JP2004049214A - 蛋白質またはペプチドの細胞内導入方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有する重合体とが結合した複合体を用いて蛋白質又はペプチドを細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な蛋白質複合体、及び該複合体を用いて蛋白質を細胞内に効率的に導入する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、様々な細胞の増殖・分化・発生に関わる蛋白質の発現・修飾のタイムシグナルが明らかにされつつあり、これらの知見に基づいて、例えば再生医学・組織工学といった工学面へと応用する際に、細胞内で機能させたい蛋白質を任意の量かつ任意の期間細胞内に存在させることができれば、様々な可能性が広がることが期待される。
【0003】
細胞内で任意の蛋白質を機能させる技術は、現在のところ遺伝子導入法がほぼ唯一の手法となっている。恒常的に細胞内で任意の蛋白質を機能させたい場合は遺伝子導入法が有利な手法ではあるが、任意の蛋白質を一過的に細胞内で機能させたい場合は蛋白質そのものを細胞内に導入することが好ましい。
【0004】
従来、蛋白質そのものを細胞内へ導入する方法としては、細胞膜を透過させる必要があることから、マイクロインジェクション等の特殊な手法や、リポソーム等のカプセル状のものに蛋白質を封入し、それを細胞膜に融合させることにより内容物(蛋白質等)を細胞内に導入する手法が用いられている。また、細胞の種類は限定されるものの、細胞表面に発現する各種のレセプターを標的とし、そのリガンドをキャリアーとしたレセプター依存経路による細胞内導入法も実用化されている。
【0005】
我々は最近、これらの経路以外にカチオン性の高い蛋白質や化学修飾によりカチオン化された蛋白質が、負に帯電している細胞表面に静電的に吸着し、高効率に細胞内に取り込まれることを確認した(Futami et al., Biochemistry, 40, 7518−7524, 2001)。同じく最近、HIV由来の塩基性に富むTATペプチド(Schwarze etal., Science, 285, 1569−1572, 1999)やPoly−Arg等のカチオン性ペプチド(Futaki et al., J. Biol. Chem., 276, 5836−5840, 2001)を付加した蛋白質が細胞膜を効率的に透過することが報告された。何れも詳細なメカニズムは不明ではあるが、カチオン性蛋白質と細胞表面との静電相互作用に起因する経路による細胞膜透過経路が考えられる。
しかしながら、従来の蛋白質のカチオン化による手法では、蛋白質分子内の多部位のアミノ酸側鎖の修飾が必要であったため、機能低下の問題があった。
【0006】
【非特許文献1】
二見ら(Futami et al.), バイオケミストリー(Biochemistry), 40, 7518−7524, 2001
【非特許文献2】
シュワルツら(Schwarze et al.), サイエンス(Science), 285, 1569−1572, 1999
【非特許文献3】
二木ら(Futaki et al.), ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. Chem.), 276, 5836−5840, 2001
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞内に蛋白質を導入することができる複合体、及び、該複合体を用いて、時間的・量的に制御でき、なおかつ効率的に蛋白質を細胞内へ導入する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するべく検討を重ねた結果、ポリエチレンイミン等のカチオン価を有する重合体を蛋白質に結合して、蛋白質をカチオン化することにより当該課題を解決できることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有する重合体とが結合した複合体を用いて蛋白質又はペプチドを細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法。
(2)前記重合体が、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、若しくはポリビニルイミダゾール骨格を有する重合体、又はその塩である前記(1)記載の方法。
(3)前記重合体の数平均分子量が100〜100万である前記(1)又は(2)記載の方法。
(4)前記複合体が、前記蛋白質又はペプチドと前記重合体とが共有結合を介して結合した複合体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記複合体が、前記蛋白質又はペプチドと前記重合体とがアミド結合、ジスルフィド結合、又はチオエーテル結合を介して結合した複合体である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)蛋白質又はペプチドとポリアルキレンポリアミン骨格を有する重合体とが結合した複合体を用いて蛋白質又はペプチドを細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法。
