JP2004351274A - スプリングフィルターエレメント - Google Patents
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Abstract
【課題】数ミクロン程度の微小すき間を安い加工費で確保し、従来品よりも処理能力が高く、かつ高粘度や低含液率の残滓の排出性が大幅に改善されたスプリングフィルターエレメントを提供する。
【解決手段】断面円形のコイル素線3を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管1の外周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、前記中空管1の外径はコイル径より大きく設定され、前記中空管1の外周にはねじ溝2が形成されており、前記ねじ溝2は、溝底から外周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝2の底部には前記中空管1の内周に連絡する連通孔7が形成され、前記コイル3は前記ねじ溝2に沿って前記中空管1に装着され、前記コイル3または前記ねじ溝2のいずれか一方にすき間保持部11が一体に形成され、前記コイル3と前記ねじ溝2との間に流体通過用のすき間9が形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】断面円形のコイル素線3を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管1の外周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、前記中空管1の外径はコイル径より大きく設定され、前記中空管1の外周にはねじ溝2が形成されており、前記ねじ溝2は、溝底から外周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝2の底部には前記中空管1の内周に連絡する連通孔7が形成され、前記コイル3は前記ねじ溝2に沿って前記中空管1に装着され、前記コイル3または前記ねじ溝2のいずれか一方にすき間保持部11が一体に形成され、前記コイル3と前記ねじ溝2との間に流体通過用のすき間9が形成されている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固形物を含む濾過対象の原液から、液体と残滓を分離するスプリングフィルターエレメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
コイルスプリング式のフィルターエレメントは、コイル状に形成されたスプリングの隣接する素線のすき間に液体を通過させて液体と残滓を分離する。したがって、コイルスプリング式のフィルターエレメントの性能は素線相互の間隔により決定され、より微細な固形物を捕捉する場合には、素線相互間に設けたすき間の外側表面に珪藻土等の濾過助剤をプリコートすることが行われている。
【0003】
従来、隣接素線間に数十ミクロン程度の微細なすき間を確保する手段には、以下の技術が公知である。
(1)特許文献1および特許文献2には、コイル素線上に一定ピッチですき間に相当する高さの突起を精密二次加工により形成し、その突起と隣接する素線を密着させ、素線間にすき間を形成する方法が開示されている。また、特許文献3には、コイル素線の外周部に一定ピッチで切り込みを設け、そのコイル素線同士を密着させることにより、すき間を確保する方法が開示されている。
【0004】
(2)特許文献4には、隣接するコイル素線の間に、放射状の突起を有する数十ミクロン程度の厚さの板をスペーサーとして挟み込んで、所定のすき間を確保する方法が開示されている。
(3)特許文献5には、外周面に複数個の小孔を設けた中空管を芯金として、中空管の外周面に円形状断面のコイル素線を密着させて巻回し、コイル素線と中空管との密着による摩擦力によってコイル素線相互間のすき間を一定に保つ方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−51619公報
【特許文献2】
特開2000−218106公報
【特許文献3】
特開2001−300213公報
【特許文献4】
特開2002−1026公報
【特許文献5】
特開2002−336613公報 図2−図6
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記(1)の従来技術のように、濾過機能を有する素線間のすき間を、コイル素線に精密二次加工を施して形成する方法は、加工費が高価になるという問題があった。しかもすき間の高さをできるだけ小さくしようとしても数十ミクロンの範囲が限度であり、数ミクロン程度のすき間を形成することは実用的に無理であった。そのため、数ミクロン程度の固形物を補足するためには、ベントナイト等の濾過助剤を使用する必要があった。
【0007】
また、上記(2)の従来技術のように、コイル素線相互間にスペーサーを挟み込む場合には、挟み込まれている極薄のスペーサーの強度確保が難しいため、実用的ではない。
さらに、上記(3)の従来技術のように、中空管を芯金としてコイル素線を巻き付ける場合には、外部振動負荷に対し常時すき間を一定に保つことが困難である。またコイル素線と中空管の外側との間に貯まった固形物の除去が煩雑である点で改善の余地があった。
【0008】
また、特に上記(1)、(2)の従来技術のように、濾過圧力をコイルだけで担う構造の場合には、以下の問題があった。すなわち、フィルターエレメントの濾過圧力による曲げモーメントはコイル径を縮小する方向に働くため、この曲げモーメントに耐えるためには、コイル素線径とコイル径の比率は小さく(つまりコイル素線径を大きく、コイル径を小さく)設定せざるを得ない。これは、コイル全高を一定とした場合、コイル素線の全長(つまり、濾過処理能力にほぼ正比例するすき間全長)を短くせざるを得ないことを意味している。
【0009】
