JP2004351503A - アルミニウム材のろう付方法及びろう付装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高周波電源2と、高周波電源2より給電される誘導コイル6と、誘導コイル6に近接して配置される加熱治具8とによりろう付装置Aを構成した。また、接合されるアルミニウム材を加熱治具8により囲繞し、高周波電源2より誘導コイル6に給電することにより加熱治具2に複数の方向から渦電流を発生させて加熱し、ろう材を溶解してアルミニウム材をろう付するようにした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空調装置に取り付けられる熱交換器等のアルミニウム材のろう付方法及びろう付装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム材の接合は、炉中ろう付、真空ろう付、ノコロックろう付、不活性ガスろう付等の様々なろう付法により行われている。その中でも、作業性、コスト、品質等で最もバランスが取れているノコロック法が一般的に採用されている。近年、自動車用熱交換器、空調用熱交換器等のほとんどがアルミニウム製となり、これらはノコロック法により製造されるのが一般的である。
【0003】
最近では、アルミニウム材を高周波誘導加熱方式により所定の温度に温度制御しながら行うろう付法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、高周波誘導加熱方式についても、これまで様々な提案がなされており、酸化防止を目的とする外気遮断により誘導加熱溶着するようにしたもの(例えば、特許文献2参照。)、樹脂の溶着部を金属発熱体で覆い、誘導加熱溶着を行うようにしたもの(例えば、特許文献3参照。)、誘導加熱溶着により非鉄金属を母材に溶着するようにしたものがある(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−261526号公報(第3頁、図6)
【特許文献2】
特開昭62−166053号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】
特開平8−39675号公報(第5頁、図1)
【特許文献4】
特開平11−43780号公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば熱交換器のヘッダーと扁平管等のアルミニウム材には常温でもアルミニウム材の表面に酸化被膜が形成されており、ろう材を溶解するためにアルミニウム材を加熱すると酸化被膜が成長し、400℃を超えると酸化被膜がさらに著しく成長する。ろう付の阻害要因である酸化被膜は固く、大気中で行うアルミニウム材のろう付は難しいのが現状であった。また、従来のアルミニウム材のろう付装置は比較的大きく、かなりのスペースを必要とすることから、小型のろう付装置に対する要望もあった。
【0007】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、高周波誘導加熱方式を使用してアルミニウム材を所定の昇温速度で加熱することにより限られたスペースで短時間にアルミニウム材を接合することが可能な安価なアルミニウム材のろう付方法及びろう付装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、アルミニウム材の接合部を加熱治具の内部に配置し、該加熱治具に複数の方向から渦電流を発生させて加熱することによりろう材を溶解してアルミニウム材をろう付することを特徴とするアルミニウム材のろう付方法である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記加熱治具の近傍に誘導コイルを配置し、該誘導コイルに給電して前記加熱治具を横切る高周波磁束を発生させることにより前記渦電流を発生することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記アルミニウム材が空調装置に取り付けられるアルミニウム製熱交換器のヘッダーと扁平管であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、アルミニウム材の昇温速度を約1℃/秒以上に設定したことを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項5に記載の発明は、高周波電源と、該高周波電源より給電される誘導コイルと、該誘導コイルに近接して配置される加熱治具とを備え、接合されるアルミニウム材を前記加熱治具により囲繞し、前記高周波電源より前記誘導コイルに給電することにより前記加熱治具に複数の方向から渦電流を発生させて加熱し、ろう材を溶解してアルミニウム材をろう付することを特徴とするアルミニウム材のろう付装置である。