JP2004350557A - ガス透過性バッグを用いた加圧培養装置 - Google Patents

ガス透過性バッグを用いた加圧培養装置 Download PDF

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誠 川西
Takashi Ushida
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【課題】生理的な力学的刺激パターンを再現し、かつ、長期にわたる無菌性及び種々の細胞に適用できる汎用性を有する培養システムを提供する。
【解決手段】細胞あるいは細胞混合物を保持し同細胞を生育させることが可能な生体適合性材質からなる培養担体を内部に保持しノズルを有するガス透過性バッグを1個以上装着することが可能なカラム様デバイス、そのカラムの前後に電子制御可能なバルブを併設、前方バルブの上流に圧力リザーバー、同圧力リザーバーの上流にポンプを設置、電子制御による両バルブのON/OFFでカラム内の細胞へ生体の力学的刺激環境に近い圧力変化の周期的誘起が可能な培養装置。長期にわたる無菌性及び種々の細胞に適用できる汎用性を有する培養システムを提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のサンプルを独立させた状態で同時に、力学的刺激負荷が可能な長期細胞培養装置及び長期細胞培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の組織・細胞は、サイトカインなど種々の因子による生化学的な刺激だけでなく、静的又は動的な力学的刺激を受けることにより、分化・増殖、代謝など、細胞の生化学的そして生理学的な機能を発揮している。生体における力学的刺激としては部位によって異なるが、大気圧の数十倍という静水圧による刺激と、静水圧に比べそれ自体の圧力レベルはかなり低いものであるが血液、体液の流れによる応力圧による刺激がその主なものである。
【0003】
これまでこのような力学的刺激を利用した細胞の分化・増殖を目的とする細胞培養システムの検討はいくつか実施されてきた。
応力刺激による培養システムとして、Leungら(非特許文献1を参照)が細胞を付着させた膜を伸縮又は振動させる方法で血管平滑筋の培養例を示し、Dunkelmanら(非特許文献2を参照)や、Bujiaら(非特許文献3を参照)がカラム内に支持体に保持された軟骨細胞を入れ、ポンプで培地を循環させ支持体中の軟骨細胞へ液の流れによる応力刺激を行う内容の培養例を示している。しかしながらこれらは一定の力で一定の方向に刺激を行うもので、その刺激の強度そしてその刺激パターンも生体本来のものとはかけ離れたものである。
【0004】
また、静水圧刺激による培養システムとして、Wrightら(非特許文献4を参照)がガスシリンダー式の圧力負荷による軟骨細胞への刺激負荷例を示し、Parkkinenら(非特許文献5を参照)は油圧シリンダー式ポンプでカラムに関節部内圧力に相当する5MPaの圧力を負荷するという方法で軟骨細胞の刺激例を示している。また加圧の系でサンプルの無菌性を確保し、長期培養を目指すシステムとして、Smithら(非特許文献6を参照)は、バッグ内に培養容器を入れ、油圧シリンダー式の圧力負荷で関節部の生理的な圧力である10MPaを中心に30MPaまでの圧力負荷を行い軟骨細胞への刺激を行っている。
【0005】
以上の方法は生体内レベルの圧力強度自体は再現しているが、その負荷パターンは急激な圧力上昇と下降という凸凹の圧力変化を示すものでやはり生体本来のものとは異なるものである。さらに以上のタイプのシステムでは、長期の培養に耐える十分な培養環境を確保した培養システムであることは示されていない。
【0006】
【非特許文献1】
Leungら、Science 191巻、475−477頁、1976年
【非特許文献2】
Dunkelman N.S.ら、Biotechnology and Bioengineering 46巻、299−305頁
【非特許文献3】
Bujia J.、Laryngorhinootologie 73巻、577−580頁、1994年
【非特許文献4】
Wrightら、Clinical Science 90巻、61−71頁、1996年
【非特許文献5】
Parkkinenら、Archives of Biochemistry 300巻、458−465頁、1993年
【非特許文献6】
