JP2004353631A - ハイブリッド圧縮機におけるモータ配線の取出し構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】モータの配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができ、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用できるハイブリッド圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を提供する。
【解決手段】ハウジング11の前端面11bに一体形成されたボス部31に対し固定子ブラケット32を嵌合固定する。固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周面に対しロータ36をベアリング35を介して回転可能に支持する。取付筒部32dに固定子51を装着する。固定子51の巻線53に接続された配線56を固定子ブラケット32に設けた挿通孔32gから外部に導出する。前記ベアリング35の内輪35aの後端面と、スリーブ32aの外周面に形成された係止溝32eに係合されたサークリップ38とによって配線姿勢保持部材72のリング部72aを挟着する。配線姿勢保持部72bの上端部を水平に湾曲し、ビス73によりハウジング11に締め付け固定する。
【選択図】 図2
【解決手段】ハウジング11の前端面11bに一体形成されたボス部31に対し固定子ブラケット32を嵌合固定する。固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周面に対しロータ36をベアリング35を介して回転可能に支持する。取付筒部32dに固定子51を装着する。固定子51の巻線53に接続された配線56を固定子ブラケット32に設けた挿通孔32gから外部に導出する。前記ベアリング35の内輪35aの後端面と、スリーブ32aの外周面に形成された係止溝32eに係合されたサークリップ38とによって配線姿勢保持部材72のリング部72aを挟着する。配線姿勢保持部72bの上端部を水平に湾曲し、ビス73によりハウジング11に締め付け固定する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の走行駆動源からの動力が、ハウジングに支持された回転体装置を介して伝達されることでガスの圧縮を行うとともに、回転体装置に内蔵された電動モータの駆動によってもガスの圧縮を行うことが可能なハイブリッド圧縮機に関し、特に、電動モータから回転体装置の外方へのモータ配線の取出し構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の省燃費対策のために、信号待ち等の車両の走行停止状態において、アイドリング状態にあるエンジンを自動停止させる、所謂アイドリングストップ制御を行うことが一般化されつつある。そして、車両用空調装置の圧縮機としては、エンジンの停止状態においても空調が可能なように、電動モータをも駆動源としたハイブリッドタイプのものが存在する(例えば特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1の技術においては、圧縮機のハウジングに回転体装置が支持されている。回転体装置が備えるロータには、エンジンからのベルトが掛けられている。従って、エンジンの動力がベルトを介してロータに伝達されることで、圧縮機が駆動される。又、回転体装置には電動モータが内蔵されており、エンジンの停止時においては電動モータが圧縮機を駆動する。
【0004】
一般的に、電動モータから回転体装置の外方へのモータ配線の取り出しには、自在に曲折可能な言い換えれば形状保持性の低い配線が用いられている。このため、モータ配線が、その変形によって回転体装置のロータに干渉しないように、モータ配線の付近に大きなスペースを確保する必要があり、回転体装置ひいては圧縮機が大型化する問題を生じていた。
【0005】
上記問題を解消するため、従来、次のような技術が提案されている。即ち、ハウジングのボス部の外周面に対し巻線を備えた固定子を支持するための固定子ブラケットの円筒状をなすスリーブを嵌合固定する。該スリーブの外周面にベアリングを介して回転体装置のロータを支持する。又、前記ベアリングをスリーブの外周面の所定位置に位置規制するために、該スリーブの外周面に位置規制リングを圧入嵌合し、該位置規制リングの外周部に前記モータ配線がロータ側に移動するのを阻止するための配線姿勢保持板を取り付けていた(例えば特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−140757号公報
【特許文献2】
特開2003−97438号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の配線姿勢保持板は、位置規制リングを前記スリーブの外周面に圧入嵌合する構成をとっていたので、回転体装置の点検の際に、該位置規制リングの分解が困難であるという問題があった。又、分解修理が必要となったとき、位置規制リングを破壊し、前記スリーブの外周面を損傷するので、固定子ブラケット、位置規制リング及び配線姿勢保持板を再利用することができないという問題もあった。さらに、位置規制リングの圧入嵌合代を設けなければならないので、前記スリーブの軸方向の長さが長くなり圧縮機を小型化することができないという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、モータ配線の配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができるとともに、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用することができるハイブリット圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、上記目的に加えて、配線姿勢保持部材の軸方向の寸法を低減して、圧縮機の小型化を図ることができるハイブリット圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の走行駆動源からの動力が、ハウジングに支持された回転体装置を介して伝達されることでガスの圧縮を行うとともに、回転体装置に内蔵された電動モータの駆動によってもガスの圧縮を行うことが可能なハイブリッド圧縮機において、前記ハウジングの前端面に設けられたボス部の外周面に対して前記電動モータの固定子を支持するための固定子ブラケットを嵌合固定し、該固定子ブラケットを形成するスリーブ又は該スリーブの内周面と前記ハウジング側のボス部の外周面との間に設けた配線通路から電動モータの配線を回転体装置の外方へ導出し、前記スリーブの外周面に係止段部を設け、この係止段部に、前記スリーブに設けた取り外し可能な係止手段によって、前記配線の姿勢を前記ハウジングの前端面との間で保持する配線姿勢保持部材を係止するようにしたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータ配線の取出し構造において、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面の所定位置には、前記回転体装置を構成するロータを支持するベアリングが嵌合固定され、このベアリングの内輪のハウジング側の一端面には、前記配線姿勢保持部材が係止されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータ配線の取出し構造において、前記係止手段は、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面に対し周方向に形成された環状の係止溝と、この係止溝に取り外し可能に係止され、かつ前記配線姿勢保持部材のハウジング側の一側面を係止するサークリップ又はシーエス止め環であることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ配線の取出し構造において、前記配線姿勢保持部材は、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面に嵌合されるリング部と、このリング部の一部に半径方向外側に延びるように形成された配線姿勢保持部と、この配線姿勢保持部の先端部に折り曲げ形成され、かつハウジングの外周面に取り付けられる取付部とにより構成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ配線の取出し構造において、前記ハウジングの前端面にはモータの配線を収容するための収容溝が形成されていることを要旨とする。
【0015】
(作用)
請求項1記載の発明によれば、モータの配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができるとともに、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記配線姿勢保持部材がベアリングの位置規制機能を兼用するので、部品点数を低減することができる。
請求項3記載の発明は、係止手段をスリーブの外周面に形成された環状の係止溝と、該係止溝に係止されるサークリップ又はシーエス止め環とにより安価に構成できる。
【0017】
請求項4記載の発明は、配線姿勢保持部材がリング部、配線姿勢保持部及び取付部により構成されているので、板材をプレス成形することにより容易に製造することができる。又、使用材料を少なくしてコストの低減を図ることができる。さらに、配線姿勢保持部材の軸方向の寸法を低減して、圧縮機の小型化を図ることもできる。
【0018】
請求項5記載の発明は、ハウジングの前端面にモータの配線を収容するための収容溝が形成されているので、配線姿勢保持部材の形状を簡素化することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のハイブリット圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を具体化した一実施形態について説明する。
【0020】
(ハイブリッド圧縮機)
図1に示すように、ハイブリッド圧縮機(以下単に圧縮機とする)のハウジング11内にはクランク室12が区画されている。ハウジング11には駆動軸13が回転可能に支持されている。駆動軸13には、車両の走行駆動源であるエンジン(内燃機関)Eの出力軸が、ハウジング11に支持された回転体装置PTを介して作動連結されている。クランク室12において駆動軸13には、斜板15が一体回転可能に連結されている。
【0021】
前記ハウジング11内には複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア11aが形成されており、各シリンダボア11a内には片頭型のピストン17が往復動可能に収容されている。各ピストン17は、シュー18を介して斜板15の外周部に係留されている。従って、駆動軸13の回転にともなう斜板15の回転運動が、シュー18を介してピストン17の往復運動に変換される。
【0022】
前記シリンダボア11a内の後方(図面右方)側には、ピストン17と、ハウジング11に備えられた弁・ポート形成体19とで囲まれて圧縮室20が区画されている。ハウジング11の後方側の内部には、吸入室21及び吐出室22がそれぞれ区画形成されている。
【0023】
前記吸入室21の冷媒ガスは、各ピストン17の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体19に形成された吸入ポート23及び吸入弁24を介して圧縮室20に吸入される。圧縮室20に吸入された冷媒ガスは、ピストン17の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体19に形成された吐出ポート25及び吐出弁26を介して吐出室22に吐出される。
【0024】
(回転体装置PT)
図1及び図2に示すように、前記ハウジング11において前方(図面左方)側の前端面11bには、駆動軸13の前端側を取り囲むようにして横円筒状のボス部31が一体に突設されている。前記ボス部31の外周面31aには、電動モータ50の固定子51を支持するための固定子ブラケット32が嵌合固定されている。図4に示すように、前記固定子ブラケット32は前記ボス部31の横円筒状の外周面31aに嵌合される横円筒状の内周面32bを有するスリーブ32aと、前記スリーブ32aの外周面の前端部に一体に形成されたドーナッツ板状の連結部32cと、この連結部32cの外周縁に一体に形成され、かつ電動モータ50の固定子51を嵌合するための横円筒状をなす取付筒部32dとを備えている。
【0025】
前記ボス部31に対する固定子ブラケット32の取り付けは、次のようにして行われる。前記ボス部31の外周面にスリーブ32aを嵌合するとともに、前記ボス部31の外周面31aの先端部に切り欠き形成された係合溝31bに図2に示すサークリップ33を係合する。そして、サークリップ33によりボス部31から固定子ブラケット32が抜出すのを阻止する。ボス部31上での固定子ブラケット32の回り止めは、ボス部31とスリーブ32aの間に設けられた図示しない例えばキーとキー溝等により阻止される。
