JP2004344802A - ホタテ貝内臓組織からの有用物質取得方法及びそのためのプラント - Google Patents

ホタテ貝内臓組織からの有用物質取得方法及びそのためのプラント Download PDF

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Abstract

【課題】ホタテウロからカドミウムのような有害金属を除去して無害化し、家畜,家禽類の飼料、魚貝類の餌料、食材などとして利用可能な有用物質を取得することを目的とする。
【解決手段】(イ)カドミウム溶出段階、(ロ)懸濁物質除去段階、(ハ)脱カドミウム水溶液調製段階、(ニ)脱カドミウム水溶液循環段階、及び(ホ)(イ)段階の最終処理物から固体処理物と液体処理物を分別採取する段階を含むホタテ貝内臓組織の脱カドミウムシステムにおいて、(イ)段階の最終処理物中の乾燥質量に基づくカドミウム含有量が1ppm以下になるように、(イ)段階における酸による浸漬条件、水による溶出条件及び繰り返し回数を制御することにより(ホ)段階の固体処理物及び液体処理物として、カドミウム含有量1ppm以下のアミノ酸含有物質を取得する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カドミウムのような有害金属を含むために有効利用することができなかったホタテ貝内臓組織、通称ウロから有害金属を除去して、そのままで動物飼料、魚貝類餌料、食材、調味料あるいはアミノ酸その他の栄養剤の製造原料として好適な有用物質を回収する方法及びそのために用いられるプラントに関するものである。ここで、ホタテ貝内臓組織とは、ホタテ貝の中腸腺、生殖腺、外套膜、鰓、心臓及び腎臓を意味する。
【0002】
【従来の技術】
北海道、青森地方では、食用として供するために大量のホタテ貝が養殖されているが、ホタテ貝の中で食用に供されるのは、貝柱のみであり、それ以外の部分は未利用のまま処分されている。
【0003】
しかしながら、ホタテ貝の内臓組織(以下ホタテウロという)、特に中腸腺には、生物に対して有害なカドミウムが含まれているため、環境汚染の点でそのまま廃棄することはできず、廃棄する場合には、あらかじめカドミウムを許容基準値以下まで除去しなければならない。また、このホタテウロには、アミノ酸、タンパク質、不飽和脂肪酸など多くの栄養分が含まれているため、栄養剤、食材、飼料などの好適な原料として注目されているが、カドミウムを除去するための適切な方法が見出されず、これまで実現されていない。
【0004】
このため、毎年多量に発生するホタテウロは、焼却法、炭化法により廃棄処分されているが、これらの方法は大規模な装置を必要とする上に、ぼう大なエネルギー消費を伴い、しかも燃焼ガス中のダイオキシンやカドミウム蒸気により農作物の被害を蒙るという欠点があるため、これに代るべき処理方法が要望されている。
【0005】
このような事情のもとで、ホタテウロ中のカドミウムを除去することを目的として種々の研究がなされ、これまでにもいくつかの方法、例えばホタテ貝の中腸腺やスルメイカの肝臓をすり潰し、それをpH1ないし9の水溶液又は飽和硫酸アンモニウム水溶液に浸漬してカドミウムを溶出し、除去する方法(非特許文献1参照)、ホタテ貝の中腸腺を希硫酸に浸漬して、この中に重金属を溶出させたのち、この溶出液を強酸性カチオン交換樹脂に接触させて、それに吸着除去する方法(特許文献1参照)、ホタテ貝の中腸腺を電解質溶液で抽出したのち、電気分解する方法(特許文献2参照)、ホタテ貝の中腸腺を0.1〜40%リン酸水溶液に24時間浸漬したのち、デカンテーションで浸漬液を除き、遠心脱水する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、ホタテ貝の中腸腺をすり潰し、pH1〜9の水溶液や飽和硫酸アンモニウム水溶液に浸漬して溶出させる方法は、カドミウム除去率が不十分である上に、溶出液中のカドミウムの処理がむずかしく、実用的でないし、また強酸性カチオン交換樹脂を用いる方法は、効率が低く、実用的でないし、電気分解する方法は、大量に排出されるホタテ貝の中腸腺を処理するには大規模な設備を必要とする上、多量の電力を消費しなければならないという欠点があった。
【0007】
さらに、リン酸水溶液を用いてカドミウムを溶出する方法は、溶出液の処理をカチオン性交換樹脂で行わなければならないので、上記の方法と同様の欠点を有する上に、多量のリン酸を用いるため、コスト高になるのを免れず、またリン酸含有の排水は、周辺海域の富栄養化の原因となるので、工業的に実施するには必ずしも満足できる方法とはいえない。
【0008】
そのほか、ホタテウロを希酸水溶液に浸漬したのち、ホタテの組織膜をプレスロールで圧扁処理して破壊し、その組織液を搾液する方法(特許文献4参照)も提案されているが、組織膜を破壊するには、超高圧でプレスする必要がある上に、組織膜が軟質なため、ロール間へ喰い込ませるのがむずかしく、工業的にはとうてい実施することはできないものであった。
したがって、これまでのホタテウロからカドミウムその他の有害金属を除去して、ウロを有用物質として利用することは行われていなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−217131号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】
特開平8−99001号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】