Smithら、Journal of Orthopaedic Research 14巻、53−60頁、1996年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように現行の力学的刺激による細胞培養システムは生体本来の力学的刺激負荷に近いパターンを再現したものであるとは言いがたい。細胞の培養の面からも数週間に及ぶ長期培養が可能であるような無菌性そして酸素分圧、pHなどの至適培養環境を保つことは困難であり、かつ複数の細胞サンプルへの適用を可能とする独立性を十分確保したものでもないと言える。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、生理的な力学的刺激パターン、特に関節内の静水圧を再現し、かつ、培地内の酸素、COをコントロール可能にするガス透過性バッグを用いたこと、またバック周囲の液の酸素分圧、pHの調整を行うことで長期にわたる無菌性等の至適培養環境及び複数のサンプルの同時培養に適用できる独立性を有する培養システムを提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、細胞あるいは細胞混合物を保持し同細胞を生育させることが可能な生体適合性材質からなる培養担体を内部に保持しノズルを有するガス透過性バッグ、前記ガス透過性バッグを1個以上装着することが可能なカラム様デバイス、前記カラム様デバイスの出口側に設置された電子制御可能なバルブ、前記カラム様デバイスの入口側に設置された電子制御可能なバルブ、前記カラム様デバイスの入口側に設置された前記バルブを介して前記カラム様デバイスに接続されたポンプ、前記カラム様デバイスの入口側に設置された前記バルブと前記ポンプとの間に設置された圧力リザーバー、前記カラム様デバイスの出口側に設置された前記バルブと前記ポンプとの間に設置された水槽、前記2つのバルブに電気的に接続されており、前記2つのバルブを開閉させることで、前記カラム様デバイス内の細胞にかかる圧力パターンを制御するためのプロセスコントローラー、並びに、前記カラム様デバイス内の圧力を測定できるよう設置され、かつ前記プロセスコントローラーに電気的に接続された圧力センサー、からなることを特徴とする細胞培養装置である。
【0010】
本発明の細胞培養装置においては、細胞にかかる圧力強度が可変であり、かつ周期的な圧力負荷が可能である。この場合において、上記圧力強度の可変範囲が0〜10MPa(ただし好ましい下限は0.1MPaであり、好ましい上限は7MPaである)であり、周期性として10Hzから0.005Hz(ただし好ましい下限は0.01Hzであり、好ましい上限は1Hzである)の範囲で圧力負荷を制御することが可能である。上記圧力強度の可変範囲及び周期性の範囲は生体関節の動きに近い範囲である。
【0011】
本発明の細胞培養装置は、細胞にかかる圧力負荷パターンを、生体内部で起こる圧力負荷パターンに制御するために使用することができる。生体内部で起こる圧力負荷パターンとは、通常、正弦波型の圧力負荷パターンのことをいう。
【0012】
また、本発明の細胞培養装置においては、加圧、非加圧時ともに、水槽をCOインキュベーター内に設置するかあるいは水槽に直接空気あるいは酸素、COを吹き込むことにより、カラム様デバイス内に、酸素分圧、pHの調整を行った液体の移動を生起させることが可能である。
【0013】
上記カラム様デバイス中の上記培養担体は、生体適合性材質からなるものである。上記カラム様デバイス中の培養担体としては、細胞等を良好に保持できるものであれば特に限定されず、具体的には、平板プレート、多孔質体、不織布、メッシュ、組み紐、ゲルが挙げられる。上記生体適合性材質としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/ポリ乳酸共重合体、ポリεカプロラクトン、ポリ乳酸/ポリεカプロラクトン共重合体、アルギン酸、セルロース、ニトロセルロース、ゼラチン、コラーゲン等の分解性材料、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリビニール、ポリカーボネート、ポリウレタン等の非分解性材料などが挙げられる。
【0014】
上記カラム様デバイスは、加圧に耐え、かつ耐腐食性の材質であることが望ましく、具体的にはステンレス、チタン製あるいは内部の状態を観察し得る透明な素材からなることが好ましく、透明な素材として具体的には、強化ガラス(ホウケイ酸ガラスなど)が挙げられる。
【0015】
上記ポンプとしては、プランジャー式、油圧式、又は、ガス圧式のものが好ましい。
上記ポンプは、上記プロセスコントローラーにより制御されていることが好ましい。
【0016】
上記カラム様デバイス内の培養担体に保持される細胞は、ほ乳類(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなど、好ましくはヒト)由来の細胞であることが好ましく、ほ乳類由来の骨髄若しくは組織由来の幹細胞又は関節軟骨由来の細胞であることがより好ましく、ヒト由来の骨髄若しくは組織由来の幹細胞又は関節軟骨由来の細胞であることが更に好ましい。
【0017】
