JP2004350526A - タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するための試験キットであって、該試験キットは、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器とを含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キット。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットに関する。より詳しくは、細胞内で機能させたいタンパク質を任意の量かつ任意の期間細胞内に存在させるために用いられる試験キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質を細胞内に導入する技術は、タンパク質の性質を知るうえで有用であり、細胞内で機能させたいタンパク質を任意の量かつ任意の期間細胞内に存在させることを可能とする技術である。現在、様々な細胞の増殖・分化・発生に関わるタンパク質の発現・修飾のタイムシグナルが明らかにされつつあり、これらの知見に基づいて、例えば、再生医学や組織工学といった工学面へと応用する際に、タンパク質の細胞内導入技術により、様々な可能性が広がることが期待されている。
【0003】
このようなタンパク質の細胞内導入技術に関し、現在では、遺伝子導入法が用いられている。遺伝子導入法は、恒常的に細胞内で任意のタンパク質を機能させたい場合に有利な手法であるが、任意のタンパク質を一過的に細胞内で機能させたい場合には、タンパク質そのものを細胞内に導入する手法が用いられている。
従来のタンパク質の細胞内導入技術としては、カチオン性の高いタンパク質や化学修飾によりカチオン化されたタンパク質による手法が挙げられる(例えば、非特許文献1)。この手法においては、負に帯電している細胞表面にカチオン化された導入目的物であるタンパクが静電的に吸着することにより、高効率で細胞内に取り込まれると考えられる。しかしながら、タンパク質のカチオン化による手法では、導入目的物であるタンパク質分子における多部位のアミノ酸側鎖の修飾が必要であったため、タンパク質の機能が低下することとなる。また、再生医学や組織工学等に応用する際に、タンパク質の性質等を効率的に研究するために、細胞内で機能させたいタンパク質を任意の量かつ任意の期間細胞内に存在させることをより簡便にできるようにするための工夫の余地があった。
【0004】
【非特許文献1】
二見等(Futami et al.)著,「バイオケミストリー(Biochemistry),(米国),第40巻,第25号,アメリカンケミカルソサイアティ(Am.Chem.Soc),2001年,p.7518−7524
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドの機能が低下することを抑制して、効率的かつ簡便にタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入することができる試験キットを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、タンパク質の細胞内導入技術について種々検討したところ、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質とを結合させることにより、好ましくは、ポリエチレンイミン(PEI)とタンパク質とを結合させることにより、導入目的物であるタンパク質の一部分をカチオン化して細胞内に導入することが可能であり、この場合には、タンパク質の機能が低下することを抑制することができることに着目し、更に、このような技術がペプチドの細胞内導入においても適用できることにも着目し、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとの結合試薬が封入された容器とを含んでなる試験キットが、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するために有用であることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、タンパク質及び/又はペプチドと結合する複合体を用いた試験キットにおいても本発明の作用効果が発揮されることも見いだし、本発明に到達したものである。タンパク質及び/又はペプチド分子における多部位のアミノ酸側鎖が修飾される場合には、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドの機能が低下することになるが、カチオン性の基を有する重合体を用いる場合には、タンパク質及び/又はペプチド分子における一部分を修飾することによりタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入することができることから、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドの機能が低下することを抑制することが可能となる。上記試験キットを用いることにより、カチオン性の基を有する重合体の作用効果を充分に発揮しつつ、効率的かつ簡便にタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入することが可能となる。
【0007】
すなわち本発明は、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するための試験キットであって、該試験キットは、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器とを含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットである。