特開2000−296389号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献4】
特開2002−336818号公報(特許請求の範囲その他)
【非特許文献1】
「北大水産彙報」,1994年,第45巻,第4号,p.120−126
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ホタテウロからカドミウムのような有害金属を除去して無害化し、家畜,家禽類の飼料、魚貝類の餌料、食材などとして利用可能な有用物質を取得することを目的としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ホタテウロから、家畜,家禽の飼料、魚貝類の餌料又は食材、栄養剤として利用可能な程度まで、カドミウムその他の有害金属の含有量を低下させ、ホタテウロを有効利用する方法について鋭意研究を重ねた結果、ホタテウロを酸に浸漬して、ウロの組織内に酸を含浸させたのち、水と接触させ、ウロの組織の内外の酸の濃度差を利用して組織内のカドミウムを組織外に溶出させ、次いでこの溶出液を脱カドミウム処理して、カドミウムを除くことにより、上記の用途に供するのに全く支障とならない有用物質が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(イ)あらかじめ蒸煮処理したホタテ貝内臓組織を酸に浸漬して、内臓組織内に十分酸を含浸させたのち、水と接触させて内臓組織内のカドミウムを水中に溶出させる操作を複数回繰り返し、最後にアルカリ水溶液で中和するカドミウム溶出段階、
(ロ)前段階における酸による浸漬処理及び水による溶出処理ごとに生じる酸浸漬液又は水溶出液をその都度抜き出し、pH調整後、液中に存在する懸濁物質を除去するか、あるいは懸濁物質を除去後pH調整をして、清澄液とする懸濁物質除去段階、
(ハ)前段階で得た清澄液を、キレート繊維と接触させて、その中のカドミウムを吸着除去する脱カドミウム水溶液調製段階、
(ニ)前段階で得た脱カドミウム水溶液をpH調整したのち、浸漬用の酸又は溶出用の水として(イ)段階に循環させる脱カドミウム水溶液循環段階、及び
(ホ)(イ)段階の最終処理物から固体処理物と液体処理物を分別採取する段階
を含むホタテ貝内臓組織の脱カドミウムシステムにおいて、
(イ)段階の最終処理物中の乾燥質量に基づくカドミウム含有量が1ppm以下になるように、(イ)段階における酸による浸漬条件、水による溶出条件及び繰り返し回数を制御することにより(ホ)段階の固体処理物及び液体処理物として、カドミウム含有量1ppm以下のアミノ酸含有物質を取得することを特徴とするホタテ貝内臓組織からの有用物質取得方法、ホタテ貝内臓組織供給手段と連結し、pHメーター、酸導入管及びアルカリ導入管を備えた、浸漬、溶出及び中和のための処理槽、吸上ポンプを間設した管路により処理槽と連結されたpH調整タンク、このpH調整タンクと、開閉バルブと送液ポンプを備えた管路により連結される懸濁物質除去手段、この懸濁物質除去手段と連結されたカドミウム除去手段、このカドミウム除去手段と切換バルブを介して管路で連結している貯留タンク及び処理槽に浸出液又は溶出液を供給するための供給ポンプ及び切換バルブを有する管路により連結されている循環液貯蔵タンク、及び処理槽と開閉バルブを有する管路により連結されている固液分離手段から構成され、前記処理槽及びpH調整タンクに付設されたpHメーターにより、それぞれの酸供給量又はアルカリ供給量を調節し、かつ切換バルブの切換え及び開閉バルブの開閉を自動的に行うための自動制御機構を設けたことを特徴とする、ホタテ貝内臓組織からの有用物質取得用プラント、及び上記のpH調整タンクと懸濁物質除去手段との結合順序を入れ替えたものを提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
ホタテ貝は、生食用、缶詰用、佃煮用、干物用などの使用形態に応じ、生のままあるいは蒸煮した状態で出荷されるので、水産加工場から排出されるホタテウロも生のものと蒸煮したものの2種類存在する。
しかしながら、水産加工場から処理場までの搬送時の悪臭発生や腐敗を考慮すると、蒸煮状態のものを取り扱うのが有利である。
また、蒸煮によりホタテウロは元の体積の30〜40%に減容するので、処理量が少なくなるという利点もある。
【0014】
したがって、本発明方法においては、生のまま供給されるホタテウロについては、あらかじめ蒸煮して用いる。この際生じるゆで汁は、所望に応じ脱カドミウム処理して、調味料溶液、すなわちだし汁として利用することができる。
【0015】
これらの蒸煮したホタテウロは、処理されるに先立って2〜50mm、好ましくは5〜20mm程度にカットしておくのが好ましい。このカットの長さは、短かければ短いほどウロ組織内に酸や水が浸透しやすくなるが、あまり小さくすると、切断の際に生成する懸濁物質(SS)の量が多くなり、後続のカドミウム吸着用カラムに通液の際、目詰りを起し、操作が妨げられる。したがって、切り屑が出ないように鋭利な刃物を用いてカットするのがよい。
【0016】
次に、本発明方法を添付図面に従って説明する。
図1は、本発明方法の1例を示すフロー図であって、ベルトコンベア1により、処理槽2に供給されたホタテウロAは、ここで酸・水貯蔵タンク3から調節バルブ4及び供給ポンプ5をもつ管路6を通って注入される酸と混合される。
【0017】