本発明の細胞培養装置の基本原理は、図1に示すとおり、ポンプ(5)からの送液により圧力リザーバー(6)を介してカラム様デバイス(1)に圧力を生成させるというものである。圧力負荷パターンの制御は、カラム様デバイス(1)の入口側のバルブ(7)及び出口側のバルブ(2)のON/OFFによる制御で行う。したがって、圧力の上昇パターンは圧力リザーバー(6)から押し出される液体の流量によって規定され、流量を変化させることにより急激な上昇も緩慢な上昇も任意に作り出すことが可能である。圧力の維持及び下降パターンは、生成した圧力を開放する経路に置いた出口側のバルブ(2)の開閉の制御圧力により規定される。以上のような機構により本発明の細胞培養装置を用いて生体における圧力の上昇下降を再現することが可能となる。
【0018】
さらに本発明の細胞培養装置は基本的にはガス透過性バッグを用いることでその内部の無菌性を確保することができるが、さらに液体と接触するすべての部分がオートクレーブ又はエチレンオキサイドガスにより滅菌できる構造、またこのような滅菌法に耐え得る素材でできており、雑菌等のコンタミを最小限にすることが可能である。また、カラム構造の工夫により汎用的な培養が可能である。
【0019】
なおポンプ(5)についてはより好ましくはプランジャー式のポンプであるが、従来の油圧又はガス圧による圧力負荷形式のものであっても、出口側のバルブ(2)及び入口側のバルブ(7)のON/OFFを組み合わせることにより、正弦波的な圧力負荷パターンなど種々の負荷パターンを再現できる。
【0020】
以下で本発明の細胞培養装置の一態様を詳細に説明する。
本発明の細胞培養装置の一態様は、図1に示すように、基本構造としてポンプ(5)、カラム様デバイス(1)、出口側のバルブ(2)及び入口側のバルブ(7)、圧力リザーバー(6)、水槽(3)、プロセスコントローラー(9)、好ましくは圧力センサー(8)からなる。ポンプ(5)からの送液により圧力リザーバー(6)を介してカラム様デバイス(1)に加圧し、蓄えられた圧力リザーバー(6)の圧力に対応した圧力を生成させる。圧力負荷パターンの制御は、カラム様デバイス(1)の入口側のバルブ(7)及び出口側のバルブ(2)のON/OFFにより行う。したがって、圧力の上昇パターンは圧力リザーバー(6)から押し出される液体の流量によって規定され、流量を変化させることにより急激な上昇も緩慢な上昇も任意に作り出すことが可能である。圧力の維持及び下降パターンは、生成した圧力を開放する経路に置いた出口側のバルブ(2)のプロセスコントローラー(9)制御による開閉により規定され、制御圧力の低いものでは急激な下降、高いものでは緩慢な下降が得られる。以上のような機構により本発明の細胞培養装置を用いて生体における圧力の上昇下降を再現することが可能となる。なお圧力の上昇下降はカラム様デバイス(1)前後のバルブのプロセスコントローラー(9)の制御による開閉操作でも可能である。
【0021】
圧力センサー(8)はカラム様デバイス(1)の入口箇所等に設置しリアルタイムでの測定を行う。この測定シグナルはモジュレーターを経てプロセスコントローラー(9)に取り込まれる。
【0022】
水槽(3)には、装置内を通液する液体が貯められ、この液体に直接空気あるいは酸素、COを吹き込むことにより、酸素分圧、pHの調整が可能である。好ましくは、水槽をCOインキュベーター内に設置することにより、水槽内の液体の温度及びpHが制御される。
装置内を通液する液体としては、水、緩衝液などが使用できるが、簡便性、使いやすさの点から水が好ましく、装置保全上からは特にRO水が好ましい。
【0023】
また本発明の細胞培養装置は、装置全体又は少なくとも水槽(3)とカラム様デバイス(1)については、培養する細胞に適した温度環境に設定し得る容器内に設置して稼働する。
【0024】
さらに本発明の細胞培養装置は、ノズルを有するガス透過性バッグを用いる独立した培養であることより培養の途中で無菌的にサンプリングすることが可能であり、細胞及び細胞混合物の生化学的、生理学的評価を経時的に行うことが可能である。すなわちサンプリング時にノズルの先端部を切り、サンプリング操作が終了し再度培養する時に切断箇所に近い場所を再シールするという操作を繰り返すことにより複数のサンプリングあるいは培地交換が可能となる。
【0025】
ノズルを有するガス透過性バッグの形状としては、中に入れる生体適合性材質からなる培養担体の形状に合わせて作製することが望ましいが、通常は10cm×15cm四方のもので、20cmから30cmの長さ、径5mm程度のノズルを有するものが用いられる。ノズル径はサンプリング時間に支障が無い限り特に限定したものを用いる必要はないが、ノズルの長さは培養期間あるいはサンプリングの回数に合わせ調整することが望ましい。またガス透過性バッグの材質としてはポリオレフィン材質のものが望ましいがガス透過性のものであればこれにこだわる必要はない。
【0026】