【0008】
本発明はまた、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するための試験キットであって、該試験キットは、タンパク質及び/又はペプチドと結合するカチオン化された複合体が封入された容器を含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットでもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の試験キットは、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するために、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを含むカチオン化された複合体を形成するためのものである。カチオン化された複合体は、細胞内に取り込まれることになるが、本発明においては、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドの機能が低下することが抑制され、試験キットの使用により、効率的かつ簡便にタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入することが可能となる。
上記試験キットにおいて、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを含むカチオン化された複合体を形成する形態としては、(1)導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとカチオン性の基を有する重合体とを結合することによる形態、(2)導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとカチオン化された複合体とを結合することによる形態が挙げられる。
【0010】
本発明におけるカチオン性の基を有する重合体としては、水溶液中でカチオンとなり得る原子を有する重合体であればよく、例えば、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、ポリビニルイミダゾール骨格の1種又は2種以上の骨格を有する重合体(共重合体);これらの重合体の塩、例えば、第一級、第二級、第三級及び第四級アンモニウム塩等が好適であり、中でも、ポリアルキレンポリアミン骨格を有する重合体であるポリエチレンイミンを用いることが好ましい。なお、これらの重合体を化学的に修飾、変成したものも用いることができる。
【0011】
上記(1)の形態においては、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬を用いることが好ましく、これらを直接的に結合する場合には、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の脱水縮合剤;N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP);2−イミノチオラン;GMBS(N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド )等の試薬を用いることが好ましい。また、スペーサー等を介して結合する場合には、例えば、2価性架橋試薬等を用いることが好ましい。これらの中でも、EDCが好ましい。
【0012】
上記(2)の形態においては、カチオン化された複合体として、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとが結合した複合体を用いることが好ましく、この場合には、例えば、▲1▼カチオン性の基を有する重合体と、複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの1種であるアビジン(avidine)とが、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬により結合した複合体;▲2▼カチオン性の基を有する重合体と、複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの1種であるプロテインA及び/又はプロテインG(proteinA/G)とが、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬により結合した複合体;▲3▼カチオン性の基を有する重合体と、複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの1種である抗体とが、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬により結合した複合体等を用いることが好ましい。上記▲1▼の複合体を用いる場合には、タンパク質及び/又はペプチドをビオチン化試薬によりビオチン化し、アビジンに結合することが好ましい。また、上記▲2▼及び▲3▼の複合体を用いる場合には、抗体がこれらの複合体と結合しやすいことから、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとしては、抗体を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の試験キットは、上記(1)の形態の場合、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器(以下、「容器1」ともいう)と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器(以下、「容器2」ともいう)とを含んでなる。