この際の酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸を用いることができるが、取り扱いやすさ、カドミウムの溶出効率が高いこと、コストが安い点からみて塩酸が好ましい。この塩酸はpH1.0〜2.0の範囲に調製された水溶液として、ホタテウロの質量に基づき、1〜5倍量、好ましくは2〜3倍量の範囲で用いる。
この場合、処理槽2にあらかじめ所望のpHに調整された酸水溶液を導入する代りに水を導入し、処理槽2の中で酸を添加して酸水溶液を調整することもできる。
【0018】
この処理により、ホタテ貝内臓を構成する生体組織(以下ウロ組織という)中に十分に酸が浸透するまでに要する時間は、酸濃度、液比、処理条件などにより左右されるが、通常4〜24時間の範囲である。この処理によって、ウロ組織は2〜10質量%程度膨潤し、ウロ組織中のpHは0.3〜0.9まで低下する。このことにより、酸がウロ組織内に濃縮されることが分る。
【0019】
次に、吸上ポンプ10を作動させて管路11を通って処理槽2内の膨潤したウロ組織から過剰の酸を除去したのち、吸上ポンプ10を停止し、貯蔵タンク3から管路6を通って酸に代えて水を導入し、十分な時間水と接触させてウロ組織内のカドミウムを溶出させる。この際用いる水としては、水道水、天然水、浄化処理水、脱イオン水、蒸留水などいわゆる純水と称されるものを用いるのが好ましいが、そのほかウロ組織内に存在する液中の酸濃度又は有害金属濃度よりも低い濃度であるならば、酸又は有害金属あるいはその両方を含むものであってもよい。
【0020】
したがって、浸漬に用いた酸よりも低濃度の酸水溶液で、有害金属が除かれたもの、例えば酸による浸漬と水による溶出を2回以上繰り返す際に得られる使用済の処理水から脱カドミウムしたものを再利用することもできる。このように、使用済の処理水を再利用することにより、水の消費量の節減をはかることができる。
【0021】
この水による溶出の際に用いるこの水の使用量は、通常ウロ組織100質量部当り100〜500質量部、好ましくは200〜300質量部の範囲で選ばれる。この際、ウロの組織膜や細胞膜を夾んで、その内側には比較的濃度の高い酸水溶液が存在し、外側にはこの水が存在することになるので、浸透圧の差を生じ、外側に存在するこの水が内側に導入され、内部に存在する比較的高い濃度の酸水溶液を希釈する結果、ウロ組織は質量で20〜30%程度膨潤する。
【0022】
また、この際、ウロ組織内に保持されていた比較的高い濃度の酸及びカドミウムが濃度勾配により外側に滲出するため、内部に導入されずに外側に残留する水に酸が混入し、経時的にその濃度が上昇し、最終的にはpH1.8以上になる。そして、このpHが2.2以上になると、カドミウムの溶出作用が極端に低下するので、pHメーター7で監視しpHが上昇して、pH2.2以上に達した場合には、新たに酸導入管8から酸を追加して、pH1.0〜2.0の範囲に維持する必要がある。
【0023】
このカドミウム溶出処理は、条件によって30分以下で終了させることができるが、通常は2〜3時間を要する。この場合、ウロ組織と水との接触を促進し、溶出時間を短縮するために、所望に応じゆるやかなかきまぜを行ったり、60℃を超えない範囲の温度で加温することもできる。
【0024】
このようにしてカドミウムを十分に溶出させたのち、カドミウムを含む水を、前記と同様に吸上ポンプ10を作動させ、処理槽2から排出させる。この酸による浸漬、水による溶出の操作をウロの乾燥質量に基づくカドミウム含有量が1ppm以下になるまで繰り返す。なお、この場合、酸による浸漬と水による溶出の操作を繰り返す代りに、溶出効率は若干低下するが酸で浸漬したウロ組織を、水のみを替えて溶出し、排水する操作を、ウロ組織の乾燥質量に基づくカドミウム含有量が1ppm以下になるまで繰り返してもよい。
【0025】
このようにして、酸と水による溶出操作又は水のみによる溶出操作が終了したならば、pHメーター7で液のpHを測定しながら処理槽2にアルカリ導入管9よりアルカリ水溶液を注入し酸を中和する。この際用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水などが好ましい。これらのアルカリ水溶液は、例えば水酸化ナトリウムの場合、4〜8質量%(1〜2M)濃度に相当する。
【0026】
そして、酸浸漬に塩酸を用いた場合、このアルカリ水溶液として、水酸化ナトリウムを用いれば、中和により塩化ナトリウムすなわち食塩を生じるので、カドミウム除去後の固形分を食材とするとき、特に除去する必要はなく、そのまま用いることができるという利点がある。
【0027】
このアルカリ水溶液による中和により、ウロ組織内の酸は消尽され、そのほとんどがウロ組織外のアルカリ水溶液と置換されるが、その際、ウロ組織に残留しているカドミウムは酸水溶液に随伴して溶出するので、ウロ組織内のカドミウムはほとんど完全に除去される。
【0028】
この例においては、ホタテウロの酸浸漬と水溶出及び中和処理を同じ処理槽2中で行ったが、所望ならば酸浸漬を別のタンクで行うこともできるし、また処理されたウロと溶出液の混合物を別のタンクに移し、カドミウムを低濃度にしたウロ組織を水に浸漬し、アルカリ水溶液をかきまぜながら滴下し、液体部分が中性になるまで継続するか、あるいはこのウロ組織中に含まれる酸水溶液を中和するのに必要な計算量のアルカリを含む水溶液中に上記ウロ組織を浸漬し、必要に応じかきまぜながら液体部分が中性を示すまで処理することによって行われる。この中和反応に要する時間は6〜24時間である。
【0029】
この中和により、ウロ組織内に取り込まれていた酸は、ウロ組織外に排出され、収縮する結果、固形部分の質量は約20〜40%減量する。そして、この際、ウロ組織内に残留していたカドミウムは、酸に随伴して除去され、ウロ組織内のカドミウム含有量は1ppm以下になる。
