JP4885476B2 - タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法 - Google Patents

タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4885476B2
JP4885476B2 JP2005147250A JP2005147250A JP4885476B2 JP 4885476 B2 JP4885476 B2 JP 4885476B2 JP 2005147250 A JP2005147250 A JP 2005147250A JP 2005147250 A JP2005147250 A JP 2005147250A JP 4885476 B2 JP4885476 B2 JP 4885476B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
peptide
cell
cell surface
conjugate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2005147250A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006006316A (ja
Inventor
淳一郎 二見
秀高 中西
秀徳 山田
敬 甲斐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2005147250A priority Critical patent/JP4885476B2/ja
Publication of JP2006006316A publication Critical patent/JP2006006316A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4885476B2 publication Critical patent/JP4885476B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法に関する。より詳しくは、タンパク質及び/又はペプチド結合体、並びに、該結合体を用いてタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に効率的に導入する方法及びその改良方法に関する。
免疫組織化学の分野では、従来から、特異的な分子を認識する蛍光等で標識されたタンパク質や抗体(標識したタンパク質とカチオン性化合物との結合体)を固定化することで細胞膜の透過性が向上した死細胞内に導入した後、適切な洗浄条件にて非特異的に結合した画分を除去することにより、細胞内で特異的に結合したタンパク質のみを可視化する手法が用いられてきた。しかし、固定化された細胞内のタンパク質の挙動を解析した結果は、細胞が本来の機能を保持した状態で実際に起こっている現象と必ずしも一致しないこと、また、生細胞内における動態観察の需要の高まりから、免疫組織化学的な可視化を生細胞内の生理的な条件下で実現する技術「Live Cell Imaging」の手法開発が強く求められている。
タンパク質そのものを細胞内へ導入する方法としては、細胞膜を透過させる必要があることから、マイクロインジェクション等の特殊な手法や、リポソーム等のカプセル状のものにタンパク質を封入し、細胞膜と接触させることで融合、又は、細胞の食作用によるエンドサイトーシスによる取込みにより内容物(タンパク質等)を細胞内に導入する手法が用いられている。また、細胞の種類は限定されるものの、細胞表面に発現する各種のレセプターを標的とし、そのリガンドをキャリアーとしたレセプター依存経路による細胞内導入法も検討されている。
タンパク質を生細胞内に導入する方法に関し、本願出願人は、タンパク質をカチオン化することで負電荷を帯びている生細胞表面への静電的な吸着を介して、効率良くタンパク質を生細胞内に導入する方法を開発している。この手法は、「蛋白質またはペプチドの細胞内導入方法」に開示されており(例えば、特許文献1参照。)、細胞外で予め調製した各種のタンパク質を簡便に生細胞内へ導入する技術を確立している。しかしながら、例えば、細胞内に導入した蛍光標識されたタンパク質の動態や局在を、蛍光顕微鏡により観察する「Live Cell Imaging」に応用する場合には、細胞表面近傍に付着しただけのタンパク質からの蛍光や、エンドサイトーシス(食作用)により細胞内に取り込まれたタンパク質がエンドソームやリソソーム内に滞留することで生じ得る顆粒状の蛍光がバックグラウンド(背景光)となることから、生細胞内での正確な動態をより詳細に観察できるようにするための改善の余地があった。
ところで、エンドソームから細胞質ヘの活性な生高分子の細胞内導入技術に関し、pH変化に鋭敏なポリマーが、エンドソームを破壊する効果があることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この技術においては、エンドソームやリソソーム内に滞留したタンパク質及び/又はペプチドに起因するバックグラウンドを充分に取り除き、タンパク質及び/又はペプチドの生細胞内での動態・機能をより充分に解析できるようにするための工夫の余地があった。
なお、遺伝子導入の場合、遺伝子を蛍光物質等で標識すると転写機能に影響を及ぼすおそれがあるため、通常は標識せずに導入することから、エンドソーム内での滞留に由来するバックグラウンドが問題となるのはタンパク質及び/又はペプチド特有の現象であるといえる。
特開2004−049214号公報 マリー−アンドレ イシーヌ、外4名、「バイオケミカ エト バイオフィジカ アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)」、(蘭)、Elsevier Science社、2003年、第1613巻、p.28−38
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、生細胞内にタンパク質及び/又はペプチドを効率的に導入するとともに、導入されたタンパク質及び/又はペプチドの動態・機能を効果的に解析することができ、例えば、免疫組織化学的な可視化を生細胞内の生理的な条件下で実現する技術「Live Cell Imaging」に好適に利用・応用することが可能な細胞内導入方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、タンパク質をカチオン化することで負電荷を帯びている生細胞表面への静電的な吸着を介して、効率良くタンパク質を生細胞内に導入する方法を見いだしているが(特願2002−287280)、生細胞内での正確な動態をより詳細に観察できるようにするための工夫の余地があった。
そして本発明者らは、タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法について、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合体が生細胞内に効率よく取り込まれ、このような細胞内導入技術が有用であることを見いだしていたが、更に当該細胞内導入方法について種々検討したところ、上記結合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との間に溶媒に露出した状態でジスルフィド結合等のポリスルフィド結合を配置して細胞内に導入後、細胞表面を還元剤で処理すると、ポリスルフィド結合が容易に切断可能であることに起因して、露出したポリスルフィド結合が速やかに還元され、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とが解離することを見いだした。両者が解離することで、細胞表面に吸着する化合物を介して細胞表面に吸着していたタンパク質及び/又はペプチドが細胞表面への結合能を失うことから、細胞表面に吸着したタンパク質及び/又はペプチドを充分に洗浄・除去することが可能となることを見いだし、これにより、細胞内に導入されたタンパク質及び/又はペプチドの機能を効果的に解析できることを見いだし、上記課題をみごとに解決できることに想到した。
