JP2004346741A - 圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】密閉型回転圧縮機では、信頼性および冷凍サイクルの高効率化の観点から、油分離効率を向上して密閉容器外への冷凍機油の吐出を極力抑える必要がある。
【解決手段】導入端子34に装着するクラスタ35を、当該クラスタ中心軸に対して軸対称形状とし、そのクラスタ35の中心軸を回転電動機部の回転中心軸Lとほぼ一致するように密閉容器1内の上部中央に配設する構成として、回転子12の高速回転によって密閉容器1内の上部空間19に誘起された作動流体の旋回流れを、クラスタ35の周りにも誘起し、その旋回流れの遠心力によって作動流体に含むオイルミストを分離して、密閉容器1の側面部に貫通設置した吐出管33から密閉容器1外に吐出する冷凍機油の量を低減する。
【選択図】 図1
【解決手段】導入端子34に装着するクラスタ35を、当該クラスタ中心軸に対して軸対称形状とし、そのクラスタ35の中心軸を回転電動機部の回転中心軸Lとほぼ一致するように密閉容器1内の上部中央に配設する構成として、回転子12の高速回転によって密閉容器1内の上部空間19に誘起された作動流体の旋回流れを、クラスタ35の周りにも誘起し、その旋回流れの遠心力によって作動流体に含むオイルミストを分離して、密閉容器1の側面部に貫通設置した吐出管33から密閉容器1外に吐出する冷凍機油の量を低減する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機、冷凍冷蔵庫や空調機等に用いられる冷媒用密閉型回転圧縮機に関し、特に油分離構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
密閉型回転圧縮機は、圧縮機に回転電動機が内蔵されておりヒートポンプシステムが構成しやすく、構成が簡単になる等の観点から、ヒートポンプ式給湯機、冷凍冷蔵庫および空調機等に多く用いられている。ロータリ圧縮機やスクロール圧縮機等の密閉型回転圧縮機の構成については非特許文献1に記載されている。
以下に、密閉型回転圧縮機の構成を、ロータリ圧縮機を例に図6、図7および図8を用いて説明する。図6は、従来の圧縮機の縦断面図、図7は、従来の圧縮機の導入端子と回転電動機部の固定子からのリード線を接続するクラスタの斜視図である。
図に示す圧縮機は、密閉容器1と、偏心部2aを有するシャフト2,シリンダ3,ローラ4,ベーン7,バネ8,上軸受9,下軸受10等から成り密閉容器1の内部の下方に配置された圧縮機構部と、上下端側にそれぞれ設けられたコイルエンド11b,11dを有する固定子11,回転子12等から成り密閉容器1の上方に配置された回転電動機部とから構成される。
そして、固定子11の外周側には、作動流体の流路とするための複数の切欠き11aが設けられている。密閉容器1の上部には、密閉容器1の内部の回転電動機部に通電するための導入端子13と、密閉容器1の内部から作動流体を冷凍サイクルに導く吐出管14が設けられている。この導入端子13には、回転電動機部の固定子11からのリード線25を接続するほぼ直方体形状のクラスタ26を装着し、回転電動機部に通電する構成としている。また、吐出管14は、垂直に密閉容器1の内部に貫通しており、その吸入口14aが回転電動機部の固定子11や回転子12と接触しないように、固定子11上端側のコイルエンド11bよりも上側に位置する。また、密閉容器1の側面部には、作動流体を冷凍サイクルから圧縮機に導く吸入管15が設けられている。密閉容器1の底部の油溜り16には、冷凍機油が貯留される構成となっている。
上記構成の圧縮機の動作について説明する。圧縮機の回転電動機部に通電して回転子12を回転させると、偏心部2aによりローラ4は偏心回転運動を行い、シリンダ3内に形成された吸入室5と圧縮室(図示せず)の容積が変化する。これに伴って作動流体は、吸入管15から流路9aを経て吸入室5に吸入され、圧縮室にて圧縮される。圧縮された作動流体は、油溜り16から供給され、圧縮機構部を潤滑した冷凍機油の霧滴(以下、オイルミスト)を混合した状態で、吐出孔9bを経て回転電動機部の下部空間17に吐出され、固定子11の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18を通過して、回転電動機部の上部空間19に流れる。
そして、作動流体は吐出管14から吐出されるが、同時に作動流体に混合した冷凍機油も吐出されてしまう。そのため圧縮機では、圧縮機の信頼性および冷凍サイクルの高効率化の観点から、油を分離して密閉容器1の外部への冷凍機油の吐出を抑えている。
この作動流体から冷凍機油の分離を行う構成としては、例えば特許文献1に示されているように、回転子12の上部に設けた油分離板を用いる方法がある。図8に油分離板の周辺の詳細断面図を示す。回転子12には、永久磁石20の挿入孔を閉塞する上側端板21aおよび下側端板21bが具備されると共に、回転子12に上下方向に貫通形成された複数の貫通孔12aと、貫通孔12aの出口の上方に配され回転子12の上面との間に油分離空間22を形成する油分離板23とが、固定部材24によって回転子12に固定されている。
このように構成された圧縮機では、圧縮機構部から回転電動機部の下部空間17に吐出されたオイルミストを含む作動流体の一部は、回転子12に設けられた貫通孔12aを通って油分離空間22に流入する。そして、ここで遠心力により油分離板23の外周出口から作動流体を放射状に吐出し、固定子11のコイルエンド11bに吹き付けられて作動流体とこれに含まれたオイルミストが分離される。そして、油を分離した作動流体だけが上昇して、密閉容器1内の上部に設けられた吐出管14から外部へ吐出される。一方、固定子11のコイルエンド11bに付着した冷凍機油は下方へ伝わって落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16へ戻される。
【0003】
【非特許文献1】
「冷凍空調便覧、新版第5版、II巻 機器編」、日本冷凍協会、平成5年、第30項〜第43項
【特許文献1】
特開平8−28476号公報(第6項、図1〜図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の圧縮機では、回転電動機部の下部空間17から上部空間19への作動流体の流れは、固定子11の外周側の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18、あるいは、図8のように構成される圧縮機の場合は回転子12の貫通孔12aを通過していた。このうち、固定子11と回転子12の隙間18は、回転電動機部の効率の観点から通常0.5mm程度の狭い幅であり、しかも回転子12が高速で回転しているため、ここを流れる作動流体の割合は非常に少ない。また、回転子12の貫通孔12aについても、回転子12の積層鉄芯の断面積が減り磁気回路が狭くなると、回転電動機部の効率が低下するため大きくできない。従って、固定子11の切欠き11aを通過する作動流体の割合が非常に多くなる。
この固定子11の切欠き11aを通過したオイルミストを含有する作動流体は、密閉容器1の壁面に沿って回転電動機部の上部空間19に流入した後、回転電動機部の回転子12の回転により誘起される旋回流れとなり、作動流体と冷凍機油の密度差により遠心分離される。しかしながら、上部空間19内に設置しているクラスタ26が細長い直方体形状であり、密閉容器1の軸中心からずれて設置されているため、回転子12の回転により誘起される上部空間19内の、回転中心軸Lを中心とする旋回流れを邪魔する作用が生じる。そのため、旋回流れの流速が遅く、かつ不均一となる。従って、作動流体と冷凍機油の分離が不十分であった。
また、図8に示すように、回転子12に上下方向に貫通形成された複数の貫通孔12aを設けた場合でも、貫通孔12aを通過する作動流体からの油分離しかできず、特に流量の多い固定子11の外周側の切欠き11aを通過する作動流体からの油分離が課題であった。
