JP2004300603A - コンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】連続蒸解釜を改良、操業条件を改善し、パルプの歩留と品質向上を図る。
【解決手段】パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、リグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、セルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分が下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにしたコンベンショナル連続蒸解釜において、蒸解ゾーンの容積を、ベッセルの容積の40〜50%とする。浸透ゾーンと蒸解ゾーンとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6と、中部循環ストレーナー3からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる中部循環ラインL7とを設ける。上部循環ラインの循環液から一部を抜き取り、薬品回収工程へ送り、ベッセル内の液量を制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、リグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、セルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分が下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにしたコンベンショナル連続蒸解釜において、蒸解ゾーンの容積を、ベッセルの容積の40〜50%とする。浸透ゾーンと蒸解ゾーンとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6と、中部循環ストレーナー3からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる中部循環ラインL7とを設ける。上部循環ラインの循環液から一部を抜き取り、薬品回収工程へ送り、ベッセル内の液量を制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、リグノセルロース物質を連続的にパルプ化する方法に関し、特に、いわゆるコンベンショナル連続蒸解釜によるクラフトパルプ製造における歩留(収率)及び品質の改善されたパルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
紙の主成分はパルプで、この主成分を分類すると機械パルプ、古紙(脱墨)パルプ、半化学パルプおよび化学パルプの4種がある。20世紀後半の化学パルプの主な製造法は、「クラフト法(硫酸塩法)」と「ソーダ法」の2アルカリ性蒸解法である。パルプ強度、歩留、蒸解薬液回収の容易さの総合的面においては、ソーダ法よりもクラフト法の方が工業的に、大規模に実施されている。クラフト法の蒸解薬液中には、苛性ソーダと硫化ソーダが主流で白液と称される。クラフトパルプの原料は木材と非木材のリグノセルロース物質であり、その内、木材は広葉樹、針葉樹、非木材はバガス、竹、ケナフ、藁等が含まれている。クラフトパルプの蒸解装置についてはバッチ釜と連続蒸解釜(以下「連釜」と略称する)の2種があり、日本国内では連釜が主流である。さらに、連釜は、2塔(浸透釜と蒸解釜)および1塔蒸解釜の2方式で、いずれの連釜でも気相/液相と液相の2種がある。
【0003】
従来のクラフトパルプ蒸解法を説明するために、例として1塔気相/液相連釜(コンベンショナル連続蒸解釜)の各蒸解ゾーンを図2に記載する。この連釜は、連釜トップからボトムまでの間に、トップセパレーター1、上部循環ストレーナー2、抽出ストレーナー4、中部循環ストレーナー3、下部循環ストレーナー5、アウトレットデバイス6が順次設置されている。一般に、トップセパレーター1から上部循環ストレーナー2の間は浸透ゾーンA、上部循環ストレーナー2から抽出ストレーナー4の間は蒸解ゾーンB、中部循環ストレーナー3から下部循環ストレーナー5の間は洗浄ゾーンCと分かれている。パルプ原料であるチップ(細砕リグノセルロース物質)と蒸解薬液(白液)を含むチップスラーリーは、トップ循環フィードラインFにて連釜トップへ運ばれ、トップセパレーター1で液がトップ循環ポンプへ戻り、チップは釜内に入る。浸透ゾーンAの蒸解液は、上部循環ストレーナー2より抽出され、ヒータ9で加熱後、上部循環ラインL6を経て連釜に再循環せしめられる。同様に、蒸解ゾーンBの蒸解液が中部循環ストレーナー3より抽出され、ヒータ11で加熱後、中部循環ラインL7を経て連釜に再循環せしめられる。下部循環ラインL8でも蒸解液がヒータ13により加熱されて循環せしめられる。図2中、符号8,10,12は蒸解液循環用ポンプである。洗浄ゾーンCの温度は高いため、ハイヒート洗浄ゾーンと呼ばれ、洗浄水及び蒸解黒液(Z0)は抽出ストレーナー4より抽出され、フラッシュサイクロンにて廃蒸気を回収した後、蒸解薬品回収工程へ流送される。一方、蒸解パルプは、アウトレットデバイス6より抜き取られる。
【0004】
従来のコンベンショナル蒸解法というクラフトパルプ製造法では、バッチ釜、連釜、いずれであっても処理の最初のところで白液の全量が注入され、蒸解が進行すると白液がパルプ化反応にて消費され、蒸解終期でのアルカリ濃度が減少する。しかし、溶解したリグニンは、パルプへの再吸着を防止するため、ある程度の残留アルカリが必要となる。また、コンベンショナル連釜の場合においては、白液とチップは、連釜トップからボトムまで併流する。
【0005】
一方、1970年代後半から1980年代初期にかけてスェーデンの林産研究所(STFI)の A. Teder らが、アルカリ推移の「平準化」という技術を発明した。これは、蒸解初期アルカリ濃度を減少し、蒸解終期アルカリ濃度を増加させる技術である。蒸解工程中のアルカリ濃度を平準化するには、白液を導入し、黒液(蒸解廃液)を抽出することが必要になる。これにより、白液分割添加と向流蒸解(MCCゾーンという)とを特徴とするこの方法は、「修正蒸解法(MCC法)」と呼ばれている(Svensk Papperstidning 81(15):483(1978);Ibidem 87(10):30(1984);Tappi Journal 62(7):49(1979))。MCC法は、未晒パルプの粘度を保持しながら残留リグニン(カッパー価)を減少させることを可能にする方法として知られている。
【0006】
なお、白液分割添加と向流蒸解とを行うクラフトパルプ製造法としては、上記のMCC法のほかに、いわゆるEMCC法(拡張修正蒸解法)、ITC法(全釜等温蒸解法)等が知られている。
【0007】
