPR装置50としては、図2に示すように、LD固定板16とPD固定板17とのいずれかひとつを、照射点P1を中心として回動させる駆動機構として、モータ35を有する。このモータ35のモータ軸36は、その軸心O2がガラス基板11と金膜12との界面と同一平面上に位置し、さらに軸心O2が図1の照射点P1を通るように配置されている。さらに、図2に示すように、このモータ軸36とLD固定部材16とは固定されており、本実施形態の場合、モータ35はLD固定部材16を照射点P1を中心として回動するように駆動するものである。より具体的には、LD固定部材16に形成される円筒部16aがモータ軸36を覆い、円筒部16aの底部から固定部材34により、LD固定板16がモータ軸36に固定されている。そして、PD固定部材17に形成されている挿通孔17aにLD固定部材16の円筒部16aが挿通する形でPD固定部材17が位置決めされている。なお、LD固定板16とPD固定板17との間、及びPD固定板17と固定部材34との間には、スラスト軸受32、33が配置されており、PD固定板17は、LD固定板16とは独立して、照射点P1(モータ軸36の軸心O2)を中心に回動できるようになっている。
【0031】
また、本実施形態のSPR装置50においては、図2に示すように、流路プレート28に流通管路としての試料流通管路28cが形成されている。この試料流通管路28cは、その一部が金膜12側に露出するように形成されており、この試料流通管路28cを溶媒に混合された試料が流動することにより、金膜12に試料が接触して、試料に対して表面プラズモン共鳴測定を行うことができるようになっている。より具体的には、流路プレート28は、上側プレート28aと下側プレート28bとにより構成されており、試料流通管路28cの一部は、上側プレート28aに形成された溝部が下側プレート28bの表面と重ねあわされることにより形成されるようになっている。
【0032】
また、流路プレート28の下方には、該流路プレート28と接触する形態で、試料の温度を調節するための温度調節機が備えられている。
【0033】
また、本実施形態のSPR装置50においては、図2に示すように、流路部材としての流路プレート28に形成されている流通管路としての試料流通管路28cへの試料の流動を制御するバルブ機構を備える。このバルブ機構は、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブ38を有するものである。マイクロ流路用バルブ38により、試料流通管路28cに流動する試料を、表面プラズモン共鳴測定が行われる試料流通管路28cの試料検出領域に流動させたり、あるいは、該試料流通管路に試料が混合されていないバッファ液のみを流動させたりして、試料検出領域における試料の流動形態を切り替えることができる。
【0034】
以下、図4を用いて本実施形態の自己保持型マイクロ流路用バルブ38(以下、単にマイクロバルブ38とする)について、詳細に説明する。図4に示すように、本実施形態のマイクロバルブ38は、流路部材としての流路プレート28と、弁体としての押圧部材66と、押圧部材66に接続され、押圧部材66と連動して移動する軸69とを有する。さらに、押圧部材66と軸69とは弾性部材としてのバネ64により接続されている。
【0035】
押圧部材66と軸69との連結形態について具体的に説明する。押圧部材66は、二つのピン65を有し、この二つのピン65が板状部材61に接合され、この板状部材61のピン65とは反対側の表面の中央にシャフト67が取付けられている。そして、この円柱上のシャフト67に対応する形状の有底開口部63aが形成されているヘッド部63が、有底開口部63aにシャフト67を挿入する形で配置されている。さらに、ヘッド部63の有底開口部63aが形成されている表面は、シャフト67が取付けられている板状部材61の表面に対向するようになっており、この対向する表面同士が弾性部材としてのバネ64により接続されている。つまり、バネ64が伸縮する範囲内において、押圧部材66とヘッド部63とがシャフト67の軸方向に相対的に移動できるようになっている。さらに、ヘッド部63の下方には、棒状部材68が配置されている、この棒状部材68はその中心部が支点Sに固定されており、この支点Sを中心として回動できるようになっている。また、棒状部材68の一端側はヘッド部63の下端と連結しており、他端側は軸69の上端に連結されている。特に、棒状部材68が支点Sを中心として回動したとき、棒状部材68のそれぞれの端部に連結されている軸69とヘッド部63とがそれぞれ逆方向に移動するようになっている。
【0036】