更に、従来の圧縮機を、二酸化炭素を主成分とした自然冷媒を作動流体として用いる冷凍サイクルに適用した場合、圧縮室から吐出される作動流体の圧力が臨界圧力を越えるため、密閉容器1の内部の作動流体は超臨界状態となり、作動流体に対する冷凍機油の溶解量が増加すること、および吸入室5と密閉容器1内の差圧が増大するため吸入室5に流入する冷凍機油の流量が増大し作動流体に混合する冷凍機油の混合割合が増加すること等のため、特に密閉容器1の内部での油分離が課題であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためのものであり、回転電動機部の効率を低下させることなく、簡易かつ低コストに油分離効率を高めて、密閉容器の外部に持ち出される冷凍機油の量を低減し、圧縮機の信頼性を向上させ、高効率の冷凍サイクルを得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明の圧縮機は、密閉容器内に、作動流体を圧縮する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する回転電動機部と、前記回転電動機部に電力を供給する導入端子と、前記導入端子に前記回転電動機部からのリード線を接続するクラスタとを備え、前記圧縮機構部を前記回転電動機部よりも下方に配置し、前記密閉容器内の下部に冷凍機油を貯留する油溜りを、前記密閉容器内の上部に前記導入端子及び前記クラスタをそれぞれ設け、前記圧縮機構部から吐出される作動流体を、前記回転電動機部と前記密閉容器との隙間から前記密閉容器の上部空間に導き、当該上部空間に設けた吐出管から前記密閉容器外に吐出する構成とした圧縮機であって、前記クラスタを軸対称形状とし、前記クラスタの中心軸が前記回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記クラスタを、円柱形状としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記クラスタを、多角柱形状としたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記吐出管を、前記密閉容器の上部側の側面部に設け、前記吐出管の密閉容器内開口端を、前記密閉容器の内壁面よりも突出させたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の圧縮機において、前記密閉容器内の吐出管を、前記クラスタの下面よりも下方に設置したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4に記載の圧縮機において、前記密閉容器を、上シェル、胴シェル、及び下シェルから構成し、少なくとも前記上シェルは前記胴シェルに溶接によって接合される構成とし、前記導入端子を前記上シェルの中央部に設置し、前記吐出管を前記上シェルの側面部に貫通設置したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記回転電動機部を、前記密閉容器の内部に焼嵌めされた固定子と、前記固定子の内周部で回転する回転子とより構成し、前記クラスタの外径を前記固定子のコイルエンド内径より小さくしたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記クラスタを、装着隙間が生じないように前記導入端子に設置したことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記密閉容器の内径寸法を、前記クラスタの外径寸法の3倍以下としたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記作動流体として、二酸化炭素や炭化水素などの自然冷媒を用いたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態による圧縮機は、クラスタを軸対称形状とし、クラスタの中心軸が回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けたものである。本実施の形態によれば、回転電動機部の高速回転によって密閉容器の上部空間には旋回流れが誘起されるが、軸対称形状としたクラスタを回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けているため、クラスタの周辺でも旋回流れが誘起される。従って、作動流体とともに密閉容器の上部空間に導かれたオイルミストは、旋回流れによって遠心分離され、密閉容器内壁面に付着し、付着したオイルミストは油滴となって下方に流れ落ちるため、冷凍機油が作動流体とともに吐出管から吐出されることを防止することができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、クラスタを円柱形状としたものである。本実施の形態によれば、クラスタ周辺での旋回流れの誘起作用を高めることができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、クラスタを多角柱形状としたものである。本実施の形態によれば、多角形状の側面が障害物となり、この側面に沿って下向きの流れを生じる。従って、オイルミストを油滴とし下方に落下させる効果を高め、冷凍機油が作動流体とともに吐出管から吐出されることを防止することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、吐出管を、密閉容器の上部側の側面部に設け、吐出管の密閉容器内開口端を、密閉容器の内壁面よりも突出させたものである。本実施の形態によれば、吐出管の密閉容器内開口端を、密閉容器の内壁面よりも突出させることで、密閉容器内壁面に付着したオイルミストが吐出管に流れ込むことを防止でき、旋回流れの中央部付近の、オイルミストが十分に分離された作動流体を吐出管内に導くことができる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による圧縮機において、密閉容器内の吐出管を、クラスタの下面よりも下方に設置したものである。本実施の形態によれば、上部側空間に流入した作動流体の流れが、クラスタ側面に遮られて、直接、吐出管に流入することをなくすことができる。
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による圧縮機において、密閉容器を、上シェル、胴シェル、及び下シェルから構成し、少なくとも上シェルは胴シェルに溶接によって接合される構成とし、導入端子を上シェルの中央部に設置し、吐出管を上シェルの側面部に貫通設置したものである。本実施の形態によれば、導入端子や吐出管をあらかじめ上シェルに設けておき、一方圧縮機や回転電動機をあらかじめ胴シェルに設けておくことができるため、圧縮機の組み立て作業が容易となる。
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、回転電動機部を、密閉容器の内部に焼嵌めされた固定子と、固定子の内周部で回転する回転子とより構成し、クラスタの外径を固定子のコイルエンド内径より小さくしたものである。本実施の形態によれば、流れの空間が拡大し、コイルエンド内側の空間の旋回流れが、クラスタ周辺の旋回流れに発展成長しやすい。
本発明の第8の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、クラスタを、装着隙間が生じないように導入端子に設置するものである。本実施の形態によれば、上部側空間に流入した作動流体の流れが、クラスタと導入端子の装着隙間を通過してしまい、旋回流れを乱すことがなくなる。
本発明の第9の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、密閉容器の内径寸法を、クラスタの外径寸法の3倍以下としたものである。本実施の形態によれば、密閉容器とクラスタとの径方向隙間が、クラスタの外径と同程度以下であれば、一層、クラスタの周りの旋回流れを促進することが可能となるため、油分離効率を高めることができる。
本発明の第10の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、作動流体として、二酸化炭素や炭化水素などの自然冷媒を用いたものである。本実施の形態のように自然冷媒を用いることができ、例えば可燃性冷媒である炭化水素冷媒を用いた小型圧縮機に対しても、冷凍機油の吐出量の削減が容易となる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明のいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例における圧縮機の縦断面図であり、図2は、図1に示す圧縮機のX―X矢視の横断面図であり、図3は、図1に示す圧縮機のY―Y矢視の横断面図であり、図4は、図1に示す圧縮機のZ―Z矢視の横断面図である。なお、本発明の第1の実施例における圧縮機は、前述した従来の圧縮機とほぼ同様な構成であり、同一機能部品については同一符号を適用する。
第1の実施例の圧縮機は、密閉容器1と、その密閉容器1の内部の下方に配置された圧縮機構部と、その上方に配置された回転電動機部とから構成される。圧縮機構部は、回転中心軸Lを中心に回転可能なシャフト2と、内部に円筒面3aを有するシリンダ3と、シャフト2の偏心部2aに嵌合され、シャフト2の回転に伴いシリンダ3の内側で偏心回転運動を行うローラ4と、ローラ4に先端を接しながらシリンダ3のベーン溝3bの内部を往復運動し、シリンダ3とローラ4により形成される空間を吸入室5と圧縮室6に分割するベーン7と、ベーン7の背面に設置され、ベーン7をローラ4に押し付けるバネ8と、シャフト2を支える上軸受9および下軸受10とから構成される。上軸受9は、吸入管15に接続され、その吸入管15から吸入した作動流体を吸入室5に導入する流路9aと、圧縮室6で圧縮された作動流体を回転電動機部の下部空間17に吐出する吐出孔9bとを有する。
【0009】