(7)前記重合体が、ポリアルキレンイミンである前記(6)記載の方法。
(8)前記重合体が、ポリエチレンイミンである前記(6)又は(7)記載の方法。
(9)前記重合体の数平均分子量が100〜100万である前記(6)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記重合体の数平均分子量が100〜10万である前記(6)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記複合体が、前記蛋白質又はペプチドと前記重合体とが共有結合を介して結合した複合体である前記(6)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)前記複合体が、前記蛋白質又はペプチドと前記重合体とがアミド結合、ジスルフィド結合、又はチオエーテル結合を介して結合した複合体である前記(6)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有し、かつ数平均分子量が100〜100万である重合体とが結合した複合体。
(14)前記重合体が、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、若しくはポリビニルイミダゾール骨格を有する重合体、又はその塩である前記(13)記載の複合体。
(15)蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有し、かつ数平均分子量が100〜100万である重合体とが結合した複合体を含有する医薬。
【0010】
さらに、本発明は以下の発明を包含する。
(1)蛋白質とポリアルキレンイミンとが結合した複合体。
(2)ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである前記(1)記載の複合体。
(3)ポリアルキレンイミンの数平均分子量が100〜100,000の範囲である前記(1)又は(2)記載の複合体。
(4)蛋白質とポリアルキレンイミンとが、アミド結合、ジスルフィド結合、又はチオエーテル結合を介して結合した前記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合体。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合体を用いて蛋白質を細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質の細胞内導入方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本明細書でいう「蛋白質又はペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合して生じる化合物を意味する。本発明で用いることのできる蛋白質又はペプチドとしては特に限定されず、ペプチド、酵素、抗体、その他機能性(薬理作用等の生理活性)を有し、医薬・薬物として有用な蛋白質又はペプチド等の任意の蛋白質又はペプチドを用いることができ、その分子量としては100〜100万が好ましい。なお、本明細書でいう「蛋白質」とは、その蛋白質に、糖鎖、脂質、及び/又はリン酸基が結合した複合蛋白質をも含む意味である。また、その蛋白質の構造は天然状態であっても変性状態であってもよい。
【0012】
本発明で用いることのできるカチオン性の基を有する重合体としては、例えば、2を超えて3万以下のカチオン価を有する重合体が挙げられる。本明細書でいう「カチオン価」とは、前記重合体のアミン価(mmol/g)と前記重合体の数平均分子量との積を1000で割った値のことである。本発明で用いられる前記重合体のカチオン価は一般に2を超えて3万以下であるが、2を超えて2万以下が好ましく、2を超えて2500以下がより好ましく、2を超えて250以下が特に好ましく、4以上70以下が最も好ましい。なお、「アミン価(mmol/g)」とは試料化合物中に含まれるアミンの総量の指標であり、試料化合物1gに含まれるアミンのmmol数で表される。試料化合物のアミン価は一般的なアミノ基の定量方法に従って測定できる。一般的なアミノ基の定量方法としては、「新実験化学講座 第13巻 有機化学構造I」(丸善株式会社発行、日本化学会編、昭和53年11月20日発行)の第88頁〜第99頁に記載の方法やコロイド滴定法を挙げることができる。コロイド滴定法は、「コロイド滴定法」(株式会社南江堂発行、千手諒一著、第1版1969年11月20日発行)に記載されている。アミン価の分析は試料化合物の形態、溶解性、含有不純物等を考慮して、精度よく分析できる方法を適宜選択する必要がある。本発明で用いられる重合体のアミン価は特に限定されるものではないが、1〜30が好ましく、5〜25がさらに好ましい。
【0013】
また、本発明で用いられる重合体の数平均分子量としては、一般に100〜100万であるが、100〜10万が好ましく、100〜1万が更に好ましく、200〜3000が特に好ましい。なお、重合体の数平均分子量の測定にあたっては、重合体の数平均分子量が1万以下の場合は沸点上昇法により測定し、1万を超える場合はGPCにより測定すると分子量を精度よく測定できる。
【0014】