さらに、軸69の下端側は、ソレノイドハウジング72内に挿入されている。このソレノイドハウジング72内には、軸69の下端側の外周を覆うソレノイド73が配置されている。また、ソレノイドハウジング72の底面には、軸69の下端を吸引する磁石71が配置されている。これらソレノイド73と磁石71は、固定部材70によりソレノイドハウジング72内に位置決めされている。このソレノイド73に電流を流すことにより、電磁力により、軸69が該軸69の軸方向(上下方向)に移動できるようになっている。
【0037】
流路プレート28は、上側プレート28aと、下側プレート28bとを有し、これら上側プレート28aと下側プレート28bとの間に挟まれる形態で薄膜としてのフィルム62が配置されている。上側プレート28aの下側プレート28b側の表面には溝部が形成されており、この溝部が形成されている上側プレート28bの表面に薄膜としてのフィルム62が当接されて、溝部とフィルム62とにより、流通通路としての試料流通管路28cが構成されている。このフィルム62は、本実施形態においては、ポリウレタンにより構成されており、ある程度の伸縮が許容されている。
【0038】
下側プレート28bとフィルム62とは、下側プレート28bの上側プレート28aと対向する表面において、脱着可能に当接されている。また、下側プレート28bには、フィルム62と接合する表面から反対側の表面に向かって貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔に、押圧部材66が、二つのピン65がフィルム側となるように収納されている。さらに、押圧部材66のシャフト67側は、下側プレート28bのフィルム62とは反対側の下面側に配置されるようになっており、このシャフト67が有底開口部63aに挿通されるヘッド部63が、下側プレート28bの下面から、露出する形態で配置されている。
【0039】
ピン65は、ソレノイド73による軸の移動により、フィルム62と上側プレート28aにより形成される試料流通管路28cに接近・離間するように移動することになる。ピン65が試料流通管路28cに接近するように移動する(図4では上方に移動する)と、ピン65により、フィルム62が試料流通管路28c側に押されて、最終的に、試料流通管路28cの壁部にフィルム62が押し付けられる形となり、試料流通管路28cが塞がれる。フィルム62が試料流通管路28cに押し付けられ、試料流通管路28cが閉状態となるときの弁体としての押圧部材66の位置を閉位置とする。一方、試料流通管路28cが塞がれている閉状態から、押圧部材66を試料流通管路28cから離間するように移動する(図4において下方に移動する)と、試料流通管路28cの壁部に押し付けられていたフィルム62が弾性復帰して、試料流通管路28cが開状態となる。フィルム62の弾性復帰が完全に回復して、試料流通管路28cが完全に開状態となるときの、弁体としての押圧部材66の位置を開位置とする。
【0040】
流路プレート28、特に上側プレート28aに形成されている試料流通管路28cは、少なくとも一端が上側プレート28aの上方に形成される開口部に連通している。この上側プレート28aの試料流通管路28cが連通する開口部には、チューブ74が接続されている。より具体的には、上側プレート28aの開口部が形成されている近傍には、開口部を中心とするネジ穴部78が形成されている。このネジ穴部78内には、上側プレート28aに形成されている開口部とチューブ74とをシールするシール部材79が配置されている。このシール部材79は、外径がネジ穴部78の内径とほとんど同じものであって、内径がチューブ74の外径とほとんど同じである。さらに、上側プレート28aの開口部と一端が連結しあうチューブ74は、シール部材79を介してネジ穴部78に挿通されている。そして、中心部に挿通孔75aが形成されているボルト75が、挿通孔75aにチューブ74を挿通する状態で、ネジ穴部78にねじ込まれている。ネジ穴部78内に配置されるシール部材79が、ボルト75により上側プレート28a側に押えつけられるとともに、ボルト75がネジ穴部78により締め付けられることにより、チューブ74とシール部材79とが位置決めされ、チューブ74と上側プレート28aの開口部がシールされることになる。
【0041】
