JP2004353108A - 塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ製造時におけるチップハンギングの発生を防止する。
【解決手段】頂部から細砕リグノセルロース物質と蒸解薬液とが供給されるベッセル内において上方位から、浸透ゾーンAと、蒸解ゾーンBと、洗浄ゾーンCとが形成されて、黒液がベッセルの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、浸透ゾーンAと蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインから一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセル内の液比を制御し、連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止する。
【選択図】図1
【解決手段】頂部から細砕リグノセルロース物質と蒸解薬液とが供給されるベッセル内において上方位から、浸透ゾーンAと、蒸解ゾーンBと、洗浄ゾーンCとが形成されて、黒液がベッセルの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、浸透ゾーンAと蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインから一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセル内の液比を制御し、連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、塔状ベッセル型の連続蒸解釜を使用して連続的にリグノセルロース物質からなるパルプ原料をパルプ化するパルプ製造方法に関し、さらに詳しくは、パルプ原料の連続蒸解中に生じるチップハンギング現象を可及的に防止し得るようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
塔状ベッセル型の連続蒸解釜(たとえば、いわゆるコンベンショナル連続蒸解釜、MCC型連続蒸解釜、EMCC型連続蒸解釜等の連続蒸解釜)では、塔状ベッセル内をリグノセルロース物質からなるパルプ原料(チップ)と蒸解薬液とが混合されて流動し、その間に、原料チップの蒸解が行われるが、この形式の連続蒸解釜では、従来、いわゆる「チップハンギング」という現象により、連続操業が中断されることがあった。
【0003】
「チップハンギング」というのは、塔状ベッセル内において降下中の原料チップが種々の要因(たとえば、チップ樹種の違いによるチップ含水率の変化、あるいは降雨等の天候変動によるチップ含水率の変化)によりベッセルの内壁面側に密集して塊状となり、その結果、原料チップの降下が円滑に行われなくなる現象のことである。
【0004】
チップハンギングが発生すると、その解消のため、連続蒸解釜の連続操業を中断しなければならなくなり、多大の損害が発生する。
【0005】
本願発明は、塔状ベッセル型連続蒸解釜における上記のような「チップハンギング」の問題を改善することを目的としてなされたものである。
【0006】
なお、連続蒸解釜におけるチップハンギング現象とその検知法に言及した公知文献としては、たとえば特開平8−247859号公報がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ製造方法は、上記の目的を達成するために、先ず、図1に例示するように、トップ循環フィードラインFにより塔状のベッセルV頂部から細砕リグノセルロース物質からなるパルプ原料と蒸解薬液とが供給されるとともに、前記ベッセルV内において上方位から、パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、パルプ原料中のリグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、パルプ原料中のセルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、前記蒸解薬液中にパルプ原料から分離したリグニン成分を含んで生成される黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルVの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインL6の循環液から一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセルV内の液比(液体分量と原料チップ絶乾量との比率)を制御し、もって連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止することを基本的特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
