JP2004344836A - 油分回収材 - Google Patents
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Abstract
【課題】事故や不法投棄等によって水域に流出した油類を回収するのに使用される油分回収材として、流出水面に浮かんだ状態で油分を効率よく選択的に吸収でき、油分吸収能が大きく、大量の油流出に対応して多量に使用しても費用が少なくて済み、使用後には有用な資源として再利用できるものを提供する。
【解決手段】廃プラスチック再生不織布からなる袋体1と、袋体1内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物2とで構成されてなる。
【選択図】 図2
【解決手段】廃プラスチック再生不織布からなる袋体1と、袋体1内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物2とで構成されてなる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンカー等の船舶事故、貯油タンクやパイプラインの破損事故、不法投棄等によって海、河川、湖沼等の水域に流出した油類を回収するのに好適な油分回収材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石油類を海上輸送するタンカーが極めて大型化する一方、世界各国でエネルギー供給の安定性確保のために臨海地に大規模な石油備蓄基地が造られ、また産油地から国境を越えるような長大な送油パイプラインも多く敷設されており、これらに伴って事故等で海洋を始めとする水域に流出する油の量も極めて膨大になることが多く、各地で度々大規模な海洋油汚染を引き起こして重大な問題になっている。
【0003】
従来より、原油や重油等の海洋流出が発生した場合、専ら流出海域にオイルフェンスを張って拡散を防ぎ、浮遊している油を水面にばらまいた油吸着マット等の油吸着材に吸着させて回収する方法が採られているが、オイルフェンスは風波が強い場合に役に立たない上、油吸着材によって実際に回収される油量は僅かであり、殆どの油は未回収のままで自然の浄化力に任すことになり、汚染防止には程遠い現状である。例えば、タンカー事故等に伴って海上に流出した原油や重油等は、浮遊している内に揮発成分の蒸発と波の作用で次第にボール状に固まり、長期間を経て岸辺に打ち上げられたり沈降することになるが、その前に大量の浮遊油分がどろどろの状態で沿岸に漂着し、これを人海戦術で汲み取っても対処しきれず、沿岸の豊かな生態系とそれに依存する漁業に壊滅的な打撃を受けるといった事例が多発している。
【0004】
なお、原油等の海洋流出に対処する他の手段として、界面活性剤系の有機処理剤を散布して油分を海中に溶け込ませたり、放水によって油分を分散させたりする方法もある。しかるに、前者の方法では、大量に散布した有機処理剤による新たな汚染が重なることになり、却って問題を深刻化させる懸念が多分にある。また、後者の方法は、油分を分散して目立ちにくくするだけであり、汚染の集中は避けられても広い海域に油分が拡がってしまうから、海洋汚染自体の解決にはならないばかりか、油分回収を困難にさせることに繋がる。従って、海洋流出に対する現実的な対策は、高性能で安価な油吸着材により、浮遊する油分を迅速に効率よく吸着させて回収することである。
【0005】
従来、油吸着材としては、親油性樹脂繊維を主材とした油分吸収マットが一般的に使用されているが、この他に袋体に油吸着性の粉末や繊維等を詰めたものも提案されている。しかしながら、これら油吸着材は、タンカー事故等による膨大な油流出に対応するには多量に用いる必要があるが、いずれも高価であるために多く使用すれば費用が嵩むこともあって、実際に使用される量が少ない上、それら個々の油吸収力も小さいため、殆どの場合は流出油分に対して油吸着材にて回収される油分量は微々たるものになっている。
【0006】
油吸着材としての有用性を左右するのはコストと油吸収力、使用後の処理性等であるが、例えば木炭のような多孔性物質の粉末は、大きな油吸収力を有するが、これを袋詰めして水上に浮かべた場合、親水性が強いために先に水を吸収してしまい、結果として油分の吸収量が非常に少なくなる上、水の吸収で全体の比重が水よりも大きくなり、水中に沈んで回収不能になるという難点がある。
【0007】
なお、厨房排水中の油回収を主目的として、沈降防止のために浮力付与材を用いた油吸着袋も提案されている(特許文献1)。この油吸着袋は、油透過性の袋本体と、該袋本体内に封入される粉末状又は繊維状の油吸着材と、発泡ポリプロピレンの如き撥水性及び耐油性を有して比重の小さい浮力付与材とで構成され、厚板状とした浮力付与材を袋本体内に収納したり、やや細かい粒状にした浮力付与材を油吸着材と混合して袋本体内に封入するようにしている。そして、油吸着材に間伐材等の炭化処理物を用いる場合、300℃付近での炭化処理によって表面にタール様の熱分解物を被覆させたものとし、その撥水性によって水を殆ど吸着させずに油をよく吸着させるようにしている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−320966
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案に係る油吸着袋では、浮力付与材の分だけ袋本体内に収容する油吸着材の量が減ることになるが、浮力付与材は油吸収能を持たないために袋全体としての油吸収能力が低下する上、使用後の油を吸着して軟泥状になった油吸着材の処理に加え、油に塗れた浮力付与材の処理にも困難をきたすことになる。また、油吸着材とする前記炭化処理物は、表面を被覆するタール様の熱分解物にて水の吸着は抑えられても、この被覆によって多孔構造の表面が埋められてしまうから、油吸収能力自体が低下することになる。