このような本発明の細胞内導入方法は、タンパク質及び/又はペプチドの機能解析の高精密化を実現でき、また、タンパク質及び/又はペプチドを用いた医薬品・研究用試薬等に好適に利用・応用できる方法であるが、特に細胞内に導入した標識タンパク質及び/又はペプチドの動態や局在を解析するのに好適なものである。通常、標識されたタンパク質及び/又はペプチドを蛍光顕微鏡等で観察する場合には、細胞表面に吸着した標識タンパク質及び/又はペプチドがバックグラウンド(背景光)として観察されるが、ここに還元剤を加えて作用させることで、細胞内部に取り込まれずに表面に付着しただけのタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との間のポリスルフィド結合が還元され、タンパク質及び/又はペプチドが細胞表面より離脱することとなり、観察する際に大幅にバックグラウンドが低減した像を観察することが可能となる。
また細胞内に導入した標識タンパク質及び/又はペプチドの機能解析に関し、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合体がエンドサイトーシス等の経路で細胞内部に取り込まれるものと推測され、エンドソーム内に該結合体の滞留が生じ得ることに着目した。そして、生細胞内のエンドソームを破壊する技術を用いることにより、エンドソーム内に滞留した結合体を細胞質に放出することができることに起因して、標識したタンパク質及び/又はペプチドを用いた結合体であっても、細胞質に充分に放出することが可能となることを見いだした。通常、標識したタンパク質及び/又はペプチドを蛍光観察する場合には、エンドソーム内に滞留した結合体からの蛍光がバックグラウンドとして観察されるが、本発明では、ここにpHに依存して溶解性が変化する重合体を添加する等して生細胞内のエンドソームを破壊することにより、エンドソーム内の内包物が細胞質に放出され、バックグラウンドが低減された像を観察することが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
なお、本発明の細胞内導入方法は、従来の固定化された細胞内で行われてきた免疫組織化学的な解析から、生細胞内で動的な分子の可視化(Live cell imaging)までを可能とするものであり、特に、画像解析技術に好適に利用・応用できる技術である。
すなわち本発明は、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入する方法であって、上記細胞内導入方法は、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体を細胞内に導入し、還元剤により処理する過程を含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法である。
本発明はまた、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入する方法であって、上記タンパク質及び/又はペプチドは、標識されたものであり、上記細胞内導入方法は、生細胞内のエンドソームを破壊する物質を添加し、エンドソームを破壊する過程を含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明の細胞内導入方法としては、(A)タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体を細胞内に導入し、還元剤により処理する過程を含んでなる方法、又は、(B)標識されたタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入する方法であって、生細胞内のエンドソームを破壊する物質を添加し、エンドソームを破壊する過程を含んでなる方法のいずれかの方法であるが、これら(A)及び(B)の方法を組み合わせた方法であってもよい。
なお、上記細胞内導入方法としては、生体外での(in vitro)細胞内導入方法であることが好適である。すなわち、生体外で、生体内等から採取した細胞にタンパク質及び/又はペプチドを導入する方法であることが好ましい。この場合、後述する結合体の導入過程や、還元剤による還元処理過程、エンドソームを破壊する過程等は、生体外で行うこととなる。
上記(A)の細胞内導入方法は、特定の結合体を細胞内に導入し、還元剤により処理する過程を含んでなるが、細胞内に結合体を導入する方法としては、例えば、タンパク質及び/又はペプチドを導入しようとする細胞を含む培地中に、本発明の結合体又は該結合体を含む溶液を添加し、その後、細胞を適切な培養温度、培養時間等の培養条件で培養することにより行うことができる。これにより、本発明の結合体は細胞内に取り込まれ、時間の経過とともに結合体の細胞への取り込み量は増加することとなる。すなわち、細胞表面に吸着する化合物としてカチオン性化合物(カチオン性を有する化合物)を用いる場合には、細胞表面がヘパリン硫酸プロテオグリカンをはじめとしてアニオン性の分子によって構成され、負電荷を帯びていることから、結合体が有する正電荷と細胞表面の負電荷との静電相互作用に起因する機構により細胞内へ取り込まれるものと推測される。なお、静電相互作用に起因する機構としては、エンドサイトーシスによるものや、細胞膜を直接透過する機構等が考えられる。
このようにして結合体を細胞内に導入した場合には、細胞内部に取り込まれずに表面に付着しただけの結合体も存在しているが、本発明では更に還元剤で処理することによって、細胞表面に付着した結合体からタンパク質及び/又はペプチドを離脱させることができ、細胞内に導入されたタンパク質及び/又はペプチドの生理的な条件下での機能解析をより効果的に行うことが可能となる。
ここで、「還元剤により処理する」とは、還元剤を用いて本発明の結合体が有するポリスルフィド結合を還元することを意味し、本発明では、溶媒に露出した状態でタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との間に、ジスルフィド結合等のポリスルフィド結合を配置することにより、温和な条件下で還元処理を行うことが可能となる。このような還元処理により、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とが解離することとなり、両者が解離することで、細胞表面に吸着する化合物を介して細胞表面に吸着していたタンパク質及び/又はペプチドが細胞表面への結合能を失い、細胞表面からタンパク質及び/又はペプチドを充分に洗浄・除去することができることとなる。この結果、例えば、標識されたタンパク質及び/又はペプチドを蛍光顕微鏡等で観察する場合には、細胞表面に静電相互作用によって吸着した標識タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合体に由来するバックグラウンド(背景光)が充分に低減した像を観察することが可能となる。
このように本発明の細胞内導入方法は、細胞表面からのタンパク質及び/又はペプチドの洗浄方法でもあり、また、細胞表面に吸着したままのタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合体に由来するシグナルを洗浄・除去又は消去する方法でもある。更に、タンパク質及び/又はペプチドの画像解析に特に好適に利用・応用される方法でもある。
なお、溶媒に露出したジスルフィド結合は、中性又は弱アルカリ性では過剰の還元剤によりジスルフィド交換反応を介して下記式(1)の反応が進行する。
ここで、用いる還元剤として小過剰のジチオスレイトール(DTT)を用いた場合は、下記式(2)の反応が進行する。
上記式(1)及び(2)において、「Carrier」とは細胞内導入キャリアーを、「SS」とはジスルフィド結合を、「Probe」とは蛍光を、「R」とは任意の原子又は原子団を、「SH」とはチオール基(メルカプト基)を、「DTT」とはジチオスレイトール(HS−CH(CHOH)CH−SH)をそれぞれ意味する。
上記式(1)及び(2)の反応系において、(1)では多種の混合ジスルフィド産物が生成されるのに対し、(2)ではDTTが反応系のジスルフィド結合をDTT分子内のジスルフィド結合へ転移させることから、DTTは、本発明では特に好適な還元剤として用いられる。
一方、細胞内に導入された結合体は、細胞質内の還元的環境下では、主に還元型グルタチオン等の作用により上記式(1)の反応が進行するため、該結合体を構成するタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との解離が期待される。このため、タンパク質及び/又はペプチドが細胞内の標的部位に結合する際にも、細胞表面に吸着する化合物の影響を受けずに本来の機能を充分に発揮できる。これらの優位性から、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との間には、ジスルフィド結合等の切断が容易な部位を配しておくことが望ましい。