また上記(2)の形態の場合、タンパク質及び/又はペプチドと結合するカチオン化された複合体が封入された容器(以下、「容器3」ともいう)を含んでなる。この場合には、カチオン性の基を有する重合体と複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドとが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを含んでなる形態;複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器1と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを含んでなる形態であってもよい。
【0014】
これらの場合、試験キットの使用方法としては、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを含むカチオン化された複合体を形成することになる限り特に限定されるものではない。
上記(1)の形態の場合には、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを容器1に入れ、次いで容器1の内容物を容器2に入れる方法;容器1の内容物を容器2に入れ、次いで導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを容器2に入れる方法等が好ましい。
【0015】
上記(2)の形態の場合には、下記のような使用方法が好適である。
▲1▼カチオン性の基を有する重合体とアビジンとによる複合体を用いる場合:ビオチン化した導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを、カチオン性の基を有する重合体とアビジンとによる複合体が封入された容器3に入れる方法;カチオン性の基を有する重合体とアビジンとが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを用いて容器3を形成し、該容器3にビオチン化した導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを入れる方法;アビジンが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器1と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを用いて容器3を形成し、該容器3にビオチン化した導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを入れる方法。
【0016】
▲2▼カチオン性の基を有する重合体とプロテインA及び/又はプロテインGとによる複合体を用いる場合:導入目的物である抗体を、カチオン性の基を有する重合体とプロテインA及び/又はプロテインGとによる複合体が封入された容器3に入れる方法;カチオン性の基を有する重合体とプロテインA及び/又はプロテインGとが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを用いて容器3を形成し、該容器3に導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを入れる方法;プロテインA及び/又はプロテインGが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器1と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを用いて容器3を形成し、該容器3に導入目的物である抗体を入れる方法。
【0017】
▲3▼カチオン性の基を有する重合体と抗体とによる複合体を用いる場合:導入目的物である抗体を、カチオン性の基を有する重合体と抗体とによる複合体が封入された容器3に入れる方法;カチオン性の基を有する重合体と複合体を形成する抗体とが封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを用いて容器3を形成し、該容器3に導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを入れる方法;複合体を形成する抗体が封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器1と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器2とを用いて容器3を形成し、該容器3に導入目的物である抗体を入れる方法。
【0018】
なお、これらの形態において、上記複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドと、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとは同一であっても異なっていてもよい。また、タンパク質及び/又はペプチドとしては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記(1)の形態の場合、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとカチオン性の基を有する重合体との割合としては、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドの1分子に対して結合する上記重合体の分子数が1〜10個となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1〜3個である。また、個々の上記重合体におけるタンパク質及び/又はペプチドとの結合部位数が1点となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1個のタンパク質及び/又はペプチドに対して、1個の上記重合体が1点だけで結合することである。
