JP2004342313A - 垂直磁気記録媒体検査方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 スパイク雑音の位置を自動的に検出し、分布図作成、良否判定を行う。
【解決手段】 磁気ヘッド1から信号波形とスパイクノイズを模擬する参照波形との相互相関関数をスパイク雑音抽出に用いる。相互相関関数のピークが閾値を超えた数を計数し、スパイク雑音を定量的に評価する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気記録媒体の検査方法及び装置に関する。
垂直磁気記録には、単層垂直磁気記録媒体を用いた形態と、2層垂直磁気記録媒体を用いた形態とが存在する。後者の場合、2層垂直磁気記録媒体特有のスパイク雑音という課題を有する。2層垂直磁気記録媒体は、情報を保持するための高保磁力を有する垂直磁化膜からなる記録層の下に、記録時に記録ヘッドからの記録磁界のリターンパスとなる軟磁性層を有する。一般に、磁気記録媒体程の大きさの軟磁性膜が存在した場合、静磁気的なエネルギーを小さくするために複数の磁区が形成される。このことは当業者には容易に理解されることである。さて、このような磁区が存在する場合、これらの磁区の磁壁近傍からは強い磁界が出ているのでその上を再生ヘッドが通過する度にスパイク状の出力が観測されることになる。これが、一般にスパイク雑音と呼ばれているものである。これらスパイク雑音が存在する位置に情報や磁気ディスク装置が使用する制御情報を書き込んだ場合、それらの再生信号の波形が乱される。このような乱れがおこると当然、情報を再生したり、磁気ディスク装置を正しく動作させる障害となる。スパイク雑音に関しては、例えばJournal of Applied Physic, Vol.57, No.1 pp.3925-3927(1985)に記述がある。スパイク雑音による再生信号の振幅変調に関しては、例えば2000年開催のThe Fifth Perpendicular Magnetic Recording Conference (PMRC)の会議録Digest PMRC2000の35〜36頁に記述が有る。
スパイク雑音は、例えば、日本応用磁気学会誌、Vol.21, No.S1, pp.104-108(1997)に記載されている技術を用いて抑制することが可能である。しかし、スパイク雑音を抑制した媒体であっても製品に用いる前にスパイク雑音の有無や、仮にスパイク雑音が存在する場合には、その分布状況を把握する必要がある。また、2層垂直磁気記録媒体を開発する上では、やはりスパイク雑音の分布を把握する必要が当然ある。
2層垂直磁気記録媒体のスパイク雑音の状況を観察する最も簡単な方法の一つは、スピンスタンドとオシロスコープを用いる方法である。スピンスタンドとは、磁気記録実験を行うための装置で、磁気記録媒体を回転させるためのスピンドルモーター、磁気ヘッドを媒体上の所望の半径位置にシークさせるための機構、ヘッドを動作させ、その出力信号を増幅するための増幅器、記録を行うための増幅器等から構成される。広義では、この他に記録媒体の基本特性評価のような磁気記録実験を完遂するために必要な計測器やそれらを制御するコンピュータまで含める場合がある。この場合には、リードライトテスターと呼ばれることが多い。
オシロスコープを用いてヘッド出力を観察すると、媒体の軟磁性層に磁区が存在すれば当然スパイク雑音が観測される。スピンドルモーターは、通常インデックス信号(回転原点信号)を出力しているので、これを用いてオシロスコープのトリガーをかければその半径に於いてスパイク雑音が回転原点から何度離れた位置に出現するかを知ることが可能である。オシロスコープは、アナログ、デジタルストレージいずれのタイプも使用可能である。この方法は、ある半径位置でのスパイク雑音に関する情報を得るには適しているものの、媒体全面における状況を把握するのには適さない。この問題点は、デジタルストレージオシロスコープとコンピュータを用いることで解決可能である。一例として、IEEE Transactions on Magnetics, Vol.29, No.6, pp.3742-3744(1993)に記載されている手法がある。即ち、観測を行う半径位置を変えながら各半径位置でデジタルストレージオシロスコープを用いてヘッド出力を取り込み、これをコンピュータに転送し、更に、振幅情報を輝度変調信号に置き換え、2次元的に可視化したものである。この手法を用いることでスパイク雑音の状況を直観的に把握することが容易になった。
Journal of Applied Physic, Vol.57, No.1 pp.3925-3927(1985) Digest PMRC2000, pp.35-36 日本応用磁気学会誌、Vol.21, No.S1, pp.104-108(1997) IEEE Transactions on Magnetics, Vol.29, No.6, pp.3742-3744(1993)
上記従来技術は、スパイク雑音の位置をある半径位置のみで観測するか、あるいは、2次元的に可視化するものであった。これらの結果は、定性的であり、従って、研究段階での定性的な評価に用いることは可能であるが、生産工程における良否判定には使用できなかった。また、研究開発に於いても自動的なデータ処理はできなかった。また、上記従来技術のうち、後者の例では、得られるデータの容量が大きいために結果をそのまま保存するとストレージ装置の記録領域を大量に消費すると言う問題があった。また、スパイク雑音とサーボ信号とが交錯すると、ヘッドで読み出されるサーボ信号に著しい外乱が加わるためにトラッキング精度を大きく低下させるという問題があった。
一方、上記従来技術に於いては、スパイク雑音の分布、振幅、波形等を評価することが可能であったが、実際にスパイク雑音の位置に信号を記録した際に再生信号にどのような影響が現れるかを評価することはできなかった。最終的に実用上、問題となるのは、信号が正しく記録できなかったり、或いは記録された信号が正しく再生されない場合である。実際には、スパイク雑音が再生信号に与える影響としては、少なくともベースラインシフトと振幅変調の2種類あることが判明している。そして、これらが磁気記録装置の性能に与える影響は異なる。
本発明は、このような問題点に鑑み、スパイク雑音を定量的に評価する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、スパイク雑音による再生信号への影響を媒体上の広範囲に渡り自動的に検出し、影響の種類を判別し、その影響の大きさを定量評価することを目的とする。更に、本発明は、スパイク雑音との交錯が最小限となるようにサーボ信号を記録する方法を提供することを目的とする。
なお、垂直磁気記録媒体の軟磁性層中には、スパイク雑音としては観測されないような磁化状態が存在し、かつ、再生信号の包絡線の形状を乱すことがある。これらは、スパイク雑音とは区別されるが、再生信号に与える影響は類似しているので、以下においては便宜的にこれらの磁化状態も単にスパイク雑音と呼ぶことにする。
上記目的を達成するため、本発明が採用した垂直磁気記録媒体検査方法は、所定の速度で回転している垂直磁気記録媒体の所定の半径位置にロードした磁気ヘッドからの出力信号波形を取り込み、記憶するステップと、記憶した出力信号波形とスパイク雑音を模擬する参照波形との相互相関関数を演算するステップと、予め設定した閾値を超えた相互相関関数のピーク数を計数することを特徴とする。
また、本発明による垂直磁気記録媒体検査方法は、所定の速度で回転している垂直磁気記録媒体の所定の半径位置にロードした磁気ヘッドからの出力信号波形を取り込み、記憶する操作を、ロードする半径位置を変更して複数回反復するステップと、半径位置毎に、記憶した出力信号波形とスパイク雑音を模擬する参照波形との相互相関関数を演算するステップと、予め設定した閾値を超えた相互相関関数のピーク位置の媒体上の座標を記憶するステップと、ピーク位置の座標が媒体上で予め設定した長さ以上連続して存在しているか否かを判断するステップとを備えることを特徴とする。