現在、実用に供されているコイルスプリング式フィルターエレメントの一例では、素線径4mm、コイル径15mm、コイル密着高さ400mmのもので、処理能力は時間当り概略0.1m3である。したがって、上記例のフィルターエレメントの時間当りの処理能力を数m3まで向上させるには、細くて長い数十本のフィルターエレメントを濾過タンク内に密に配置しなければならなくなる。このような状態では、フィルターエレメント同士の間隔が狭くなり、例えば濾過後の残滓の粘度が高い場合や低含液率で硬い場合は、残滓がコイル外周のくぼみに食い込んでしまい、逆洗を十分に行っても残滓の排出は相当困難になる。このようにフィルターエレメントの処理能力が小さいがために、残滓の排出性からフィルターエレメントの濾過性能は大きな制約を受けることになる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためにされたものであり、その目的は、スプリングフィルターエレメントにおいて、数ミクロン程度の微小すき間を安い加工費で確保し、濾過助剤が不要でかつメンテナンス費用や時間を大幅に低減できるスプリングフィルターエレメントを提供することである。
また、本発明の他の目的は、従来のスプリングフィルターエレメントよりも処理能力が高く、かつ高粘度や低含液率の残滓の排出性が大幅に改善されたスプリングフィルターエレメントを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、断面円形のコイル素線を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管の外周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、前記中空管の外径はコイル径より大きく設定され、前記中空管の外周にはねじ溝が形成されており、前記ねじ溝は、溝底から外周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝の底部には前記中空管の内周に連絡する連通孔が形成され、前記コイルは前記ねじ溝に沿って前記中空管に装着され、前記コイルまたは前記ねじ溝のいずれか一方にすき間保持部が一体に形成され、前記コイルと前記ねじ溝との間に流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明では、中空管のねじ溝に沿って、緊迫力を有するコイルが中空管の外周に密着している。コイル素線とねじ溝との間には流体通過用のすき間が形成されており、ねじ溝の底部には連通孔が開孔されている。このスプリングフィルターエレメントでは、原液は流体通過用のすき間で濾過されて、濾過後の液体は連通孔を通って、中空管内周側に流出する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、断面円形のコイル素線を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管の内周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、前記中空管の内径はコイル径より小さく設定され、前記中空管の内周にはねじ溝が形成されており、前記ねじ溝は、溝底から内周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝の底部には前記中空管の外周に連絡する連通孔が形成され、前記コイルは前記ねじ溝に沿って前記中空管に装着され、前記コイルまたは前記ねじ溝のいずれか一方にすき間保持部が一体に形成され、前記コイルと前記ねじ溝との間に流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明では、中空管のねじ溝に沿って、緊迫力を有するコイルが中空管の内周に密着している。コイル素線とねじ溝との間には流体通過用のすき間が形成されており、ねじ溝の底部には連通孔が開孔されている。このスプリングフィルターエレメントでは、原液は流体通過用のすき間で濾過されて、濾過後の液体は連通孔を通って、中空管外周側に流出する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記すき間保持部として前記ねじ溝に突起部が複数設けられ、前記突起部の間に前記コイルと前記ねじ溝との密接線を横切る流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。請求項3の発明は、ねじ溝側にすき間保持部を形成したものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記すき間保持部として前記コイルに突起部が螺旋状に連続して設けられ、前記突起部の間に前記コイルと前記ねじ溝との密接線を横切る流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。請求項4の発明は、コイル側にすき間保持部を形成したものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態を示す縦断面図、図2は図1の正面図である。第1実施形態のスプリングフィルターエレメントは、中空管1の外周部にねじ溝2を設け、そのねじ溝2に断面が円形状のコイル素線3を密着させることにより、ねじ溝2に濾過機能を有するすき間を形成する例である(請求項1および請求項3に対応する)。そして第1実施形態の例では、スプリングフィルターエレメントが濾過タンク内に配置され、中空管1外周側の原液をスプリングフィルターエレメントで濾過して、中空管1内周側に流出できるようになっている。
【0018】
中空管1の全体形状は外周にねじ溝2が刻設された円筒体であって、その外径はコイル径より大きく設定される。中空管1の上面側は閉塞されており、中空管の底面側には排水口4が開口されている。また、中空管の上面付近の外周部にはOリング溝5が形成され、このOリング溝5にはOリング6が装着されている。中空管1のねじ溝2は、底に丸みをもたせた三角形状の断面形状であって、溝底から外周側に向けて溝幅が広がるようになっている。ねじ溝2の底部には、中空管の内周に連絡する連通孔7が複数個形成されている。
【0019】