回転電動機部は、密閉容器1の内部に焼嵌めされた固定子11と、シャフト2に焼嵌めされて固定子11の内周部で回転する回転子12とから構成される。この固定子11には、その上端側にコイルエンド11bと、下端側にコイルエンド11dとが設けられている。また、固定子11の外周側には、下部空間17と上部空間19とを連通し、作動流体の流路となる複数の切欠き11aが設けられている。そして、密閉容器1の底部の油溜り16には冷凍機油が貯留される構成となっている。
【0010】
一方、密閉容器1は、上シェル30、胴シェル31、下シェル32の3つの要素で構成し、溶接で密閉容器1を形成している。そして、上シェル30の中央部には、密閉容器1内の回転電動機部に通電するための導入端子34を設置する。この導入端子34には、密閉容器1内で円柱形状のクラスタ35を装着隙間がほぼ生じないように装着し、リード線25を通して回転電動機部の固定子11に通電している。この円柱形状のクラスタ35は、その中心軸が回転電動機部の回転中心軸Lとほぼ一致するように密閉容器内の上部中央に設けられている。そして、クラスタ35の外径は、固定子11上端側のコイルエンド11bの内径より小さく構成している。
さらに、密閉容器1(上シェル30)の上部側の側面部には、密閉容器1内の上部空間19から作動流体を密閉容器1外の冷凍サイクルに導く吐出管33が設けられている。この吐出管33は、上シェル30の側面部から密閉容器1の内部まで貫通するように、かつ吐出管33の位置がクラスタ35の下面より低くなるように形成している。また、吐出管33の密閉容器内開口端としての吸入口33aを、密閉容器1の内壁面よりも突出させた構成とする。
そして、作動流体には自然冷媒である二酸化炭素冷媒を用いている。なお、本実施例では、従来技術と同様な油分離板方法の回転子12の貫通孔12a(図8参照)は設けていない。
【0011】
次に、上記構成の圧縮機の動作について説明する。作動流体は、吸入管15から上軸受9に設けられた流路9aを通じて吸入室5に導かれる。回転電動機部に通電し、回転子12と一体のシャフト2を回転させると、ローラ4は偏心回転運動を行い、吸入室5と圧縮室6の容積が変化し、これに伴い作動流体は吸入、圧縮される。圧縮された作動流体は、吐出孔9bの吐出弁(図示せず)が開くと、油溜り16から供給され圧縮機構部を潤滑したオイルミストを混合した状態で、回転電動機部の下部空間17に吐出される。この下部空間17内の作動流体は、回転電動機部と密閉容器1との隙間としての固定子11の外周側の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18(エアギャップ)を通過して、回転電動機部の上部空間19に流れる。そして、作動流体は、上部空間19で冷凍機油を分離し、吐出管14から吐出される。
【0012】
この油分離動作について説明する。前述のように、圧縮機構部から回転電動機部の下部空間17に吐出されたオイルミストを含む作動流体は、固定子11の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18を通過して、回転電動機部の上部空間19に流入する。このとき、隙間18は非常に狭いので、固定子11の切欠き11aを通過する作動流体の割合が非常に多くなる。
この固定子11の切欠き11aを通過したオイルミストを含有する作動流体は、密閉容器1(胴シェル31、上シェル30)の壁面に沿って回転電動機部の上部空間19に流入した後、上シェル30の中央部に設置したクラスタ35の側面に沿って、コイルエンド11bの内側空間に向かう下向きの流れを生じる。
【0013】
一方、回転電動機部の回転子12は高速回転しているため、作動流体の下向きの流れには回転子12の上面12bによるせん断力が作用し、回転子12の回転中心軸Lを中心とする旋回流れが誘起される。このとき、クラスタ35の形状が回転中心軸Lに軸対称の円柱形状であるため、クラスタ35周りの旋回流れが一層誘起されやすくなり、旋回流れの流速が一様に早くなる。このため、作動流体と冷凍機油はその密度差により遠心分離され、オイルミストは旋回流れの外周部に移動し、上シェル30内壁面に付着し油滴となる。そして、この油滴は、下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
また、固定子11上端側のコイルエンド11bの内側空間まで流入したオイルミストを含む作動流体は、コイルエンド11bの内側空間内を旋回して流れて、遠心力によりオイルミストを分離し、そのオイルミストは、コイルエンド11bの内周面に付着し、油滴となり下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
【0014】
更に、オイルミストが分離された作動流体は、密閉容器1の内壁面から離れた旋回流れの中央部近傍寄りの領域を流れている。そこで、本実施例では、吸入口33aを密閉容器1の内壁面から突出させて、その領域に吸入口33aを挿入しているため、吐出管33に流れ込んで圧縮機から吐出される作動流体は、冷凍機油がほとんど分離された状態となる。
また、吐出管33の位置がクラスタ35の下面より低くなるように構成しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ35側面に遮られて、直接、吐出管33の吸入口33aに流入することがなくなる。また、導入端子34にクラスタ35を装着隙間が生じないように設置しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ35と導入端子34の装着隙間を通過してしまい、旋回流れを乱すことがなくなる。
また、密閉容器1を上シェル30、胴シェル31、下シェル32に分割したことにより、上シェル30に吐出管33と導入端子34を予め接合して置くことや、胴シェル31に圧縮機構部や回転電動機部を予め嵌装して置くことができるため、圧縮機の組み立て作業が容易となる。さらに、クラスタ35の外径を、コイルエンド11b内径より小さく構成しているため、流れの空間が拡大し、コイルエンド11bの内側空間の旋回流れが、クラスタ35回りの旋回流れに発展成長しやすいという効果を奏する。
【0015】
以上のように、第1の実施例の圧縮機では、作動流体とともに圧縮機外部の冷凍サイクルへ持ち出される冷凍機油の量を著しく低減することができ、熱交換器の伝熱管内壁に冷凍機油が付着して熱交換効率を低下させることを防止し、かつ、油溜りの冷凍機油の量を常に一定にして圧縮機の信頼性と効率を向上させることが可能である。
また、冷媒として地球温暖化防止の観点から、温暖化係数の低い自然冷媒である二酸化炭素冷媒の採用が検討されている。作動流体に二酸化炭素冷媒を用いた場合、圧縮される作動流体の圧力が非常に高圧となり、作動流体への冷凍機油の混合割合が増加するために、油分離が課題となるが、本実施例によれば、円柱形状のクラスタ35の周りに旋回流れを促進することができるので、作動流体とオイルミストを容易に分離することが可能となる。
さらに、上記第1の実施例は、クラスタ35と吐出管33を変更するだけであり、僅かな変更のみで油分離が簡単に実施できるので、圧縮機などを非常に安価とする効果も奏する。
【0016】
ところで、第1の実施例の圧縮機において、密閉容器1の上シェル30とクラスタ35の径方向隙間が、クラスタ35の外径と同程度以下とする構成であれば、一層、クラスタ35の周りの旋回流れを促進することが可能となるため、油分離効率を高めることができる。例えば、円柱形状のクラスタ35の外径28mmに対して、上シェル30の内径が84mm程度以下であれば、圧縮機外部の冷凍サイクルへ持ち出される冷凍機油の量を著しく低減することが可能となる。
また、密閉容器1の内径が小さければ小さいほど、旋回流れの流速が増加するため、旋回流れによる油分離効果が大きくなる。そして、クラスタ35の形状を円柱形状とし、吐出管33を上シェル30の側面部から貫通させて形成するだけで、油分離効率を高めることが可能となるため、密閉容器1の外径が80mm程度以下の非常に小さな圧縮機に対して、第1の実施例は容易に適用可能である。
さらに、第1の実施例の圧縮機では、吐出管33を上シェル30の側面部から貫通させて形成していたが、上シェル30の高さを低くし胴シェル31の高さを高くすることで、吐出管33を胴シェル31の側面部から貫通させて形成する構成(図示せず)とすれば、同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0017】
(実施例2)
第2の実施例における圧縮機は、吐出管、導入端子及びクラスタを除いて図1、図2および図3で説明した第1の実施例における圧縮機と同様な構成であり、第2の実施例における圧縮機を示す縦断面図を、図1と共用する。従って、図5は、本発明の第2の実施例における圧縮機の横断面図であり、図1のZ―Z矢視を示している。そして、同一機能部品については同一符号を適用する。また、第1の実施例の圧縮機と同一の構成および作用の説明は省くことにする。
本実施例の圧縮機の構成において、第1の実施例と異なる点は、吐出管43と、導入端子44と、この導入端子44に装着する六角柱形状のクラスタ45である。そして、上シェル30の中央部に設置されている導入端子44には、六角柱形状のクラスタ45を装着隙間がほぼ生じないように装着し、リード線25を通して回転電動機部の固定子11に通電している。このクラスタ45は、その中心軸が回転電動機部の回転中心軸Lとほぼ一致するように密閉容器内の上部中央に設けられている。また、六角柱形状のクラスタ45の側面45aが固定子11に設けた切欠き11aに対向するように設置している。そして、六角柱形状のクラスタ45の外径は、固定子11上端側のコイルエンド11bの内径より小さく構成している。