その場合において、上部循環ラインL6からの抜取り薬液量は、該上部循環ラインL6の薬液循環量の5〜12%の範囲とするのが好適である(5%未満では、蒸解ゾーンBの上部での溶解物質濃度が高く、蒸解薬液を消費しながらチップの分解を行うため、パルプ成分の歩留が低下する恐れがある。一方、12%超では、該溶解物質中のキシラン量が減少して同パルプ成分の歩留低下につながる)。また、この上部循環ラインL6には蒸解薬液(白液)W6を添加してもよく、あるいは添加しなくてもよい。上部循環ラインL6に白液を添加する場合は、ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液W0の量が上部循環ラインL6へ添加される蒸解薬液W6を含めた全蒸解薬液供給量の80〜90%となるようにするのが好適である。すなわち、80%未満では、浸透ゾーンAでのチップ中の有機酸である酢酸、蟻酸等を中和する蒸解薬液の量が不足して連続蒸解釜から出て来るパルプのカッパー価が高く、後工程である漂白工程での漂白薬品の使用量が増加しコストアップになる。あるいは当該出て来るパルプの目標カッパー価を得るために蒸解ゾーンBでの蒸解温度と薬液の添加量を上げることが必要となり、これによりチップが分解され、パルプ成分の歩留とパルプの強度が低下する。90%超では、蒸解薬液が多く残存して蒸解ゾーンBでの薬液の添加量は少なく、脱リグニン反応に必要な苛性ソーダ量が不足になり、未蒸解現象の恐れが生じる。
【0009】
図2は、図1に示す本願発明の基本的実施の形態に対してさらに、上部循環ラインL6に加え、前記上部循環ストレーナー2の下方位に設けた中部循環ストレーナー3からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる中部循環ラインL7を設け、前記上部循環ラインL6と中部循環ラインL7からも蒸解薬液W6,W7を添加するようにした実施の形態を示している。
【0010】
この場合においては、ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液W0の量が上部循環ラインL6及び中部循環ラインL7へ添加される蒸解薬液W6,W7を含めた全蒸解薬液供給量の70〜85%であるようにするのが好適である(中部循環ラインL7の稼動により蒸解ゾーンBの下部での脱リグニン反応が行われるため、浸透ゾーンAでの蒸解薬液W0の量が全蒸解薬液供給量の70%未満になるとチップ中の有機酸を中和する量が不足する。一方、85%を超すと、蒸解薬液が多く残存し、蒸解ゾーンBでの上部蒸解での溶解物質との反応を行い、結果として脱リグニン反応に必要な蒸解薬液の量が不足となる)。
【0011】
図3に示す実施の形態は、図2の実施の形態にさらに次のような構成を加えている。すなわち、図3の実施の形態では、図2の実施の形態における上部循環ラインL6からの薬液Z6抜き取りに加えて、抽出ストレーナー4及び該抽出ストレーナー4の下方に設けた下部循環ストレーナー5からも薬液(黒液)Z0,Z8を抜き取ってベッセルVからの薬液抜き取り個所を計3ヶ所として蒸解薬品回収工程ラインへ送り、且つ、前記上部循環ラインL6、前記抽出ストレーナー4からの抜き取り薬液量の和(Z6+Z0)と前記下部循環ストレーナー5からの抜き取り薬液量(Z8)の比率が1.00以上(Z6+Z0≧Z8)になるようにしている(クラフト蒸解法では、蒸解初期にチップのヘミセルロースであるキシランが分解・溶解されるが、これが蒸解終期にパルプ繊維に再吸着する特徴がある。したがって、該比率を1.00未満にすると、下部循環ストレーナー5からの抜き取り薬液量(Z8)が多く、再吸着となるキシランの量が減少し、結果としてパルプ成分歩留が低下する)。
【0012】
図4に示す実施の形態は、いわゆる修正蒸解法(MCC法)といわれている連続蒸解釜を示しており、その特徴は、中部循環ストレーナー3から抽出した蒸解液をヒーター11aで加熱したあと、抽出ストレーナー4と中部循環ストレーナー3の中間部に還流させるMCC循環ラインL7aを設け、同MCC循環ラインL7aに蒸解薬液(白液)W7aを供給するものである。この結果、この蒸解法では、蒸解薬液(白液)の添加個所は、トップ循環フィードラインFとMCC循環ラインL7aの2個所となり、蒸解ゾーンBにおいて向流蒸解(ベッセルV内で降下する原料チップに対して蒸解薬液が対向流となって流動しつつ蒸解作用が進行する)が行われる。
【0013】
図4に示す実施の形態においても、上部循環ストレーナー2から蒸解液を抽出したあと、これをヒーター9で加熱して上部循環ラインAに循環させる上部循環ラインL6と、下部循環ストレーナー5から抽出した蒸解液をヒータ13で加熱して洗浄ゾーンCへ循環させる下部循環ラインL8が形成されるとともに、本願発明の思想にしたがって、上部循環ラインL6から循環液の一部Z6を抜き取って、該抜取り薬液Z6を蒸解薬品回収工程ライン(フラッシュサイクロン)へ送流し、その抜取り薬液量を調節することにより、ベッセルV内の液比を制御してチップハンギングの発生を防止するようにしている。
【0014】
図4中、符号L7bは、中部循環ストレーナー3から抽出した薬液を蒸解ゾーンBへ循環させる中部循環ラインである。
【0015】
図5に示す実施の形態は、いわゆる拡張修正蒸解法(EMCC法)といわれている連続蒸解釜を示しており、その特徴は、図4に示すMCC法連続蒸解釜における下部循環ラインL8に対しても蒸解薬液(白液)W8を添加し、白液の添加個所を、トップ循環フィードラインF、MCC循環ラインL7aおよび下部循環ラインL8の3ケ所としたところにある。そして、このEMCC法連続蒸解釜においても、上部循環ラインL6から循環液の一部Z6を抜き取って、該抜取り薬液Z6を蒸解薬品回収工程ライン(フラッシュサイクロン)へ送流し、その抜取り薬液量を調節することにより、ベッセルV内の液比を制御してチップハンギングの発生を防止するようにしている。