【0026】
前記固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周面には、ロータ36がベアリング35を介して回転可能に支持されている。前記ベアリング35の内輪35aの後端面は、前記スリーブ32aの外周面の後端寄り位置に周方向に形成した円環状の係止溝32eに係合されたサークリップ38によって位置規制されている。内輪35aの前端面は前記連結部32cによって位置規制されている。前記係止溝32e及びサークリップ38は横断面が図2に示すようにテーパ状になっていて、ベアリング35の内輪35aがスリーブ32a上で軸方向に移動しないようになっている。
【0027】
前記ロータ36の内周部は、ベアリング35の外輪35bに嵌合固定され、外周部にはエンジンEからのベルトBが掛けられるベルト掛け部36aが形成されている。ロータ36の前方側には円盤状のハブユニット37が装着されている。前記ロータ36の前端外周部にはフランジ部36bが一体に形成され、このフランジ部36bには取付金具41がボルト42によって取り付けられている。この取付金具41の内周面にはゴムよりなるクッションリング43を介してハブ44が連結され、このハブ44の中心部に一体形成されたボス部44aの内周面と前記駆動軸13の先端部との間には第1ワンウエイクラッチ45が介在されている。前記ロータ36は、第1ワンウエイクラッチ45を介して駆動軸13に作動連結されている。
【0028】
従って、エンジンEの稼動時においてエンジンEからの動力は、ロータ36、ハブ44及び第1ワンウエイクラッチ45を介して駆動軸13に伝達され、圧縮機が駆動されることとなる。
【0029】
(電動モータ50)
前記ロータ36とハブユニット37の内部には、電動モータ50を収容する円筒状の収容空間46が形成されている。前記固定子ブラケット32の取付筒部32dの外周側には前記収容空間46内に位置するように固定子51が取り付けられている。この固定子51を構成する鉄芯52は前記スリーブ32aの外周面に嵌合固定されている。鉄芯52の複数カ所に巻装された複数の巻線53(本実施形態においては図1に二つ示すが例えば18箇所に備えられている)と、直流電源としてのバッテリ54との間の給電経路上にはインバータ55が配設されている。インバータ55は、相インバータ回路55aを複数(本実施形態においては巻線53の数に対応した18個のうち三つを図示)有してなる。各相インバータ回路55aの交流出力端子には、固定子51の各巻線53が配線56によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
前記収容空間46内において駆動軸13の前端には、固定子ブラケット32よりも前方側に位置するようにして、円盤状をなす回転子ブラケット61が装着されている。回転子ブラケット61は、固定子ブラケット32及び固定子51を避けるようにして盤面の外周部分が前方側に膨出する立体形状をなしている。回転子ブラケット61の内周部と駆動軸13の外周面との間には、第2ワンウエイクラッチ62が介装されている。
【0031】
前記回転子ブラケット61の外周部に設けた取付リング部61aには、回転子63が取り付けられている。この回転子63は軟鉄等の磁性体よりなる円筒状の磁石ホルダ64と、この磁石ホルダ64の内周面に取り付けられた複数(例えば12個)の永久磁石65とを備え、磁石ホルダ64を貫通して取付リング部61aに螺合されたボルト66によって取付リング部61aに回転子63が取り付けられている。
【0032】
従って、前記インバータ55が図示しないコントローラによって制御されることで、インバータ55において擬似三相交流電圧が形成されて固定子51に印加される。これにより、回転子63が回転子ブラケット61及び駆動軸13と共に回転して圧縮機が駆動され、エンジンEの停止状態においても車室の空調が可能となる。
【0033】
ところで、前記ロータ36側のハブ44から回転子ブラケット61への動力伝達は、第2ワンウエイクラッチ62によって遮断され、エンジンEが発生した回転力が回転子63側へ不必要に伝達されることはない。反対に、電動モータ50の回転子ブラケット61からハブ44側への動力伝達は、第1ワンウエイクラッチ45によって遮断され、電動モータ50が発生した回転力がエンジンE側へ不必要に伝達されることはない。
【0034】
(前記配線56の取出し構造)
図3及び図4に示すように、前記回転体装置PTにおいて、電動モータ50の固定子51の巻線53に接続された配線56(電力供給線)は、回転体装置PTの外方へ取り出されている。前記固定子ブラケット32のスリーブ32aの上部には後端面に開口するように凹部32fが切り欠き形成されている。この凹部32fの内端面から前方に向けて複数の配線通路としての挿通孔32gが互いに平行に貫通形成されている。前記巻線53から挿通孔32gに導かれる配線56は、前記固定子ブラケット32の連結部32cの前面及び取付筒部32dの内周面に取り付けられた配線ホルダ71によって、所定位置に保持されている。前記凹部32fから上方向に導出された配線56は、ハウジング11の前端面11bのボス部31よりも上方に形成した上下方向に延びる収容溝11cに収容され、上方に導出されている。
【0035】
前記収容溝11cに収容された可撓性を有する配線56が前方に移動してロータ36の後側面に接触しないようにするため、前記固定子ブラケット32のスリーブ32aとハウジング11には配線姿勢保持部材72が装着されている。この配線姿勢保持部材72は、前記ベアリング35の内輪35aの後端面と、前記サークリップ38の前側面との間に介在される円環状のリング部72aと、このリング部72aの上部に一体的に形成された配線姿勢保持部72bとを備えている。前記配線姿勢保持部72bの上端部には、取付部としての水平板部72cが後方に直角に折り曲げ形成され、水平板部72cには、ビス73の挿通孔72dが形成されている。前記水平板部72cは、ハウジング11の収容溝11cの上端から導出され、かつ後方に偏向して配設された配線56の上面を覆うように配置されている。そして、ビス73を挿通孔72dに貫通しハウジング11の外周面に形成されたネジ孔11dに螺合することによって配線姿勢保持部72bを収容溝11cと対応する所定位置に保持するようにしている。
【0036】
前記リング部72aと配線姿勢保持部72bの連結部には段差部72eが形成され、図2に示すように段差部72eがベアリング35の外輪35b及びロータ36と干渉しないようにしている。
【0037】