以下、上記のような本実施形態のマイクロバルブ38の作動形態について説明する。図5は、弁体としての押圧部材66が試料流通管路28cを開状態とする開位置に位置するときの、マイクロバルブ38を示すものである。下側プレート28bの、押圧部材66が収納される挿通孔28dの内周面は、下側プレート28bの下面側が縮径する形態の階段状とされており、この階段状の部分が板状部材61が載置される保持台部28eとされている。押圧部材66が開位置に位置するとき、押圧部材66の板状部材61が保持台部28e上に載置されるようになっており、なんの操作もされないと、押圧部材66が開位置に位置する状態を常に維持できるようになっている。さらに、弁体としての押圧部材66とヘッド部63とを接続するバネ64は、自然長かあるいは若干収縮している状態である。板状部材61が保持台部28eに載置されているので、ヘッド部63は、下側プレート28bの下面よりも、比較的下方に位置するようになっている。そして、ヘッド部63が比較的下方に移動しているのに伴って、棒状部材68のヘッド部63と接続される一端側も下方に移動している。そのため、ヘッド部63側の一端が下方に移動していることにより、支点Sを中心に回動可能な棒状部材68の他端側は、比較的上方に移動している。そして、棒状部材68の他端側に接続される軸69も、比較的上方に移動している状態である。そのため、軸69の下端に配置されている磁石71と、軸69の下端部とが接触していない。
【0042】
上記のような押圧部材66が開位置に位置している状態で、ソレノイド73に電流を流すと、電流に起因する電磁力が軸69に働き、軸69が軸方向に移動することになる。そして、ソレノイド73に軸69を下方に移動させるような電流を流すと、軸69が下方に移動され、軸69の下端部が磁石に接近することになる。そして、図4に示すように、磁石71の磁力により軸69が吸引され軸69が位置決めされる。この状態で、ソレノイド73に流れる電流を停止しても、軸69を吸引する磁石71の磁力は変化しないので、軸69の下端部は磁石71に吸引され続けることになり、軸69の位置を保持することができる。
【0043】
上記のように、軸69がソレノイド73により下方に移動されると、軸69の上端部で連結する棒状部材68の他端部も下方に移動する。そのため、支点Sを中心に回動可能とされる棒状部材68のヘッド部63側の一端が上方に移動することになり、その結果ヘッド部63が上方に押し上げられる。これにより、ヘッド部63に接続される押圧部材66も上方に移動することになり、押圧部材66の二つのピン65が、フィルム62を試料流通管路28cに押し込まれて、試料流通管路28cを閉状態とする。このときの、弁体としての押圧部材66の位置を閉位置とする。
【0044】
本実施形態においては、試料流通管路28cの、流路プレート28の厚さ方向の幅が、例えば0.1mm以下とされ、弁体としての押圧部材66の閉位置と開位置との距離が極端に短い。一方、軸69の軸方向での移動距離は、弁体としての押圧部材66の移動距離(閉位置と開位置との距離)に比べて大きく設定されている。これは、軸69の移動距離が短い場合、弁体としての押圧部材66が閉位置あるいは開位置に位置するそれぞれで、軸69を位置決めするのが困難となるからである。つまり、弁体(押圧部材66)が閉位置のときに軸69を磁石71の磁力により吸引して軸69を位置決めする場合、軸69の移動距離が短いと、弁体が開状態となったときに、軸69の下端部が磁石71から離間しても、軸69が磁石71により吸引され続ける場合があり、ソレノイドの電流を停止すると弁体の開状態を維持できないことがあるからである。
【0045】
上記のように、本実施形態のマイクロバルブにおいては、弁体としての押圧部材66の移動距離と、軸69との移動距離との間に大きな差異があるが、この移動距離の差異は、押圧部材66と軸69とを接続するバネ64の弾性変形に吸収される。つまり、軸69の移動距離の過剰分が、バネ64の収縮量に含まれることになる。具体的には、フィルム62が試料流通管路28cの壁部まで押し込まれると、押圧部材66の上方への移動は停止するが、バネ64が収縮するので、ヘッド部63、ひいては軸69は上方への移動を継続することになる。
【0046】
このように、本実施形態のマイクロバルブ38によれば、試料流通管路28cを開閉する弁体(押圧部材66)の移動距離が、例えば0.1mmと小さくても、押圧部材66を移動させる軸69の移動距離を比較的大きく設定することができる。そのため、マイクロバルブにおいて、軸69の位置決めを磁石の磁力により行う自己保持機能を備えさせることができる。そのため、弁体の閉状態を維持するのに、常時電力を必要としないので、消費電力を低減することができる。
【0047】
さらに、バネ64により、押圧部材66の移動距離と軸69の移動距離との間に遊びを持たせることができるため、確実に安定した押圧力をフィルム62に付与することができる。
【0048】