また、ねじ溝2の上下端の1〜1.5巻分は、ねじ溝2と同一ピッチ長の螺旋をなす円形溝8となっている。この円形溝8は、コイル素線径よりほんの少し大きい半円形断面に形成されている。そしてねじ溝2および円形溝8の境目は、上下とも0.5巻分の範囲内で滑らかに変化してつながるように形成されている。ここで、コイル素線径に対するねじ溝ピッチ長の比率は、コイル全高を一定とした場合、この比率を大きい方から1に近づけるほど、コイル素線全長(すなわち、すき間全長)が長くなり、処理能力を大きくすることができる。しかし、(イ)例えば、その比率を小さく設定しすぎる場合には、ねじ山先端がシャープに尖ってハンドリング時に怪我をする危険性がある。また、(ロ)ねじ山先端を削って幅狭の平坦部を設けると、隣接する素線3間のすき間からねじ山平坦部の空間の幅が末広がりとなり、この空間にコイル素線3の外側から固形物が入り込むと固形物の大きさによっては逆洗しても容易に排出されず、濾過性能の低下をきたす原因となる。
【0020】
したがって、上記(イ)、(ロ)の観点からすれば、コイル素線径に対するねじ溝ピッチ長の比率の下限値は概略1.2となる。スプリングフィルターエレメントの処理能力を考慮すれば、その比率は1.2〜1.5の範囲で選ぶことが望ましい。
また、図3および図4に示すように、第1実施形態では、ねじ溝2の全長にわたって両側の斜面部に一定の間隔で縦溝9が刻まれている。ねじ溝2に刻まれた縦溝9は、所定の幅と深さ(すき間幅とすき間高さ)を有し、コイル素線3とねじ溝2との密接線(コイル素線3とねじ溝2との接点を結ぶ線)10を横切るようにそれぞれ形成されている。この縦溝9は流体通過用のすき間をなし、縦溝相互間の突起部11がコイル素線3と当接するすき間保持部を形成している。
【0021】
なお、ねじ溝2に断続的に縦溝9を設けるには、ねじ溝2の切削時にバイトを切削方向に対し直角方向に微小振動させるいわゆる超音波振動切削を行ってもよいし、あるいは切削したねじ溝2に研削加工を施してもよい。これらの方法では、極めて安い加工費で密着線10を横切る深さ数ミクロン程度の断続的な縦溝9を容易に得ることができる。
【0022】
一方、中空管1の外周には、断面円形のコイル素線3を螺旋状に巻回してなるコイルがねじ溝2および円形溝8に沿って装着されている。第1実施形態のコイル3では、装着前のコイル径が、中空管装着時よりも素線径の0.5〜3倍の長さだけコイル径が小さくなるように設定され、中空管装着時のコイル径は中空管1の外径とほぼ等しくなるように設定されている。すなわち、中空管装着時のコイル3は伸張状態でねじ溝2および円形溝8に嵌め込まれており、コイル素線3がある程度の緊迫力をもってねじ溝2の突起部11と当接している。
【0023】
ここで、従来品では、コイル素線自身が濾過圧力による曲げモーメントを担うため、自ずとコイル素線径を大きく、コイル径を小さくせざるを得なかった。しかし、本発明では、(ハ)濾過圧力を担うコイル素線3が、コイル素線3の全長にわたって数多くのすき間保持部11で中空管1に分散支持されており、コイル素線径を小さく、コイル径を大きく、すなわちすき間長を極めて大きくすることができる。
【0024】
さらに本発明では、(ニ)ねじ溝2の両側の斜面部にすき間が形成されるので、従来品とほぼ同一の素線径、コイル径と全高を有する本発明品とを比較すると、コイル素線径に対するねじ溝ピッチ長の比を適切に選択することで、すき間の全長は最大で1.6〜1.7倍に長くすることができる。
このように、上記(ハ)、(ニ)の理由で、本発明品は従来品に比べて、濾過圧力の高圧化やスプリングフィルターエレメントの大型化、すなわち処理能力の大幅な増大が可能となった。
【0025】
このように、スプリングフィルターエレメント1個当たりの処理能力が格段に増大すれば、従来のフィルターエレメント数十個分の処理能力を1個の大型フィルターエレメントで実現することが可能になる。特にこの場合では、フィルターエレメント同士やフィルターエレメントと濾過タンク胴との間の間隔が大きくとれるようになり、残滓の排出も容易に行える。
【0026】
そして、第1実施形態のスプリングフィルターエレメントは、濾過タンク下蓋12に設けられた開口部13と中空管1の底面の排水口4とが合致する位置で、濾過タンク下蓋12にボルト14で固定されている。また、スプリングフィルターエレメントの上側は、濾過タンク上蓋15に設けられた切り欠き16に嵌め込まれている。なお、スプリングフィルターエレメントの上側と濾過タンク上蓋15の間はOリング6により封止され、濾過タンク内の原液や中空管1内の逆洗用流体が外部に漏れないようになっている。
【0027】
また、中空管1の円形溝8の外周部はシール材17が環状に取り付けられ、このシール材17は、下蓋12または上蓋15にそれぞれボルト14で締結された円環状のホルダー18によって圧縮保持されている。したがって、中空管1の内周部とそれ以外の箇所との間で、どちら側が高圧になった場合でも、コイル素線3と中空管1のねじ溝2で形成される濾過機能をもつすき間以外では液体が漏れ出さないように構成されている。
【0028】
第1実施形態のスプリングフィルターエレメントは上記のように構成され、以下、その作用を説明する。
第1実施形態において、濾過対象の原液を濾過タンク内部に注入して加圧すると、原液は、中空管1の外周部のねじ溝2とコイル素線3とのすき間(ねじ溝2の縦溝9)を通って、コイル素線3とねじ溝2の底とで形成された三日月状断面の空間に流入する。
【0029】
このとき、原液に含まれる大半の固形物は、中空管1の外周部のねじ溝2とコイル素線3とのすき間を通過することができないため、その結果スプリングフィルターエレメントの外周で原液が濾過される。一方、濾過液とすき間より小さな固形物とは、ねじ溝2の底部の連通孔7を通って中空管1の内周側に流入し、排水口4から濾過タンク外へ排出される。
【0030】
また、濾過の終了後に濾過タンク内部から残滓を排出しても、スプリングフィルターエレメントの外周のすき間には捕捉された固形物が付着しているので、固形物を取り除いて濾過性能の回復を図る逆洗を行う。逆洗は、高圧のエアーもしくは清水を排水口4から中空管1の内周部に注入することにより行う。逆洗流体は、濾過液の流れとは逆に、連通孔7を通ってねじ溝2の底部に入り、すき間を通って外側に付着している残滓を濾過タンク内部に吹き飛ばすか洗い落とす。逆洗時には中空管1内側からの加圧でコイル3が外周側に広がるため、その分だけ外側に付着した残滓は落ちやすくなる。
【0031】
なお、以下の実施形態および変形例では、上記の第1実施形態と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