この実施形態では、ベアリング35の内輪35aのハウジング11側の端面が配線姿勢保持部材72のリング部72aの係止段部として機能する。又、前記スリーブ32aに設けた係止溝32eとサークリップ38により配線姿勢保持部材72のリング部72aをスリーブ32a上において内輪35aの後端面との間で係止する係止手段を構成している。
【0038】
図2において、ハウジング11に設けた収容溝11cに収容された配線56が何らかの要因によって、はみ出したとしても配線姿勢保持部材72の配線姿勢保持部72bによってロータ36側への移動が阻止され、配線56がロータ36と干渉されることはない。
【0039】
本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)前記実施形態では、配線姿勢保持部材72のリング部72aを前記固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周面に形成した係止溝32eにサークリップ38を係合し、ベアリング35の内輪35aの後端面とサークリップ38との間にリング部72aを挟持するようにした。このため、電動モータ50の保守点検作業の際に、サークリップ38を取り外して、配線姿勢保持部材72の脱着作業を容易に行うことができる。又、サークリップ38や配線姿勢保持部材72が脱着作業によって損傷しないので、再利用することもできる。
【0040】
(2)前記実施形態では、ベアリング35の内輪35aの位置規制を行うためのサークリップ38を用いて、リング部72aの位置規制を行うようにした。このため、リング部72aの位置規制専用の部品を無くして部品点数を低減し、製造及び組み付け作業を容易に行うことができる。
【0041】
(3)前記実施形態では、前記ハウジング11に配線56を収容する収容溝11cを形成した。又、リング部72aに収容溝11cと対応して配線姿勢保持部72bを形成し、該配線姿勢保持部72bの上端部に水平板部72cを形成してビス73によってハウジング11の外周面に水平板部72cを取り付けるようにした。このため、配線姿勢保持部72bの面積を必要最小限にして配線姿勢保持部材72の軽量化を図ることができる。又、配線姿勢保持部材72のリング部72aがスリーブ32aの外周面に、水平板部72cがハウジング11の外周面にそれぞれ固定されているので、圧縮機の運転時に配線姿勢保持部材72が振動するのを防止して、騒音の発生を無くすこともできる。
【0042】
(4)前記実施形態では、係止溝32e及びサークリップ38を、テーパ状に形成したので、ベアリング35及び配線姿勢保持部材72のリング部72aを所定位置に確実に位置規制することができる。
【0043】
(5)前記実施形態では、配線姿勢保持部材72を板材によりプレス成形してリング部72aを平板状に形成するとともに、リング部72aをサークリップ38により係止した。このため、リング部72a及びサークリップ38の軸方向の全体の厚さ寸法を必要最小限にして圧縮機の小型化を図ることができる。
【0044】
(6)前記実施形態では、配線姿勢保持部材72のリング部72aと配線姿勢保持部72bとの連結部分に段差部72eを形成したので、ベアリング35の外輪35b及びロータ36の後側面が配線姿勢保持部72bと干渉するのを回避することができる。
【0045】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲で以下の態様でも実施できる。
・図5(a)に示すように、固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周部に係止段部32hを設けるとともに、この係止段部32hと対応して係止溝32eを形成し、サークリップ38によってリング部72aのみをスリーブ32aに取り付けるようにしてもよい。
【0046】
・図5(b)に示すように、スリーブ32aの後端外周面に雄ネジ32iを形成し、この雄ネジ32iに螺合されるリング状のナット75によってリング部72aをベアリング35の内輪35aの後端面との間に挟着するようにしてもよい。この別例では、前記雄ネジ32iとナット75により係止手段が構成されている。
【0047】
・図6に示すように配線姿勢保持部材72の配線姿勢保持部72bの左右両側に配線56の側方へのはみ出しを防止するためのリブ72fを形成してもよい。この別例は、ハウジング11の収容溝11cを省略した場合に好適となる。
【0048】
・配線姿勢保持部材72のリング部72aの下側を切り欠いて円孤状にしてもよい。
・上記実施形態において、前記配線姿勢保持部72bを帯状から例えば扇状或いは三角形状に変更してもよい。
【0049】
・サークリップ38に代えてシーエス止め環を用いてもよい。
・図示しないが、ハウジング11の収容溝11cを省略し、スリーブ32aの先端部上側に配線56を引き出す凹部を形成してもよい。
【0050】
・前記配線通路として、前記固定子ブラケット32のスリーブ32aに設けた凹部32f及び挿通孔32gに代えて、内周面32b及び/又はボス部31の外周面31aに形成した配線の挿通溝を用いてもよい。
【0051】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記配線姿勢保持部材72の配線姿勢保持部72bには配線56のはみ出しを防止するためのはみ出し防止部が設けられている請求項4に記載のモータ配線の取出し構造。
【0052】
(2)請求項4に記載のハイブリッド圧縮機に用いられ、かつ固定子ブラケットのスリーブの外周面に嵌合されるリング部、該リング部に設けた配線姿勢保持部及び該配線姿勢保持部に設けられ、ハウジングに取り付けられる取付部からなる配線姿勢保持部品。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明は、モータの配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができるとともに、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッド圧縮機の断面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】図1の1−1線断面図。
【図4】要部の拡大分解斜視図。
【図5】(a),(b)はこの発明の別例を示す部分拡大断面図。
【図6】この発明の別例を示す斜視図。
