JP2004347642A - 再書き込み可能な光学素子材料 - Google Patents
再書き込み可能な光学素子材料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004347642A JP2004347642A JP2003141353A JP2003141353A JP2004347642A JP 2004347642 A JP2004347642 A JP 2004347642A JP 2003141353 A JP2003141353 A JP 2003141353A JP 2003141353 A JP2003141353 A JP 2003141353A JP 2004347642 A JP2004347642 A JP 2004347642A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- laser
- optical element
- irradiation
- element material
- plastic substrate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
Abstract
【解決手段】再書き込み可能な光学素子材料は、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質を含有するプラスチック基材により構成され、且つ、プラスチック基材に少なくとも部分的に光学素子機能を発揮する構造変化部を形成することが可能な光学素子材料であって、前記構造変化部を、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射により、プラスチック基材の構造を変化させて形成することができるとともに、加熱又は紫外線照射により、変化される前の構造に相当する構造に戻して消去することができる構成を有していることを特徴とする。前記構造変化部は、プラスチック基材に少なくとも部分的に且つ3次元的に形成することが可能である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック基材が用いられていても、優れた安定性で光学素子機能を発揮することができる再書き込み可能な光学素子材料に関し、特に、3次元的に書き込みが可能であり、また容易に書き込み及び消去を行うことができる再書き込み可能な光学素子材料に関するものである。
【0002】
【従来技術】
多層光学メモリーは、様々な高機能化に伴い容量の増大や、高精細・高密度化などの大容量記憶媒体のよう級が増している中で注目すべき分野となっている。
なかでも、光ディスクの高密度化は年々進んでいる。このような光学メモリーの大容量化の方向としては、書き込みに使用するレーザーの波長を短くすると書き込み領域を小さくすることができることから、使用するレーザーの短波長化が挙げられる。また、更なる大容量化を実現する他の方法には、記録の空間的次元を奥行き方向も含めた3次元にすることで、より大容量化が可能となってくるが、例えば、3次元ビット光学データ貯蔵では、データビットは消去可能ではない。
このことから、光照射により、屈折率変化が生じるフォトクロミック材料を用いての3次元情報記録を行うと、消去可能な方法となる。このように、フォトクロミック材料を用いると、記録された情報は、熱や光によって消去することも可能であり、フォトクロミック材料は、書き換え可能材料として注目されている。
【0003】
一方、プラスチック材料は、一般に、レーザー光による熱的影響や環境の温度変化に対する安定性が乏しいため、緩和変化しやすい材料であり、そのため、プラスチック材料を用いての書き換え可能な光学素子の開発は困難であるとされてきた。しかし、プラスチック材料は、ガラスと比較して、柔軟性を有していることや、安価で作製することができることなどの利点を有している(非特許文献1〜非特許文献2参照)。
【0004】
【非特許文献1】
「O PLUS E」(株)新技術コミュニケーションズ出版、Vol.24、No.3、p269−274(「光による分子配列の形成と制御」宍戸厚)
【非特許文献2】
「高分子」第51巻、2002年6月号、p433−437(「高分子への情報の導入」町田真二郎)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、プラスチック基材が用いられていても、優れた安定性で光学素子機能を発揮することができる再書き込み可能な光学素子材料を提供することにある。
本発明の他の課題は、さらに、3次元的に書き込みが可能である再書き込み可能な光学素子材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のレーザーの照射エネルギーを吸収することが可能な物質を含有しているプラスチック基材に、パルス幅が短い超短パルスレーザーを照射すると、プラスチック基材中に光学素子機能を発揮する構造変化部を形成することができ、しかも、その後、加熱やや紫外線照射を行うと、前記光学素子機能を発揮する構造変化部が元の状態に戻されて消去されることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質を含有するプラスチック基材により構成され、且つ、プラスチック基材に少なくとも部分的に光学素子機能を発揮する構造変化部を形成することが可能な光学素子材料であって、前記構造変化部を、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射により、プラスチック基材の構造を変化させて形成することができるとともに、加熱又は紫外線照射により、変化される前の構造に相当する構造に戻して消去することができる構成を有していることを特徴とする再書き込み可能な光学素子材料を提供する。
【0008】
本発明の再書き込み可能な光学素子材料は、構造変化部を、プラスチック基材に少なくとも部分的に且つ3次元的に形成することが可能である。
【0009】
前記構造変化部の形成の際に用いられるパルス幅が10−12秒以下のレーザーとしては、集光されたレーザーを好適に用いることができる。また、構造変化部の形成の際に用いられるパルス幅が10−12秒以下のレーザーの波長が1.2μm以下であり、且つ、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質が吸収する照射エネルギーのピーク波長が600nm以下であることが好ましい。構造変化部としては、光異性化及び/又は光相転移に伴う屈折率の変化によって形成された屈折率変調部が好適である。
【0010】
本発明の再書き込み可能な光学素子材料は、光スイッチング材料、光記録材料、ホログラム記録材料として利用可能である。
【0011】
また、構造変化部としては、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの焦点を、該レーザーの照射方向に対して平行な方向又は垂直な方向に移動させることにより、レーザーの照射方向に対して平行又は垂直な方向にライン状に形成されていてもよく、構造変化部における長手方向に対する垂直な面の断面の形状が、略円形または略四角形であってもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。なお、同一の部位又は部材には同一の符号を付している場合がある。
(光学機能性構造変化部の形成方法)