図5および図6は第1実施形態の変形例であって、図3および図4の縦溝と同一性能を発揮する溝の構成を示す。図5および図6の例では、ねじ溝2を図3の例よりも中空管1の内周側寄りに少し深くして、図3の例の縦溝9の底面と同じ深さのねじ溝2aを形成する。そして、ねじ溝2aの斜面上に図3の縦溝9の深さと同じ高さの突起11を設けたものである。
【0032】
図7から図11は第1実施形態の他の変形例を示した図である。図7および図8の例では、ねじ溝2の両側斜面部に密着線上を横切る三角波状に連続した溝19を設けて流体通過用のすき間を形成した例である。また溝は正弦波状であってもよい。なお、図3と図5に示す縦溝9や、図7に示す連続溝19の溝断面形状は、図9の矩形状や、図10の台形状、図11の正弦波状など、適宜選択が可能である。
【0033】
これらの連続溝19の配置は、ねじ溝2の両側斜面で同一位相で形成してもよく、位相をずらして形成してもよい。これらの連続溝19のかわりに連続した突起を設けても同様の効果を得ることができる。
(第2実施形態)
図12および図13は第2実施形態を示す図である(請求項4に対応する)。第2実施形態ではコイル素線3の外周に加工を施して所定の幅と深さを有する螺旋状の溝(すき間)20を連続的に形成し、その溝20の両側の突起部(すき間保持部)21を中空管1のねじ溝2の両側斜面に当接させたものである。
【0034】
第2実施形態では、コイル素線3に高価な精密二次加工を施して、間欠的に突起や溝を設ける従来例に比べて極めて低いコストで実現可能である。一方で、第2実施形態における螺旋状の溝20を連続的に形成したコイル素線3を従来例に適用する場合には、コイル素線3同士のすき間を形成する密着線上で溝の肩部もしくは突起が相手方の溝底に当接する場合もあれば、肩部もしくは突起に当接する場合も生じ、すき間高さを一定にすることは実用上不可能である。
【0035】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態を示す図である(請求項2に対応する)。第3実施形態は、中空管1の内周に設けたねじ溝2を設け、コイル素線3を中空管1の内部に当接させた例である。第3実施形態では、中空管内周部の原液が、中空管の内周部のねじ溝2とコイル素線3とのすき間で濾過される。濾過液は、コイル素線3とねじ溝2との底とで形成された三日月状断面の空間に流入し、連通孔7から中空管1の外周側に流出する。そして、濾過液は、中空管1および外筒22の間に形成された円筒状空間23を経由して、濾過タンク外に排出される。逆洗はこの逆ルートをたどって逆洗用流体を注入すればよい。第3実施形態では、超大型のスプリングフィルターエレメントの製作が容易である。
【0036】
【発明の効果】
本発明のスプリングフィルターエレメントでは、中空管の外周部または内周部に形成したねじ溝の両側斜面にすき間保持部を設けるか、コイル素線外周部に螺旋状の連続したすき間保持部を設けることにより、いずれも安い加工費用でコイル素線とねじ溝間にすき間を形成することが可能となった。
【0037】
特に本発明では、溝深さを数ミクロン程度にコントロールすることは比較的容易であるので、従来のように濾過助剤を使用することなく、数ミクロン程度の固形物の捕捉は可能となり、フィルターエレメントのメンテナンス費用も大幅に低減できる。
また、本発明では、コイル素線に加わる濾過圧力をコイル素線の全長にわたり非常に多くの支点で分散支持するため、従来のスプリングフィルターエレメントよりも設計の自由度が大幅に広がり、スプリングフィルターエレメントの大型化、濾過圧力の高圧化も容易に行うことができる。
【0038】
また、コイル素線の両側にすき間を形成したことと合わせてすき間全長を非常に長くすることが可能となったので、従来の数十から数百倍の処理能力をもつ大型スプリングフィルターエレメントの製作が可能となった。また、この結果として、処理能力の小さなフィルターエレメントを濾過タンク内に非常に密に配置する必要がなくなり、高粘度や低含水率の残滓の排出性は大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】第1実施形態のねじ溝を示す拡大図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】第1実施例のねじ溝の変形例を示す拡大図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】第1実施例のねじ溝の他の変形例を示す拡大図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】図3と図5に示す縦溝や、図7に示す連続溝の溝断面形状を矩形状に形成した例である。
【図10】図3と図5に示す縦溝や、図7に示す連続溝の溝断面形状を台形状に形成した例である。
【図11】図3と図5に示す縦溝や、図7に示す連続溝の溝断面形状を正弦波状に形成した例である。
【図12】第2実施形態のねじ溝を示す拡大図である。
【図13】図13のD−D断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図15】本発明におけるコイル素線径、コイル径、中空管外径、ねじ溝ピッチ長を説明するための図である。
【符号の説明】
1 中空管
2,2a ねじ溝
3 コイル素線(コイル)
4 排水口
5 Oリング溝
6 Oリング
7 連通孔
8 円形溝
9 縦溝(すき間)
10 密接線
11 突起部(すき間保持部)
12 濾過タンク下蓋
13 開口部
14 ボルト
15 濾過タンク上蓋
16 切り欠き
17 シール材
18 ホルダー
19 連続溝(すき間)
20 溝(すき間)
21 突起部(すき間保持部)
22 外筒
23 円筒状空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、固形物を含む濾過対象の原液から、液体と残滓を分離するスプリングフィルターエレメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
コイルスプリング式のフィルターエレメントは、コイル状に形成されたスプリングの隣接する素線のすき間に液体を通過させて液体と残滓を分離する。したがって、コイルスプリング式のフィルターエレメントの性能は素線相互の間隔により決定され、より微細な固形物を捕捉する場合には、素線相互間に設けたすき間の外側表面に珪藻土等の濾過助剤をプリコートすることが行われている。
