JP2004340202A - 車両用自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】クラッチツウクラッチ変速に同期して駆動力源であるエンジン12により発生させられる駆動トルクを所定量増大させると共に、その変速の終了に際してその駆動トルクを定常値まで漸減させる駆動トルク制御手段108を含むことから、クラッチツウクラッチ変速が終了してもなおエンジン12の出力増加制御が継続させられるため、その変速後のギヤ段又は変速比に付随するエンジンブレーキ力を十分に減殺することができ、変速ショックの発生を確実に防止できる。
【選択図】 図15
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用自動変速機の変速制御装置に関し、特に、クラッチツウクラッチ変速時のドライバビリティを向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行状態に応じて変速段が自動的に選択される自動変速機(オートマチックトランスミッション)を備えた車両において、アクセルペダルが非操作とされているような減速惰行中のダウン変速である所謂コーストダウン変速では、エンジンブレーキ力による変速ショックが発生する可能性がある。そこで、斯かる変速ショックの発生を防止する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された車両の走行制御装置がそれである。この車両の走行制御装置は、コーストダウン変速と同期して駆動力源の出力を増加させることによりエンジンブレーキ力を減殺させ、変速ショックを緩和して走行感を向上させようとするものである。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−284039号公報
【特許文献2】
特開平10−213216号公報
【特許文献3】
特開平10−89455号公報
【特許文献4】
特開平9−273625号公報
【特許文献5】
特開平5−99318号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来の技術では、ダウン変速が終了してしまうと駆動力源の出力増加制御もまた終了してしまうため、その変速後の低速側ギヤ段に付随するエンジンブレーキ力を十分には減殺できず、変速ショックが発生する可能性が依然として残されていた。とりわけ、図1に示すような解放側の摩擦係合装置を解放させると同時に係合側の摩擦係合装置を係合させるクラッチツウクラッチ変速において、変速中と変速後の加速度の変化が比較的大きい場合、係合側の摩擦係合装置であるクラッチC1の係合圧の上昇が係合ポイントに間に合わず、解放側の摩擦係合装置であるブレーキB1の係合圧の低下に伴いタービン回転速度NT がエンジン回転速度に持ち上げられて急上昇することが考えられ、運転者が加速度の急変化を感じることでドライバビリティが悪化するおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、クラッチツウクラッチ変速時のドライバビリティを向上させる車両用自動変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への変速を制御する車両用自動変速機の変速制御装置であって、その変速が所定段階まで進行しているか否かを判定する変速進行判定手段と、車速が予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する車速判定手段と、前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する回転速度差判定手段と、前記変速の実行中において、前記変速進行判定手段の判定が否定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記解放側の摩擦係合装置を再係合させると共に前記第2ギヤ段又は変速比への変速を禁止する一方、前記変速進行判定手段の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記係合側の摩擦係合装置の伝達トルクを所定値まで低下させる変速制御手段とを、含むことを特徴とするものである。
【0007】
【第1発明の効果】
このようにすれば、前記変速が所定段階まで進行しているか否かを判定する変速進行判定手段と、車速が予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する車速判定手段と、前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する回転速度差判定手段と、前記変速の実行中において、前記変速進行判定手段の判定が否定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記解放側の摩擦係合装置を再係合させると共に前記第2ギヤ段又は変速比への変速を禁止する一方、前記変速進行判定手段の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記係合側の摩擦係合装置の伝達トルクを所定値まで低下させる変速制御手段とを、含むことから、前記変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく前記摩擦係合装置の正確な制御が困難である場合の変速ショックを確実に防止できる。すなわち、クラッチツウクラッチ変速時のドライバビリティを向上させる車両用自動変速機の変速制御装置を提供することができる。
【0008】
【第1発明の他の態様】