【符号の説明】PT…回転体装置、11…ハウジング、11b…前端面、11c…収容溝、31…ボス部、31a…外周面、32…固定子ブラケット、32a…スリーブ、32b…内周面、32e…係止溝、32h…係止段部、38…サークリップ、35…ベアリング、35a…内輪、36…ロータ、50…電動モータ、51…固定子、56…配線、72…配線姿勢保持部材、72a…リング部、72b…配線姿勢保持部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の走行駆動源からの動力が、ハウジングに支持された回転体装置を介して伝達されることでガスの圧縮を行うとともに、回転体装置に内蔵された電動モータの駆動によってもガスの圧縮を行うことが可能なハイブリッド圧縮機に関し、特に、電動モータから回転体装置の外方へのモータ配線の取出し構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の省燃費対策のために、信号待ち等の車両の走行停止状態において、アイドリング状態にあるエンジンを自動停止させる、所謂アイドリングストップ制御を行うことが一般化されつつある。そして、車両用空調装置の圧縮機としては、エンジンの停止状態においても空調が可能なように、電動モータをも駆動源としたハイブリッドタイプのものが存在する(例えば特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1の技術においては、圧縮機のハウジングに回転体装置が支持されている。回転体装置が備えるロータには、エンジンからのベルトが掛けられている。従って、エンジンの動力がベルトを介してロータに伝達されることで、圧縮機が駆動される。又、回転体装置には電動モータが内蔵されており、エンジンの停止時においては電動モータが圧縮機を駆動する。
【0004】
一般的に、電動モータから回転体装置の外方へのモータ配線の取り出しには、自在に曲折可能な言い換えれば形状保持性の低い配線が用いられている。このため、モータ配線が、その変形によって回転体装置のロータに干渉しないように、モータ配線の付近に大きなスペースを確保する必要があり、回転体装置ひいては圧縮機が大型化する問題を生じていた。
【0005】
上記問題を解消するため、従来、次のような技術が提案されている。即ち、ハウジングのボス部の外周面に対し巻線を備えた固定子を支持するための固定子ブラケットの円筒状をなすスリーブを嵌合固定する。該スリーブの外周面にベアリングを介して回転体装置のロータを支持する。又、前記ベアリングをスリーブの外周面の所定位置に位置規制するために、該スリーブの外周面に位置規制リングを圧入嵌合し、該位置規制リングの外周部に前記モータ配線がロータ側に移動するのを阻止するための配線姿勢保持板を取り付けていた(例えば特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−140757号公報
【特許文献2】
特開2003−97438号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の配線姿勢保持板は、位置規制リングを前記スリーブの外周面に圧入嵌合する構成をとっていたので、回転体装置の点検の際に、該位置規制リングの分解が困難であるという問題があった。又、分解修理が必要となったとき、位置規制リングを破壊し、前記スリーブの外周面を損傷するので、固定子ブラケット、位置規制リング及び配線姿勢保持板を再利用することができないという問題もあった。さらに、位置規制リングの圧入嵌合代を設けなければならないので、前記スリーブの軸方向の長さが長くなり圧縮機を小型化することができないという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、モータ配線の配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができるとともに、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用することができるハイブリット圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、上記目的に加えて、配線姿勢保持部材の軸方向の寸法を低減して、圧縮機の小型化を図ることができるハイブリット圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の走行駆動源からの動力が、ハウジングに支持された回転体装置を介して伝達されることでガスの圧縮を行うとともに、回転体装置に内蔵された電動モータの駆動によってもガスの圧縮を行うことが可能なハイブリッド圧縮機において、前記ハウジングの前端面に設けられたボス部の外周面に対して前記電動モータの固定子を支持するための固定子ブラケットを嵌合固定し、該固定子ブラケットを形成するスリーブ又は該スリーブの内周面と前記ハウジング側のボス部の外周面との間に設けた配線通路から電動モータの配線を回転体装置の外方へ導出し、前記スリーブの外周面に係止段部を設け、この係止段部に、前記スリーブに設けた取り外し可能な係止手段によって、前記配線の姿勢を前記ハウジングの前端面との間で保持する配線姿勢保持部材を係止するようにしたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータ配線の取出し構造において、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面の所定位置には、前記回転体装置を構成するロータを支持するベアリングが嵌合固定され、このベアリングの内輪のハウジング側の一端面には、前記配線姿勢保持部材が係止されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータ配線の取出し構造において、前記係止手段は、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面に対し周方向に形成された環状の係止溝と、この係止溝に取り外し可能に係止され、かつ前記配線姿勢保持部材のハウジング側の一側面を係止するサークリップ又はシーエス止め環であることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ配線の取出し構造において、前記配線姿勢保持部材は、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面に嵌合されるリング部と、このリング部の一部に半径方向外側に延びるように形成された配線姿勢保持部と、この配線姿勢保持部の先端部に折り曲げ形成され、かつハウジングの外周面に取り付けられる取付部とにより構成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ配線の取出し構造において、前記ハウジングの前端面にはモータの配線を収容するための収容溝が形成されていることを要旨とする。
【0015】
(作用)
