JP4405139B2 - ホタテ貝内臓部分の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホタテ貝の食品加工残滓、特にその内臓部分から、カドミウム、亜鉛、水銀などの有害金属を除去し、無害化した処理物から有用成分を回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
北海道、青森地方では、食用として供するために大量のホタテ貝が養殖されているが、ホタテ貝の中で食用に供されるのは、貝柱のみであり、それ以外の部分は水産廃棄物として処分されている。
【0003】
しかしながら、ホタテ貝の内臓部分、いわゆる俗称ウロには、有害金属のカドミウムが含まれているため、環境汚染の面から、そのまま投棄することはできない。このため、毎年多量に発生するホタテ貝のウロは、焼却法、炭化法により廃棄処分されているが、これらの方法は大規模な設備や、ぼう大な量のエネルギーを必要とする上に、燃焼ガス中のダイオキシンや金属蒸気による農作物の被害を生じるという問題があり、これに代るべき方法の出現が望まれていた。
【0004】
また、他方において、ホタテ貝のウロには、多くの栄養分が含まれているため、栄養源、食品、飼料などの好適な原料として使用することが試みられているが、この有害金属を効率よく除去することができないため、これまで実現していない。
【0005】
ところで、ウロから有害金属を除去する方法としては、ウロをそのまま希硫酸に浸漬して、この中に有害金属を溶出させたのち、この溶出液を強酸性カチオン交換樹脂に接触させて、吸着除去する方法(特許文献1参照)、ウロに含まれる有害金属を電解質溶液で抽出したのち、電気分解する方法(特許文献2参照)などが知られているが、強酸性カチオン交換樹脂を用いる方法は、効率が低く、実用的でないし、また電気分解する方法は、大量に排出されるウロを処理するには大規模な設備を必要とする上、多量の電力を消費しなければならないという欠点があり、いずれも実用化するには必ずしも満足できる方法ではなかった。
【0006】
その後、強酸性カチオン交換樹脂を用いる方法における低効率を改善するために、陽イオン交換繊維を用いる方法(特許文献3参照)が提案され、処理効率の点ではかなりの向上が認められたが、この方法では有害金属と共存する他の金属も同時に吸着されるため、陽イオン交換繊維の可使時間が短くなるのを免れず、実用化を阻害する大きな原因となっている。
【0007】
そのほか、重金属を含有する広範囲の材料から、リン酸により重金属を抽出し、この抽出液を陽イオン交換樹脂で処理して、重金属をこれに吸着させ、除去する方法(特許文献4、特許文献5参照)も提案されているが、この方法も前述したような欠点を有している上に、処理後の残滓からの有用成分の回収については、何も考慮されていないため、工業的に実施するには必ずしも適当な方法とはいえない。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−217131号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開平8−99001号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】
特開2001−54783号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】
特開2000−296389号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献5】
特開2002−45823号公報(特許請求の範囲等)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、従来方法のもつ欠点を克服し、大規模な設備を必要とせず、しかも効率よく、ホタテ貝のウロ中の有害金属をほぼ完全に除去し、肥料、動物飼料はもとより、栄養剤や食品として利用可能な有用成分を回収しうる方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、効率よく、しかも低コストで、ウロ中の有害金属を除去し、かつその中の有用成分を回収する方法について鋭意研究を重ねた結果、ウロを先ずタンパク質分解酵素すなわちプロテアーゼの作用により分解液化したのち、その液化物に希酸水溶液を加えて特定のpH範囲で浸漬処理すれば、ウロ中の有害金属が効率よく抽出されること、またこの際処理条件を適切に制御すれば、ウロ中の水溶性有効成分を希酸水溶液中に移行しうること、及びホタテ貝のウロには、産地及び採取時期により変動するが、カドミウムイオン10〜100ppm、亜鉛