ここで、好適には、前記変速制御手段は、前記変速進行判定手段の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記係合側の摩擦係合装置の伝達トルクを零とするものである。このようにすれば、前記変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく前記摩擦係合装置の正確な制御が困難である場合に一旦擬似ニュートラル状態を成立させることで、変速ショックを更に確実に防止できるという利点がある。
【0009】
また、好適には、前記変速進行判定手段は、前記変速のイナーシャ相が開始されたか否かを判定するものである。このようにすれば、更に好適な態様で変速ショックを防止できるという利点がある。
【0010】
また、好適には、前記変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速である。このようにすれば、コーストダウン変速時の変速ショックを防止する車両用自動変速機の変速制御装置を提供できるという利点がある。
【0011】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への第1変速及びその第2ギヤ段又は変速比から第3ギヤ段又は変速比への第2変速を制御する車両用自動変速機の変速制御装置であって、その第1変速又は第2変速が終了するまでに車速が予め定められた所定速度よりも低くなることが予測されるか否かを判定する車速予測手段と、前記第1変速又は第2変速が終了するまでに前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さくなることが予測されるか否かを判定する回転速度差予測手段と、前記第1変速の実行中において、前記車速予測手段の判定及び回転速度差予測手段の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止する変速制御手段とを、含むことを特徴とするものである。
【0012】
【第2発明の効果】
このようにすれば、前記第1変速又は第2変速が終了するまでに車速が予め定められた所定速度よりも低くなることが予測されるか否かを判定する車速予測手段と、前記第1変速又は第2変速が終了するまでに前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さくなることが予測されるか否かを判定する回転速度差予測手段と、前記第1変速の実行中において、前記車速予測手段の判定及び回転速度差予測手段の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止する変速制御手段とを、含むことから、前記第1変速又は第2変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく前記摩擦係合装置の正確な制御が困難である場合の変速ショックを確実に防止できる。すなわち、クラッチツウクラッチ変速時のドライバビリティを向上させる車両用自動変速機の変速制御装置を提供することができる。
【0013】
【第2発明の他の態様】
ここで、好適には、車速が予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する車速判定手段と、前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する回転速度差判定手段とを、含み、前記変速制御手段は、前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止するものである。このようにすれば、変速ショックを更に確実に防止できるという利点がある。
【0014】
また、好適には、前記第1変速及び第2変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速である。このようにすれば、コーストダウン変速時の変速ショックを防止する車両用自動変速機の変速制御装置を提供できるという利点がある。
【0015】
【課題を解決するための第3の手段】
また、前記目的を達成するために、本第3発明の要旨とするところは、解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への変速を制御する車両用自動変速機の変速制御装置であって、その変速に同期して駆動力源により発生させられる駆動トルクを所定量増大させると共に、その変速の終了に際してその駆動トルクを定常値まで漸減させる駆動トルク制御手段を含むことを特徴とするものである。
【0016】
【第3発明の効果】
このようにすれば、前記変速に同期して駆動力源により発生させられる駆動トルクを所定量増大させると共に、その変速の終了に際してその駆動トルクを定常値まで漸減させる駆動トルク制御手段を含むことから、前記変速が終了してもなお駆動力源の出力増加制御が継続させられるため、その変速後のギヤ段又は変速比に付随するエンジンブレーキ力を十分に減殺することができ、変速ショックの発生を確実に防止できる。すなわち、クラッチツウクラッチ変速時のドライバビリティを向上させる車両用自動変速機の変速制御装置を提供することができる。
【0017】
【第3発明の他の態様】
ここで、好適には、前記駆動トルク制御手段は、予め定められた関係から車速に基づいて前記変速の終了に際しての前記駆動トルクの減少割合を決定するものである。このようにすれば、変速ショックを更に確実に防止できるという利点がある。
【0018】
また、好適には、前記変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速である。このようにすれば、コーストダウン変速時の変速ショックを防止する車両用自動変速機の変速制御装置を提供できるという利点がある。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図2は、本発明が適用された車両用駆動力伝達装置10の骨子図である。この駆動力伝達装置10において、駆動力源であるエンジン12により発生させられた駆動力は、流体式伝動装置であるトルクコンバータ14、FF駆動用の自動変速機16、差動歯車装置18を経て図示しない駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。上記エンジン12は、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ14は、上記エンジン12のクランク軸20と連結されているポンプ翼車22と、上記自動変速機16の入力軸24に連結されたタービン翼車26と、一方向クラッチ28を介して非回転部材であるハウジング30に固定されたステータ翼車32と、図示しないダンパを介して上記入力軸24に連結されたロックアップクラッチ34とを備えている。