【0020】
上記容器1に封入するカチオン性の基を有する重合体は、水溶液の形態とすることが好ましい。より好ましくは、使用直前に水に溶解し、重合体水溶液として用いることである。上記重合体水溶液中の上記重合体の濃度としては、1質量%以上、また、60質量%以下とすることが好ましい。1質量%未満であると、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に充分に導入することができなくなるおそれがある。60質量%を超えると、タンパク質及び/又はペプチドの機能や構造を充分に保持することができなくなるおそれがある。より好ましくは、5質量%以上、また、20質量%以下である。
【0021】
上記カチオン性の基を有する重合体の水溶液のpHとしては、3.0以上、また、11.0以下とすることが好ましい。より好ましくは、4.0以上、また、10.0以下である。上記重合体水溶液のpHの調整は、塩酸や硫酸等を用いることができる。
上記容器に封入する試薬の形状としては、特に限定されず、粉末状であっても、媒体に溶解した状態であっても良い。試薬の量としては特に限定されず、上記重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するのに適当な量を設定することとなる。
【0022】
上記(2)の形態の場合、容器3におけるカチオン化された複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチド、すなわち上記▲1▼の形態においてはアビジン、上記▲2▼の形態においてはプロテインA及び/又はプロテインG、上記▲3▼の形態においては抗体の1分子に対して結合する上記重合体の分子数としては特に限定されず、例えば、1〜10個が好ましい。より好ましくは、1〜3個である。また、個々の上記重合体におけるタンパク質及び/又はペプチドとの結合部位数が1点となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1個のタンパク質及び/又はペプチドに対して、1個の上記重合体が1点だけで結合することである。
【0023】
上記容器3におけるカチオン化された複合体と、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとのモル比としては、上記▲1▼の形態においては、10/90〜90/10とすることが好ましく、20/80〜80/20とすることがより好ましい。上記▲2▼の形態においては、10/90〜90/10とすることが好ましく、30/70〜70/30とすることがより好ましい。上記▲3▼の形態においては、10/90〜90/10とすることが好ましく、30/70〜70/30とすることがより好ましい。これにより、本発明の作用効果が充分に発揮されるように、容器3における複合体と導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとの結合を適切に行うことができる。
【0024】
容器としては、0.5〜10mLのものを用いることが好適である。これらの容器は、オートクレープや紫外線、ガンマ線などで滅菌処理してもよい。また、カビの発生や容器内の物質の腐敗を防ぐために、容器の内側をコーティングしてもよい。更に、窒素やアルゴンなどの不活性ガス下で、容器に内容物を封入することも好ましい。なお、容器の保存方法としては、容器内に上記物質を封入後、5℃以下の低温で密封保存することが好ましい。
本発明の試験キットにおける好ましい形態の1つは、図1に示すような容器を含んでなる試験キットである。
【0025】
以下では、本発明において使用することができる試験物質や試薬等について更に詳しく説明する。
本発明におけるタンパク質及び/又はペプチドとしては、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合して生じる化合物を用いることができる。このようなタンパク質及び/又はペプチドとしては、例えば、ペプチド、酵素、抗体、その他機能性(薬理作用等の生理活性)を有し、医薬・薬物として有用なタンパク質及び/又はペプチド等が挙げられる。分子量としては、100〜1000000であることが好ましい。なお、本発明におけるタンパク質及び/又はペプチドは、糖鎖、脂質、リン酸基等が結合した複合タンパク質及び/又はペプチドをも含む。
なお、構造としては、天然状態であっても変性状態であってもよい。
【0026】
本発明におけるカチオン性の基を有する重合体としては、2を超えて30000以下のカチオン価を有する重合体であることが好ましい。2以下であると、カチオン性の基を有する重合体と結合するタンパク質及び/又はペプチドの機能を充分に保持することができなくなるおそれがあり、また、30000を超えると、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。より好ましくは、20000以下であり、更に好ましくは、2500以下であり、特に好ましくは、250以下であり、最も好ましくは、4以上、70以下である。
【0027】
