JP2004346501A - Pc鋼材の緊張方法および接続装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンボンドPC鋼線等のPC鋼材同士を接続して緊張する場合に、従来の接続のための凹部を無くすことができ、また従来のように先行区と後行区に分けることなく一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができ、施行性の大幅な向上を図ることのできるPC鋼材の緊張方法および接続装置を提供する。
【解決手段】アンボンドPC鋼線2,2の接合端部同士を連結一体化したねじカップラー10を所定長さのスリーブ11内にアンボンドPC鋼線2の軸方向に移動自在に収納し、型枠内にアンボンドPC鋼線2およびスリーブ11を所定の位置にセットし、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、アンボンドPC鋼線2を緊張し、ねじカップラー10をスリーブ11内で移動させる。
【選択図】 図1
【解決手段】アンボンドPC鋼線2,2の接合端部同士を連結一体化したねじカップラー10を所定長さのスリーブ11内にアンボンドPC鋼線2の軸方向に移動自在に収納し、型枠内にアンボンドPC鋼線2およびスリーブ11を所定の位置にセットし、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、アンボンドPC鋼線2を緊張し、ねじカップラー10をスリーブ11内で移動させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート構造のスラブや梁などの主要構造部材の内部にPC鋼線などのPC鋼材を挿通して緊張し、圧縮力を導入してなるプレストレス構造において、PC鋼材の端部同士を接続して緊張するPC鋼材の緊張方法およびこの方法に使用するPC鋼材の接続装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、鉄筋コンクリート構造のスラブ内にPC鋼材としてのアンボンドPC鋼線を挿通して緊張し、その反力によって構造物にプレストレス(圧縮力)を導入することで、プレストレス構造物とする方法が知られている。そして、プレストレス構造物が大きい場合には、施工性の向上などを目的として、アンボンドPC鋼線を分割し、分割したPC鋼線の接合端部同士を接続具で接続することが行われている。
【0003】
図3、図4は、従来のアンボンドPC鋼線の接続と緊張方法の例を示したものであり、図3の例では、鉄筋コンクリート構造のスラブ1におけるアンボンドPC鋼線2の接続箇所に予め所定の長さの凹部50を形成しておき、この凹部50内の片側に位置したPC鋼線の接合端部同士をねじカップラー51で接続し、アンボンドPC鋼線2を図の右側方向に緊張する。この緊張により、ねじカップラー51は図の右側に数10cm移動する。その後、シースから剥き出しになったPC鋼線2に適当な被覆処理を行い、凹部50内にコンクリートを打設する。
【0004】
図4の例では、図の右側のスラブ1のコンクリートの打設が終了した先行区のアンボンドPC鋼線2を緊張して反力板60とねじカップラー61の片側筒体61aとで定着し、図の左側のコンクリートが打設されていない後行区のアンボンドPC鋼線2の接合端部の片側筒体61bをねじ部材61cを介して接続する。その後、後行区のコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、後行区側のアンボンドPC鋼線2の緊張を行う。
【0005】
また、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。この発明は、PC鋼線とPC鋼線を互いに確実に接続するための接続具の改良に関するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−349001号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の図3に示す方法では、所定の長さの凹部50を形成する手間がかかると共に、この凹部50に後からコンクリートを打設するため、コンクリートの二度打ちとなり、施行性が低下し、また、凹部50のコンクリートが補修跡のように残る、などの問題があった。
【0008】
従来の図4に示す方法では、順に、先行区のコンクリート打設とPC鋼線の緊張、後行区のPC鋼線の接続とコンクリート打設、後行区側のPC鋼線の緊張を行わなければならず、施行効率が悪いなどの問題があった。
【0009】