以上、本発明のマイクロバルブの一例を図面を用いて説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、次のような形態を採用することもできる。図6は、本発明のマイクロバルブの図4とは異なる実施形態を示したものである。図6に示すマイクロバルブ80は、図4に示すマイクロバルブ38とは、ヘッド部83が軸88に直接連結されている点が異なる。つまり、軸88が上方に移動したときに、バネ84により軸88と接続された弁体としての押圧部材86が上方に移動するようになっている。
【0049】
以下、図6に示すマイクロバルブ80の構成について詳細に説明する。図4のマイクロバルブ38と同様の構成のものは同じ符号を用いるとともに、その説明を省略する。本実施形態のマイクロバルブ80において、下側プレート28bの下面には、ソレノイドハウジング92を保持するための固定部材96が設置されている。そして、下側プレート28bに収納されている弁体としての押圧部材86の直下に、ソレノイドハウジング92が配置されている。押圧部材86のシャフト87は、ヘッド部83に形成されている有底開口部83aに挿通されており、ヘッド部83が下側プレート28cの下面から露出する形態となっている。ヘッド部83の下面には、軸88の上端が接続されており、軸88の下端はソレノイドハウジング92内に配置されている。ソレノイドハウジング92内には、軸88を囲む形態でソレノイド93が配置されており、このソレノイド93の下方にはソレノイド93を固定する固定部材90が配置されている。さらに、軸88のソレノイド93に囲まれる領域には、フランジ88aが形成されている。また、ソレノイドハウジング92内の上面には、軸88のフランジ88aを吸引する磁石91が設置されている。
【0050】
以下、図6に示すマイクロバルブ80の作動形態について説明する。図7は、弁体としての押圧部材86が試料流通管路28cを開状態とする開位置に位置するときの、マイクロバルブ80を示すものである。下側プレート28bの、押圧部材86が収納される挿通孔28dの内周面は、下側プレート28bの下面側が縮径する形態の階段状とされており、この階段状の部分が板状部材81を載置する保持台部28eとされている。押圧部材86が開位置に位置するとき、押圧部材86の板状部材81が保持台部28e上に載置されるようになっており、なんの操作もされないと、押圧部材86が開位置に位置する状態を常に維持できるようになっている。また、板状部材81が保持台部28eに載置されている状態では、ヘッド部83は、下側プレート28bの下面よりも、比較的下方に位置するようになっている。そして、ヘッド部83が比較的下方に位置しているので、そのヘッド部83の下面に接続されている軸88も比較的下方に位置するようになっており、軸88のフランジ部88aも、比較的下方に位置するようになっている。そのため、ソレノイドハウジング92の内部上面に配置されている磁石91とフランジ部88aとが、ある程度の距離を保って位置している。このように、試料流通管路28cを弁体としての押圧部材86が塞いでいない状態、つまり押圧部材86が開状態となる、当該押圧部材86の位置を開位置としている。
【0051】
上記のように押圧部材86が開位置に位置している状態で、ソレノイド93に電流を流すと、電流に起因する電磁力が軸88に働き、軸88が軸方向に移動する。そして、ソレノイド93に軸88を上方に移動させるような電流を流すと、軸88が上方に移動され、軸88に形成されているフランジ部88aが磁石91に接近することになる。そして、図6に示すように、磁石91の磁力により軸88が吸引され軸88が位置決めされる。この状態で、ソレノイド93に流れる電流を停止しても、軸88を吸引する磁石91の磁力は変化しないので、軸88のフランジ部88aは磁石91に吸引され続けることになり、軸88の位置を保持することができる。
【0052】
上記のように、軸88がソレノイド93により上方に移動されると、軸88の上端部で連結するヘッド部83も上方に移動する。そして、このヘッド部83と押圧部材86とは弾性部材としてのバネ84により接続されているので、ヘッド部83に接続される押圧部材86も上方に移動することになる。押圧部材86が上方に移動すると、押圧部材86の二つのピン85が、フィルム62を試料流通管路28cに押し込むことになり、試料流通管路28cがフィルム62により塞がれる。このように、弁体としての押圧部材86が、試料流通管路28cを塞ぐように位置するときの、当該押圧部材86の位置を閉位置とする。
【0053】