上記カチオン価とは、重合体のアミン価(mmol/g)と該重合体の数平均分子量との積を1000で割った値であり、また、アミン価(mmol/g)は、試料化合物中に含まれるアミンの総量の指標を意味し、試料化合物1gに含まれるアミンのmmol数で表される。試料化合物のアミン価は、一般的なアミノ基の定量方法に従って測定することができる。一般的なアミノ基の定量方法としては、例えば、「新実験化学講座 第13巻 有機化学構造I」(日本化学会編、丸善株式会社、昭和53年11月20日、p.88−99)に記載の方法やコロイド滴定法(例えば、千手諒一著、「コロイド滴定法」、第1版、株式会社南江堂、1969年11月20日参照。)が挙げられる。上記アミン価の分析は、試料化合物の形態、溶解性、含有不純物等を考慮して、精度よく分析できる方法を適宜選択する必要がある。上記重合体のアミン価としては、1〜30であることが好ましく、5〜25であることがより好ましい。
【0028】
上記カチオン性の基を有する重合体の数平均分子量としては、細胞導入効率、取扱い性等の点から、100〜100000であることが好ましい。より好ましくは、100〜10000であり、更に好ましくは、200〜3000である。なお、数平均分子量の測定方法については、分子量を精度よく測定するために、数平均分子量が10000以下の場合は沸点上昇法により測定することが好ましく、10000を超える場合はゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが好ましい。
【0029】
上記カチオン性の基を有する重合体としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のポリアリルアミン;ポリアクリルアミドのホフマン分解物、ポリビニルアセトアミド加水分解物、ポリビニルフタルイミドの加水分解物、N−ビニルホルムアミドポリマーの加水分解物等のポリビニルアミン;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(共)重合体等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(共)重合体;ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体;ポリアミジン;ポリビニルピリジン;ポリビニルイミダゾール;ジシアンジアミド系縮合物;エピクロロヒドリン・ジメチルアミン縮合物等のエピクロロヒドリン・ジアルキルアミン縮合物;ジメチルアミン・エチレンジクロライド縮合物等のジアルキルアミン・アルキルジハライド縮合物;ポリビニルイミダゾリン;ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド;カルボキシメチルセルロース第四級アンモニウム(第四級アンモニウムCMC);グリコールキトサン;カチオン化デンプン等が好ましく、中でも、上述したようにポリエチレンイミンを用いることが好ましい。
【0030】
上記カチオン性の基を有する重合体のアミン価の理論値について、以下の表に例示する。
【0031】
【表1】
【0032】
上記表中、アミン価の理論値は、重合体を形成する単量体の分子量の逆数に1000をかけた値を表す。一般的に、上述の方法により測定されるアミン価の実測値は、その理論値と測定誤差の範囲内でほぼ一致し、上述の方法により測定されるアミン価に基づいて、重合体のカチオン価を算出することができる。アミン価は、重合体の合成方法の変更、他成分との共重合、重合体の化学的修飾により、任意に変化させることが可能である。
【0033】
本発明におけるカチオン性の基を有する重合体としては、上述したようにポリエチレンイミンを用いることが好ましく、例えば、下記一般式(1)で表されるものを用いることが好ましい。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、X及びYは、同一又は異なって、1以上の整数を表す。
【0036】
上記ポリエチレンイミンは、大きな正の電荷密度を有する水溶性ポリマーであり、かまぼこの沈殿剤等の食品添加物としても利用されており、生体に対する安全性が確認されている。その構造は、直鎖状のものであっても、分岐鎖を多数有する枝分かれ状のものであってもよいが、例えば、より正電荷密度が高いことから、下記一般式(2)で表されるような枝分かれ構造を有するポリエチレンイミンが好ましい。
【0037】
【化2】
【0038】
上記(1)の形態の場合、カチオン性の基を有する重合体と導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとの結合は、共有結合であることが好ましく、また、各種の合成手法を利用することにより、様々な結合方法で結合させることが可能である。例えば、カチオン性の基を有する重合体としてポリエチレンイミンを用い、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬としてEDC、DCC等の脱水縮合剤を用いる場合には、ポリエチレンイミンのアミノ基と、タンパク質及び/又はペプチド分子中のアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基又は炭素末端のカルボキシル基との間にアミド結合を形成することができる。EDCを用いた場合の例を下記式に模式的に示す。
【0039】
【化3】
【0040】
上記試薬としてSPDP等を用いる場合には、ポリエチレンイミンのアミノ基と、タンパク質及び/又はペプチド分子中のシステイン残基のチオール基との間に、ジスルフィド結合を含む共有結合を形成することができる。SPDPを用いた場合の例を下記式に模式的に示す。
【0041】
【化4】
【0042】