【0016】
なお、図1〜図5のいずれの実施の形態においても、Hファクター250〜550の範囲でパルプ原料の蒸解を行うことが推奨される。すなわち、Hファクター250以下の場合、蒸解薬液の添加量が多く、蒸解後の残留アルカリの量も多く、パルプ成分の歩留が低下する。さらに、洗浄ゾーンCでの希釈係数(DF)が低いためパルプの洗浄度が劣り、連続蒸解釜の後工程である精選工程及び漂白工程への悪影響が起きる。一方、Hファクター550以上の場合、チップの熱分解によりパルプ成分の歩留が低下する。これらの理由から、Hファクター250〜550の範囲でパルプ原料の蒸解を行うのがよい。また、連続蒸解釜の断面の熱バランスと蒸解薬液の分散のバランス(マスバランス)によるパルプ成分の歩留の向上を図る理由から、連続蒸解釜内の液比がベッセルVのトップからボトムの方向に向けて小さくなるように薬液の抜き取りを制御することが推奨される。
【0017】
また、本願発明を実施するにあたっては、原料チップの種類は特に限定するものではないが、上記各実施の形態では、広葉樹チップが使用されている。
【0018】
【発明の効果】
本願発明は、上記のように、塔状のベッセルV頂部から細砕リグノセルロース物質からなるパルプ原料と蒸解薬液とが供給されるとともに、前記ベッセルV内において上方位から、パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、パルプ原料中のリグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、パルプ原料中のセルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、前記蒸解薬液中にパルプ原料から分離したリグニン成分を含んで生成される黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルVの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインL6の循環液から一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセルV内の液比を制御するようにしたものであり、それによって、連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止することを可能にした効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1の実施の形態の塔状ベッセル型連続蒸解釜の構造概念図である。なお、図1ないし図5中の※ ※間はラインLZ6が連続している。
【図2】本願発明の第2の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【図3】本願発明の第3の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【図4】本願発明の第4の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【図5】本願発明の第5の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【符号の説明】
1はトップセパレーター、2は上部循環ストレーナー、3は中部循環ストレーナー、4は抽出ストレーナー、5は下部循環ストレーナー、6はアウトレットデバイス、8,10,10a,10b,12はポンプ、9,11,11a,13はヒータ、Aは浸透ゾーン、Bは蒸解ゾーン、Cは洗浄ゾーン、L6は上部循環ライン、L7は中部循環ライン、L8は下部循環ライン、LZ0,LZ6,LZ8は薬液抽出ライン、W0,W6,W7,W7a,W8は白液である。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、塔状ベッセル型の連続蒸解釜を使用して連続的にリグノセルロース物質からなるパルプ原料をパルプ化するパルプ製造方法に関し、さらに詳しくは、パルプ原料の連続蒸解中に生じるチップハンギング現象を可及的に防止し得るようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
塔状ベッセル型の連続蒸解釜(たとえば、いわゆるコンベンショナル連続蒸解釜、MCC型連続蒸解釜、EMCC型連続蒸解釜等の連続蒸解釜)では、塔状ベッセル内をリグノセルロース物質からなるパルプ原料(チップ)と蒸解薬液とが混合されて流動し、その間に、原料チップの蒸解が行われるが、この形式の連続蒸解釜では、従来、いわゆる「チップハンギング」という現象により、連続操業が中断されることがあった。
【0003】
「チップハンギング」というのは、塔状ベッセル内において降下中の原料チップが種々の要因(たとえば、チップ樹種の違いによるチップ含水率の変化、あるいは降雨等の天候変動によるチップ含水率の変化)によりベッセルの内壁面側に密集して塊状となり、その結果、原料チップの降下が円滑に行われなくなる現象のことである。
【0004】
チップハンギングが発生すると、その解消のため、連続蒸解釜の連続操業を中断しなければならなくなり、多大の損害が発生する。
【0005】