さらに、吐出管43は、上シェル30の側面部に密閉容器1の内部まで貫通するように、かつ吐出管43の位置がクラスタ45の下面より低くなるように形成している。また、吐出管43の密閉容器内開口端としての吸入口43aを、密閉容器1の内壁面よりも突出させた構成とする。そして、作動流体には自然冷媒である炭化水素冷媒を用いている。
【0018】
このような構成にした圧縮機の油分離動作は次のとおりである。圧縮機構部から回転電動機部の下部空間17に吐出されたオイルミストを含む作動流体は、固定子11の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18を通過して、回転電動機部の上部空間19に流入する。このとき、隙間18は非常に狭いので、固定子11の切欠き11aを通過する作動流体の割合が非常に多くなる。
この固定子11の切欠き11aを通過したオイルミストを含有する作動流体は、密閉容器1(胴シェル31、上シェル30)の壁面に沿って回転電動機部の上部空間19に流入した後、上シェル30の中央部に設置したクラスタ45の側面45aが障害物となり、側面45aに沿ってコイルエンド11bの内側空間に向かう下向きの流れを生じる。このとき、クラスタ45の側面45aを、固定子11の切欠き11aから流入してくるオイルミストを含んだ作動流体の流れに対向させていることにより、第1の実施例の場合と比べて、クラスタ45の側面45aが平面形状であるため、コイルエンド11bの内側空間に向かう周方向成分がない下向きの流れが特に促進される。特に多角形状の側面が障害物となり、オイルミストを油滴として下方に落下させる効果を高める。
【0019】
一方、回転電動機部の回転子12は高速回転しているため、作動流体の下向きの流れには回転子12の上面12bによるせん断力が作用し、回転中心軸Lを中心とする旋回流れが誘起される。このとき、クラスタ45の形状が回転中心軸Lに軸対称の六角柱形状であるため、クラスタ45周りの旋回流れがほとんど妨げられることは無く、誘起されやすくなり、旋回流れの流速が一様に早くなる。このため、作動流体と冷凍機油はその密度差により遠心分離され、オイルミストは旋回流れの外周部に移動し、上シェル30内壁面に付着し油滴となる。そして、この油滴は、下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
また、固定子11上端側のコイルエンド11bの内側空間まで流入したオイルミストを含む作動流体は、コイルエンド11bの内側空間内を旋回して流れ、遠心力によりオイルミストを分離し、そのオイルミストは、コイルエンド11bの内周面に付着し、油滴となり下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
【0020】
更に、オイルミストが分離された作動流体は、密閉容器1の内壁面から離れた旋回流れの中央部近傍寄りの領域を流れている。そこで、本実施例では、吸入口43aを密閉容器1の内壁面から突出させて、その領域に吸入口43aを挿入しているため、吐出管43に流れ込んで圧縮機から吐出される作動流体は、冷凍機油がほとんど分離された状態となる。
また、吐出管43の位置がクラスタ45の下面より低くなるように構成しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ45側面に遮られて、直接、吐出管43の吸入口43aに流入することがなくなる。また、導入端子44にクラスタ45を装着隙間が生じないように設置しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ45と導入端子44の装着隙間を通過してしまい、旋回流れを乱すことがなくなる。
また、本実施例は第1の実施例と同様に密閉容器1を3つに分割しているので、上シェル30に吐出管43と導入端子44を予め接合して置くことや、胴シェル31に圧縮機構部や回転電動機部を予め嵌装して置くことができるため、圧縮機の組み立て作業が容易となる。さらに、クラスタ45の外径をコイルエンド11bの内径より小さく構成しているため、コイルエンド11bの内側空間が拡大し、その内側空間の旋回流れが、クラスタ45回りの旋回流れに発展成長しやすいという効果を奏する。
【0021】
以上のように、第2の実施例の圧縮機では、作動流体とともに圧縮機外部の冷凍サイクルへ持ち出される冷凍機油の量をさらに一層低減することができ、熱交換器の伝熱管内壁に冷凍機油が付着して熱交換効率を低下させることを防止し、かつ、油溜りの冷凍機油の量を常に一定にして圧縮機の信頼性と効率を向上させることが可能である。
また、現在、冷媒として地球温暖化防止の観点から、温暖化係数の低い自然冷媒である炭化水素冷媒の採用が検討されている。作動流体に炭化水素冷媒を用いた場合、冷媒の可燃性を考慮して、安全性向上のため冷凍サイクル中に封入する冷媒充填量を削減する必要があり、圧縮機の小型化が要望されている。本実施例によれば、クラスタ45の形状を六角柱形状とし、吐出管43を上シェル30の側面部から貫通させて形成するだけで、油分離効率を高めることが可能となるため、密閉容器1の外径が80mm程度以下の非常に小さな圧縮機に対しても、容易に適用可能である。従って、本実施例の圧縮機では、可燃性冷媒である炭化水素冷媒を用いた小型圧縮機に対しても、油吐出量の削減が容易に可能となる。 更に、クラスタ45と吐出管43を変更するだけの、僅かな変更のみで簡単に削減が実施できるので非常に安価とすることができる。
ところで、第2の実施例では、クラスタ45の形状を六角柱形状としたが、正多角柱形状のクラスタ(図示省略)などを含めて、当該クラスタ中心軸に対してほぼ軸対称形状のクラスタとし、そのクラスタ中心軸を回転電動機部(即ち、回転子12)の回転中心軸Lとほぼ一致するように配設する構成とすれば、同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
以上述べてきたところから明らかなように本発明は、密閉容器内の上部中央に軸対称形状のクラスタを設け、吐出管を密閉容器(上シェルまたは胴シェル)の側面部に貫通設置することにより、オイルミストを大量に含む作動流体であっても、回転電動機部の上部空間にクラスタ周りの旋回流れを誘起し易くなるため、油分離効率を高めて、密閉容器から流出する冷凍機油の量を著しく低減することができる。その結果、圧縮機内の冷凍機油の油面高さを維持することができるため、圧縮機の信頼性を向上させることができるとともに、冷凍サイクルを循環する冷凍機油がほとんど無くなるため、熱伝達の阻害、流動抵抗の増大を招くこともないので、冷凍サイクル効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における圧縮機の縦断面図
【図2】図1に示す圧縮機のX―X矢視の横断面図
【図3】図1に示す圧縮機のY―Y矢視の横断面図
【図4】図1に示す圧縮機のZ―Z矢視の横断面図
【図5】本発明の第2の実施例における圧縮機の横断面図(図1に示すZ―Z矢視)
【図6】従来の圧縮機の縦断面図
【図7】従来の圧縮機のクラスタの斜視図
【図8】従来の圧縮機の油分離板の周辺の詳細断面図
【符号の説明】
1 密閉容器
11 固定子
11a 切欠き
11b コイルエンド
12 回転子
13、34、44 導入端子
14、33、43 吐出管
14a、33a、43a 吸入口
16 油溜り
19 上部空間
25 リード線
26、35、45 クラスタ
30 上シェル
31 胴シェル
32 下シェル
L 回転中心軸
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機、冷凍冷蔵庫や空調機等に用いられる冷媒用密閉型回転圧縮機に関し、特に油分離構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
密閉型回転圧縮機は、圧縮機に回転電動機が内蔵されておりヒートポンプシステムが構成しやすく、構成が簡単になる等の観点から、ヒートポンプ式給湯機、冷凍冷蔵庫および空調機等に多く用いられている。ロータリ圧縮機やスクロール圧縮機等の密閉型回転圧縮機の構成については非特許文献1に記載されている。
以下に、密閉型回転圧縮機の構成を、ロータリ圧縮機を例に図6、図7および図8を用いて説明する。図6は、従来の圧縮機の縦断面図、図7は、従来の圧縮機の導入端子と回転電動機部の固定子からのリード線を接続するクラスタの斜視図である。
図に示す圧縮機は、密閉容器1と、偏心部2aを有するシャフト2,シリンダ3,ローラ4,ベーン7,バネ8,上軸受9,下軸受10等から成り密閉容器1の内部の下方に配置された圧縮機構部と、上下端側にそれぞれ設けられたコイルエンド11b,11dを有する固定子11,回転子12等から成り密閉容器1の上方に配置された回転電動機部とから構成される。
