JP2004352885A - 架橋高分子材料を用いた多孔質成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃棄物から得られた廃架橋高分子材料を、実用化に耐える新たな成形品として再生利用できるようにすることを課題とする。
【解決手段】粒状の廃架橋高分子材料20を成形機4の金型に所定の密度で充填した後、前記金型内に高温蒸気を噴出して前記廃架橋高分子材料の粒20表面を溶融させて隣接する廃架橋高分子材料の粒20相互を部分的に融着させて廃架橋高分子材料を用いた多孔質成形体を製造させる。
【選択図】 図1
【解決手段】粒状の廃架橋高分子材料20を成形機4の金型に所定の密度で充填した後、前記金型内に高温蒸気を噴出して前記廃架橋高分子材料の粒20表面を溶融させて隣接する廃架橋高分子材料の粒20相互を部分的に融着させて廃架橋高分子材料を用いた多孔質成形体を製造させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、 架橋高分子材料の再利用に関する。特に、廃架橋高分子材料を利用した多孔質成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大量に排出される産業廃棄物や一般廃棄物の処理が社会問題となっており、これらの廃棄物を再生資源として利用する再生技術に関する研究開発が進められている。特に、多くの製品に利用され且つ自然分解されにくい高分子材料の再生技術に関する研究開発が盛んであり、PETボトルのように既に実用レベルの再生技術が確立されているものもあるが、多くの高分子材料の再生技術については技術的又は経済的な問題などから未だ開発途上の段階にある。
【0003】
なかでも、絶縁性や耐熱・耐酸アルカリ性を向上させるために鎖状構造の高分子を架橋させて巨大な三次元網目構造とした架橋ポリエチレンなどの架橋高分子材料は、電線や各種ケーブルなどの製品として利用されるときは優れた性能を発揮するが、再利用する場合にはその架橋構造が災いして、通常の熱可塑性樹脂材料のように加熱溶融して再成形するという一般的な再生方法を用いることができず、再生困難な高分子材料の一つとされている。
【0004】
そのため、このような廃架橋高分子材料の一部は破砕物よりも微粉末化して補助燃料として再利用されてはいるが、大部分は産業廃棄物として埋立て処理されているのが現実である。
【0005】
近頃、この廃架橋高分子材料を高圧下において超臨界水と接触させることで架橋構造を分解する方法が提案され、三次元網目構造の架橋高分子を脱架橋して鎖状の高分子に戻して通常の成形方法によって再成形するという方法や、熱分解反応によって架橋高分子の主鎖をランダムに切断して巨大高分子を低分子量化することで再成形できる熱可塑性を復活させる方法などにより、廃架橋高分子材料から新たな成形品を再成形させる再生技術についての研究開発がすすめられている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2001−253967号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記廃架橋高分子材料を再成形可能な状態となるように化学処理する技術は、高圧下において超臨界水を接触させる特殊な設備や、適度に分子量化するために各廃架橋高分子材料に応じた装置や処理条件の細かい設定が必要となるから、廃架橋高分子材料の再生に要するコストが高くなるという問題がある。
【0008】
そのため、上記再生技術による新たな成形品の再成形には、バージン材料からの成形される成形品の数倍〜数十倍もの製造コストがかかり、市場競争力が乏しく現段階においては実用化に適しないと言わざるを得ない。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、廃棄物から得られた廃架橋高分子材料を、機能的及び経済的に実用化に耐える新たな成形品として再生利用できるようにすることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、加熱蒸気により廃架橋高分子材料の一部が溶融され融着可能であることから、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0011】
請求項1の発明は、『粒状の廃架橋高分子材料を金型に所定の密度で充填した後、前記金型内に加熱蒸気を噴出して前記廃架橋高分子材料の粒表面を溶融させて隣接する廃架橋高分子材料の粒相互を部分的に融着させた構造物からなることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体』である。
再生過程において原料である廃架橋高分子材料の耐熱性や耐酸アルカリ性、電気絶縁性などの特性を失うことなくそのまま保持している。また、従来の再生技術のように、廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程などがないから再成形に要する時間及びコストを大幅に低減することができる。
【0012】
請求項2の発明は、『前記廃架橋高分子材料の粒の大きさは、体積が0.001立方センチメートルから10立方センチメートルである』ことを特徴とするので、前記廃架橋高分子材料の粒を前記金型に充填したときに、通気・透水性に必要な粒相互間の空隙及び成形体の強度向上に必要な粒相互の融着面積を確保することができる。これにより、通気・透水性及び耐久性の高い多孔質成形体を得ることができる。
【0013】
また、廃架橋高分子材料を上記範囲内の粒とすることで成形機への供給及び金型への充填を容易に行うことができる。
尚、廃架橋高分子材料の大きさは、上記範囲の体積の粒とするのが好ましいが、多孔質成形体の成形や強度などから、前記粒の体積が0.05立方センチメートルから2立方センチメートルとするのがより好ましい。
【0014】