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記加熱治具の内面形状を、少なくともアルミニウム材の接合部と略同形としたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、前記高周波電源より変流器を介して前記誘導コイルに給電することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、前記加熱治具に温度検出手段を取り付け、該温度検出手段により検出された加熱治具温度に基いて、前記高周波電源の出力を制御するようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に記載の発明は、前記アルミニウム材が空調装置に取り付けられるアルミニウム製熱交換器のヘッダーと扁平管であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10に記載の発明は、前記加熱治具が、互いに連通する円筒状キャビティと矩形キャビティとを有し、前記円筒状キャビティ内面と前記ヘッダー外面との間に所定のクリアランスを設けたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項11に記載の発明は、ろう付に際し、前記ヘッダーと前記扁平管とのろう付部を前記矩形キャビティ内に配置したことを特徴とする。
【0019】
また、請求項12に記載の発明は、前記誘導コイルに冷却水を導入して冷却するようにしたことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、高周波電磁誘導加熱を用いた本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置Aを示しており、高周波電源2と、高周波電源2に接続された変流器4と、変流器4を介して高周波電源2より給電される誘導コイル6と、誘導コイル6に近接して配置される加熱治具8とを備えている。誘導コイル6としては、例えば銅管等が使用され、その内部に冷却水を流すことにより誘導コイル6は冷却される。
【0021】
加熱治具8には、放射温度計、熱電対等の温度検出手段10が取り付けられており、温度検出手段10により加熱治具8の表面温度が検出される。また、温度検出手段10から出力された温度信号は制御器12に入力され、当該温度信号に応答して制御器12から高周波電源2に制御信号が出力されて高周波電源2の出力が制御されることで、加熱治具8の温度調節は行われる。
【0022】
図2は、本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置Aを空調装置に設けられたアルミニウム製熱交換器(ワークW)におけるヘッダーW1と扁平管W2との溶接に用いた場合を示しており、図3はアルミニウム材ろう付装置Aの加熱原理を模式的に示したものである。ここで、ワークWは、その表面に、予めろう材が施された、所謂クラッド材より形成されている。
【0023】
すなわち、本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置Aにおいては、ワークWの被溶接部分(ヘッダーW1と扁平管W2との接合部)を加熱治具8で囲繞するとともに加熱治具8に誘導コイル6を近接させた状態で、高周波電源2からの高周波電流を変流器4を介して誘導コイル6に供給すると、加熱治具8を横切る高周波磁束Mが複数の方向から発生する。その結果、加熱治具8内に発生した渦電流によりワークWの被溶接部分のろう材が溶解し、所定のろう付が行われる。
【0024】
なお、ろう付が完了すると、誘導コイル6に冷却水を導入することで加熱された誘導コイル6をすばやく冷却することができ、次のろう付に備えることができる。このろう付が行われている間は、誘導コイル6内への通水は連続しており、誘導コイル6の異常加熱を防止している。
【0025】
また、本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置Aを使用したろう付は、大気中で行うことを前提にしており、ろう付を妨げる酸化被膜の成長を抑制するための工夫がなされている。その技術について以下説明する。
【0026】
図4は、ワークWの昇温速度と酸化被膜の厚さとの関係を示しており、ワークWの表面には通常30Å程度の酸化被膜が形成され、ワークWのろう付に際し、ワークWの昇温速度が速いほど酸化被膜の成長が抑えられることがわかる。また、ろう付を窒素で置換した雰囲気中で行う場合に比べ、大気中で行うろう付は酸化被膜の成長が著しいが、前者の場合、昇温速度を速くするにつれて酸化被膜は徐々に減少するのに対し、後者の場合、昇温速度を速くするにつれて酸化被膜は急激に減少する。
【0027】
図5は、昇温速度を速くするために採用された加熱治具8の軸心に垂直な方向の断面形状を示しており、空調装置に取り付けられるアルミニウム製熱交換器を効率的に加熱するためのものである。
【0028】
図2に示されるように、空調装置の熱交換器は、互いに平行に延びる二つのヘッダーW1(図2では一つのみ示されている)と、これら二つのヘッダーW1に両端が接合され所定の間隔で並設される複数の扁平管W2からなる。