本発明の細胞培養装置を用いることにより、生体組織を生体内と同じ環境下で培養することができる。本発明の細胞培養装置で細胞を培養することからなる細胞培養方法もまた、本発明の1つである。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1) 培養装置および圧力負荷パターン
以下、本発明の細胞培養装置の実施品の個々のユニットについて、図1を用いて説明する。
カラム様デバイス(1)は、内部カラム部がホウケイ酸ガラス製で外側のシールド部がポリカーボネート製の円筒形二重構造を有し、圧力、熱に対して耐性があるワイエムシイ社製のものを用いた。
カラム様デバイス(1)、プランジャーポンプ(5)及び水槽(3)、圧力リザーバー(6)を接続するラインは、熱に対して耐性があるアップチャーチ社製のPEEK素材のものを用い、各ユニットへの接続はアップチャーチ社製の接続器具を用いた。
【0029】
圧力センサー(8)はゼネレクス社製を用い、培養カラムの入口箇所に設置した。
プランジャーポンプ(5)はセンシュー科学製のものを用い、毎分80mlの流速で加圧した。プロセスコントローラーを用いて1秒で昇圧、カラム様デバイス内の圧力が3.5MPaに達した後1秒間待機させ、1秒で降圧、大気圧に達した後1秒間待機するパターンで間欠的な静水圧を負荷した。得られた圧力パターンを図2に示した。
【0030】
(実施例2)本培養装置およびガス透過性のバッグを用いたヤギ軟骨細胞培養例ヤギ前後肢関節荷重部より採取・分離した軟骨細胞を直径35mmの培養ディッシュに2×10個播種し、GIBCO社製F−12培地(含10%牛胎児血清)を用い、37度、5%COインキュベーター内で培養した。培養後、同培養ディッシュを、ポリオレフィン製のガス透過性バッグ(川澄化学製)に入れシーラーにてしっかりと封をした後に、実施例1の細胞培養装置のカラム様デバイス(1)に入れRO水を満たした状態で加圧培養を実施した。圧力負荷条件として3.5MPaを0.25Hz周期で一日4時間間欠的に加える条件(20時間は非加圧)を用いた。4日間の培養後、静水圧の負荷がマトリクス産生に与える影響をアグレカン、コラーゲンタイプ1,2のmRNAを指標に評価し、結果を図3に示した。本実験ではカラム内のRO水を加圧時に80ml/分、非加圧時に10ml/分で循環させた。また比較として、同条件で作製した培養ディッシュを保持する同ガス透過性バッグを同仕様のカラムに入れ、非加圧状態(RO水循環は10ml/分で実施)で4日間培養した。表1は加圧培養系における培地のpHおよびガス分圧(CO、O)を測定したものである。ガス圧測定はバイエルメディカルー348装置を用いて行った。間欠加圧培養したバッグ内培地のpH、ガス分圧ともに、COインキュベーター内の状態(COインキュベーター内に設置した水槽中に入れたバッグ内培地および同じくCOインキュベーター内のディッシュ内培地)のものと同等であることが示された。
【0031】
【表1】
Figure 2004350557
【0032】
表1の説明;(水槽(給水):加圧培養実施時のCOインキュベーター内の水槽内、IHSP:カラム様デバイス内での間欠加圧バッグ内、control:カラム様デバイス内での非加圧バッグ内、水槽(Bag有り):COインキュベーター内に設置したバッグ有り水槽内、Bag:COインキュベーター内に設置した水槽に入れたバッグ内、Dish:COインキュベーター内に設置した培養ディッシュ内)
【0033】
アグレカン、コラーゲンタイプ1、コラーゲンタイプ2のmRNAの定量はPCR法により実施した。PCR反応はTAKARA製のTaq polymeraseを用いて実施した。mRNAからcDNAへの変換はINVITROGEN社のSuperScriptIIIを用いて行った。図3中、レーン1が加圧系の細胞、レーン2がコントロールの非加圧系の細胞を用いたPCR後の電気泳動パターンである。結果、加圧した方がコントロールの非加圧に比べ、アグレカン、コラーゲンタイプ2mRNAの産生が増加し、コラーゲンタイプ1mRNAの産生が低下することが確認された。正常の軟骨細胞ではコラーゲンタイプ2が主に発現しており、タイプ1の発現は極僅かであることが知られており、今回得られたデータは、ガス透過性バッグを用いた本加圧培養処理により、用いたヤギ軟骨細胞がより正常軟骨細胞に近い状態になるように培養されたことを示すものである。
【0034】
本結果は、本培養装置およびガス透過性のバッグを用いた本閉鎖系加圧培養システムが、複数のサンプルを独立させ同時に長期に渡り培養環境を良好な状態に保つ、優れた加圧培養システムであることを示唆するものである。
【0035】
【発明の効果】