本発明は、前述のような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、アンボンドPC鋼線等のPC鋼材同士を接続して緊張する場合に、従来の接続のための凹部を無くすことができ、また従来のように先行区と後行区に分けることなく一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができ、施行性の大幅な向上を図ることのできるPC鋼材の緊張方法および接続装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、端部同士が接続具を介して接続されるPC鋼材(アンボンドPC鋼線など)の緊張方法であり、PC鋼材の端部同士を一体的に連結した接続具を該接続具がPC鋼材軸方向に移動可能な長さのスリーブ内に収納し、これらPC鋼材及びスリーブを所定の設置位置に配置した後、コンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、PC鋼材を緊張し、前記接続具をスリーブ内で移動させることを特徴とするPC鋼材の緊張方法である。
【0011】
本発明の請求項2は、PC鋼材(アンボンドPC鋼線など)の端部同士を接続する接続装置であり、PC鋼材の端部同士を一体的に連結する接続具と、この接続具がPC鋼材軸方向に移動可能に収納される所定の長さのスリーブから構成されていることを特徴とするPC鋼材の接続装置である。
【0012】
請求項1,2において、スリーブは塩化ビニール等の合成樹脂製や金属製のパイプを使用することができ、その内径は接続具の外径よりも若干大きくして、接続具が円滑にスライドできるようにする。その長さは、接続具が緊張により移動する距離を考慮して決定する。また、アンボンドPC鋼線でシースが設けられている場合には、スリーブ内の接続具が移動する範囲は予めシースを剥いでおく。また、スリーブ内にはグリース等の防錆剤を充填しておくのが好ましい。
【0013】
本発明の請求項3は、請求項1に記載の接続装置において、接続具が、PC鋼材端部のグリップが挿入固定された筒体同士をねじで連結してなるねじカップラーであることを特徴とするPC鋼材の接続装置である。即ち、接続具に一般に用いられている、一対の筒体とこれら筒体同士を連結する連結ねじ部材からなるねじカップラーを使用した場合である。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項1に記載の接続装置において、接続具が、PC鋼材端部に固定された圧着グリップと、一対の圧着グリップを外側から覆って連結一体化する連結筒体から構成されるていることを特徴とするPC鋼材の接続装置である。即ち、接続具に一般に用いられている圧着グリップを利用した場合であり、この場合には、対向配置した一対の圧着グリップを、両端の蓋板にPC鋼材の挿通孔が形成された円筒状の連結筒体で連結一体化して接続具とする。連結筒体は、半径方向に2分割し、分割された断面半円状の筒体を一対の圧着グリップに被せて取付けるようにする。
【0015】
以上のような構成において、工場等で予め接続具と例えば2分割したスリーブを装着して接続されたPC鋼材を所定の位置にセットし、あるいは、所定の位置にセットしたPC鋼材の接合端部同士を現場で接続具で接続して例えば2分割したスリーブを被せ、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後にPC鋼材を緊張する。
【0016】
コンクリートに埋設されたスリーブ内を接続具が移動するため、従来の接続のための凹部を無くすことができ、凹部の形成やコンクリートの二度打ちを解消することができ、また凹部の補修跡を無くすことができる。また、従来の反力板を用いた場合の先行区と後行区による段階的な施行を無くすことができ、一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができる。さらに、一般に使用されているねじカップラーや圧着グリップを使用することができ、簡単で安価な接続装置により、上記した本発明の目的を達成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施の形態に基づいて説明する。この実施形態はアンボンドPC鋼線(PC鋼より線)を接続具で接続して鉄筋コンクリート構造のスラブにプレストレスを導入する例である。図1は本発明の方法に用いる接続装置の一例を示したものである。図2は他の例を示したものである。
【0018】
図1の接続装置は、一般に使用されているねじカップラー10を使用した場合であり、アンボンドPC鋼線2,2の接合端部同士を連結一体化したねじカップラー10を所定長さのスリーブ11内にアンボンドPC鋼線2の軸方向に移動自在に収納して構成されている。
【0019】