本発明では、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質(「エネルギー吸収物質」と称する場合がある)を含有するプラスチック基材に、パルス幅が10−12秒以下のレーザー(「超短パルスレーザー」又は「レーザー」と称する場合がある)を外部から照射することにより、プラスチック基材に少なくとも部分的に光学素子機能を発揮する構造変化部(「光学機能性構造変化部」と称する場合がある)を形成することができる。例えば、図1に示されるように、エネルギー吸収物質を含有するプラスチック基材に、超短パルスレーザーを外部から照射することにより、プラスチック基材の任意の部位に、光学機能性構造変化部を形成することができる。図1は、エネルギー吸収物質を含有するプラスチック基材に、光学機能性構造変化部を形成する方法の一例を示す概略鳥瞰図である。図1において、1はエネルギー吸収物質を含有するプラスチック基材(「加工前プラスチック基材」と称する場合がある)、11は加工前プラスチック基材1に光学素子機能を発揮する構造変化部が形成されたプラスチック基材(「加工後プラスチック基材」と称する場合がある)、1aは加工前プラスチック基材1(又は加工後プラスチック基材11)の上面、2は光学素子機能を発揮する構造変化部(光学機能性構造変化部)、3は光学素子機能を発揮しない構造未変化部(単に「構造未変化部」と称する場合がある)、4はパルス幅が10−12秒以下のレーザー(超短パルスレーザー;単に「レーザー」と称する場合がある)、5はレンズ、6はレーザー4の照射方向、7はレーザー4の焦点、7aはレーザー4の焦点7の移動方向、Tは加工前プラスチック基材1の厚さである。加工前プラスチック基材1に、レーザー4を照射することにより、該レーザー4の照射による影響を受けて、構造が変化して光学素子機能を発揮できる構造変化部(光学機能性構造変化部)2が形成されている。なお、構造未変化部3は、レーザー4の照射による影響を受けておらず、光学機能性構造変化部2が形成されていない部位であり、元の状態又は形態を保持している。
【0013】
レーザー4は、加工前プラスチック基材1に向けて、照射方向6の向きで(すなわち、Z軸と平行な方向で)照射している。なお、レーザー4はレンズ5を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。従って、レーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合等では、レンズを用いる必要はない。
【0014】
また、加工前プラスチック基材1は略直方体の形状を有しており、加工前プラスチック基材1の上面1aはX−Y平面と平行な面となっている(Z軸と垂直となっている)。なお、加工前プラスチック基材1としては、上面が略長方形のものを用いているが、如何なる形状のものであってもよく、またその大きさや厚みなども特に制限されない。例えば、0.1〜10,000μm程度の厚さであってもよい。
【0015】
さらに、81,82,・・・,8n(nは1以上の整数である)はそれぞれレーザー4の焦点7をライン状に移動させる際のラインである[以下、ライン(81,82,・・・,8n)をライン8として総称する場合がある]。従って、ライン8は、焦点7の移動方向7aと平行又は同一の方向に延びている。ライン8は、焦点7をライン状に移動させる際のラインであるので、焦点7がライン状に移動した軌跡に対応又は相当する。なお、ライン8としては、ライン81〜ライン8nまで単数ないし複数有しており、各ライン同士は平行な関係にある。
【0016】
さらにまた、Lはライン8における隣接又は近接したライン(81,82,・・・,8n)間の間隔を示している。該間隔Lは、特に制限されず、ラインの移動速度などにより決定することができる。間隔Lとしては、通常、5〜10μm程度の範囲から選択される場合が多い。なお、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設け、該シャッターを利用して、超短パルスレーザーによるレーザー光の光路を絶つことにより、ライン間隔を制御することができる。
【0017】
また、dは加工前プラスチック基材1の表面1aと、レーザー4の焦点7との距離である。従って、距離dは、加工前プラスチック基材1の表面1aからの深さに相当する。すなわち、ライン8は、加工前プラスチック基材1の表面1aからの深さがdである位置となっている。該距離dとしては、特に制限されず、加工前プラスチック基材1の厚さTに応じて適宜選択することができる。なお、距離dは、もちろん、加工前プラスチック基材1の厚さTよりも短く、厚さTの半分以下であっても、半分を越えていてもよい。
【0018】
具体的には、加工前プラスチック基材1にレーザー4が照射方向6の方向で照射されて、前記レーザー4の焦点位置及びその周辺部(近辺部)において、加工前プラスチック基材1中のエネルギー吸収物質が、レーザー4の照射エネルギーを吸収して、局部的に高温状態となり、その結果、プラスチック基材の構造に変化が生じて、光学機能性構造変化部2が形成される。そして、レーザー4の照射が終了されると、前記高温となった焦点位置及びその周辺部は冷却されて、前記構造が変化している状態が固定される。これにより、構造が変化した光学機能性構造変化部2と、構造が変化されておらず元の状態を保持している構造未変化部3とが形成されている。
【0019】
また、レーザー4の照射に際して、その焦点の位置を連続的に移動させているので、加工前プラスチック基材1の光学機能性構造変化部2が形成される部位も焦点位置の移動に応じて連続的に移動して、図1で示されているように、移動方向に延びて構造が変化した部位からなる光学機能性構造変化部2が形成されている。
【0020】
なお、図1では、レーザー4は、その焦点7を移動方向7aの向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状に移動させながら照射させている。従って、その結果として、焦点7をライン8上をライン状に移動方向7aの向きに移動させながら、レーザー4が照射されていることになる。前記移動方向7aは、照射方向6に対して垂直な方向であり、且つ加工前プラスチック基材1の表面1aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦点7の移動方向7aと平行であり、照射方向6とは垂直となっている。さらに、ライン8は、加工前プラスチック基材1の表面1aに対して平行な方向となっている。
【0021】
より具体的には、レーザー4を照射方向6の方向で、ライン8のうちいずれか1つのライン(ライン81とする)の一方の末端部に焦点7を合わせて、照射し、この焦点7を移動方向7aの方向にライン81上をライン状にライン81の他方の末端まで移動させる。その後、このライン81上の焦点7の移動方法と同様の方法により、レーザー4の焦点7を他のライン(ライン82とする)の一方の末端に合わせて他方の末端まで該ライン82上をライン状に移動させる。さらに、このような焦点をライン8のうちいずれか1つのラインの一方の末端に合わせて他方の末端まで移動させることを必要なだけ繰り返すことにより、プラスチック基材中の任意の部位に、光学機能性構造変化部2が形成される。
【0022】
このように、本発明では、レーザー4を加工前プラスチック基材1の表面や内部における任意の部位に焦点を合わせ、必要に応じて、図1で示されるように、その焦点を移動させて照射することにより、光学機能性構造変化部2を形成することができる。超短パルスレーザーの焦点位置の移動方向は、特に制限されず、如何なる方向であってもよい。例えば、レーザー4の照射方向6に対して、垂直な方向、平行な方向(レーザー4の照射方向と同一の方向又は反対の方向)、斜めの方向などが挙げられる。レーザー4の焦点位置は、何れかの方向のみに直線的に移動させることもでき、種々の方向に曲線的に移動させることもできる。また、レーザー4の焦点位置は、連続的又は間欠的に移動させることもできる。