そして、固定子11の外周側には、作動流体の流路とするための複数の切欠き11aが設けられている。密閉容器1の上部には、密閉容器1の内部の回転電動機部に通電するための導入端子13と、密閉容器1の内部から作動流体を冷凍サイクルに導く吐出管14が設けられている。この導入端子13には、回転電動機部の固定子11からのリード線25を接続するほぼ直方体形状のクラスタ26を装着し、回転電動機部に通電する構成としている。また、吐出管14は、垂直に密閉容器1の内部に貫通しており、その吸入口14aが回転電動機部の固定子11や回転子12と接触しないように、固定子11上端側のコイルエンド11bよりも上側に位置する。また、密閉容器1の側面部には、作動流体を冷凍サイクルから圧縮機に導く吸入管15が設けられている。密閉容器1の底部の油溜り16には、冷凍機油が貯留される構成となっている。
上記構成の圧縮機の動作について説明する。圧縮機の回転電動機部に通電して回転子12を回転させると、偏心部2aによりローラ4は偏心回転運動を行い、シリンダ3内に形成された吸入室5と圧縮室(図示せず)の容積が変化する。これに伴って作動流体は、吸入管15から流路9aを経て吸入室5に吸入され、圧縮室にて圧縮される。圧縮された作動流体は、油溜り16から供給され、圧縮機構部を潤滑した冷凍機油の霧滴(以下、オイルミスト)を混合した状態で、吐出孔9bを経て回転電動機部の下部空間17に吐出され、固定子11の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18を通過して、回転電動機部の上部空間19に流れる。
そして、作動流体は吐出管14から吐出されるが、同時に作動流体に混合した冷凍機油も吐出されてしまう。そのため圧縮機では、圧縮機の信頼性および冷凍サイクルの高効率化の観点から、油を分離して密閉容器1の外部への冷凍機油の吐出を抑えている。
この作動流体から冷凍機油の分離を行う構成としては、例えば特許文献1に示されているように、回転子12の上部に設けた油分離板を用いる方法がある。図8に油分離板の周辺の詳細断面図を示す。回転子12には、永久磁石20の挿入孔を閉塞する上側端板21aおよび下側端板21bが具備されると共に、回転子12に上下方向に貫通形成された複数の貫通孔12aと、貫通孔12aの出口の上方に配され回転子12の上面との間に油分離空間22を形成する油分離板23とが、固定部材24によって回転子12に固定されている。
このように構成された圧縮機では、圧縮機構部から回転電動機部の下部空間17に吐出されたオイルミストを含む作動流体の一部は、回転子12に設けられた貫通孔12aを通って油分離空間22に流入する。そして、ここで遠心力により油分離板23の外周出口から作動流体を放射状に吐出し、固定子11のコイルエンド11bに吹き付けられて作動流体とこれに含まれたオイルミストが分離される。そして、油を分離した作動流体だけが上昇して、密閉容器1内の上部に設けられた吐出管14から外部へ吐出される。一方、固定子11のコイルエンド11bに付着した冷凍機油は下方へ伝わって落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16へ戻される。
【0003】
【非特許文献1】
「冷凍空調便覧、新版第5版、II巻 機器編」、日本冷凍協会、平成5年、第30項〜第43項
【特許文献1】
特開平8−28476号公報(第6項、図1〜図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の圧縮機では、回転電動機部の下部空間17から上部空間19への作動流体の流れは、固定子11の外周側の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18、あるいは、図8のように構成される圧縮機の場合は回転子12の貫通孔12aを通過していた。このうち、固定子11と回転子12の隙間18は、回転電動機部の効率の観点から通常0.5mm程度の狭い幅であり、しかも回転子12が高速で回転しているため、ここを流れる作動流体の割合は非常に少ない。また、回転子12の貫通孔12aについても、回転子12の積層鉄芯の断面積が減り磁気回路が狭くなると、回転電動機部の効率が低下するため大きくできない。従って、固定子11の切欠き11aを通過する作動流体の割合が非常に多くなる。
この固定子11の切欠き11aを通過したオイルミストを含有する作動流体は、密閉容器1の壁面に沿って回転電動機部の上部空間19に流入した後、回転電動機部の回転子12の回転により誘起される旋回流れとなり、作動流体と冷凍機油の密度差により遠心分離される。しかしながら、上部空間19内に設置しているクラスタ26が細長い直方体形状であり、密閉容器1の軸中心からずれて設置されているため、回転子12の回転により誘起される上部空間19内の、回転中心軸Lを中心とする旋回流れを邪魔する作用が生じる。そのため、旋回流れの流速が遅く、かつ不均一となる。従って、作動流体と冷凍機油の分離が不十分であった。
また、図8に示すように、回転子12に上下方向に貫通形成された複数の貫通孔12aを設けた場合でも、貫通孔12aを通過する作動流体からの油分離しかできず、特に流量の多い固定子11の外周側の切欠き11aを通過する作動流体からの油分離が課題であった。
更に、従来の圧縮機を、二酸化炭素を主成分とした自然冷媒を作動流体として用いる冷凍サイクルに適用した場合、圧縮室から吐出される作動流体の圧力が臨界圧力を越えるため、密閉容器1の内部の作動流体は超臨界状態となり、作動流体に対する冷凍機油の溶解量が増加すること、および吸入室5と密閉容器1内の差圧が増大するため吸入室5に流入する冷凍機油の流量が増大し作動流体に混合する冷凍機油の混合割合が増加すること等のため、特に密閉容器1の内部での油分離が課題であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためのものであり、回転電動機部の効率を低下させることなく、簡易かつ低コストに油分離効率を高めて、密閉容器の外部に持ち出される冷凍機油の量を低減し、圧縮機の信頼性を向上させ、高効率の冷凍サイクルを得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明の圧縮機は、密閉容器内に、作動流体を圧縮する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する回転電動機部と、前記回転電動機部に電力を供給する導入端子と、前記導入端子に前記回転電動機部からのリード線を接続するクラスタとを備え、前記圧縮機構部を前記回転電動機部よりも下方に配置し、前記密閉容器内の下部に冷凍機油を貯留する油溜りを、前記密閉容器内の上部に前記導入端子及び前記クラスタをそれぞれ設け、前記圧縮機構部から吐出される作動流体を、前記回転電動機部と前記密閉容器との隙間から前記密閉容器の上部空間に導き、当該上部空間に設けた吐出管から前記密閉容器外に吐出する構成とした圧縮機であって、前記クラスタを軸対称形状とし、前記クラスタの中心軸が前記回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記クラスタを、円柱形状としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記クラスタを、多角柱形状としたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の圧縮機において、前記吐出管を、前記密閉容器の上部側の側面部に設け、前記吐出管の密閉容器内開口端を、前記密閉容器の内壁面よりも突出させたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の圧縮機において、前記密閉容器内の吐出管を、前記クラスタの下面よりも下方に設置したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4に記載の圧縮機において、前記密閉容器を、上シェル、胴シェル、及び下シェルから構成し、少なくとも前記上シェルは前記胴シェルに溶接によって接合される構成とし、前記導入端子を前記上シェルの中央部に設置し、前記吐出管を前記上シェルの側面部に貫通設置したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記回転電動機部を、前記密閉容器の内部に焼嵌めされた固定子と、前記固定子の内周部で回転する回転子とより構成し、前記クラスタの外径を前記固定子のコイルエンド内径より小さくしたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記クラスタを、装着隙間が生じないように前記導入端子に設置したことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記密閉容器の内径寸法を、前記クラスタの外径寸法の3倍以下としたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機において、前記作動流体として、二酸化炭素や炭化水素などの自然冷媒を用いたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態による圧縮機は、クラスタを軸対称形状とし、クラスタの中心軸が回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けたものである。