スパイク雑音を模擬する参照波形として正または負のピークが一つある波形、あるいは正及び負のピークをそれぞれ少なくとも1つ以上有する波形を用いることができる。また、垂直磁気記録媒体を一定の角速度で回転させ、参照波形として磁気ヘッドの半径位置に応じてピーク幅を調整した参照波形を用いることもできる。
また、本発明による垂直磁気記録媒体検査方法は、軟磁性下地層を備えた垂直磁気記録媒体の所定の半径位置に磁気ヘッドをロードして所定の周波数で信号を記録するステップと、記録した信号を再生するステップと、再生信号に現れるスパイク雑音が再生信号に与える影響の種類を再生信号の包絡線形状により判別することを特徴とする。
再生信号の包絡線形状により、スパイク雑音に相当する再生信号波形に含まれる振幅変調成分、あるいは再生信号のベースラインシフトを判別する。振幅変調は、ハイパスフィルターと包絡線検波器により、あるいはホモダイン検波器により判別することができる。
この垂直磁気記録媒体検査方法は、再生信号の包絡線形状から振幅変調成分を求めるステップと、再生信号から振幅変調成分を除去するステップと、振幅変調成分が除去された再生信号からベースラインシフトを求めるステップとを含むものとすることができる。
本発明による垂直媒体検査装置は、垂直磁気記録媒体を支持し回転駆動させる手段と、垂直磁気記録媒体の磁化状態に起因する信号を再生する手段と、該信号を再生する手段により再生された信号から振幅変調成分を検出する手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明による垂直媒体検査装置は、垂直磁気記録媒体を支持し回転駆動させる手段と、垂直磁気記録媒体の磁化状態に起因する信号を再生する手段と、該信号を再生する手段により再生された信号のベースラインシフトを検出する手段とを備えたことを特徴とする。
振幅変調成分を検出する手段はハイパスフィルターと包絡線検波器、又はホモダイン検波器を含むものとすることができる。
本発明によるサーボ信号記録方法は、垂直磁気記録媒体にサーボ信号を記録する方法において、垂直磁気記録媒体のスパイク雑音分布を求め、メモリに記憶するステップと、記憶したスパイク雑音分布をサーボ信号の配置情報と照合し、通常のサーボ信号配置でスパイク雑音と交錯する確率の最も低い書き込み開始位相を選択するステップと、同一トラック上においてサーボ信号が2箇所続けてスパイク雑音と交錯しないように個々のサーボ信号列の書き込み位相を調整するステップとを含むことを特徴とする。
実際の相互相関関数の演算は、参照波形、観測波形ともに離散系で与えられるので、相関関数も離散系の相関関数となる。また、実際の参照波形、観測波形ともに長さは有限であるのでそれぞれの長さを2M,Nとすると、参照波形、観測波形はそれぞれ次のような数列で与えられる。ただし、M,Nともに整数であるとする。
参照波形:{ui} (i:整数、ただし、−M≦i≦M−1)
観測波形:{xj} (j:整数、ただし、0≦j≦N−1)
尚、以下に於いてui,xjともに上記定義範囲外の参照が合った場合には、便宜的にともにその値は零であるものとする。また、N≫2Mであるとする。
ここでは、参照波形を用いて規格化した相互相関関数数列{yj}を用いている。その定義は、次式で与えられる。
Figure 2004342313
ただし、Uは参照波形の自己相関関数数列の最大値で、次式で与えられる。
Figure 2004342313
ここで、関数max({zi})は、数列{zi}の最大値を求める関数である。この規格化により、殆どの場合、U≦1となる為に、閾値も0以上1以下の範囲で考えれば良いので閾値を決定しやすくなる。
参照波形との相関関数を用いることにより、生の観測波形から直接ピーク検出でスパイク雑音を検出するよりも振幅の小さなスパイク雑音まで確実に検出することが可能となる。図2を用いて相関関数を用いることのメリットを説明する。図2(a)は生データ、(b)は相互相関関数をそれぞれ示す。図2(a)で線が太く見えているのは媒体雑音等の雑音の影響である。明らかに、(b)では雑音の影響が大幅に抑圧されている。(a)で振幅の小さなスパイク雑音を検出するために閾値を0.1以下に設定してピーク検出を行った場合、多数の雑音を過ってスパイク雑音として判定してしまう。逆に、誤判定を防ぐためには、閾値は少なくとも0.1以上にする必要が有ると見られるが、その場合、振幅の小さなスパイク雑音は見逃されることになる。(b)では、閾値を0.05程度まで小さくしても雑音を誤判定することはほとんどなく振幅の小さなスパイク雑音も検出することが可能である。尚、ここでは参照波形として次の式(3)で表わされる双極型の波形を用いた。
Figure 2004342313
また、媒体雑音をカットするので小さなリップルによる誤検出を防ぐ。図3に、あるスパイク雑音とその相互相関関数を拡大表示したものを示す。図3(a)は生データ、(b)は相互相関関数をそれぞれ示す。生データでは、極大点の少し右側に雑音によってピークが割れているように見える箇所が有る。これも単純なピーク検出ではここにもう1つピークが有ると過って判定してしまう可能性が高い。一方、(b)では雑音が抑圧されているためにそのような心配はない。
閾値の決定に際しては、相当の任意性が有る。最も適した閾値の決定方法は、評価の目的によっても異なる。なるべく振幅の小さなスパイク雑音まで検出することが目的であれば、当然、閾値はなるべく小さく設定するべきである。しかし、小さくし過ぎると今度は雑音を過ってスパイク雑音と判定する率が多くなる。そこで、ある媒体半径に於いて、閾値を減少させながらその時のピーク検出数を求めると、図4に示したように、雑音による誤判定が起こりはじめると急激に検出数が増大するので、それよりも大きくかつなるべく小さな値を閾値として採用することになる。このことを用いて最適な閾値を自動的に決定することも可能である。例えば、単純にピークの検出数がある値を越えたか、或いは検出数の変化率が一定値以上の場合には、誤判定が起きているものとみなす。
使用する参照波形によって得られる結果に差が生じることが有るので、参照波形は、検査する媒体の軟磁性層材料、膜厚、層構成、ヘッド及び再生系の電気特性等を考慮して決定する必要が有る。最も単純で応用範囲が広いのはピークが一つの単峰型の波形であり、一例として次の式(4)で表わされるようなものが有る。
Figure 2004342313
実際には、曲線の形状はそれほど重要ではなく、ガウス型やローレンツ型等の波形を用いても同等の結果を得られる。むしろ、単峰型の場合には、参照波形の幅が重要なパラメータである。当然、参照波形の幅と観測波形中のピークの幅とが近いほど相関関数値は大きくなる。従って、単峰型を用いる場合には参照波形の幅がなるべく実際のスパイク雑音のピーク波形に近いものを選択することにより最適な検出を行うことができる。
実際に観測されるスパイク雑音は、軟磁性層材料や媒体の層構成にもよるが図5の様なものが多い。従って、参照波形として単峰型よりも図6に示すような正方向及び負方向に一つずつピークを有する双極型の波形を用いる方が雑音抑圧効果が大きくより効果的な検出が可能である。上式(3)で示した波形はこの範疇に含まれる特別な場合の一つである。この波形は、以下の4つのパラメータによって特徴付けられる。即ち、ピーク1の半値幅a、ピーク2の半値幅b、ピーク1と2の距離d、ピーク1と2の振幅の比e/fである。ただし、振幅に関してはe,fのうちどちらか大きい方を1として規格化する。
参照波形の形状パラメータを実際に試験する媒体のスパイク雑音波形に対して最適化することも可能である。単峰型の場合は単純で、実際に捕捉したあるスパイク雑音波形との相互相関関数のピーク値を最大とする参照波形の半値幅を求めることによって行う。双極型の場合は、ピーク1,2それぞれに関して単峰型と同じ方法でそれぞれの半値幅を決定する。この時のそれぞれの相関関数のピーク値からe/fを決定する。最後に、双極型波形とスパイク雑音波形との相関関数のピーク値を最大にするdを求める。