【0029】
したがって、加熱治具8はヘッダーW1を両側から挟みこめるように二つ割(図5では上下二つ割)の形状を有し、その中心部にヘッダーW1の外径より僅かに大きい直径の円筒状キャビティ8aが形成されており、円筒状キャビティ8aの片側に円筒状キャビティ8aと連通する矩形キャビティ8bが形成されている。また、加熱治具8の軸心方向には扁平管W2を収容するための矩形貫通孔8cが所定の間隔で形成されており、加熱治具8の長さLはヘッダーW1の長さlより長く設定されている。このように、加熱治具8の内面は、被加工体(熱交換器)の複数箇所の接合部と略同形に形成され、熱伝達効率を向上させている。
【0030】
なお、ヘッダーW1外面と円筒状キャビティ8a内面とのクリアランスはヘッダーW1の材料であるアルミニウムと加熱治具8の材料の熱膨張率と、ろう材の溶解温度を考慮して決定されており、加熱治具8の材料としてSUS310Sを使用した場合、クリアランスはヘッダーW1の外径寸法の1%〜5%の範囲に設定される。ヘッダーW1と円筒状キャビティ8aとのクリアランスを所定の値に設定することにより、常温からろう材の溶解温度まで加熱すると、熱膨張によってヘッダーW1が円筒状キャビティ8aの内面にほぼ密着する状態となる。このように、加熱治具8は、加熱治具8からの熱伝達加熱と、円筒状キャビティ8aと矩形キャビティ8bとの連通部における輻射加熱によりろう付を行うとともに、ろう付後の離型性を考慮した構成である。
【0031】
また、円筒状キャビティ8aと矩形キャビティ8bとの境界部aは、加熱治具8からの熱伝達性の安定化を考慮して、ヘッダーW1と扁平管W2とのろう付性を妨げない範囲で出来るだけヘッダーW1と扁平管W2との接合部に近接するように設定されている。さらに、渦電流が密集して加熱が促進される角部bをヘッダーW1と扁平管W2との接合部近傍に設け、温度をあまり上げる必要のない加熱治具8の外面角部cは円弧状に形成し、渦電流のスムーズな流れにより加熱されにくい形状となっている。加えて、矩形キャビティ8bと加熱治具8の外面との間隔tを狭く設定することで渦電流が密集し、矩形キャビティ8bの内面からの輻射加熱を促進し、ろう付部の安定化を実現している。すなわち、熱伝達加熱と輻射過熱とのバランスにより燃焼加熱では実現できない高速加熱と高温加熱が可能となり、複数箇所の効率的なろう付が同時に行われる。
【0032】
【実施例】
図1に示される本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置Aと、図5に示される加熱治具8を使用し、電磁コイル出力範囲を以下のように設定して空調用熱交換器のヘッダーW1と扁平管W2とのろう付を行ったところ、図6のグラフに示される範囲で良好なろう付が行われたことを確認できた。
・電圧:50〜200V
・電流:50〜150A
【0033】
なお、ヘッダーW1と扁平管W2の材料であるアルミニウムの溶解温度は610〜630℃で、ろう材の溶解温度は600〜620℃であることに鑑み、本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置Aは、加熱治具8の最高温度を640℃に設定して、640℃以下にて加熱制御を停止している。
【0034】
また、加熱治具8の材料としては、低抵抗で均熱化を図ることのできる磁性体が好ましく、中でも、上述したSUS310Sは、高温加熱での硬度変化に強く、酸化しにくく、金属溶着しにくいという利点があり、本実施例においてもこの材料を加熱治具8に使用した。
【0035】
図6のグラフからわかるように、ワークWの昇温速度が約1℃/秒以下の場合、ヘッダーW1及び扁平管W2の表面上の酸化被膜の成長速度が速く、満足できるろう付を行うことはできなかった。換言すれば、図6のグラフは、ワークWの昇温速度を約1℃/秒以上に設定してワークWの急速加熱を行う(酸化雰囲気中にワークWを長く放置しない)ことにより大気中でのろう付が可能であることを示している。
【0036】
また、図6のグラフにおいて、約5℃/秒の昇温速度(ワークW)は昇温速度の上限を示すものではなく、上述した電磁コイル出力範囲における最大昇温速度を示しており、昇温速度をさらに速くすることも勿論可能である。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明にかかるアルミニウム材のろう付方法によれば、アルミニウム材の接合部を加熱治具の内部に配置し、加熱治具に複数の方向から渦電流を発生させて加熱することによりろう材を溶解してアルミニウム材をろう付するようにしたので、限られたスペースで短時間にアルミニウム材を接合することができるとともに、従来に比べろう付に要するコストを削減することができる。
【0038】