本実施の形態によれば、回転電動機部の高速回転によって密閉容器の上部空間には旋回流れが誘起されるが、軸対称形状としたクラスタを回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けているため、クラスタの周辺でも旋回流れが誘起される。従って、作動流体とともに密閉容器の上部空間に導かれたオイルミストは、旋回流れによって遠心分離され、密閉容器内壁面に付着し、付着したオイルミストは油滴となって下方に流れ落ちるため、冷凍機油が作動流体とともに吐出管から吐出されることを防止することができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、クラスタを円柱形状としたものである。本実施の形態によれば、クラスタ周辺での旋回流れの誘起作用を高めることができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、クラスタを多角柱形状としたものである。本実施の形態によれば、多角形状の側面が障害物となり、この側面に沿って下向きの流れを生じる。従って、オイルミストを油滴とし下方に落下させる効果を高め、冷凍機油が作動流体とともに吐出管から吐出されることを防止することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による圧縮機において、吐出管を、密閉容器の上部側の側面部に設け、吐出管の密閉容器内開口端を、密閉容器の内壁面よりも突出させたものである。本実施の形態によれば、吐出管の密閉容器内開口端を、密閉容器の内壁面よりも突出させることで、密閉容器内壁面に付着したオイルミストが吐出管に流れ込むことを防止でき、旋回流れの中央部付近の、オイルミストが十分に分離された作動流体を吐出管内に導くことができる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による圧縮機において、密閉容器内の吐出管を、クラスタの下面よりも下方に設置したものである。本実施の形態によれば、上部側空間に流入した作動流体の流れが、クラスタ側面に遮られて、直接、吐出管に流入することをなくすことができる。
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による圧縮機において、密閉容器を、上シェル、胴シェル、及び下シェルから構成し、少なくとも上シェルは胴シェルに溶接によって接合される構成とし、導入端子を上シェルの中央部に設置し、吐出管を上シェルの側面部に貫通設置したものである。本実施の形態によれば、導入端子や吐出管をあらかじめ上シェルに設けておき、一方圧縮機や回転電動機をあらかじめ胴シェルに設けておくことができるため、圧縮機の組み立て作業が容易となる。
本発明の第7の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、回転電動機部を、密閉容器の内部に焼嵌めされた固定子と、固定子の内周部で回転する回転子とより構成し、クラスタの外径を固定子のコイルエンド内径より小さくしたものである。本実施の形態によれば、流れの空間が拡大し、コイルエンド内側の空間の旋回流れが、クラスタ周辺の旋回流れに発展成長しやすい。
本発明の第8の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、クラスタを、装着隙間が生じないように導入端子に設置するものである。本実施の形態によれば、上部側空間に流入した作動流体の流れが、クラスタと導入端子の装着隙間を通過してしまい、旋回流れを乱すことがなくなる。
本発明の第9の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、密閉容器の内径寸法を、クラスタの外径寸法の3倍以下としたものである。本実施の形態によれば、密閉容器とクラスタとの径方向隙間が、クラスタの外径と同程度以下であれば、一層、クラスタの周りの旋回流れを促進することが可能となるため、油分離効率を高めることができる。
本発明の第10の実施の形態は、第1から第6の実施の形態による圧縮機において、作動流体として、二酸化炭素や炭化水素などの自然冷媒を用いたものである。本実施の形態のように自然冷媒を用いることができ、例えば可燃性冷媒である炭化水素冷媒を用いた小型圧縮機に対しても、冷凍機油の吐出量の削減が容易となる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明のいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例における圧縮機の縦断面図であり、図2は、図1に示す圧縮機のX―X矢視の横断面図であり、図3は、図1に示す圧縮機のY―Y矢視の横断面図であり、図4は、図1に示す圧縮機のZ―Z矢視の横断面図である。なお、本発明の第1の実施例における圧縮機は、前述した従来の圧縮機とほぼ同様な構成であり、同一機能部品については同一符号を適用する。
第1の実施例の圧縮機は、密閉容器1と、その密閉容器1の内部の下方に配置された圧縮機構部と、その上方に配置された回転電動機部とから構成される。圧縮機構部は、回転中心軸Lを中心に回転可能なシャフト2と、内部に円筒面3aを有するシリンダ3と、シャフト2の偏心部2aに嵌合され、シャフト2の回転に伴いシリンダ3の内側で偏心回転運動を行うローラ4と、ローラ4に先端を接しながらシリンダ3のベーン溝3bの内部を往復運動し、シリンダ3とローラ4により形成される空間を吸入室5と圧縮室6に分割するベーン7と、ベーン7の背面に設置され、ベーン7をローラ4に押し付けるバネ8と、シャフト2を支える上軸受9および下軸受10とから構成される。上軸受9は、吸入管15に接続され、その吸入管15から吸入した作動流体を吸入室5に導入する流路9aと、圧縮室6で圧縮された作動流体を回転電動機部の下部空間17に吐出する吐出孔9bとを有する。
【0009】
回転電動機部は、密閉容器1の内部に焼嵌めされた固定子11と、シャフト2に焼嵌めされて固定子11の内周部で回転する回転子12とから構成される。この固定子11には、その上端側にコイルエンド11bと、下端側にコイルエンド11dとが設けられている。また、固定子11の外周側には、下部空間17と上部空間19とを連通し、作動流体の流路となる複数の切欠き11aが設けられている。そして、密閉容器1の底部の油溜り16には冷凍機油が貯留される構成となっている。
【0010】
一方、密閉容器1は、上シェル30、胴シェル31、下シェル32の3つの要素で構成し、溶接で密閉容器1を形成している。そして、上シェル30の中央部には、密閉容器1内の回転電動機部に通電するための導入端子34を設置する。この導入端子34には、密閉容器1内で円柱形状のクラスタ35を装着隙間がほぼ生じないように装着し、リード線25を通して回転電動機部の固定子11に通電している。この円柱形状のクラスタ35は、その中心軸が回転電動機部の回転中心軸Lとほぼ一致するように密閉容器内の上部中央に設けられている。そして、クラスタ35の外径は、固定子11上端側のコイルエンド11bの内径より小さく構成している。
さらに、密閉容器1(上シェル30)の上部側の側面部には、密閉容器1内の上部空間19から作動流体を密閉容器1外の冷凍サイクルに導く吐出管33が設けられている。この吐出管33は、上シェル30の側面部から密閉容器1の内部まで貫通するように、かつ吐出管33の位置がクラスタ35の下面より低くなるように形成している。また、吐出管33の密閉容器内開口端としての吸入口33aを、密閉容器1の内壁面よりも突出させた構成とする。
そして、作動流体には自然冷媒である二酸化炭素冷媒を用いている。なお、本実施例では、従来技術と同様な油分離板方法の回転子12の貫通孔12a(図8参照)は設けていない。
【0011】
次に、上記構成の圧縮機の動作について説明する。作動流体は、吸入管15から上軸受9に設けられた流路9aを通じて吸入室5に導かれる。回転電動機部に通電し、回転子12と一体のシャフト2を回転させると、ローラ4は偏心回転運動を行い、吸入室5と圧縮室6の容積が変化し、これに伴い作動流体は吸入、圧縮される。圧縮された作動流体は、吐出孔9bの吐出弁(図示せず)が開くと、油溜り16から供給され圧縮機構部を潤滑したオイルミストを混合した状態で、回転電動機部の下部空間17に吐出される。この下部空間17内の作動流体は、回転電動機部と密閉容器1との隙間としての固定子11の外周側の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18(エアギャップ)を通過して、回転電動機部の上部空間19に流れる。そして、作動流体は、上部空間19で冷凍機油を分離し、吐出管14から吐出される。
【0012】