ねじカップラー10は、例えば図1(b) に示すように、一対の筒体10a,10aと、これら筒体同士を連結する連結ねじ部材10bから構成されている。筒体10aは、一端が開口し、他端にPC鋼線2の挿通孔が形成された蓋板10cが設けられている。アンボンドPC鋼線2の接合端部に固定されたグリップ12が、筒体10a内に挿入され、蓋板10cの係止により固定される。筒体10aの先端開口部の雌ねじを連結ねじ部材10bの雄ねじにねじ込むことにより、一対の筒体10a,10aが連結一体化される。
【0020】
スリーブ11は、コンクリートC内に埋設されるものであり、塩化ビニールパイプなどから構成する。スリーブ11の内径は、ねじカップラー10の外径より若干大きくし、ねじカップラー10が円滑にスライドできるようにする。スリーブ11の長さは、緊張によるねじカップラー10の移動量を考慮して決定され、ねじカップラー10が支障無く移動できるようにする。
【0021】
なお、スリーブ11は、例えば半径方向や軸方向に2分割とし、工場や現場でねじカップラー10に被せて取付けられるようにする。取付けた後は、2分割したスリーブを粘着テープ等で一体化する。
【0022】
また、アンボンドPC鋼線2は、例えば、ポリエチレン製のシース3により被覆され、シース3内にグリース等が充填されている。シース3は、コンクリートCやスリーブ11に対して固定されるため、スリーブ11内を移動するねじカップラー10の移動の邪魔にならないように、移動方向の前方の移動部分を剥離しておく。また、移動後は、移動方向と反対側のアンボンドPC鋼線2が剥き出しになるため、スリーブ11内にはグリース等の防錆材を充填しておくのが好ましい。
【0023】
図2の接続装置は、一般に使用されている圧着グリップ20を利用した場合であり、アンボンドPC鋼線2の接合端部に固定した圧着グリップ20を対向配置し、これら一対の圧着グリップ20,20を連結筒体21で連結一体化し、この連結筒体21をスリーブ11内にアンボンドPC鋼線2の軸方向に移動自在に収納して構成されている。
【0024】
圧着グリップ20は、アンボンドPC鋼線2の接合端部に圧着により固定されるものである。連結筒体21は、金属製の円筒体を半径方向に2分割し、一対の圧着グリップ20,20に簡単に被せて取付けられるようにする。取付けた後は、2分割された半円状の筒体21a,21aを固定してもよいし、スリーブ11内に挿入すれば、離れることがないので、そのままでもよい。アンボンドPC鋼線2の引張力に対しては、連結筒体21のPC鋼線挿通孔が形成された蓋板21bに圧着グリップ20が係止され、一対の圧着グリップ20,20の連結が外れることはない。連結筒体21の材質は、前記のように強度が必要なため、SS材などの鋼材が好ましい。その他の構成は、図1の場合と同様である。
【0025】
以上のような構成において、次のような手順で緊張を行う。
【0026】
(1) 型枠内にアンボンドPC鋼線2を配設し、上端筋や下端筋へ結束線で固定すると共にスペーサーにより支持し、所定の位置にセットする。
【0027】
(2) アンボンドPC鋼線2,2の接続部分には、ねじカップラー10や連結筒体21を内蔵したスリーブ11が工場等で予め取付けられており、あるいは、現場において、アンボンドPC鋼線2,2の接合端部同士をねじカップラー10や連結筒体21で連結一体化し、次いでスリーブ11を取付ける。
【0028】
(3) 型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、アンボンドPC鋼線2を緊張すれば、緊張作業が終了する。
【0029】
なお、以上は、スラブに適用した場合について説明したが、これに限らず、その他のプレストレスコンクリート構造物にも本発明を適用できることはいうまでもない。また、アンボンドPC鋼線(PC鋼より線)に限らず、その他のPC鋼材の接続・緊張にも本発明を適用できる。
【0030】
【発明の効果】
前述のとおり、本発明は、コンクリートに埋設されたスリーブ内をねじカップラーや圧着グリップなどからなる接続具が移動するようにしたため、次のような効果が得られる。
【0031】
(1) 従来の接続のための凹部を無くすことができ、凹部の形成やコンクリートの二度打ちを解消することができ、施工性が向上し、また凹部の補修跡を無くすことができる。
【0032】
(2) 従来の反力板を用いた場合の先行区と後行区による段階的な施行を無くすことができ、一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができ、施工性が大幅に向上する。
【0033】