本願発明は、塔状ベッセル型連続蒸解釜における上記のような「チップハンギング」の問題を改善することを目的としてなされたものである。
【0006】
なお、連続蒸解釜におけるチップハンギング現象とその検知法に言及した公知文献としては、たとえば特開平8−247859号公報がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ製造方法は、上記の目的を達成するために、先ず、図1に例示するように、トップ循環フィードラインFにより塔状のベッセルV頂部から細砕リグノセルロース物質からなるパルプ原料と蒸解薬液とが供給されるとともに、前記ベッセルV内において上方位から、パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、パルプ原料中のリグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、パルプ原料中のセルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、前記蒸解薬液中にパルプ原料から分離したリグニン成分を含んで生成される黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルVの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインL6の循環液から一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセルV内の液比(液体分量と原料チップ絶乾量との比率)を制御し、もって連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止することを基本的特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
その場合において、上部循環ラインL6からの抜取り薬液量は、該上部循環ラインL6の薬液循環量の5〜12%の範囲とするのが好適である(5%未満では、蒸解ゾーンBの上部での溶解物質濃度が高く、蒸解薬液を消費しながらチップの分解を行うため、パルプ成分の歩留が低下する恐れがある。一方、12%超では、該溶解物質中のキシラン量が減少して同パルプ成分の歩留低下につながる)。また、この上部循環ラインL6には蒸解薬液(白液)W6を添加してもよく、あるいは添加しなくてもよい。上部循環ラインL6に白液を添加する場合は、ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液W0の量が上部循環ラインL6へ添加される蒸解薬液W6を含めた全蒸解薬液供給量の80〜90%となるようにするのが好適である。すなわち、80%未満では、浸透ゾーンAでのチップ中の有機酸である酢酸、蟻酸等を中和する蒸解薬液の量が不足して連続蒸解釜から出て来るパルプのカッパー価が高く、後工程である漂白工程での漂白薬品の使用量が増加しコストアップになる。あるいは当該出て来るパルプの目標カッパー価を得るために蒸解ゾーンBでの蒸解温度と薬液の添加量を上げることが必要となり、これによりチップが分解され、パルプ成分の歩留とパルプの強度が低下する。90%超では、蒸解薬液が多く残存して蒸解ゾーンBでの薬液の添加量は少なく、脱リグニン反応に必要な苛性ソーダ量が不足になり、未蒸解現象の恐れが生じる。
【0009】
図2は、図1に示す本願発明の基本的実施の形態に対してさらに、上部循環ラインL6に加え、前記上部循環ストレーナー2の下方位に設けた中部循環ストレーナー3からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる中部循環ラインL7を設け、前記上部循環ラインL6と中部循環ラインL7からも蒸解薬液W6,W7を添加するようにした実施の形態を示している。
【0010】
この場合においては、ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液W0の量が上部循環ラインL6及び中部循環ラインL7へ添加される蒸解薬液W6,W7を含めた全蒸解薬液供給量の70〜85%であるようにするのが好適である(中部循環ラインL7の稼動により蒸解ゾーンBの下部での脱リグニン反応が行われるため、浸透ゾーンAでの蒸解薬液W0の量が全蒸解薬液供給量の70%未満になるとチップ中の有機酸を中和する量が不足する。一方、85%を超すと、蒸解薬液が多く残存し、蒸解ゾーンBでの上部蒸解での溶解物質との反応を行い、結果として脱リグニン反応に必要な蒸解薬液の量が不足となる)。
【0011】
図3に示す実施の形態は、図2の実施の形態にさらに次のような構成を加えている。すなわち、図3の実施の形態では、図2の実施の形態における上部循環ラインL6からの薬液Z6抜き取りに加えて、抽出ストレーナー4及び該抽出ストレーナー4の下方に設けた下部循環ストレーナー5からも薬液(黒液)Z0,Z8を抜き取ってベッセルVからの薬液抜き取り個所を計3ヶ所として蒸解薬品回収工程ラインへ送り、且つ、前記上部循環ラインL6、前記抽出ストレーナー4からの抜き取り薬液量の和(Z6+Z0)と前記下部循環ストレーナー5からの抜き取り薬液量(Z8)の比率が1.00以上(Z6+Z0≧Z8)になるようにしている(クラフト蒸解法では、蒸解初期にチップのヘミセルロースであるキシランが分解・溶解されるが、これが蒸解終期にパルプ繊維に再吸着する特徴がある。したがって、該比率を1.00未満にすると、下部循環ストレーナー5からの抜き取り薬液量(Z8)が多く、再吸着となるキシランの量が減少し、結果としてパルプ成分歩留が低下する)。