【0010】
本発明は、上述の情況に鑑み、事故や不法投棄等によって水域に流出した油類を回収するのに使用される油分回収材として、流出水面に浮かんだ状態で油分を効率よく選択的に吸収できる上、その油分吸収能が大きく、しかも安価であるために大量の油流出に対応して多量に使用しても費用が少なくて済み、加えて使用後には有用な資源として再利用できるものを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る油分回収材は、図面の参照符号を付して示せば、廃プラスチック再生不織布からなる袋体1と、この袋体1内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物2とで構成されてなるものとしている。
【0012】
請求項2の発明は、上記請求項1の油分回収材において、前記袋体1の廃プラスチック再生不織布が塩素不含熱可塑性樹脂を主体とする構成としている。
【0013】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の油分回収材において、前記炭化物2の塊状物は、木材又は/及び竹材を含む炭化用材料の酸素不足状態での最高温度が600℃以上となる過程を経る自発燃焼にて得られるものとしている。
は2に記載の油分回収材。
【0014】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの油分回収材において、前記炭化物2は、木炭又は/及び竹炭の塊状物と共に、有機質廃物の炭化物を含むものとしている。
【0015】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかの油分回収材において、前記袋体1に索体挿通部3が設けられてなるものとしている。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る油分回収材10を示す。この油分油分回収材10は、廃プラスチック再生不織布からなる袋体1と、この袋体1内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物2が収容されたものであり、袋体1の縁部1aには穴3aをハトメ3bで補強した索体挿通部3が設けてある。
【0017】
このような油分回収材10は、油分が浮遊している水域に投入すれば、袋体1及び炭化物2の見掛け比重が共に水よりも小さいために水面を浮遊するが、袋体1を構成する廃プラスチック再生不織布が親油性で且つ強い撥水性を備えるために油分を選択的に吸収し、この袋体1に吸収された油分を内側から多孔質の炭化物2が急速に吸い取ってゆくから、該炭化物2の吸着能力が飽和に達するまで非常に効率よく迅速に浮遊油分を取り込むことになる。しかも、袋体1内に入り込む水は少なく、多孔質で極めて表面積の大きい炭化物2による高い吸着能の大部分が油分吸収に費やされるため、油分回収材10全体として非常に大きな油分吸収能力を発揮する上、水よりも比重の小さい油分を選択的に吸収していることから、炭化物2の吸着能力が飽和に達した段階でも油分回収材10は確実に浮遊状態を保ち、もって油分回収材10が水中に沈降して回収に支障をきたすような懸念はない。
【0018】
なお、この実施形態の油分回収材10では、袋体1の索体挿通部3を利用し、ロープ等で複数の油分回収材10…同士を繋ぐことにより、波浪等で逸散するのを防止して回収し易くできると共に、水面からの引き上げ作業も容易になり、また船舶によって多数の油分回収材10…をロープ等で曳航しながら油分回収を行うことも可能である。更に、図3に示すように、一本のロープ4に多数の油分回収材10…を所用間隔置きに繋いだ形態とすれば、オイルフェンスに兼用する形で油分の流出水域を包囲し、この包囲を次第に狭めてゆくような手法で油分の拡散を防止しつつ効果的な油分回収を行える。また、袋体1を染料等で黄色等の目立ち易い色調に着色しておけば、油分回収材10自体を船舶等で回収する際に遠方からでも見つけ易く、それだけ回収作業の労力及び時間を軽減できる。
【0019】
かくして浮遊油分の回収に供した油分回収材10は袋体1を開いて内部の油分を吸着した炭化物2を取り出すが、この炭化物2は、木炭や竹炭の塊状物を主体としていることから、飽和状態まで油分を吸着していても表面が粘着性を帯びる程度で、固形物として容易に取り扱える。しかも、取り出した炭化物2は、水分含量が少なく、その水分も放置乾燥や簡単な乾燥処理で揮散するため、容易に着火燃焼可能な燃料として有効利用できる。一方、油分を吸着した袋体1は、焼却処理してもよいが、後述するように炭化処理し、土壌改質材、吸着剤、脱臭剤等の様々な用途に有用な炭化物として再利用できると共に、この油分回収材10における炭化物2の一部としても利用可能となる。
【0020】
ところで、過去において何度も発生した大規模な原油流出事故では、深刻な油汚染に加え、人海戦術等で回収した大量の油分の処置が問題化している。このような回収油分には有効な利用法がなく、最終的には焼却せざるを得ないが、大気汚染の問題もあってドラム缶等に収容したまま放置されているものも少なくない。しかるに、この油分回収材10によれば、上記のように油分を吸着した炭化物2は燃料として有効利用できるから、このような油吸着炭化物2が大量に生じても何ら問題はなく、例えば化石燃料によらない発電等に用いる備蓄燃料として保存しておけばよい。
【0021】