上記のような、向流蒸解ゾーンをもつ各種蒸解方法は、白液添加場所、黒液抜き取り場所それぞれ1ヶ所、そして、向流蒸解ゾーンのない従来のコンベンショナル蒸解法に比べてパルプの歩留と品質が向上するという利点はあるが、従来のコンベンショナル蒸解法に対して構造が複雑となる難点がある。これに対し、本願発明は、向流蒸解ゾーンのないコンベンショナル蒸解法における改善により、ITC法等の蒸解法と同等以上の効果(主として、パルプ歩留とパルプ品質の向上)を達成できる蒸解方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、以下のいくつかの技術上の知見を適宜組合わせることにより、構成されるものである。
【0009】
(1) 向流蒸解ゾーンのないコンベンショナル連釜で抽出ストレーナーを下げて蒸解ゾーンを拡大することによりパルプ生産高を増大させる。
【0010】
(2) 白液添加は、単独添加方法から分割添加方法に変える。
【0011】
(3) 白液分割添加の最適添加割合を見出す。
【0012】
(4) 上部循環ラインの循環液の一部分を抜き取り、蒸解薬品回収工程へ送り出すことによりチップ水分の変動(例えば雨によるチップ水分の増加)にもかかわらず連釜内の液量を制御することが可能で、連釜内の「チップハンギング」問題を解決し、パルプ生産を連続的に安定させることができる。なお、「チップハンギング」というのは、連釜の3〜4ストレーナーの内、一つのストレーナー(一般的には抽出ストレーナー)で、連釜壁内外の圧力差が増え、連釜壁内側のチップの下方向への動きが止まり、結果として連釜トップでのチップレベルが液レベルより高くなり、連釜内へのチップチャージが不可能になりパルプ生産を止めなければならなくなる現象をいう。
【0013】
(5) 連釜上部、下部蒸解ゾーンの抽出黒液量と連釜下部の抽出黒液量の比率が高いほどパルプ歩留が向上する。
【0014】
(6) 蒸解度(すなわち目標カッパー価)を制御するには、高Hファクターから低Hファクターに変更してパルプ歩留を向上させる。なお、Hファクターとは、蒸解への影響因子である白液添加率(チップ絶乾重量に対する白液添加量の割合)、温度と時間の内、全ての蒸解サイクルの温度と時間を一つの数値として表す方法である。この数値をHファクターと呼ぶ。言い替えると、相対蒸解反応速度(100℃の反応速度を1とした各蒸解温度での相対値)での蒸解時間に対してプロットした曲線の領域で表現している。
【0015】
(7) 連続蒸解釜内の液比がベッセルVのトップからボトムの方向に向けて小さくなるようにすると、パルプ歩留が向上する(液比とは、連釜内の液成分と連釜内のチップ絶乾重量の比率で、連釜内の液成分は添加白液量、チップ中の水分量、連釜トップでの加熱蒸気によるドレン量の総合量である。)。
【0016】
以下、本願発明を構成する上記各知見とその組合せの内容を図1に示すコンベンショナル連釜改良例を参照して説明する。
【0017】
先ず、本願発明の改良コンベンショナル連釜以前の改良前のコンベンショナル連釜の当初の構造は図2と同様で、白液の全量は連釜トップに添加して上部循環ラインL6では上部ストレーナー2から蒸解液をポンプ8にて抜き取り、ヒーター9を通じて加熱を行なった後連釜内へ戻り、下部循環ラインL8でも同様な作業を実施する。一方、中部循環ラインL7は稼動せず、抽出黒液Z0は抽出ストレーナー4から抜き取り、フラッシューサイクロンにて廃熱を回収した後、蒸解薬品工程の黒液濃縮設備へ流送する。
【0018】
これに対し、図1に示すように、抽出ストレーナー4を中部循環ストレーナー3と下部循環ストレーナー5の中間に移設し、上部循環ストレーナー2と抽出ストレーナー4の間に形成される蒸解ゾーンB(B1+B2)の容積を連釜ベッセルVの全体容積に対して50%まで拡大させる(上記知見(1)の内容)。これにより、図2に示す改良前のコンベンショナル連釜(蒸解ゾーンBの容積=連釜ベッセルVの全体容積に対して29%)に対してパルプ生産高が220%拡大した。また、Hファクターも減少し、パルプ歩留も向上した(45%〜46.5%→48.5%〜52.5%)。
【0019】
上記(2)の知見についていえば、よりパルプ歩留の向上を図るために蒸解温度を下げることが重要になる。この目的を達成する第1の方法としては、白液添加場所として上部循環ラインL6を追加しトップを含めて計2ヶ所とする。この場合、添加白液全量の80%〜90%(W0)を連釜トップに、残り20%〜10%(W6)をポンプ8のサクション側に添加することによってHファクターが下げられ、パルプ歩留が2ポイント(%)向上した。その後、第2の方法として、中部循環ラインL7を追加稼動して、更にポンプ10のサクション側に白液(W7)を添加し、ヒーター11で加熱して連釜内へ循環を行なう(図1の改良例では、これにより下部循環ラインL8のヒーターが省略される。)。そして、下部循環ラインL8から黒液の一部分(Z8)を抜き取り、抽出ストレーナー4から抜き取った黒液(Z0)と混合してフラッシューサイクロンへ流送する。この蒸解方法を行なうとHファクターが更に下げられ、パルプ歩留は更に2ポイント(%)向上した。
【0020】
次に、上記(3)の知見についていえば、白液添加場所である連釜トップ、上部循環ラインL6、中部循環ラインL7での添加比率は、各々60〜90%、15〜25%、1〜20%の範囲で変動させて、同一Hファクターで比較すると上部、中部循環ラインでの白液添加比率の変動よりもむしろ連釜トップでの白液添加比率を高くすると歩留が向上する傾向が見られた。このため、連釜トップでの白液添加比率を80〜90%(上記第1の方法の場合)又は70〜85%(上記第2の方法の場合)の範囲に維持するものである。
【0021】
次に、上記(4)の知見についていえば、パルプ生産においては継続安定生産が最も重要因子であるが、以上に記載したようにチップ水分が高くなると連釜内の液量が増加し、結果としてコンベンショナル連釜内のチップハンギングの問題が発生して生産が停止することがよく起きる。このため、図1に示すように、白液添加場所を連釜トップ1、上部循環ラインL6と中部循環ラインL7に分割して白液添加した後、連釜内の液量を制御するために上部循環ラインL6の循環液の一部分を抜き取り、この抽出黒液(Z6)をフラッシューサイクロンへ送り、廃熱を回収してから黒液濃縮工程へ流送することにより、連釜内のハンギング回数をほぼゼロ回にまで減少させ、パルプ生産を連続的に行うことが可能になった。上部循環ラインL6から抜き取る黒液(Z6)の量は、チップ水分にもよるが、一般的にこのラインの循環量の5〜12%が好適である。蒸解薬品回収工程へ送る上部循環ラインL6から抜き取る黒液(Z6)は単独でも良く、また抽出ストレーナー4からの抽出黒液(Z0)、下部循環ラインL8より抜き取る黒液(Z8)と混合しても良い。
【0022】
次に、上記(5)の知見について説明すると、図1のコンベンショナル連釜のトップからボトムまでを見ると上部蒸解ゾーンB1から上部循環ラインL6を介して抜き取る黒液(Z6)と下部蒸解ゾーンB2の抽出ストレーナー4より抜き取る黒液(Z0)の総量は、洗浄ゾーンC(図1に示すコンベンショナル連釜では、この洗浄ゾーンCでも蒸解作用が行われるため、以下、この明細書においては、この「洗浄ゾーン」を必要に応じて「底部蒸解ゾーン」ということがある)の下部循環ラインL8から抜き取る黒液量(Z8)との比率のパルプ歩留への影響を検討した結果、Hファクター265〜310の範囲において、その比率は0.93から徐々に1.02、1.17と高くするとパルプ歩留が向上した。すなわち下部循環ラインL8の抽出液量(Z8)を減らせればパルプ歩留は高く、最終脱リグニン段階がパルプ歩留に大きく影響することが示されたため、高いパルプ歩留を得るには上部と下部蒸解ゾーンB1,B2の抽出黒液合計量(Qa)と洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)Cの抽出黒液量(Qb)との比率を1.0以上(Qa≧Qb)とするのが好適である。
