JP2004344941A - 高温鋼板への転写防止マーキング方法 - Google Patents

高温鋼板への転写防止マーキング方法 Download PDF

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隆公 村井
Takashi Aota
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Abstract

【課題】インクジェットマーキング装置により鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字しても巻取り時の転写を発生することがなく、非接触で任意の文字を印字することができ、メンテナンスも大幅に簡易化できる高温鋼板への転写防止マーキング方法を提供する。
【解決手段】鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字を行うマーキング方法であって、前記印字の乾燥後のインク高さを4.5μm以下とすることを特徴とする高温鋼板への転写防止マーキング方法。好ましくは、前記印字を行う際のインク濃度を2.0〜4.0(wt%)とする。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字を行うマーキング方法に関する。
具体的には、高温鋼板の表面に非接触にマーキングを行うインクジェット式マーキング装置(インクジェットマーカー)により印字を行うマーキング方法において、鋼板を巻き取る際に発生する転写を防止するマーキング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板にマーキングする装置としては、鋼板表面にマーカーを接触させて印字するペン式マーキング装置と、鋼板表面にインクを噴射して印字する非接触のインクジェット式マーキング装置とがある。
このペン式のマーキング装置では印字ヘッドであるフェルト生地が摩擦熱により乾燥してしまうため、定期的な溶媒の滴下が必要である。
また、ペン式マーキング装置は線状模様のみをマーキングするのに対し、インクジェット式マーキング装置は、あらゆる文字を印字することができる点で優れているため、インクジェット式マーキング装置が適用されるケースが多くなっている。
【0003】
このインクジェット式マーキング装置を高温鋼板に適用する場合には以下のような問題点があった。
通常、鋼板へのマーキングは、鋼板温度が常温の状態で行うが、鋼板表面に施される皮膜の種類によっては、鋼板を冷却できない場合がある。
例えば、特開2001−131762号公報に開示されている自動車車体用亜鉛系メッキ鋼板の自動車車体の外面に相当する面にはリン酸亜鉛皮膜を有し、内面に相当する面にはリン酸亜鉛皮膜とMgを含有するリン酸皮膜との複合リン酸塩皮膜を有しており、この複合リン酸塩皮膜は水に溶け易い性質を有しているため、水冷することができない。
従って、鋼板にマーキングする際の鋼板温度は60℃以上の高温になっており、この高温鋼板に従来のインクジェット式マーキング装置を用いてマーキングして巻き取ったところ、マーキングされた印字が巻き取られた鋼板の非印字面に転写されてしまうという問題があった。
また、印字不良が発生すると、インクジェット式マーキング装置の調整等のメンテナンスを行う必要があり多大な時間と労力が必要であった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−131762号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インクジェットマーキング装置により鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字しても巻取り時の転写を発生することがなく、非接触で任意の文字を印字することができ、メンテナンスも大幅に簡易化できる高温鋼板への転写防止マーキング方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために、鋭意検討の結果なされたものであり、印字の乾燥後のインク高さ、印字する際のインク濃度、インク温度を適正範囲にすることによって、インクジェットマーキング装置により鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字しても巻取り時の転写を発生することがなく、非接触で任意の文字を印字することができ、メンテナンスも大幅に簡易化できる高温鋼板への転写防止マーキング方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字を行うマーキング方法であって、前記印字の乾燥後のインク高さを4.5μm以下とすることを特徴とする高温鋼板への転写防止マーキング方法。
(2)前記印字を行う際のインク濃度を2.0〜4.0wt%とすることを特徴とする(1)に記載の高温鋼板への転写防止マーキング方法。
(3)前記印字を行う際のインク温度を25℃以下とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の高温鋼板への転写防止マーキング方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図1乃至図6を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明のマーキング装置の実施形態を例示する図である。
図1において、1は鋼板、2はサポートロール、3はインクジェットマーカーノズル、4はインクジェットマーカー制御盤、5はインクジェットマーカー搬送架台、7は冷却装置を示す。
図1において、インクジェットマーカーには、インクジェットマーカーノズル3、インクジェットマーカー制御盤4、インクジェットマーカー搬送架台5が設置されており、インクジェットマーカーノズル3が移動しながら鋼板1にインクを噴射することによってマーキングすることができる。
【0008】
本発明が対象とする鋼板温度が60℃以上の高温鋼板であって、本実施形態では60〜120℃まで加熱されており、その鋼板の裏面に対し、インクジェット式マーキングノズルによってインクを噴射することで鋼板に印字を行う。
またインクジェットマーカー制御盤4内にあるインク濃度を2.0〜4.0wt%(重量%、以下同じ)とし、印字する際のインク濃度を常温の鋼板にマーキングする場合の約20%以下に低減させ、乾燥後のインク高さを4.5μm以下にすることによって、巻取り時に鋼板の非印字面への転写を防止することができる。