本発明により、従来、スパイク雑音の位置をある半径位置のみで観測するか、あるいは、2次元的に可視化するのみで、定性的な結果しか得られなかったのに対し、定量的な評価が可能となり、生産工程における良否判定や研究開発における自動的なデータ処理が可能となった。また、スパイク雑音の評価結果を保存しておくのに必要なメモリやストレージ装置の容量を大幅に縮小することが可能となった。また、スパイク雑音の位置、数、振幅に関する情報に加え、実際に信号を記録した際の影響を定量的に評価することが可能になった。これにより、より的確な合否判定や品判定を行うことが可能になり、その結果、2層垂直磁気記録媒体及び磁気ディスク装置の歩留まりが向上した。更に、スパイク雑音と交錯しないようにサーボ信号を記録することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の図において、同じ機能部分には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
〔実施形態1〕
図1は、本発明による垂直磁気記録媒体検査装置の一例を示す概略図である。この例の検査装置は、装置全体がコンピュータ7によって制御されている。コンピュータ7、デジタルストレージオシロスコープ3、スピンスタンド制御装置6は、それぞれ双方向バスインターフェースを内蔵しており、これを用いて相互に接続されている。これ以外の接続方式、例えばシリアルバスを用いて接続しても差し支えないことは言うまでもない。
検査動作は、コンピュータ7に内蔵されたテストプログラムにそって行われる。テストプログラムは、まず、スピンスタンド制御装置6を介してスピンドルモーター4を所定の回転数で回転させ、ヘッドステージ5を駆動してヘッド1を2層垂直磁気記録媒体8の所望の半径位置でロードする。ヘッド1の出力信号は、ヘッドアンプ2によって増幅され、デジタルストレージオシロスコープ3の入力端子に入力される。デジタルストレージオシロスコープ3は、スピンドルモーター4からのインデックス信号をトリガー信号として、増幅されたヘッド出力を所望の時間に渡って取り込みメモリに蓄える。蓄えられたヘッド出力波形は、テストプログラムが発行した読み出し命令に従ってコンピュータ7に転送される。この一連のデータ取得動作を予め設定された半径範囲内の各半径位置にヘッド1を移動させる毎に行う。通常、ヘッド1は、半径方向には等間隔で移動させることが多いが、これを不等間隔に移動させることも勿論可能である。従って、データ取得動作終了時には、コンピュータ7のメモリの中にはスパイク雑音の2次元分布に関する情報が蓄えられている。
次に、テストプログラムは、この蓄えられた波形データからスパイク雑音を抽出し、その結果をもとに2次元的な分布図を作成する。スパイク雑音の抽出は、各半径位置で得られた波形毎に行われる。従って、スパイク雑音の位置は、半径とインデックス信号からの時間、即ち、ディスク上での回転原点からの角度で表される。尚、デジタルストレージオシロスコープに取り込まれたヘッド出力波形は、当然時間軸上で離散化されているので、以下の説明中に於ける相関関数等は、特に断らない限り全て時間軸上で離散化されたものであるとする。また、被試験ディスクをスピンドルに装着する際には、ディスクを作製する際にディスクの縁にできるスパッタ装置の基板保持金具の跡とスピンドルの回転原点を合わせる等しておくと、スパイク雑音の位置をディスク上の絶対位置で表わすことが可能である。
スパイク雑音抽出は、図7に示すような手順に従って行った。即ち、予め仮定してある参照スパイク雑音波形とヘッド出力との類似度を求め、これを元にスパイクを抽出している。ここでは、参照スパイク雑音波形と得られたヘッド出力波形との類似度を計るのに相互相関関数を用いている(相関関数演算ルーチン)。そして、求められた相互相関関数に関してピーク検出を行い、ピークと認められたものをスパイク雑音波形と判定している(ピーク検出ルーチン)。得られた相関関数のデータ容量は、元のデータ容量にほぼ等しく、典型的には数メガバイトである。このような大容量データは、保管する上でも利用する上でも取扱いが不便である。しかし、データの使用目的にもよるが、一般に、スパイク雑音を抽出した後では、このように高い角度軸の分解能は不必要である場合が多い。そこで、必要に応じて角度方向軸を1周当たり、例えば、500〜1000の区間に分割し、各区間中に幾つスパイク雑音が存在するかを数え、その数に対応する色の点で表示している(角度軸解像度調整ルーチン)。この操作によりデータ容量を大幅に減らすことができる。
相互相関関数を求める過程で、スパイク雑音とは無関係な媒体雑音や電気回路に起因する雑音振幅が抑圧されるので、ピーク検出時にこれらの雑音の影響を極めて受け難くなるのがこの方式の特徴である。
以上に述べた装置及び手順を用いて実際にスパイク雑音の分布図を求めた例を図8に示す。
評価した2層垂直磁気記録媒体は、図9に示す膜構成を有し、以下の製法で作成したものである。直径65mmのガラス基板101上に直流マグネトロンスパッター法で軟磁性層102としてCo−3at%Ta−5at%Zrを厚さ400nm形成し、その上に非磁性中間層103としてNi−37.5at%Ta−10at%Zr膜を厚さ5nm形成し、更に記録層104としてCo−22at%Cr−14%Pt膜を厚さ20nm形成した上に保護膜105としてC膜を5nm形成したものである。
また、評価に使用した磁気ヘッドは、再生素子として磁気抵抗効果素子を用いたもので、そのシールド間隔は0.2μm、トラック幅は1.3μmである。このヘッド及び前述の2層垂直磁気記録媒体をスピンスタンドに装着して実験を行った。その際、媒体の回転速度は毎分3000回転で一定とした。測定範囲は、内周側が半径20mm、外周側が半径28mmまでの範囲で100μm間隔で行った。また、どの半径位置に於いてもヘッドのスキュー角が0度になるようにヘッドの位置を調整した。
スパイク雑音のスパイク波形の幅は、軟磁性層の材料や厚さ、使用するヘッド、磁壁とヘッドとのなす角度等の要因により様々であるものの、軟磁性層に厚さ400nm程度のアモルファスCo−Ta−Zr軟磁性材料を用いた場合、典型的には100〜300μmである。従って、直径65mmの媒体を使用した場合、このスパイク雑音波形を取り込むためには、サンプリング定理の要請からサンプリング間隔を50μmより狭くする必要がある。また、この場合の最大円周長は、約200mmであるから、その半径で媒体1周分のデータを取り込むために最低4000点は必要である。更に、参照波形の特徴を十分に表現するために必要な点の数を考慮して1周当たり100000点のサンプリング数としている。1サンプル当たり1バイトのデータ容量があるとして、例えば半径20mmから28mmまでを0.1mm間隔でデータを取得すると全データ容量は約7.7MBと膨大になる。先にも述べたように、データの使用目的によっては、スパイク雑音を抽出した後では、このように高い角度軸の分解能は不必要である場合も多い。例えば、スパイク雑音と遭遇しない半径が一定範囲以上存在するか否かで媒体の良否を判定する場合、角度方向の分解能はスパイク雑音の位置を割り出した後では重要でないことは明らかである。
本実施形態では、スパイク雑音の媒体上での大局的な分布図を得ることが目的なので、スパイク雑音を抽出した後、角度方向軸を500の区間に分割し、各区間中に幾つスパイク雑音が存在するかを数え、1つ以上存在する場合には黒い点を表示することとしている。このようにして得られたのが図8である。図8の場合、もとのデータ容量が約7.7MBであったのに対し、図8のデータ容量は、角度方向の分解能が500点であるので約40kBである。尚、図8を得る過程で用いた参照用スパイク雑音波形には、上記した式(4)で表わされる単峰型の波形を用いた。