(3) 一般に使用されているねじカップラーや圧着グリップを使用することができ、簡単で安価な接続装置により上記した本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いる接続装置の一例を示したものであり、(a) は鉛直断面図、(b) はねじカップラーの縦断面図である。
【図2】本発明の方法に用いる接続装置の他の例を示したものであり、(a) は鉛直断面図、(b) は圧着グリップと連結筒体の横断面図である。
【図3】従来の凹部を用いるPC鋼材の接続・緊張方法を工程順に示す鉛直断面図である。
【図4】従来の反力板を用いるPC鋼材の接続・緊張方法を工程順に示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
1……スラブ
2……アンボンドPC鋼線
3……シース
10……ねじカップラー
10a…筒体
10b…連結ねじ部材
10c…蓋板
11……スリーブ
12……グリップ
20……圧着グリップ
21……連結筒体
21a…筒体
21b…蓋板
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート構造のスラブや梁などの主要構造部材の内部にPC鋼線などのPC鋼材を挿通して緊張し、圧縮力を導入してなるプレストレス構造において、PC鋼材の端部同士を接続して緊張するPC鋼材の緊張方法およびこの方法に使用するPC鋼材の接続装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、鉄筋コンクリート構造のスラブ内にPC鋼材としてのアンボンドPC鋼線を挿通して緊張し、その反力によって構造物にプレストレス(圧縮力)を導入することで、プレストレス構造物とする方法が知られている。そして、プレストレス構造物が大きい場合には、施工性の向上などを目的として、アンボンドPC鋼線を分割し、分割したPC鋼線の接合端部同士を接続具で接続することが行われている。
【0003】
図3、図4は、従来のアンボンドPC鋼線の接続と緊張方法の例を示したものであり、図3の例では、鉄筋コンクリート構造のスラブ1におけるアンボンドPC鋼線2の接続箇所に予め所定の長さの凹部50を形成しておき、この凹部50内の片側に位置したPC鋼線の接合端部同士をねじカップラー51で接続し、アンボンドPC鋼線2を図の右側方向に緊張する。この緊張により、ねじカップラー51は図の右側に数10cm移動する。その後、シースから剥き出しになったPC鋼線2に適当な被覆処理を行い、凹部50内にコンクリートを打設する。
【0004】
図4の例では、図の右側のスラブ1のコンクリートの打設が終了した先行区のアンボンドPC鋼線2を緊張して反力板60とねじカップラー61の片側筒体61aとで定着し、図の左側のコンクリートが打設されていない後行区のアンボンドPC鋼線2の接合端部の片側筒体61bをねじ部材61cを介して接続する。その後、後行区のコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、後行区側のアンボンドPC鋼線2の緊張を行う。
【0005】
また、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。この発明は、PC鋼線とPC鋼線を互いに確実に接続するための接続具の改良に関するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−349001号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の図3に示す方法では、所定の長さの凹部50を形成する手間がかかると共に、この凹部50に後からコンクリートを打設するため、コンクリートの二度打ちとなり、施行性が低下し、また、凹部50のコンクリートが補修跡のように残る、などの問題があった。
【0008】
従来の図4に示す方法では、順に、先行区のコンクリート打設とPC鋼線の緊張、後行区のPC鋼線の接続とコンクリート打設、後行区側のPC鋼線の緊張を行わなければならず、施行効率が悪いなどの問題があった。
【0009】
本発明は、前述のような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、アンボンドPC鋼線等のPC鋼材同士を接続して緊張する場合に、従来の接続のための凹部を無くすことができ、また従来のように先行区と後行区に分けることなく一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができ、施行性の大幅な向上を図ることのできるPC鋼材の緊張方法および接続装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、端部同士が接続具を介して接続されるPC鋼材(アンボンドPC鋼線など)の緊張方法であり、PC鋼材の端部同士を一体的に連結した接続具を該接続具がPC鋼材軸方向に移動可能な長さのスリーブ内に収納し、これらPC鋼材及びスリーブを所定の設置位置に配置した後、コンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、PC鋼材を緊張し、前記接続具をスリーブ内で移動させることを特徴とするPC鋼材の緊張方法である。