請求項3の発明は、『20vol%から50vol%の空隙率を有する』ことを特徴とするので、成形品として十分な強度と透水性とを兼ね備えているから、建築用の暗渠排水材又は土木用の排水材としての利用に適している。
【0015】
尚、多孔質成形体の空隙率は、上記範囲とするのが好ましいが、適度な透水性と多孔質成形体の強度などから、30vol%から40vol%の空隙率とするのがより好ましい。
【0016】
請求項4の発明は、『前記廃架橋高分子材料は、ポリエチレンの架橋体である』ことを特徴とする。ポリエチレンは、柔軟性及び電気絶縁性が高いという特性を有しているから、廃架橋高分子材料の粒を金型に充填するときに、その弾性により粒相互がより大きな面積で接触されて十分な融着面積を確保できるから融着強度が高いと共に、成形後に切断や切削などによって多孔質成形体を容易に再加工をすることができる。そのため、耐久性が高いと共に各種用途に合わせた成形や加工にも適している。
【0017】
請求項5の発明は、『非架橋高分子材料が所定の割合で混合されている』ことを特徴とするので、廃架橋高分子材料に、抗菌性などの特性を有する機能性高分子材料を混合させることで多孔質成形体の機能向上を図ることができる。また、同様に再生が困難とされる他の高分子材料を粒状に破砕したものを混合させることで、合わせて再利用を図ることもできる。
【0018】
この場合、非架橋高分子材料の混合する割合は、50%以下とするのが好ましいと考えられる。
【0019】
請求項6の発明は、『廃架橋高分子材料を物理的に破砕して所定の大きさの粒とする破砕造粒工程と、前記破砕造粒工程によって得られた造粒物を所定の密度で成形機の金型に充填する充填工程と、前記金型内に加熱蒸気を噴出して造粒物の表面を溶融させて造粒物相互を部分的に融着させる加熱融着工程と、前記成形品を冷却する冷却工程とからなることを特徴とする廃架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法』である。
これによれば、廃棄物から分離された架橋高分子材料を機械的に破砕して所定の大きさの造粒物とした後、成形機の金型に前記造粒物を所定の密度で充填させて、前記金型内に加熱蒸気を噴出すると、前記加熱蒸気が充填された造粒物相互間の空隙へ送られる。この加熱蒸気の熱によって前記廃架橋高分子材料の造粒物の表面が一部溶融されて隣接する造粒物の接触面と融合した状態となる。この状態で加熱蒸気の噴出を停止して前記金型を冷却させると、前記造粒物の接触面の溶融部が硬化して造粒物相互が部分的に融着して結合され、廃架橋高分子材料の特性を備えた多孔質成形体が成形される。
【0020】
従って、廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程並びに特殊な処理装置が不要であると共に、前記加熱溶融工程において加熱蒸気の噴出は前記廃架橋高分子材料の造粒物の表面を一部溶融し得るだけの時間で十分であるから、ペレット状の高分子材料を均一になるまで溶融してから成形を行う通常の成形方法による再成形よりも加熱溶融に要する時間が大幅に短縮できる。また、加熱時間が短いので成形体の冷却に要する時間も短くて済む。
【0021】
また、射出成形や押出成形などの通常の成形方法の場合のように、高分子材料のゲル分率や平均分子量などが多孔質成形体の品質を大きく左右することがないから、これらの因子を考慮して成形の処理条件を細かく設定する必要がない。そのため、廃棄物から得られた廃架橋高分子材料から新たな成形品を再成形するための製造時間及び製造コスト、再成形の条件設定を大幅に削減することができる。
【0022】
また、原料である廃架橋高分子材料の有する耐熱性や耐酸アルカリ性、電気絶縁性などの特性を失うことなく備えているから、従来の再生方法により再成形された成形品よりも付加価値が高く市場競争力を有すると考えられる。さらに、再生工程の大幅の削減により省エネルギーの観点からも優れている。
【0023】
請求項7の発明は、『前記加熱融着工程は、チャンバー内温度が120℃〜180℃であり且つチャンバー内圧力が0.10Mpa〜0.70Mpaのチャンバーから加熱蒸気を噴出する』ことを特徴とするので、前記加熱蒸気による過溶融に起因する孔部の目詰まりや溶融不足による融着強度の低下などの不都合が防止できるから、多孔質構造が保持された耐久性の高い多孔質成形体を製造することができる。
【0024】
請求項8の発明は、『前記充填工程は、前記造粒物を前記金型内に加圧した状態で充填させる』ことを特徴とするので、充填された廃架橋高分子材料の造粒物が互いに押圧状態で接触されることで十分な接触面を確保することができるから、前記造粒物相互を強固に融着させることができる。これより、耐久性の高い多孔質成形体を製造することができる。
【0025】
請求項9の発明は、『前記充填工程は、前記造粒物を20vol%から50vol%の空隙率を有するように充填させる』ことを特徴とするので、前記成形機の金型内に噴出される加熱蒸気が空隙を通って充填された造粒物全体にゆきわたることができるから、前記造粒物の表面をムラが少なく均一に溶融させることができる。これより、過溶融による目詰まりや溶融不足による融着強度の低下などが防止できるから、多孔質構造が均一な多孔質成形体を得ることができる。
【0026】
請求項10項の発明は、『前記充填工程及び加熱溶着工程は、発泡成形機により行なわれる』ものでは、廃架橋高分子材料の再成形のために特別な成形機を設計する必要がないから、再成形品をより低い製造コストで製造することができると共に、設備投資が小さくて済むから廃架橋高分子材料の再生事業へ新たに参入することが容易である。これより、廃架橋高分子材料の再生技術としてより高い実用性を有している。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明実施の形態について添付図面を参照しながら詳述する。
本発明の廃架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法を説明する概略図を図1に示している。
【0028】