イオン20〜100ppmのほかに、カドミウムイオンの400〜600倍、亜鉛イオンの80〜200倍の量のアルカリ金属イオン(K++Na+)が含まれ、電解法、イオン交換法のいずれにおいても、このアルカリ金属イオンが、カドミウムイオン及び亜鉛イオンとともに、電極上に析出したり、イオン交換体上に吸着するために、カドミウムや亜鉛の除去効率を著しく低下させているが、特定のキレート繊維を用いれば、カドミウムイオンや亜鉛イオンのような二価イオンが優先的に吸着されるので、除去効率を高めうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ホタテ貝内臓部分にタンパク質分解酵素を作用させて液化し、その液化物に希酸水溶液を加えてpHを4以下に調整したのち、改質パルプ繊維を用いて固液分離し、得られた液相部分をpH4〜6においてイミノ二酢酸基をもつキレート繊維と接触させてその中に含まれている有害金属を除去し、処理後の液相部分から有用成分を回収することを特徴とするホタテ貝内臓部分の処理方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、ホタテ貝の内臓部分、いわゆるウロに含まれる有害金属、特にカドミウムを除去して、ウロを有用資源として利用しうる状態に無害化するのに好適な方法である
【0013】
ホタテ貝の養殖は、例えば北海道においては、年間約50万トンの生産量で行われているが、それに伴ってウロなどの内臓を主体とする水産廃棄物が年間10〜17万トン排出されるが、この内臓部分すなわち中腸膜、心臓、生殖巣や、外套膜(通称ヒモ)部分には、通常10〜100ppmのカドミウム、20〜100ppmの亜鉛及び微量の水銀などの有害金属が含まれているため、それを有用資源として利用することはもちろん、投棄することもできないのが現状である。本発明方法におけるホタテ貝内臓部分とは、上記の内臓部分と外套膜部分を含めたものを意味する。
【0014】
本発明方法においては、ホタテ貝内臓部分をそのまま原料として使用してもよいが、あらかじめ水洗して用いるのが好ましい。すなわち、ホタテ貝内臓部分には、砂や貝殻破片のような固形きょう雑物が付着し、これらは往々にして本発明方法の各操作を阻害することがあるので、本発明方法では、あらかじめ水洗によりこれらのきょう雑物を洗い去ったものを原料として用いるのがよい。しかも水洗すれば、海水に由来するナトリウム、カリウム、マグネシウムが除去される結果、後続のキレート繊維による有害金属除去の際の競合金属による吸着を防止することができ、キレート繊維の可使時間を長くしうるというメリットも付加される。
【0015】
例えば、別海町で採取されたホタテ貝のウロを、20℃において等体積量の水道水で2回洗浄することにより、ナトリウム含有量は5700ppmから3800ppmに、カリウム含有量は3000ppmから1800ppmに、マグネシウム含有量は970ppmから690ppmに減少する。
これに対し、カドミウムは、大部分が生体組織を構成するタンパク質に結合しているため、上記の水洗程度ではほとんど溶出してこない。
【0016】
本発明方法においては、原料のホタテ貝内臓部分に先ずタンパク質分解酵素、すなわちプロテアーゼを作用させて液化させることが必要である。
このプロテアーゼには、動物由来のペプシン、トリプシン、キモトリプシンや、植物由来のパパイン、キモパパイン、リゾチーム、プロメライン、フィシンのほか、微生物、細菌由来のプロテアーゼがあり、それぞれ市販品として入手できるが、本発明方法においては、これらの中からホタテ貝内臓部分に対する分解力の大きいものを適宜選択して用いることができ、特に制限はない。特に好ましいのは、フィシュソリュブルの製造に利用されているプロテアーゼである。
【0017】
これらのプロテアーゼは、その種類や作用条件により、タンパク質に対し、異なった分解挙動を示すので、これを利用してホタテ貝内臓部分から所望のポリペプチドやアミノ酸を優先的に生成させることができる。
例えば、タンパク質分子の中間のペプチド結合に作用して2個のペプチドを生成するもの、タンパク質分子の両末端から作用してアミノ酸を生成するもの、タンパク質分子のアミノ基末端から作用して順々に1個のアミノ酸を形成するもの、タンパク質分子のカルボキシル基末端から作用して順々に1個のアミノ酸を生成するもの又はジペプチドのみに作用するものなどが知られているので、このホタテ貝内臓部分の有効成分の利用目的、例えば肥料、飼料、食材、栄養剤などの用途に応じて、適宜プロテアーゼを選択するのがよい。
【0018】