【0030】
上記のようにして、処理槽2から繰り返し操作ごとに吸上ポンプ10によって排出されるカドミウムを含む余剰の酸及び水は、次に管路11を通ってpH調整タンク12に送られ、ここでアルカリ導入管13から添加されるアルカリ水溶液によりpH4.0〜6.0の範囲内に調整される。この調整はpHメーター14で監視し、かきまぜ機15によりかきまぜながら行われる。
【0031】
このpH調整は、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液によって行うのが好ましいが、所望ならば硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸の希薄水溶液や、シュウ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸などの有機酸の希薄水溶液などを用いることもできるし、また、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ水溶液を用いることもできる。これらの酸水溶液やアルカリ水溶液の濃度としては、0.1〜5.0モル%濃度の範囲が適当である。
【0032】
このようにして、pH調整されたカドミウム含有水溶液は、通常懸濁物質を含み、濁った状態になっているが、粒径1μm以上の懸濁物質が存在すると、後続のキレート繊維充填カラムに通す際、目詰りを起し、通液ができなくなるので、この1μm以上の懸濁物質を除去する必要がある。そして、この懸濁物質の除去は、通常の遠心分離やろ過の手段を利用して行うことができる。
【0033】
すなわち、この懸濁物質の除去は、pH調整されたカドミウム含有水溶液を開閉バルブ16を開放し、送液ポンプ17により管路18を介して懸濁物質除去手段19に送液し、分離板型固体排出式分離機、垂直型デカンター、垂直型多段デカンター、水平型自動回分式デカンター、水平型連続排出式デカンターなどの遠心沈降機や、板枠型又は凹板型圧ろ過機、加圧葉状ろ過機、水平板型加圧ろ過機、吸引式又は加圧式連続型ろ過機、遠心ろ過機などのろ過機を用い、回分式又は連続式で行うことができる。これらの遠心沈降機及びろ過機は、必要に応じ複数個を組み合わせて用いることもできる。特に好ましいのは、吸引式又は加圧式連続型ろ過機である。
【0034】
この際、ろ過材として、もめん製ろ布のような親水性ろ過材を用いると、油性不純分を同時に除去し得るので、油性物質を含むウロ組織を処理する場合には有利である。
このようにして、粒径1μm以上の懸濁物質を除去されたカドミウム含有水溶液は、次にキレート繊維充填カラム20に通して脱カドミウム処理される。
【0035】
このカラムに充填されるキレート繊維としては、キレート形成基をもつ合成繊維、天然繊維及び再生繊維の中から選ばれた、耐水性を有するものが用いられる。上記のキレート形成基としては、例えば、式
【化1】
Figure 2004344802
で表わされる芳香族ヒドロカルボニル基、式
【化2】
Figure 2004344802
で表わされる1‐ヒドロキシ‐3‐アミノプロピレン基、式
【化3】
Figure 2004344802
で表わされるアゾ化合物残基、式
【化4】
Figure 2004344802
で表わされる1,3‐ジメルカプトプロピレン基、式
【化5】
Figure 2004344802
で表わされる1,3‐ビス(4‐メルカプトメチルフェニル)基、式
【化6】
Figure 2004344802
で表わされるエチレンジアミン四酢酸残基、式
−N(CHCOOH)
で表わされるイミノ二酢酸基などがある。
【0036】
これらの基は、いずれもカドミウムや亜鉛とはキレート結合を形成するが、アルカリ金属とはキレート結合を形成しないので、アルカリ金属が共存してもキレート形成能がそこなわれない点で有利である。
【0037】
これらのキレート形成基は、遊離形(H型)で用いるが、一価金属イオンとの塩(例えばNa型)も酸の存在下で遊離形となり二価金属イオンと結合するので用いることができる。
【0038】
本発明方法で用いるキレート繊維は、繊維形成可能な重合体又は共重合体、例えば加水分解したポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド又はこれらの単量体単位を含む共重合体や天然繊維例えばセルロース繊維に、前記したキレート形成基を導入し、繊維状に成形するか、或はあらかじめ繊維状に成形された重合体にキレート形成基を導入することによって製造することができる。これらの繊維は、直径10〜100μmの繊維を短繊維状に裁断し、顆粒状に造粒して用いることもできるが、0.5〜50mmの長さにカットした繊維を単独で、あるいは他の耐酸性繊維と混紡し、ウエブ状に形成したものを用いるのが好ましい。
【0039】
このようなキレート繊維は、例えば商品名「キレストファイバーGRY」、「キレストファイバーGCP」、「キレストファイバーIRY」、「キレストファイバーICP」、「キレストファイバーICP−S」(以上キレスト株式会社製)として市販されており、容易に入手することができる。
【0040】
前記したようにして、懸濁物質を除去した清澄液をキレート繊維と接触させるには、この清澄液にキレート繊維をバッチ添加してもよいが、より効率的に接触させるには、清澄液をキレート繊維充填カラムに通すことによって行うことができる。この際の接触方式は、ダウンフロー方式、アップフロー方式のいずれでもよい。