【0023】
次に、上記(6)の知見についていえば、絶乾チップ総重量に対する白液総添加率21.0〜22.5%の範囲では、Hファクターを1239から1020、672、541、310、265に減少させた場合、パルプ歩留が最大6.6ポイント(%)上がったため、各循環ラインにはできるだけ蒸解液を循環させて蒸解温度(Hファクター)を下げ、パルプ歩留の向上を図ることが好ましい。
【0024】
さらに、上記(7)の知見についていうと、前記の白液添加率、Hファクター以外に、クラフト蒸解釜での液比はパルプ歩留と品質に大きく影響する。図3に示すように、ラボテストでは、どのカッパー価でも液比6.0より液比3.2での広葉樹クラフトパルプ歩留が高い結果を示している。このため、本願発明では、連釜トップでの液比(たとえば3.0)に対し、連釜ボトムは蒸解が進むほど液比が減少するようにし(たとえば1.4)、パルプ歩留を高めることとしている。
【0025】
本願発明を実施するには種々のリグノセルロース物質を使用することができる。例えば針葉樹チップ、広葉樹チップ、非木材原材料(竹、バガス、ケナフ、ワラ等)を挙げることができる。なお、上記いずれの場合にあっても、蒸解薬液とパルプ原料とはベッセルVのトップからボトムまで併流となって流下する。
【0026】
【実施例】
以下、本願発明を広葉樹クラフトパルプ蒸解法に応用したいくかの実施例と、本願発明の技術的優位性を示すための比較例を示す。しかし、本願発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に示す各実施例及び各比較例においては、蒸解原料である広葉樹チップとしては、ユーカリグロビューラス単独、ユーカリユ−ロフィラ単独、オーク、ユーカリデレガテンシス、ユーカリテレティコルニスの混合、ユーカリエラタ、ユーカリファスティガタ、ユーカリナイテンスの混合のチップ配合を使用した。蒸解薬液としては、活性アルカリ105〜110g/L(Na2O換算)と硫化度28〜30%の白液を使用した。(活性アルカリ(AA)=NaOH + Na2S;硫化度(S)=(Na2S÷AA)×100)。
【0027】
<パルプ歩留(収率)の測定法>
本願発明による改良コンベンショナル連釜によるパルプ製造方法の優位性を示すため実機(テスト機)生産歩留を使用し、その歩留は月頭から月末までの一ヶ月間の抄紙機で使用したパルプを連釜で使用したチップの絶乾重量で除した数を重量%で表記して、実機(テスト機)生産パルプ歩留(収率)とした。
【0028】
<パルプ品質の測定>
実機(テスト機)生産パルプは、カッパー価、比引裂強度、裂断長等の品質を下記の方法により測定した。
【0029】
<カッパー価の測定法>
「JIS P8211」記載の方法により、カッパー価を測定した。
【0030】
パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度(フリーネス)で、500mLに調製した後、「JIS P8222及びJIS P8223」記載の方法で、手抄シートを作成し、紙質試験に供した。
【0031】
<裂断長の測定法>
裂断長は、「JIS P8113」記載の方法で測定した。
【0032】
<比引裂強度の測定法>
比引裂強度は、「JIS P8116」記載の方法により測定した。
【0033】
<実施例1及び比較例1,2>
実施例として使用する改良コンベンショナル連釜の元仕様は、全容量:980m3、LUKP(広葉樹未晒パルプ)設計生産量:730ADT(風乾トン)/日、白液添加:連釜トップでの100% 投入となっており、各ストレーナーの位置は図2と同様である。これらの条件を基に蒸解を行なった比較例1において、当初、中部循環ラインL7を稼動しない蒸解を実施し、LUKP生産高は673ADT/日、LUKP歩留は46.1%との操業結果であった。その後、LUKP生産高を744ADT/日へ増産し、設計値730ADT/日より少し上回ったものを比較例2とした。
【0034】
この比較例2における(チップ絶乾重量に対する)LUKP歩留は45.4%であった。
【0035】
このあと、図2に示す従来構造のコンベンショナル連釜を、図1に示すように改造し、実施例用のテスト機(改良コンベンショナル連続蒸解釜)とした。このコンベンショナル連続蒸解釜は、図1に示すように、中部循環ストレーナー3と下部循環ストレーナー5との間に抽出ストレーナー4を設置し、図2の従来装置との対比で洗浄ゾーンCを38%縮小させる一方、蒸解ゾーンB(上部蒸解ゾーンB1+下部蒸解ゾーンB2)を58%拡大した。この結果、蒸解ゾーンBの容積は、ベッセルVの全容積の50%となった。
【0036】
以下の表1における実施例1は、図1のテスト機を使用して各表示欄の操業条件により操業した結果を示している。この実施例1においては、LUKP生産高は1302ADT/日、LUKP歩留は48.6%で比較例1,2に対して2.5〜3.2%向上した。
【0037】
【表1】
【0038】
<実施例2,3>
次に、図1に示す改造コンベンショナル連釜を用い、LUKP生産高を徐々に増産し、これに伴いHファクターを下げ、同時に中部循環ラインL7を稼動し、白液添加場所は従来の連釜トップのみからトップ、上部循環ラインL6の2ヶ所(実施例2)、更に中部循環ラインL7を加えて計3ヶ所(実施例3)とし、パルプの増産とパルプ品質の保護を図った。実施例2ではLUKP生産高1320ADT/日にて中部循環ラインL7を稼動したが、白液添加場所は連釜トップと上部循環ラインL6の2ヶ所で蒸解を行い、LUKP歩留は50.6%であった。実施例3としてはLUKP生産高1614ADT/日にて中部循環ラインL7を追加稼動し、白液添加場所は連釜トップ、上部循環ラインL6と中部循環ラインL7の3ヶ所で蒸解を行った。LUKP歩留は51.8%であった。白液分割添加の効果を検証するために、表1の実施例1を表2の実施例2,3のための比較例3とした。比較例1〜3のLUKP歩留46.1%〜48.6%に対し実施例2,3ではLUKP歩留が50.6%〜51.8%で3〜4.5%ポイント高くなった。
【0039】
【表2】
【0040】
<実施例4〜7>
上記表2では、連釜トップでの白液添加比率を100%から85.2%、81.7%に減少するとブローカッパー価20.5〜21.0の範囲でのLUKP歩留が48.6%、50.6%、51.8%に向上したことがわかった。さらに同一Hファクター340で比較した場合、連釜トップでの白液添加割合75%の実施例4は白液添加割合63%の実施例5に比べ、LUKP歩留が高い結果がでた。一方、同一のHファクター270とトップでの白液添加割合75% 時の実施例6と7のLUKP歩留はほぼ同等であり、上記表2の実施例3のHファクター370と添加割合82% 時のLUKP歩留51.8%と同等のことよりLUKP歩留の向上を図るためには連釜トップでの白液添加割合70〜85%の範囲が望ましく、初期蒸解での高硫化水素濃度が必要なことがわかった。実施例4〜7を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