本発明で用いることのできる重合体としては、例えば、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、若しくはポリビニルイミダゾール骨格を有する重合体、又はこれらの共重合体を挙げることができる。また、それらの重合体の塩、例えば、第一級、第二級、第三級、及び第四級アンモニウム塩等も同様に用いることができる。更にこれらの重合体を化学的に修飾、変成した重合体も同様に用いることができる。
【0015】
そのような重合体の具体例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン等のポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のポリアリルアミン、ポリアクリルアミドのホフマン分解物、ポリビニルアセトアミド加水分解物、ポリビニルフタルイミドの加水分解物、N−ビニルホルムアミドポリマーの加水分解物等のポリビニルアミン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(共)重合体等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(共)重合体、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体、ポリアミジン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ジシアンジアミド系縮合物、エピクロロヒドリン・ジメチルアミン縮合物等のエピクロロヒドリン・ジアルキルアミン縮合物、ジメチルアミン・エチレンジクロライド縮合物等のジアルキルアミン・アルキルジハライド縮合物、ポリビニルイミダゾリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、カルボキシメチルセルロース第四級アンモニウム(第四級アンモニウムCMC)、グリコールキトサン、カチオン化デンプン等が挙げられる。
【0016】
上記重合体のうち代表的な化合物のアミン価の理論値は以下の表のとおりである。本表に記載のアミン価の理論値とは、重合体を形成する単量体の分子量の逆数に1000をかけた値である。一般的に、上記の方法により測定されるアミン価の実測値はその理論値と測定誤差の範囲内でほぼ一致する。上述の方法により測定されるアミン価に基づいて重合体のカチオン価を算出することができる。アミン価は重合体の合成方法を変更したり、他成分との共重合、重合体の化学的修飾により任意に変化させることが可能である。
【0017】
【0018】
以下に、本発明の複合体の製造方法について述べる。重合体として、例えばポリアルキレンイミンを用いる場合、以下のようにして本発明の複合体を製造することができる。
本発明で用いられるポリアルキレンイミンとしては、例えば下記一般式(I):
【0019】
【化1】
(式中、R1、R2、及びR3はアルキレン基を表し、X及びYはそれぞれ0以上の整数であり、XとYの和は1以上である。)
で表され、直鎖状のもの、又は、枝分かれ状のものどちらであってもよい。
【0020】
前記ポリアルキレンイミンは、式(I)中のR1、R2、及びR3が互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数2〜4のアルキレン基であるポリアルキレンイミンが好ましく、さらには式(I)中のR1、R2、及びR3が炭素原子数2のエチレン基であるポリエチレンイミンがより好ましい。
【0021】
以下に、ポリエチレンイミンを用いる場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、これ以外のその他の2を超えて3万以下のカチオン価を有する重合体についても以下と同様にして実施することができる。
本発明で好ましく用いられるポリエチレンイミン(以下、「PEI」という)は下記式で表される。
【0022】
【化2】
(式中、X及びYはそれぞれ1以上の整数である。)
【0023】
PEIは、大きな正の電荷密度を有する水溶性ポリマーである。なお、PEIはかまぼこの沈殿剤等の食品添加物としても利用されており、生体に対する安全性が確認されている。
本発明では、直鎖状のPEIでも分岐鎖を多数有する枝分かれ構造のPEIでも用いることができるが、下記式:
【0024】
【化3】
【0025】
で例示されるような枝分かれ構造を有するPEIが、より正電荷密度が高いことから好ましい。また、分子量は細胞導入効率、取扱い性等を考慮すると、数平均分子量が100〜100,000の範囲のPEIが好ましく、100〜10,000のPEIがより好ましく、200〜3,000の低分子量のPEIが特に好ましい。
【0026】
本発明の複合体は、前記蛋白質と前記PEIとが結合したものである。ここでいう「結合」とは、化学結合であれば特に限定されないが、好ましくは共有結合のことをいう。蛋白質とPEIとはそれらの間に何も介さずに直接的に結合していてもよいし、又は、公知の2価性架橋試薬等を用いて、間にスペーサー等を介して結合していてもよい。一分子の蛋白質に対して結合するPEIの分子数は特に限定されないが、1〜10個が好ましく、1〜3個が特に好ましい。また、個々のPEIにおける蛋白質との結合部位数は1点であることが好ましい。本発明では、1個の蛋白質に対して1個のPEIが1点だけで結合した複合体が特に好ましい。
【0027】