【0011】
本発明の請求項2は、PC鋼材(アンボンドPC鋼線など)の端部同士を接続する接続装置であり、PC鋼材の端部同士を一体的に連結する接続具と、この接続具がPC鋼材軸方向に移動可能に収納される所定の長さのスリーブから構成されていることを特徴とするPC鋼材の接続装置である。
【0012】
請求項1,2において、スリーブは塩化ビニール等の合成樹脂製や金属製のパイプを使用することができ、その内径は接続具の外径よりも若干大きくして、接続具が円滑にスライドできるようにする。その長さは、接続具が緊張により移動する距離を考慮して決定する。また、アンボンドPC鋼線でシースが設けられている場合には、スリーブ内の接続具が移動する範囲は予めシースを剥いでおく。また、スリーブ内にはグリース等の防錆剤を充填しておくのが好ましい。
【0013】
本発明の請求項3は、請求項1に記載の接続装置において、接続具が、PC鋼材端部のグリップが挿入固定された筒体同士をねじで連結してなるねじカップラーであることを特徴とするPC鋼材の接続装置である。即ち、接続具に一般に用いられている、一対の筒体とこれら筒体同士を連結する連結ねじ部材からなるねじカップラーを使用した場合である。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項1に記載の接続装置において、接続具が、PC鋼材端部に固定された圧着グリップと、一対の圧着グリップを外側から覆って連結一体化する連結筒体から構成されるていることを特徴とするPC鋼材の接続装置である。即ち、接続具に一般に用いられている圧着グリップを利用した場合であり、この場合には、対向配置した一対の圧着グリップを、両端の蓋板にPC鋼材の挿通孔が形成された円筒状の連結筒体で連結一体化して接続具とする。連結筒体は、半径方向に2分割し、分割された断面半円状の筒体を一対の圧着グリップに被せて取付けるようにする。
【0015】
以上のような構成において、工場等で予め接続具と例えば2分割したスリーブを装着して接続されたPC鋼材を所定の位置にセットし、あるいは、所定の位置にセットしたPC鋼材の接合端部同士を現場で接続具で接続して例えば2分割したスリーブを被せ、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後にPC鋼材を緊張する。
【0016】
コンクリートに埋設されたスリーブ内を接続具が移動するため、従来の接続のための凹部を無くすことができ、凹部の形成やコンクリートの二度打ちを解消することができ、また凹部の補修跡を無くすことができる。また、従来の反力板を用いた場合の先行区と後行区による段階的な施行を無くすことができ、一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができる。さらに、一般に使用されているねじカップラーや圧着グリップを使用することができ、簡単で安価な接続装置により、上記した本発明の目的を達成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施の形態に基づいて説明する。この実施形態はアンボンドPC鋼線(PC鋼より線)を接続具で接続して鉄筋コンクリート構造のスラブにプレストレスを導入する例である。図1は本発明の方法に用いる接続装置の一例を示したものである。図2は他の例を示したものである。
【0018】
図1の接続装置は、一般に使用されているねじカップラー10を使用した場合であり、アンボンドPC鋼線2,2の接合端部同士を連結一体化したねじカップラー10を所定長さのスリーブ11内にアンボンドPC鋼線2の軸方向に移動自在に収納して構成されている。
【0019】
ねじカップラー10は、例えば図1(b) に示すように、一対の筒体10a,10aと、これら筒体同士を連結する連結ねじ部材10bから構成されている。筒体10aは、一端が開口し、他端にPC鋼線2の挿通孔が形成された蓋板10cが設けられている。アンボンドPC鋼線2の接合端部に固定されたグリップ12が、筒体10a内に挿入され、蓋板10cの係止により固定される。筒体10aの先端開口部の雌ねじを連結ねじ部材10bの雄ねじにねじ込むことにより、一対の筒体10a,10aが連結一体化される。
【0020】