【0021】
上記自動変速機16は、上記入力軸24上に同軸に配設されるとともにキャリアとリングギヤとがそれぞれ相互に連結されることにより所謂CR−CR結合の遊星歯車機構を構成するシングルピニオン型の一対の第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38と、上記入力軸24と平行なカウンタ軸40上に同軸に配置された1組の第3遊星歯車装置42と、そのカウンタ軸40の軸端に固定されて上記差動歯車装置18と噛み合う出力ギヤ44とを備えている。上記第1遊星歯車装置36、第2遊星歯車装置38、及び第3遊星歯車装置42の各構成要素であるサンギヤ、リングギヤ、及びそれらに噛み合う遊星ギヤを回転可能に支持するキャリアは、4つのクラッチC0、C1、C2、及びC3によって互いに選択的に連結され、或いは3つのブレーキB1、B2、及びB3によって非回転部材であるハウジング30に選択的に連結されるようになっている。また、2つの一方向クラッチF1及びF2によって相互間の或いは上記ハウジング30との間の所定方向の相対回転が阻止されるようになっている。なお、上記差動歯車装置18は軸線(車軸)に対して対称的に構成されているため、下側を省略して示してある。
【0022】
前記入力軸24上に配設された一対の第1遊星歯車装置36、第2遊星歯車装置38、クラッチC0、C1、C2、ブレーキB1、B2、及び一方向クラッチF1により前進4段且つ後進1段の主変速部46が構成され、上記カウンタ軸40上に配設された1組の遊星歯車装置42、クラッチC3、ブレーキB3、及び一方向クラッチF2によって副変速部(アンダードライブ部)48が構成されている。上記主変速部46では、前記入力軸24は、クラッチC0を介して上記第2遊星歯車装置38のキャリアK2に、クラッチC1を介して上記第1遊星歯車装置36のサンギヤS1に、クラッチC2を介して上記第2遊星歯車装置38のサンギヤS2にそれぞれ連結されている。上記第1遊星歯車装置36のリングギヤR1と第2遊星歯車装置38のキャリアK2との間、第1遊星歯車装置36のキャリアK1と第2遊星歯車装置38のリングギヤR2との間はそれぞれ連結されており、第2遊星歯車装置38のサンギヤS2はブレーキB1を介して、第1遊星歯車装置36のリングギヤR1はブレーキB2を介して非回転部材であるハウジング30に連結されている。また、上記第2遊星歯車装置38のキャリアK2と非回転部材であるハウジング30との間には、所定方向の相対回転を阻止するための一方向クラッチF1が設けられている。そして、上記第1遊星歯車装置36のキャリアK1に固定された第1カウンタギヤ50と第3遊星歯車装置42のリングギヤR3に固定された第2カウンタギヤ52とは相互に噛み合わされている。上記副変速部48では、上記第3遊星歯車装置42のキャリアK3とサンギヤS3とがクラッチC3を介して相互に連結され、そのサンギヤS3と非回転部材であるハウジング30との間には、ブレーキB3と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。
【0023】
図3は、前記自動変速機16の各変速段を成立させるためのクラッチ及びブレーキの係合作動を説明する係合表である。前記クラッチC0、C1、C2、C3及びブレーキB1、B2、B3は、何れも油圧アクチュエータによって係合制御される多板式のクラッチやバンドブレーキ等の油圧式摩擦係合装置であり、前記自動変速機16では、図3に示すように、前記クラッチC0、C1、C2、C3及びブレーキB1、B2、B3が選択的に係合させられることにより、前進5段・後退1段のうちの何れかの変速段が成立させられる。この図3における「○」は係合を、「△」は駆動時のみにおける係合を、「×」は解放を意味している。例えば、第4速ギヤ段と第5速ギヤ段との間の4→5変速或いは5→4変速は、前記クラッチC3の係合或いは解放で達成され、第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の1→2変速或いは2→1変速は、前記ブレーキB1の係合或いは解放で達成される。また、第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間の2→3変速或いは3→2変速は、前記ブレーキB1の解放及びクラッチC0の係合或いは前記ブレーキB1の係合及びクラッチC0の解放というように、前記クラッチC0及びブレーキB1のうち何れか一方が解放されると同時に他方が係合させられることにより達成される所謂クラッチツウクラッチ変速であり、第3速ギヤ段と第4速ギヤ段との間の3→4変速或いは4→3変速もまた、前記クラッチC1の解放及びブレーキB1の係合或いは前記クラッチC1の係合及びブレーキB1の解放により達成される所謂クラッチツウクラッチ変速である。
【0024】
図4は、前記駆動力伝達装置10を制御するために車両に設けられた電気系統を説明するブロック線図である。この図4に示すように、前記エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によって駆動操作されるスロットル弁56と、そのスロットル弁56と並列な状態で設けられてアイドル時のエンジン回転速度NE を制御するためのISC弁58とが設けられている。また、アクセルペダル60の操作量(踏込量)ACCは、アクセル操作量センサ62により検出されて電子制御装置64へ供給されるようになっており、上記スロットル弁56の開度θTHは、基本的にはそのアクセルペダル60の操作量ACCに応じて増加させられる。