尚、ピーク検出は、スパイク相関関数の極大点であり、そして、その極大点の前後でスパイク相関関数が設定された閾値を一定時間上回っていることを満たす点をピークとみなす方式で行った。
スパイク雑音を抽出した後のデータ保存の形式で最も一般的なものとしては、図8を描くのに用いた分解能を落とした状態での分布座標データ、或いは、図8のような画像データとして保存する方法がある。この他に、スパイク雑音のピーク位置座標をバイナリーデータまたは文字データとして記録する方法がある。この時、相互相関関数からスパイク雑音の位置座標を求めた際と同じ角度軸方向の分解能で表現しておくと、特に、スパイク雑音の出現頻度が少ない場合には、前出の方式よりも更に少ないデータ容量でしかも高い位置分解能のままその位置を記録することが可能である。また、必要に応じて、スパイク雑音の位置の他に、スパイク雑音と判定されたピーク状波形(スパイク相関関数)の振幅及びそのピーク状波形の半値幅、ヘッド出力波形の振幅なども合わせて記録することもできる。
また、参照スパイク波形に式(4)で表されるような単峰型ではなく、特定の形状、例えば式(3)で表わされるような双極型を仮定することにより特定の形状の波形を示すスパイク雑音だけを検出し、磁壁の種類を分類したりすることも可能である。
先にも述べたように参照波形の形状や幅等の絶対値はさほど重要ではないので、予め観測したり、或いは予測されるものを用いれば十分である。例えば、上の実際の観察例と同じ条件であれば、式(4)で規定されるような単峰型でその半値幅が100μmの参照波形を用いれば、ほぼ全てのスパイク雑音を検出することができる。しかし、上記の例では、異なる半径に於いても常に同一参照スパイク雑音波形を用いて相互相関関数を求めている。従って、この方式では、測定時の媒体回転の角速度は一定であるから、内周側と外周側とでは、実質的な参照スパイク雑音波形の長さが大幅に変化してしまうことになる。測定半径の範囲が例えば15mmから30mmのように広範囲に渡るとこの影響は無視し難い場合も生じる。このような事態を避けるためには、各半径に於いて参照スパイク波形の長さが一定になるように各半径毎に参照スパイク雑音波形を求める。つまり、予め参照波形の幅や形状を実際の寸法で規定しておく。その簡単な一例としては、ある半径で最適化された参照スパイク雑音波形をもとにして、その他の半径に於ける参照スパイク雑音波形配列の各要素の値を補間法で求める方法が有る。この方法であれば、参照スパイク雑音波形が数式で与えられてない場合でも容易かつ高速に各半径毎に適した参照スパイク雑音波形を求めることができる。
従って、実際には以下のような手順になる。まず、予め参照波形の幅や形状を実際の寸法で規定しておく。次に、先に説明したのと同じ手順で試験範囲の各半径に於けるヘッド出力波形を取り込む。次に、各半径毎に相関関数を求め、そのピークの位置を求める。この際に、各半径における参照波形は上に述べた方法で求めたものを使用する。
試験結果としては、図8のようなスパイク雑音の空間分布図で表示するだけでなく、各測定半径毎にヘッドが遭遇したスパイク雑音の数を数値で表現する他、観測されたスパイク雑音の総数、相関関数のピーク振幅に対する度数分布等をそれぞれ求めることができる。良否判定条件は、これらを単独にあるいは組み合わせて設定することが可能である。
スパイク雑音の多くが軟磁性層中に形成された磁区の磁壁からの漏洩磁界であることは疑い様のないことである。しかし、スパイク雑音として検出されたものの中には、2次元分布図中で点状にしか観測されないものも少なからず見られる。これらは、単純な磁区ではなく軟磁性層中の欠陥等に起因するものと思われている。原因の如何に関わらず、2次元分布図上で点状に観測されるスパイク雑音と線状に観測されるスパイク雑音とでは、実際の磁気ディスク装置に組み込んだ際の影響の度合いが異なるのでこれらは区別されるべきである。即ち、点状のものは一部のトラックだけに影響を与えるのに対し、線状のものは極めて多数のトラックに影響を与えるからである。被試験ディスクの最終的な良否判定にはこれらの結果を用いることもできる。
両者の判別法には多数の方法が存在しうる。以下に、一例を説明する。まず、スパイク雑音が存在するピクセルの座標を全て網羅したリストを作る。そして、このリストから一つの要素を取り出し、そのピクセルに隣接したピクセルの座標がリスト中に有るか否かを調べる。取り出した要素は元のリストからは削除する。もし発見された場合には、その発見されたピクセルもリストから削除し、そして、その発見されたピクセルに隣接する座標がリストに登録されていないかを調べる。これを隣接するスパイク雑音座標が発見されなくなるまで繰り返して行い、繰り返しの回数が規定以上であるかどうかで点状か否かを判別する。線状に連なっていると判断されたスパイク雑音の座標は、一連毎に新たなリストに登録する。以上の過程を元のリストが空になるまで繰り返す。元のリストから新たに要素を取り出す際に、軟磁性層の異方性がディスクの半径方向に向いているなどしてスパイク雑音が放射状の分布を示すことが予測される場合には、最内周または最外周のものから始め、また、隣接する要素を探す際には半径方向のものを優先的に探す。これにより、円周方向に互いに隣接したもの同士を混同し難くなる。尚、最終的に線状のスパイク雑音列と判断する基準は、現状では300μmとしている。これは、計測時の半径移動ステップが通常100μmであることと確率的な誤りを少なくするために最低3点以上隣接していることを条件としているためである。
尚、本実施形態では、スパイク雑音を抽出するための演算をディスク全面に渡る情報を全て取得した後に行っているが、各測定半径毎に演算を行っても差し支えないことは明らかである。また、本実施形態ではこの演算にコンピュータの標準的な演算方式を用いたソフトウェアにて行っているが、専用のハードウェアやデジタルシグナルプロセッサー等を用いることも可能であることは言うまでもない。更に、本実施形態では、指定された半径毎にデータを取り込んでいるが、波形を連続的に取り込むと同時にヘッドの位置も連続的にシークさせ、ディスク表面を螺旋状に走査しても良いことは言うまでもない。
以上の例では、媒体回転の角速度を一定としているが、これを線速度を一定として計測する方法も可能である。この場合には、異なる半径においてもサンプリング間隔が常に等しいため参照波形の幅も一定で良い。また、ヘッドの浮上量が変化しないために測定半径範囲が広い場合にもスパイク雑音検出感度が半径によって変化しないという特徴が有る。
尚、図1やそれ以後の説明に於いては簡単のためにディスクの片面だけを評価しているような表記になっているが、実際の生産ライン中で使用する装置では、当然、ディスクの両面を同時に評価可能な仕様となっている。即ち、2つのヘッドをディスクの両面を同時に計測可能なようにヘッドステージに装着可能であり、ヘッドアンプ等の電気回路系は同等のものが2チャンネル装備されている。デジタルストレージオシロスコープは、インデックス信号入力以外に2チャンネル以上あるものを使用するか同等性能のものを複数台使用する。また、より高速に検査を行うために片面当たりに複数のヘッドを装着し、各ヘッドを並列に動作させることも当然可能である。その場合、回路系や測定器は、それに見合った数を装備することは言うまでもない。
〔実施形態2〕
図10は、本発明の垂直磁気記録媒体検査方法の実施に使用される検査装置の他の例を示す概略図である。本実施形態の装置構成は、実施形態1と同一であるものの、テストプログラムに媒体の品位判定機能が付加されている点が異なる。
品位判定の基準のうち、最も単純なものの1つとしては、指定された半径におけるスパイク雑音数または指定された半径範囲内におけるスパイク雑音の数が一定数以下であることを良品の条件とすることが考えられる。しかし、品位判定の内容及び条件値は、ディスクが満たすべき品質基準によって異なる。従って、実施形態1に示した解析機能の結果を組み合わせて判定条件を設定することが可能であるので極めて多様な状況に対応できるように考慮されている。また、品位判定の内容及び条件値は、それぞれ判定ルーチンと判定条件の変更により容易に変更可能なように配慮されている。