<実施例8、比較例4>
本願発明の改良前のコンベンショナル連釜(図2)においては、抽出ストレーナー4と下部循環ストレーナー5より黒液を抜き取るにもかかわらず、天候(雨季等)によるチップ水分の増加が連釜内の液比を増大させ、液面とチップレベルの差異が大きくなるため連釜内のチップハンギング現象が起きた。そこで、連釜内の液比を減少・制御するため、図1の上部循環ラインL6の循環液から一部(Z6)を抜き取ることにより連釜内のチップハンギング回数をほぼゼロにすることができ、パルプの連続生産を可能にした。表4に示す比較例4は上部循環ラインL6の循環液の部分抜き取り実施前、実施例8は液抜き取り実施後の連釜内のチップハンギング回数結果を示す。
【0043】
【表4】
【0044】
<実施例9〜11>
実施例9,10,11は、図1に示す構造のテスト用改良コンベンショナル連続蒸解釜において、液抜き取り場所を上部循環ラインL6、抽出ストレーナー4及び下部循環ラインL8の計3ヶ所とし、上部循環ラインL6と抽出ストレーナー4から抜き取る黒液は上・下部蒸解ゾーン抽出黒液(合計抜取り量Qa)とし、下部循環ラインL8から抜き取る黒液は洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)抽出黒液(抜取り量Qb)とし、操業実績では、これらの抽出黒液の比率(Qa/Qb)は、0.93から1.02、1.17に増加させた場合、LUKP歩留が向上する傾向が確認された。したがって、洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)抽出黒液を多く抜き取ると再吸着キシラン量が少なく、歩留が減少する結果が認められた。上・下部蒸解ゾーン抽出黒液量(Qa)と洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)抽出黒液量(Qb)の比率(Qa/Qb)は、0.93が実施例9、1.02が実施例10、1.17が実施例11であり、各結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
前記の比較例1〜4と実施例1〜11を見ると、Hファクターを1239(比較例1)から1020(比較例2)、672(実施例1)、541(実施例2)、370(実施例3)〜337(実施例5)と310(実施例10)、273〜277(実施例7、比較例4、実施例9)と265(実施例6、8,11)に下げるとセルロースとヘミセルロースの分解が減少するため、LUKP歩留が46.1%から48.6%、50.6%、51.1〜51.8%、51.8〜52.0%に向上し、高歩留を得るためにはHファクターが300以下、望ましくは250〜280とする蒸解方法が好適であることが認められた。
【0047】
<実施例12、13及び比較例5、6、7>
連釜トップでの液比は連釜に導入するチップ量(絶乾重量)、チップ水分、白液使用量、加熱用蒸気からのドレンの値を基に算出され、連釜ボトムでの液比はブローパルプの濃度を測定するが、連釜本体部分の液比については、算出と測定共に不可能なのでブロー差圧(アウトレットデバイスの内部と外部の圧力差)から判断する方法しかないと考えられる。表6に示す比較例5〜7では、ブロー差圧3.7〜3.9m時(連釜内の液比が高い)の歩留51.0〜51.8%に対し、実施例12,13でのブロー差圧5.8〜6.8m時(連釜内の液比が低い)の歩留が52.3%、52.4%と高く、且つ、ブローカッパー価は低い。このように、連釜内の液比を低くすると、高歩留を図ることができた。これらの結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明を構成する各請求項の発明には次のような効果がある。
【0050】
(1) 従来から公知のコンベンショナル連続蒸解釜を原型として、これに改良を加える(蒸解ゾーンBの容積をベッセルVの容積の40〜50%に拡大する)ことにより、パルプ歩留とパルプ品質を向上させることができるので、比較的安価な設備コストで高歩留りで且つ高品質のパルプを生産することができる。
【0051】
(2) 蒸解薬液を、ベッセルトップ、上部循環ラインL6、中部循環ラインL7等に分割添加し、且つその分割添加比率を最適に設定することより、上記(1)の効果をさらに増大させることができる。
【0052】
(3) 上部循環ラインL6、中部循環ストレーナー3、下部循環ストレーナー5等から抜き取る黒液の液量を適切に制御することにより、上記(1)の効果に加えて、チップハンギングを防止して高効率でパルプを生産し得るという効果が得られる。
【0053】
(4) 本願発明によるコンベンショナル連続蒸解釜を好適なHファクターで操業することにより、さらにパルプ歩留を向上させることができる。
【0054】
(5) 本願発明によるコンベンショナル連続蒸解釜を操業するにあたり、ベッセル内での液比を適切に制御する(トップからボトムにかけて液比が小さくなるようにする)ことにより、さらに高歩留で高品質のパルプを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明を実施するための改良コンベンショナル連続蒸解釜の構造概念図である。なお、図1中の※ ※間はラインZL6が連続している。
【図2】従来公知のコンベンショナル連続蒸解釜の構造概念図である。
【図3】ラボテスト蒸解によるLUKP総歩留とカッパー価の相関関係図である。
【符号の説明】
1はトップセパレーター、2は上部循環ストレーナー、3は中部循環ストレーナー、4は抽出ストレーナー、5は下部循環ストレーナー、6はアウトレットデバイス、8,10,12はポンプ、9,11,13はヒータ、Aは浸透ゾーン、Bは蒸解ゾーン、Cは洗浄ゾーン、L6は上部循環ライン、L7は中部循環ライン、L8は下部循環ライン、Vはベッセルである。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、リグノセルロース物質を連続的にパルプ化する方法に関し、特に、いわゆるコンベンショナル連続蒸解釜によるクラフトパルプ製造における歩留(収率)及び品質の改善されたパルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
紙の主成分はパルプで、この主成分を分類すると機械パルプ、古紙(脱墨)パルプ、半化学パルプおよび化学パルプの4種がある。20世紀後半の化学パルプの主な製造法は、「クラフト法(硫酸塩法)」と「ソーダ法」の2アルカリ性蒸解法である。パルプ強度、歩留、蒸解薬液回収の容易さの総合的面においては、ソーダ法よりもクラフト法の方が工業的に、大規模に実施されている。クラフト法の蒸解薬液中には、苛性ソーダと硫化ソーダが主流で白液と称される。クラフトパルプの原料は木材と非木材のリグノセルロース物質であり、その内、木材は広葉樹、針葉樹、非木材はバガス、竹、ケナフ、藁等が含まれている。クラフトパルプの蒸解装置についてはバッチ釜と連続蒸解釜(以下「連釜」と略称する)の2種があり、日本国内では連釜が主流である。さらに、連釜は、2塔(浸透釜と蒸解釜)および1塔蒸解釜の2方式で、いずれの連釜でも気相/液相と液相の2種がある。