上記ジスルフィド結合は、可逆的な結合であり、細胞質内の還元条件下で解離する。そのため、ジスルフィド結合により結合した複合体は、細胞内に導入されるとタンパク質及び/又はペプチドとポリエチレンイミンとに分離し、該タンパク質及び/又はペプチドが、より有利にその機能を細胞内で発揮することが期待される。
【0043】
上記試薬として2−イミノチオラン等を用いる場合には、タンパク質及び/又はペプチド分子中のリジン残基又はN末端のアミノ基と、ポリエチレンイミンのアミノ基とを結合することができる。また、GMBS(N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド )等を用いる場合には、タンパク質及び/又はペプチド分子中のシステイン残基のチオール基と、ポリエチレンイミンのアミノ基との間にチオエーテル結合を含む共有結合を形成することができる。
【0044】
上記以外の試薬を用いて、例えば、エーテル結合、エステル結合、イミド結合、炭素−炭素結合、アミジン結合等を形成することができる。これらの結合方法については、文献(例えば、東京化学同人社、「タンパク質IV 構造機能相関」、社団法人日本生化学会編、第1版、1991年3月20日)等を参照することにより、様々な結合方法を採用することができる。
【0045】
上記(2)の形態の場合、カチオン化された複合体を導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドのキャリヤーとして用いることにより、複合体と導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとを可逆的に結合させることができる。この可逆的な結合としては、複合体と導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとが直接的に可逆的に結合しなくても、例えば、複合体と導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとが可逆的に結合できるようなスペーサーを介して結合する形態であってもよい。なお、本発明において結合とは、結合及び/又は会合を意味するものである。
【0046】
上記導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドは、カチオン化された複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの一部分と結合することが好ましい。この結合は、可逆的な非共有結合であることが好ましい。上記導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとカチオン化された複合体とは、例えば、タンパク質と該タンパク質に対するリガンドとの関係にあるものと考えられる。タンパク質に対するリガンドとは、例えば、酵素に対する基質若しくは補酵素、抗体に対する抗原、又は、アビジンやストレプトアビジンに対するビオチンのように、特定のタンパク質に親和性を有し、そのタンパク質に非共有結合的に結合する化合物である。
【0047】
上記導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとカチオン化された複合体との結合形態としては、例えば、アビジンとビオチンとの結合;ブドウ球菌由来プロテインA及び/又はプロテインGと、各種哺乳類等の抗体のサブクラス:IgGのFcフラグメントとの結合;抗体のFc部位を認識する2次抗体と1次抗体との結合等が挙げられる。これらの結合を利用して細胞内に導入しようとするタンパク質及び/又はペプチドを複合体中のタンパク質及び/又はペプチドに結合することができる。このように導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドに対して親和性を有するタンパク質及び/又はペプチドを複合体に用いることにより、該複合体と導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとを混合するだけで導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドは複合体中のタンパク質及び/又はペプチドに結合することができる。
【0048】
また上記導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドと複合体との結合としては、細胞内で開裂する結合であってもよく、このような細胞内で開裂する結合には、例えば、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドと複合体との間に導入したスペーサー部位で開裂する形態も含まれる。
【0049】
また本発明の試験キットにおいて製造又は使用される複合体は、必要に応じて標識していてもよい。標識方法としては特に限定されず、例えば、蛍光標識、オートラジオグラフィ、高電子密度物質、色素不溶化酵素を用いる方法であることが好ましい。特に好ましい方法は、蛍光標識化合物を共有結合により複合体を標識する方法である。
【0050】
蛍光標識に用いる蛍光物質としては特に限定されず、例えば、ピレン、アントラニロイル基、ダンシル基、フルオレセイン、ローダミン、ニトロベンゾキサジアゾール基等の蛍光団を有する化合物が挙げられる。上記の蛍光団を有する化合物は、文献(例えば、平塚寿章、「タンパク質 核酸 酵素」、1997年、第42巻、第7号等参照)等に開示されており、常法によりタンパク質分子又はペプチド等に導入することができる。
【0051】