【0023】
また、レーザー4の焦点7を移動方向7a(すなわち、照射方向6の方向に対して垂直となる方向)にライン状に移動させる際の該焦点7の移動速度としては、特に制限されず、例えば、10〜1,000,000μm/秒(好ましくは100〜10,000μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0024】
なお、加工前プラスチック基材の厚みが厚い場合などでは、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設けて、ライン走査中に、超短パルスレーザーによるレーザー光の光路を制御することにより、単位面積あたりのショット数を増加させることができ、これにより、前記のような場合でも、優れた精度で効率よくレーザー加工を行うことができる。
【0025】
また、加工前プラスチック基材1の厚みが厚い場合などでは、レーザー4の焦点7を、照射方向6の方向に対して垂直となる方向への移動を停止した状態で、Z軸方向(すなわち照射方向6)に焦点位置をずらしながら、上面(表面または一方の表面)から底面(裏面または他方の表面)に照射することによっても、光学機能性構造変化部を形成することができる。このようなZ軸方向への焦点の移動速度は、1〜5,000μm/秒(好ましくは10〜800μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。
【0026】
さらにまた、このレーザー4の焦点7のZ軸方向への移動(照射方向6の方向への移動)と、移動方向7aへの移動とを連動させる(組み合わせる)ことによっても、例えば、レーザー4の焦点7を移動方向7aには移動させずにZ軸方向に移動させた後、一旦照射を遮断し、Z軸方向復帰させた後、移動方向7aに移動させて照射を再開することを繰り返すことによっても、光学機能性構造変化部を形成することができる。
【0027】
このように、レーザーを、加工前プラスチック基材の任意の部位に焦点を合わせ、必要に応じて焦点を移動させながら照射することができるので、光学機能性構造変化部を、プラスチック基材に少なくとも部分的に形成することができ、特に、プラスチック基材中に3次元的に形成することも可能である。
【0028】
また、光学機能性構造変化部は、超短パルスレーザーの焦点を、該超短パルスレーザーの照射方向に対して平行な方向又は垂直な方向に移動させることにより、超短パルスレーザーの照射方向に対して平行又は垂直な方向にライン状に形成されていてもよく、この場合、光学機能性構造変化部における長手方向に対する垂直な面の断面の形状は、略円形または略四角形であることが好ましい。なお、光学機能性構造変化部が、超短パルスレーザーの照射方向に対して垂直な方向にライン状に形成されている場合、その長手方向に対する垂直な面の断面の形状は、超短パルスレーザー焦点を起点にして、照射方向に進行した略円形または略四角形であってもよく、具体的には、超短パルスレーザー焦点を中心とする円形ないし楕円形や、超短パルスレーザー焦点を短辺上に含み、照射方向に沿った長辺を有する略長方形などが挙げられる。
【0029】
本発明では、1つのプラスチック基材において、光学機能性構造変化部が形成される数は、特に制限されず、単数であってもよく、複数であってもよい。内部に複数の光学機能性構造変化部が形成されている場合では、適度な間隔を隔てて光学機能性構造変化部を積層したような積層構造とすることも可能である。1つのプラスチック基材の内部に複数の光学機能性構造変化部が設けられている場合、光学機能性構造変化部間の間隔は、任意に選択することができる。前記光学機能性構造変化部間の間隔は、5μm以上(例えば、5〜10μm)であることが好ましい。プラスチック基材の内部に設けられた光学機能性構造変化部間の間隔が5μm未満であると、光学機能性構造変化部の作製時に光学機能性構造変化部同士が融合して、独立した複数の光学機能性構造変化部とすることができない場合がある。
【0030】
なお、光学機能性構造変化部の大きさ、形状、構造の変化の程度などは、例えば、超短パルスレーザーの照射時間、超短パルスレーザーの焦点位置の移動方向やその速度、加工前プラスチック基材の材質の種類(特に、ポリマーの種類)、エネルギー吸収物質の種類やその含有量、超短パルスレーザーのパルス幅の大きさや照射エネルギーの大きさ、超短パルスレーザーの焦点を調整するためのレンズの開口数や倍率などにより適宜調整することができる。
【0031】
特に、本発明では、光学機能性構造変化部の大きさとしては、例えば、直径又は1辺の長さが1mm以下(好ましくは500μm以下)であってもよい。このように、光学機能性構造変化部の大きさが極めて小さくても、レーザーとして超短パルスレーザーを用いることにより、精密に光学機能性構造変化部を制御して作製することができる。
【0032】
なお、超短パルスレーザーの焦点の移動は、超短パルスレーザー及びレンズと、加工前プラスチック基材との相対位置を動かせることにより、例えば、超短パルスレーザー及びレンズ、及び/又は照射される加工前プラスチック基材を移動させることにより、行うことができる。具体的には、超短パルスレーザーの照射は、例えば、照射サンプル(加工前プラスチック基材)を、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができる精密なXYZステージに載せ、2次元又は3次元的に移動させることにより、サンプル任意の場所に行うことができる。また、XYZステージの移動を時間的に設定することにより、照射を3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0033】
また、超短パルスレーザーの照射装置にシャッターを設けることにより、超短パルスレーザーのレーザー光の光路や照射を精密に且つ容易に制御することができ、超短パルスレーザーによるレーザー加工性を高めることができる。
【0034】
このように、レーザー4を加工前プラスチック基材1の表面や内部に外部から照射して、必要に応じて焦点をライン状(照射方向に平行な又はプラスチック表面に垂直なライン状や、照射方向に垂直な又はプラスチック表面に平行なライン状など)に移動させることにより、加工前プラスチック基材1の表面や内部などの任意の部位に、3次元的であっても、光学機能性構造変化部2を形成することができる。
【0035】
(超短パルスレーザー)
本発明では、光学機能性構造変化部の形成の際に、パルス幅が10−12秒以下のレーザー(超短パルスレーザー)を用いている。このような超短パルスレーザーとしては、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−12秒以下のパルスレーザーなどを用いることができ、特に、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得られたパルス幅が10−12秒〜10−15秒のフェムト秒のオーダーのパルスレーザー(フェムト秒パルスレーザー)を好適に用いることができる。超短パルスレーザーとしては、なかでも、パルス幅が10×10−15秒〜500×10−15秒(特に50×10−15秒〜300×10−15秒)のパルスレーザーが好ましい。なお、超短パルスレーザーとしては、パルス幅が小さいものほど、容易に高い光強度が得られる点で好ましい。
【0036】