この例において再利用する廃架橋高分子材料は、一般的な電線・各種ケーブル1の導線3の被覆材2として使用されている架橋低密度ポリエチレン(XLPE)であり、使用済みで廃棄された電線・各種ケーブル1を皮剥など機械的な処理によって導線3と被覆材2とに分離した後、前記被覆材2を機械的に破砕して得られるXLPE粒20を利用している。この例では、平均体積が0.3立方センチメートル前後となるように破砕されたXLPE粒20を利用している。
【0029】
今回の多孔質成形体6の成形には、ビーズ法発泡ポリプロピレンなどの型物成形に利用される一般的な発泡成形機5(ダイセン工業社製1300トン発泡成形機)を利用している。
【0030】
次に、前記XLPE粒20を用いて多孔質成形体を成形する方法について詳しく説明する。
前記成形機5の金型に圧搾空気によって前記XLPE粒20を30vol%〜40vol%の空隙を有する密度で且つ加圧状態で充填した後、ボイラーによって、表1に示されるように、チャンバー内の温度が124℃〜152℃であり且つチャンバー内の圧力が0.12Mpa〜0.38Mpaである各条件下において、加熱された加熱蒸気を一気に前記金型内に噴出させた。前記加熱蒸気の噴出時間(加熱時間)は、いずれの場合も45秒間である。
【0031】
噴出された加熱蒸気は、前記金型内に充填されたXLPE粒20相互間の空隙を通って金型内部全体へゆきわたり、前記XLPE粒20の表面の一部を加熱溶融する。45秒間の加熱蒸気の噴出により生じた溶融によって隣接する前記XLPE粒20の接触面が部分的に相互に融合した状態となる。
【0032】
加熱蒸気の噴出が停止されると、前記XLPE粒20の接触面の溶融部分が自然冷却によって硬化され前記XLPE粒20相互を融着する。これにより、前記金型に充填された前記XLPE粒20は一体化されておこし状の多孔質成形体が成形される。
【0033】
前記加熱蒸気の設定条件による多孔質成形体5の成形状態及び前記XLPE粒20相互の融着状態を表1に示している。各欄の記号は、「○:成形状態は良好,融着状態は良好」「△:成形体は形成されたが取出時に破損,融着は不十分」「×:融着不良」をそれぞれ示している。
【0034】
これより、この例の発泡成形機を利用して架橋低密度ポリエチレンの架橋体であるXLPE粒20から多孔質成形体5を成形する場合には、チャンバー内の温度を142℃〜152℃であり且つチャンバー内の圧力を0.26Mpa〜0.38Mpaのチャンバーから加熱蒸気を45秒間にわたり噴出させるように設定することが最適と考えられる。
【0035】
【表1】
【0036】
また、チャンバー内の温度が152℃、チャンバー内の圧力が0.38Mpa以上の設定条件については、今回の試験で利用した発泡成形機4では設定することができなかったためデータはないが、加熱時間を調整することにより、180℃程度までは同様の成形状態及び融着状態を実現できると考えられる。
【0037】
このような構成であるから、この例の多孔質成形体5の製造方法によれば、従来例のような廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程がないと共に、45秒という短い噴出時間により前記XLPE粒20の表面を一部溶融することができ且つ冷却時間も35秒〜70秒と短いから多孔質成形体5の製造時間(1サイクル)が120秒以内と非常に短いから、生産性が高く製造コストも低くなる。
【0038】
また、前記XLPE粒20の表面部分のみを溶融させて融着させる方法であるから、前記XLPE粒20のゲル分率や平均分子量などが成形品の品質を大きく左右する要因とならないので、通常の成形方法のように材料によって処理条件を詳細にわたって設定することなく均一な成形品を製造することができる。
【0039】
また、この例の方法により再成形された多孔質成形体5は、原料である廃架橋ポリエチレンが有している耐熱性や耐酸アルカリ性などの特性を失うことなく備え持っているから、従来の再生技術のように非架橋高分子材料又はこれに準ずる性質を有する高分子材料としたものを用いて再成形した成形品よりも機能性が高い。そのため、その付加価値により他の成形品に対して市場競争力を有すると考えられる。
【0040】
また、再生工程が少なくシンプルであるから従来の再生技術だけでなく、一般的な高分子材料の成形技術と比較しても省エネルギーという点で優れている。
以上より、本発明の多孔質成形体5及びその製造方法は、廃架橋高分子材料の再生技術として高い実用性を有している。
【0041】
本発明の多孔質成形体5の具体的な活用例としては、ゴルフ場や運動場、コンクリート擁壁埋込め等に用いられる土木用排水材、地下室の基礎廻り、屋上緑化などの建築排水材、農業・園芸用の排水材をはじめ、シート材やマット材への利用が考えられる。
【0042】
*その他
本発明実施の形態の多孔質成形体5及びその製造方法は上記実施の形態に限られるものではない。
前述の例においては、再生する廃架橋高分子材料として架橋低密度ポリエチレン(XLPE)を用いているが、ポリオレフィン系の高分子材料であれば同様に再生することが可能である。具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE),ポロプロピレン(PP),ポリイソブチレン(PIB),ポリイソプレン(PI),エチレン・酢酸エチル共重合体,エチレン・酢酸メチル共重合体,エチレン・酢酸ビニル共重合体などを架橋して得られたものであってもよい。また、高分子の架橋方法についても、化学架橋,シラン架橋,電子線架橋の何れの方法によるものであってもよい。
【0043】
前述の例においては、多孔質成形体5は廃架橋高分子材料であるXLPE粒20のみを材料として成形されているが、廃架橋高分子材料に所定の割合で熱可塑製樹脂材料や機能性樹脂材料などの非架橋高分子材料を混合したものを材料として用いてもよい。さらに、2種類以上の廃架橋高分子材料の混合物を材料として用いてもよい。また、充填材や酸化防止剤,耐光剤,廃架橋助剤などの薬剤、その他の添加剤を混合したものを材料として成形するものであってもよい。