本発明方法においては、タンパク質分解酵素を作用させるに先立って、取り扱いを容易にし、かつ液化時間を短縮するために、ホタテ貝内臓部分を2〜10mm、好ましくは3〜6mmの寸法に細断するのが好ましい。この細断処理は、例えばカッター付スクリュープレス、肉類用ミンチ製造機、生ゴミ粉砕機などを利用して行うことができる。
【0019】
次に、本発明方法におけるタンパク質分解酵素による液化処理は、貝殻から分取したホタテ貝内臓部分そのまま又はその細断処理物に、必要に応じ水を加えたのち、所定のタンパク質分解酵素を添加し、pH3.0〜7.5、温度40〜60℃において、30分〜12時間反応することによって行われる。この際のpH及び温度は、使用する酵素の至適pH及び至適温度に左右されるので、これを考慮の上、上記の範囲内で適宜選択する必要がある。また、酵素の使用量は、用いられる酵素製剤の力価により変わるが、例えば力価500,000μ/gの酵素製剤を用いた場合は、ホタテ貝内臓100質量部当り0.002〜0.05gの範囲である。また、この反応は、撹拌下に行うのが好ましいが、この撹拌速度は、通常80〜500rpm、好ましくは100〜300rpmの範囲内で選ばれる。この酵素反応は、場合により条件を変え、又は変えずに2段階で行うこともできる。
【0020】
このようにして、液化が完全に行われると、微細な固形分を含む懸濁液が得られるが、これは中性、アルカリ性の場合、固相と液相に分離しにくいので、希酸水溶液を加えて酸性状態としたのち、固液分離する。この際、酵素の失活と同時に滅菌のため、必要に応じ液化物を加熱処理することもできる。この加熱処理は、例えば液化物中に水蒸気を吹き込むことによって行われる。なお、使用したタンパク質分解酵素を後続工程で回収し、循環再使用することもできるが、この場合は、加熱処理を行わない方がよい。
【0021】
この固液分離に際しては、あらかじめホタテ貝内臓中の有害金属、特にカドミウムをできるだけ液相側に移行させ、かつ回収しようとする有用成分の液相への分配率を高めるようなpHを選ぶことが必要である。一般にpHを低くすれば、カドミウムが溶出しやすくなるので、pH4以下、特にpH3.0〜4.0に調整し、この範囲内で、所望の有用成分、例えばアミノ酸の液相への分配率が高くなる範囲を選ぶことが必要である。
【0022】
通常、ホタテ貝内臓部分のタンパク質分解物中には、多数のポリペプチドや約20種類のアミノ酸が含まれているが、これらのポリペプチドや各アミノ酸は、それぞれ異なった等電点を有し、この等電点においては異なった挙動を示すことが知られている。そして、多くの場合、この等電点においては、水への溶解度が小さくなる傾向があるので、回収しようとする有用成分の等電点とは異なり、かつ回収する必要のないポリペプチドやアミノ酸の等電点又はそれに近いpH範囲に調製して、固液分離すれば、所望の有用成分を優先的に液相中に移行させることができる。表1に各アミノ酸の等電点及びホタテ貝内臓中の含有量を示す。
【0023】
【表1】
【0024】
この固液分離の際のpH調整には、希酸水溶液が用いられるが、この希酸水溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸の希薄水溶液や、シュウ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸などの有機酸の希薄水溶液などが用いられる。この希酸水溶液の濃度としては、0.5〜10.0モル濃度の範囲が適当である。
このようにしてpHを調整した液化生成物を所望に応じ撹拌しながら30分〜2時間処理したのち、改質パルプ繊維を用いて固相部分と液相部分に分ける。
ここで用いる改質パルプ繊維は、例えば三和技研社からリセルバー(登録商標名)として市販されている。
【0025】
この固液分離は、遠心沈降、濾過など慣用の手段を利用して行うことができる。すなわち、分離板型固体排出式分離機、垂直型デカンター、垂直型多段デカンター、水平型自動回分式デカンター、水平型連続排出式デカンターなどの遠心沈降機や、板枠型又は凹板型圧濾器、加圧葉状濾過器、水平板型加圧濾過器、真空連続型濾過器、遠心濾過機などの濾過機を用い、回分式又は連続式で行うことができる。これらの遠心沈降機及び濾過機は、必要に応じ複数個を組み合わせて用いることもできる。特に好ましいのは、真空連続型濾過器である。
また、濾過に際して、慣用されている凝集剤や濾過助剤を用いることもできる。
【0026】
このようにして得られた固相部分と液相部分のうち、後者には、目的とする有用成分とカドミウムとが含まれているので、次に、これをキレート繊維と接触させてカドミウムを除去し、無害化したのち、有用成分を回収する。
【0027】
この際用いられるキレート繊維としては、キレート形成基をもつ合成繊維、天然繊維及び再生繊維の中から選ばれた、耐水性を有するものを用いることが必要である。上記のキレート形成基としては、式