また、この油分回収材10は、廃プラスチックを利用した袋体1と、間伐材や建築廃材、木屑等の不要材を原料として利用できる炭化物2とで構成されるため、材料コストひいては製品コストを安く抑えることができ、大量使用しても油分回収の費用負担が少なくて済み、しかも既述のように回収後の処置にも問題はないから、大規模な原油流出事故等に対応する現実的な汚染防止手段として必要なコスト、油吸収力、使用後の処理性等の条件を充分に満たすものである。
【0022】
一方、近年においては地球環境保全の観点からも資源リサイクルの推進が急務になっており、プラスチック廃棄物についてもゴミの分別回収等で大量に集められるようになり、その再資源化が求められている。しかるに、樹脂材としての純度を確保できる廃PETボトル等では繊維材料その他への再生利用が進みつつあるが、他の多くは樹脂組成のばらつきや含有不純物等のために再生するのに却ってコストが嵩むことから、細かくしたものを複合材料の混ぜ物として利用する程度であり、多量に使用できる新たな用途の開発が大きな課題となっている。この点、本発明の油分回収材10の袋体1とする廃プラスチック再生不織布は、油分に対する選択吸収性があればよく、樹脂組成の違いや混在、多少の不純物の存在等は許容され、しかも多量に使用することになるから、プラスチック廃棄物の極めて有望な再生用途となり得る。
【0023】
袋体1の不織布に用いる廃プラスチックの樹脂成分は、特に樹脂の種類に制約はなく、不織布用として繊維化するための熱溶融性を有して油分に対する選択吸収性があればよく、上記のように異なる樹脂種や組成のものが混ざっていても差し支えないが、油分回収に使用後の焼却処理や炭化処理の際に猛毒で且つ変異原物質でもあるダイオキシン類が発生するのを回避する上で、塩素不含熱可塑性樹脂を主体とすることが望ましい。しかして、このような廃プラスチック再生不織布に好適で、且つ量的に確保できる廃プラスチックの代表的な塩素不含熱可塑性樹脂としては、PET(ポリエチレンフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0024】
一方、炭化物2としては、油分回収に使用後に燃料として有効利用する上で、既述のように木炭や竹炭の塊状物を主体とすることが必要であるが、これら木炭や竹炭と共に他の有機物廃物の炭化物の粉末や塊状物を含んでいてもよい。このような他の有機物廃物の炭化物としては、残飯、野菜屑、調理残渣のような生ゴミ類、屑肉、樹脂製品や繊維製品の廃材等の炭化処理物が挙げられるが、前記の油分回収に供した後の本発明油分回収材10の油分を吸収している袋体1の炭化物も使用可能である。しかして、これら有機物廃物の炭化物を得るには、該有機物廃物を好ましくは予め除湿乾燥して含有水分量を減じた上で、木炭や竹炭を製造する際にその炭化用材料と共に該有機物廃物を炭化炉に装填し、酸素不足状態で熱分解・自発燃焼させて炭素分が残るようにすればよい。
【0025】
また、炭化物2として用いる木炭や竹炭は、種類的に制約されるものではないが、大きな吸着能を有することが望ましいため、炭化処理中の最高温度が600℃以上となる過程を経て得られるものが好適であり、特に着火して最高温度に達した後の炉内温度を400〜700℃の中温に設定して得られるものが最適である。すなわち、炭化処理温度が400℃未満と低い場合には、原料中に含まれる有機成分が完全には熱分解・揮散せずにタール状になって残り、その被覆によって炭本来の多孔構造が損なわれて吸着能の低下を招くことになる。これに対し、最高温度が600℃以上となる過程を経た場合には、有機成分が完全に熱分解して生成した揮発成分は全て排ガスとして炉外へ排出されるから、得られた炭化物は炭本来の多孔構造に基づく大きな吸着能を発揮できる。一方、炭化処理温度が高過ぎる場合は、備長炭に代表される白炭類のように緻密で多孔度の低い炭となり、吸着能に劣る上に比重が大きくなるため、油分回収材10用の炭化物2としては不向きである。
【0026】
なお、本発明の油分回収材は、海面に浮遊する油分に限らず、湖沼や河川のような淡水面に浮遊する油分の回収にも支障なく使用できる他、廃油槽や廃水槽等に投入して油分を吸収除去するのにも利用でき、回収対象とする油種についても特に制約はない。また、前記実施形態では索体挿通部3を袋体1の縁部1aに設けたハトメ3b付きの穴3aにて構成しているが、該索体挿通部3は、金属や合成樹脂からなるリング、あるいは輪状にしたロープや紐等を袋体1に止着して構成することもできる。
【0027】
〔油分吸収試験1〕
縦横850×1950mmの試験水槽に、海水250L及びA重油10L(約9kg)を入れ、この水槽に下記構成の油分回収材1袋を投入し、10分後に引き上げて充分に水切りした上で秤で全重量を測定し、測定後に該水槽に再投入し、以降同様にして20分後、30分後、40分後、50分後、100分後の全重量を測定した。そして、100分後の重量測定を終えた油分回収材の袋体をカッターで切り開いて内部の炭化物を取り出し、袋体と炭化物の各々が吸収したA重油と水の重量を後記方法で測定し、これに基づいて各時間経過毎のA重油及び水の吸収量を各々の測定全重量から算出した。その結果を測定全重量を含めて後記表1に示す。なお、水槽に投入した油分回収材は、試験の間中、水面に浮遊する状態を維持していた。
【0028】
<油分回収材の構成>
全体寸法・・・縦500mm、横500mm、高さ150mm
総重量 ・・・2100g
袋体 ・・・PP繊維とPE繊維が混在した廃プラスチック再生不織布、厚さ5mm、重量100g
炭化物 ・・・松間伐材チップを最高温度700℃、最高温度到達後の温度400〜600℃に設定して炭化処理して得たサイズ(最長部)1〜10cmの塊状物。
炭化物量・・・重量2000g、見掛け容積約10L
【0029】
<吸収したA重油及び水の重量測定>