なお、このような超短パルスレーザーを用いた照射(特に、集光された超短パルスレーザーを用いた照射)では、多光子吸収反応(例えば、2光子吸収反応など)を生じさせることができる。具体的には、例えば、照射する超短パルスレーザーの波長を800nmとすると、集光していないレーザーを照射した際には、加工前プラスチック基材には何の変化も生じない場合であっても、集光されたレーザーを照射することにより、多光子の吸収(例えば、2光子の吸収、3光子の吸収、4光子の吸収、5光子の吸収など)が生じて、例えば、2光子吸収反応が生じた場合、照射する超短パルスレーザーの波長は、焦点付近では400nmとすることができ、超短パルスレーザーの波長強度を実質的に高めることができるようになる。
【0037】
このような多光子吸収反応は、レーザー光の強度やその集光の程度を適宜調整することにより、制御することができる。なお、多光子吸収の起こる確率は、光の強度に比例して増加し、また、強度が強くなる程、多光子の吸収が起こりやすくなる。
【0038】
なお、レーザーを集光させる方法としては、特に制限されず、例えば、集光レンズを用いる方法を好適に採用することができる。このような集光レンズとしては、特に制限されず、加工前プラスチック基材の素材(ポリマー成分)、エネルギー吸収物質(パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質)の種類、目的とする光学機能性構造変化部の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
【0039】
このように、多光子吸収過程を利用することにより、使用する超短パルスレーザー光の波長が、エネルギー吸収物質による吸収波長よりも長くても、前記加工前プラスチック基材に、光学機能性構造変化部を形成する加工を行うことができる。特に、多光子吸収過程を利用したレーザー加工により、微細加工を効率よく、しかも優れた精度で行うことが可能である。
【0040】
なお、多光子吸収過程を利用したレーザー加工とは、高密度の光子が存在する場合に、複数の光子が物質に同時に吸収され、本来、その1光子のエネルギーでは生じ得なかった現象を利用する加工を意味している。また、非線形現象を利用した加工であるので、光を用いているにもかかわらず、照射波長の回折限界を超える加工も可能である。
【0041】
超短パルスレーザーの波長は、特に制限されず、多光子吸収過程を利用することができるので、エネルギー吸収物質の吸収波長(吸収のピーク波長又はその領域)よりも長い波長であってもよく、加工前プラスチック基材中に含まれているエネルギー吸収物質の種類又はその吸収波長[吸収のピーク波長(特に、吸収のメインピーク波長)又はその領域]に応じて適宜選択することができる。具体的には、超短パルスレーザーの波長としては、例えば、紫外線領域〜近赤外線領域の領域内の波長であってもよい。具体的には、超短パルスレーザーの波長としては、1.2μm以下(例えば、200nm〜1200nm)であってもよく、1μm以下(400nm〜1000nm)であることが好ましい。
【0042】
なお、超短パルスレーザーの波長としては、加工前プラスチック基材中のエネルギー吸収物質の吸収波長(吸収する照射エネルギーのピーク波長)よりも長くてもよい。具体的には、超短パルスレーザーの波長(発振波長)としては、エネルギー吸収物質の吸収波長と同じ又は該波長付近の波長であってもよいが、エネルギー吸収物質の吸収波長のn倍波(nは2以上の整数;2倍波、3倍波など)となる波長又は該波長付近の波長であることが好ましい。
【0043】
また、超短パルスレーザーの繰り返しとしては、1Hzから100MHzの範囲で、通常は10Hzから500kHz程度である。
【0044】
加工前プラスチック基材に対して、内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、加工前プラスチック基材に照射する際に用いられる対物レンズの開口数(光源の絞り込み)、加工前プラスチック基材への照射位置又は焦点の深さ、レーザーの焦点の移動速度などに応じて適宜決めることができる。
【0045】
本発明では、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする光学機能性構造変化部の大きさや形状等に応じて適宜選択することができ、例えば、10,000mW以下(例えば、1〜1,000mW)、好ましくは5〜500mW、さらに好ましくは10〜300mW程度の範囲から選択することができる。
【0046】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的の光学機能性構造変化部の大きさやその形状、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0047】
なお、超短パルスレーザーの光線の焦点を絞って合わせるためにレンズを用いることができる。すなわち、超短パルスレーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用いる必要はない。このようなレンズの開口数(NA)は、特に制限されず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、通常は、倍率としては2.5〜100倍、開口数としては0.05〜0.95程度の範囲から選択される。
【0048】
本発明では、超短パルスレーザーは、単数で用いてもよく、複数で用いてもよい。すなわち、超短パルスレーザーを照射する際には、1光束で照射する方法や、多光束干渉で照射する方法を採用することができる。なお、多光束干渉で照射する方法とは、複数のレーザーを多方向から照射して、その交点又はその近傍に光学機能性構造変化部を形成するような光の干渉を利用して照射する方法を意味しており、一光束で照射する方法とは、前記のような光の干渉を利用せずに、単一のレーザー(単光源)で照射する方法を意味している。例えば、2光束干渉でレーザーを照射する方法としては、2台のレーザーを用いて照射する方法や、ビームスプリッター(例えば、ハーフミラー、プリズム、グレーティングなど)を用いて1台のレーザーによる光を分光して照射する方法などを採用することができる。
【0049】
(プラスチック基材)
プラスチック基材を構成する樹脂成分(ポリマー成分)としては、共重合体を含めた単一化学構造のポリマー材料からなるものだけでなく、異なる化学構造を有する複数のポリマー材料からなるポリマーアロイやポリマーブレンドも用いることができる。また、超短パルスレーザーの照射に使用されるプラスチック基材としては、無機化合物や金属などの他の材料を分散状態で含んだ複合体であってもよく、異なるプラスチックや他の材料からなる層を含んだ2以上の層構造からなる積層体であってもよい。
【0050】