−N(CH2COOH)2
で表わされるイミノ二酢酸基がある。
【0028】
このイミノ二酢酸基は、カドミウムや亜鉛とはキレート結合を形成するが、アルカリ金属とはキレート結合を形成しないので、アルカリ金属が共存してもキレート形成能がそこなわれない点で有利である。
【0029】
このキレート形成基は、遊離形(H+型)で用いるが、一価金属イオンとの塩(例えばNa+型)も酸の存在下で遊離形となり二価金属イオンと結合するので用いることができる。
【0030】
本発明方法で用いるキレート繊維は、繊維形成可能な重合体又は共重合体、例えば加水分解したポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド又はこれらの単量体単位を含む共重合体や天然繊維例えばセルロース繊維に、前記したキレート形成基を導入し、繊維状に成形するか、或はあらかじめ繊維状に成形された重合体にキレート形成基を導入することによって製造することができる。これらの繊維は、直径10〜100μmの繊維を短繊維状に裁断し、顆粒状に造粒して用いることもできるが、0.5〜50mmの長さにカットした繊維を単独で、あるいは他の耐酸性繊維と混紡し、ウエブ状に形成したものを用いるのが好ましい。
【0031】
このようなキレート繊維は、例えば商品名「キレストファイバーGRY」、「キレストファイバーGCP」、「キレストファイバーIRY」、「キレストファイバーICP」、「キレストファイバーICP−S」(以上キレスト株式会社製)、商品名「IEF−SC」(株式会社ニチビ製)として市販されており、容易に入手することができる。
【0032】
前記したようにして、液化物の固相部分から分離された液相部分をキレート繊維と接触させるには、液相部にキレート繊維をバッチ添加してもよいが、より効率的に接触させるには、液相部をキレート繊維充填カラムを通すことによって行うことができる。この際の接触方式は、ダウンフロー方式、アップフロー方式のいずれでもよい。
【0033】
このキレート繊維は、キレート形成基の含有割合によって異なるが、通常その1g当り、カドミウムイオン1〜4meqを吸着することができるので、通常の規模の設備において、数か月間使用しても、カドミウムの吸着量が飽和状態に達することはない。
【0034】
このキレート繊維充填カラムに上記の液相部分を通す際の条件としては、pH4.0〜6.0、液温5〜40℃、通液速度(SV値)2.0〜30の範囲が好適である。この際、ダウンフロー方式の場合には、滞液部の上方から圧力を加えたり、充填層の下方から吸引することにより、またアップフロー方式の場合は、下方から圧力を加えたり、充填層の上方から吸引することにより、液の通過を促進させ、かつ流量計を用いて流量調整するのが好ましい。
このようにして、キレート繊維と接触させることにより、液化物の液相部分のカドミウム量を0.01ppm以下まで減少させることができる。
【0035】
次に、本発明方法で、有害金属イオンを吸着するために用いたキレート繊維は、飽和状態に達したならば、pH2.0以下、好ましくは0〜1.0の酸水溶液による溶離処理を行って再生し、繰り返し使用することができる。この際の溶離用酸水溶液としては、例えば0.5〜2モル濃度の硫酸水溶液が適当であるが、そのほか塩酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、酢酸、クエン酸などの水溶液も用いることができる。
【0036】
本発明方法においては、全工程を効率よく行うために、キレート繊維充填カラムを少なくとも2本設置し、そのうちの1本で有害金属除去のための操作を行い、別の1本では吸着された有害金属の溶離のための操作を行うのがよい。このようにして、吸着と溶離を複数のカラムで切り換えながら行うことにより、操作の中断なしに連続的に有害金属の除去を行うことができる。
【0037】
また、キレート繊維をカラムに直接充填する代りに、キレート繊維を充填したカートリッジを用意しておき、カドミウムの吸着量が飽和状態に達したときに、カートリッジのみを交換する方式をとれば、いっそう処理能率を高めることができる。
【0038】
この酸水溶液によるキレート繊維の溶離条件は、使用する酸の種類、濃度、温度によっても若干異なり、1モル濃度のリン酸及び硫酸の場合は1.40〜2.10ml/ml−繊維、1モル濃度の塩酸の場合1.30〜1.80ml/ml−繊維、0.3モル濃度のリン酸の場合2.40〜3.50ml/ml−繊維の範囲で最大になる。
【0039】
本発明方法により液化物から分離された液相部分すなわち希酸水溶液は、所望によりキレート繊維と接触してカドミウムその他の有害金属を除いたのち、再び液化物のpH調整工程に循環させて再使用することができる。この際、希酸濃度が不足することもあるが、この場合には新たに酸を追添することが必要である。