また、本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置は、高周波電源と、高周波電源より給電される誘導コイルと、誘導コイルに近接して配置される加熱治具とを備え、接合されるアルミニウム材を加熱治具により囲繞し、高周波電源より誘導コイルに給電することにより加熱治具に複数の方向から渦電流を発生させて加熱し、ろう材を溶解してアルミニウム材をろう付するようにしたので、安価でコンパクトに装置を製造することができ、短時間にアルミニウム材の所望のろう付を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高周波電磁誘導加熱を用いた本発明にかかるアルミニウム材のろう付装置の概略図である。
【図2】図1のアルミニウム材のろう付装置によりアルミニウム製熱交換器におけるヘッダーと扁平管とを接合する場合の分解斜視図である。
【図3】図1のアルミニウム材のろう付装置の加熱原理を示した模式図である。
【図4】ワークの昇温速度と酸化被膜の厚さとの関係を示すグラフである。
【図5】図1のアルミニウム材のろう付装置に設けられた加熱治具の軸心に垂直な断面図である。
【図6】図1のアルミニウム材のろう付装置を使用して行ったろう付時の加熱治具とワークの温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
2 高周波電源
4 変流器
6 誘導コイル
8 加熱治具
8a 円筒状キャビティ
8b 矩形キャビティ
8c 矩形貫通孔
10 温度検出手段
12 制御器
A アルミニウム材のろう付装置
W ワーク
W1 熱交換器のヘッダー
W2 熱交換器の扁平管
a 円筒状キャビティと矩形キャビティの境界部
b 矩形キャビティの角部
Claims (12)
- アルミニウム材の接合部を加熱治具の内部に配置し、該加熱治具に複数の方向から渦電流を発生させて加熱することによりろう材を溶解してアルミニウム材をろう付することを特徴とするアルミニウム材のろう付方法。
- 前記加熱治具の近傍に誘導コイルを配置し、該誘導コイルに給電して前記加熱治具を横切る高周波磁束を発生させることにより前記渦電流を発生することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム材のろう付方法。
- 前記アルミニウム材が空調装置に取り付けられるアルミニウム製熱交換器のヘッダーと扁平管であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のアルミニウム材のろう付方法。
- アルミニウム材の昇温速度を約1℃/秒以上に設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム材のろう付方法。
- 高周波電源と、該高周波電源より給電される誘導コイルと、該誘導コイルに近接して配置される加熱治具とを備え、接合されるアルミニウム材を前記加熱治具により囲繞し、前記高周波電源より前記誘導コイルに給電することにより前記加熱治具に複数の方向から渦電流を発生させて加熱し、ろう材を溶解してアルミニウム材をろう付することを特徴とするアルミニウム材のろう付装置。
- 前記加熱治具の内面形状を、少なくともアルミニウム材の接合部と略同形としたことを特徴とする請求項5に記載のアルミニウム材のろう付装置。
- 前記高周波電源より変流器を介して前記誘導コイルに給電することを特徴とする請求項5あるいは6に記載のアルミニウム材のろう付装置。
- 前記加熱治具に温度検出手段を取り付け、該温度検出手段により検出された加熱治具温度に基いて、前記高周波電源の出力を制御するようにしたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のアルミニウム材のろう付装置。
- 前記アルミニウム材が空調装置に取り付けられるアルミニウム製熱交換器のヘッダーと扁平管であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のアルミニウム材のろう付装置。
- 前記加熱治具が、互いに連通する円筒状キャビティと矩形キャビティとを有し、前記円筒状キャビティ内面と前記ヘッダー外面との間に所定のクリアランスを設けたことを特徴とする請求項9に記載のアルミニウム材のろう付装置。
- ろう付に際し、前記ヘッダーと前記扁平管とのろう付部を前記矩形キャビティ内に配置したことを特徴とする請求項9あるいは10に記載のアルミニウム材のろう付装置。
- 前記誘導コイルに冷却水を導入して冷却するようにしたことを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項に記載のアルミニウム材のろう付装置。
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JP2003154720A JP2004351503A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | アルミニウム材のろう付方法及びろう付装置 |
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2003
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