具体的には、プラスチック基材を構成するポリマー成分としての前記ポリマー材料の代表的な例として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリレート系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリイミド(PI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリアミドイミド;ポリエステルイミド;ポリカーボネート(PC);ポリアセタール;ポリフェニレンエーテルなどのポリアリーレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリアリール;ポリスルホン(ポリサルホン);ポリエーテルスルホン(PES)(ポリエーテルサルホン);ポリウレタン類;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂;ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなどのポリエーテルケトン類;ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチルなどのポリアクリル酸エステル類;ポリブトオキシメチレンなどのポリビニルエステル類;ポリシロキサン類;ポリサルファイド類;ポリフォスファゼン類;ポリトリアジン類;ポリカーボラン類;ポリノルボルネン;エポキシ系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリイソプレンやポリブタジエンなどのポリジエン類;ポリイソブチレンなどのポリアルケン類;フッ化ビニリデン系樹脂、ヘキサフルオロプロピレン系樹脂、ヘキサフルオロアセトン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂などの樹脂(熱可塑性樹脂など)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ポリマー材料としては、光学素子材料の用途などに応じて適宜選択することができ、例えば、回折格子やマイクロレンズアレイ等の用途では、ポリマー材料としては、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネートなどを好適に用いることができる。
【0052】
本発明では、プラスチック基材は、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質(エネルギー吸収物質)を含有している。このようなエネルギー吸収物質としては、超短パルスレーザーの照射エネルギーを吸収することができる物質であれば特に制限されないが、超短パルスレーザーの照射エネルギーを吸収して、光異性化及び/又は光相転移を行うことが可能な物質が好適である。エネルギー吸収物質は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
具体的には、エネルギー吸収物質としては、例えば、非線形光学色素などを用いることができる。前記非線形光学色素としては、特に制限されず、公知の非線形光学色素(例えば、アゾ系非線形光学色素、ベンゼン系非線形光学色素、スチルベン系非線形光学色素、シアニン系非線形光学色素、ローダミン系非線形光学色素、ビフェニル系非線形光学色素、カルコン系非線形光学色素、シアノ桂皮酸系非線形光学色素など)を用いることができ、なかでもアゾ系非線形光学色素(特に、光異性体を有するアゾ系染料)を好適に用いることができる。前記光異性体を有するアゾ系染料としては、例えば、ニトロ基含有アゾベンゼン系色素である「Disperse Red 1(DR1)」の他、Disperse Red 13、Disperse Red 19、Disperse Yellow7、Disperse Orange 1、Disperse Orange25や、4−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2,2´−ジメチル−4´−ニトロアゾベンゼンなどが挙げられる。また、他の非線形光学色素としては、例えば、2,5−ジメチル−4−p−ニトロフェニルアゾアニソール、3−フルオロ−4−N,N−ジエチルアミノ−(E)−β−ニトロスチレン、N−2−ブチル−2,6−ジメチル−4H−ピリドン−4−インデンシアノメチルアセテート、4−ピペリディノベンジリデンマロノニトリル、4−メトキシ−2´−トリフルオロメチル−4´−ニトロスチルベン、4−N,N−ジエチルアミノ−(Z)−β−メチル−(E)−β−ニトロスチレン、4−N,N−ジエチルアミノ−(E)−シンナモニトリル、(E,E)−1−(4−N,N−ジエチルアミノフェニル)−4−ニトロブタジエン、1,3−ジメチル−2,2−テトラメチレン−5−ニトロベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0054】
プラスチック基材中におけるエネルギー吸収物質の含有割合としては、特に制限されないが、例えば、プラスチック基材を構成するポリマー成分全量に対して0.01〜10重量%程度の範囲から選択することができ、0.1〜3重量%(好ましくは0.3〜2重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%)程度であることが望ましい。エネルギー吸収物質の含有割合が、プラスチック基材を構成するポリマー成分全量に対して0.01重量%未満であると、光学素子機能を発揮する構造変化部の再形成(光学素子の再書き込み)が不十分であり、一方、10重量%を超えると、光学素子機能を発揮する構造変化部の消去(光学素子の消去)が不十分である。
【0055】
なお、エネルギー吸収物質は、ポリマー成分中に分散している状態で含まれていてもよく、ポリマー成分の高分子鎖の末端や側鎖として結合している状態で含まれていてもよい。
【0056】
エネルギー吸収物質としては、吸収する照射エネルギーのピーク波長(吸収波長)が600nm以下(例えば、200〜600nm、好ましくは350〜450nm)であるものを好適に用いることができる。エネルギー吸収物質は、吸収波長が、超短パルスレーザーの波長よりも短いものであってもよい。
【0057】
特に、エネルギー吸収物質としては、超短パルスレーザーの波長(発振波長)に吸収を有しておらず、二光子吸収や三光子吸収などの多光子吸収が生じた場合の波長に吸収を有しているものが好適である。すなわち、エネルギー吸収物質としては、吸収波長が、超短パルスレーザーの波長の1/n倍波(nは2以上の整数;1/2倍波、1/3倍波など)となる波長又は該波長付近の波長であるものが好適である。具体的には、超短パルスレーザーの発振波長が、例えば、800nmである場合、エネルギー吸収物質としては、吸収波長が400nm(二光子吸収の場合)や267nm(三光子吸収の場合)又はこれらの近傍であるものが好適である。
【0058】
プラスチック基材には、ポリマー成分およびエネルギー吸収物質の他、必要に応じて架橋剤、滑剤、静電防止剤、可塑剤、分散剤、安定剤、界面活性剤、充填剤(有機系充填剤や無機系充填剤等)などが含まれていてもよい。
【0059】
(光学機能性構造変化部の消去方法)
前述のように、超短パルスレーザー(パルス幅が10−12秒以下のレーザー)の照射により形成された光学機能性構造変化部は、加熱又は紫外線照射により、変化される前の構造に相当する構造(変化される前の構造又は該構造と同等の構造)に戻して消去することができる。このように、加熱又は紫外線照射により、プラスチック基材中のポリマー成分が熱的影響を受けて、プラスチック基材(特に、プラスチック基材全体)が高温状態となって、ポリマー成分の分子運動性が高まり、その結果、光学機能性構造変化部の構造が、変化される前の構造に相当する構造に戻り、光学機能性構造変化部が消失する。そして、加熱又は紫外線照射が終了されると、冷却されて、光学機能性構造変化部が消失され、構造が変化されておらず元の状態となっている状態に固定される。
【0060】
本発明では、光学機能性構造変化部の消去では、加熱や紫外線照射は、プラスチック基材全体に対して行ってもよい。なお、加熱や紫外線照射は、プラスチック基材に対して部分的に行うことも可能であり、例えば、プラスチック基材中の光学機能性構造変化部又はその近傍を含む部分のみに対して行うことにより、光学機能性構造変化部又はその近傍を含む部分のみの構造を元の状態に戻すことも可能である。
【0061】