この油分離動作について説明する。前述のように、圧縮機構部から回転電動機部の下部空間17に吐出されたオイルミストを含む作動流体は、固定子11の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18を通過して、回転電動機部の上部空間19に流入する。このとき、隙間18は非常に狭いので、固定子11の切欠き11aを通過する作動流体の割合が非常に多くなる。
この固定子11の切欠き11aを通過したオイルミストを含有する作動流体は、密閉容器1(胴シェル31、上シェル30)の壁面に沿って回転電動機部の上部空間19に流入した後、上シェル30の中央部に設置したクラスタ35の側面に沿って、コイルエンド11bの内側空間に向かう下向きの流れを生じる。
【0013】
一方、回転電動機部の回転子12は高速回転しているため、作動流体の下向きの流れには回転子12の上面12bによるせん断力が作用し、回転子12の回転中心軸Lを中心とする旋回流れが誘起される。このとき、クラスタ35の形状が回転中心軸Lに軸対称の円柱形状であるため、クラスタ35周りの旋回流れが一層誘起されやすくなり、旋回流れの流速が一様に早くなる。このため、作動流体と冷凍機油はその密度差により遠心分離され、オイルミストは旋回流れの外周部に移動し、上シェル30内壁面に付着し油滴となる。そして、この油滴は、下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
また、固定子11上端側のコイルエンド11bの内側空間まで流入したオイルミストを含む作動流体は、コイルエンド11bの内側空間内を旋回して流れて、遠心力によりオイルミストを分離し、そのオイルミストは、コイルエンド11bの内周面に付着し、油滴となり下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
【0014】
更に、オイルミストが分離された作動流体は、密閉容器1の内壁面から離れた旋回流れの中央部近傍寄りの領域を流れている。そこで、本実施例では、吸入口33aを密閉容器1の内壁面から突出させて、その領域に吸入口33aを挿入しているため、吐出管33に流れ込んで圧縮機から吐出される作動流体は、冷凍機油がほとんど分離された状態となる。
また、吐出管33の位置がクラスタ35の下面より低くなるように構成しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ35側面に遮られて、直接、吐出管33の吸入口33aに流入することがなくなる。また、導入端子34にクラスタ35を装着隙間が生じないように設置しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ35と導入端子34の装着隙間を通過してしまい、旋回流れを乱すことがなくなる。
また、密閉容器1を上シェル30、胴シェル31、下シェル32に分割したことにより、上シェル30に吐出管33と導入端子34を予め接合して置くことや、胴シェル31に圧縮機構部や回転電動機部を予め嵌装して置くことができるため、圧縮機の組み立て作業が容易となる。さらに、クラスタ35の外径を、コイルエンド11b内径より小さく構成しているため、流れの空間が拡大し、コイルエンド11bの内側空間の旋回流れが、クラスタ35回りの旋回流れに発展成長しやすいという効果を奏する。
【0015】
以上のように、第1の実施例の圧縮機では、作動流体とともに圧縮機外部の冷凍サイクルへ持ち出される冷凍機油の量を著しく低減することができ、熱交換器の伝熱管内壁に冷凍機油が付着して熱交換効率を低下させることを防止し、かつ、油溜りの冷凍機油の量を常に一定にして圧縮機の信頼性と効率を向上させることが可能である。
また、冷媒として地球温暖化防止の観点から、温暖化係数の低い自然冷媒である二酸化炭素冷媒の採用が検討されている。作動流体に二酸化炭素冷媒を用いた場合、圧縮される作動流体の圧力が非常に高圧となり、作動流体への冷凍機油の混合割合が増加するために、油分離が課題となるが、本実施例によれば、円柱形状のクラスタ35の周りに旋回流れを促進することができるので、作動流体とオイルミストを容易に分離することが可能となる。
さらに、上記第1の実施例は、クラスタ35と吐出管33を変更するだけであり、僅かな変更のみで油分離が簡単に実施できるので、圧縮機などを非常に安価とする効果も奏する。
【0016】
ところで、第1の実施例の圧縮機において、密閉容器1の上シェル30とクラスタ35の径方向隙間が、クラスタ35の外径と同程度以下とする構成であれば、一層、クラスタ35の周りの旋回流れを促進することが可能となるため、油分離効率を高めることができる。例えば、円柱形状のクラスタ35の外径28mmに対して、上シェル30の内径が84mm程度以下であれば、圧縮機外部の冷凍サイクルへ持ち出される冷凍機油の量を著しく低減することが可能となる。
また、密閉容器1の内径が小さければ小さいほど、旋回流れの流速が増加するため、旋回流れによる油分離効果が大きくなる。そして、クラスタ35の形状を円柱形状とし、吐出管33を上シェル30の側面部から貫通させて形成するだけで、油分離効率を高めることが可能となるため、密閉容器1の外径が80mm程度以下の非常に小さな圧縮機に対して、第1の実施例は容易に適用可能である。
さらに、第1の実施例の圧縮機では、吐出管33を上シェル30の側面部から貫通させて形成していたが、上シェル30の高さを低くし胴シェル31の高さを高くすることで、吐出管33を胴シェル31の側面部から貫通させて形成する構成(図示せず)とすれば、同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0017】
(実施例2)
第2の実施例における圧縮機は、吐出管、導入端子及びクラスタを除いて図1、図2および図3で説明した第1の実施例における圧縮機と同様な構成であり、第2の実施例における圧縮機を示す縦断面図を、図1と共用する。従って、図5は、本発明の第2の実施例における圧縮機の横断面図であり、図1のZ―Z矢視を示している。そして、同一機能部品については同一符号を適用する。また、第1の実施例の圧縮機と同一の構成および作用の説明は省くことにする。
本実施例の圧縮機の構成において、第1の実施例と異なる点は、吐出管43と、導入端子44と、この導入端子44に装着する六角柱形状のクラスタ45である。そして、上シェル30の中央部に設置されている導入端子44には、六角柱形状のクラスタ45を装着隙間がほぼ生じないように装着し、リード線25を通して回転電動機部の固定子11に通電している。このクラスタ45は、その中心軸が回転電動機部の回転中心軸Lとほぼ一致するように密閉容器内の上部中央に設けられている。また、六角柱形状のクラスタ45の側面45aが固定子11に設けた切欠き11aに対向するように設置している。そして、六角柱形状のクラスタ45の外径は、固定子11上端側のコイルエンド11bの内径より小さく構成している。
さらに、吐出管43は、上シェル30の側面部に密閉容器1の内部まで貫通するように、かつ吐出管43の位置がクラスタ45の下面より低くなるように形成している。また、吐出管43の密閉容器内開口端としての吸入口43aを、密閉容器1の内壁面よりも突出させた構成とする。そして、作動流体には自然冷媒である炭化水素冷媒を用いている。
【0018】
このような構成にした圧縮機の油分離動作は次のとおりである。圧縮機構部から回転電動機部の下部空間17に吐出されたオイルミストを含む作動流体は、固定子11の切欠き11aや、固定子11と回転子12の隙間18を通過して、回転電動機部の上部空間19に流入する。このとき、隙間18は非常に狭いので、固定子11の切欠き11aを通過する作動流体の割合が非常に多くなる。
この固定子11の切欠き11aを通過したオイルミストを含有する作動流体は、密閉容器1(胴シェル31、上シェル30)の壁面に沿って回転電動機部の上部空間19に流入した後、上シェル30の中央部に設置したクラスタ45の側面45aが障害物となり、側面45aに沿ってコイルエンド11bの内側空間に向かう下向きの流れを生じる。このとき、クラスタ45の側面45aを、固定子11の切欠き11aから流入してくるオイルミストを含んだ作動流体の流れに対向させていることにより、第1の実施例の場合と比べて、クラスタ45の側面45aが平面形状であるため、コイルエンド11bの内側空間に向かう周方向成分がない下向きの流れが特に促進される。特に多角形状の側面が障害物となり、オイルミストを油滴として下方に落下させる効果を高める。
【0019】
一方、回転電動機部の回転子12は高速回転しているため、作動流体の下向きの流れには回転子12の上面12bによるせん断力が作用し、回転中心軸Lを中心とする旋回流れが誘起される。このとき、クラスタ45の形状が回転中心軸Lに軸対称の六角柱形状であるため、クラスタ45周りの旋回流れがほとんど妨げられることは無く、誘起されやすくなり、旋回流れの流速が一様に早くなる。このため、作動流体と冷凍機油はその密度差により遠心分離され、オイルミストは旋回流れの外周部に移動し、上シェル30内壁面に付着し油滴となる。そして、この油滴は、下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