【0003】
従来、隣接素線間に数十ミクロン程度の微細なすき間を確保する手段には、以下の技術が公知である。
(1)特許文献1および特許文献2には、コイル素線上に一定ピッチですき間に相当する高さの突起を精密二次加工により形成し、その突起と隣接する素線を密着させ、素線間にすき間を形成する方法が開示されている。また、特許文献3には、コイル素線の外周部に一定ピッチで切り込みを設け、そのコイル素線同士を密着させることにより、すき間を確保する方法が開示されている。
【0004】
(2)特許文献4には、隣接するコイル素線の間に、放射状の突起を有する数十ミクロン程度の厚さの板をスペーサーとして挟み込んで、所定のすき間を確保する方法が開示されている。
(3)特許文献5には、外周面に複数個の小孔を設けた中空管を芯金として、中空管の外周面に円形状断面のコイル素線を密着させて巻回し、コイル素線と中空管との密着による摩擦力によってコイル素線相互間のすき間を一定に保つ方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−51619公報
【特許文献2】
特開2000−218106公報
【特許文献3】
特開2001−300213公報
【特許文献4】
特開2002−1026公報
【特許文献5】
特開2002−336613公報 図2−図6
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記(1)の従来技術のように、濾過機能を有する素線間のすき間を、コイル素線に精密二次加工を施して形成する方法は、加工費が高価になるという問題があった。しかもすき間の高さをできるだけ小さくしようとしても数十ミクロンの範囲が限度であり、数ミクロン程度のすき間を形成することは実用的に無理であった。そのため、数ミクロン程度の固形物を補足するためには、ベントナイト等の濾過助剤を使用する必要があった。
【0007】
また、上記(2)の従来技術のように、コイル素線相互間にスペーサーを挟み込む場合には、挟み込まれている極薄のスペーサーの強度確保が難しいため、実用的ではない。
さらに、上記(3)の従来技術のように、中空管を芯金としてコイル素線を巻き付ける場合には、外部振動負荷に対し常時すき間を一定に保つことが困難である。またコイル素線と中空管の外側との間に貯まった固形物の除去が煩雑である点で改善の余地があった。
【0008】
また、特に上記(1)、(2)の従来技術のように、濾過圧力をコイルだけで担う構造の場合には、以下の問題があった。すなわち、フィルターエレメントの濾過圧力による曲げモーメントはコイル径を縮小する方向に働くため、この曲げモーメントに耐えるためには、コイル素線径とコイル径の比率は小さく(つまりコイル素線径を大きく、コイル径を小さく)設定せざるを得ない。これは、コイル全高を一定とした場合、コイル素線の全長(つまり、濾過処理能力にほぼ正比例するすき間全長)を短くせざるを得ないことを意味している。
【0009】
現在、実用に供されているコイルスプリング式フィルターエレメントの一例では、素線径4mm、コイル径15mm、コイル密着高さ400mmのもので、処理能力は時間当り概略0.1m3である。したがって、上記例のフィルターエレメントの時間当りの処理能力を数m3まで向上させるには、細くて長い数十本のフィルターエレメントを濾過タンク内に密に配置しなければならなくなる。このような状態では、フィルターエレメント同士の間隔が狭くなり、例えば濾過後の残滓の粘度が高い場合や低含液率で硬い場合は、残滓がコイル外周のくぼみに食い込んでしまい、逆洗を十分に行っても残滓の排出は相当困難になる。このようにフィルターエレメントの処理能力が小さいがために、残滓の排出性からフィルターエレメントの濾過性能は大きな制約を受けることになる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためにされたものであり、その目的は、スプリングフィルターエレメントにおいて、数ミクロン程度の微小すき間を安い加工費で確保し、濾過助剤が不要でかつメンテナンス費用や時間を大幅に低減できるスプリングフィルターエレメントを提供することである。
また、本発明の他の目的は、従来のスプリングフィルターエレメントよりも処理能力が高く、かつ高粘度や低含液率の残滓の排出性が大幅に改善されたスプリングフィルターエレメントを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、断面円形のコイル素線を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管の外周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、前記中空管の外径はコイル径より大きく設定され、前記中空管の外周にはねじ溝が形成されており、前記ねじ溝は、溝底から外周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝の底部には前記中空管の内周に連絡する連通孔が形成され、前記コイルは前記ねじ溝に沿って前記中空管に装着され、前記コイルまたは前記ねじ溝のいずれか一方にすき間保持部が一体に形成され、前記コイルと前記ねじ溝との間に流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明では、中空管のねじ溝に沿って、緊迫力を有するコイルが中空管の外周に密着している。コイル素線とねじ溝との間には流体通過用のすき間が形成されており、ねじ溝の底部には連通孔が開孔されている。