【0040】
また、液相部分には、水溶液のポリペプチドやアミノ酸のような有用成分が含有されているので、酸を中和したのち、水を蒸発させることにより、この中に含まれている有用成分を回収することができる。
【0041】
他方、液化物の固相部分にも多量の有用成分が残存しているので、必要に応じさらに希酸水溶液により有害金属を抽出したのち、これから各種有用成分を混合物として回収することができる。この混合物は、そのままで、あるいは所定の加工を施したのち、肥料、動物飼料、調味料原料として有効に利用することができる。
【0042】
次に添付図面によって、本発明方法の実施態様を説明する。
図1は、本発明方法の1例の工程図であって、先ず供給された生ホタテ貝内臓を細断したのち、プロテアーゼと混合して液化し、酸によりpH4以下、特に3.0〜4.0に調整する。次いで、この液化物を、加熱処理を行い、又は行わずに固液分離工程に送って固相、液相及び油相に分離する。
このようにして得た油相及び固相は、それぞれの加工工程に送って有用物質を回収する。
一方、液相は、pH2〜6に調整して、キレート繊維による脱カドミウム工程へ送り、カドミウムを除去したのち、残液の中から高付加価値の有用成分を回収する。
【0043】
次に図2は、本発明方法を実施するのに好適なプラントの例を示すフローシート図であり、ウロ受入ホッパー1からスラリーポンプ3により破砕機2及び必要に応じ高温混合器(図示せず)を介して液化槽4へ供給されたウロは、ここでプロテアーゼと混合され、50〜60℃において液化される。次いで、液化物は、場合により加熱処理槽(図示せず)へ送られ、導入されたスチームにより90〜100℃に加熱され、酵素の失活及び滅菌されたのち、液循環ポンプ5により油水固分離器6に導入される。
【0044】
この油水固分離器6で分別された油分及び固体分は、それぞれの加工設備に送られ、必要な加工を施され、有効利用される。一方、水相部分は、pH調整槽7に送られ、ここで酸溜め8からポンプ9により供給される酸及びアルカリ溜め10からポンプ11により供給されるアルカリによりpH調整されたのち、送液ポンプ12により、キレート繊維充填カラム13又は13´に送られ、有害金属例えばカドミウムが除かれ、受容層14に集められる。このようにして、有害金属が除去された有用成分含有液が得られる。15はキレート繊維を溶離再生するための酸溜め、16は溶離液の処理槽である。2本のキレート繊維充填カラム13,13´は、切換バルブ17,17´及び18,18´を操作することにより交互に切り換えて使用される。
【0045】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1
(1)ウロの細断
同量の水道水で2回水洗したホタテ貝内臓(含水量85%)20kgを生ゴミ破砕機(デポー社製、登録商標名「ディクリーサー」M−150)に入れ、回転数136rpmで4分間処理することにより細断及び脱水を行い、3〜5mmの細片(含水量80%、カドミウム含有量10ppm)とした。
【0047】
(2)液化
(1)で得たウロ細片19kgにプロテアーゼ(新日本化学工業社製、exo型プロテアーゼ、商品名「スミチームFP」)0.05質量%を水溶液として加え、50℃で30分間加温したのち、さらに50℃で6時間かきまぜながら液化することにより液化物17kgを得た。
【0048】
(3)固液分離
(2)で得た液化物17kgを、硫酸によりpH3に調整したのち、改質パルプ繊維(三和技研社製、商品名「リセルバー」)510g及びアルミン酸塩系高分子凝集剤を加えて固液分離し、上澄液22.9kg及び固形残滓7.2kgを得た。この上澄液中のカドミウム含有量は1.0ppm、固形残滓中のカドミウム含有量は19ppmであった。
【0049】
(4)カラム処理
直径165mm、長さ465mmのFRP製円筒カラムに、キレート繊維(キレスト社製、商品名「キレストファイバーIRY」、キレート形成基としてイミノ二酢酸を有するセルロース繊維)2kgを充填密度約0.3kg/リットルで充填してカドミウム除去用充填カラムを作製した。
次に、上記の(3)で得た上澄液22.9kgを1μmのフィルターを通したのち、上記の充填カラムにSV値2.5で通した。
この処理により、上澄液中のカドミウム含有量は0.01ppm以下に減少した。
なお、このようにして有害金属を除去した後の上澄液及び固形分中のアミノ酸分析の結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