請求項1記載の発明によれば、モータの配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができるとともに、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記配線姿勢保持部材がベアリングの位置規制機能を兼用するので、部品点数を低減することができる。
請求項3記載の発明は、係止手段をスリーブの外周面に形成された環状の係止溝と、該係止溝に係止されるサークリップ又はシーエス止め環とにより安価に構成できる。
【0017】
請求項4記載の発明は、配線姿勢保持部材がリング部、配線姿勢保持部及び取付部により構成されているので、板材をプレス成形することにより容易に製造することができる。又、使用材料を少なくしてコストの低減を図ることができる。さらに、配線姿勢保持部材の軸方向の寸法を低減して、圧縮機の小型化を図ることもできる。
【0018】
請求項5記載の発明は、ハウジングの前端面にモータの配線を収容するための収容溝が形成されているので、配線姿勢保持部材の形状を簡素化することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のハイブリット圧縮機におけるモータ配線の取出し構造を具体化した一実施形態について説明する。
【0020】
(ハイブリッド圧縮機)
図1に示すように、ハイブリッド圧縮機(以下単に圧縮機とする)のハウジング11内にはクランク室12が区画されている。ハウジング11には駆動軸13が回転可能に支持されている。駆動軸13には、車両の走行駆動源であるエンジン(内燃機関)Eの出力軸が、ハウジング11に支持された回転体装置PTを介して作動連結されている。クランク室12において駆動軸13には、斜板15が一体回転可能に連結されている。
【0021】
前記ハウジング11内には複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア11aが形成されており、各シリンダボア11a内には片頭型のピストン17が往復動可能に収容されている。各ピストン17は、シュー18を介して斜板15の外周部に係留されている。従って、駆動軸13の回転にともなう斜板15の回転運動が、シュー18を介してピストン17の往復運動に変換される。
【0022】
前記シリンダボア11a内の後方(図面右方)側には、ピストン17と、ハウジング11に備えられた弁・ポート形成体19とで囲まれて圧縮室20が区画されている。ハウジング11の後方側の内部には、吸入室21及び吐出室22がそれぞれ区画形成されている。
【0023】
前記吸入室21の冷媒ガスは、各ピストン17の上死点位置から下死点側への移動により、弁・ポート形成体19に形成された吸入ポート23及び吸入弁24を介して圧縮室20に吸入される。圧縮室20に吸入された冷媒ガスは、ピストン17の下死点位置から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮され、弁・ポート形成体19に形成された吐出ポート25及び吐出弁26を介して吐出室22に吐出される。
【0024】
(回転体装置PT)
図1及び図2に示すように、前記ハウジング11において前方(図面左方)側の前端面11bには、駆動軸13の前端側を取り囲むようにして横円筒状のボス部31が一体に突設されている。前記ボス部31の外周面31aには、電動モータ50の固定子51を支持するための固定子ブラケット32が嵌合固定されている。図4に示すように、前記固定子ブラケット32は前記ボス部31の横円筒状の外周面31aに嵌合される横円筒状の内周面32bを有するスリーブ32aと、前記スリーブ32aの外周面の前端部に一体に形成されたドーナッツ板状の連結部32cと、この連結部32cの外周縁に一体に形成され、かつ電動モータ50の固定子51を嵌合するための横円筒状をなす取付筒部32dとを備えている。
【0025】
前記ボス部31に対する固定子ブラケット32の取り付けは、次のようにして行われる。前記ボス部31の外周面にスリーブ32aを嵌合するとともに、前記ボス部31の外周面31aの先端部に切り欠き形成された係合溝31bに図2に示すサークリップ33を係合する。そして、サークリップ33によりボス部31から固定子ブラケット32が抜出すのを阻止する。ボス部31上での固定子ブラケット32の回り止めは、ボス部31とスリーブ32aの間に設けられた図示しない例えばキーとキー溝等により阻止される。
【0026】
前記固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周面には、ロータ36がベアリング35を介して回転可能に支持されている。前記ベアリング35の内輪35aの後端面は、前記スリーブ32aの外周面の後端寄り位置に周方向に形成した円環状の係止溝32eに係合されたサークリップ38によって位置規制されている。内輪35aの前端面は前記連結部32cによって位置規制されている。前記係止溝32e及びサークリップ38は横断面が図2に示すようにテーパ状になっていて、ベアリング35の内輪35aがスリーブ32a上で軸方向に移動しないようになっている。
【0027】
前記ロータ36の内周部は、ベアリング35の外輪35bに嵌合固定され、外周部にはエンジンEからのベルトBが掛けられるベルト掛け部36aが形成されている。ロータ36の前方側には円盤状のハブユニット37が装着されている。前記ロータ36の前端外周部にはフランジ部36bが一体に形成され、このフランジ部36bには取付金具41がボルト42によって取り付けられている。この取付金具41の内周面にはゴムよりなるクッションリング43を介してハブ44が連結され、このハブ44の中心部に一体形成されたボス部44aの内周面と前記駆動軸13の先端部との間には第1ワンウエイクラッチ45が介在されている。前記ロータ36は、第1ワンウエイクラッチ45を介して駆動軸13に作動連結されている。
【0028】
従って、エンジンEの稼動時においてエンジンEからの動力は、ロータ36、ハブ44及び第1ワンウエイクラッチ45を介して駆動軸13に伝達され、圧縮機が駆動されることとなる。
【0029】
(電動モータ50)
前記ロータ36とハブユニット37の内部には、電動モータ50を収容する円筒状の収容空間46が形成されている。前記固定子ブラケット32の取付筒部32dの外周側には前記収容空間46内に位置するように固定子51が取り付けられている。この固定子51を構成する鉄芯52は前記スリーブ32aの外周面に嵌合固定されている。鉄芯52の複数カ所に巻装された複数の巻線53(本実施形態においては図1に二つ示すが例えば18箇所に備えられている)と、直流電源としてのバッテリ54との間の給電経路上にはインバータ55が配設されている。インバータ55は、相インバータ回路55aを複数(本実施形態においては巻線53の数に対応した18個のうち三つを図示)有してなる。各相インバータ回路55aの交流出力端子には、固定子51の各巻線53が配線56によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