本発明のタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いて細胞内にタンパク質及び/又はペプチドを導入する方法としては特に限定されず、例えば、タンパク質及び/又はペプチドを導入しようとする細胞を含む培地中に、該試験キットにおいて形成された複合体、又は、それを含む溶液を添加する。その後、上記細胞を適切な培養温度、培養時間等の培養条件で培養する方法が好適である。これにより、上記複合体は細胞内に取り込まれ、時間の経過とともに該複合体の細胞への取り込み量は増加することとなる。このような導入方法では、複合体の添加量、添加濃度、添加時間等を変化させることにより、タンパク質及び/又はペプチドの細胞内への導入量を容易に制御することが可能である。
【0052】
上記導入方法においては、上記複合体は、該複合体が有する正電荷と細胞表面の負電荷との静電相互作用に起因する機構により細胞内へ取り込まれるものと推測されるため、培地中で細胞に該複合体を取り込ませる場合には、ヘパリン、核酸等のアニオン性ポリマーが共存しない条件下で行うことが好ましい。また、上記複合体を含む溶液を、例えば、経口投与、静脈内投与、患部への注射、皮膚への塗布等の方法により、直接生体に接種して、生体内の細胞に上記複合体を取り込ませることもできる。
【0053】
本発明の試験キットにおけるタンパク質の細胞内導入技術は、生細胞におけるタンパク質及び/又はペプチドの機能解析への応用、更に、医療品、医薬品、試薬、創薬支援、再生医療に適用することができる。このような形態は、本発明の好ましい実施形態の一つである。例えば、薬物として薬理作用等の生理活性を有するタンパク質及び/又はペプチド(例えば、酵素、抗体、ホルモン等)と、ポリエチレンイミンとを結合させて複合体としたものを医薬として用いることができる。このような医薬は、ポリエチレンイミンがキャリヤーとして作用し、薬物であるタンパク質又ペプチドが効率良く細胞内に送達されるため非常に有用である。また、体外で(ex vivo)タンパク質及び/又はペプチド等を導入した細胞を再び体内に戻す治療方法にも適用することができる可能性を有する。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0055】
参考例1
容器1(1.5mlのプラスチック製透析保存用チューブ)に数平均分子量が600であるポリエチレンイミン(WAKO社製、カタログ番号161−17831、以下「PEI600」と記載。)を30mg/ml溶解した水溶液(塩酸にてpH5に調整)、0.8mlを窒素ガス下で封入した。また、容器2(1.5mlのプラスチック製透析保存用チューブ)には、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、PIECE社製)2mgを封入した。
【0056】
参考例2
リコンビナントプロテインG(シグマ社製、カタログ番号P5170)5mgを濃度0.5mg/mlになるように60mg/mlPEI600溶液(塩酸にてpH5に調整)に溶解した。5mgのEDC(PIECE社製)を前記プロテインG溶液に添加し、4℃で一晩放置した。超純水に対して透析を行うことにより未反応のPEIを除き、標記のプロテインG−PEIを得た。
得られたプロテインG−PEIを、1μMとなるように調整し、容器(1.5mlのプラスチック製透析保存用チューブ)に1.0ml封入した。
【0057】
参考例3
PEI600溶液(塩酸にてpH5に調整)1mlに、アビジン1mgを溶解した。5mgのEDCを添加してボルテックスミキサーで30秒間攪拌後、室温で2時間インキュベートした。反応溶液を水に対して透析し、凍結乾燥した後、0.5Mのヒドロキシルアミン溶液1mlを添加し、室温で5時間インキュベートした。反応終了後、反応溶液を水に対して透析し、アビジン−PEIを得た。
得られたアビジン−PEIを0.1μMとなるように調整し、容器1(1.5mlのプラスチック製透析保存用チューブ)に1.0ml封入した。
また、容器2(1.0mlのプラスチック製透析保存用チューブ)には、ビオチン−AC5−OSU(同仁化学社製)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に2mg/mlとなるように溶解した溶液100μLを封入した。
【0058】
実施例1
参考例1で作成したキットを用いて、以下の実験を実施した。
蛋白質として、eGFP(Enhanced Green Fluorecent Protein、CLONTECH社製)を用いた。eGFPは、アミノ末端側にHisタグを含み、大腸菌リコンビナント蛋白質として発現・精製したものである。
参考例1の容器1に、eGFPを2mg溶解した。ピペットを用いて、容器1の溶液全量を容器2に注入し、室温で3時間放置した。容器2の溶液を、超純水に対して充分透析することで、eGFP−PEI複合体を得た。
Balb/c3T3 A31K 細胞をDMEM+10%FBS中で培養し、その培養上清に100nM(3μg/ml)のeGFP−PEI複合体を添加し、8時間後に共焦点顕微鏡にて細胞を観察した。その観察結果を図2に示す。図2の観察結果からわかるとおり、eGFP−PEI複合体は効率的に細胞内に取り込まれていることが確認された。なお、蛍光観察は生細胞のままで、固定等は行っていない。
【0059】
実施例2
実施例2に供する蛋白質として、FITC標識したIgGを以下の要領で調整した。
0.1Mの炭酸ナトリウム水溶液(pH9)0.5mlにIgG(シグマ社製、ヤギ由来)10mgを溶解した。1mlのDMFに3.0mgのFITC(I型、同仁化学研究所社製)を溶解した液を30μLとり、IgG溶液に添加した。室温で2時間反応させた後、ゲルろ過にて精製してFITCで修飾されたIgGを得た。得られたFITC標識IgCは、濃縮後、実施例2に供した。
参考例1で作成したキットを用いて、以下の実験を実施した。