本発明は生体組織のあらゆる部分の細胞培養用として応用可能なシステムであるが、その中でも特に軟骨細胞の培養への応用が挙げられる。生体の軟骨細胞は常に高い圧力負荷の中、さらに歩行などによる周期的な圧力変化を受けている。本発明はまさにこの圧力負荷を忠実に再現し得る性能を有するものであり、軟骨細胞の増殖、機能発現、維持ひいては軟骨組織の形成促進に有効に働くことが強く示唆される。加えて本発明は複数のサンプルを独立させた状態で同時に培養できるシステムであることより、安全性の面で自家移植が好ましいとされる再生医療の分野での産業応用性を示唆するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一態様である細胞培養装置の模式図。
【図2】本発明の一態様である細胞培養装置により生成された圧力負荷パターンを示した図。
【図3】本発明の一態様である細胞培養装置と比較対照の細胞培養装置において培養細胞が産生するアグレカン、コラーゲンタイプ1およびタイプ2mRNA発現のPCR解析パターン。
【符号の説明】
1:カラム様デバイス
2:出口側のバルブ
3:水槽
4:COインキュベーター
5:(プランジャー)ポンプ
6:圧力リザーバー
7:入口側のバルブ
8:圧力センサー
9:プロセスコントローラー

Claims (16)

  1. 細胞あるいは細胞混合物を保持し同細胞を生育させることが可能な生体適合性材質からなる培養担体を内部に保持しノズルを有するガス透過性バッグ、
    前記ガス透過性バッグを1個以上装着することが可能なカラム様デバイス、
    前記カラム様デバイスの出口側に設置された電子制御可能なバルブ、
    前記カラム様デバイスの入口側に設置された電子制御可能なバルブ、
    前記カラム様デバイスの入口側に設置された前記バルブを介して前記カラム様デバイスに接続されたポンプ、
    前記カラム様デバイスの入口側に設置された前記バルブと前記ポンプとの間に設置された圧力リザーバー、
    前記カラム様デバイスの出口側に設置された前記バルブと前記ポンプとの間に設置された水槽、
    前記2つのバルブに電気的に接続されており、前記2つのバルブを開閉させることで、前記カラム様デバイス内の細胞にかかる圧力パターンを制御するためのプロセスコントローラー、並びに、
    前記カラム様デバイス内の圧力を測定できるよう設置され、かつ前記プロセスコントローラーに電気的に接続された圧力センサー、
    からなることを特徴とする細胞培養装置。
  2. 圧力強度が可変であり、かつ周期的な圧力負荷が可能な請求項1記載の細胞培養装置。
  3. 圧力強度の可変範囲が0〜10MPaであり、周期性として10Hzから0.005Hzの範囲で圧力負荷を制御することが可能な請求項2記載の細胞培養装置。
  4. 圧力パターンを、生体内部で起こる圧力パターンに制御するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  5. 加圧、非加圧時ともにカラム様デバイス内に酸素分圧、pHの調整を行った液体の移動を生起させることが可能な請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  6. 前記酸素分圧、pHの調整を行った液体を供給するために水槽をCOインキュベーター内に設置することを特徴とする請求項5記載の細胞培養装置。
  7. ポンプがプランジャー式のものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  8. ポンプが油圧式のものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  9. ポンプがガス圧式のものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  10. ポンプがプロセスコントローラーにより制御されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  11. ガス透過性バッグがポリオレフィンで作られたものである請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  12. ガス透過性バッグ内の培養担体に保持される細胞がほ乳類由来の細胞である請求項1〜11のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  13. ガス透過性バッグ内の培養担体に保持される細胞がヒト由来の細胞である請求項1〜11のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
  14. ヒト由来の細胞がヒト由来の骨髄又はヒト組織由来の幹細胞である請求項13記載の細胞培養装置。
  15. ヒト由来の細胞がヒト関節軟骨由来の細胞である請求項13記載の細胞培養装置。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の細胞培養装置で細胞を培養することからなる細胞培養方法。
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