また、固定子11上端側のコイルエンド11bの内側空間まで流入したオイルミストを含む作動流体は、コイルエンド11bの内側空間内を旋回して流れ、遠心力によりオイルミストを分離し、そのオイルミストは、コイルエンド11bの内周面に付着し、油滴となり下方に流れ落ち、密閉容器1の底部に貯留されている油溜り16に戻される。
【0020】
更に、オイルミストが分離された作動流体は、密閉容器1の内壁面から離れた旋回流れの中央部近傍寄りの領域を流れている。そこで、本実施例では、吸入口43aを密閉容器1の内壁面から突出させて、その領域に吸入口43aを挿入しているため、吐出管43に流れ込んで圧縮機から吐出される作動流体は、冷凍機油がほとんど分離された状態となる。
また、吐出管43の位置がクラスタ45の下面より低くなるように構成しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ45側面に遮られて、直接、吐出管43の吸入口43aに流入することがなくなる。また、導入端子44にクラスタ45を装着隙間が生じないように設置しているため、上部空間19に流入した作動流体の流れが、クラスタ45と導入端子44の装着隙間を通過してしまい、旋回流れを乱すことがなくなる。
また、本実施例は第1の実施例と同様に密閉容器1を3つに分割しているので、上シェル30に吐出管43と導入端子44を予め接合して置くことや、胴シェル31に圧縮機構部や回転電動機部を予め嵌装して置くことができるため、圧縮機の組み立て作業が容易となる。さらに、クラスタ45の外径をコイルエンド11bの内径より小さく構成しているため、コイルエンド11bの内側空間が拡大し、その内側空間の旋回流れが、クラスタ45回りの旋回流れに発展成長しやすいという効果を奏する。
【0021】
以上のように、第2の実施例の圧縮機では、作動流体とともに圧縮機外部の冷凍サイクルへ持ち出される冷凍機油の量をさらに一層低減することができ、熱交換器の伝熱管内壁に冷凍機油が付着して熱交換効率を低下させることを防止し、かつ、油溜りの冷凍機油の量を常に一定にして圧縮機の信頼性と効率を向上させることが可能である。
また、現在、冷媒として地球温暖化防止の観点から、温暖化係数の低い自然冷媒である炭化水素冷媒の採用が検討されている。作動流体に炭化水素冷媒を用いた場合、冷媒の可燃性を考慮して、安全性向上のため冷凍サイクル中に封入する冷媒充填量を削減する必要があり、圧縮機の小型化が要望されている。本実施例によれば、クラスタ45の形状を六角柱形状とし、吐出管43を上シェル30の側面部から貫通させて形成するだけで、油分離効率を高めることが可能となるため、密閉容器1の外径が80mm程度以下の非常に小さな圧縮機に対しても、容易に適用可能である。従って、本実施例の圧縮機では、可燃性冷媒である炭化水素冷媒を用いた小型圧縮機に対しても、油吐出量の削減が容易に可能となる。 更に、クラスタ45と吐出管43を変更するだけの、僅かな変更のみで簡単に削減が実施できるので非常に安価とすることができる。
ところで、第2の実施例では、クラスタ45の形状を六角柱形状としたが、正多角柱形状のクラスタ(図示省略)などを含めて、当該クラスタ中心軸に対してほぼ軸対称形状のクラスタとし、そのクラスタ中心軸を回転電動機部(即ち、回転子12)の回転中心軸Lとほぼ一致するように配設する構成とすれば、同様な効果を奏することは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
以上述べてきたところから明らかなように本発明は、密閉容器内の上部中央に軸対称形状のクラスタを設け、吐出管を密閉容器(上シェルまたは胴シェル)の側面部に貫通設置することにより、オイルミストを大量に含む作動流体であっても、回転電動機部の上部空間にクラスタ周りの旋回流れを誘起し易くなるため、油分離効率を高めて、密閉容器から流出する冷凍機油の量を著しく低減することができる。その結果、圧縮機内の冷凍機油の油面高さを維持することができるため、圧縮機の信頼性を向上させることができるとともに、冷凍サイクルを循環する冷凍機油がほとんど無くなるため、熱伝達の阻害、流動抵抗の増大を招くこともないので、冷凍サイクル効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における圧縮機の縦断面図
【図2】図1に示す圧縮機のX―X矢視の横断面図
【図3】図1に示す圧縮機のY―Y矢視の横断面図
【図4】図1に示す圧縮機のZ―Z矢視の横断面図
【図5】本発明の第2の実施例における圧縮機の横断面図(図1に示すZ―Z矢視)
【図6】従来の圧縮機の縦断面図
【図7】従来の圧縮機のクラスタの斜視図
【図8】従来の圧縮機の油分離板の周辺の詳細断面図
【符号の説明】
1 密閉容器
11 固定子
11a 切欠き
11b コイルエンド
12 回転子
13、34、44 導入端子
14、33、43 吐出管
14a、33a、43a 吸入口
16 油溜り
19 上部空間
25 リード線
26、35、45 クラスタ
30 上シェル
31 胴シェル
32 下シェル
L 回転中心軸
Claims (10)
- 密閉容器内に、作動流体を圧縮する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する回転電動機部と、前記回転電動機部に電力を供給する導入端子と、前記導入端子に前記回転電動機部からのリード線を接続するクラスタとを備え、前記圧縮機構部を前記回転電動機部よりも下方に配置し、前記密閉容器内の下部に冷凍機油を貯留する油溜りを、前記密閉容器内の上部に前記導入端子及び前記クラスタをそれぞれ設け、前記圧縮機構部から吐出される作動流体を、前記回転電動機部と前記密閉容器との隙間から前記密閉容器の上部空間に導き、当該上部空間に設けた吐出管から前記密閉容器外に吐出する構成とした圧縮機であって、前記クラスタを軸対称形状とし、前記クラスタの中心軸が前記回転電動機部の回転中心軸とほぼ一致するように設けたことを特徴とする圧縮機。
- 前記クラスタを、円柱形状としたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記クラスタを、多角柱形状としたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記吐出管を、前記密閉容器の上部側の側面部に設け、前記吐出管の密閉容器内開口端を、前記密閉容器の内壁面よりも突出させたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記密閉容器内の吐出管を、前記クラスタの下面よりも下方に設置したことを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
- 前記密閉容器を、上シェル、胴シェル、及び下シェルから構成し、少なくとも前記上シェルは前記胴シェルに溶接によって接合される構成とし、前記導入端子を前記上シェルの中央部に設置し、前記吐出管を前記上シェルの側面部に貫通設置したことを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
- 前記回転電動機部を、前記密閉容器の内部に焼嵌めされた固定子と、前記固定子の内周部で回転する回転子とより構成し、前記クラスタの外径を前記固定子のコイルエンド内径より小さくしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記クラスタを、装着隙間が生じないように前記導入端子に設置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記密閉容器の内径寸法を、前記クラスタの外径寸法の3倍以下としたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記作動流体として、二酸化炭素や炭化水素などの自然冷媒を用いたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮機。
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Cited By (3)
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-
2003
- 2003-05-19 JP JP2003139771A patent/JP2004346741A/ja not_active Withdrawn
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WO2006112100A1 (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-26 | Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. | 圧縮機 |
JP2010007592A (ja) * | 2008-06-27 | 2010-01-14 | Sanyo Electric Co Ltd | 回転圧縮機 |
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