図6、図7で示される本実施形態のマイクロバルブ80においても、図4、図5で示されるマイクロバルブ38と同様に、試料流通管路28cの、流路プレート28の厚さ方向の幅が、例えば0.1mm以下とされ、弁体としての押圧部材86の閉位置と開位置との距離が極端に短い。一方、軸88の軸方向での移動距離は、弁体としての押圧部材86の移動距離(閉位置と開位置との距離)に比べて大きく設定されている。このような弁体としての押圧部材86の移動距離と、軸88との移動距離との差異は、押圧部材86と軸88とを接続するバネ84の弾性変形に吸収される。つまり、軸88の移動距離の過剰分が、バネ84の収縮量に含まれることになる。具体的には、フィルム62が試料流通管路28cの壁部まで押し込まれると、押圧部材86の上方への移動は停止するが、バネ64が収縮するので、ヘッド部83、ひいては軸88は上方への移動を継続することになる。
【0054】
このように、本実施形態のマイクロバルブ80によれば、試料流通管路28cを開閉する弁体(押圧部材86)の移動距離が、例えば0.1mm以下と小さくても、押圧部材86を移動させる軸88の移動距離を比較的大きく設定することができる。そのため、マイクロバルブ80において、軸88の位置決めを磁石91の磁力により行う自己保持機能を付与することができる。ひいては、弁体の閉状態を維持するのに、常時電力を必要としないので、消費電力を低減することができる。
【0055】
さらに、バネ84により、押圧部材86の移動距離と軸88の移動距離との間に遊びを持たせることができるため、確実に安定した押圧力をフィルム62に付与することができる。
【0056】
図3は、本実施形態のSPR装置50における流路プレート28の流通管路としての試料流通管路の形態を模式的に示すものである。流路プレート28には、図3に示すように、複数本の試料流通管路28cが形成されており、バッファタンク102に充填されているバッファ液104をポンプ101によりくみ上げて、試料流通管路28cに供給するようになっている。さらに流路プレート28の試料流通管路28cの経路上には、試料流通管路28cに、試料としての抗原を供給するための試料供給口が設けられている。この試料供給口は、図4〜図7において説明したネジ穴部78により形成されるものである。このネジ穴部78には、図4〜図7において示したように、チューブ74が挿入されており、このチューブ74の他端に図3に示す抗原供給機器107を取り付け、抗原供給機器107に充填されている抗原106をチューブ74を介して試料流通管路28cを流れるバッファ液中に混入することができるようになっている。流路プレート28には、このような試料供給口が、試料流通管路28cの経路上に複数設けられている。そして、試料流通管路28cには、試料としての抗原を一時的に蓄えておく為の試料貯蔵流路105が設けられており、例えば図4のマイクロバルブ38のピン65により、試料流通管路28cの試料の流動をとめることで、試料貯蔵流路105に抗原が一時的に貯蔵されることになる。そして、前述したように、マイクロバルブ38を操作することにより、マイクロバルブ38を開状態として、試料としての抗原を試料流通管路28cの測定領域104に供給することができるようになっている。この測定領域104は、流路プレート28の金膜12と接触する側の表面に露出する形態で形成されており、この部分に入射光線を照射することにより、表面プラズモン共鳴測定ができるようになっている。そして、この流路プレート28と接触する金膜12の、測定領域104と対応する領域には、抗体が取り付けられており、抗原・抗体反応における試料の質量変化をリアルタイムにモニタすることができるようになっている。
【0057】
さらに、試料流路プレート28には、2本の独立した試料流通管路が形成されており、一方には、前述したように試料としての抗原が供給されるようになっており、他方には、端にバッファ液のみが供給されて、バッファ液のみの表面プラズモン共鳴測定が行われて、リファレンス測定を行うことができるようになっている。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブは、弁体と連結する軸が、該軸を囲むソレノイドに電流を流すことにより軸方向に移動可能であるとし、軸の一端側に磁石を配置するようにしているので、ソレノイドにより軸を磁石側に移動させ、磁石の磁力により軸を吸引することで、軸を位置決めすることができる。そのため、軸が位置決めされた後、ソレノイドに流れる電流を停止しても、軸は磁石に吸引され続けるので、自己保持型のマイクロバルブを実現することができる。さらに、弁体と軸とを弾性部材を介して接続するようにしているので、流体の流通管路を開閉する弁体の、流通管路の開閉を切り替えるときの移動距離が小さいマイクロ流路用バルブにも、上記の自己保持機能を付与することが可能となる。つまり、弁体の移動距離と、軸の移動距離との間に大きな差異があっても、この移動距離の差異が弾性部材の弾性変形に包含されることになるので、弁体の移動距離に比べて軸の移動距離を大きく設定することができる。したがって、軸を磁石の磁力により吸引して位置決めする場合に、確実に軸の位置決めを行うことができ、マイクロ流路用バルブのように、弁体の移動距離が小さいバルブでも自己保持機能を付与することができるのである。そのため、低消費電力のマイクロバルブを提供することができる。