【0044】
また、前述の例においては、一般的な発泡成形機4を利用して再成形を流用しているが、廃架橋高分子材料の粒を金型に加圧充填することができ且つ所定の条件で加熱蒸気を噴出させることができるものであればよく、再生利用する廃架橋高分子材料の種類や特性、成形品の形状などに合わせて、最適の成形機を設計するのが好ましいのは言うまでもない。
【0045】
【発明の効果】
上記のような構成であるから本発明は次の特有の効果を有する。
請求項1の発明によれば、再生過程において原料である廃架橋高分子材料の耐熱性や耐酸アルカリ性、電気絶縁性などの特性を失うことなくそのまま保持している。また、従来の再生技術のように、廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程などがないから再成形に要する時間及びコストを大幅に低減することができる。
【0046】
従って、廃棄物から得られた廃架橋高分子材料を再生利用した成形品として、機能的及び経済的にも高い実用性を有している。
特に、通気性及び透水性と共に廃架橋高分子材料に特有の優れた耐熱性及び耐寒性、耐油性、耐酸アルカリ性、電気絶縁性、耐環境劣化性などを備えているから、建築物又は土木用の暗渠排水材や地中埋設する排水材などの利用に適している。
【0047】
また、請求項2の発明によれば、廃架橋高分子材料の粒の大きさを体積が0.001立方センチメートルから10立方センチメートルとすることで、前記廃架橋高分子材料の粒相互間の空隙及び粒相互の融着面積を確保できるから、機能性及び耐久性の高い多孔質成形体を得ることができる。
【0048】
また、請求項3の発明によれば、20vol%から50vol%の空隙率を有することで、成形品として十分な強度と透水性とを兼ね備えているから、建築用又は土木用の暗渠排水材としての利用に適している。
【0049】
また、請求項4項の発明によれば、ポリエチレンの架橋体である廃架橋高分子材料を用いることで、ポリチレンの弾性により粒相互の融着面積を確保できるから融着強度が高いと共に、各種用途に合わせた成形や成形後の加工に適している。
【0050】
また、請求項5の発明によれば、非架橋高分子材料を所定の割合で混合させることで、機能向上を図ることができると共に、その他の高分子材料を合わせて再利用することができる。
【0051】
請求項6の発明によれば、廃架橋高分子材料からの再成形に要する製造時間及び製造コストの短縮、処理条件の設定を簡易化が可能であると共に、製造工程において廃架橋高分子材料の特性を失われずそのまま保持するから、廃架橋高分子材料の再生技術として実用性が高い。
【0052】
請求項7の発明によれば、チャンバー内温度が120℃〜180℃であり且つチャンバー内圧力が0.10Mpa〜0.70Mpaのチャンバーから加熱蒸気が噴出されることで、廃架橋高分子材料の過溶融や溶融不足を防止できるから、多孔質構造を確保した耐久性の高い多孔質成形体を得ることができる。
【0053】
請求項8項の発明によれば、廃架橋高分子材料の造粒物を金型に加圧充填させることで、充填された廃架橋高分子材料の造粒物相互の接触面を確保できるから、耐久性の高い多孔質成形体を製造することができる。
【0054】
請求項9項の発明によれば、廃架橋高分子材料の造粒物を20vol%から50vol%の空隙率で充填させることで、加熱蒸気を全体にゆきわたらせることができるから、多孔質構造が均一な多孔質成形体を得ることができる。
【0055】
請求項10項の発明によれば、成形機として発泡成形機を利用することで、特別な成形機を設計又は導入する必要がないから、再成形品の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施の形態における多孔質成形体の製造方法を示す概略図である。
【符号の説明】
(1)・・・電気ケーブル
(2)・・・被覆材(廃架橋ポリエステル)
(3)・・・導線
(4)・・・発泡成形機
(5)・・・多孔質成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、 架橋高分子材料の再利用に関する。特に、廃架橋高分子材料を利用した多孔質成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大量に排出される産業廃棄物や一般廃棄物の処理が社会問題となっており、これらの廃棄物を再生資源として利用する再生技術に関する研究開発が進められている。特に、多くの製品に利用され且つ自然分解されにくい高分子材料の再生技術に関する研究開発が盛んであり、PETボトルのように既に実用レベルの再生技術が確立されているものもあるが、多くの高分子材料の再生技術については技術的又は経済的な問題などから未だ開発途上の段階にある。
【0003】
なかでも、絶縁性や耐熱・耐酸アルカリ性を向上させるために鎖状構造の高分子を架橋させて巨大な三次元網目構造とした架橋ポリエチレンなどの架橋高分子材料は、電線や各種ケーブルなどの製品として利用されるときは優れた性能を発揮するが、再利用する場合にはその架橋構造が災いして、通常の熱可塑性樹脂材料のように加熱溶融して再成形するという一般的な再生方法を用いることができず、再生困難な高分子材料の一つとされている。
【0004】
そのため、このような廃架橋高分子材料の一部は破砕物よりも微粉末化して補助燃料として再利用されてはいるが、大部分は産業廃棄物として埋立て処理されているのが現実である。
【0005】
近頃、この廃架橋高分子材料を高圧下において超臨界水と接触させることで架橋構造を分解する方法が提案され、三次元網目構造の架橋高分子を脱架橋して鎖状の高分子に戻して通常の成形方法によって再成形するという方法や、熱分解反応によって架橋高分子の主鎖をランダムに切断して巨大高分子を低分子量化することで再成形できる熱可塑性を復活させる方法などにより、廃架橋高分子材料から新たな成形品を再成形させる再生技術についての研究開発がすすめられている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2001−253967号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記廃架橋高分子材料を再成形可能な状態となるように化学処理する技術は、高圧下において超臨界水を接触させる特殊な設備や、適度に分子量化するために各廃架橋高分子材料に応じた装置や処理条件の細かい設定が必要となるから、廃架橋高分子材料の再生に要するコストが高くなるという問題がある。