本発明の作用機構に関し、細胞内タンパク質(及び/又はペプチド)可視化におけるバックグラウンドの低減方法の概要について、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとしてタンパク質を用い、細胞表面に吸着する化合物として、カチオン性ポリマー、又は、ジスルフィド結合(SS)を有するカチオン性キャリアー(Carrier)(カチオン性ポリマーとアビジン(Avidin)との複合体に、ビオチン(Biotin)を結合させた化合物)を用いる場合を例に挙げて図1に概念的に示した。なお、本発明は図1の形態にのみ限定されるものではない。
上記細胞内導入方法としてはまた、上記還元処理後に、更にエンドソームを破壊する物質を添加し、エンドソームを破壊する処理を行ってもよい。すなわち、上述したように本発明の結合体はエンドサイトーシス等の経路で細胞内部に取り込まれるものと推測されるが、エンドソームに結合体が滞留することがあるため、エンドソームを破壊することにより、エンドソーム内の内包物を細胞質に放出することが可能となる。これにより、タンパク質及び/又はペプチドをより充分に細胞内の標的部位に導入することが可能となる。また、例えば、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドとして標識したものを用いる場合には、エンドソームに滞留した結合体からの蛍光がバックグラウンドとして観察されることがあるが、生細胞内のエンドソームを破壊してエンドソーム内の内包物を細胞質に放出することにより、バックグラウンドが充分に低減された像を観察することが可能となる。
上記エンドソームを破壊する物質としては特に限定されず、エンドソーム内において、温度、pH、塩濃度、光エネルギー等、外部刺激や物質の周辺環境の変化に対応して、形態や形状を変化することでエンドソームの膜を破壊する物質が好ましい。このような物質としては特に限定されないが、ポリマーであることが好ましく、感温性ポリマー、pH依存性及び/又は塩濃度依存性の溶解性を有するポリマー、機能性色素を有するポリマー等が好適に用いることができる。例えば、後期エンドソームで小胞内が酸性化する段階で不溶化する物質を用いてエンドソームを破壊する方法を利用することが好適である。作用の原理は明確ではないが、エンドソームの酸性化に従って、不溶化し析出した物質がエンドソームの膜を不安定化することで、本発明の結合体を放出するものと考えられる。なお、エンドソームを破壊する方法として、超音波や光、温度等の外部刺激により形態変化させる方法等を用いてもよい。
上記酸性下で不溶化する物質としては、pHに依存して溶解性が変化する重合体であることが好適である。pHに依存して溶解性が変化する重合体とは、溶液のpHに依存して溶解性が変化する重合体であり、好ましくは、アルカリ性水溶液中で完全に溶解し、中性又は酸性溶液中で溶解性が低下する性質を有する重合体である。このような重合体としては、疎水基及びカルボキシル基を共に有する重合体が好適である。
上記疎水基及びカルボキシル基を有する重合体としては、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の合成ポリマー及びその変性物のほか、高分子多糖類、天然ゴム、ポリペプチド、核酸等の天然ポリマー及びその変性物を挙げることができる。ポリマーを構成するモノマーに疎水基やカルボキシル基を予め有していてもよいし、ポリマーに対して疎水基やカルボキシル基を結合してもよい。疎水基としては、アルキル基や芳香族環を有する基を挙げることができる。
このような疎水基及びカルボキシル基を有する重合体の好適な例としては、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するモノマーと、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、アルファメチルスチレン等の不飽和芳香族類とを、定法に従い重合・精製した重合体を挙げることができる。
以下では、本発明で使用することができる化合物等について更に詳しく説明する。
本発明において、タンパク質及び/又はペプチドとは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合して生じる化合物を意味する。本発明で用いることのできるタンパク質及び/又はペプチドとしては特に限定されず、例えば、ペプチド、酵素、抗体、その他機能性(薬理作用等の生理活性)を有し、医薬・薬物として有用なタンパク質及び/又はペプチド等の任意のタンパク質及び/又はペプチドを用いることができ、その分子量としては100〜100万が好ましい。中でも、チオール基(SH基)を有するタンパク質及び/又はペプチドを用いることが好ましく、システイン(Cys)残基を有するものが好適である。なお、本発明において、タンパク質とは、そのタンパク質に、糖鎖、脂質及び/又はリン酸基が結合した複合タンパク質をも含む意味である。また、そのタンパク質の構造は天然状態であっても変性状態であってもよい。
本発明における結合体は、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合したものであるが、ポリスルフィド結合とは、2以上の硫黄原子間で形成される結合を意味し、例えば、ジスルフィド結合(S−S結合)、トリスルフィド結合(S−S−S結合)等が挙げられる。中でも、ジスルフィド結合を介して結合したものであることが好適である。タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とは、これらの間に何も介さずに直接的にポリスルフィド結合してもよいし、また、公知の2価性架橋試薬等を用いて、間にスペーサー等を介して結合してもよい。本発明では、スペーサー部位にジスルフィド結合を有する架橋試薬を用いることが特に好ましい。タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とをジスルフィド結合を介して結合する場合には、例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、4−スクシニミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)の他、これらの誘導体等の試薬の1種又は2種以上を用いて、タンパク質及び/又はペプチド分子中のシステイン残基のチオール基と、細胞表面に吸着する化合物との間にジスルフィド結合を含む共有結合を形成させることができる。なお、上記試薬の形態は、粉末状であってもよく、媒体に溶解した状態であってもよい。また、試薬の量としては特に限定されず、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とを結合するのに適当な量を設定することとなる。
上記細胞表面に吸着する化合物としてPEI(ポリエチレンイミン)を使用し、スペーサー部位にSPDPを用いてジスルフィド結合を形成させた場合の例を下記式(3)に模式的に示す。
上記結合体を構成する細胞表面に吸着する化合物としては、細胞膜等の細胞表面に吸着することができる化合物であればよく、例えば、カチオン性の基を有する重合体やカチオン化された複合体等のカチオン性化合物が好適に用いられる。また、脂質を用いてもよい。
上記カチオン性の基を有する重合体としては、水溶液中でカチオンとなり得る原子を有する重合体であればよく、例えば、2を超えて30000以下のカチオン価を有する重合体であることが好ましい。2以下であると、タンパク質及び/又はペプチドに充分な正電荷を導入することができないおそれがあり、30000を超えると、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。より好ましくは、20000以下であり、更に好ましくは、2500以下であり、特に好ましくは、250以下であり、最も好ましくは、4以上、70以下である。