スリーブ11は、コンクリートC内に埋設されるものであり、塩化ビニールパイプなどから構成する。スリーブ11の内径は、ねじカップラー10の外径より若干大きくし、ねじカップラー10が円滑にスライドできるようにする。スリーブ11の長さは、緊張によるねじカップラー10の移動量を考慮して決定され、ねじカップラー10が支障無く移動できるようにする。
【0021】
なお、スリーブ11は、例えば半径方向や軸方向に2分割とし、工場や現場でねじカップラー10に被せて取付けられるようにする。取付けた後は、2分割したスリーブを粘着テープ等で一体化する。
【0022】
また、アンボンドPC鋼線2は、例えば、ポリエチレン製のシース3により被覆され、シース3内にグリース等が充填されている。シース3は、コンクリートCやスリーブ11に対して固定されるため、スリーブ11内を移動するねじカップラー10の移動の邪魔にならないように、移動方向の前方の移動部分を剥離しておく。また、移動後は、移動方向と反対側のアンボンドPC鋼線2が剥き出しになるため、スリーブ11内にはグリース等の防錆材を充填しておくのが好ましい。
【0023】
図2の接続装置は、一般に使用されている圧着グリップ20を利用した場合であり、アンボンドPC鋼線2の接合端部に固定した圧着グリップ20を対向配置し、これら一対の圧着グリップ20,20を連結筒体21で連結一体化し、この連結筒体21をスリーブ11内にアンボンドPC鋼線2の軸方向に移動自在に収納して構成されている。
【0024】
圧着グリップ20は、アンボンドPC鋼線2の接合端部に圧着により固定されるものである。連結筒体21は、金属製の円筒体を半径方向に2分割し、一対の圧着グリップ20,20に簡単に被せて取付けられるようにする。取付けた後は、2分割された半円状の筒体21a,21aを固定してもよいし、スリーブ11内に挿入すれば、離れることがないので、そのままでもよい。アンボンドPC鋼線2の引張力に対しては、連結筒体21のPC鋼線挿通孔が形成された蓋板21bに圧着グリップ20が係止され、一対の圧着グリップ20,20の連結が外れることはない。連結筒体21の材質は、前記のように強度が必要なため、SS材などの鋼材が好ましい。その他の構成は、図1の場合と同様である。
【0025】
以上のような構成において、次のような手順で緊張を行う。
【0026】
(1) 型枠内にアンボンドPC鋼線2を配設し、上端筋や下端筋へ結束線で固定すると共にスペーサーにより支持し、所定の位置にセットする。
【0027】
(2) アンボンドPC鋼線2,2の接続部分には、ねじカップラー10や連結筒体21を内蔵したスリーブ11が工場等で予め取付けられており、あるいは、現場において、アンボンドPC鋼線2,2の接合端部同士をねじカップラー10や連結筒体21で連結一体化し、次いでスリーブ11を取付ける。
【0028】
(3) 型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、アンボンドPC鋼線2を緊張すれば、緊張作業が終了する。
【0029】
なお、以上は、スラブに適用した場合について説明したが、これに限らず、その他のプレストレスコンクリート構造物にも本発明を適用できることはいうまでもない。また、アンボンドPC鋼線(PC鋼より線)に限らず、その他のPC鋼材の接続・緊張にも本発明を適用できる。
【0030】
【発明の効果】
前述のとおり、本発明は、コンクリートに埋設されたスリーブ内をねじカップラーや圧着グリップなどからなる接続具が移動するようにしたため、次のような効果が得られる。
【0031】
(1) 従来の接続のための凹部を無くすことができ、凹部の形成やコンクリートの二度打ちを解消することができ、施工性が向上し、また凹部の補修跡を無くすことができる。
【0032】
(2) 従来の反力板を用いた場合の先行区と後行区による段階的な施行を無くすことができ、一度にコンクリートの打設と緊張を行うことができ、施工性が大幅に向上する。
【0033】
(3) 一般に使用されているねじカップラーや圧着グリップを使用することができ、簡単で安価な接続装置により上記した本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いる接続装置の一例を示したものであり、(a) は鉛直断面図、(b) はねじカップラーの縦断面図である。
【図2】本発明の方法に用いる接続装置の他の例を示したものであり、(a) は鉛直断面図、(b) は圧着グリップと連結筒体の横断面図である。
【図3】従来の凹部を用いるPC鋼材の接続・緊張方法を工程順に示す鉛直断面図である。
【図4】従来の反力板を用いるPC鋼材の接続・緊張方法を工程順に示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