【0025】
上記電子制御装置64は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータであって、そのCPUによりRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、前記エンジン12の駆動制御や前記自動変速機16の変速制御等の基本的な制御を実行する。前記エンジン12の駆動制御では、例えば、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁66を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ68を制御し、図5に示す予め記憶された関係から実際のアクセルペダル60の操作量ACCに基づきその増加に応じて上記スロットル弁56の開度θTHが増加させられるように制御する。また、アイドルスピード制御或いはエンジン回転速度NE を所定量持ち上げるために上記ISC弁58を制御する。前記自動変速機16の変速制御では、例えば、図6に示す予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTH及び車速Vに基づいて前記自動変速機16のギヤ段や前記ロックアップクラッチ34の変速判断を実行し、判断されたギヤ段及び係合状態が得られるように油圧制御回路70に配設された各電磁制御弁装置すなわちソレノイド弁S4、SR及びリニヤソレノイド弁SLT、SL1、SL2、SL3等の駆動を制御する。
【0026】
図7は、前記電子制御装置64の入力信号及び出力信号を説明する図である。前記駆動力伝達装置10には、前記エンジン12の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ、車速を検出する車速センサ、前記エンジン12の吸入空気の温度を検出する吸入空気温度センサ、そのエンジン12の冷却水温度を検出するエンジン水温センサ、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ、前記自動変速機16の作動油温度を検出するAT油温センサ、前記スロットル弁56の開度を検出するスロットル開度センサ、フットブレーキの作動を検出するブレーキスイッチ、前記入力軸24の回転速度に対応する前記タービン翼車26の回転速度を検出するタービン回転速度センサ、前記第2カウンタギヤ52の回転速度を検出するカウンタ回転速度センサ等が設けられており、それらのセンサ及びスイッチから、エンジン回転速度NE 、車速V、吸入空気温度TA 、エンジン水温TW 、シフトポジションPSH、AT油温TAT、スロットル開度θTH、ブレーキの作動状態BK、タービン回転速度NT 、及びカウンタ回転速度NC 等を表す信号が前記電子制御装置64へ供給されるようになっている。
【0027】
図8は、前記油圧制御回路70の要部を簡単に示す図である。この図8において、ソレノイド弁SRは、前記電子制御装置64からの指令に従ってその出力圧を比較的長い油路72を介して2−3シフト弁74に作用させてその2−3シフト弁74を1速乃至2速側と3速乃至5速側とに択一的に切り換える。ソレノイド弁S4は、前記電子制御装置64からの指令に従ってその出力圧を3速乃至5速側に切換られた上記2−3シフト弁74を介して4−5シフト弁76に作用させ、その4−5シフト弁76を1速乃至4速側と5速側とに択一的に切り換える。すなわち、上記4−5シフト弁76が1速乃至4速側に切換られているときにはライン圧PL がブレーキB3へ供給され、5速側に切換られているときにはDレンジ圧PD がクラッチC3及びアキュムレータAC3へ供給される。リニヤソレノイド弁SLTは、前記電子制御装置64からの指令に従ってその出力圧を背圧コントロール弁78に供給し、その出力圧に対応する背圧を発生させて上記アキュムレータAC3の背圧ポートへ供給させる。
【0028】
リニヤソレノイド弁SL1は、前記電子制御装置64からの指令に従ってその出力圧をB1コントロール弁80に供給し、その出力圧に対応する係合圧PB1を発生及び調圧させてブレーキB1及びそのアキュムレータAB1へ供給する。リニヤソレノイド弁SL2は、前記電子制御装置64からの指令に従ってその出力圧をソレノイド弁SRにより切り換えられる上記2−3シフト弁74を介してC0コントロール弁82へ供給し、その出力圧に対応する係合圧PC0を発生及び調圧させてクラッチC0及びそのアキュムレータAC0へ供給する。リニヤソレノイド弁SL3は、前記電子制御装置64からの指令に従ってその出力圧をC1コントロール弁84へ供給し、その出力圧に対応する係合圧PC1を発生及び調圧させてクラッチC1及びそのアキュムレータAC1へ供給する。上記クラッチC0の係合圧PC0及びクラッチC1の係合圧PC1は、その係合圧PC1によって切換られるクラッチ圧供給制御弁86を介してクラッチC0及びクラッチC1へ供給される。
【0029】
図9は、前記電子制御装置64の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図9に示す変速制御手段88は、基本的には、前述した図6に示す予め記憶された変速線図から実際のスロットル弁開度θTH及び車速Vに基づいて前記自動変速機16のギヤ段や前記ロックアップクラッチ34の変速判断を実行し、判断されたギヤ段及び係合状態が得られるように油圧制御回路70に配設された各電磁制御弁装置の駆動を制御する。この変速制御手段88は、解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速を制御し得るものであり、その解放側の摩擦係合装置の係合圧を制御する解放側係合圧制御手段90と、上記係合側の摩擦係合装置の係合圧を制御する係合側係合圧制御手段92とを含むものである。例えば、前述した4→3変速では、前記ブレーキB1が解放側の摩擦係合装置に、前記クラッチC1が係合側の摩擦係合装置にそれぞれ相当する。