上記カチオン価とは、重合体のアミン価(mmol/g)と該重合体の数平均分子量との積を1000で割った値であり、また、アミン価(mmol/g)は、試料化合物中に含まれるアミンの総量の指標を意味し、試料化合物1gに含まれるアミンのmmol数で表される。試料化合物のアミン価は、一般的なアミノ基の定量方法に従って測定することができる。一般的なアミノ基の定量方法としては、例えば、「新実験化学講座 第13巻 有機化学構造I」(日本化学会編、丸善株式会社、昭和53年11月20日、p.88−99)に記載の方法やコロイド滴定法(例えば、千手諒一著、「コロイド滴定法」、第1版、株式会社南江堂、1969年11月20日参照。)が挙げられる。上記アミン価の分析は、試料化合物の形態、溶解性、含有不純物等を考慮して、精度よく分析できる方法を適宜選択する必要がある。上記重合体のアミン価としては、1〜30であることが好ましく、5〜25であることがより好ましい。
上記カチオン性の基を有する重合体の数平均分子量としては、細胞導入効率、取り扱い性等の点から、100〜100000であることが好ましい。より好ましくは、100〜10000であり、更に好ましくは、200〜3000である。なお、数平均分子量の測定方法は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが好適である。
上記カチオン性の基を有する重合体としては、例えば、ポリアルキレンポリアミン骨格、ポリアリルアミン骨格、ポリビニルアミン骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル骨格、ポリ(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルアミド骨格、ポリアミジン骨格、ポリビニルピリジン骨格、ポリビニルイミダゾール骨格の1種又は2種以上の骨格を有する重合体(共重合体);これらの重合体の塩、例えば、第一級、第二級、第三級及び第四級アンモニウム塩等が好適である。なお、これらの重合体を化学的に修飾、変成したものも用いることができる。
このようなカチオン性の基を有する重合体の具体例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のポリアリルアミン;ポリアクリルアミドのホフマン分解物、ポリビニルアセトアミド加水分解物、ポリビニルフタルイミドの加水分解物、N−ビニルホルムアミドポリマーの加水分解物等のポリビニルアミン;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(共)重合体等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(共)重合体;ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体;ポリアミジン;ポリビニルピリジン;ポリビニルイミダゾール;ジシアンジアミド系縮合物;エピクロロヒドリン・ジメチルアミン縮合物等のエピクロロヒドリン・ジアルキルアミン縮合物;ジメチルアミン・エチレンジクロライド縮合物等のジアルキルアミン・アルキルジハライド縮合物;ポリビニルイミダゾリン;ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド;カルボキシメチルセルロース第四級アンモニウム(第四級アンモニウムCMC);グリコールキトサン;カチオン化デンプン等が挙げられ、中でも、ポリエチレンイミン(PEI)を用いることが好ましい。
上記カチオン性の基を有する重合体のアミン価の理論値について、以下の表に例示する。
上記表中、アミン価の理論値は、重合体を形成する単量体の分子量の逆数に1000をかけた値を表す。上述の方法により測定されるアミン価の実測値は、その理論値と測定誤差の範囲内でほぼ一致し、上述の方法により測定されるアミン価に基づいて、重合体のカチオン価を算出することができる。アミン価は、重合体の合成方法の変更、他成分との共重合、重合体の化学的修飾により、任意に変化させることが可能である。
上記細胞表面に吸着する化合物において、カチオン化された複合体としては、上述したカチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとが結合した複合体であることが好ましく、例えば、(I)カチオン性の基を有する重合体と、複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの1種であるアビジンとが結合した複合体;(II)カチオン性の基を有する重合体と、複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの1種であるプロテインA及び/又はプロテインGとが結合した複合体;(III)カチオン性の基を有する重合体と、複合体を形成するタンパク質及び/又はペプチドの1種である抗体とが結合した複合体等を用いることが好ましい。これらの複合体を形成する方法としては、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するための試薬を用いることが好適であり、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の脱水縮合剤;N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP);2−イミノチオラン;N−(4−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド(GMBS)等の試薬の1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの試薬の量としては特に限定されず、カチオン性の基を有する重合体とタンパク質及び/又はペプチドとを結合するのに適当な量を設定することとなる。
上記(I)の複合体を使用する場合には、予め、上述したSPDPやSMPT等のポリスルフィド結合を形成させる試薬を用いて導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドをビオチン化しておくことにより、複合体中のアビジンに結合することが好ましく、これにより、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体を形成することができる。なお、上記アビジン、プロテインA、プロテインGとしては、天然に存在する形態だけでなく、機能を改良する目的で遺伝子的に組み換えて作られたものであってもよい。
上記結合体としてはまた、必要に応じて標識してもよい。標識方法としては、一般的な方法であれば特に限定されないが、蛍光標識、オートラジオグラフィ、高電子密度物質、色素不溶化酵素を用いる方法であることが好ましい。特に好ましい形態は、蛍光標識化合物を共有結合により結合体を標識することである。本発明においては、標識したタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合体を用いることが好適であり、これにより、本発明の作用効果を充分に発揮することが可能となる。
蛍光標識に用いる蛍光物質としては、特に限定されないが、例えば、ピレン、アントラニロイル基、ダンシル基、フルオレセイン、ローダミン、ニトロベンゾキサジアゾール基等の蛍光団を有する化合物が挙げられる。上記の蛍光団を有する化合物は公知(例えば、平塚寿章、「蛋白質 核酸 酵素」、Vol.42,No.7(1997)等参照。)であり、常法によりタンパク質及び/又はペプチド等に導入することができる。
上記還元処理過程において、還元剤とは、ジスルフィド結合等のポリスルフィド結合をチオール基に還元できる化合物を意味し、チオール基を有する化合物が好ましい。より好ましくは、水溶性を有する化合物であり、例えば、DTTやβ−メルカプトエタノールが好適である。特に好ましくは、DTTである。
本発明の細胞内導入方法においてはまた、細胞表面に吸着する化合物が封入された容器(以下、「容器1」ともいう。)と、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とをポリスルフィド結合により結合するための試薬が封入された容器(以下、「容器2」ともいう。)と、還元剤が封入された容器(以下、「容器3」ともいう。)とを含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いることができ、このような試験キットを使用することにより、効率的かつ簡便に、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合体の細胞内導入及び還元処理を行うことが可能となる。