【0008】
そのため、上記再生技術による新たな成形品の再成形には、バージン材料からの成形される成形品の数倍〜数十倍もの製造コストがかかり、市場競争力が乏しく現段階においては実用化に適しないと言わざるを得ない。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、廃棄物から得られた廃架橋高分子材料を、機能的及び経済的に実用化に耐える新たな成形品として再生利用できるようにすることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、加熱蒸気により廃架橋高分子材料の一部が溶融され融着可能であることから、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0011】
請求項1の発明は、『粒状の廃架橋高分子材料を金型に所定の密度で充填した後、前記金型内に加熱蒸気を噴出して前記廃架橋高分子材料の粒表面を溶融させて隣接する廃架橋高分子材料の粒相互を部分的に融着させた構造物からなることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体』である。
再生過程において原料である廃架橋高分子材料の耐熱性や耐酸アルカリ性、電気絶縁性などの特性を失うことなくそのまま保持している。また、従来の再生技術のように、廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程などがないから再成形に要する時間及びコストを大幅に低減することができる。
【0012】
請求項2の発明は、『前記廃架橋高分子材料の粒の大きさは、体積が0.001立方センチメートルから10立方センチメートルである』ことを特徴とするので、前記廃架橋高分子材料の粒を前記金型に充填したときに、通気・透水性に必要な粒相互間の空隙及び成形体の強度向上に必要な粒相互の融着面積を確保することができる。これにより、通気・透水性及び耐久性の高い多孔質成形体を得ることができる。
【0013】
また、廃架橋高分子材料を上記範囲内の粒とすることで成形機への供給及び金型への充填を容易に行うことができる。
尚、廃架橋高分子材料の大きさは、上記範囲の体積の粒とするのが好ましいが、多孔質成形体の成形や強度などから、前記粒の体積が0.05立方センチメートルから2立方センチメートルとするのがより好ましい。
【0014】
請求項3の発明は、『20vol%から50vol%の空隙率を有する』ことを特徴とするので、成形品として十分な強度と透水性とを兼ね備えているから、建築用の暗渠排水材又は土木用の排水材としての利用に適している。
【0015】
尚、多孔質成形体の空隙率は、上記範囲とするのが好ましいが、適度な透水性と多孔質成形体の強度などから、30vol%から40vol%の空隙率とするのがより好ましい。
【0016】
請求項4の発明は、『前記廃架橋高分子材料は、ポリエチレンの架橋体である』ことを特徴とする。ポリエチレンは、柔軟性及び電気絶縁性が高いという特性を有しているから、廃架橋高分子材料の粒を金型に充填するときに、その弾性により粒相互がより大きな面積で接触されて十分な融着面積を確保できるから融着強度が高いと共に、成形後に切断や切削などによって多孔質成形体を容易に再加工をすることができる。そのため、耐久性が高いと共に各種用途に合わせた成形や加工にも適している。
【0017】
請求項5の発明は、『非架橋高分子材料が所定の割合で混合されている』ことを特徴とするので、廃架橋高分子材料に、抗菌性などの特性を有する機能性高分子材料を混合させることで多孔質成形体の機能向上を図ることができる。また、同様に再生が困難とされる他の高分子材料を粒状に破砕したものを混合させることで、合わせて再利用を図ることもできる。
【0018】
この場合、非架橋高分子材料の混合する割合は、50%以下とするのが好ましいと考えられる。
【0019】
請求項6の発明は、『廃架橋高分子材料を物理的に破砕して所定の大きさの粒とする破砕造粒工程と、前記破砕造粒工程によって得られた造粒物を所定の密度で成形機の金型に充填する充填工程と、前記金型内に加熱蒸気を噴出して造粒物の表面を溶融させて造粒物相互を部分的に融着させる加熱融着工程と、前記成形品を冷却する冷却工程とからなることを特徴とする廃架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法』である。
これによれば、廃棄物から分離された架橋高分子材料を機械的に破砕して所定の大きさの造粒物とした後、成形機の金型に前記造粒物を所定の密度で充填させて、前記金型内に加熱蒸気を噴出すると、前記加熱蒸気が充填された造粒物相互間の空隙へ送られる。この加熱蒸気の熱によって前記廃架橋高分子材料の造粒物の表面が一部溶融されて隣接する造粒物の接触面と融合した状態となる。この状態で加熱蒸気の噴出を停止して前記金型を冷却させると、前記造粒物の接触面の溶融部が硬化して造粒物相互が部分的に融着して結合され、廃架橋高分子材料の特性を備えた多孔質成形体が成形される。
【0020】
従って、廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程並びに特殊な処理装置が不要であると共に、前記加熱溶融工程において加熱蒸気の噴出は前記廃架橋高分子材料の造粒物の表面を一部溶融し得るだけの時間で十分であるから、ペレット状の高分子材料を均一になるまで溶融してから成形を行う通常の成形方法による再成形よりも加熱溶融に要する時間が大幅に短縮できる。また、加熱時間が短いので成形体の冷却に要する時間も短くて済む。