ここに、インク濃度とは、染料と溶剤(エタノール)を合計したwtに対する染料のwt%をいい、印字する際(乾燥する前)の濃度をいう。
また、インク高さとは、鋼板表面から印字の頂部までの高さをいい、乾燥後の高さをいう。
また、インクジェットマーカーノズル3の先端部には、図2に示すような防熱板6が設けられており、鋼板1からの輻射熱を防止することができる。
さらに、インクジェットノズルの近傍にノズルを冷却する冷却装置7を設置することによって、マーキングする際のインク温度を25℃以下にして、インクの粘度を適正に保つことができる。
【0009】
図3は、インクジェットマーカーにより、鋼板表面にマーキングされる様子を示す模式図である。
図3において、鋼板温度が、例えば60〜120℃の高温鋼板が矢印の向きに搬送される途中で、インクジェットマーカーによって、鋼板の下面に印字され、印字は、図3に模式的に示すようなドットの集まりによって文字を形成することができる。
発明者等は、従来のように、インク濃度が約20%と高いインクを60℃以上の高温鋼板の表面に噴射した場合に転写が発生するメカニズムは以下のように推定した。
インク濃度が約20%と高いインクを60℃以上の高温鋼板の表面に噴射すると、インクが鋼板表面に広がらないで、小さなドットのまま溶剤(エタノール)が蒸発するため、インク高さが高いまま乾燥してしまい、図4に示すように、鋼板を巻き取ったときに、鋼板の非印字面に印字の頂部が付着して文字が転写されてしまうものと推定される。
そこで、本発明等は、乾燥後のインク高さを4.5μm以下とすることによって、鋼板の非印字面への転写を防止することができることを見出した。
【0010】
図5は、乾燥後のインク高さと転写との関係を示す図である。
インク高さが4.5μm以下の場合は巻取り時の転写が発生せず、4.5μmを超えた6.5μmの場合は転写が発生した。また、転写後のインク高さを測定したところ約4.5μmだった。
以上から、乾燥後のインク高さを4.5μm以下にすることによって、巻取り時の非印字面への転写を防止することができることが判明した。
図6は、印字する際のインク濃度(wt%)と転写との関係を示す図である。
図6の横軸は印字する際(乾燥前)のインク濃度(wt%)を示し、縦軸は転写の有無を判定するために鋼板に落下させる荷重の衝撃エネルギー(J)を示す。また、図6における○印は転写なし、×印は転写ありを示す。
図6において、鋼板を巻き取る条件に相当する衝撃エネルギー(J)は、1.0〜2.3(J)の範囲であり、この範囲で転写が発生しないインク濃度は4.0wt%以下であることがわかる。
なお、インク濃度が2.0%未満では、正常なドットの後方に小さなドットが分離して形成されるドット不良や、インクが偏向電極に接触するドット偏向不良が発生するため、インク濃度の適正範囲は2.0〜4.0wt%である。
以上のように、インク濃度を2.0〜4.0wt%とすることにより、溶媒(エタノール)の比率を増やすことによって、インクの蒸発時間が長くなる。
その結果、インクが広がり易くなるので、ドットの広がり面積を増大させ、インク内の固形分(染料)を少なくすることにより、印字高さを4.5μm以下に低くすることができ、巻き取り時の非印字面への転写を防止することができる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、印字の乾燥後のインク高さ、印字する際のインク濃度、インク温度を適正範囲にすることによって、インクジェットマーキング装置により鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字しても巻取り時の転写を発生することがなく、非接触で任意の文字を印字することができ、メンテナンスも大幅に簡易化できる高温鋼板への転写防止マーキング方法を提供することができ、具体的には下記のような産業上有用な著しい効果を奏する。
1)鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に対しても、鋼板全長に対し印字可能であり、インクジェットマーカーの調整などのメンテナンスを大幅に簡易化することができる。
2)インクジェットマーカーノズルの近傍に、冷却装置を設けて局所的な冷却を行うことにより、印字の際のインク温度を25℃以下にして、インクの粘度を適正に保つことで、インク濃度低下前後において印字精度の低下を防止することができる。
3)インク濃度を適正範囲にして、インク高さ低下させるだけなので設備費はかからない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマーキング装置の実施形態を例示する図である。
【図2】本発明のマーキング装置の実施形態を例示する詳細図である。
【図3】インクジェットマーカーにより、鋼板表面にマーキングされる様子を示す模式図である。
【図4】鋼板の巻取り時に、鋼板の非印字面に印字の頂部が付着して文字が転写される様子を示す図である。
【図5】乾燥後のインク高さと転写との関係を示す図である。
【図6】印字する際のインク濃度(wt%)と転写との関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・鋼板、
2・・・サポートロール、
3・・・インクジェットマーカーノズル、
4・・・はインクジェットマーカー制御盤、
5・・・インクジェットマーカー搬送架台、
6・・・防熱板、
7・・・冷却装置

Claims (3)

  1. 鋼板温度が60℃以上の高温鋼板に印字を行うマーキング方法であって、
    前記印字の乾燥後のインク高さを4.5μm以下とすることを特徴とする高温鋼板への転写防止マーキング方法。
  2. 前記印字を行う際のインク濃度を2.0〜4.0(wt%)とすることを特徴とする請求項1に記載の高温鋼板への転写防止マーキング方法。
  3. 前記印字を行う際のインク温度を25℃以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高温鋼板への転写防止マーキング方法。
JP2003145585A 2003-05-23 2003-05-23 高温鋼板への転写防止マーキング方法 Withdrawn JP2004344941A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109648206A (zh) * 2018-12-25 2019-04-19 武汉鹏源激光技术有限公司 钢板进炉前标记方法

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