この時のテストプログラムの中の品位判定ルーチンの動作概要を図11に示す。複数の判定内容に対応する判定ルーチンを設定可能であり、その数と内容は、プログラムの簡単な修正で変更可能である。判定ルーチン1〜Nは、測定の結果得られたスパイク雑音分布や振幅等を設定された判定内容と条件に照らしてそれぞれ品位を判定し、その結果に応じてランク付けを行う。総合判定ルーチンは、各判定内容の優先度や相互の関係による総合的な判定方法が定義されていて、各判定ルーチンの判定結果を用いて最終的な判定を行い、最終的なランク付けを行う。
本発明の検査装置を実際の生産ラインで使用する際には、当然、ディスクの交換を自動的に行うロボット装置と組み合わせて使用する。そして、スパイク雑音評価結果に関する良品と不良品との分別をこの段階の直後に行う。場合によっては、単純に良品と不良品という分別だけでなく、必要に応じて、検査結果に基づいたランク分けを行う。
〔実施形態3〕
図12は、本発明の垂直磁気記録媒体検査方法の実施に使用される検査装置の更に他の例を示す概略図である。この例では、制御用コンピュータ7がネットワークインターフェースを備えており、これを通してネットワーク上の他のコンピュータや計測装置、出力装置等と命令及びデータの送受が可能である。また、テストプログラムには、他のコンピュータ等から送付されてきた外部命令を解釈し、実行する機能を備えている。ここで、外部命令は、テストプログラム中で定義されているもので、テストプログラムに対してテストの実行、中断、テスト条件の変更等を指示することが可能である。従って、ネットワーク上の他のコンピュータからの遠隔操作が可能である。尚、ネットワークを構成するには、専用のネットワークインターフェースを使用する必要は必ずしもなく、図1に示した装置が装備している双方向バスインターフェースを用いる方法もある。これらの特徴により、必要に応じて以下のようなことが可能である。
まず、生産ライン等で複数のスパイク雑音検査装置を1台の制御用コンピュータで管理することが可能である。また、データ管理の一元化も可能で容易になる。或いは、スパイク抽出のように負荷の大きな作業を他のコンピュータに分担させることも可能である。これにより、評価にかかる時間を短縮することにより生産性が向上する。また、スパイク雑音検査装置のコンピュータをより性能の低いもので置き換えることによるコスト削減が可能である。また、スパイク雑音検査装置は、必ずしも専用の装置である必要はなく、リードライトテスターを兼ねた装置であっても良い。
なお、スパイク雑音抽出のような負荷の大きな作業を他のコンピュータに分担させる場合、スパイク雑音検査装置やコンピュータは必ずしもネットワークに接続されている必要はなく、ヘッド出力データを可換記憶媒体等を用いて運ぶ等しても差し支えないことは勿論である。
〔実施形態4〕
実施形態1の中でも触れたように、状況によっては、サーマルアスペリティのようなスパイク雑音にみかけ上類似した現象が観察されることがある。サーマルアスペリティは、ディスク上の微小な突起や塵等が磁気抵抗効果ヘッド素子に接触した際にパルス状の疑似信号が現れる現象である。
サーマルアスペリティが観測される頻度は、通常それほど多くはないものの、形状に起因するサーマルアスペリティとスパイク雑音とでは、とるべき対策が当然異なるので試験の目的によっては両者の区別をつける必要がある。これは、スパイク雑音の次のような特性を用いることにより実現可能である。
図13は、先にスパイク雑音を観察した媒体のある一部をアナログオシロスコープで観察した例である。図13の時間軸スケールは、図13(a)(b)ともに1グリッド当たり100μsである。図13(a)と(b)は、ともに直流消去状態でスパイク雑音(3つ)を観察しているが、直流消去時に記録ヘッドに流した電流の符号が互いに異なる。図13に示すように、スパイク雑音の波形は、媒体を直流消去した際の電流の符号、即ち、記録層の磁化の向きによって変化する。多くの場合、振幅や波形に若干の変化はあるものの磁化方向に応じてスパイクの波形の極性も反転する。それに対し、ディスク表面形状や塵に起因するサーマルアスペリティの場合、直流消去電流の符号を反転させても波形の極性は変化しない。また、スパイク雑音の波形は図13に示すように多くの場合、単峰型ではなく、正及び負のピークを有する双極型を示す。
従って、スパイク雑音とサーマルアスペリティの最も単純な判別方法は、次のようになる。ディスクの任意の測定半径位置において、まず、測定用の磁気ヘッドを用いてある方向に十分に大きな磁界を印加することにより直流消去を行った後に、先に述べた方式によってスパイク雑音を評価する。このとき、参照用の波形は双極型を使用する。次に、同一半径上で今度は直流消去時の磁界を反転させて直流消去した後に、同様にスパイク雑音を評価する。参照用波形に双極型を使用しているので、信号波形と参照用波形との相互相関関数を求めると、スパイク雑音は2回の測定のうち、どちらか一方のみで検出される。
図14に示したのは、リードライトテスター機能を合わせ持つ装置を用いて本実施形態にて観察した同一媒体の同一箇所に磁化遷移間隔254nmの信号を記録した後に該当箇所をアナログオシロスコープで観察したものである。スパイク雑音が観察されていた位置において再生信号の振幅が変調されていることが分かる。スパイク雑音の位置を特定した後に、該当箇所とその近傍に於ける信号対雑音比を計測したところスパイク雑音が存在しない領域に於けるそれよりも約6dB劣化していることが推定された。
〔実施形態5〕
図15は、本発明の垂直磁気記録媒体検査方法の実施に使用される検査装置の別の例を示す概略図である。この例の検査装置は、スパイク雑音による再生信号への影響の種類を判別するための判別回路9を備える。検査の手順は、大きく見るとデータ取得ステージと判定ステージとに分けられる。図16にデータ取得ステージの手順を示す。検査動作は、コンピュータ7に内蔵されたテストプログラムにそって行われる。以下に、装置の動作と合わせて説明する。
テストプログラムは、まず、スピンスタンド制御装置6を介してスピンドルモーター4を所定の回転数で回転させ、ヘッドステージ5を駆動してヘッド1を2層垂直磁気記録媒体8の所望の半径位置でロードする。そして、予め指定された記録電流値でこれも予め指定された記録波長で信号を記録する。
ヘッド1の再生出力信号は、ヘッドアンプ2によって増幅され、判別回路9を経た後、デジタルストレージオシロスコープ3の信号入力端子に入力される。判別回路9は、再生信号の包絡線、即ち、振幅を連続的に検出する回路である。その動作に関しては後述する。デジタルストレージオシロスコープ3は、スピンドルモーター4からのインデックス信号をトリガー信号として増幅されたヘッド出力を所望の時間に渡って取り込み、メモリに蓄える。蓄えられた判別回路の出力波形は、テストプログラムが発行した読み出し命令に従ってコンピュータ7に転送される。この一連のデータ取得動作を予め設定された半径範囲内の各半径位置にヘッド1を移動させる毎に行う。通常、ヘッド1は、半径方向には等間隔で移動させることが多いが、これを不等間隔に移動させることも勿論可能である。従って、データ取得動作終了時には、コンピュータ7のメモリの中には、各半径毎の再生信号の包絡線に関する情報が蓄えられている。
テストプログラムは、先のデータ取得ステージで取得したデータからスパイク雑音による再生信号への影響を抽出し、その種類を判別し、必要であればその結果から2次元的な分布図を作成する。取得したデータからのスパイク雑音による影響の抽出は、各半径位置で得られた波形毎に行われる。従って、スパイク雑音の影響を受けている点の位置は、半径とインデックス信号からの時間、即ち、ディスク上での回転原点からの角度で現わされる。また、被試験ディスクをスピンドルに装着する際には、ディスクを作製する際にディスクの縁にできるスパッタ装置の基板ホルダーの爪の跡とスピンドルの回転原点を合わせる等しておくと、スパイク雑音の影響を受けている点の位置をディスク上の絶対位置で表わすことが可能である。