【0041】
このキレート繊維は、キレート形成基の種類や含有割合によって異なるが、通常その1g当り、カドミウムイオン1〜4meqを吸着することができるので、強カチオン性イオン交換繊維に比べ、カドミウムの吸着量が飽和状態に達するまでの期間が長い。
【0042】
このキレート繊維充填カラム20に、カドミウム含有水溶液を通して脱カドミウムするには、pH調整タンク12において、pH4.0〜6.0に調整され、かつ懸濁物質除去手段19において粒径1μm以上の懸濁物質を除去されたカドミウム含有水溶液を、液温5〜40℃に維持し、通液速度(SV値)が2.0〜30で通液する。この通液はダウンフロー方式、アップフロー方式のいずれでもよいが、みずみちの形成がなく、カドミウム含有水溶液がキレート繊維と均一に接触し得るという点でアップフロー方法が好ましい。
【0043】
この際、ダウンフロー方式の場合には、滞液部の上方から圧力を加えたり、充填層の下方から吸引することにより、またアップフロー方式の場合は、下方から圧力を加えたり、充填層の上方から吸引することにより、液の通過を促進させ、かつ流量計を用いて流量調整するのが好ましい。
【0044】
次に、本発明方法で、有害金属イオンを吸着するために用いたキレート繊維は、飽和状態に達したならば、pH2.0以下、好ましくは0〜1.0の酸水溶液による溶離処理を行って再生し、繰り返し使用することができる。この際の溶離用酸水溶液としては、例えば0.5〜2モル%濃度の硫酸水溶液が適当であるが、そのほか塩酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、酢酸、クエン酸などの水溶液も用いることができる。
【0045】
本発明方法においては、全工程を効率よく行うために、キレート繊維充填カラムを少なくとも2本設置し、そのうちの1本で有害金属除去のための操作を行い、別の1本では吸着された有害金属の溶離のための操作を行うのがよい。このようにして、吸着と溶離を複数のカラムで切り換えながら行うことにより、操作の中断なしに連続的に有害金属の除去を行うことができる。
【0046】
また、キレート繊維をカラムに直接充填する代りに、キレート繊維を充填したカートリッジを用意しておき、カドミウムの吸着量が飽和状態に達したときに、カートリッジのみを交換する方式をとれば、いっそう処理能率を高めることができる。
【0047】
この酸水溶液によるキレート繊維の溶離条件は、使用する酸の種類、濃度、温度によっても若干異なり、1モル濃度のリン酸及び硫酸の場合は1.40〜2.10ml/ml−繊維、1モル濃度の塩酸の場合1.30〜1.80ml/ml−繊維、0.3モル濃度のリン酸の場合2.40〜3.50ml/ml−繊維の範囲で最大になる。
【0048】
キレート繊維充填カラム20を通して脱カドミウムした水溶液は、管路21を通って切換バルブ22を経て貯留タンク23又は酸・水貯蔵タンク3に送られ、必要に応じこのタンク3から処理槽2に還流され、酸導入管8から導入される酸又はアルカリ導入管9より導入されるアルカリでpH調整され、浸漬液又は溶出液として再利用される。
【0049】
この際、浸漬用酸溶液として再使用する場合には、pHを1.0〜2.0に、また溶出用の水として再使用する場合には、pHを6.5〜7.5に調整することが必要である。
【0050】
また、カドミウム含有量が十分に低減された処理槽2内の処理生成物は、開閉バルブ25を備えた管路26を経て固液分離手段24に送られ、固体処理物と液体処理物に分別される。
【0051】
本発明方法によると、処理槽2における浸漬用酸や溶出用水の使用割合の増減や酸浸漬と水による溶出交互の繰り返し、又は酸浸漬後の水のみによる溶出の繰り返しの回数の増減などにより、固体処理物中の乾燥質量に基づくカドミウム濃度を1ppmを上限とする任意の濃度に調整することができる上に、カドミウム濃度0.01ppm以下の液体処理物を得ることができるので、処理物の使用目的に応じ、例えば家畜,家禽の飼料や魚貝類の養殖用餌料の場合は1ppm以下、食材、栄養剤、調味料の場合は0.8ppm以下というようにカドミウム濃度基準に適合した有用物質を取得することができる。
【0052】
本発明方法により脱カドミウム処理されたホタテウロは、その産地、採取時期等により若干変更するが、その固体処理物中には、表1に示す割合でアミノ酸が含まれているので、アミノ酸原料として有用であるほか、魚貝類餌料、家畜,家禽飼料、食材、調味料、栄養剤サプリメントなどとして好適に使用することができる。
【0053】
【表1】
Figure 2004344802
【0054】
また、液体処理物中にも、ほぼ同様のアミノ酸が含まれているが、水溶性アミノ酸、特にタウリンの含有量は高くなっているので、栄養ドリンク用、アミノ酸サプリメント用として好適である。
【0055】
次に、このような有用物質の取得に好適に用いられるプラントについて説明する。
図2は、本発明方法に従って、有用物質を取得するためのプラントの1例を示す側面図、図3はその平面図である。
これらの図に示されるように、原料のホタテウロを供給するベルトコンベア1、供給されたホタテウロの酸浸漬、水溶出及び中和を行うための処理槽2、pH調整されたカドミウム含有水溶液中に存在する懸濁物質を除去するためのプレスフィルター19、懸濁物質を除去したカドミウム含有水溶液のpHを調整するためのpH調整タンク12及びキレート繊維を充填したイオン交換塔20が直列に連結し、処理槽2には最終処理生成物を固体部分と液体部分に分別するための遠心脱水機24が配設されている。