蛋白質とPEIとの間の結合は、蛋白質とPEIとを共有結合で結合させることができるものであれば特に限定されるものではなく、化学分野で公知の合成手法を利用することにより様々な結合方法で結合させることができる。以下に、蛋白質とPEIとの結合方法について例示するが、本発明で用いられる結合方法はこれらに限定されるものではない。
【0028】
蛋白質とPEIとをアミド結合を介して結合する場合には、例えば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、DCC(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の活性化剤を用いて、蛋白質分子中のアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、又は炭素末端のカルボキシル基とPEIのアミノ基との間にアミド結合を形成させることができる。EDCを用いた場合の例を下記に模式的に示す。
【0029】
【化4】
【0030】
蛋白質とPEIとをジスルフィド結合を介して結合する場合には、例えば、SPDP(N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)等の試薬を用いて、蛋白質分子中のシステイン残基のチオール基とPEIのアミノ基との間にジスルフィド結合を含む共有結合を形成させることができる。SPDPを用いた場合の例を下記に模式的に示す。
【0031】
【化5】
【0032】
ジスルフィド結合は可逆的な結合であり、細胞質内の還元条件下で解離する。このため、ジスルフィド結合により結合された複合体は、細胞内に導入されるとPEIと蛋白質とに分離し、蛋白質がより有利にその機能を細胞内で発揮することが期待される。
【0033】
この他に、蛋白質とPEIとを結合させる例としては、2−イミノチオラン等を用いて、蛋白質分子中のリジン残基又はN末端のアミノ基とPEIのアミノ基とを結合させる方法や、GMBS(N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド )等を用いて、蛋白質分子中のシステイン残基のチオール基とPEIのアミノ基との間にチオエーテル結合を含む共有結合を形成させる方法等が挙げられる。
【0034】
ここで挙げた結合方法以外にも、エーテル結合、エステル結合、イミド結合、炭素−炭素結合、アミジン結合等が挙げられ、文献(例えば、株式会社 東京化学同人「蛋白質IV 構造機能相関」社団法人 日本生化学会 編、第1版1991年3月20日 発行)等を参照することにより、様々な結合方法を採用することができる。
【0035】
上述の製造方法及び当技術分野で公知の合成手段を参照することにより、ポリアルキレンイミン以外の重合体を用いた場合についても同様に本発明の複合体を製造することができる。
【0036】
また、本発明で用いられる複合体を、必要に応じて標識してもよい。標識方法としては、一般的な公知の方法であれば特に限定されないが、蛍光標識、オートラジオグラフィ、高電子密度物質、色素不溶化酵素であることが好ましい。特に好ましい形態は、蛍光標識化合物を共有結合により複合体を標識することである。
【0037】
蛍光標識に用いる蛍光物質としては、特に限定されないが、例えばピレン、アントラニロイル基、ダンシル基、フルオレセイン、ローダミン、ニトロベンゾキサジアゾール基等の蛍光団を有する化合物が挙げられる。上記の蛍光団を有する化合物は公知であり(例えば、平塚寿章、「蛋白質 核酸 酵素」、Vol.42,No.7(1997)等参照)、常法により蛋白質分子又はペプチド等に導入することができる。
次に、本発明の複合体を用いて細胞内に蛋白質を導入する方法について説明するが、本発明の方法はこれらに限定されるものではない。
【0038】
蛋白質を導入しようとする細胞を含む培地中に、本発明の複合体又は該複合体を含む溶液を添加する。その後、細胞を適切な培養温度、培養時間等の培養条件で培養することにより、本発明の複合体は細胞内に取り込まれ、時間の経過とともに複合体の細胞への取り込み量は増加する。本発明の方法では、蛋白質の細胞内への導入量を、添加する複合体の絶対量、濃度、添加時間等を変化させることにより容易に制御できる。なお、本発明の複合体は、該複合体が有する正電荷と細胞表面の負電荷との静電相互作用に起因する機構により細胞内へ取り込まれるものと推測され、このため、培地中で細胞に複合体を取り込ませる場合には、ヘパリン、核酸等のアニオン性ポリマーが共存しない条件下で行うことが好ましい。また、本発明の複合体を含む溶液を、例えば経口投与、静脈内投与、患部への注射、皮膚への塗布等の方法により直接生体に接種して、生体内の細胞に複合体を取り込ませることもできる。
【0039】
このことから、本発明に記載のある蛋白質又はペプチドと、2を越えて3万以下のカチオン価を有する重合体とが結合した複合体を用いて蛋白質又はペプチドを細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法、及びその複合体は、生細胞における蛋白質又はペプチドの機能解析への応用、更には医療品、医薬品、試薬、創薬支援、再生医療に適用することも本発明の好ましい実施形態の一つである。例えば、薬物として薬理作用等の生理活性を有する蛋白質又はペプチド(例えば、酵素、抗体、ホルモン等)とカチオン化重合体とを結合させて複合体としたものを医薬として用いることができる。このような医薬は、カチオン化重合体がキャリアーとして作用し、薬物である蛋白質又ペプチドが効率良く細胞内に送達されるため非常に有用である。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明の実施形態について具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