光学機能性構造変化部の消去に際して、加熱を行う場合は、加熱温度としては、プラスチック基材を構成するポリマー成分の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、ポリマー成分のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+200)℃[好ましくはTg〜(Tg+100)℃]程度の範囲から選択することができる。また、加熱時間としては、特に制限されず、例えば、1〜30分(好ましくは3〜15分、さらに好ましくは5〜10分)程度の範囲から選択することができる。
【0062】
一方、光学機能性構造変化部の消去に際して、紫外線照射を行う場合は、紫外線の波長としては、プラスチック基材を構成するポリマー成分の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、250〜450nm(好ましくは300〜360nm)程度の範囲から選択することができる。また、紫外線の照射時間としては、特に制限されず、例えば、1〜30分(好ましくは3〜15分、さらに好ましくは5〜10分)程度の範囲から選択することができる。
【0063】
(再書き込み可能な光学素子材料)
本発明の再書き込み可能な光学素子材料は、前述のように、超短パルスレーザーの照射と、加熱又は紫外線照射とを利用することにより、光学機能性構造変化部の形成及び消失が可逆的に可能な構成を有している。具体的には、超短パルスレーザーの照射により、プラスチック基材の構造を変化させることができ、また、この変化された構造を、加熱又は紫外線照射により、変化される前の構造に相当する構造(変化される前の構造又は該構造と同等の構造)に戻すことができる構成を有しており、その結果、光学機能性構造変化部の形成および消去を可逆的に行うことができる構成を有している。もちろん、光学機能性構造変化部を消去した後、超短パルスレーザーを照射することにより、再度、光学機能性構造変化部を任意の部位に形成することができる。
【0064】
このように、再書き込み可能な光学素子材料は、プラスチック基材から構成されているにもかかわらず、光学素子機能を優れた安定性で発揮させることができ、しかも、光学機能性構造変化部を消失させた後に、再度光学機能性構造変化部を任意の部位に形成することができる。すなわち、本発明の光学素子材料は、再書き込み(または書き換え)が可能である。
【0065】
また、光学機能性構造変化部の形成時(すなわち、書き込み時)には、超短パルスレーザーを用いているので、光学機能性構造変化部をプラスチック基材に少なくとも部分的に形成することができ、光学素子機能(回折格子機能など)を有効に発揮することができる。しかも、光学機能性構造変化部を、プラスチック基材の任意の部位に(特に、3次元的に)形成することが可能であり、より一層優れた光学素子機能を効果的に発揮させることができる。
【0066】
このような光学機能性構造変化部としては、例えば、構造の変化により屈折率が変調した屈折率変調部が好ましく、なかでも、光異性化及び/又は光相転移に伴う屈折率の変化によって形成された屈折率変調部が好適である。前記光異性化や光相転移としては、エネルギー吸収物質として、超短パルスレーザーの照射エネルギーを吸収することにより光異性化や光相転移するものを用いることにより生じる光異性化や光相転移が挙げられる。
【0067】
本発明の再書き込み可能な光学素子材料は、光学素子機能を発揮する構造変化部の形成及び消失が可逆的に可能な構成を有しているので、各種光学素子材料(例えば、回折格子材料)として利用することができる。具体的には、再書き込み可能な光学素子材料は、各種光機能部材の材料(特に、光スイッチング材料、光記録材料、ホログラム記録材料など)として好適に用いることができる。具体的には、例えば、再書き込み可能な光学素子材料を光記録材料として用いた場合、超短パルスレーザーの照射により、情報(データ)を書き込んで記録させることができ、また、加熱又は紫外線照射により、書き込んだ記録情報を消去させることができ、さらに、超短パルスレーザーの照射により、再度、情報を書き込んで記録させることができる。なお、情報(データ)の書き込みによる記録とは、構造を変化させて構造変化部を形成することを意味しており、書き込んだ記録情報の消去とは、前記変化させた構造を元の状態に相当する構造に戻すことを意味している。
【0068】
特に、3次元的に、光学素子機能を発揮する構造変化部を形成することができるので、光記録材料(例えば、光学メモリーなど)として用いた場合、多層的に情報を書き込んで記録させることができ、従って、記録容量の増大を効果的に図ることが可能である。
【0069】
しかも、本発明の再書き込み可能な光学素子材料では、光学素子機能を発揮する構造変化部の形成時には、プラスチック基材を構成するポリマー成分に対して熱影響がない又は少ない超短パルスレーザーを用いているので、プラスチック材料により構成されているにもかかわらず、優れた安定性で、光学素子機能を発揮する構造変化部を形成することができる。また、その精度も優れている。従って、再書き込み可能な光学素子材料を安価に製造することができる。さらに、プラスチック材料により形成されているので、柔軟性を有しており、目的とする各種形状に容易に成形加工することができる。もちろん、任意の加工のみならず、任意の処理を施すこともできる。
【0070】
また、本発明の再書き込み可能な光学素子材料は、プラスチック材料により構成されているので、軽量であり(例えば、ガラス材料からなるフォトクロミック材料より軽量であり)、そのため、該再書き込み可能な光学素子材料を用いた光機能部材も軽量にすることができる。
【0071】
本発明の再書き込み可能な光学素子材料は、そのまま光学素子材料の部材として用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよい。例えば、他の部材と組み合わせることにより、集積回路として機能させることができる。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
ポリマー成分としてのポリメチルメタクリレート(PMMA)に、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質(エネルギー吸収物質)としてのDisperse Red 1(DR1)を、PMMA全量に対して1重量%の割合でドープさせて、キャストフィルム(厚み300μm;「サンプルA」と称する場合がある)を作製した。前記サンプルAの上面から深さが約30μmである内部の位置を焦点にして、チタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ(倍率:10倍)を使用して、超短パルスレーザー(照射波長:780nm、パルス幅:150×10−15秒、繰り返し:1kHz)を、照射エネルギー(平均出力):0.2μJ/pulse、照射スポット径:約5μmの条件で、レーザーの照射方向(図1のZ軸方向)に垂直な方向(図1のY軸方向)にサンプルAを移動速度:約100μm/秒で移動させながら、焦点を合わせ始めた位置からの距離3mmの長さでライン照射したところ、サンプルAの内部に、超短パルスレーザーの照射を開始した焦点位置(照射開始位置)から、照射を止めた焦点位置(照射終了位置)にかけて、元のサンプルAとは異なる構造を有する構造変化部が形成されていた。
【0074】
その後、前記構造変化部を有するサンプルAに、紫外線照射を数十秒間行ったところ、前記構造変化部の消失が観察された。
【0075】
(実施例2)