この表から明らかなように、本発明方法によれば、付加価値の高いアミノ酸のタウリンが選択的に濃縮された無害化水溶液を回収することができる。
【0052】
参考例1
内径15mm、長さ100mmのガラスカラムの下部に目皿を装着し、その上に86mmの高さまでキレート繊維(キレスト社製、商品名「キレストファイバーIRY」)4gを充填した。この際の充填体積は15.2ml、充填密度は0.262g/mlであった。
実施例1(2)で得た液化物(pH6、Cd含有量10ppm)に1モル濃度のリン酸を加えてpHを1、2、3、4、5又は6に調整して、それぞれ試料1〜6とした。
次いで、この各試料を沈降分離機に入れ、3000rpmで30分間処理したのち、上澄液を分取し、さらにNo.5C号濾紙(孔径1μm)を通して吸引濾過した。
このようにして得た試料を、前記のキレート繊維充填カラムに流速2.53ml/分、SV値10.0の通液条件で通し、得られた濾過中のCd、Pb、Ca、Mgの除去率を求めた。その結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
この表から分るように、Ca、Mgの共存下においても、固液分離に先立ってpHを4に調整すると微量のCdを選択的に吸着除去することができる。
【0055】
参考例2
参考例1と同じキレート繊維充填カラムに、濃度約5mmol/リットルのCdCl2水溶液1リットルを3時間循環通液し、通液前後のCd濃度をICP発光分光分析装置[パーキンエルマー社製、商品名「オプチマ(Optima)」3300DV]を用いて測定し、両者の差からCdの吸着量を求めた。
次に溶離液として1モル濃度塩酸(A)、0.5モル濃度硫酸(B)、1モル濃度リン酸(C)及び0.33モル濃度リン酸(D)を用い、これらをそれぞれSV値10でカラムに通し、2分ごとにサンプリングしてそれぞれのCd濃度を測定し、溶離曲線を作成した。この溶離曲線を図3に示す。
【0056】
この図から分るように、曲線は1モル濃度塩酸水溶液(A)が最もシャープであり、0.5モル硫酸水溶液及び1モル濃度リン酸水溶液がそれに続き、0.33モル濃度リン酸水溶液ではかなりブロードである。
そして、1モル濃度塩酸水溶液はpH0.03、0.5モル濃度硫酸水溶液はpH0.3、1モル濃度リン酸水溶液はpH0.80、0.33モル濃度リン酸水溶液はpH1.21であることから推測して、CdはpH1.0以下の酸によりBed Volume3程度で容易に溶離できる。また、この際の溶離率は、いずれも100%であり、定量的に溶離されることが分った。
【0057】
実施例2
実施例1と同じカラムに、キレート繊維として、イミノ二酢酸型キレート繊維(ニチビ社製、商品名「IEF−SC」、カチオン交換容量2.5meq/g)を全体の体積が80%になるまで圧縮してキレート繊維充填カラムを作製した。
このキレート繊維充填カラムを用いて、実施例1(3)で得た上澄液を、1モル濃度リン酸水溶液によりpH4に調整したものについて、通液処理したところ、処理液中のCd含有量は0.2ppmであった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によると、ウロを酵素により液化し、その液化物から効率よく有害金属を除去することにより、多量の有用成分を含有する無害化された水溶液を得ることができ、これから食材、調味料として使用しうる付加価値の高い有用成分を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法の1例の工程図。
【図2】 本発明方法を実施するためのプラントの1例を示すフローシート図。
【図3】 Cdを吸着したキレート繊維充填カラムに対する各種酸の溶離曲線。
【符号の説明】
1 ウロ受入ホッパー
2 破砕機
3 スラリーポンプ
4 液化槽
5 液循環ポンプ
6 油水固分離器
7 pH調整槽
8,15 酸溜め
9,11 ポンプ
10 酸及びアルカリ溜め
12 送液ポンプ
13,13´ キレート繊維充填カラム
14 受容層
16 処理槽
17,17´,18,18´ 切換バルブ
Claims (2)
- ホタテ貝内臓部分にタンパク質分解酵素を作用させて液化し、その液化物に希酸水溶液を加えてpHを4以下に調整したのち、改質パルプ繊維を用いて固液分離し、得られた液相部分をpH4〜6においてイミノ二酢酸基をもつキレート繊維と接触させてその中に含まれている有害金属を除去し、処理後の液相部分から有用成分を回収することを特徴とするホタテ貝内臓部分の処理方法。
- 液化物に希酸水溶液を加えてpH3.0〜4.0の範囲でpH調整する請求項1記載の処理方法。
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