【0003】
従来のクラフトパルプ蒸解法を説明するために、例として1塔気相/液相連釜(コンベンショナル連続蒸解釜)の各蒸解ゾーンを図2に記載する。この連釜は、連釜トップからボトムまでの間に、トップセパレーター1、上部循環ストレーナー2、抽出ストレーナー4、中部循環ストレーナー3、下部循環ストレーナー5、アウトレットデバイス6が順次設置されている。一般に、トップセパレーター1から上部循環ストレーナー2の間は浸透ゾーンA、上部循環ストレーナー2から抽出ストレーナー4の間は蒸解ゾーンB、中部循環ストレーナー3から下部循環ストレーナー5の間は洗浄ゾーンCと分かれている。パルプ原料であるチップ(細砕リグノセルロース物質)と蒸解薬液(白液)を含むチップスラーリーは、トップ循環フィードラインFにて連釜トップへ運ばれ、トップセパレーター1で液がトップ循環ポンプへ戻り、チップは釜内に入る。浸透ゾーンAの蒸解液は、上部循環ストレーナー2より抽出され、ヒータ9で加熱後、上部循環ラインL6を経て連釜に再循環せしめられる。同様に、蒸解ゾーンBの蒸解液が中部循環ストレーナー3より抽出され、ヒータ11で加熱後、中部循環ラインL7を経て連釜に再循環せしめられる。下部循環ラインL8でも蒸解液がヒータ13により加熱されて循環せしめられる。図2中、符号8,10,12は蒸解液循環用ポンプである。洗浄ゾーンCの温度は高いため、ハイヒート洗浄ゾーンと呼ばれ、洗浄水及び蒸解黒液(Z0)は抽出ストレーナー4より抽出され、フラッシュサイクロンにて廃蒸気を回収した後、蒸解薬品回収工程へ流送される。一方、蒸解パルプは、アウトレットデバイス6より抜き取られる。
【0004】
従来のコンベンショナル蒸解法というクラフトパルプ製造法では、バッチ釜、連釜、いずれであっても処理の最初のところで白液の全量が注入され、蒸解が進行すると白液がパルプ化反応にて消費され、蒸解終期でのアルカリ濃度が減少する。しかし、溶解したリグニンは、パルプへの再吸着を防止するため、ある程度の残留アルカリが必要となる。また、コンベンショナル連釜の場合においては、白液とチップは、連釜トップからボトムまで併流する。
【0005】
一方、1970年代後半から1980年代初期にかけてスェーデンの林産研究所(STFI)の A. Teder らが、アルカリ推移の「平準化」という技術を発明した。これは、蒸解初期アルカリ濃度を減少し、蒸解終期アルカリ濃度を増加させる技術である。蒸解工程中のアルカリ濃度を平準化するには、白液を導入し、黒液(蒸解廃液)を抽出することが必要になる。これにより、白液分割添加と向流蒸解(MCCゾーンという)とを特徴とするこの方法は、「修正蒸解法(MCC法)」と呼ばれている(Svensk Papperstidning 81(15):483(1978);Ibidem 87(10):30(1984);Tappi Journal 62(7):49(1979))。MCC法は、未晒パルプの粘度を保持しながら残留リグニン(カッパー価)を減少させることを可能にする方法として知られている。
【0006】
なお、白液分割添加と向流蒸解とを行うクラフトパルプ製造法としては、上記のMCC法のほかに、いわゆるEMCC法(拡張修正蒸解法)、ITC法(全釜等温蒸解法)等が知られている。
【0007】
上記のような、向流蒸解ゾーンをもつ各種蒸解方法は、白液添加場所、黒液抜き取り場所それぞれ1ヶ所、そして、向流蒸解ゾーンのない従来のコンベンショナル蒸解法に比べてパルプの歩留と品質が向上するという利点はあるが、従来のコンベンショナル蒸解法に対して構造が複雑となる難点がある。これに対し、本願発明は、向流蒸解ゾーンのないコンベンショナル蒸解法における改善により、ITC法等の蒸解法と同等以上の効果(主として、パルプ歩留とパルプ品質の向上)を達成できる蒸解方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、以下のいくつかの技術上の知見を適宜組合わせることにより、構成されるものである。
【0009】
(1) 向流蒸解ゾーンのないコンベンショナル連釜で抽出ストレーナーを下げて蒸解ゾーンを拡大することによりパルプ生産高を増大させる。
【0010】
(2) 白液添加は、単独添加方法から分割添加方法に変える。
【0011】
(3) 白液分割添加の最適添加割合を見出す。
【0012】
(4) 上部循環ラインの循環液の一部分を抜き取り、蒸解薬品回収工程へ送り出すことによりチップ水分の変動(例えば雨によるチップ水分の増加)にもかかわらず連釜内の液量を制御することが可能で、連釜内の「チップハンギング」問題を解決し、パルプ生産を連続的に安定させることができる。なお、「チップハンギング」というのは、連釜の3〜4ストレーナーの内、一つのストレーナー(一般的には抽出ストレーナー)で、連釜壁内外の圧力差が増え、連釜壁内側のチップの下方向への動きが止まり、結果として連釜トップでのチップレベルが液レベルより高くなり、連釜内へのチップチャージが不可能になりパルプ生産を止めなければならなくなる現象をいう。
【0013】
(5) 連釜上部、下部蒸解ゾーンの抽出黒液量と連釜下部の抽出黒液量の比率が高いほどパルプ歩留が向上する。
【0014】
(6) 蒸解度(すなわち目標カッパー価)を制御するには、高Hファクターから低Hファクターに変更してパルプ歩留を向上させる。なお、Hファクターとは、蒸解への影響因子である白液添加率(チップ絶乾重量に対する白液添加量の割合)、温度と時間の内、全ての蒸解サイクルの温度と時間を一つの数値として表す方法である。この数値をHファクターと呼ぶ。言い替えると、相対蒸解反応速度(100℃の反応速度を1とした各蒸解温度での相対値)での蒸解時間に対してプロットした曲線の領域で表現している。
【0015】
(7) 連続蒸解釜内の液比がベッセルVのトップからボトムの方向に向けて小さくなるようにすると、パルプ歩留が向上する(液比とは、連釜内の液成分と連釜内のチップ絶乾重量の比率で、連釜内の液成分は添加白液量、チップ中の水分量、連釜トップでの加熱蒸気によるドレン量の総合量である。)。
【0016】
以下、本願発明を構成する上記各知見とその組合せの内容を図1に示すコンベンショナル連釜改良例を参照して説明する。
【0017】
先ず、本願発明の改良コンベンショナル連釜以前の改良前のコンベンショナル連釜の当初の構造は図2と同様で、白液の全量は連釜トップに添加して上部循環ラインL6では上部ストレーナー2から蒸解液をポンプ8にて抜き取り、ヒーター9を通じて加熱を行なった後連釜内へ戻り、下部循環ラインL8でも同様な作業を実施する。一方、中部循環ラインL7は稼動せず、抽出黒液Z0は抽出ストレーナー4から抜き取り、フラッシューサイクロンにて廃熱を回収した後、蒸解薬品工程の黒液濃縮設備へ流送する。
【0018】