上記試験キットの使用方法としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されないが、例えば、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを容器1に入れ、次いで容器1の内容物を容器2に入れた後、その内容物を導入しようとする細胞を含む培地中に添加して種々の培養等を行い、そこに容器3の内容物を添加する方法;容器1の内容物を容器2に入れ、次いで導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを容器2に入れた後、その内容物を導入しようとする細胞を含む培地中に添加して種々の培養等を行い、そこに容器3の内容物を添加する方法等が好ましい。
また上記細胞内導入試験キットとして、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体が封入された容器と、還元剤が封入された容器とを含んでなる試験キットを用いることもできる。
上記試験キットに用いられる容器としては、0.5〜10mLのものを用いることが好ましく、該容器を、オートクレープや紫外線、ガンマ線等で滅菌処理してもよい。また、カビの発生や容器内の物質の腐敗を防ぐために、容器の内側をコーティングしてもよい。更に、窒素やアルゴン等の不活性ガス下で、容器に内容物を封入することも好ましい。なお、容器の保存方法としては、容器内に上記物質を封入後、25℃以下の低温で密封保存することが好ましい。
上記(B)の細胞内導入方法において、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内へ導入する形態としては、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とが結合した結合体を形成し、該結合体を細胞内に導入する形態であることが好適である。タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物との結合は、化学結合であれば特に限定されないが、共有結合であることが好ましい。中でも、ポリスルフィド結合であることが好適であり、より好ましくは、ジスルフィド結合である。タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とは、これらの間に何も介さずに直接的に結合してもよいし、又は、公知の2価性架橋試薬等を用いて、間にスペーサー等を介して結合していてもよい。本発明では、スペーサー部位にジスルフィド結合を有する架橋試薬を用いることが特に好ましい。
上記タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体の形成方法、用いられる化合物や試薬、標識方法、結合体の細胞内導入方法等については上述したとおりである。生細胞内のエンドソームを破壊する物質及び破壊する方法もまた、上述したとおりであるが、中でも後期エンドソームで小胞内が酸性化する段階で不溶化する物質を用いてエンドソームを破壊する方法を利用することが好適である。
上記エンドソームを破壊する方法はまた、エンドソームを破壊する物質が封入された容器(以下「容器4」ともいう)を含んでなるタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入用試験キットを用いることが好適であり、これにより、効率的かつ簡便にエンドソームを破壊する過程を経て、タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入することができる。上記試験キットの使用方法としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されないが、例えば、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドを上述の容器1に入れ、次いで容器1の内容物を容器2に入れた後、その内容物を導入しようとする細胞を含む培地中に添加して種々の培養等を行い、そこに容器4の内容物を添加する方法が好ましい。
本発明はまた、上記(A)及び/又は(B)の細胞内導入方法により得られる生成物でもある。すなわち、(A)タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体を細胞内に導入し、還元剤により処理することにより得られる生成物、並びに、(B)標識したタンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入した後(好ましくは、導入目的物であるタンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とが結合した結合体を標識したものを細胞内に導入した後)、生細胞内のエンドソームを破壊する物質を添加し、エンドソームを破壊することにより得られる生成物もまた、本発明の1つである。
このような生成物は、例えば、試薬として、「Live Cell Imaging」技術の他、医薬品や試薬、創薬支援、再生医療等に好適に用いられるものである。
本発明の細胞内導入方法は、上述のような構成であるので、生細胞内にタンパク質及び/又はペプチドを効率的に導入するとともに、導入されたタンパク質及び/又はペプチドの動態・機能を効果的に解析することができ、免疫組織化学的な可視化を生細胞内の生理的な条件下で実現する技術「Live Cell Imaging」に特に好適に利用・応用することが可能な方法である。また、医薬品や試薬、創薬支援、再生医療にも適応することができる技術である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例1
蛍光Probeと細胞内導入用カチオン性Carrierの調製
緑色蛍光タンパク質(eGFP)のカルボキシル末端側に、SV40ウイルスLarge−T抗原由来の核移行シグナルが3回繰り返されたペプチド配列(NLS)を付加したeGFP−NLSを大腸菌組換えタンパク質として発現・精製し、Phosphate Buffered Saline(PBS),pH7.4に溶解した状態で調製した。次にスペーサー内にSS結合を含むBiotin化試薬:Sulfo−NHS−SS−Biotin(PIERCE社)をジメチルスルフォキシドに予め溶解し、eGFP−NLSとSulfo−NHS−SS−Biotinのモル比を1:4で混合し、25℃で4時間反応した。この反応液をPBSで平衡化されたSephadexG−25カラムを用いて精製し、eGFP−NLS−SS−Biotinを得た。
1mgのChicken Avidin(和光純薬)を0.5mLの純水に溶解した後、予め塩酸でpHを5に調整した20%ポリエチレンイミン(PEI,平均分子量600)水溶液を0.5mL添加した。次に固体の水溶性カルボジイミド(EDC)を純水中で10mg/mLの濃度で溶解し、Avidin/PEI水溶液中に速やかに10μL添加した(終濃度:0.5mg/mL Avidin, 10% PEI600−HCl, pH5, 0.1mg/mL EDC)。25℃で4時間反応した後、PBSで平衡化されたSephadexG−25カラム用いて精製し、PEI600−Avidinを得た。また、PEIの結合反応の前に、RhodamineB(RITC,Sigma社)で予め標識したAvidin−RITCについても同様の反応でPEI600を結合させ、PEI600−Avidin−RITCを調製した。
eGFP−NLS−SS−Biotinの細胞内導入
予め100μLのDMEM培地(無血清)中で各1μMのPEI600−Avidin(またはPEI600−Avidin−RITC)とeGFP−NLS−SS−Biotinを混合し室温で5分放置することでBiotin/Avidinの結合体を形成させ、2mLのDMEM培地(無血清)に希釈した(結合体の終濃度は50nM)。実験に用いる細胞については、マウス繊維芽細胞(Balb/c3T3)を10%FBSが含まれるDMEM培地を用いてカバーガラス(直径18mm)上に1晩培養し生着させた。細胞が生着した1枚のカバーガラスあたり、0.5mLの上記結合体を含むDMEM培地を添加し、炭酸ガスインキュベーター内にて37℃で2時間培養した。
ジチオスレイトール(DTT)による細胞表面の還元・洗浄