【0021】
また、射出成形や押出成形などの通常の成形方法の場合のように、高分子材料のゲル分率や平均分子量などが多孔質成形体の品質を大きく左右することがないから、これらの因子を考慮して成形の処理条件を細かく設定する必要がない。そのため、廃棄物から得られた廃架橋高分子材料から新たな成形品を再成形するための製造時間及び製造コスト、再成形の条件設定を大幅に削減することができる。
【0022】
また、原料である廃架橋高分子材料の有する耐熱性や耐酸アルカリ性、電気絶縁性などの特性を失うことなく備えているから、従来の再生方法により再成形された成形品よりも付加価値が高く市場競争力を有すると考えられる。さらに、再生工程の大幅の削減により省エネルギーの観点からも優れている。
【0023】
請求項7の発明は、『前記加熱融着工程は、チャンバー内温度が120℃〜180℃であり且つチャンバー内圧力が0.10Mpa〜0.70Mpaのチャンバーから加熱蒸気を噴出する』ことを特徴とするので、前記加熱蒸気による過溶融に起因する孔部の目詰まりや溶融不足による融着強度の低下などの不都合が防止できるから、多孔質構造が保持された耐久性の高い多孔質成形体を製造することができる。
【0024】
請求項8の発明は、『前記充填工程は、前記造粒物を前記金型内に加圧した状態で充填させる』ことを特徴とするので、充填された廃架橋高分子材料の造粒物が互いに押圧状態で接触されることで十分な接触面を確保することができるから、前記造粒物相互を強固に融着させることができる。これより、耐久性の高い多孔質成形体を製造することができる。
【0025】
請求項9の発明は、『前記充填工程は、前記造粒物を20vol%から50vol%の空隙率を有するように充填させる』ことを特徴とするので、前記成形機の金型内に噴出される加熱蒸気が空隙を通って充填された造粒物全体にゆきわたることができるから、前記造粒物の表面をムラが少なく均一に溶融させることができる。これより、過溶融による目詰まりや溶融不足による融着強度の低下などが防止できるから、多孔質構造が均一な多孔質成形体を得ることができる。
【0026】
請求項10項の発明は、『前記充填工程及び加熱溶着工程は、発泡成形機により行なわれる』ものでは、廃架橋高分子材料の再成形のために特別な成形機を設計する必要がないから、再成形品をより低い製造コストで製造することができると共に、設備投資が小さくて済むから廃架橋高分子材料の再生事業へ新たに参入することが容易である。これより、廃架橋高分子材料の再生技術としてより高い実用性を有している。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明実施の形態について添付図面を参照しながら詳述する。
本発明の廃架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法を説明する概略図を図1に示している。
【0028】
この例において再利用する廃架橋高分子材料は、一般的な電線・各種ケーブル1の導線3の被覆材2として使用されている架橋低密度ポリエチレン(XLPE)であり、使用済みで廃棄された電線・各種ケーブル1を皮剥など機械的な処理によって導線3と被覆材2とに分離した後、前記被覆材2を機械的に破砕して得られるXLPE粒20を利用している。この例では、平均体積が0.3立方センチメートル前後となるように破砕されたXLPE粒20を利用している。
【0029】
今回の多孔質成形体6の成形には、ビーズ法発泡ポリプロピレンなどの型物成形に利用される一般的な発泡成形機5(ダイセン工業社製1300トン発泡成形機)を利用している。
【0030】
次に、前記XLPE粒20を用いて多孔質成形体を成形する方法について詳しく説明する。
前記成形機5の金型に圧搾空気によって前記XLPE粒20を30vol%〜40vol%の空隙を有する密度で且つ加圧状態で充填した後、ボイラーによって、表1に示されるように、チャンバー内の温度が124℃〜152℃であり且つチャンバー内の圧力が0.12Mpa〜0.38Mpaである各条件下において、加熱された加熱蒸気を一気に前記金型内に噴出させた。前記加熱蒸気の噴出時間(加熱時間)は、いずれの場合も45秒間である。
【0031】
噴出された加熱蒸気は、前記金型内に充填されたXLPE粒20相互間の空隙を通って金型内部全体へゆきわたり、前記XLPE粒20の表面の一部を加熱溶融する。45秒間の加熱蒸気の噴出により生じた溶融によって隣接する前記XLPE粒20の接触面が部分的に相互に融合した状態となる。
【0032】
加熱蒸気の噴出が停止されると、前記XLPE粒20の接触面の溶融部分が自然冷却によって硬化され前記XLPE粒20相互を融着する。これにより、前記金型に充填された前記XLPE粒20は一体化されておこし状の多孔質成形体が成形される。
【0033】
前記加熱蒸気の設定条件による多孔質成形体5の成形状態及び前記XLPE粒20相互の融着状態を表1に示している。各欄の記号は、「○:成形状態は良好,融着状態は良好」「△:成形体は形成されたが取出時に破損,融着は不十分」「×:融着不良」をそれぞれ示している。
【0034】
これより、この例の発泡成形機を利用して架橋低密度ポリエチレンの架橋体であるXLPE粒20から多孔質成形体5を成形する場合には、チャンバー内の温度を142℃〜152℃であり且つチャンバー内の圧力を0.26Mpa〜0.38Mpaのチャンバーから加熱蒸気を45秒間にわたり噴出させるように設定することが最適と考えられる。
【0035】
【表1】
【0036】
また、チャンバー内の温度が152℃、チャンバー内の圧力が0.38Mpa以上の設定条件については、今回の試験で利用した発泡成形機4では設定することができなかったためデータはないが、加熱時間を調整することにより、180℃程度までは同様の成形状態及び融着状態を実現できると考えられる。
【0037】