これに対し、図1に示すように、抽出ストレーナー4を中部循環ストレーナー3と下部循環ストレーナー5の中間に移設し、上部循環ストレーナー2と抽出ストレーナー4の間に形成される蒸解ゾーンB(B1+B2)の容積を連釜ベッセルVの全体容積に対して50%まで拡大させる(上記知見(1)の内容)。これにより、図2に示す改良前のコンベンショナル連釜(蒸解ゾーンBの容積=連釜ベッセルVの全体容積に対して29%)に対してパルプ生産高が220%拡大した。また、Hファクターも減少し、パルプ歩留も向上した(45%〜46.5%→48.5%〜52.5%)。
【0019】
上記(2)の知見についていえば、よりパルプ歩留の向上を図るために蒸解温度を下げることが重要になる。この目的を達成する第1の方法としては、白液添加場所として上部循環ラインL6を追加しトップを含めて計2ヶ所とする。この場合、添加白液全量の80%〜90%(W0)を連釜トップに、残り20%〜10%(W6)をポンプ8のサクション側に添加することによってHファクターが下げられ、パルプ歩留が2ポイント(%)向上した。その後、第2の方法として、中部循環ラインL7を追加稼動して、更にポンプ10のサクション側に白液(W7)を添加し、ヒーター11で加熱して連釜内へ循環を行なう(図1の改良例では、これにより下部循環ラインL8のヒーターが省略される。)。そして、下部循環ラインL8から黒液の一部分(Z8)を抜き取り、抽出ストレーナー4から抜き取った黒液(Z0)と混合してフラッシューサイクロンへ流送する。この蒸解方法を行なうとHファクターが更に下げられ、パルプ歩留は更に2ポイント(%)向上した。
【0020】
次に、上記(3)の知見についていえば、白液添加場所である連釜トップ、上部循環ラインL6、中部循環ラインL7での添加比率は、各々60〜90%、15〜25%、1〜20%の範囲で変動させて、同一Hファクターで比較すると上部、中部循環ラインでの白液添加比率の変動よりもむしろ連釜トップでの白液添加比率を高くすると歩留が向上する傾向が見られた。このため、連釜トップでの白液添加比率を80〜90%(上記第1の方法の場合)又は70〜85%(上記第2の方法の場合)の範囲に維持するものである。
【0021】
次に、上記(4)の知見についていえば、パルプ生産においては継続安定生産が最も重要因子であるが、以上に記載したようにチップ水分が高くなると連釜内の液量が増加し、結果としてコンベンショナル連釜内のチップハンギングの問題が発生して生産が停止することがよく起きる。このため、図1に示すように、白液添加場所を連釜トップ1、上部循環ラインL6と中部循環ラインL7に分割して白液添加した後、連釜内の液量を制御するために上部循環ラインL6の循環液の一部分を抜き取り、この抽出黒液(Z6)をフラッシューサイクロンへ送り、廃熱を回収してから黒液濃縮工程へ流送することにより、連釜内のハンギング回数をほぼゼロ回にまで減少させ、パルプ生産を連続的に行うことが可能になった。上部循環ラインL6から抜き取る黒液(Z6)の量は、チップ水分にもよるが、一般的にこのラインの循環量の5〜12%が好適である。蒸解薬品回収工程へ送る上部循環ラインL6から抜き取る黒液(Z6)は単独でも良く、また抽出ストレーナー4からの抽出黒液(Z0)、下部循環ラインL8より抜き取る黒液(Z8)と混合しても良い。
【0022】
次に、上記(5)の知見について説明すると、図1のコンベンショナル連釜のトップからボトムまでを見ると上部蒸解ゾーンB1から上部循環ラインL6を介して抜き取る黒液(Z6)と下部蒸解ゾーンB2の抽出ストレーナー4より抜き取る黒液(Z0)の総量は、洗浄ゾーンC(図1に示すコンベンショナル連釜では、この洗浄ゾーンCでも蒸解作用が行われるため、以下、この明細書においては、この「洗浄ゾーン」を必要に応じて「底部蒸解ゾーン」ということがある)の下部循環ラインL8から抜き取る黒液量(Z8)との比率のパルプ歩留への影響を検討した結果、Hファクター265〜310の範囲において、その比率は0.93から徐々に1.02、1.17と高くするとパルプ歩留が向上した。すなわち下部循環ラインL8の抽出液量(Z8)を減らせればパルプ歩留は高く、最終脱リグニン段階がパルプ歩留に大きく影響することが示されたため、高いパルプ歩留を得るには上部と下部蒸解ゾーンB1,B2の抽出黒液合計量(Qa)と洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)Cの抽出黒液量(Qb)との比率を1.0以上(Qa≧Qb)とするのが好適である。
【0023】
次に、上記(6)の知見についていえば、絶乾チップ総重量に対する白液総添加率21.0〜22.5%の範囲では、Hファクターを1239から1020、672、541、310、265に減少させた場合、パルプ歩留が最大6.6ポイント(%)上がったため、各循環ラインにはできるだけ蒸解液を循環させて蒸解温度(Hファクター)を下げ、パルプ歩留の向上を図ることが好ましい。
【0024】
さらに、上記(7)の知見についていうと、前記の白液添加率、Hファクター以外に、クラフト蒸解釜での液比はパルプ歩留と品質に大きく影響する。図3に示すように、ラボテストでは、どのカッパー価でも液比6.0より液比3.2での広葉樹クラフトパルプ歩留が高い結果を示している。このため、本願発明では、連釜トップでの液比(たとえば3.0)に対し、連釜ボトムは蒸解が進むほど液比が減少するようにし(たとえば1.4)、パルプ歩留を高めることとしている。
【0025】
本願発明を実施するには種々のリグノセルロース物質を使用することができる。例えば針葉樹チップ、広葉樹チップ、非木材原材料(竹、バガス、ケナフ、ワラ等)を挙げることができる。なお、上記いずれの場合にあっても、蒸解薬液とパルプ原料とはベッセルVのトップからボトムまで併流となって流下する。
【0026】
【実施例】
以下、本願発明を広葉樹クラフトパルプ蒸解法に応用したいくかの実施例と、本願発明の技術的優位性を示すための比較例を示す。しかし、本願発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に示す各実施例及び各比較例においては、蒸解原料である広葉樹チップとしては、ユーカリグロビューラス単独、ユーカリユ−ロフィラ単独、オーク、ユーカリデレガテンシス、ユーカリテレティコルニスの混合、ユーカリエラタ、ユーカリファスティガタ、ユーカリナイテンスの混合のチップ配合を使用した。蒸解薬液としては、活性アルカリ105〜110g/L(Na2O換算)と硫化度28〜30%の白液を使用した。(活性アルカリ(AA)=NaOH + Na2S;硫化度(S)=(Na2S÷AA)×100)。
【0027】
<パルプ歩留(収率)の測定法>
本願発明による改良コンベンショナル連釜によるパルプ製造方法の優位性を示すため実機(テスト機)生産歩留を使用し、その歩留は月頭から月末までの一ヶ月間の抄紙機で使用したパルプを連釜で使用したチップの絶乾重量で除した数を重量%で表記して、実機(テスト機)生産パルプ歩留(収率)とした。
【0028】
<パルプ品質の測定>
実機(テスト機)生産パルプは、カッパー価、比引裂強度、裂断長等の品質を下記の方法により測定した。
【0029】
<カッパー価の測定法>
「JIS P8211」記載の方法により、カッパー価を測定した。
【0030】
パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度(フリーネス)で、500mLに調製した後、「JIS P8222及びJIS P8223」記載の方法で、手抄シートを作成し、紙質試験に供した。
【0031】
<裂断長の測定法>
裂断長は、「JIS P8113」記載の方法で測定した。
【0032】
<比引裂強度の測定法>
比引裂強度は、「JIS P8116」記載の方法により測定した。
【0033】
<実施例1及び比較例1,2>
実施例として使用する改良コンベンショナル連釜の元仕様は、全容量:980m3、LUKP(広葉樹未晒パルプ)設計生産量:730ADT(風乾トン)/日、白液添加:連釜トップでの100% 投入となっており、各ストレーナーの位置は図2と同様である。これらの条件を基に蒸解を行なった比較例1において、当初、中部循環ラインL7を稼動しない蒸解を実施し、LUKP生産高は673ADT/日、LUKP歩留は46.1%との操業結果であった。その後、LUKP生産高を744ADT/日へ増産し、設計値730ADT/日より少し上回ったものを比較例2とした。
【0034】
この比較例2における(チップ絶乾重量に対する)LUKP歩留は45.4%であった。
【0035】
このあと、図2に示す従来構造のコンベンショナル連釜を、図1に示すように改造し、実施例用のテスト機(改良コンベンショナル連続蒸解釜)とした。このコンベンショナル連続蒸解釜は、図1に示すように、中部循環ストレーナー3と下部循環ストレーナー5との間に抽出ストレーナー4を設置し、図2の従来装置との対比で洗浄ゾーンCを38%縮小させる一方、蒸解ゾーンB(上部蒸解ゾーンB1+下部蒸解ゾーンB2)を58%拡大した。この結果、蒸解ゾーンBの容積は、ベッセルVの全容積の50%となった。
【0036】
以下の表1における実施例1は、図1のテスト機を使用して各表示欄の操業条件により操業した結果を示している。この実施例1においては、LUKP生産高は1302ADT/日、LUKP歩留は48.6%で比較例1,2に対して2.5〜3.2%向上した。
【0037】
【表1】
【0038】
<実施例2,3>
次に、図1に示す改造コンベンショナル連釜を用い、LUKP生産高を徐々に増産し、これに伴いHファクターを下げ、同時に中部循環ラインL7を稼動し、白液添加場所は従来の連釜トップのみからトップ、上部循環ラインL6の2ヶ所(実施例2)、更に中部循環ラインL7を加えて計3ヶ所(実施例3)とし、パルプの増産とパルプ品質の保護を図った。実施例2ではLUKP生産高1320ADT/日にて中部循環ラインL7を稼動したが、白液添加場所は連釜トップと上部循環ラインL6の2ヶ所で蒸解を行い、LUKP歩留は50.6%であった。実施例3としてはLUKP生産高1614ADT/日にて中部循環ラインL7を追加稼動し、白液添加場所は連釜トップ、上部循環ラインL6と中部循環ラインL7の3ヶ所で蒸解を行った。LUKP歩留は51.8%であった。白液分割添加の効果を検証するために、表1の実施例1を表2の実施例2,3のための比較例3とした。比較例1〜3のLUKP歩留46.1%〜48.6%に対し実施例2,3ではLUKP歩留が50.6%〜51.8%で3〜4.5%ポイント高くなった。
【0039】
【表2】
【0040】
<実施例4〜7>
上記表2では、連釜トップでの白液添加比率を100%から85.2%、81.7%に減少するとブローカッパー価20.5〜21.0の範囲でのLUKP歩留が48.6%、50.6%、51.8%に向上したことがわかった。さらに同一Hファクター340で比較した場合、連釜トップでの白液添加割合75%の実施例4は白液添加割合63%の実施例5に比べ、LUKP歩留が高い結果がでた。一方、同一のHファクター270とトップでの白液添加割合75% 時の実施例6と7のLUKP歩留はほぼ同等であり、上記表2の実施例3のHファクター370と添加割合82% 時のLUKP歩留51.8%と同等のことよりLUKP歩留の向上を図るためには連釜トップでの白液添加割合70〜85%の範囲が望ましく、初期蒸解での高硫化水素濃度が必要なことがわかった。実施例4〜7を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
<実施例8、比較例4>
本願発明の改良前のコンベンショナル連釜(図2)においては、抽出ストレーナー4と下部循環ストレーナー5より黒液を抜き取るにもかかわらず、天候(雨季等)によるチップ水分の増加が連釜内の液比を増大させ、液面とチップレベルの差異が大きくなるため連釜内のチップハンギング現象が起きた。そこで、連釜内の液比を減少・制御するため、図1の上部循環ラインL6の循環液から一部(Z6)を抜き取ることにより連釜内のチップハンギング回数をほぼゼロにすることができ、パルプの連続生産を可能にした。表4に示す比較例4は上部循環ラインL6の循環液の部分抜き取り実施前、実施例8は液抜き取り実施後の連釜内のチップハンギング回数結果を示す。
【0043】
【表4】
【0044】
<実施例9〜11>
実施例9,10,11は、図1に示す構造のテスト用改良コンベンショナル連続蒸解釜において、液抜き取り場所を上部循環ラインL6、抽出ストレーナー4及び下部循環ラインL8の計3ヶ所とし、上部循環ラインL6と抽出ストレーナー4から抜き取る黒液は上・下部蒸解ゾーン抽出黒液(合計抜取り量Qa)とし、下部循環ラインL8から抜き取る黒液は洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)抽出黒液(抜取り量Qb)とし、操業実績では、これらの抽出黒液の比率(Qa/Qb)は、0.93から1.02、1.17に増加させた場合、LUKP歩留が向上する傾向が確認された。したがって、洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)抽出黒液を多く抜き取ると再吸着キシラン量が少なく、歩留が減少する結果が認められた。上・下部蒸解ゾーン抽出黒液量(Qa)と洗浄ゾーン(底部蒸解ゾーン)抽出黒液量(Qb)の比率(Qa/Qb)は、0.93が実施例9、1.02が実施例10、1.17が実施例11であり、各結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
前記の比較例1〜4と実施例1〜11を見ると、Hファクターを1239(比較例1)から1020(比較例2)、672(実施例1)、541(実施例2)、370(実施例3)〜337(実施例5)と310(実施例10)、273〜277(実施例7、比較例4、実施例9)と265(実施例6、8,11)に下げるとセルロースとヘミセルロースの分解が減少するため、LUKP歩留が46.1%から48.6%、50.6%、51.1〜51.8%、51.8〜52.0%に向上し、高歩留を得るためにはHファクターが300以下、望ましくは250〜280とする蒸解方法が好適であることが認められた。
【0047】
<実施例12、13及び比較例5、6、7>