このスプリングフィルターエレメントでは、原液は流体通過用のすき間で濾過されて、濾過後の液体は連通孔を通って、中空管内周側に流出する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、断面円形のコイル素線を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管の内周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、前記中空管の内径はコイル径より小さく設定され、前記中空管の内周にはねじ溝が形成されており、前記ねじ溝は、溝底から内周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝の底部には前記中空管の外周に連絡する連通孔が形成され、前記コイルは前記ねじ溝に沿って前記中空管に装着され、前記コイルまたは前記ねじ溝のいずれか一方にすき間保持部が一体に形成され、前記コイルと前記ねじ溝との間に流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明では、中空管のねじ溝に沿って、緊迫力を有するコイルが中空管の内周に密着している。コイル素線とねじ溝との間には流体通過用のすき間が形成されており、ねじ溝の底部には連通孔が開孔されている。このスプリングフィルターエレメントでは、原液は流体通過用のすき間で濾過されて、濾過後の液体は連通孔を通って、中空管外周側に流出する。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記すき間保持部として前記ねじ溝に突起部が複数設けられ、前記突起部の間に前記コイルと前記ねじ溝との密接線を横切る流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。請求項3の発明は、ねじ溝側にすき間保持部を形成したものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記すき間保持部として前記コイルに突起部が螺旋状に連続して設けられ、前記突起部の間に前記コイルと前記ねじ溝との密接線を横切る流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする。請求項4の発明は、コイル側にすき間保持部を形成したものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態を示す縦断面図、図2は図1の正面図である。第1実施形態のスプリングフィルターエレメントは、中空管1の外周部にねじ溝2を設け、そのねじ溝2に断面が円形状のコイル素線3を密着させることにより、ねじ溝2に濾過機能を有するすき間を形成する例である(請求項1および請求項3に対応する)。そして第1実施形態の例では、スプリングフィルターエレメントが濾過タンク内に配置され、中空管1外周側の原液をスプリングフィルターエレメントで濾過して、中空管1内周側に流出できるようになっている。
【0018】
中空管1の全体形状は外周にねじ溝2が刻設された円筒体であって、その外径はコイル径より大きく設定される。中空管1の上面側は閉塞されており、中空管の底面側には排水口4が開口されている。また、中空管の上面付近の外周部にはOリング溝5が形成され、このOリング溝5にはOリング6が装着されている。中空管1のねじ溝2は、底に丸みをもたせた三角形状の断面形状であって、溝底から外周側に向けて溝幅が広がるようになっている。ねじ溝2の底部には、中空管の内周に連絡する連通孔7が複数個形成されている。
【0019】
また、ねじ溝2の上下端の1〜1.5巻分は、ねじ溝2と同一ピッチ長の螺旋をなす円形溝8となっている。この円形溝8は、コイル素線径よりほんの少し大きい半円形断面に形成されている。そしてねじ溝2および円形溝8の境目は、上下とも0.5巻分の範囲内で滑らかに変化してつながるように形成されている。ここで、コイル素線径に対するねじ溝ピッチ長の比率は、コイル全高を一定とした場合、この比率を大きい方から1に近づけるほど、コイル素線全長(すなわち、すき間全長)が長くなり、処理能力を大きくすることができる。しかし、(イ)例えば、その比率を小さく設定しすぎる場合には、ねじ山先端がシャープに尖ってハンドリング時に怪我をする危険性がある。また、(ロ)ねじ山先端を削って幅狭の平坦部を設けると、隣接する素線3間のすき間からねじ山平坦部の空間の幅が末広がりとなり、この空間にコイル素線3の外側から固形物が入り込むと固形物の大きさによっては逆洗しても容易に排出されず、濾過性能の低下をきたす原因となる。
【0020】
したがって、上記(イ)、(ロ)の観点からすれば、コイル素線径に対するねじ溝ピッチ長の比率の下限値は概略1.2となる。スプリングフィルターエレメントの処理能力を考慮すれば、その比率は1.2〜1.5の範囲で選ぶことが望ましい。
また、図3および図4に示すように、第1実施形態では、ねじ溝2の全長にわたって両側の斜面部に一定の間隔で縦溝9が刻まれている。ねじ溝2に刻まれた縦溝9は、所定の幅と深さ(すき間幅とすき間高さ)を有し、コイル素線3とねじ溝2との密接線(コイル素線3とねじ溝2との接点を結ぶ線)10を横切るようにそれぞれ形成されている。この縦溝9は流体通過用のすき間をなし、縦溝相互間の突起部11がコイル素線3と当接するすき間保持部を形成している。
【0021】
なお、ねじ溝2に断続的に縦溝9を設けるには、ねじ溝2の切削時にバイトを切削方向に対し直角方向に微小振動させるいわゆる超音波振動切削を行ってもよいし、あるいは切削したねじ溝2に研削加工を施してもよい。これらの方法では、極めて安い加工費で密着線10を横切る深さ数ミクロン程度の断続的な縦溝9を容易に得ることができる。
【0022】
一方、中空管1の外周には、断面円形のコイル素線3を螺旋状に巻回してなるコイルがねじ溝2および円形溝8に沿って装着されている。第1実施形態のコイル3では、装着前のコイル径が、中空管装着時よりも素線径の0.5〜3倍の長さだけコイル径が小さくなるように設定され、中空管装着時のコイル径は中空管1の外径とほぼ等しくなるように設定されている。すなわち、中空管装着時のコイル3は伸張状態でねじ溝2および円形溝8に嵌め込まれており、コイル素線3がある程度の緊迫力をもってねじ溝2の突起部11と当接している。
【0023】
ここで、従来品では、コイル素線自身が濾過圧力による曲げモーメントを担うため、自ずとコイル素線径を大きく、コイル径を小さくせざるを得なかった。しかし、本発明では、(ハ)濾過圧力を担うコイル素線3が、コイル素線3の全長にわたって数多くのすき間保持部11で中空管1に分散支持されており、コイル素線径を小さく、コイル径を大きく、すなわちすき間長を極めて大きくすることができる。
【0024】