【0056】
また、キレート繊維を充填したイオン交換塔20には、それを通って脱カドミウムされた水溶液を収容する貯留タンク23と、それを処理槽2に循環再使用するために一時的に収容する循環液タンク兼用の酸・水貯蔵タンク3が配設されている。10は処理槽2で生じるカドミウム含有水溶液を吸上げ循環させる吸上ポンプ、27はプレスフィルター19に水溶液を送液するための送液ポンプ、28はイオン交換塔20へ水溶液を送液するための送液ポンプ、29は所定量のアルカリを供給するための調節ポンプ、30は所定量の酸を供給するための調節ポンプ、3は処理槽に浸漬用酸又は溶出用水を供給するための酸・水貯蔵タンク兼用の循環液貯蔵タンクである。
【0057】
これらの図においては、プレスフィルター19の次にpH調整タンク12が配置されているが、この順序を逆にしてpH調整タンク12の次にプレスフィルター19を配置することもできる。
【0058】
通常、pH調整すると、エマルションを形成しやすく、これを除くためにさらにろ過をしなければならなくなるので、先にpH調整タンク12を設け、pHを調整した後でプレスフィルター19により懸濁物質を除去する方が有利である。
【0059】
そして、酸・水貯蔵タンク3と処理槽2の間には、流量計とその流量計からの情報に応じて開閉する調節バルブを備えた管路が、また処理槽2とpH調整タンク12との間には、設定された時間ごとに作動を開始し、かつ停止して、処理槽内の浸漬液又は溶出液を継続的に吸い上げ、循環させる循環ポンプ10を備えた管路が、さらにプレスフィルター19とpH調整タンク12との間には、所定時間ごとに開閉する開閉バルブと送液ポンプを備えた管路が設けられている。また、イオン交換塔20と貯留タンク23及び酸・水貯蔵タンク兼循環液貯蔵タンク3との間には三方切換バルブを備えた管路が設けられ、かつ処理槽2と遠心脱水機24の間には、所定の時間に開閉する開閉バルブを備えた管路が配設されている。そして、これらのバルブの開閉や切換え、ポンプの作動の開始又は停止を自動的に制御するための制御装置31が配置されている。
【0060】
このようなプラントを稼動させると、あらかじめ処理槽に仕込んだ所定量のホタテウロに、予備実験によりあらかじめ定められた量の酸を混合し、あらかじめ定められた時間経過後、あらかじめ定められた量の水を導入し、あらかじめ定められた時間で溶出処理を、あらかじめ定められた回数繰り返したのち、生成処理物を固体部分と液体部分に分別するという操作を自動的に行わせて、その使用目的に応じた任意のレベルまで、カドミウム濃度を低下させた固体処理物及び液体処理物を得ることができる。そして、固形処理物からアミノ酸、ポリペプチド、タンパク質及びリン脂質を含有する固体有用物質を、液体処理物から水溶性アミノ酸、塩化ナトリウムを含有する液体有用物質をそれぞれ取得することができる。
【0061】
なお、このプラント例においては、酸による浸漬、水による溶出及び中和を1台の処理槽で行うように設計されているが、日又は月ごとの処理計画に応じてこれらの処理を別々のタンクにより行うように設計することもできる。
【0062】
上記の固体有用物質はそのままで、あるいは必要な加工を行ったのち、魚貝類の餌料、家畜,家禽類の飼料、各種食材、調味料などとして使用することができるし、液体有用物質はそのままで、あるいは脱塩処理のような加工を行ったのち、アミノ酸サプリメント、インスタント食品の味付け用液などとして使用することができる。
また、所望に応じ、各アミノ酸の等電点の差を利用してアミノ酸を単離することができるので、栄養剤や医薬品の原料としても用いることができる。
【0063】
【実施例】
次に、参考例、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0064】
参考例1(ホタテウロの蒸煮)
別海町産の生ホタテウロに、2倍量の熱湯を加え、10分間蒸煮した。この蒸煮処理により、ホタテウロの質量は最初の体積の35%に減容した。
このようにして蒸煮した後のホタテウロ及びゆで汁のアミノ酸組成を分析し、その結果を蒸煮前の生ホタテウロのアミノ酸組成とともに表2に示す。
【0065】
【表2】
Figure 2004344802
【0066】
この表から分るように、ホタテウロには多くのアミノ酸が含まれている。また、ゆで汁にもかなりの量のアミノ酸が含まれているので、これからカドミウムを除去すれば、有用物質として利用可能である。
【0067】
参考例2(酸浸漬時間とカドミウム溶出量)
蒸煮したホタテウロ[水分74.5質量%、カドミウム含有量13.93ppm(乾燥質量換算54.64ppm)]を10mmにカットし、その500gをトレー(22×30×8cm)に入れ、蒸留水1500gを加え、濃塩酸を用いてpH1.5となるように調整し、30rpmで振とうしながら、所定時間経過ごとに液体部分を5gずつ採取し、その中のカドミウム量を原子吸光法により測定し、カドミウムの経時的変化を求めた。その結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
Figure 2004344802
【0069】
この表からも分るように、塩酸浸漬の際、塩酸水溶液に溶出されるカドミウム量は5〜8時間までは急速に増大し、それ以降も増加傾向を示している。
このことから、pH1.5の塩酸水溶液3倍量を用いた場合の塩酸浸漬時間として5〜24時間必要なことが分る。
【0070】
参考例3(酸浸漬・水溶出3回繰り返し)