【0012】
図4に示す実施の形態は、いわゆる修正蒸解法(MCC法)といわれている連続蒸解釜を示しており、その特徴は、中部循環ストレーナー3から抽出した蒸解液をヒーター11aで加熱したあと、抽出ストレーナー4と中部循環ストレーナー3の中間部に還流させるMCC循環ラインL7aを設け、同MCC循環ラインL7aに蒸解薬液(白液)W7aを供給するものである。この結果、この蒸解法では、蒸解薬液(白液)の添加個所は、トップ循環フィードラインFとMCC循環ラインL7aの2個所となり、蒸解ゾーンBにおいて向流蒸解(ベッセルV内で降下する原料チップに対して蒸解薬液が対向流となって流動しつつ蒸解作用が進行する)が行われる。
【0013】
図4に示す実施の形態においても、上部循環ストレーナー2から蒸解液を抽出したあと、これをヒーター9で加熱して上部循環ラインAに循環させる上部循環ラインL6と、下部循環ストレーナー5から抽出した蒸解液をヒータ13で加熱して洗浄ゾーンCへ循環させる下部循環ラインL8が形成されるとともに、本願発明の思想にしたがって、上部循環ラインL6から循環液の一部Z6を抜き取って、該抜取り薬液Z6を蒸解薬品回収工程ライン(フラッシュサイクロン)へ送流し、その抜取り薬液量を調節することにより、ベッセルV内の液比を制御してチップハンギングの発生を防止するようにしている。
【0014】
図4中、符号L7bは、中部循環ストレーナー3から抽出した薬液を蒸解ゾーンBへ循環させる中部循環ラインである。
【0015】
図5に示す実施の形態は、いわゆる拡張修正蒸解法(EMCC法)といわれている連続蒸解釜を示しており、その特徴は、図4に示すMCC法連続蒸解釜における下部循環ラインL8に対しても蒸解薬液(白液)W8を添加し、白液の添加個所を、トップ循環フィードラインF、MCC循環ラインL7aおよび下部循環ラインL8の3ケ所としたところにある。そして、このEMCC法連続蒸解釜においても、上部循環ラインL6から循環液の一部Z6を抜き取って、該抜取り薬液Z6を蒸解薬品回収工程ライン(フラッシュサイクロン)へ送流し、その抜取り薬液量を調節することにより、ベッセルV内の液比を制御してチップハンギングの発生を防止するようにしている。
【0016】
なお、図1〜図5のいずれの実施の形態においても、Hファクター250〜550の範囲でパルプ原料の蒸解を行うことが推奨される。すなわち、Hファクター250以下の場合、蒸解薬液の添加量が多く、蒸解後の残留アルカリの量も多く、パルプ成分の歩留が低下する。さらに、洗浄ゾーンCでの希釈係数(DF)が低いためパルプの洗浄度が劣り、連続蒸解釜の後工程である精選工程及び漂白工程への悪影響が起きる。一方、Hファクター550以上の場合、チップの熱分解によりパルプ成分の歩留が低下する。これらの理由から、Hファクター250〜550の範囲でパルプ原料の蒸解を行うのがよい。また、連続蒸解釜の断面の熱バランスと蒸解薬液の分散のバランス(マスバランス)によるパルプ成分の歩留の向上を図る理由から、連続蒸解釜内の液比がベッセルVのトップからボトムの方向に向けて小さくなるように薬液の抜き取りを制御することが推奨される。
【0017】
また、本願発明を実施するにあたっては、原料チップの種類は特に限定するものではないが、上記各実施の形態では、広葉樹チップが使用されている。
【0018】
【発明の効果】
本願発明は、上記のように、塔状のベッセルV頂部から細砕リグノセルロース物質からなるパルプ原料と蒸解薬液とが供給されるとともに、前記ベッセルV内において上方位から、パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、パルプ原料中のリグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、パルプ原料中のセルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、前記蒸解薬液中にパルプ原料から分離したリグニン成分を含んで生成される黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルVの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインL6の循環液から一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセルV内の液比を制御するようにしたものであり、それによって、連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止することを可能にした効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1の実施の形態の塔状ベッセル型連続蒸解釜の構造概念図である。なお、図1ないし図5中の※ ※間はラインLZ6が連続している。
【図2】本願発明の第2の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【図3】本願発明の第3の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【図4】本願発明の第4の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【図5】本願発明の第5の実施の形態の連続蒸解釜の構造概念図である。