前記100分後の重量測定を終えた油分回収材の袋体100gと炭化物100gをサンプルとして分取した。そして、炭化物サンプルを粉砕したものと袋体サンプルについて、それぞれ、吸引濾過してエーテル洗浄を行い、次いでエーテルを減圧留去し、抽出・吸引濾過された水とA重油の体積比を高精度メスシリンダー及び液体クロマトグラフ用ミリリットルシリンジにて読み取り、比重を水1、A重油0.9として体積から重量に変換した。その結果、炭化物サンプルは、100g中の炭化物が約45gであり、油分約40ml及び水分約15mlを吸着していることが判明した。また、袋体サンプルは、100g中の不織布が約8gであり、油分約90ml及び水分約12mlを吸収していることが判明した。
【0030】
【表1】
【0031】
上表より、前記構成の油分回収材では、その炭化物2kgにA重油約1.6L、袋体(0.1kg)に同約1.1Lが吸収され、1袋で合計約2.7LのA重油を吸収できることが判る。また、油分吸収は投下後20分程度までの短時間で急速に進行し、30分程度で略飽和状態に達しているから、本発明の油分回収材によれば油分を極めて迅速に吸収できることが明らかである。しかして、例えば海上に流出したA重油の量が1kLとすると、これを完全回収するのに必要な前記構成の油分回収材は約350袋となり、油分の拡散や投入散布状態のバラツキ等を考慮しても、流出後早期に500袋も投下すれば実質的な油汚染を充分に阻止できると想定される。
【0032】
なお、前記の抽出・吸引濾過後の袋体サンプル及び炭化物サンプルについて、100℃、減圧度20Torrで2時間加熱して付着水分を蒸発させ、その減量によって付着水分量を調べたが、両サンプル共に付着水分量は1g以下であった。また、前記の油分吸収試験に供した油分吸収材の炭化物の一部をコンクリート床面上に集積状態に置き、ライターの炎を当てたところ、直ぐに着火して燃焼状態になった。
【0033】
〔油分吸収試験2〕
油分吸収材として、前記油分吸収試験1で用いた油分吸収材の袋体と同じ廃プラスチック再生不織布(5mm厚)からなる縦横500mmの袋体に、同試験1で用いたものと同じ炭化物3kgを収容したもの用い、ガソリンスタンドから出たエンジンオイルを主体とする廃油の吸収試験を行った。なお、廃油は、同試験1で用いた水槽に深さ30cmまで水を入れた上に、その上に5cmの油層を生じるように流し込んだ。そして、液面が安定した状態で上記油分吸収材1袋を浮かべ、50分が経過した時に袋を反転させ、100分後に引き上げて吸収油量を調べたところ7.7kgであり、その内の炭化物による吸収油量は5.5kgであった。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、事故や不法投棄等によって水域に流出した油類を回収するのに使用される油分回収材として、廃プラスチック再生不織布からなる袋体と、この袋体内に収容された木炭や竹炭の塊状物を主体とした炭化物とで構成されることから、流出水面に浮かんだ状態で油分を効率よく選択的に吸収できる上、その油分吸収能が大きく、しかも袋体及び炭化物の原料に廃材を使用して製品コストを低く抑えることができるため、その使用による経費負担を少なくでき、もって大量の油流出に対応する現実的な油回収手段として充分な適性を備え、加えて使用後の油分を吸収した炭化物を取り扱い容易で有用な燃料として利用でき、使用後の袋体についても有効利用が可能であり、またプラスチック廃棄物の再利用にも大きく貢献できるものが提供される。
【0035】
請求項2の発明によれば、上記油分回収材における前記袋体の廃プラスチック再生不織布が塩素不含熱可塑性樹脂を主体とすることから、油分回収に供した後の油分を吸収した袋体を焼却処理や炭化処理する際、ダイオキシン類の発生を回避できる。
【0036】
請求項3の発明によれば、上記油分回収材における炭化物の塊状物として、木材又は/及び竹材を含む炭化用材料の酸素不足状態での最高温度が600℃以上となる過程を経る自発燃焼にて得られるものを用いることから、炭本来の多孔構造に基づく大きな吸収能を充分に発揮でき、それだけ油分吸収量が大きくなる。
【0037】
請求項4の発明によれば、上記油分回収材における炭化物が木炭や竹炭の塊状物と共に有機質廃物の炭化物を含むことから、この炭化物の使用によって有機質廃物の再利用が進むという利点がある。
【0038】
請求項5の発明によれば、上記油分回収材の袋体に索体挿通部が設けてあるから、油分回収に際し、ロープ等で油分回収材同士を繋いで逸散を防止したり、船舶によって油分回収材をロープで曳航する形で用いたり、更には多数の油分回収材を一本のロープに所定間隔置きに取り付けてオイルフェンスを兼用する形で用いたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る油分回収材の斜視図。
【図2】同油分回収材の要部の断面図。
【図3】多数の同油分回収材を一本のロープに所定間隔置きに取り付けた状態を示す平面図。
【符号の説明】
1 袋体
2 炭化物
3 索体挿通部
4 ロープ
10 油分吸収材
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンカー等の船舶事故、貯油タンクやパイプラインの破損事故、不法投棄等によって海、河川、湖沼等の水域に流出した油類を回収するのに好適な油分回収材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石油類を海上輸送するタンカーが極めて大型化する一方、世界各国でエネルギー供給の安定性確保のために臨海地に大規模な石油備蓄基地が造られ、また産油地から国境を越えるような長大な送油パイプラインも多く敷設されており、これらに伴って事故等で海洋を始めとする水域に流出する油の量も極めて膨大になることが多く、各地で度々大規模な海洋油汚染を引き起こして重大な問題になっている。