連釜トップでの液比は連釜に導入するチップ量(絶乾重量)、チップ水分、白液使用量、加熱用蒸気からのドレンの値を基に算出され、連釜ボトムでの液比はブローパルプの濃度を測定するが、連釜本体部分の液比については、算出と測定共に不可能なのでブロー差圧(アウトレットデバイスの内部と外部の圧力差)から判断する方法しかないと考えられる。表6に示す比較例5〜7では、ブロー差圧3.7〜3.9m時(連釜内の液比が高い)の歩留51.0〜51.8%に対し、実施例12,13でのブロー差圧5.8〜6.8m時(連釜内の液比が低い)の歩留が52.3%、52.4%と高く、且つ、ブローカッパー価は低い。このように、連釜内の液比を低くすると、高歩留を図ることができた。これらの結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明を構成する各請求項の発明には次のような効果がある。
【0050】
(1) 従来から公知のコンベンショナル連続蒸解釜を原型として、これに改良を加える(蒸解ゾーンBの容積をベッセルVの容積の40〜50%に拡大する)ことにより、パルプ歩留とパルプ品質を向上させることができるので、比較的安価な設備コストで高歩留りで且つ高品質のパルプを生産することができる。
【0051】
(2) 蒸解薬液を、ベッセルトップ、上部循環ラインL6、中部循環ラインL7等に分割添加し、且つその分割添加比率を最適に設定することより、上記(1)の効果をさらに増大させることができる。
【0052】
(3) 上部循環ラインL6、中部循環ストレーナー3、下部循環ストレーナー5等から抜き取る黒液の液量を適切に制御することにより、上記(1)の効果に加えて、チップハンギングを防止して高効率でパルプを生産し得るという効果が得られる。
【0053】
(4) 本願発明によるコンベンショナル連続蒸解釜を好適なHファクターで操業することにより、さらにパルプ歩留を向上させることができる。
【0054】
(5) 本願発明によるコンベンショナル連続蒸解釜を操業するにあたり、ベッセル内での液比を適切に制御する(トップからボトムにかけて液比が小さくなるようにする)ことにより、さらに高歩留で高品質のパルプを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明を実施するための改良コンベンショナル連続蒸解釜の構造概念図である。なお、図1中の※ ※間はラインZL6が連続している。
【図2】従来公知のコンベンショナル連続蒸解釜の構造概念図である。
【図3】ラボテスト蒸解によるLUKP総歩留とカッパー価の相関関係図である。
【符号の説明】
1はトップセパレーター、2は上部循環ストレーナー、3は中部循環ストレーナー、4は抽出ストレーナー、5は下部循環ストレーナー、6はアウトレットデバイス、8,10,12はポンプ、9,11,13はヒータ、Aは浸透ゾーン、Bは蒸解ゾーン、Cは洗浄ゾーン、L6は上部循環ライン、L7は中部循環ライン、L8は下部循環ライン、Vはベッセルである。
Claims (10)
- 塔状のベッセルV頂部から細砕リグノセルロース物質からなるパルプ原料と蒸解薬液とが供給されるとともに、前記ベッセルV内において上方位から、パルプ原料中に蒸解薬液を浸透させる浸透ゾーンAと、前記蒸解薬液とパルプ原料とが併流となって流下する間にパルプ原料中のリグニン成分を蒸解薬液中に溶解分離させる蒸解ゾーンBと、パルプ原料中のセルロース成分を洗浄する洗浄ゾーンCとが形成されて、前記蒸解薬液中にパルプ原料から分離したリグニン成分を含んで生成される黒液がベッセルVの中段部に設けた抽出ストレーナー4から抽出され、セルロース成分がベッセルVの下段部に設けたアウトレットデバイス6から取り出されるようにしたコンベンショナル連続蒸解釜において、前記蒸解ゾーンBの容積を、ベッセルVの容積の40〜50%としたことを特徴とするコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6を設け、前記上部循環ラインL6からも蒸解薬液W6を添加することを特徴とする請求項1記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 前記浸透ゾーンAと前記蒸解ゾーンBとの境界部に設けた上部循環ストレーナー2からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる上部循環ラインL6と、前記上部循環ストレーナー2と抽出ストレーナー4の中間に設けた中部循環ストレーナー3からベッセルVの頂部へ蒸解薬液の一部を還流させる中部循環ラインL7とを設け、前記上部循環ラインL6と中部循環ラインL7からも蒸解薬液W6,W7を添加することを特徴とする請求項1記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液の量が上部循環ラインL6へ添加される蒸解薬液を含めた全蒸解薬液供給量の80〜90%であることを特徴とする請求項2記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- ベッセルVの頂部に直接供給される蒸解薬液の量が上部循環ラインL6及び中部循環ラインL7へ添加される蒸解薬液を含めた全蒸解薬液供給量の70〜85%であることを特徴とする請求項3記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 上部循環ラインL6の循環液から一部を抜き取り、蒸解薬品回収工程ラインへ送ることにより、ベッセルV内の液量を制御し、連続蒸解釜内でのチップハンギングの発生を防止することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 上部循環ラインL6からの循環液抜き取りに加えて、前記中部循環ストレーナー3及び前記抽出ストレーナー4の下方に設けた下部循環ストレーナー5からも黒液を抜き取ってベッセルVからの黒液抜き取り個所を計3ヶ所として蒸解薬品回収工程ラインへ送り、且つ、前記上部循環ラインL6、前記中部循環ストレーナー3からの抜き取り黒液量の和と前記下部循環ストレーナー5からの抜き取り黒液量の比率が1.00以上になるようにすることを特徴とする請求項6記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- Hファクター250〜550の範囲でパルプ原料の蒸解を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- 連続蒸解釜内の液比がベッセルVのトップからボトムの方向に向けて小さくなるように黒液の抜き取りを制御することを特徴とする請求項7記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
- パルプ原料が広葉樹チップであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のコンベンショナル連続蒸解釜によるパルプ連続製造方法。
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- 2003-03-31 JP JP2003093759A patent/JP2004300603A/ja active Pending
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