【符号の説明】
1はトップセパレーター、2は上部循環ストレーナー、3は中部循環ストレーナー、4は抽出ストレーナー、5は下部循環ストレーナー、6はアウトレットデバイス、8,10,10a,10b,12はポンプ、9,11,11a,13はヒータ、Aは浸透ゾーン、Bは蒸解ゾーン、Cは洗浄ゾーン、L6は上部循環ライン、L7は中部循環ライン、L8は下部循環ライン、LZ0,LZ6,LZ8は薬液抽出ライン、W0,W6,W7,W7a,W8は白液である。
Claims (10)
- 塔状のベッセルV頂部から細砕リグノセルロース物質からなるパルプ原料と蒸解薬液とが供給されるとともに、前記ベッセルV内において上方位から、パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、パルプ原料中のリグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、パルプ原料中のセルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、前記蒸解薬液中にパルプ原料から分離したリグニン成分を含んで生成される黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルVの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにした塔状ベッセル型連続蒸解釜において、前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設けるとともに、該上部循環ラインL6の循環液から一部の薬液Z6を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセルV内の液比を制御し、連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止することを特徴とする塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 前記上部循環ラインL6からの抜き取り薬液量が上部循環ラインL6の薬液循環量の5〜12%であることを特徴とする請求項1記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 前記上部循環ラインL6からも蒸解薬液W6を添加することを特徴とする請求項1又は2記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 前記上部循環ラインL6に加え、前記上部循環ストレーナー2の下方位に設けた中部循環ストレーナー3からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる中部循環ラインL7を設け、前記上部循環ラインL6と中部循環ラインL7からも蒸解薬液W6,W7を添加することを特徴とする請求項1又は2記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液W0の量が上部循環ラインL6へ添加される蒸解薬液W6を含めた全蒸解薬液供給量の80〜90%であることを特徴とする請求項3記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液W0の量が上部循環ラインL6及び中部循環ラインL7へ添加される蒸解薬液W6,W7を含めた全蒸解薬液供給量の70〜85%であることを特徴とする請求項4記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 前記上部循環ラインL6からの薬液Z6抜き取りに加えて、前記抽出ストレーナー4及び該抽出ストレーナー4の下方に設けた下部循環ストレーナー5からも薬液Z0,Z8を抜き取ってベッセルVからの薬液抜き取り個所を計3ヶ所として蒸解薬品回収工程ラインへ送り、且つ、前記上部循環ラインL6、前記抽出ストレーナー4からの抜き取り薬液量の和と前記下部循環ストレーナー5からの抜き取り薬液量の比率が1.00以上になるようにすることを特徴とする請求項1又は2記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- Hファクター250〜550の範囲でパルプ原料の蒸解を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 連続蒸解釜内の液比がベッセルVのトップからボトムの方向に向けて小さくなるように薬液の抜き取りを制御することを特徴とする請求項7記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- パルプ原料が広葉樹チップであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の塔状ベッセル型連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
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