尚、本実施例では、スパイク雑音の影響を抽出するための演算をディスク全面に渡る情報を全て取得した後に行っているが、各測定半径毎に演算を行っても差し支えない。また、本実施例ではこの演算にコンピュータの標準的な演算方式を用いたソフトウェアにて行っているが、専用のハードウェアやデジタルシグナルプロセッサー等を用いることも可能である。更に、本実施例では、指定された半径毎にデータを取り込んでいるが、波形を連続的に取り込むと同時にヘッドの位置も連続的にシークさせ、ディスク表面を螺旋状に走査しても良いことは言うまでもない。
判別回路9には、複数の形式が考えられる。図17に示す回路は、そのうちでも最も単純な回路の例である。ヘッドアンプ出力をアンプ11で適当なレベルまで増幅した後、ハイパスフィルター12を通す。ハイパスフィルター12の遮断周波数を適切に選択することにより、スパイク雑音による再生信号のベースラインシフトを除去することができる。媒体の種類や測定条件に依存するが、ヘッド媒体相対線速度が9m/sのとき2次のベッセル型ハイパスフィルターでは、低域遮断周波数は、500kHzから1MHz程度が適している。ここで、ベースラインシフトとは、再生信号に再生信号とは異なる周波数成分(通常は、再生信号よりも遥かに低い周波数成分)の信号が重畳されることにより再生信号の平均値が局所的に他の箇所よりもプラスまたはマイナスの方向にシフトする現象のことである。
次に、ハイパスフィルター12の出力は、包絡線検波器13に入力される。包絡線検波器13の時定数を再生信号周波数に合わせて適切に選択すれば、再生信号の包絡線、即ち、振幅信号を得ることができる。従って、判別回路の出力波形の中で谷を検出することにより、スパイク雑音による振幅変調を捉えることができる。このとき、スパイク雑音に起因しない、その他の媒体欠陥等による振幅減少も同時に検出されることもある。しかし、一般に、スパイク雑音によって再生信号振幅が変調される媒体上の範囲は、数10μmから数100μmと、記録膜欠損等が原因である場合に比べて広範囲に渡る傾向があるので、厳密な区別はできないものの相当な確度でスパイク雑音による再生信号振幅の変調を判別可能である。また、別途、スパイク雑音分布等を計測し、その結果と照合して判別する方法もある。ただし、欠陥検査と言う観点からは、再生信号振幅が減少する領域を欠陥とみなすのであれば、原因に関わらず再生信号振幅がある基準よりも減少したものを欠陥と判別すれば事足りるのでその原因の判別は必ずしも重要ではない。
尚、包絡線検波器の構造及び動作原理に関しては、例えば、昭和52年9月1日にマグロウヒルブック株式会社刊行のラシィ著「通信方式」の125頁から126頁に詳しく述べられている。ただし、本検査装置に用いる包絡線検波器は、この文献に記載されている構成のものである必要はなく、再生信号の包絡線を検出できるものであればその他の形式のものも使用可能であり、また、整流検波器等も使用可能である。尚、図17においてハイパスフィルター12の配置は、アンプ11の前段であっても良い。
図18に、スパイク雑音による再生信号のベースラインシフトの例を示す。評価した2層垂直磁気記録媒体は、図9にて説明したものである。また、評価に使用した磁気ヘッドは、再生素子として磁気抵抗効果素子を用いたものでそのシールド間隔は、0.2μm、トラック幅は1.3μmである。このヘッド及び前述の2層垂直磁気記録媒体をスピンスタンドに装着して実験を行った。
図18(a)は、直流消去状態におけるヘッド出力波形で、あるスパイク雑音近傍を観察したものである。図18(b)は、図18(a)の観察箇所と同一箇所を信号を記録後に観察したものである。この時の線記録密度は、100kFCIであった。スパイク雑音の位置において、再生信号のベースラインがスパイク雑音波形にそって緩やかにシフトしていることが分かる。図18(c)は、図18(a)、図18(b)と同一箇所を低域遮断周波数500kHzのハイパスフィルターを通して観察したものである。図18(c)には、スパイク雑音位置において幾分、包絡線の形状に乱れを残すのみでスパイク雑音の影響はほとんど見られない。このことから、このスパイク雑音が再生信号に与える影響は、ほとんどベースラインシフトであったことが分かる。
図19は、再生信号の振幅変調を伴うスパイクの観察例である。図18と同様に、図19(a)は直流消去状態、図19(b)は記録後の再生信号、図19(c)は再生信号をハイパスフィルターに通したものをそれぞれ観察したものである。明らかに、ハイパスフィルターによってベースラインシフトが除去される後の再生信号の振幅がスパイク雑音の位置において減少していることが分かる。
再生信号が減少している箇所では、一般に、信号対雑音比が低下している。従って、減少幅がある限度を超えた場合には欠陥とみなすのが妥当である。この基準としては、例えば、同一トラック上の振幅変調が見られない区間での平均出力振幅よりも10%以上減少した場合に媒体性能に影響を与えるものとみなし、30%を超えるものに関しては欠陥とみなす。
一方、ベースラインシフトに関してもシフト量がある限度以内であれば記録領域として十分使用可能である。この限度量は、ディスクドライブの設計、特に、実際に磁気ディスク装置で使用される信号処理方式に依存する。現在使用している基準値では、ベースラインのシフト量が最大出力値(低線記録密度に於ける出力)の200%以内ならば許容する。ベースラインシフトが基準値以内である場合の対処法の一例としては、ベースラインシフトがある値を越えるのを検出した段階でハイパスフィルターを動的に挿入する方法がある。ハイパスフィルターの挿入によりチャネルの性能はいくぶん影響を受けるものの、スパイク雑音が存在する領域を利用できることにより、ディスクの平均記録密度は、利用できない場合よりも高くすることができる。また、直流成分を積極的に利用するチャネルの場合、サーマルアスペリティと同様に扱うことにより、やはりスパイク雑音が存在する領域を記録領域として用いることができる。
このように、スパイク雑音による再生信号への影響は、その影響の種類によって扱い方を変えるべきであることが理解される。また、影響の大きさによっても扱いを変えるべきであることも分かる。従って、被試験ディスクの良否を判定する際には、スパイク雑音による再生信号への影響の定量評価することにより、単純にスパイク雑音の数等で判定するよりも、より的確な判定が可能になる。例えば、実際にはスパイク雑音の再生信号への影響が全体として小さく、使用可能なディスクをスパイク雑音の総数が多いとして不合格と判定してしまうようなことを避けることができる。反対に、スパイク雑音の数は少ないもののそれらが再生信号に与える影響が大きく、実際には使用不可能なディスクを良品と判定してしまうケースを避けることもできる。即ち、媒体及び磁気ディスク装置の歩留まりを向上させることができる。
従って、テストプログラムは、スパイク雑音による再生信号のベースラインシフト及び振幅変調が観測された点の数だけでなく、それぞれの影響の程度をも考慮に入れて合否を判定する。そして、被試験ディスクの合否を総合的に判定する際の指標の一つとして、平均記録密度を用いる。即ち、欠陥及び欠陥として扱うべき領域の数、使用可能ではあるが、性能が低下している領域の数とその程度から平均記録密度を求める。なお、単純な合否判定だけでなく、例えば、平均記録密度を指標として、被試験媒体を複数の品位に分類することも可能である。
〔実施形態6〕
図15に示した検査装置の変形例について説明する。本実施形態の検査装置は、実施形態5で説明した検査装置と判別回路の構成が異なるだけで、他の構成は同じである。