参考例1の容器1に、FITC標識IgGを500μg溶解した。ピペットを用いて、容器1の溶液全量を容器2に注入し、室温で3時間放置した。容器2の溶液を、超純水に対して充分透析することで、FITC−IgG−PEI複合体を得た。
Balb/c3T3 A31K 細胞をDMEM+10%FBS中で培養し、その培養上清に100nM(3μg/ml)のFITC−IgG−PEI複合体を添加し、3時間後に共焦点顕微鏡にて細胞を観察した。
その観察結果を図3に示す。図3の観察結果からわかるとおり、FITC−1gG−PEI複合体は効率的に細胞内に取り込まれていることが確認された。なお、蛍光観察は生細胞のままで、固定等は行っていない。
【0060】
実施例3
定法に従って、FITC標識IgG(ウサギ由来)の4μM濃度に調整した溶液を準備した。
参考例2で作成したキットを用いて、以下の実験を実施した。
プロテインG−PEI水溶液を100μL、FITC標識IgG水溶液を100μL混和して、氷上で30分間放置した。Balb/c3T3 A31K 細胞をDMEM+10%FBS中で培養した。その培養上清に、プロテインG−PEIが25nMとなるように添加し、3時間後に共焦点顕微鏡にて細胞を観察した。図4の観察結果からわかるとおり、プロテインG−PEI複合体は効率的に細胞内に取り込まれていることが確認された。なお、蛍光観察は生細胞のままで、固定等は行っていない。
【0061】
実施例4
参考例3で作成したキットを用いて、以下の実験を実施した。
実施例1で用いたeGFPをPBS(Phosphate buffer saline、リン酸緩衝食塩水)に2.5mg/mlとなるように溶解した溶液1mLを準備した。ここに、容器2に封入した溶液を50μLを添加し、純粋に対して透析することで、ビオチン−eGFPの溶液を得た。
容器1のアビジン−PEIと、ビオチン−eGFP溶液が1:2のモル比となるように混合し、氷上で30分間放置した。Balb/c3T3 A31K細胞をDMEM+10%FBS中で培養した。その培養上清に、先の混合物をアビジン−PEIが100nM、ビオチン−eGFPが200nMとなるように添加し、3時間後に共焦点顕微鏡にて細胞を観察した。図5の観察結果からわかるとおり、ビオチン−eGFP+アビジン−PEIの複合体は効率的に細胞内に取り込まれていることが確認された。なお、蛍光観察は生細胞のままで、固定等は行っていない。
【0062】
【発明の効果】
本発明の試験キットは、上述のような構成よりなるため、任意のタンパク質及び/又はペプチドを、その機能を損なうことなく、効率的にかつ容易に細胞内に導入することを可能とするものである。すなわち本発明の試験キットを用いることにより、1〜数個以内の少数のアミノ酸側鎖の修飾で多数のカチオンを導入することができるため、タンパク質及び/又はペプチドの構造や機能に対する影響が軽微となるうえに、機能が未知のタンパク質及び/又はペプチドの機能解析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における試験キットの好ましい形態を例示した概念図である。
【図2】実施例1において、本発明のタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いることにより、eGFP−PEI複合体がBalb/c3T3 A31K 細胞内に取り込まれたことを蛍光及び透過光により観察した観察図である。
【図3】実施例2において、本発明のタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いることにより、FITC−IgG−PEI複合体がBalb/c3T3 A31K 細胞内に取り込まれたことを蛍光及び透過光により観察した観察図である。
【図4】実施例3において、本発明のタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いることにより、プロテインG−PEI複合体がBalb/c3T3A31K 細胞内に取り込まれたことを蛍光及び透過光により観察した観察図である。
【図5】実施例4において、本発明のタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いることにより、ビオチン−eGFP+アビジン−PEIの複合体がBalb/c3T3 A31K 細胞内に取り込まれたことを蛍光及び透過光により観察した観察図である。
Claims (2)
- タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するための試験キットであって、該試験キットは、カチオン性の基を有する重合体が封入された容器と、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬が封入された容器とを含んでなる
ことを特徴とするタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キット。 - タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入するための試験キットであって、該試験キットは、タンパク質及び/又はペプチドと結合するカチオン化された複合体が封入された容器を含んでなる
ことを特徴とするタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キット。
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- 2003-05-27 JP JP2003149359A patent/JP2004350526A/ja active Pending
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