【0030】
変速進行判定手段94は、前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速が所定段階まで進行しているか否かを判定する。この変速進行判定手段94は、好適には、前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速のイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相判定手段96と、予め定められた関係から前記第2ギヤ段に対応する変速比γ、車速V、及び前記自動変速機16の入力回転速度であるタービン回転速度NT に基づき、そのタービン回転速度NT が前記第2ギヤ段の同期回転速度付近まで変化したか否かを判定する同期判定手段98とを含むものである。この同期判定手段98は、前記第2ギヤ段の同期回転速度が成立する所定時間前であるか否かを判定するものであり、換言すれば、タービン回転速度NT が前記第2ギヤ段の同期回転速度付近まで変化したか否かを予測する同期成立予測手段である。
【0031】
車速判定手段100は、車速Vが予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する。回転速度差判定手段102は、前記自動変速機16の入力回転速度すなわちタービン回転速度NT と出力回転速度すなわちカウンタ回転速度NC との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する。前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速において、変速に関与する回転体である前記自動変速機16の入力軸24の回転速度すなわちタービン回転速度NT の変速前後の回転速度変化が比較的小さい場合には、その回転速度変化を検出するのが難しく、延いてはその変速に関与する摩擦係合装置の正確な制御が困難となる場合が考えられる。上記車速判定手段100及び回転速度差判定手段102は、そのように変速に関与する摩擦係合装置の正確な制御が困難な状態であるか否かを判定するものであり、換言すれば、前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速の前後における前記自動変速機16の入力回転速度の回転速度差が所定速度差よりも小さいか否かを判定する入力回転速度差判定手段である。また、車速V及び前記自動変速機16の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差は、何れも前記自動変速機16の出力回転速度すなわちカウンタ回転速度NC により一義的に定まる値であることから、上記車速判定手段100及び回転速度差判定手段102を出力回転速度判定手段と言い換えることもできる。
【0032】
前記変速制御手段88は、前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速の実行中において、前記変速進行判定手段94の判定が否定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記解放側の摩擦係合装置を再係合させると共に前記第2ギヤ段又は変速比への変速を禁止する一方、前記変速進行判定手段94の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記係合側の摩擦係合装置の伝達トルクを一時的に所定値まで低下させ、更に好適には、その伝達トルクを零として擬似ニュートラル状態を形成する。
【0033】
車速予測手段104は、解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への第1変速、又はその第2ギヤ段又は変速比から第3ギヤ段又は変速比への第2変速が終了するまでに車速Vが予め定められた所定速度よりも低くなることが予測されるか否かを判定する。回転速度差予測手段106は、上記第1変速又は第2変速が終了するまでに前記自動変速機16の入力回転速度すなわちタービン回転速度NT と出力回転速度すなわちカウンタ回転速度NC との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さくなることが予測されるか否かを判定する。これら車速予測手段104及び回転速度差予測手段106の予測は、例えば、学習制御による経験的な判定であり、予め定められた関係からその判定時点における車速V、その車速Vの変化率である車両加速度、及び変速開始からの経過時間等に基づいて判定を実行する。
【0034】
前記変速制御手段88は、上記第1変速及び第2変速を制御し得るものであり、前記第1変速の実行中において、前記車速予測手段104の判定及び回転速度差予測手段106の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速の開始を禁止する。更に好適には、前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合にも、前記第2変速の開始を禁止する。すなわち、上記第1変速の実行中において、上記第1変速及び第2変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく、延いてはそれらの変速に関与する摩擦係合装置の正確な制御が困難となることが未然に予測される場合には、前記第2変速の開始を禁止する。
【0035】