図20は、本実施形態の検査装置に用いる判別回路の構成例を示す図である。この例では、判別回路の出力は2系統ある。一方の系統は図17と同じであり、もう一方の系統は、図17からハイパスフィルターを除いたものである。後者の出力は単純に包絡線検波器13を通過しているのでスパイクによるベースラインシフトと振幅変調を含んだ出力である。従って、この出力では、再生信号のベースラインシフト及び振幅変化がピークや谷として現れる。ただし、振幅が減少しているところも負のベースラインシフトもいずれも谷として現れるので、影響の種類を判別することはできない。そこで、実施形態5でも説明したように、ハイパスフィルター12を通過した側の出力からは振幅変調を判別できるので、両者を比較することによりベースラインシフトと振幅変調とを判別する。
2以上の入力チャンネルを有するデジタルストレージオシロスコープを用いれば、図20の2系統の出力を同時に捕捉することができるので、この判別回路を用いた場合でも図17の判別回路を用いた場合に比較して検査時間に大きな差は生じない。
スパイク雑音によるベースラインシフトと振幅変調を分離して評価し、それぞれの結果を用いて総合的に媒体の性能評価を行う場合の判定ステージの手順を図21に示す。この場合、取得したデータは、包絡線検波器出力をサンプリングした包絡線検波器出力配列と、ハイパスフィルターを通過させてから包絡線検波器に通したものをサンプリングした振幅変調データ配列の2種類である。後者は、専ら再生信号振幅の情報からなるが、現実には包絡線検波器は媒体雑音等の影響を受けるために再生信号振幅以外の成分を含む。同様に、前者に関しても再生信号振幅とベースラインシフト以外の成分も含む。しかし、媒体雑音の影響の程度は、両者ともに同じ程度なので、今の場合、ベースラインシフトを求める際には包絡線検波器出力配列から振幅変調データ配列を単純に差し引いている。これを以下では、ベースラインシフト配列と呼ぶ。
振幅変調が起きている点は、振幅変調データ配列から各半径毎の再生信号振幅の極小点、即ち、谷を求めることによって探す。谷の検出は、平均振幅よりも一定の区間に渡り一定の割合以上の振幅減少が見られ、かつ、導関数が0を通過する点を求めることにより行う。そして、例えば、発見された振幅変調点の程度及びその数を基準値と比較して媒体の振幅変調点に関する品位を決定する。
ベースラインシフトが起きている点も同様にしてベースラインシフト配列から探す。ただし、ベースラインシフトは極性を持つので極大と極小を求める必要がある。そして、振幅変調の時と同様にしてベースラインシフトに関する媒体品位を決定する。最後に、振幅変調及びベースラインシフト双方の評価結果を元に、例えば、合否判定を総合的に行う。
〔実施形態7〕
図15に示した検査装置の別の変形例について説明する。本実施形態の検査装置は、実施形態5、6で説明した検査装置と判別回路の構成が異なるだけで、他の構成は同じである。
図22は、本実施形態の検査装置に用いる判別回路であるホモダイン検波器の構成例を示す図である。ホモダイン検波器の詳細な構成及び動作に関しては広く文献等に解説されているのでここでは述べない(例えば、昭和52年9月1日にマグロウヒルブック株式会社刊行のラシィ著「通信方式」の135頁から138頁参照)。
動作を簡単に説明する。ここでも例によってオール1符号を媒体に記録しているので、再生信号は周期信号となる。キャリア抽出回路71は、再生信号に同期した周波数を有する信号を発生する。フェーズロックドループを応用した回路を用いれば、再生信号の基本周波数(キャリア周波数)及び位相にほぼ完全に同期した信号を得られる。この信号と再生信号をミキサー72に入力し、不要な高周波成分をローパスフィルター73で除去することにより、再生信号の包絡線をほぼ理想的に得ることができる。また、この回路の出力からは、再生信号のベースラインシフトもほぼ完全に除去される。それに対し、包絡線検波器のように積分回路を含んだ判定回路では、雑音がコンデンサーに充電されるので再生信号振幅は実際よりも大きく観測される。従って、この回路は、スパイク雑音による再生信号振幅変調の度合いを定量評価する場合に適している。
〔実施形態8〕
図15に示した検査装置の更に別の変形例について説明する。本実施形態の検査装置は、実施形態5、6、7で説明した検査装置と判別回路の構成が異なるだけで、他の構成は同じである。
包絡線検波器の多くは、積分器とダイオードを用いているために、再生信号のプラス及びマイナス側の包絡線をそれぞれ検出することができる。プラス側とマイナス側の包絡線を比較することにより、包絡線のプラス側とマイナス側の対称性の評価が可能な他、再生信号のベースラインシフト及び振幅変調の判別にも用いることができる。図23は、このことを用いた判別回路の構成例である。アンプ11の出力は、2つの包絡線検波器13,13にそれぞれ入力される。2つの包絡線検波器は、ともに同一の構成で時定数も同一に調整されている。ただし、一方は再生信号のプラス側の包絡線を、もう一方はマイナス側の包絡線を検出するようになっている。ダイオードと積分器を用いた包絡線検波器であれば、一方の検波器のダイオードの極性を反対にしておけばよい。従って、両者の出力の和をとればベースラインシフトを、差をとれば振幅変調の位置を出力信号のピークもしくは谷として得ることができる。
〔実施形態9〕
従来、放射状にスパイク雑音が分布している2層垂直磁気記録媒体に対してサーボ信号を記録すると、サーボ信号とスパイク雑音とが交錯してしまう場合が生じることを避けることができなかった。しかし、予めスパイク雑音分布を知ることができれば、スパイク雑音を避けてサーボ信号を記録することが可能になる。
サーボ信号を記録するための装置として、サーボトラックライタの概念図を図24に示す。図面の簡単のために一部、結線を省略しているが、制御装置208は、この系全体を統括制御する。即ち、サーボ信号記録制御部も制御装置によって制御される。制御装置は、サーボ信号を記録する前に、まず、実施例1で述べた方法と手順によってスパイク雑音分布を求める。求められたスパイク雑音分布は、メモリに記憶される。スピンスタンドと異なり、サーボ信号を記録する前の磁気ディスク装置には、ヘッド位置を検知する手段がないため、ロータリーアクチュエータ206に対してロータリーエンコーダ205を付加設置してヘッド位置情報を回転角として検知する。媒体上のヘッド位置情報のうち、角度座標に関しては、スピンドルのインデックス信号もしくは、クロックヘッド201にて記録再生した周期信号をもとに得られた回転同期パルスを用いて検出する。ヘッド位置制御部にてロータリーアクチュエータ206を回転させ、磁気ヘッド203の位置を逐次移動させてはサーボ信号を記録する。記録再生アンプ207は、制御装置及びサーボ信号記録性御部からの指令に従い、磁気ヘッドの再生素子駆動と再生信号の増幅、記録ヘッドの駆動等を行う。サーボ信号を記録する際には、クロックヘッド201にて記録再生した周期信号をもとに得られた回転同期パルスに常にタイミングを合わせて、磁気ヘッドにてサーボ信号を2層垂直媒体202に記録する。
サーボ信号は、例えば図25に示したような配置で記録される。サーボ信号領域が円弧状に配置されるのは磁気ヘッドをシークさせるのにロータリーアクチュエータを用いているためである。図25中のサーボ信号領域は、線で表現されているが、当然、実際には円周方向にある長さを持っている。従って、スパイク雑音が存在する媒体にこのような配置でサーボ信号を書き込むとある確率でスパイク雑音と交錯する。交錯した一例を図26に示す。今、サーボ信号は、図26中に示した最外周の位置から書き始めている。このとき、このようにスパイク雑音とサーボ信号が交錯してしまう一因は、このサーボ信号を書き始める際のディスクの回転角(位相)が悪いためである。そこで、先に得たスパイク雑音分布をサーボ信号の配置情報と照合し、サーボ信号とスパイク雑音が交錯しないようにサーボ信号を書き始める際の位相を図27のように変更することによりサーボ信号列とスパイク信号列とが交錯するのを避ける。