以下の実施例では、数平均分子量は沸点上昇法により測定し、アミン価は酸中和滴定法により測定した。得られた数平均分子量及びアミン価を用いてカチオン価を算出した。
また、以下の実施例では、数平均分子量250、600、1000、1200、及び1800のPEI(日本触媒製:商品名「エポミン」)を用い、それぞれPEI250、PEI600、PEI1000、PEI1200、及びPEI1800として表記した。
【0041】
(実施例1)
RNaseA−PEI 複合体の合成
蛋白質として、細胞内へ導入されることで蛋白質合成阻害に伴う細胞増殖阻害を誘起する酵素であるRNaseAを用いた。
60mg/ml濃度のPEI水溶液 1.5ml(塩酸でpH5に調整)にRNaseA 15mgを溶解した。EDC 2.5mgを添加して室温で16時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を水に対して透析し、最後に陽イオン交換クロマトグラフィー(CM−トヨパール 650M)で精製してRNaseA−PEI複合体(RNaseA1分子あたりPEIが1〜2個結合)を得た。得られたRNaseA−PEI複合体の1.5μg相当を15%SDS−PAGEで解析した。その結果を図1に示す。
【0042】
RNaseA−PEI 複合体の蛋白質の機能評価
また、Yeast RNAを基質としてYeast RNAの分解速度を測定し、酵素活性をネイティブ(native) RNaseAと比較した。native RNaseAに対するRNaseA−PEI複合体の相対活性を表1に示す。また、それぞれのPEIのアミン価及びカチオン価も併せて表1に示す。なお、RNaseA−PEI1200−1及びRNaseA−PEI1200−2は、それぞれRNaseA一分子あたりPEI1200が約1個及び約2個結合した複合体であることを表す。表1の結果より、本発明の複合体は、従来法によるRNaseA−エチレンジアミンと比較すると極めて高い酵素活性を示し、RNaseAが本来有している機能の低下が小さいことがわかる。
【0043】
【表1】
【0044】
RNaseA−PEI 複合体の細胞への導入
上記の各複合体について、3T3/SV40細胞に対する細胞増殖阻害活性について評価した。細胞増殖阻害活性試験は、96ウェルプレートを用い、1500個/ウェルの3T3/SV40細胞をDMEM+10%FBS培地で12時間培養し、その培養上清にnative RNaseA、及びRNaseA−PEI複合体を各種の濃度で添加し、3日後の細胞の増殖度をMTT法で評価した。その結果を図2に示す。native RNaseAは細胞内に取り込まれず、有意の細胞増殖阻害活性を示さなかったが、本発明の複合体は効率的に細胞内に導入され、導入されたPEIの正電荷量に比例した細胞増殖阻害活性を示すことが確認された。
【0045】
(実施例2)
eGFP−PEI 複合体の合成
蛋白質として、細胞内への取り込みが蛍光により容易に確認できるEnhanced Green Fluorecent Protein (eGFP:CLONTECH社製)を用いた。eGFPは、アミノ末端側にHisタグを含み、大腸菌リコンビナント蛋白質として発現・精製したものである。
60mg/ml濃度のPEI水溶液 4.5ml(塩酸でpH5に調整)にeGFP 3mgを溶解した。EDC 10mgを添加してボルテックスミキサーで30秒間撹拌後、室温で16時間インキュベートした。反応溶液を水に対して透析し、最後にHiTrap(Ni+)キレートカラムで精製してeGFP−PEI複合体を得た。得られたeGFP−PEI複合体を15%SDS−PAGEで解析した。その結果を図3に示す。
【0046】
eGFP−PEI 複合体の蛋白質の機能評価
native eGFP、本発明のeGFP−PEI複合体、及び比較としてeGFP−エチレンジアミン複合体の蛍光強度について比較した。その結果を図4に示す。図4からわかるとおり、従来法によるエチレンジアミンで多修飾した場合と比較して、約1個のPEIで修飾したeGFPは native eGFPと同等の高い蛍光強度を保持しており、PEI修飾によるeGFPの機能への影響は小さいことが示された。
【0047】
eGFP−PEI 複合体の細胞への導入
Balb/c3T3 A31K 細胞をDMEM+10%FBS中で培養し、その培養上清に100nM(3μg/ml)のeGFP−PEI複合体を添加し、8時間後のeGFPの取り込みを蛍光により観察した。比較として、native eGFP、及びeGFP−エチレンジアミン複合体についても同様に試験した。その観察結果を図5に示す。図5の観察結果からわかるとおり、native eGFP、及びeGFP−エチレンジアミン複合体はほとんど細胞内に取り込まれていないのに対して、eGFP−PEI複合体は効率的に細胞内に取り込まれていることが分かる。なお、蛍光観察は生細胞のままで、固定等は行なっていない。
【0048】
(実施例3)
T7 RNA Polymerase−PEI1200 複合体の合成