駆動トルク制御手段108は、前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比へのクラッチツウクラッチ変速に同期して駆動力源である前記エンジン12により発生させられる駆動トルクを一時的に所定量増大させると共に、その変速の終了に際してその駆動トルクを定常値まで漸減させる。この駆動トルク制御手段108は、好適には、予め定められた関係から車速Vに基づいて前記変速の終了に際しての前記駆動トルクの減少割合を決定する減少割合決定手段110を含み、その変速の終了に際して所定時間駆動トルクを維持した後、上記減少割合決定手段110により決定された減少割合にてその駆動トルクを定常値まで漸減させる。この減少割合は、例えば、低車速ほど迅速に定常値に近づけられる値とされる。
【0036】
図10は、前記電子制御装置64による4→3コーストダウン変速制御作動の要部を説明するフローチャートであり、数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図11は、前記変速進行判定手段94の判定が否定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合のコーストダウン変速制御一例を示すタイムチャートであり、図12は、前記変速進行判定手段94の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合のコーストダウン変速制御一例を示すタイムチャートである。なお、図11及び図12における破線は、従来の制御による変化を示している。
【0037】
この変速制御では、先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速すなわちアクセル全閉時の減速惰行状態でのダウン変速が実行されたか否かが判断される。このSA1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SA1の判断が肯定される場合には、前記車速判定手段100及び回転速度差判定手段102に対応するSA2において、その車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定されるか否かが判断される。このSA2の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SA2の判断が肯定される場合には、前記変速進行判定手段94に対応するSA3において、前記4→3変速が所定段階まで進行しているか否か否かが判断される。このSA3の判断が否定される場合には、SA4において、図11に示すように、解放側の摩擦係合装置である前記ブレーキB1が再係合させられると共に第2ギヤ段である第3速ギヤ段への変速が禁止された後、本ルーチンが終了させられるが、SA3の判断が肯定される場合には、SA5において、図12に示すように、係合側の摩擦係合装置である前記クラッチC1の伝達トルクが一時的に零とされて擬似ニュートラル状態が形成された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、SA4及びSA5が前記変速制御手段88に対応する。
【0038】
図13は、前記電子制御装置64による4→3乃至3→2コーストダウン変速制御作動の要部を説明するフローチャートであり、数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図14は、(a)に通常の4→3乃至3→2コーストダウン変速制御を、(b)に図13のフローチャートに対応した4→3乃至3→2コーストダウン変速制御を対比して示すタイムチャートである。
【0039】
この変速制御では、先ず、ステップSB1において、第1変速である4→3変速がアクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速すなわちアクセル全閉時の減速惰行状態でのダウン変速であるか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SB1の判断が肯定される場合には、SB2において、第2変速である3→2変速が判断されたか否かが判断される。このSB2の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SB2の判断が肯定される場合には、前記車速予測手段104、回転速度差予測手段106、車速判定手段100、及び回転速度差判定手段102に対応するSB3において、前記車速予測手段104の判定、回転速度差予測手段106の判定、車速判定手段100の判定、及び回転速度差判定手段102の判定のうち少なくとも1つが肯定されるか否かが判断される。このSB3の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SB3の判断が肯定される場合には、前記変速制御手段88に対応するSB4において、図14(b)に示すように、第2変速である3→2変速の開始すなわち3→2変速指令の出力が禁止された後、本ルーチンが終了させられる。
【0040】
図15は、前記電子制御装置64による4→3コーストダウン変速制御作動の他の一例の要部を説明するフローチャートであり、数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図16は、図15のフローチャートに対応した4→3コーストダウン変速制御を示すタイムチャートである。なお、図16における破線は、従来の制御による変化を示している。
【0041】