【0059】
さらに、上記のような自己保持型マイクロ流路用バルブを使用する本発明の光学バイオセンサ装置は、試料が流動する流通管路の開閉を制御するバルブの切換を、低い消費電力で行うことができるとともに、弁体を移動させるアクチュエータ等に熱が生じることもないので、例えば、生体物質が加熱されて、精密な検出・測定が行えない等の装置上のトラブルも起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学バイオセンサ装置の一例を示す概略図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】流路プレートにおける試料流通管路の形態を説明する図。
【図4】本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブの一例を示す図。
【図5】図4に示す自己保持型マイクロ流路用バルブの作動形態を、図4とともに説明する図。
【図6】本発明の自己保持型マイクロ流路用バルブの図4とは異なる一例を示す図。
【図7】図6に示す自己保持型マイクロ流路用バルブの作動形態を、図6とともに説明する図。
【符号の説明】
14 発光素子(光供給手段)
15 受光素子(検出手段)
28 流路プレート(流路部材)
28c 試料流通管路(流通管路)
38、80 マイクロバルブ(自己保持型マイクロ流路用バルブ)
50 表面プラズモン共鳴測定装置(光学バイオセンサ装置)
62 フィルム
64、84 バネ(弾性部材)
66、86 押圧部材(弁体)
69、88 軸
73、93 ソレノイド
71、91 磁石
Claims (5)
- 流体が流通する流通管路が形成されている流路部材と、
前記流通管路を閉状態とする閉位置と前記流通管路を開状態とする開位置との間で移動可能とされる弁体と、
前記弁体に連結され、軸心の方向に往復動する軸と、
前記軸の外周を囲む形態で配置されるソレノイドと、
前記軸の一端側に配置され、前記弁体が前記閉位置あるいは前記開位置の少なくともいずれかに位置するときに、前記軸を吸引して位置決めする磁石と、を有し、
前記軸は、前記弁体と弾性部材を介して接続されていることを特徴とする自己保持型マイクロ流路用バルブ。 - 前記流路部材は、表面に流路溝が形成されている流路プレートと、該流路プレートの前記流路溝が形成されている表面に当接される薄膜とを有し、前記流路溝が前記薄膜に覆われて前記流通管路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自己保持型マイクロ流路用バルブ。
- 前記弁体は、前記薄膜の前記流路溝とは反対側で、前記流通管路が形成されている領域に配置されており、前記流通管路に前記薄膜を押し込むように、前記流通管路に対して接近して、前記閉位置に移動するものであることを特徴とする請求項2に記載の自己保持型マイクロ流路用バルブ。
- 前記磁石は、前記弁体が前記閉位置に位置するときに、前記軸と接触するように配置されており、前記閉位置に前記弁体を保持するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自己保持型マイクロ流路用バルブ。
- 液体状の試料が流通する流通管路を有する流路部材と、前記流通管路を開閉するバルブと、前記流通管路を流動する試料に対して測定光を照射する光供給手段と、
前記測定光に対する試料の光学応答を検出する検出手段とを、有する光学バイオセンサ装置において、
前記バルブは、前記流通管路を閉状態とする閉位置と前記流通管路を開状態とする開位置との間で移動可能とされる弁体と、
前記弁体に連結され、軸心の方向に往復動する軸と、
前記軸の外周を囲む形態で配置されるソレノイドと、
前記軸の一端側に配置され、前記弁体が前記閉位置あるいは前記開位置の少なくともいずれかに位置するときに、前記軸を吸引する磁石と、を備え、かつ、前記軸は、前記弁体と弾性部材を介して接続されている自己保持型マイクロ流路用バルブであることを特徴とする光学バイオセンサ装置。
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2003
- 2003-05-27 JP JP2003149456A patent/JP2004353704A/ja active Pending
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