1……スラブ
2……アンボンドPC鋼線
3……シース
10……ねじカップラー
10a…筒体
10b…連結ねじ部材
10c…蓋板
11……スリーブ
12……グリップ
20……圧着グリップ
21……連結筒体
21a…筒体
21b…蓋板
Claims (4)
- 端部同士が接続具を介して接続されるPC鋼材の緊張方法であり、PC鋼材の端部同士を一体的に連結した接続具を該接続具がPC鋼材軸方向に移動可能な長さのスリーブ内に収納し、これらPC鋼材及びスリーブを所定の設置位置に配置した後、コンクリートを打設し、コンクリートの硬化後、PC鋼材を緊張し、前記接続具をスリーブ内で移動させることを特徴とするPC鋼材の緊張方法。
- PC鋼材の端部同士を接続する接続装置であり、PC鋼材の端部同士を一体的に連結する接続具と、この接続具がPC鋼材軸方向に移動可能に収納される所定の長さのスリーブから構成されていることを特徴とするPC鋼材の接続装置。
- 請求項1に記載の接続装置において、接続具が、PC鋼材端部のグリップが挿入固定された筒体同士をねじで連結してなるねじカップラーであることを特徴とするPC鋼材の接続装置。
- 請求項1に記載の接続装置において、接続具が、PC鋼材端部に固定された圧着グリップと、一対の圧着グリップを外側から覆って連結一体化する連結筒体から構成されるていることを特徴とするPC鋼材の接続装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003141592A JP2004346501A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | Pc鋼材の緊張方法および接続装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003141592A JP2004346501A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | Pc鋼材の緊張方法および接続装置 |
Publications (1)
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JP2004346501A true JP2004346501A (ja) | 2004-12-09 |
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ID=33529908
Family Applications (1)
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JP2003141592A Pending JP2004346501A (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | Pc鋼材の緊張方法および接続装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004346501A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN103643766A (zh) * | 2013-12-09 | 2014-03-19 | 天津市金万方钢结构有限公司 | 一种钢结构用张紧连接件 |
CN103643767A (zh) * | 2013-12-09 | 2014-03-19 | 天津市金万方钢结构有限公司 | 一种钢结构用张紧装置 |
JP2016113875A (ja) * | 2014-12-18 | 2016-06-23 | 旭コンクリート工業株式会社 | コンクリート構造物、コンクリート構造物の構築方法 |
-
2003
- 2003-05-20 JP JP2003141592A patent/JP2004346501A/ja active Pending
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CN103643766A (zh) * | 2013-12-09 | 2014-03-19 | 天津市金万方钢结构有限公司 | 一种钢结构用张紧连接件 |
CN103643767A (zh) * | 2013-12-09 | 2014-03-19 | 天津市金万方钢结构有限公司 | 一种钢结构用张紧装置 |
CN103643766B (zh) * | 2013-12-09 | 2016-03-02 | 天津市金万方钢结构有限公司 | 一种钢结构用张紧连接件 |
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