このような構成であるから、この例の多孔質成形体5の製造方法によれば、従来例のような廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程がないと共に、45秒という短い噴出時間により前記XLPE粒20の表面を一部溶融することができ且つ冷却時間も35秒〜70秒と短いから多孔質成形体5の製造時間(1サイクル)が120秒以内と非常に短いから、生産性が高く製造コストも低くなる。
【0038】
また、前記XLPE粒20の表面部分のみを溶融させて融着させる方法であるから、前記XLPE粒20のゲル分率や平均分子量などが成形品の品質を大きく左右する要因とならないので、通常の成形方法のように材料によって処理条件を詳細にわたって設定することなく均一な成形品を製造することができる。
【0039】
また、この例の方法により再成形された多孔質成形体5は、原料である廃架橋ポリエチレンが有している耐熱性や耐酸アルカリ性などの特性を失うことなく備え持っているから、従来の再生技術のように非架橋高分子材料又はこれに準ずる性質を有する高分子材料としたものを用いて再成形した成形品よりも機能性が高い。そのため、その付加価値により他の成形品に対して市場競争力を有すると考えられる。
【0040】
また、再生工程が少なくシンプルであるから従来の再生技術だけでなく、一般的な高分子材料の成形技術と比較しても省エネルギーという点で優れている。
以上より、本発明の多孔質成形体5及びその製造方法は、廃架橋高分子材料の再生技術として高い実用性を有している。
【0041】
本発明の多孔質成形体5の具体的な活用例としては、ゴルフ場や運動場、コンクリート擁壁埋込め等に用いられる土木用排水材、地下室の基礎廻り、屋上緑化などの建築排水材、農業・園芸用の排水材をはじめ、シート材やマット材への利用が考えられる。
【0042】
*その他
本発明実施の形態の多孔質成形体5及びその製造方法は上記実施の形態に限られるものではない。
前述の例においては、再生する廃架橋高分子材料として架橋低密度ポリエチレン(XLPE)を用いているが、ポリオレフィン系の高分子材料であれば同様に再生することが可能である。具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE),ポロプロピレン(PP),ポリイソブチレン(PIB),ポリイソプレン(PI),エチレン・酢酸エチル共重合体,エチレン・酢酸メチル共重合体,エチレン・酢酸ビニル共重合体などを架橋して得られたものであってもよい。また、高分子の架橋方法についても、化学架橋,シラン架橋,電子線架橋の何れの方法によるものであってもよい。
【0043】
前述の例においては、多孔質成形体5は廃架橋高分子材料であるXLPE粒20のみを材料として成形されているが、廃架橋高分子材料に所定の割合で熱可塑製樹脂材料や機能性樹脂材料などの非架橋高分子材料を混合したものを材料として用いてもよい。さらに、2種類以上の廃架橋高分子材料の混合物を材料として用いてもよい。また、充填材や酸化防止剤,耐光剤,廃架橋助剤などの薬剤、その他の添加剤を混合したものを材料として成形するものであってもよい。
【0044】
また、前述の例においては、一般的な発泡成形機4を利用して再成形を流用しているが、廃架橋高分子材料の粒を金型に加圧充填することができ且つ所定の条件で加熱蒸気を噴出させることができるものであればよく、再生利用する廃架橋高分子材料の種類や特性、成形品の形状などに合わせて、最適の成形機を設計するのが好ましいのは言うまでもない。
【0045】
【発明の効果】
上記のような構成であるから本発明は次の特有の効果を有する。
請求項1の発明によれば、再生過程において原料である廃架橋高分子材料の耐熱性や耐酸アルカリ性、電気絶縁性などの特性を失うことなくそのまま保持している。また、従来の再生技術のように、廃架橋高分子材料を脱架橋又は低分子量化する工程などがないから再成形に要する時間及びコストを大幅に低減することができる。
【0046】
従って、廃棄物から得られた廃架橋高分子材料を再生利用した成形品として、機能的及び経済的にも高い実用性を有している。
特に、通気性及び透水性と共に廃架橋高分子材料に特有の優れた耐熱性及び耐寒性、耐油性、耐酸アルカリ性、電気絶縁性、耐環境劣化性などを備えているから、建築物又は土木用の暗渠排水材や地中埋設する排水材などの利用に適している。
【0047】
また、請求項2の発明によれば、廃架橋高分子材料の粒の大きさを体積が0.001立方センチメートルから10立方センチメートルとすることで、前記廃架橋高分子材料の粒相互間の空隙及び粒相互の融着面積を確保できるから、機能性及び耐久性の高い多孔質成形体を得ることができる。
【0048】
また、請求項3の発明によれば、20vol%から50vol%の空隙率を有することで、成形品として十分な強度と透水性とを兼ね備えているから、建築用又は土木用の暗渠排水材としての利用に適している。
【0049】
また、請求項4項の発明によれば、ポリエチレンの架橋体である廃架橋高分子材料を用いることで、ポリチレンの弾性により粒相互の融着面積を確保できるから融着強度が高いと共に、各種用途に合わせた成形や成形後の加工に適している。
【0050】
また、請求項5の発明によれば、非架橋高分子材料を所定の割合で混合させることで、機能向上を図ることができると共に、その他の高分子材料を合わせて再利用することができる。
【0051】
請求項6の発明によれば、廃架橋高分子材料からの再成形に要する製造時間及び製造コストの短縮、処理条件の設定を簡易化が可能であると共に、製造工程において廃架橋高分子材料の特性を失われずそのまま保持するから、廃架橋高分子材料の再生技術として実用性が高い。
【0052】
請求項7の発明によれば、チャンバー内温度が120℃〜180℃であり且つチャンバー内圧力が0.10Mpa〜0.70Mpaのチャンバーから加熱蒸気が噴出されることで、廃架橋高分子材料の過溶融や溶融不足を防止できるから、多孔質構造を確保した耐久性の高い多孔質成形体を得ることができる。
【0053】