前記収容空間46内において駆動軸13の前端には、固定子ブラケット32よりも前方側に位置するようにして、円盤状をなす回転子ブラケット61が装着されている。回転子ブラケット61は、固定子ブラケット32及び固定子51を避けるようにして盤面の外周部分が前方側に膨出する立体形状をなしている。回転子ブラケット61の内周部と駆動軸13の外周面との間には、第2ワンウエイクラッチ62が介装されている。
【0031】
前記回転子ブラケット61の外周部に設けた取付リング部61aには、回転子63が取り付けられている。この回転子63は軟鉄等の磁性体よりなる円筒状の磁石ホルダ64と、この磁石ホルダ64の内周面に取り付けられた複数(例えば12個)の永久磁石65とを備え、磁石ホルダ64を貫通して取付リング部61aに螺合されたボルト66によって取付リング部61aに回転子63が取り付けられている。
【0032】
従って、前記インバータ55が図示しないコントローラによって制御されることで、インバータ55において擬似三相交流電圧が形成されて固定子51に印加される。これにより、回転子63が回転子ブラケット61及び駆動軸13と共に回転して圧縮機が駆動され、エンジンEの停止状態においても車室の空調が可能となる。
【0033】
ところで、前記ロータ36側のハブ44から回転子ブラケット61への動力伝達は、第2ワンウエイクラッチ62によって遮断され、エンジンEが発生した回転力が回転子63側へ不必要に伝達されることはない。反対に、電動モータ50の回転子ブラケット61からハブ44側への動力伝達は、第1ワンウエイクラッチ45によって遮断され、電動モータ50が発生した回転力がエンジンE側へ不必要に伝達されることはない。
【0034】
(前記配線56の取出し構造)
図3及び図4に示すように、前記回転体装置PTにおいて、電動モータ50の固定子51の巻線53に接続された配線56(電力供給線)は、回転体装置PTの外方へ取り出されている。前記固定子ブラケット32のスリーブ32aの上部には後端面に開口するように凹部32fが切り欠き形成されている。この凹部32fの内端面から前方に向けて複数の配線通路としての挿通孔32gが互いに平行に貫通形成されている。前記巻線53から挿通孔32gに導かれる配線56は、前記固定子ブラケット32の連結部32cの前面及び取付筒部32dの内周面に取り付けられた配線ホルダ71によって、所定位置に保持されている。前記凹部32fから上方向に導出された配線56は、ハウジング11の前端面11bのボス部31よりも上方に形成した上下方向に延びる収容溝11cに収容され、上方に導出されている。
【0035】
前記収容溝11cに収容された可撓性を有する配線56が前方に移動してロータ36の後側面に接触しないようにするため、前記固定子ブラケット32のスリーブ32aとハウジング11には配線姿勢保持部材72が装着されている。この配線姿勢保持部材72は、前記ベアリング35の内輪35aの後端面と、前記サークリップ38の前側面との間に介在される円環状のリング部72aと、このリング部72aの上部に一体的に形成された配線姿勢保持部72bとを備えている。前記配線姿勢保持部72bの上端部には、取付部としての水平板部72cが後方に直角に折り曲げ形成され、水平板部72cには、ビス73の挿通孔72dが形成されている。前記水平板部72cは、ハウジング11の収容溝11cの上端から導出され、かつ後方に偏向して配設された配線56の上面を覆うように配置されている。そして、ビス73を挿通孔72dに貫通しハウジング11の外周面に形成されたネジ孔11dに螺合することによって配線姿勢保持部72bを収容溝11cと対応する所定位置に保持するようにしている。
【0036】
前記リング部72aと配線姿勢保持部72bの連結部には段差部72eが形成され、図2に示すように段差部72eがベアリング35の外輪35b及びロータ36と干渉しないようにしている。
【0037】
この実施形態では、ベアリング35の内輪35aのハウジング11側の端面が配線姿勢保持部材72のリング部72aの係止段部として機能する。又、前記スリーブ32aに設けた係止溝32eとサークリップ38により配線姿勢保持部材72のリング部72aをスリーブ32a上において内輪35aの後端面との間で係止する係止手段を構成している。
【0038】
図2において、ハウジング11に設けた収容溝11cに収容された配線56が何らかの要因によって、はみ出したとしても配線姿勢保持部材72の配線姿勢保持部72bによってロータ36側への移動が阻止され、配線56がロータ36と干渉されることはない。
【0039】
本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)前記実施形態では、配線姿勢保持部材72のリング部72aを前記固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周面に形成した係止溝32eにサークリップ38を係合し、ベアリング35の内輪35aの後端面とサークリップ38との間にリング部72aを挟持するようにした。このため、電動モータ50の保守点検作業の際に、サークリップ38を取り外して、配線姿勢保持部材72の脱着作業を容易に行うことができる。又、サークリップ38や配線姿勢保持部材72が脱着作業によって損傷しないので、再利用することもできる。
【0040】
(2)前記実施形態では、ベアリング35の内輪35aの位置規制を行うためのサークリップ38を用いて、リング部72aの位置規制を行うようにした。このため、リング部72aの位置規制専用の部品を無くして部品点数を低減し、製造及び組み付け作業を容易に行うことができる。
【0041】
(3)前記実施形態では、前記ハウジング11に配線56を収容する収容溝11cを形成した。又、リング部72aに収容溝11cと対応して配線姿勢保持部72bを形成し、該配線姿勢保持部72bの上端部に水平板部72cを形成してビス73によってハウジング11の外周面に水平板部72cを取り付けるようにした。このため、配線姿勢保持部72bの面積を必要最小限にして配線姿勢保持部材72の軽量化を図ることができる。又、配線姿勢保持部材72のリング部72aがスリーブ32aの外周面に、水平板部72cがハウジング11の外周面にそれぞれ固定されているので、圧縮機の運転時に配線姿勢保持部材72が振動するのを防止して、騒音の発生を無くすこともできる。