T7 RNA Pol.は分子量が100kDaで、分子表面に2個のシステイン残基が露出している。大腸菌を用いてリコンビナントT7 RNA Pol.を発現させた。得られたT7 RNA Pol.を精製し、4.62mg/ml(46.8μM)の水溶液とした。0.107mlの100mg/mlのPEI1200の水溶液(塩酸でpH8に調整)と1.4mg/0.1mlのSPDPのエタノール溶液とを混合(PEI1200とSPDPとのモル比は2:1)した。この混合溶液とT7 RNA Pol.の水溶液とを、SPDPとT7 RNA Pol.とのモル比が10:1となるように混合し、室温で16時間撹拌した。反応終了後、ゲル濾過により精製して1分子のT7 RNA Pol.あたり2分子のPEI1200が結合したT7 RNA Pol.−PEI1200複合体を得た。
【0049】
細胞への T7 RNA Pol.−PEI1200 の導入によるレポーター遺伝子 (eGFP) の発現
T7プロモーターの下流にeGFP遺伝子を接続したプラスミドDNAをエレクトロポレーションによりCOS−7細胞に導入して、T7−eGFP/COS−7細胞を作製した。T7−eGFP/COS−7細胞の培養液(DMEM+10%FBS培地)に1μMのT7 RNA Pol.−PEI1200を添加し、室温で1日培養した。培養終了後、蛍光を観察することによりeGFPの発現を確認した。その観察図を図6に示す。これに対して、T7 RNA Pol.−PEI1200を添加しなかった場合はeGFPが発現しないことが確認された。
【0050】
(実施例4)
eGFP−PEI600 複合体と TAT−eGFP 融合蛋白質との細胞導入効率の比較
Balb/c3T3細胞を含む10%FBS+DMEM培地に、実施例2に従って合成したeGFP−PEI600複合体を100nM添加し、37℃で6時間培養した。培養終了後にeGFPの細胞への取り込みを蛍光で観察した。また、比較としてTATペプチドをeGFPのアミノ末端側に付加した融合蛋白質を大腸菌リコンビナント蛋白質として発現・精製し、Balb/c3T3細胞を含むDMEM+10%FBS培地にTAT−eGFP融合蛋白質を1000nM添加し、37℃で6時間培養した。培養終了後にeGFPの細胞への取り込みを蛍光で観察した。TATペプチドはGRKKRRQRRRGのアミノ酸配列を有するペプチドであり、蛋白質と複合体化させることにより、蛋白質が細胞へ取り込まれ易くなることが報告されている。結果を図7に示す。図7の結果から、TAT−eGFP融合蛋白質を用いた場合は、細胞内にほとんど取り込まれないが、本発明のeGFP−PEI600複合体を用いた場合は、TAT−eGFP融合蛋白質の10分の1の濃度でも極めて効率的に細胞内に取り込まれることが示された。
【0051】
(実施例5)
2− イミノチオランを用いる RNaseA−PEI600 複合体の合成
RNaseA 10mg(0.73μmol)を500μlの0.1Mのリン酸緩衝液(pH8)に溶解した。2−イミノチオラン 0.5mg(3.6μmol)を添加し、室温で15分間撹拌した。次いで、BrCH2CONHNHCOCH2Br 10mg(36μmol)を添加し、超音波をかけて分散させた後に室温で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を遠心分離機にかけた。上澄みを、10%PEI溶液(pH8に調整) 0.5ml(83μmol)と混合し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を水に対して透析してRNaseA−PEI600複合体を得た。
【0052】
得られた複合体について、実施例1と同様にして3T3/SV40細胞に対する細胞増殖阻害活性について試験したところ、2−イミノチオランを用いて得られたRNaseA−PEI600複合体も、EDCを用いて得られたRNaseA−PEI複合体と同様に、効率的に細胞に取り込まれて細胞増殖阻害活性を示すことが確認された。
【0053】
(実施例6)IgG−PEI−FITCの細胞導入
FITC−IgG−PEI600 複合体の合成
0.1Mの炭酸ナトリウム水溶液(pH9.3)0.5mlにIgG(SIGMA社製, ヤギ由来)10mgを溶解した。1mlのDMFに3.0mgのFITC(I型,同仁化学研究所社製)を溶解した液を30μlとり、IgG溶液に添加した。室温で2時間反応させた後、ゲルろ過にて精製してFITCで修飾されたIgGを得た。60mg/ml濃度のPEI600水溶液1ml(塩酸pH5に調整)にFITCで修飾されたIgGを3mgを溶解した。次いで、EDC3.0mgを添加して室温で4時間反応後、水及びPBS溶液で透析することにより、FITC−IgG−PEI600複合体を得た。
【0054】
FITC−IgG−PEI600 の細胞への導入
3T3/SV40細胞をDMEM+10%FBS中で培養し、その培養上清にFITC−IgG−PEI600複合体を添加し、12時間後の複合体取り込みを蛍光により観察した。比較として、PEI600を結合していないFITC−IgG複合体についても同様に試験した。その観察結果を図8に示す。図8の観察結果からわかる通り、50μM添加したにもかかわらずFITC−IgG複合体は殆ど細胞内に取り込まれていない(図8(a))のに対して、FITC−IgG−PEI600複合体は効率的に細胞内に取り込まれていることがわかる(図8(b))。また、細胞を0.5μm間隔で切断してその切断面を観察したところ、切断面に蛍光が観察されたことから、本発明の複合体は細胞表面ではなく細胞内部に取り込まれていることが確認された。なお、蛍光観察は生細胞のままで、固定等は行っていない。