蒸煮したホタテウロ[水分74.5質量%、カドミウム含有量13.93ppm(乾燥質量換算54.64ppm)]を5mmにカットし、その500gをトレー(22×30×8cm)に入れ、蒸留水1000gを加え、濃塩酸を用いてpH1.2となるように調整し、60rpmでかきまぜながら酸浸漬4時間及び水溶出30分のサイクルを3回繰り返した。なお、この処理の間では脱液を行った。
次いで、処理物からデカンテーションにより液体部分を除去し、固形分について水分及びカドミウム含有量を測定した。その結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
Figure 2004344802
【0072】
この表から分るように、3回の繰り返しにより、固形分中のカドミウム含有量は乾燥質量に基づき1ppm以下に減少する。
【0073】
参考例4(酸浸漬・水溶出2回繰り返し後2回水洗)
蒸煮したホタテウロ[水分74.5質量%、カドミウム含有量13.93ppm(乾燥質量換算54.64ppm)]を5mmにカットし、その500gをトレー(22×30×8cm)に入れ、蒸留水1500gを加え、濃塩酸を用いてpH1.2となるように調整し、30rpmでかきまぜながら、それぞれ表5に示す時間で酸浸漬及び水溶出のサイクルを2回繰り返したのち、さらに同量の蒸留水を用いて2回溶出させた。これらの処理の間では脱液を行った。
次いで、処理物からデカンテーションにより液体部分を除去し、固形分について水分及びカドミウム含有量を測定した。その結果を表5に示す。
【0074】
【表5】
Figure 2004344802
【0075】
この表から分るように、処理時間及び水溶出回数を変えることにより、固形分のカドミウム含有量を0.5ppm以下に減少させることができる。
【0076】
参考例5
蒸煮したホタテウロ[水分74.5質量%、カドミウム含有量13.93ppm(乾燥質量換算54.64ppm)]を5mmにカットし、その20gをトレー(22×30×8cm)に入れ、pH1.5の塩酸水溶液60gに24時間浸漬し、ウロ組織中に酸を含浸させた。次いで、各処理ごとに十分に水切りを行いながら、その都度新しい蒸留水60gを加えて、2時間の溶出を4回行ったのち、水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、24時間処理した。このようにして得られた各処理ごとの固形分及び液体分中のカドミウム含有量を表6に示す。
【0077】
【表6】
Figure 2004344802
【0078】
この表から明らかなように、水溶出を繰り返すだけでも乾燥質量に基づき、1ppm以下のカドミウム含有量の固形分を得ることができる。
【0079】
実施例
図2及び図3に示す構成のパイロットプラントを用いて平成15年4月に採取した別海町産生ホタテウロの脱カドミウム処理を行った。
すなわち、生ホタテウロ143kgを約2倍量の熱湯中で10分間ボイル後、幅10mmにカットした蒸煮ホタテウロ約20kg[水分74.5質量%、カドミウム含有量13.99ppm(乾燥質量換算54.64ppm)]を処理槽に装入し、軟水60kgを加えpH1.5になるように濃塩酸を滴下し、ゆっくり還流させながら、24時間酸浸漬を行ったのち、脱液した。次いで、これに軟水60kgを加え、pH1.8になるように濃塩酸を滴下し、2時間カドミウムを溶出したのち、循環ポンプを作動して溶出液をプレスフィルターに送り、ここで綿製ろ布を通して懸濁物質を除いて清澄液とし、これをpH調整タンクに導入し、ここで水酸化ナトリウム水溶液によりpH4.3に調整した。
【0080】
次に、このようにしてpH調整した溶出液を、キレート繊維(キレスト社製、商品名「キレストファイバーIRY」)15kgを充填したイオン交換塔にSV値6hr−1で通液し、カドミウムを吸着除去した。ここで得たカドミウムを除去した溶出液を循環液タンクに送り、ここで水の減量分を補充し、濃塩酸によりpH1.8に調整後、処理槽に供給し、2時間カドミウム溶出処理を行った。
このようにして、循環水による溶出を4回繰り返したのち、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH7に調整し、12時間ゆっくりかきまぜることにより中和した。
【0081】
このようにして中和した処理物を遠心脱水機に送り、固体部分と液体部分に分別した。
得られた固体部分の水分は81.7質量%、カドミウム含有量は乾燥質量に基づき0.10ppm(乾燥質量換算0.54ppm)であった。また、この固体部分についてアミノ酸分析を行った結果を表7に示す。
【0082】
【表7】
Figure 2004344802
【0083】
一方、液体部分のカドミウム含有量は0.01ppm以下であった。
【0084】
【発明の効果】
本発明によると、これまで有害金属のカドミウムを含むために、有効利用はもちろん廃棄処分もできなかったホタテウロからカドミウムをほぼ完全に除去することができ、魚貝類餌料、家畜,家禽の飼料はもちろん、食材、栄養剤、アミノ酸サプリメント、調味料としての基準よりもはるかに低いカドミウム含有量の有用物質を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の1例を示すフロー図。
【図2】本発明プラントの1例を示す側面図。
【図3】図2の平面図。
【符号の説明】
1 ベルトコンベア
2 処理槽
3 酸・水貯蔵タンク
4 調節バルブ
5 供給ポンプ
6,11,18,21,26 管路
7,14 pHメーター
8 酸導入管
9,13 アルカリ導入管
10 吸上ポンプ
12 pH調整タンク
15 かきまぜ機
16,25 開閉バルブ