【0003】
従来より、原油や重油等の海洋流出が発生した場合、専ら流出海域にオイルフェンスを張って拡散を防ぎ、浮遊している油を水面にばらまいた油吸着マット等の油吸着材に吸着させて回収する方法が採られているが、オイルフェンスは風波が強い場合に役に立たない上、油吸着材によって実際に回収される油量は僅かであり、殆どの油は未回収のままで自然の浄化力に任すことになり、汚染防止には程遠い現状である。例えば、タンカー事故等に伴って海上に流出した原油や重油等は、浮遊している内に揮発成分の蒸発と波の作用で次第にボール状に固まり、長期間を経て岸辺に打ち上げられたり沈降することになるが、その前に大量の浮遊油分がどろどろの状態で沿岸に漂着し、これを人海戦術で汲み取っても対処しきれず、沿岸の豊かな生態系とそれに依存する漁業に壊滅的な打撃を受けるといった事例が多発している。
【0004】
なお、原油等の海洋流出に対処する他の手段として、界面活性剤系の有機処理剤を散布して油分を海中に溶け込ませたり、放水によって油分を分散させたりする方法もある。しかるに、前者の方法では、大量に散布した有機処理剤による新たな汚染が重なることになり、却って問題を深刻化させる懸念が多分にある。また、後者の方法は、油分を分散して目立ちにくくするだけであり、汚染の集中は避けられても広い海域に油分が拡がってしまうから、海洋汚染自体の解決にはならないばかりか、油分回収を困難にさせることに繋がる。従って、海洋流出に対する現実的な対策は、高性能で安価な油吸着材により、浮遊する油分を迅速に効率よく吸着させて回収することである。
【0005】
従来、油吸着材としては、親油性樹脂繊維を主材とした油分吸収マットが一般的に使用されているが、この他に袋体に油吸着性の粉末や繊維等を詰めたものも提案されている。しかしながら、これら油吸着材は、タンカー事故等による膨大な油流出に対応するには多量に用いる必要があるが、いずれも高価であるために多く使用すれば費用が嵩むこともあって、実際に使用される量が少ない上、それら個々の油吸収力も小さいため、殆どの場合は流出油分に対して油吸着材にて回収される油分量は微々たるものになっている。
【0006】
油吸着材としての有用性を左右するのはコストと油吸収力、使用後の処理性等であるが、例えば木炭のような多孔性物質の粉末は、大きな油吸収力を有するが、これを袋詰めして水上に浮かべた場合、親水性が強いために先に水を吸収してしまい、結果として油分の吸収量が非常に少なくなる上、水の吸収で全体の比重が水よりも大きくなり、水中に沈んで回収不能になるという難点がある。
【0007】
なお、厨房排水中の油回収を主目的として、沈降防止のために浮力付与材を用いた油吸着袋も提案されている(特許文献1)。この油吸着袋は、油透過性の袋本体と、該袋本体内に封入される粉末状又は繊維状の油吸着材と、発泡ポリプロピレンの如き撥水性及び耐油性を有して比重の小さい浮力付与材とで構成され、厚板状とした浮力付与材を袋本体内に収納したり、やや細かい粒状にした浮力付与材を油吸着材と混合して袋本体内に封入するようにしている。そして、油吸着材に間伐材等の炭化処理物を用いる場合、300℃付近での炭化処理によって表面にタール様の熱分解物を被覆させたものとし、その撥水性によって水を殆ど吸着させずに油をよく吸着させるようにしている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−320966
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案に係る油吸着袋では、浮力付与材の分だけ袋本体内に収容する油吸着材の量が減ることになるが、浮力付与材は油吸収能を持たないために袋全体としての油吸収能力が低下する上、使用後の油を吸着して軟泥状になった油吸着材の処理に加え、油に塗れた浮力付与材の処理にも困難をきたすことになる。また、油吸着材とする前記炭化処理物は、表面を被覆するタール様の熱分解物にて水の吸着は抑えられても、この被覆によって多孔構造の表面が埋められてしまうから、油吸収能力自体が低下することになる。
【0010】
本発明は、上述の情況に鑑み、事故や不法投棄等によって水域に流出した油類を回収するのに使用される油分回収材として、流出水面に浮かんだ状態で油分を効率よく選択的に吸収できる上、その油分吸収能が大きく、しかも安価であるために大量の油流出に対応して多量に使用しても費用が少なくて済み、加えて使用後には有用な資源として再利用できるものを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る油分回収材は、図面の参照符号を付して示せば、廃プラスチック再生不織布からなる袋体1と、この袋体1内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物2とで構成されてなるものとしている。
【0012】
請求項2の発明は、上記請求項1の油分回収材において、前記袋体1の廃プラスチック再生不織布が塩素不含熱可塑性樹脂を主体とする構成としている。
【0013】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の油分回収材において、前記炭化物2の塊状物は、木材又は/及び竹材を含む炭化用材料の酸素不足状態での最高温度が600℃以上となる過程を経る自発燃焼にて得られるものとしている。
は2に記載の油分回収材。
【0014】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの油分回収材において、前記炭化物2は、木炭又は/及び竹炭の塊状物と共に、有機質廃物の炭化物を含むものとしている。