【0055】
(実施例7)
IgG−PEI600 複合体の合成
ヒトS100C蛋白質(SWISS−PROT Accession Number P31949)は細胞内のアクチンフィラメントと結合能を有する蛋白質である(Sakaguchi, M. et al. J. Cell Biol. 149, 1193−1206 (2000))。組換え蛋白質として調製したヒトS100Cを抗原蛋白質として感作させ、このウサギ血清より抗ヒトS100C抗体を含むIgG(A)を調製した。対照として、抗原感作をさせていないウサギ血清より抗体混合物(S100Cに特異的な結合能を有さない抗体;IgG(B))も調製した。IgG(A)及びIgG(B)とPEI600との複合体合成は、実施例1と同様にして行なった。得られたIgG(A)−PEI600複合体及びIgG(B)−PEI600複合体をFITCにより蛍光標識してIgG(A)−PEI600−FITC複合体及びIgG(B)−PEI600−FITC複合体を得た。
【0056】
IgG−PEI600−FITC 複合体の細胞への導入及び機能評価
DMEM+10%FBS培地で培養したヒト正常線維芽細胞:KMS−6細胞の培養上清に15μg/mlとなるようにIgG(A)−PEI600−FITC複合体又はIgG(B)−PEI600−FITC複合体を添加した。37℃で3時間培養した後、培地を除去し、サンプルを含まないDMEM+10%FBS培地に置換し、更に24時間培養した。各IgG−PEI600−FITC複合体の細胞への取り込みを蛍光顕微鏡により観察した。その観察結果を図9に示す。抗体混合物であるIgG(B)を含む複合体を用いた場合、細胞全体に蛍光が観察されるのに対し(図9(a))、IgG(A)を含む複合体を用いた場合は、局在を示している様子が確認された(図9(b))。更にIgG(A)複合体を導入した細胞を固定化後、BODIPY558/568結合ファロイジン(Molecular Probes 社製)を用いてアクチンフィラメントを染色した結果を図9(c)に示す。その結果、IgG(A)を含む複合体の局在と染色場所が一致することから、IgG(A)−PEI600−FITC複合体は、IgG(A)のS100Cへの特異的な抗体能を損なうことなく、細胞内でS100Cを認識して特異的に結合することが示された。
【0057】
(実施例8)
eGFP−PEI 複合体のマウス腹腔内投与による臓器への取り込み評価
実施例2に基づいて作成された300μgのeGFP−PEI600、及び300μgのNative eGFPを生理食塩水(0.9% NaCl)に溶解し、それぞれをC57BL/6マウス(8週齢)に注射器を用いて腹腔内に投与した。8時間後に解剖し、肝臓、腎臓を摘出し、Tissue−Tek(Miles Scientific, MA)中で急速に凍結させた。クリオスタットを用いて10μmの凍結組織切片を調製し蛍光顕微鏡にて臓器への取り込みを確認した(肝臓;図10(a)、腎臓;図10(b))その結果、主に臓器の表面に強くeGFP−PEI600が取り込まれた様子が観察されたばかりではなく、腎臓においてはその内部にまで取り込まれた様子が観察された。一方、Native eGFPを投与した場合には臓器に取り込まれる様子は観察されなかった。
【0058】
eGFP−PEI 複合体のラット門脈投与による肝臓組織内への取り込み評価
実施例2に基づいて作成された100μg のeGFP−PEI600ならびに100μg のNative eGFPを生理食塩水(0.9% NaCl)に溶解し、それぞれ麻酔をかけたWister Rat (8週齢)の門脈に注射器を用いて投与した。1時間後に肝臓を摘出し、Tissue−Tek(Miles Scientific, MA)中で急速に凍結させた。クリオスタットを用いて10μmの凍結組織切片を調製し蛍光顕微鏡にて肝臓への取り込みを確認した(図10(c))。その結果、肝臓の門静脈周辺に特異的に取り込まれる様子が確認され、中心静脈に向かってeGFP−PEI600が移行して行くグラジエントも確認された。一方、Native eGFPを投与した場合にはこの様な様子は観察されなかった。
【0059】
(実施例9)
種々のカチオン価を有する重合体と RNaseA 複合体の合成
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示す種々のカチオン価を有する重合体とRNaseA複合体を用いて種々のカチオン性重合体−RNaseA複合体を合成した。40mg/ml濃度のカチオン価を有する重合体水溶液1.0ml(塩酸でpH5に調整)にRNaseA10mgを溶解し、次いでEDC3.0mgを添加して室温で4時間反応した。反応後、反応溶液を水に対して透析し、カチオン価を有する重合体−RNaseA複合体を得た。
【0062】
RNaseA− カチオン価を有する重合体複合体の細胞への導入
上記の各複合体について、3T3/SV40細胞に対する細胞増殖阻害活性について評価した。細胞阻害活性試験は実施例1に記載と同様の方法で実施した。その結果を図11に示す。Native RNaseAは細胞内に取り込まれず、有意の細胞増殖阻害活性を示さなかったが、本発明の複合体を用いた場合は細胞増殖阻害活性を示し、本発明の複合体が効率的に細胞内に導入されることが確認された。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、蛋白質の機能を損なうことなく、極めて高い効率で、且つ時間的・量的に制御可能な、蛋白質の細胞内導入方法が提供される。