請求項8項の発明によれば、廃架橋高分子材料の造粒物を金型に加圧充填させることで、充填された廃架橋高分子材料の造粒物相互の接触面を確保できるから、耐久性の高い多孔質成形体を製造することができる。
【0054】
請求項9項の発明によれば、廃架橋高分子材料の造粒物を20vol%から50vol%の空隙率で充填させることで、加熱蒸気を全体にゆきわたらせることができるから、多孔質構造が均一な多孔質成形体を得ることができる。
【0055】
請求項10項の発明によれば、成形機として発泡成形機を利用することで、特別な成形機を設計又は導入する必要がないから、再成形品の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施の形態における多孔質成形体の製造方法を示す概略図である。
【符号の説明】
(1)・・・電気ケーブル
(2)・・・被覆材(廃架橋ポリエステル)
(3)・・・導線
(4)・・・発泡成形機
(5)・・・多孔質成形体
Claims (10)
- 粒状の廃架橋高分子材料を金型に所定の密度で充填した後、前記金型内に加熱蒸気を噴出して前記廃架橋高分子材料の粒表面を溶融させて隣接する廃架橋高分子材料の粒相互を部分的に融着させた構造物からなることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体。
- 請求項1に記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体において、
前記廃架橋高分子材料の粒の大きさは、体積が0.001立方センチメートルから10立方センチメートルであることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体。 - 請求項1又は2に記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体において、
20vol%から50vol%の空隙率を有することを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体。 - 請求項1から3のいずれかに記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体において、
前記廃架橋高分子材料は、ポリエチレンの架橋体であることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体。 - 請求項1から4のいずれかに記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体において、
非架橋高分子材料が所定の割合で混合されていることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体。 - 廃架橋高分子材料を物理的に破砕して所定の大きさの粒とする破砕造粒工程と、前記破砕造粒工程によって得られた造粒物を所定の密度で成形機の金型に充填する充填工程と、前記金型内に加熱蒸気を噴出して造粒物の表面を溶融させて造粒物相互を部分的に融着させる加熱融着工程と、前記成形品を冷却する冷却工程とからなることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法。
- 請求項6に記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法において、
前記加熱融着工程は、チャンバー内温度が120℃〜180℃であり且つチャンバー内圧力が0.10Mpa〜0.70Mpaのチャンバーから加熱蒸気を噴出することを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法。 - 請求項6又は7に記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法において、
前記充填工程は、前記造粒物を前記金型内に加圧した状態で充填させることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法。 - 請求項8に記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法において、
前記充填工程は、前記造粒物20vol%から50vol%の空隙率を有するように充填させることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法。 - 請求項6から9のいずれかに記載の架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法において、
前記充填工程及び加熱溶着工程は、発泡成形機により行なわれることを特徴とする架橋高分子材料を用いた多孔質成形体の製造方法。
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JP2003153161A JP2004352885A (ja) | 2003-05-29 | 2003-05-29 | 架橋高分子材料を用いた多孔質成形体及びその製造方法 |
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Cited By (2)
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CN103497399A (zh) * | 2013-09-26 | 2014-01-08 | 浙江新恒泰新材料有限公司 | 一种利用发泡回料制备的聚乙烯发泡材料及其生产方法 |
CN105116844A (zh) * | 2014-08-19 | 2015-12-02 | 浙江万马股份有限公司 | 一种蒸汽交联控制系统 |
-
2003
- 2003-05-29 JP JP2003153161A patent/JP2004352885A/ja active Pending
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