17,27,28 送液ポンプ
19 懸濁物質除去手段
20 キレート繊維充填カラム
22 切換バルブ
23 貯留タンク
24 遠心脱水機
29,30 調節ポンプ
31 制御装置

Claims (15)

  1. (イ)あらかじめ蒸煮処理したホタテ貝内臓組織を酸に浸漬して、内臓組織内に十分酸を含浸させたのち、水と接触させて内臓組織内のカドミウムを水中に溶出させる操作を複数回繰り返し、最後にアルカリ水溶液で中和するカドミウム溶出段階、
    (ロ)前段階における酸による浸漬処理及び水による溶出処理ごとに生じる酸浸漬液又は水溶出液をその都度抜き出し、pH調整後、液中に存在する懸濁物質を除去するか、あるいは懸濁物質を除去後pH調整をして、清澄液とする懸濁物質除去段階、
    (ハ)前段階で得た清澄液を、キレート繊維と接触させて、その中のカドミウムを吸着除去する脱カドミウム水溶液調製段階、
    (ニ)前段階で得た脱カドミウム水溶液をpH調整したのち、浸漬用の酸又は溶出用の水として(イ)段階に循環させる脱カドミウム水溶液循環段階、及び
    (ホ)(イ)段階の最終処理物から固体処理物と液体処理物を分別採取する段階
    を含むホタテ貝内臓組織の脱カドミウムシステムにおいて、
    (イ)段階の最終処理物中の乾燥質量に基づくカドミウム含有量が1ppm以下になるように、(イ)段階における酸による浸漬条件、水による溶出条件及び繰り返し回数を制御することにより(ホ)段階の固体処理物及び液体処理物として、カドミウム含有量1ppm以下のアミノ酸含有物質を取得することを特徴とするホタテ貝内臓組織からの有用物質取得方法。
  2. (イ)段階において、酸による浸漬と水による溶出を繰り返す代りに、酸を浸漬させたホタテ貝内臓組織をその都度新らしく水を替えて複数回水により溶出する請求項1記載の有用物質取得方法。
  3. (イ)段階のホタテ貝内臓組織が、2〜50mmに裁断されている請求項1又は2記載の有用物質取得方法。
  4. (イ)段階の酸がpH1.0〜2.0である請求項1、2又は3記載の有用物質取得方法。
  5. (イ)段階の酸が塩酸水溶液である請求項1ないし4のいずれかに記載の有用物質取得方法。
  6. (イ)段階のアルカリ水溶液が水酸化ナトリウム及び水溶性ナトリウム塩の中から選ばれた少なくとも1種のナトリウム化合物の水溶液である請求項1ないし5のいずれかに記載の有用物質取得方法。
  7. (ロ)段階において清澄液をpH4.0〜6.0に調節する請求項1ないし6のいずれかに記載の有用物質取得方法。
  8. (ハ)段階の清澄液とキレート繊維との接触を、キレート繊維充填カラム中に清澄液を通過させることによって行う請求項1ないし7のいずれかに記載の有用物質取得方法。
  9. カラム中の通液速度をSV2〜30の範囲内に設定する請求項8記載の有用物質取得方法。
  10. (ニ)段階において脱カドミウム水溶液をpH1.0〜2.0に調節して、浸漬用酸溶液として再使用する請求項1ないし9のいずれかに記載の有用物質取得方法。
  11. (ニ)段階において脱カドミウム水溶液をpH6.5〜7.5に調節して溶出用の水として再使用する請求項1ないし9のいずれかに記載の有用物質取得方法。
  12. ホタテ貝内臓組織供給手段と連結し、pHメーター、酸導入管及びアルカリ導入管を備えた、浸漬、溶出及び中和のための処理槽、吸上ポンプを間設した管路により処理槽と連結されたpH調整タンク、このpH調整タンクと、開閉バルブと送液ポンプを備えた管路により連結される懸濁物質除去手段、この懸濁物質除去手段と連結されたカドミウム除去手段、このカドミウム除去手段と切換バルブを介して管路で連結している貯留タンク及び処理槽に浸出液又は溶出液を供給するための供給ポンプ及び切換バルブを有する管路により連結されている循環液貯蔵タンク、及び処理槽と開閉バルブを有する管路により連結されている固液分離手段から構成され、前記処理槽及びpH調整タンクに付設されたpHメーターにより、それぞれの酸供給量又はアルカリ供給量を調節し、かつ切換バルブの切換え及び開閉バルブの開閉を自動的に行うための自動制御機構を設けたことを特徴とする、ホタテ貝内臓組織からの有用物質取得用プラント。
  13. ホタテ貝内臓組織供給手段と連結し、pHメーター、酸導入管及びアルカリ導入管を備えた、浸漬、溶出及び中和のための処理槽、吸上ポンプを間設した管路により処理槽と連結された懸濁物質除去手段、この懸濁物質除去手段と、開閉バルブと送液ポンプを備えた管路により連結されるpH調整タンク、このpH調整タンクと連結されたカドミウム除去手段、このカドミウム除去手段と切換バルブを介して管路で連結している貯留タンク及び処理槽に浸出液又は溶出液を供給するための供給ポンプ及び切換バルブを有する管路により連結されている循環液貯蔵タンク、及び処理槽と開閉バルブを有する管路により連結されている固液分離手段から構成され、前記処理槽及びpH調整タンクに付設されたpHメーターにより、それぞれの酸供給量又はアルカリ供給量を調節し、かつ切換バルブの切換え及び開閉バルブの開閉を自動的に行うための自動制御機構を設けたことを特徴とする、ホタテ貝内臓組織からの有用物質取得用プラント
  14. カドミウム除去手段がキレート繊維充填カラムである請求項12又は13記載のホタテ貝内臓組織からの有用物質取得用プラント。
  15. 固液分離手段が遠心脱水機である請求項12、13又は14記載のホタテ貝内臓組織からの有用物質取得用プラント。
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