ポリマー成分としてのポリメチルメタクリレート(PMMA)に、エネルギー吸収物質としてのアゾ系色素[4−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2,2´−ジメチル−4´−ニトロアゾベンゼン;合成品]を、PMMA全量に対して1重量%の割合でドープさせて、キャストフィルム(厚み300μm;「サンプルB」と称する場合がある)を作製した。また、前記サンプルBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、超短パルスレーザーを照射したところ、実施例1の場合と同様に、サンプルBの内部に、超短パルスレーザーの照射を開始した焦点位置(照射開始位置)から、照射を止めた焦点位置(照射終了位置)にかけて、元のサンプルBとは異なる構造を有する構造変化部が形成されていた。
【0076】
その後、前記構造変化部を有するサンプルBに、紫外線照射を数十秒間行ったところ、前記構造変化部の消失が観察された。
【0077】
(実施例3)
ポリマー成分としてのアクリル系共重合体[メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート・エチルアクリレート(BA・EA)のブロック共重合体、組成比:MMA/BA・EA=70/30(重量平均分子量比)、ガラス転移温度:約−30℃並びに105℃、重量平均分子量:83,000]に、エネルギー吸収物質としてのDisperse Red 1(DR1)を、アクリル系共重合体全量に対して1重量%の割合でドープさせて、キャストフィルム(厚み300μm;「サンプルC」と称する場合がある)を作製した。また、前記サンプルCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、超短パルスレーザーを照射したところ、実施例1の場合と同様に、サンプルCの内部に、超短パルスレーザーの照射を開始した焦点位置(照射開始位置)から、照射を止めた焦点位置(照射終了位置)にかけて、元のサンプルCとは異なる構造を有する構造変化部が形成されていた。
【0078】
その後、前記構造変化部を有するサンプルCに、紫外線照射を数十秒間行ったところ、前記構造変化部の消失が観察された。
【0079】
【発明の効果】
本発明の再書き込み可能な光学素子材料によると、プラスチック基材が用いられていても、優れた安定性で光学素子機能を発揮することができる。特に、3次元的に書き込みが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質を含有するプラスチック基材に、光学素子機能を発揮する構造変化部を形成する方法の一例を示す概略鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 加工前プラスチック基材
11 加工後プラスチック基材
1a 加工前プラスチック基材1の上面
2 光学素子機能を発揮する構造変化部
3 光学素子機能を発揮しない構造未変化部
4 パルス幅が10−12秒以下のレーザー
5 レンズ
6 レーザー4の照射方向
7 レーザー4の焦点
7a レーザー4の焦点7の移動方向
8 レーザー4の焦点7をライン状に移動させる際のライン
T 加工前プラスチック基材1の厚さ
L ライン8における隣接又は近接したライン間の間隔
d 加工前プラスチック基材1の表面1aとレーザー4の焦点7との距離
Claims (8)
- パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質を含有するプラスチック基材により構成され、且つ、プラスチック基材に少なくとも部分的に光学素子機能を発揮する構造変化部を形成することが可能な光学素子材料であって、前記構造変化部を、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射により、プラスチック基材の構造を変化させて形成することができるとともに、加熱又は紫外線照射により、変化される前の構造に相当する構造に戻して消去することができる構成を有していることを特徴とする再書き込み可能な光学素子材料。
- 構造変化部を、プラスチック基材に少なくとも部分的に且つ3次元的に形成することが可能である請求項1記載の再書き込み可能な光学素子材料。
- 構造変化部の形成の際に用いられるパルス幅が10−12秒以下のレーザーが、集光されたレーザーである請求項1又は2記載の再書き込み可能な光学素子材料。
- 構造変化部の形成の際に用いられるパルス幅が10−12秒以下のレーザーの波長が1.2μm以下であり、且つ、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの照射エネルギーを吸収する物質が吸収する照射エネルギーのピーク波長が600nm以下である請求項1〜3の何れかの項に記載の再書き込み可能な光学素子材料。
- 構造変化部が、光異性化及び/又は光相転移に伴う屈折率の変化によって形成された屈折率変調部である請求項1〜4の何れかの項に記載の再書き込み可能な光学素子材料。
- 光スイッチング材料、光記録材料、ホログラム記録材料として利用可能である請求項1〜5の何れかの項に記載の再書き込み可能な光学素子材料。
- 構造変化部が、パルス幅が10−12秒以下のレーザーの焦点を、該レーザーの照射方向に対して平行な方向又は垂直な方向に移動させることにより、レーザーの照射方向に対して平行又は垂直な方向にライン状に形成されている請求項1〜6の何れかの項に記載の再書き込み可能な光学素子材料。
- 構造変化部における長手方向に対する垂直な面の断面の形状が、略円形または略四角形である請求項7記載の再書き込み可能な光学素子材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003141353A JP2004347642A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | 再書き込み可能な光学素子材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003141353A JP2004347642A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | 再書き込み可能な光学素子材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004347642A true JP2004347642A (ja) | 2004-12-09 |
Family
ID=33529726
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003141353A Pending JP2004347642A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | 再書き込み可能な光学素子材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004347642A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005109407A1 (ja) * | 2004-05-07 | 2005-11-17 | Kyoto University | 固形担体に担持させた有機分子の多光子イオン化方法 |
WO2012008292A1 (ja) * | 2010-07-13 | 2012-01-19 | 富士フイルム株式会社 | 光情報記録媒体 |