さらに本発明では、(ニ)ねじ溝2の両側の斜面部にすき間が形成されるので、従来品とほぼ同一の素線径、コイル径と全高を有する本発明品とを比較すると、コイル素線径に対するねじ溝ピッチ長の比を適切に選択することで、すき間の全長は最大で1.6〜1.7倍に長くすることができる。
このように、上記(ハ)、(ニ)の理由で、本発明品は従来品に比べて、濾過圧力の高圧化やスプリングフィルターエレメントの大型化、すなわち処理能力の大幅な増大が可能となった。
【0025】
このように、スプリングフィルターエレメント1個当たりの処理能力が格段に増大すれば、従来のフィルターエレメント数十個分の処理能力を1個の大型フィルターエレメントで実現することが可能になる。特にこの場合では、フィルターエレメント同士やフィルターエレメントと濾過タンク胴との間の間隔が大きくとれるようになり、残滓の排出も容易に行える。
【0026】
そして、第1実施形態のスプリングフィルターエレメントは、濾過タンク下蓋12に設けられた開口部13と中空管1の底面の排水口4とが合致する位置で、濾過タンク下蓋12にボルト14で固定されている。また、スプリングフィルターエレメントの上側は、濾過タンク上蓋15に設けられた切り欠き16に嵌め込まれている。なお、スプリングフィルターエレメントの上側と濾過タンク上蓋15の間はOリング6により封止され、濾過タンク内の原液や中空管1内の逆洗用流体が外部に漏れないようになっている。
【0027】
また、中空管1の円形溝8の外周部はシール材17が環状に取り付けられ、このシール材17は、下蓋12または上蓋15にそれぞれボルト14で締結された円環状のホルダー18によって圧縮保持されている。したがって、中空管1の内周部とそれ以外の箇所との間で、どちら側が高圧になった場合でも、コイル素線3と中空管1のねじ溝2で形成される濾過機能をもつすき間以外では液体が漏れ出さないように構成されている。
【0028】
第1実施形態のスプリングフィルターエレメントは上記のように構成され、以下、その作用を説明する。
第1実施形態において、濾過対象の原液を濾過タンク内部に注入して加圧すると、原液は、中空管1の外周部のねじ溝2とコイル素線3とのすき間(ねじ溝2の縦溝9)を通って、コイル素線3とねじ溝2の底とで形成された三日月状断面の空間に流入する。
【0029】
このとき、原液に含まれる大半の固形物は、中空管1の外周部のねじ溝2とコイル素線3とのすき間を通過することができないため、その結果スプリングフィルターエレメントの外周で原液が濾過される。一方、濾過液とすき間より小さな固形物とは、ねじ溝2の底部の連通孔7を通って中空管1の内周側に流入し、排水口4から濾過タンク外へ排出される。
【0030】
また、濾過の終了後に濾過タンク内部から残滓を排出しても、スプリングフィルターエレメントの外周のすき間には捕捉された固形物が付着しているので、固形物を取り除いて濾過性能の回復を図る逆洗を行う。逆洗は、高圧のエアーもしくは清水を排水口4から中空管1の内周部に注入することにより行う。逆洗流体は、濾過液の流れとは逆に、連通孔7を通ってねじ溝2の底部に入り、すき間を通って外側に付着している残滓を濾過タンク内部に吹き飛ばすか洗い落とす。逆洗時には中空管1内側からの加圧でコイル3が外周側に広がるため、その分だけ外側に付着した残滓は落ちやすくなる。
【0031】
なお、以下の実施形態および変形例では、上記の第1実施形態と同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。
図5および図6は第1実施形態の変形例であって、図3および図4の縦溝と同一性能を発揮する溝の構成を示す。図5および図6の例では、ねじ溝2を図3の例よりも中空管1の内周側寄りに少し深くして、図3の例の縦溝9の底面と同じ深さのねじ溝2aを形成する。そして、ねじ溝2aの斜面上に図3の縦溝9の深さと同じ高さの突起11を設けたものである。
【0032】
図7から図11は第1実施形態の他の変形例を示した図である。図7および図8の例では、ねじ溝2の両側斜面部に密着線上を横切る三角波状に連続した溝19を設けて流体通過用のすき間を形成した例である。また溝は正弦波状であってもよい。なお、図3と図5に示す縦溝9や、図7に示す連続溝19の溝断面形状は、図9の矩形状や、図10の台形状、図11の正弦波状など、適宜選択が可能である。
【0033】
これらの連続溝19の配置は、ねじ溝2の両側斜面で同一位相で形成してもよく、位相をずらして形成してもよい。これらの連続溝19のかわりに連続した突起を設けても同様の効果を得ることができる。
(第2実施形態)
図12および図13は第2実施形態を示す図である(請求項4に対応する)。第2実施形態ではコイル素線3の外周に加工を施して所定の幅と深さを有する螺旋状の溝(すき間)20を連続的に形成し、その溝20の両側の突起部(すき間保持部)21を中空管1のねじ溝2の両側斜面に当接させたものである。
【0034】
第2実施形態では、コイル素線3に高価な精密二次加工を施して、間欠的に突起や溝を設ける従来例に比べて極めて低いコストで実現可能である。一方で、第2実施形態における螺旋状の溝20を連続的に形成したコイル素線3を従来例に適用する場合には、コイル素線3同士のすき間を形成する密着線上で溝の肩部もしくは突起が相手方の溝底に当接する場合もあれば、肩部もしくは突起に当接する場合も生じ、すき間高さを一定にすることは実用上不可能である。
【0035】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態を示す図である(請求項2に対応する)。第3実施形態は、中空管1の内周に設けたねじ溝2を設け、コイル素線3を中空管1の内部に当接させた例である。第3実施形態では、中空管内周部の原液が、中空管の内周部のねじ溝2とコイル素線3とのすき間で濾過される。濾過液は、コイル素線3とねじ溝2との底とで形成された三日月状断面の空間に流入し、連通孔7から中空管1の外周側に流出する。そして、濾過液は、中空管1および外筒22の間に形成された円筒状空間23を経由して、濾過タンク外に排出される。逆洗はこの逆ルートをたどって逆洗用流体を注入すればよい。第3実施形態では、超大型のスプリングフィルターエレメントの製作が容易である。
【0036】
【発明の効果】