上記の手法でeGFP−NLS−SS−Biotin + PEI600−Avidinを細胞内に導入した後、上清を除去し、20mMのDTTが含まれるDMEM培地(無血清)を添加し、37℃で10分間の処理を行った後、DMEM培地(無血清)に戻した。
細胞の蛍光観察
上記の導入操作の後、細胞をDMEM培地(無血清)で1回洗浄し、シリコーンテープ(3M Scotch No70)をスペーサーとして貼り付けたスライドガラスにDMEM培地(無血清)を用いて細胞の付着面を内側にして封入し、細胞表面・内部の蛍光を共焦点レーザー顕微鏡(ZEISS 510META)を用いて観察・解析を行った。
その手段により生じた特有の作用・効果
本発明の証明には、eGFPによる蛍光観察と、NLS付加により、細胞内に導入後に核へ移行することが期待されるeGFP−NLSを「蛍光Probe」として、細胞内へProbeを導入するCarrierにはPEI600−Avidin若しくはPEI600−Avidin−RITCを「カチオン性Carrier」としてそれぞれ活用した。また、本発明では溶媒に露出したSS結合を配置することが鍵となるため、スペーサー内に含むビオチン化試薬(Sulfo−NHS−SS−Biotin)を用いた。
なお、この際のeGFP−NLS−SS−Biotin + PEI600−Avidinの形態を図2に概念的に示す。図2においては、アビジン1個に対して、ビオチン(Bi)やジスルフィド結合(SS)が1個等とされているが、これは概念的に示したものであり、この形態に限定される旨を示したものではない。
図3−Aに示したとおり、eGFPの緑色蛍光(Probe)と、RITCで標識したPEI−Avidinの赤色蛍光(Carrier)が細胞内で解離し、かつProbeが細胞内の核内とその近傍に局在することが確認された。本結果は、この手法で導入されたProbeが細胞内でCarrierによる制限を受けずに細胞内の標的部位に結合が可能になる技術として期待される。
図3−Bは、本手法で細胞内導入を行った際の、細胞表面及び細胞内のProbeに由来する蛍光を全て可視化した様子を示している。これに対し、図3−Cでは、観察直前に細胞表面を20mMのDTTを含むDMEM培地で10分間処理をするだけで、細胞表面のProbeに由来する蛍光を速やかに洗浄・消去されていることが確認された。この処理条件では、生細胞に対する影響は観察されず、非常に温和な条件で本技術が達成されたことを示している。
図3−Dでは、図3−Cで観察された画像の一部を拡大し、更にZ軸方向への細胞内蛍光の局在を解析した結果を示した。この結果は、細胞内に導入されたeGFP−NLSが確実に細胞内の核へ移行していること、及び細胞表面の蛍光が消失した低バックグラウンドな解析が可能になったことが証明された。
実施例2
蛍光Probeと細胞内導入用カチオン性Carrierの調製
スペーサー内にSS結合を含むBiotin化試薬:Sulfo−NHS−SS−Biotin(PIERCE社)をジメチルスルフォキシドに予め溶解し、eGFPとSulfo−NHS−SS−Biotinのモル比を1:4で混合し、25℃で4時間反応した。この反応液をPBSで平衡化されたSephadexG−25カラム用いて精製し、eGFP−SS−Biotinを得た。
1mgのChicken Avidin(和光純薬)を0.5mLの純水に溶解した後、予め塩酸でpHを5に調整した20%ポリエチレンイミン(PEI,平均分子量600)水溶液を0.5mL添加した。次に固体の水溶性カルボジイミド(EDC)を純水中で10mg/mLの濃度で溶解し、Avidin/PEI水溶液中に速やかに10μL 添加した(終濃度:0.5mg/mL Avidin, 10% PEI600−HCl, pH5, 0.1mg/mL EDC)。25℃で4時間反応した後、PBSで平衡化されたSephadexG−25カラム用いて精製し、PEI600−Avidinを得た。
カルボキシル基含有ポリマーの合成
エンドソームを破壊する物質として、pH依存性の溶解性を示すカルボキシル基含有ポリマーの合成を実施した。
スチレン55重量部及びモノイソプロピルマレート70重量部を定法に従い、水中で懸濁重合を行うことでカルボキシル基含有ポリマーを得た。このポリマーのpHに対する溶解性を調べた結果、1%水溶液は、pHが6.5(25℃)で不溶化することを確認した。
eGFP−SS−Biotinの細胞内導入
予め100μLのDMEM培地(無血清)中で各1μMのPEI600−AvidinとeGFP−SS−Biotinを混合し室温で5分放置することでBiotin/Avidinの結合体を形成させ、2mLのDMEM培地(無血清)に希釈した(結合体の終濃度は50nM)。実験に用いる細胞については、マウス繊維芽細胞(Balb/c3T3)を10%FBSが含まれるDMEM培地を用いてカバーガラス(直径18mm)上に1晩培養し生着させた。細胞が生着した1枚のカバーガラスあたり、0.5mLの上記結合体を含むDMEM培地を添加し、炭酸ガスインキュベーター内にて37℃で2時間培養した。
カルボキシル基含有ポリマーによる細胞内エンドソームの処理
上記の手法でeGFP−SS−Biotin + PEI600−Avidinを細胞内に導入した後、上清を除去しカルボキシル基含有ポリマーを50μg/mL含むDMEM培地(無血清)を添加し、37℃で2時間の処理を行った後、DMEM培地(無血清)に戻した。
ジチオスレイトール(DTT)による細胞表面の還元・洗浄
上記の処理後、上清を除去し、20mMのDTTが含まれるDMEM培地(無血清)を添加し、37℃で10分間の処理を行った後、DMEM培地(無血清)に戻した。
細胞の蛍光観察
ジチオスレイトール(DTT)による細胞表面の還元・洗浄をしたもの、及び未処理のもの、細胞をDMEM培地(無血清)で1回洗浄し、シリコーンテープ(3M Scotch No70)をスペーサーとして貼り付けたスライドガラスにDMEM培地(無血清)を用いて細胞の付着面を内側にして封入し、細胞表面・内部の蛍光を共焦点レーザー顕微鏡(ZEISS 510META)を用いて観察・解析を行った。
その手段により生じた特有の作用・効果
図4−Aに示したとおり、eGFPの緑色蛍光(Probe)は、細胞内で顆粒状に存在する。一方、図4−Bに示したように、カルボキシル基含有ポリマーで処理した細胞は、細胞内に均一に蛍光が存在し、エンドソームから細胞質に均一にeGFPが拡散していることから、エンドソームに滞留した背景光を低減できることが明らかとなった。
本発明の細胞内導入方法における細胞内タンパク質可視化におけるバックグラウンドの低減方法の概要を示す概念図である。 実施例1におけるeGFP−NLS−SS−Biotin + PEI600−Avidinの形態を概念的に示した図である。 実施例1において、eGFPの緑色蛍光(Probe)と、RITCで標識したPEI−Avidinの赤色蛍光(Carrier)が細胞内で解離し、かつProbeが細胞内の核内とその近傍に局在することが確認された観察図である。 実施例1において、細胞表面及び細胞内のProbeに由来する蛍光を全て可視化した様子を蛍光及び透過光により観察した観察図である。 実施例1において、本発明の細胞内導入方法を行った後の細胞表面及び細胞内のProbeに由来する蛍光を全て可視化した様子を蛍光及び透過光により観察した観察図である。 図3−Cで観察された画像の一部を拡大し、更にZ軸方向への細胞内蛍光の局在を解析した結果を示す観察図である。 実施例2において、eGFPの緑色蛍光(Probe)が細胞内で顆粒状に存在する様子を蛍光及び透過光により観察した観察図である。 実施例2において、本発明の細胞内導入方法を行った後の様子を蛍光及び透過光により観察した観察図である。
符号の説明
(1):カチオン性ポリマーを介したタンパク質細胞内導入過程
(2):カチオン性キャリアーを介したタンパク質細胞内導入過程
(3):細胞表面に吸着している蛍光Probeの洗浄・除去過程
(4):細胞内の還元的環境でのSS結合の還元過程
(5):細胞内標的分子と蛍光Probeとの結合・可視化過程
(a):タンパク質
(b):カチオン性ポリマー
(c):静電相互作用による吸着
(d):エンドサイトーシス及び/又は直接的な膜透過による細胞内導入
(e):特定の分子を認識する蛍光Probe
(f):温和な条件下でのDTT等の還元剤による細胞表面の処理
(g):負電荷を帯びる生細胞の表面
(h):蛍光
(i):PEI600
(j):eGFP
(k):NLS