WO2012008289A1 (ja) * | 2010-07-13 | 2012-01-19 | 富士フイルム株式会社 | 光情報記録媒体および光情報記録方法 |
-
2003
- 2003-05-20 JP JP2003141353A patent/JP2004347642A/ja active Pending
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005109407A1 (ja) * | 2004-05-07 | 2005-11-17 | Kyoto University | 固形担体に担持させた有機分子の多光子イオン化方法 |
WO2012008292A1 (ja) * | 2010-07-13 | 2012-01-19 | 富士フイルム株式会社 | 光情報記録媒体 |
WO2012008289A1 (ja) * | 2010-07-13 | 2012-01-19 | 富士フイルム株式会社 | 光情報記録媒体および光情報記録方法 |
JP2012022737A (ja) * | 2010-07-13 | 2012-02-02 | Fujifilm Corp | 光情報記録媒体 |
JP2012022734A (ja) * | 2010-07-13 | 2012-02-02 | Fujifilm Corp | 光情報記録媒体および光情報記録方法 |
CN102985974A (zh) * | 2010-07-13 | 2013-03-20 | 富士胶片株式会社 | 光学信息记录介质和光学信息记录方法 |
CN102985972A (zh) * | 2010-07-13 | 2013-03-20 | 富士胶片株式会社 | 光学信息记录介质 |
US8526291B2 (en) | 2010-07-13 | 2013-09-03 | Fujifilm Corporation | Optical information recording medium |
US8670296B2 (en) | 2010-07-13 | 2014-03-11 | Fujifilm Corporation | Optical information recording medium and optical information recording method |
CN102985974B (zh) * | 2010-07-13 | 2016-04-06 | 富士胶片株式会社 | 光学信息记录介质和光学信息记录方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8808944B2 (en) | Method for storing holographic data | |
US6867408B1 (en) | Erasable/rewritable optical data storage with photorefractive polymers | |
Saini et al. | Threshold response using modulated continuous wave illumination for multilayer 3D optical data storage | |
Gu et al. | The road to multi-dimensional bit-by-bit optical data storage | |
JP2961126B2 (ja) | 三次元光メモリーガラス素子からなる記録媒体及びその記録方法 | |
JP3868713B2 (ja) | 超短光パルスによりガラス中に作製した三次元光メモリー素子のデータの書き換え方法 | |
US8102742B2 (en) | Optical information recording medium, optical information recordng apparatus, and optical information recording method | |
WO2012008292A1 (ja) | 光情報記録媒体 | |
Shiono et al. | Two-photon absorption recording in photochromic diarylethenes using laser diode for three-dimensional optical memory | |
JP2005084617A (ja) | 多光子吸収露光方法および装置 | |
JP2004347642A (ja) | 再書き込み可能な光学素子材料 | |
JP2009536419A (ja) | 光学メモリ、該光学メモリの読み出し及び書き込みを行うための方法、並びに該光学メモリの読み出し及び書き込みを行うための装置 | |
JP4417675B2 (ja) | 多光子吸収媒体およびそれを用いた露光方法 | |
JP2007080312A (ja) | 光記録媒体とその作製方法 | |
Seet et al. | Nanofabrication by direct laser writing and holography | |
Mai et al. | Multiwavelength photochromic storage system and experiment | |
JP2004047053A5 (ja) | ||
Hong et al. | Three dimensional optical storage by use of ultrafast laser | |
Mai et al. | Writing process of multiwavelength photochromic storage | |
Chon et al. | Plasmonic nanorod-based optical recording and data storage | |
Watabe et al. | Behavior of GeSbTeBi phase-change optical recording media under subnanosecond pulsed laser irradiation | |
Dvornikov et al. | Studies of new nondestructive read-out media for two-photon 3D high-density storage | |
Ryan | Three dimensional optical data storage in polymeric systems | |
JP2009258422A (ja) | 光記録媒体及び光記録媒体の製造方法 | |
JP2011170969A (ja) | 光情報記録媒体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20051114 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080730 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080918 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081014 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081112 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20090130 |
|
A912 | Removal of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20090403 |