【0015】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかの油分回収材において、前記袋体1に索体挿通部3が設けられてなるものとしている。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る油分回収材10を示す。この油分油分回収材10は、廃プラスチック再生不織布からなる袋体1と、この袋体1内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物2が収容されたものであり、袋体1の縁部1aには穴3aをハトメ3bで補強した索体挿通部3が設けてある。
【0017】
このような油分回収材10は、油分が浮遊している水域に投入すれば、袋体1及び炭化物2の見掛け比重が共に水よりも小さいために水面を浮遊するが、袋体1を構成する廃プラスチック再生不織布が親油性で且つ強い撥水性を備えるために油分を選択的に吸収し、この袋体1に吸収された油分を内側から多孔質の炭化物2が急速に吸い取ってゆくから、該炭化物2の吸着能力が飽和に達するまで非常に効率よく迅速に浮遊油分を取り込むことになる。しかも、袋体1内に入り込む水は少なく、多孔質で極めて表面積の大きい炭化物2による高い吸着能の大部分が油分吸収に費やされるため、油分回収材10全体として非常に大きな油分吸収能力を発揮する上、水よりも比重の小さい油分を選択的に吸収していることから、炭化物2の吸着能力が飽和に達した段階でも油分回収材10は確実に浮遊状態を保ち、もって油分回収材10が水中に沈降して回収に支障をきたすような懸念はない。
【0018】
なお、この実施形態の油分回収材10では、袋体1の索体挿通部3を利用し、ロープ等で複数の油分回収材10…同士を繋ぐことにより、波浪等で逸散するのを防止して回収し易くできると共に、水面からの引き上げ作業も容易になり、また船舶によって多数の油分回収材10…をロープ等で曳航しながら油分回収を行うことも可能である。更に、図3に示すように、一本のロープ4に多数の油分回収材10…を所用間隔置きに繋いだ形態とすれば、オイルフェンスに兼用する形で油分の流出水域を包囲し、この包囲を次第に狭めてゆくような手法で油分の拡散を防止しつつ効果的な油分回収を行える。また、袋体1を染料等で黄色等の目立ち易い色調に着色しておけば、油分回収材10自体を船舶等で回収する際に遠方からでも見つけ易く、それだけ回収作業の労力及び時間を軽減できる。
【0019】
かくして浮遊油分の回収に供した油分回収材10は袋体1を開いて内部の油分を吸着した炭化物2を取り出すが、この炭化物2は、木炭や竹炭の塊状物を主体としていることから、飽和状態まで油分を吸着していても表面が粘着性を帯びる程度で、固形物として容易に取り扱える。しかも、取り出した炭化物2は、水分含量が少なく、その水分も放置乾燥や簡単な乾燥処理で揮散するため、容易に着火燃焼可能な燃料として有効利用できる。一方、油分を吸着した袋体1は、焼却処理してもよいが、後述するように炭化処理し、土壌改質材、吸着剤、脱臭剤等の様々な用途に有用な炭化物として再利用できると共に、この油分回収材10における炭化物2の一部としても利用可能となる。
【0020】
ところで、過去において何度も発生した大規模な原油流出事故では、深刻な油汚染に加え、人海戦術等で回収した大量の油分の処置が問題化している。このような回収油分には有効な利用法がなく、最終的には焼却せざるを得ないが、大気汚染の問題もあってドラム缶等に収容したまま放置されているものも少なくない。しかるに、この油分回収材10によれば、上記のように油分を吸着した炭化物2は燃料として有効利用できるから、このような油吸着炭化物2が大量に生じても何ら問題はなく、例えば化石燃料によらない発電等に用いる備蓄燃料として保存しておけばよい。
【0021】
また、この油分回収材10は、廃プラスチックを利用した袋体1と、間伐材や建築廃材、木屑等の不要材を原料として利用できる炭化物2とで構成されるため、材料コストひいては製品コストを安く抑えることができ、大量使用しても油分回収の費用負担が少なくて済み、しかも既述のように回収後の処置にも問題はないから、大規模な原油流出事故等に対応する現実的な汚染防止手段として必要なコスト、油吸収力、使用後の処理性等の条件を充分に満たすものである。
【0022】
一方、近年においては地球環境保全の観点からも資源リサイクルの推進が急務になっており、プラスチック廃棄物についてもゴミの分別回収等で大量に集められるようになり、その再資源化が求められている。しかるに、樹脂材としての純度を確保できる廃PETボトル等では繊維材料その他への再生利用が進みつつあるが、他の多くは樹脂組成のばらつきや含有不純物等のために再生するのに却ってコストが嵩むことから、細かくしたものを複合材料の混ぜ物として利用する程度であり、多量に使用できる新たな用途の開発が大きな課題となっている。この点、本発明の油分回収材10の袋体1とする廃プラスチック再生不織布は、油分に対する選択吸収性があればよく、樹脂組成の違いや混在、多少の不純物の存在等は許容され、しかも多量に使用することになるから、プラスチック廃棄物の極めて有望な再生用途となり得る。
【0023】
袋体1の不織布に用いる廃プラスチックの樹脂成分は、特に樹脂の種類に制約はなく、不織布用として繊維化するための熱溶融性を有して油分に対する選択吸収性があればよく、上記のように異なる樹脂種や組成のものが混ざっていても差し支えないが、油分回収に使用後の焼却処理や炭化処理の際に猛毒で且つ変異原物質でもあるダイオキシン類が発生するのを回避する上で、塩素不含熱可塑性樹脂を主体とすることが望ましい。しかして、このような廃プラスチック再生不織布に好適で、且つ量的に確保できる廃プラスチックの代表的な塩素不含熱可塑性樹脂としては、PET(ポリエチレンフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0024】