Claims (2)

  1. タンパク質及び/又はペプチドを細胞内に導入する方法であって、
    該細胞内導入方法は、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがポリスルフィド結合を介して結合した結合体を細胞内に導入し、還元剤により処理して細胞表面に付着した結合体からタンパク質及び/又はペプチドを離脱させる過程を含んでなり、
    該細胞表面に吸着する化合物は、カチオン性の基を有する重合体、カチオン化された複合体、又は、脂質であり、
    該結合体は、タンパク質及び/又はペプチドと細胞表面に吸着する化合物とがジスルフィド結合を介して結合した結合体である
    ことを特徴とするタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法。
  2. 前記タンパク質及び/又はペプチドは、標識されたものであり、
    前記細胞内導入方法は、生細胞内のエンドソームを破壊する物質を添加しエンドソームを破壊する過程を含んでなる
    ことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法。
JP2005147250A 2004-05-21 2005-05-19 タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法 Active JP4885476B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005147250A JP4885476B2 (ja) 2004-05-21 2005-05-19 タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004151853 2004-05-21
JP2004151853 2004-05-21
JP2005147250A JP4885476B2 (ja) 2004-05-21 2005-05-19 タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006006316A JP2006006316A (ja) 2006-01-12
JP4885476B2 true JP4885476B2 (ja) 2012-02-29