【0042】
(4)前記実施形態では、係止溝32e及びサークリップ38を、テーパ状に形成したので、ベアリング35及び配線姿勢保持部材72のリング部72aを所定位置に確実に位置規制することができる。
【0043】
(5)前記実施形態では、配線姿勢保持部材72を板材によりプレス成形してリング部72aを平板状に形成するとともに、リング部72aをサークリップ38により係止した。このため、リング部72a及びサークリップ38の軸方向の全体の厚さ寸法を必要最小限にして圧縮機の小型化を図ることができる。
【0044】
(6)前記実施形態では、配線姿勢保持部材72のリング部72aと配線姿勢保持部72bとの連結部分に段差部72eを形成したので、ベアリング35の外輪35b及びロータ36の後側面が配線姿勢保持部72bと干渉するのを回避することができる。
【0045】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲で以下の態様でも実施できる。
・図5(a)に示すように、固定子ブラケット32のスリーブ32aの外周部に係止段部32hを設けるとともに、この係止段部32hと対応して係止溝32eを形成し、サークリップ38によってリング部72aのみをスリーブ32aに取り付けるようにしてもよい。
【0046】
・図5(b)に示すように、スリーブ32aの後端外周面に雄ネジ32iを形成し、この雄ネジ32iに螺合されるリング状のナット75によってリング部72aをベアリング35の内輪35aの後端面との間に挟着するようにしてもよい。この別例では、前記雄ネジ32iとナット75により係止手段が構成されている。
【0047】
・図6に示すように配線姿勢保持部材72の配線姿勢保持部72bの左右両側に配線56の側方へのはみ出しを防止するためのリブ72fを形成してもよい。この別例は、ハウジング11の収容溝11cを省略した場合に好適となる。
【0048】
・配線姿勢保持部材72のリング部72aの下側を切り欠いて円孤状にしてもよい。
・上記実施形態において、前記配線姿勢保持部72bを帯状から例えば扇状或いは三角形状に変更してもよい。
【0049】
・サークリップ38に代えてシーエス止め環を用いてもよい。
・図示しないが、ハウジング11の収容溝11cを省略し、スリーブ32aの先端部上側に配線56を引き出す凹部を形成してもよい。
【0050】
・前記配線通路として、前記固定子ブラケット32のスリーブ32aに設けた凹部32f及び挿通孔32gに代えて、内周面32b及び/又はボス部31の外周面31aに形成した配線の挿通溝を用いてもよい。
【0051】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記配線姿勢保持部材72の配線姿勢保持部72bには配線56のはみ出しを防止するためのはみ出し防止部が設けられている請求項4に記載のモータ配線の取出し構造。
【0052】
(2)請求項4に記載のハイブリッド圧縮機に用いられ、かつ固定子ブラケットのスリーブの外周面に嵌合されるリング部、該リング部に設けた配線姿勢保持部及び該配線姿勢保持部に設けられ、ハウジングに取り付けられる取付部からなる配線姿勢保持部品。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明は、モータの配線姿勢保持部材の脱着作業を容易に行うことができるとともに、固定子ブラケット及び配線姿勢保持部材を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッド圧縮機の断面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】図1の1−1線断面図。
【図4】要部の拡大分解斜視図。
【図5】(a),(b)はこの発明の別例を示す部分拡大断面図。
【図6】この発明の別例を示す斜視図。
【符号の説明】PT…回転体装置、11…ハウジング、11b…前端面、11c…収容溝、31…ボス部、31a…外周面、32…固定子ブラケット、32a…スリーブ、32b…内周面、32e…係止溝、32h…係止段部、38…サークリップ、35…ベアリング、35a…内輪、36…ロータ、50…電動モータ、51…固定子、56…配線、72…配線姿勢保持部材、72a…リング部、72b…配線姿勢保持部。
Claims (5)
- 車両の走行駆動源からの動力が、ハウジングに支持された回転体装置を介して伝達されることでガスの圧縮を行うとともに、回転体装置に内蔵された電動モータの駆動によってもガスの圧縮を行うことが可能なハイブリッド圧縮機において、
前記ハウジングの前端面に設けられたボス部の外周面に対して前記電動モータの固定子を支持するための固定子ブラケットを嵌合固定し、該固定子ブラケットを形成するスリーブ又は該スリーブの内周面と前記ハウジング側のボス部の外周面との間に設けた配線通路から電動モータの配線を回転体装置の外方へ導出し、前記スリーブの外周面に係止段部を設け、この係止段部に、前記スリーブに設けた取り外し可能な係止手段によって、前記配線の姿勢を前記ハウジングの前端面との間で保持する配線姿勢保持部材を係止するようにしたことを特徴とするハイブリッド圧縮機におけるモータ配線の取出し構造。 - 前記固定子ブラケットのスリーブの外周面の所定位置には、前記回転体装置を構成するロータを支持するベアリングが嵌合固定され、このベアリングの内輪のハウジング側の一端面には、前記配線姿勢保持部材が係止されている請求項1に記載のモータ配線の取出し構造。
- 前記係止手段は、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面に対し周方向に形成された環状の係止溝と、この係止溝に取り外し可能に係止され、かつ前記配線姿勢保持部材のハウジング側の一側面を係止するサークリップ又はシーエス止め環である請求項1又は2に記載のモータ配線の取出し構造。
- 前記配線姿勢保持部材は、前記固定子ブラケットのスリーブの外周面に嵌合されるリング部と、このリング部の一部に半径方向外側に延びるように形成された配線姿勢保持部と、この配線姿勢保持部の先端部に折り曲げ形成され、かつハウジングの外周面に取り付けられる取付部とにより構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ配線の取出し構造。
- 前記ハウジングの前端面にはモータの配線を収容するための収容溝が形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ配線の取出し構造。
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