本発明のスプリングフィルターエレメントでは、中空管の外周部または内周部に形成したねじ溝の両側斜面にすき間保持部を設けるか、コイル素線外周部に螺旋状の連続したすき間保持部を設けることにより、いずれも安い加工費用でコイル素線とねじ溝間にすき間を形成することが可能となった。
【0037】
特に本発明では、溝深さを数ミクロン程度にコントロールすることは比較的容易であるので、従来のように濾過助剤を使用することなく、数ミクロン程度の固形物の捕捉は可能となり、フィルターエレメントのメンテナンス費用も大幅に低減できる。
また、本発明では、コイル素線に加わる濾過圧力をコイル素線の全長にわたり非常に多くの支点で分散支持するため、従来のスプリングフィルターエレメントよりも設計の自由度が大幅に広がり、スプリングフィルターエレメントの大型化、濾過圧力の高圧化も容易に行うことができる。
【0038】
また、コイル素線の両側にすき間を形成したことと合わせてすき間全長を非常に長くすることが可能となったので、従来の数十から数百倍の処理能力をもつ大型スプリングフィルターエレメントの製作が可能となった。また、この結果として、処理能力の小さなフィルターエレメントを濾過タンク内に非常に密に配置する必要がなくなり、高粘度や低含水率の残滓の排出性は大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】第1実施形態のねじ溝を示す拡大図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】第1実施例のねじ溝の変形例を示す拡大図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】第1実施例のねじ溝の他の変形例を示す拡大図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】図3と図5に示す縦溝や、図7に示す連続溝の溝断面形状を矩形状に形成した例である。
【図10】図3と図5に示す縦溝や、図7に示す連続溝の溝断面形状を台形状に形成した例である。
【図11】図3と図5に示す縦溝や、図7に示す連続溝の溝断面形状を正弦波状に形成した例である。
【図12】第2実施形態のねじ溝を示す拡大図である。
【図13】図13のD−D断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図15】本発明におけるコイル素線径、コイル径、中空管外径、ねじ溝ピッチ長を説明するための図である。
【符号の説明】
1 中空管
2,2a ねじ溝
3 コイル素線(コイル)
4 排水口
5 Oリング溝
6 Oリング
7 連通孔
8 円形溝
9 縦溝(すき間)
10 密接線
11 突起部(すき間保持部)
12 濾過タンク下蓋
13 開口部
14 ボルト
15 濾過タンク上蓋
16 切り欠き
17 シール材
18 ホルダー
19 連続溝(すき間)
20 溝(すき間)
21 突起部(すき間保持部)
22 外筒
23 円筒状空間
Claims (4)
- 断面円形のコイル素線を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管の外周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、
前記中空管の外径はコイル径より大きく設定され、前記中空管の外周にはねじ溝が形成されており、前記ねじ溝は、溝底から外周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝の底部には前記中空管の内周に連絡する連通孔が形成され、前記コイルは前記ねじ溝に沿って前記中空管に装着され、
前記コイルまたは前記ねじ溝のいずれか一方にすき間保持部が一体に形成され、前記コイルと前記ねじ溝との間に流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とするスプリングフィルターエレメント。 - 断面円形のコイル素線を螺旋状に巻回してなるコイルを、中空管の内周に密着させたスプリングフィルターエレメントであって、
前記中空管の内径はコイル径より小さく設定され、前記中空管の内周にはねじ溝が形成されており、前記ねじ溝は、溝底から内周側に向けて溝幅が広がる断面形状をなし、前記ねじ溝の底部には前記中空管の外周に連絡する連通孔が形成され、前記コイルは前記ねじ溝に沿って前記中空管に装着され、
前記コイルまたは前記ねじ溝のいずれか一方にすき間保持部が一体に形成され、前記コイルと前記ねじ溝との間に流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とするスプリングフィルターエレメント。 - 前記すき間保持部として前記ねじ溝に突起部が複数設けられ、前記突起部の間に前記コイルと前記ねじ溝との密接線を横切る流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスプリングフィルターエレメント。
- 前記すき間保持部として前記コイルに突起部が螺旋状に連続して設けられ、前記突起部の間に前記コイルと前記ねじ溝との密接線を横切る流体通過用のすき間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスプリングフィルターエレメント。
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Cited By (3)
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WO2013014738A1 (ja) * | 2011-07-25 | 2013-01-31 | 株式会社荒井鉄工所 | 濾過素子及びこの濾過素子を備えた濾過装置 |
CN105736728A (zh) * | 2016-04-13 | 2016-07-06 | 章俊 | 一种球阀 |
CN109072839A (zh) * | 2016-04-22 | 2018-12-21 | 卡特彼勒公司 | 燃料喷射器的燃料入口过滤器 |
-
2003
- 2003-05-27 JP JP2003149700A patent/JP2004351274A/ja active Pending
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