サーボ信号とスパイク雑音が交錯しないようにする別の方法は、先に得たスパイク雑音分布を元に、両者が交錯しないようにサーボ信号の配置を変更することである。ただし、サーボ信号は、隣接するトラックにまたがる必要が有るので、トラック毎にその位置を大幅に変更することは困難である。そこで、図28に示すように通常通り記録したのではスパイク雑音と交錯するサーボ信号列の書き込み位相をずらすことによりスパイク雑音を避ける。この方法ではサーボ信号列間の位相が通常よりも開いてしまう領域が生じる。従って、当然、当該サーボ信号列の書き込み位相の変更量は、そのような領域におけるトラッキング精度の低下を許容範囲内に抑えられる範囲内にする必要が有る。
以上のような方法により、スパイク雑音を避けてサーボ信号を記録することが可能である。しかし、上記2具体例のうち単独では対処しきれない場合が有る。そこで、より実際的な方法としては、上記2つの方式を組み合わせる方法が有る。即ち、まず、通常のサーボ信号配置で最も交錯する確率の低い書き込み開始位相を選択し、次に、個々のサーボ信号列の書き込み位相を調整する。
スパイク雑音の数及び分布或いは1周当たりのサーボ信号数によっては、図28に示した例のようにスパイク雑音とサーボ信号が交錯するのを避けられない場合が有る。図28の例の場合、1周当たりのサーボ信号数が多いために放射状に連なるスパイク雑音列が存在した場合、ほぼ確実にどれかのサーボ信号列と交錯する。更に、この例では近接して存在する2本の放射状のスパイク雑音列の間隔とサーボ信号列間の間隔とがある半径範囲(トラックAからB)でほぼ一致している。スパイク雑音列、サーボ信号列ともに相当な幅を有しているためにこのような現象は相応の確率で起こる。このような場合、サーボ信号を書き始める位相によっては、図28の例のように円周方向で2箇所続けてサーボ信号とスパイク雑音が交錯してしまうことがある。この場合、2箇所連続で正常なサーボ信号を得られないためにトラッキング精度が低下するという問題を生じる。そこで、同一トラック上に於いて2箇所続けてサーボ信号とスパイク雑音が交錯しないように書き初めの位相または特定サーボ信号列の書き込み位相を調整することにより影響を最小限にとどめる。図29は、図28と同一媒体にサーボ信号を書き始める位相をずらすことにより同一トラック上に於いて2箇所続けてサーボ信号とスパイク雑音の交錯を回避した例である。
尚、本実施例では、ディスクの回転原点にスピンドル204のインデックスパルスを用いている。インデックスパルスを出力しないモータを使用する場合には、クロックヘッド201でクロック信号を記録し、その再生パルスを数えることにより原点信号を作り出したり、或いは、レーザープローブを用いてスピンドル側面のテクスチャーから原点信号を求める。
本発明による垂直磁気記録媒体検査装置の一例を示す概略図。 相関関数を用いることのメリットを説明する図。 スパイク雑音の例とその相互相関関数の拡大表示図。 閾値とピーク検出数の関係を示す図。 スパイク雑音の典型例を示す図。 双極型の波形の説明図。 スパイク雑音の抽出過程の説明図。 スパイク雑音分布の計測結果例を示す図。 実験に用いた垂直磁気記録媒体の膜構成の説明図。 良否判定可能な垂直磁気記録検査装置の例を示す図。 良否判定の手順の説明図。 ネットワークに接続可能な垂直磁気記録検査装置の説明図。 スパイク雑音の直流消去磁界の方向依存性の説明図。 スパイク雑音によって再生信号が変調される様子の説明図。 垂直磁気記録媒体検査装置の他の構成例を示す図。 再生信号の包絡線波形データ取得手順の説明図。 ベースラインシフトを取り除くことができる判別回路の構成例を示す図。 スパイク雑音によるベースラインシフトの観察例を示す図。 スパイク雑音による振幅変調の観察例を示す図。 ベースラインシフトと振幅変調をそれぞれ判別するのに用いる判別回路の構成例を示す図。 媒体品位の判定手順の説明図。 ホモダイン検波を用いる判別回路の構成例を示す図。 上側及び下側包絡線を同時に取得するための判別器の構成例を示す図。 本発明によるサーボ信号記録装置の一例を示す概略図。 サーボ信号の配置の一例を示す概略図。 サーボ信号列とスパイク雑音列が交錯する例を示す図。 サーボ信号を記録開始する位相を変えることによりサーボ信号列とスパイク雑音列の交錯を回避した例を示す図。 近接した2本のスパイク雑音列により同一トラック上で2箇所連続してサーボ信号列とスパイク雑音列が交錯する例を示す図。 サーボ信号を記録開始する位相を変えることにより同一トラック上で2箇所連続してサーボ信号列とスパイク雑音列が交錯するのを回避した例を示す図。
符号の説明
1…ヘッド、2…ヘッドアンプ、3…デジタルストレージオシロスコープ、4…スピンドルモーター、5…ヘッドステージ、6…スピンスタンド制御装置、7…コンピュータ、8…2層垂直磁気記録媒体、9…判別回路、11…アンプ、12…ハイパスフィルター、13…包絡線検波器、71…キャリア抽出回路、72…ミキサー、73…ローパスフィルター、101…ガラス基板、102…軟磁性層、103…非磁性中間層、104…記録層、105…保護膜、201…クロックヘッド、202…2層垂直媒体、203…磁気ヘッド、204…スピンドル、205…ロータリーエンコーダ、206…ロータリーアクチュエータ、207…記録再生アンプ、208…制御装置。

Claims (9)

  1. 軟磁性下地層を備えた垂直磁気記録媒体の所定の半径位置に磁気ヘッドをロードして所定の周波数で信号を記録するステップと、
    前記記録した信号を再生するステップと、
    前記再生信号に現れるスパイク雑音が再生信号に与える影響の種類を前記再生信号の包絡線形状により判別するステップと
    を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体検査方法。
  2. 請求項1記載の垂直磁気記録媒体検査方法において、前記スパイク雑音に相当する再生信号波形に含まれる振幅変調成分を判別することを特徴とする垂直磁気記録媒体検査方法。
  3. 請求項1記載の垂直磁気記録媒体検査方法において、前記再生信号のベースラインシフトを判別することを特徴とする垂直磁気記録媒体検査方法。
  4. 請求項2記載の垂直磁気記録媒体検査方法において、前記振幅変調をハイパスフィルターと包絡線検波器により判別することを特徴とする垂直磁気記録媒体検査方法。
  5. 請求項2記載の垂直磁気記録媒体検査方法において、前記振幅変調をホモダイン検波器により判別することを特徴とする垂直磁気記録媒体検査方法。
  6. 請求項1記載の垂直磁気記録媒体検査方法において、前記再生信号の包絡線形状から振幅変調成分を求めるステップと、前記再生信号から前記振幅変調成分を除去するステップと、前記振幅変調成分が除去された再生信号からベースラインシフトを求めるステップとを含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体検査方法。
  7. 垂直磁気記録媒体を支持し回転駆動させる手段と、前記垂直磁気記録媒体の磁化状態に起因する信号を再生する手段と、該信号を再生する手段により再生された信号から振幅変調成分を検出する手段とを備えたことを特徴とする垂直磁気記録媒体検査装置。
  8. 垂直磁気記録媒体を支持し回転駆動させる手段と、前記垂直磁気記録媒体の磁化状態に起因する信号を再生する手段と、該信号を再生する手段により再生された信号のベースラインシフトを検出する手段とを備えたことを特徴とする垂直磁気記録媒体検査装置。
  9. 請求項7記載の垂直磁気記録媒体検査装置において、前記振幅変調成分を検出する手段はハイパスフィルターと包絡線検波器、又はホモダイン検波器を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体検査装置。
    .
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