Family

ID=35774222

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005147250A Active JP4885476B2 (ja) 2004-05-21 2005-05-19 タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4885476B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5097412B2 (ja) * 2006-10-13 2012-12-12 株式会社日本触媒 タンパク質の細胞内導入剤
CN113029734B (zh) * 2021-03-30 2023-11-14 姜云瀚 用于流式细胞学检测的活细胞胞内或核内染色方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2174957T5 (es) * 1994-07-29 2006-12-16 Innogenetics N.V. Proteinas purificadas de envoltura de virus de la hepatitis c para uso diagnostico y terapeutico.
DE19952956A1 (de) * 1999-11-03 2001-05-17 Acgt Progenomics Ag Verfahren zur Verbindung von molekularen Substanzen
WO2002085932A2 (en) * 2001-04-24 2002-10-31 Innogenetics N.V. Constructs and methods for expression of recombinant hcv envelope proteins
JP2004049214A (ja) * 2001-11-29 2004-02-19 Nippon Shokubai Co Ltd 蛋白質またはペプチドの細胞内導入方法
JP3996028B2 (ja) * 2002-09-30 2007-10-24 株式会社日本触媒 蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006006316A (ja) 2006-01-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Xu et al. Molecularly imprinted polymer nanoparticles as potential synthetic antibodies for immunoprotection against HIV
CA2163519C (en) Coating of hydrophobic surfaces to render them protein resistant while permitting covalent attachment of specific ligands
CA2277995C (en) Composition and method for regulating the adhesion of cells and biomolecules to hydrophobic surfaces
Lauer et al. Development and characterization of Ni‐NTA‐bearing microspheres
US6087452A (en) Metal-chelating surfacant
Wang et al. Advances in epitope molecularly imprinted polymers for protein detection: a review
US20010026915A1 (en) Colorimetric glycopolythiophene biosensors
Mertz et al. Ultrathin, bioresponsive and drug-functionalized protein capsules
JPH02304364A (ja) 結合アッセイ用固相の調製方法
EP1604031A2 (en) Fluorescent silica-based nanoparticles
Tse Sum Bui et al. Molecularly imprinted polymers as synthetic antibodies for protein recognition: The next generation
JPH10507778A (ja) ポリペプチド:デンドリマー複合体
Kaupbayeva et al. Molecular sieving on the surface of a nano-armored protein
FR2724461A1 (fr) Microsphere de latex biotinylee, procede de preparation d'une telle microsphere et utilisation en tant qu'agent de detection biologique
US7964415B2 (en) Stable water-soluble polyethylenimine conjugates and methods of use thereof
Thalhauser et al. Presentation of HIV-1 envelope trimers on the surface of silica nanoparticles
Mancini et al. Encapsulated hydrogels by E-beam lithography and their use in enzyme cascade reactions
Lambert et al. Hydrogels with reversible chemical environments for in vitro cell culture
JP4885476B2 (ja) タンパク質及び/又はペプチドの細胞内導入方法
JPH10509731A (ja) ホスファターゼ活性化架橋剤、結合剤及び還元剤とその使用方法、並びにホスファターゼ活性化架橋剤及び結合剤を含む試薬
Thalhauser et al. Considerations for efficient surface functionalization of nanoparticles with a high molecular weight protein as targeting ligand
JP3996028B2 (ja) 蛋白質又はペプチドの細胞内導入方法
WO2017042303A1 (en) Binding of hydrophobic antigens to surfaces
Van Andel et al. Highly specific protein identification by immunoprecipitation–mass spectrometry using antifouling microbeads
Erstling et al. antibody functionalization of ultrasmall fluorescent core–shell aluminosilicate nanoparticle probes for advanced intracellular labeling and optical super resolution microscopy

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080206

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20100419

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110118

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110317

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110809

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111005

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111115

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20111208

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141216

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350