一方、炭化物2としては、油分回収に使用後に燃料として有効利用する上で、既述のように木炭や竹炭の塊状物を主体とすることが必要であるが、これら木炭や竹炭と共に他の有機物廃物の炭化物の粉末や塊状物を含んでいてもよい。このような他の有機物廃物の炭化物としては、残飯、野菜屑、調理残渣のような生ゴミ類、屑肉、樹脂製品や繊維製品の廃材等の炭化処理物が挙げられるが、前記の油分回収に供した後の本発明油分回収材10の油分を吸収している袋体1の炭化物も使用可能である。しかして、これら有機物廃物の炭化物を得るには、該有機物廃物を好ましくは予め除湿乾燥して含有水分量を減じた上で、木炭や竹炭を製造する際にその炭化用材料と共に該有機物廃物を炭化炉に装填し、酸素不足状態で熱分解・自発燃焼させて炭素分が残るようにすればよい。
【0025】
また、炭化物2として用いる木炭や竹炭は、種類的に制約されるものではないが、大きな吸着能を有することが望ましいため、炭化処理中の最高温度が600℃以上となる過程を経て得られるものが好適であり、特に着火して最高温度に達した後の炉内温度を400〜700℃の中温に設定して得られるものが最適である。すなわち、炭化処理温度が400℃未満と低い場合には、原料中に含まれる有機成分が完全には熱分解・揮散せずにタール状になって残り、その被覆によって炭本来の多孔構造が損なわれて吸着能の低下を招くことになる。これに対し、最高温度が600℃以上となる過程を経た場合には、有機成分が完全に熱分解して生成した揮発成分は全て排ガスとして炉外へ排出されるから、得られた炭化物は炭本来の多孔構造に基づく大きな吸着能を発揮できる。一方、炭化処理温度が高過ぎる場合は、備長炭に代表される白炭類のように緻密で多孔度の低い炭となり、吸着能に劣る上に比重が大きくなるため、油分回収材10用の炭化物2としては不向きである。
【0026】
なお、本発明の油分回収材は、海面に浮遊する油分に限らず、湖沼や河川のような淡水面に浮遊する油分の回収にも支障なく使用できる他、廃油槽や廃水槽等に投入して油分を吸収除去するのにも利用でき、回収対象とする油種についても特に制約はない。また、前記実施形態では索体挿通部3を袋体1の縁部1aに設けたハトメ3b付きの穴3aにて構成しているが、該索体挿通部3は、金属や合成樹脂からなるリング、あるいは輪状にしたロープや紐等を袋体1に止着して構成することもできる。
【0027】
〔油分吸収試験1〕
縦横850×1950mmの試験水槽に、海水250L及びA重油10L(約9kg)を入れ、この水槽に下記構成の油分回収材1袋を投入し、10分後に引き上げて充分に水切りした上で秤で全重量を測定し、測定後に該水槽に再投入し、以降同様にして20分後、30分後、40分後、50分後、100分後の全重量を測定した。そして、100分後の重量測定を終えた油分回収材の袋体をカッターで切り開いて内部の炭化物を取り出し、袋体と炭化物の各々が吸収したA重油と水の重量を後記方法で測定し、これに基づいて各時間経過毎のA重油及び水の吸収量を各々の測定全重量から算出した。その結果を測定全重量を含めて後記表1に示す。なお、水槽に投入した油分回収材は、試験の間中、水面に浮遊する状態を維持していた。
【0028】
<油分回収材の構成>
全体寸法・・・縦500mm、横500mm、高さ150mm
総重量 ・・・2100g
袋体 ・・・PP繊維とPE繊維が混在した廃プラスチック再生不織布、厚さ5mm、重量100g
炭化物 ・・・松間伐材チップを最高温度700℃、最高温度到達後の温度400〜600℃に設定して炭化処理して得たサイズ(最長部)1〜10cmの塊状物。
炭化物量・・・重量2000g、見掛け容積約10L
【0029】
<吸収したA重油及び水の重量測定>
前記100分後の重量測定を終えた油分回収材の袋体100gと炭化物100gをサンプルとして分取した。そして、炭化物サンプルを粉砕したものと袋体サンプルについて、それぞれ、吸引濾過してエーテル洗浄を行い、次いでエーテルを減圧留去し、抽出・吸引濾過された水とA重油の体積比を高精度メスシリンダー及び液体クロマトグラフ用ミリリットルシリンジにて読み取り、比重を水1、A重油0.9として体積から重量に変換した。その結果、炭化物サンプルは、100g中の炭化物が約45gであり、油分約40ml及び水分約15mlを吸着していることが判明した。また、袋体サンプルは、100g中の不織布が約8gであり、油分約90ml及び水分約12mlを吸収していることが判明した。
【0030】
【表1】
【0031】
上表より、前記構成の油分回収材では、その炭化物2kgにA重油約1.6L、袋体(0.1kg)に同約1.1Lが吸収され、1袋で合計約2.7LのA重油を吸収できることが判る。また、油分吸収は投下後20分程度までの短時間で急速に進行し、30分程度で略飽和状態に達しているから、本発明の油分回収材によれば油分を極めて迅速に吸収できることが明らかである。しかして、例えば海上に流出したA重油の量が1kLとすると、これを完全回収するのに必要な前記構成の油分回収材は約350袋となり、油分の拡散や投入散布状態のバラツキ等を考慮しても、流出後早期に500袋も投下すれば実質的な油汚染を充分に阻止できると想定される。
【0032】
なお、前記の抽出・吸引濾過後の袋体サンプル及び炭化物サンプルについて、100℃、減圧度20Torrで2時間加熱して付着水分を蒸発させ、その減量によって付着水分量を調べたが、両サンプル共に付着水分量は1g以下であった。また、前記の油分吸収試験に供した油分吸収材の炭化物の一部をコンクリート床面上に集積状態に置き、ライターの炎を当てたところ、直ぐに着火して燃焼状態になった。
【0033】
〔油分吸収試験2〕