即ち、従来は任意の蛋白質を細胞内で機能させる手法は遺伝子導入法が主流で、人為的に機能させる蛋白質を恒常的に細胞内で発現させるのに適しているのに対し、本法による蛋白質細胞内導入法は一過的に発現させるのに適した技術である。この様な新規技術は機能が未知な蛋白質の機能解析といった手段となる他、遺伝子導入法が抱える数々の問題点を解決する手段となり得る。
【0064】
また、本発明の方法は、蛋白質分子内に多数の側鎖が修飾されるエチレンジアミンによるカチオン化という従来法に比較して、1〜数個以内の小数の側鎖の修飾で多数のカチオンが導入されるため、蛋白質の構造と機能に対する影響が軽微である。
【図面の簡単な説明】
【図1】native RNaseA、及び、本発明のRNaseA−PEI複合体の電気泳動観察図である。
【図2】本発明のRNaseA−PEI複合体の3T3/SV40細胞への取り込み、及び細胞増殖阻害活性を示す図である。
【図3】native eGFP、eGFP−エチレンジアミン複合体、及び本発明のeGFP−PEI複合体の電気泳動観察図である。
【図4】native eGFP、eGFP−エチレンジアミン複合体、及び本発明のeGFP−PEI複合体の蛍光強度を比較した図である。
【図5】native eGFP、eGFP−エチレンジアミン複合体、及び本発明のeGFP−PEI複合体のBalb/c3T3 A31K 細胞への取り込みを蛍光により観察した図である。
【図6】T7−eGFP/COS−7細胞中でのレポーター遺伝子(eGFP)の発現を蛍光により観察した図である。
【図7】Balb/c3T3細胞に対する、native eGFP、eGFP−PEI600複合体、及びTAT−eGFP融合蛋白質の導入効率を比較した図である。
【図8】(a)はFITC−IgG複合体の3T3/SV40細胞への取り込みを蛍光及び透過光により観察した図である(左:蛍光写真、右:透過光写真)。
(b)はFITC−IgG−PEI600複合体の3T3/SV40細胞への取り込みを蛍光及び透過光により観察した図である(左:蛍光写真、右:透過光写真)。3T3/SV40細胞を0.5μm間隔で切断し、その各切断面を観察した。
【図9】(a)はFITC−IgG(B)−PEI600複合体のKMS−6細胞への取り込みを蛍光により観察した図である。
(b)はFITC−IgG(A)−PEI600複合体のKMS−6細胞への取り込みを蛍光により観察した図である。
(c)はFITC−IgG(A)−PEI600複合体を導入したKMS−6細胞をアクチンフィラメントで染色したときの観察図である。
【図10】(a)はeGFP−PEI600複合体のマウスの肝臓への取り込みを蛍光により観察した図である。
(b)はeGFP−PEI600複合体のマウスの腎臓への取り込みを蛍光により観察した図である。
(c)はeGFP−PEI600複合体のラットの肝臓への取り込みを蛍光により観察した図である。
【図11】本発明のRNaseA−カチオン化重合体複合体の3T3/SV40細胞への取り込み、及び細胞増殖阻害活性を示す図である。
Claims (9)
- 蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有する重合体とが結合した複合体を用いて蛋白質又はペプチドを細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法。
- 前記重合体が、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、若しくはポリビニルイミダゾール骨格を有する重合体、又はその塩である請求項1記載の方法。
- 蛋白質又はペプチドとポリアルキレンポリアミン骨格を有する重合体とが結合した複合体を用いて蛋白質又はペプチドを細胞内に輸送することを特徴とする蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法。
- 前記重合体が、ポリエチレンイミンである請求項3記載の方法。
- 前記複合体が、前記蛋白質又はペプチドと前記重合体とが共有結合を介して結合した複合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複合体が、前記蛋白質又はペプチドと前記重合体とがアミド結合、ジスルフィド結合、又はチオエーテル結合を介して結合した複合体である請求項項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有し、かつ数平均分子量が100〜100万である重合体とが結合した複合体。
- 前記重合体が、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、若しくはポリビニルイミダゾール骨格を有する重合体、又はその塩である請求項7記載の複合体。
- 薬物である蛋白質又はペプチドと、2を超えて3万以下のカチオン価を有し、かつ数平均分子量が100〜100万である重合体とが結合した複合体を用いる蛋白質又はペプチド薬物の送達方法。
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