油分吸収材として、前記油分吸収試験1で用いた油分吸収材の袋体と同じ廃プラスチック再生不織布(5mm厚)からなる縦横500mmの袋体に、同試験1で用いたものと同じ炭化物3kgを収容したもの用い、ガソリンスタンドから出たエンジンオイルを主体とする廃油の吸収試験を行った。なお、廃油は、同試験1で用いた水槽に深さ30cmまで水を入れた上に、その上に5cmの油層を生じるように流し込んだ。そして、液面が安定した状態で上記油分吸収材1袋を浮かべ、50分が経過した時に袋を反転させ、100分後に引き上げて吸収油量を調べたところ7.7kgであり、その内の炭化物による吸収油量は5.5kgであった。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、事故や不法投棄等によって水域に流出した油類を回収するのに使用される油分回収材として、廃プラスチック再生不織布からなる袋体と、この袋体内に収容された木炭や竹炭の塊状物を主体とした炭化物とで構成されることから、流出水面に浮かんだ状態で油分を効率よく選択的に吸収できる上、その油分吸収能が大きく、しかも袋体及び炭化物の原料に廃材を使用して製品コストを低く抑えることができるため、その使用による経費負担を少なくでき、もって大量の油流出に対応する現実的な油回収手段として充分な適性を備え、加えて使用後の油分を吸収した炭化物を取り扱い容易で有用な燃料として利用でき、使用後の袋体についても有効利用が可能であり、またプラスチック廃棄物の再利用にも大きく貢献できるものが提供される。
【0035】
請求項2の発明によれば、上記油分回収材における前記袋体の廃プラスチック再生不織布が塩素不含熱可塑性樹脂を主体とすることから、油分回収に供した後の油分を吸収した袋体を焼却処理や炭化処理する際、ダイオキシン類の発生を回避できる。
【0036】
請求項3の発明によれば、上記油分回収材における炭化物の塊状物として、木材又は/及び竹材を含む炭化用材料の酸素不足状態での最高温度が600℃以上となる過程を経る自発燃焼にて得られるものを用いることから、炭本来の多孔構造に基づく大きな吸収能を充分に発揮でき、それだけ油分吸収量が大きくなる。
【0037】
請求項4の発明によれば、上記油分回収材における炭化物が木炭や竹炭の塊状物と共に有機質廃物の炭化物を含むことから、この炭化物の使用によって有機質廃物の再利用が進むという利点がある。
【0038】
請求項5の発明によれば、上記油分回収材の袋体に索体挿通部が設けてあるから、油分回収に際し、ロープ等で油分回収材同士を繋いで逸散を防止したり、船舶によって油分回収材をロープで曳航する形で用いたり、更には多数の油分回収材を一本のロープに所定間隔置きに取り付けてオイルフェンスを兼用する形で用いたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る油分回収材の斜視図。
【図2】同油分回収材の要部の断面図。
【図3】多数の同油分回収材を一本のロープに所定間隔置きに取り付けた状態を示す平面図。
【符号の説明】
1 袋体
2 炭化物
3 索体挿通部
4 ロープ
10 油分吸収材
Claims (5)
- 廃プラスチック再生不織布からなる袋体と、この袋体内に収容された木炭又は/及び竹炭の塊状物を主体とした炭化物とで構成されてなる油分回収材。
- 前記袋体の廃プラスチック再生不織布が塩素不含熱可塑性樹脂を主体とする請求項1記載の油分回収材。
- 前記炭化物の塊状物は、木材又は/及び竹材を含む炭化用材料の酸素不足状態での最高温度が600℃以上となる過程を経る自発燃焼にて得られるものである請求項1又は2に記載の油分回収材。
- 前記炭化物は、木炭又は/及び竹炭の塊状物と共に、有機質廃物の炭化物を含む請求項1〜3のいずれかに記載の油分回収材。
- 前記袋体に索体挿通部が設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載の油分回収材。
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JP2003147342A JP2004344836A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | 油分回収材 |
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JP2003147342A Withdrawn JP2004344836A (ja) | 2003-05-26 | 2003-05-26 | 油分回収材 |
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JP (1) | JP2004344836A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010046629A (ja) * | 2008-08-22 | 2010-03-04 | Shimizu Corp | 水処理方法 |
JP2012045271A (ja) * | 2010-08-30 | 2012-03-08 | Nippon Paper Crecia Co Ltd | 吸油マット |
-
2003
- 2003-05-26 JP JP2003147342A patent/JP2004344836A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012045271A (ja) * | 2010-08-30 | 2012-03-08 | Nippon Paper Crecia Co Ltd | 吸油マット |
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