この変速制御では、先ず、ステップSC1において、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速すなわちアクセル全閉時の減速惰行状態でのダウン変速が実行されたか否かが判断される。このSC1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SC1の判断が肯定される場合には、前記同期判定手段98に対応するSC2において、予め定められた関係から第2ギヤ段である第3速ギヤ段に対応する変速比γ、車速V、及び前記自動変速機16の入力回転速度であるタービン回転速度NT に基づき、そのタービン回転速度NT が第3速ギヤ段の同期回転速度付近まで変化したか否かが判断される。このSC2の判断が否定されるうちは、肯定されるまでSC2の判定が繰り返されるが、SC2の判断が肯定される場合には、SC3において、前記ISC弁58の開き量がその時点での開き量に固定された後、SC4において、カウンタの値Aが初期化され、SC5において、カウンタの値Aが加算されてA+1とされる。そして、SC6において、カウンタの値Aが所定値より大きいか否かが判断される。このSC6の判断が否定される場合には、上述したSC5以下が再び実行されるが、SC6の判断が肯定される場合には、前記減少割合決定手段110に対応するSC7において、予め定められた関係から車両加速度に基づいて所定時間あたりの前記ISC弁58の開き量の減少量Dが決定された後、SC8において、前記ISC弁58の開き量がその時点での開き量から減少量Dを引いた値とされる。次に、SC9において、前記ISC弁58の開き量が定常値である所定の値以下であるか否かが判断される。このSC9の判断が否定される場合には、上述したSC8以下が再び実行されるが、SC9の判断が肯定される場合には、SC10において、アクセルペダル操作量ACCが所定値以上となったり、或いは予め定められた所定の制御時間が経過する等して制御終了条件が成立したか否かが判断される。すなわち、図16に示すように、SC3乃至SC9の制御により前記エンジン12により発生させられる駆動トルクが所定時間t0 変速終了時の値に維持された後、所定の減少割合にて定常値まで漸減させられる。そして、SC10の判断が否定される場合には、上述したSC8以下が再び実行されるが、SC10の判断が肯定される場合には、SC11において、前記ISC弁58の開き量が零とされた後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、SC3乃至SC11が前記駆動トルク制御手段108に対応する。
【0042】
このように、本実施例によれば、前記変速が所定段階まで進行しているか否かを判定する変速進行判定手段94(SA3)と、車速Vが予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する車速判定手段100(SA2)と、前記自動変速機16の入力回転速度すなわちタービン回転速度NT と出力回転速度すなわちカウンタ回転速度NC との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する回転速度差判定手段102(SA2)と、前記変速の実行中において、前記変速進行判定手段94の判定が否定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、解放側の摩擦係合装置例えば前記ブレーキB1を再係合させると共に前記第2ギヤ段又は変速比への変速を禁止する一方、前記変速進行判定手段94の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、係合側の摩擦係合装置例えば前記クラッチC1の伝達トルクを所定値まで低下させる変速制御手段88(SA4及びSA5)とを、含むことから、前記変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく摩擦係合装置の正確な制御が困難である場合の変速ショックを確実に防止できる。すなわち、クラッチツウクラッチ変速時のドライバビリティを向上させる車両用自動変速機の変速制御装置を提供することができる。
【0043】
また、前記変速制御手段88は、前記変速進行判定手段94の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段100の判定及び回転速度差判定手段102の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、係合側の摩擦係合装置例えば前記クラッチC1の伝達トルクを零とするものであるため、前記変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく摩擦係合装置の正確な制御が困難である場合に一旦擬似ニュートラル状態を成立させることで、変速ショックを更に確実に防止できるという利点がある。
【0044】
また、前記変速進行判定手段94は、前記変速のイナーシャ相が開始されたか否かを判定するイナーシャ相判定手段96を含むものであるため、更に好適な態様で変速ショックを防止できるという利点がある。
【0045】
また、前記第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への第1変速及びその第2ギヤ段又は変速比から第3ギヤ段又は変速比への第2変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速であるため、コーストダウン変速時の変速ショックを防止する車両用自動変速機の変速制御装置を提供できるという利点がある。
【0046】
また、前記第1変速又は第2変速が終了するまでに車速Vが予め定められた所定速度よりも低くなることが予測されるか否かを判定する車速予測手段104(SB3)と、前記第1変速又は第2変速が終了するまでに前記自動変速機16の入力回転速度すなわちタービン回転速度NT と出力回転速度すなわちカウンタ回転速度NC との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さくなることが予測されるか否かを判定する回転速度差予測手段106(SB3)とを、含み、前記変速制御手段88は、前記第1変速の実行中において、前記車速予測手段104の判定及び回転速度差予測手段106の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止するものであることから、前記第1変速又は第2変速に関与する回転体の回転速度変化を検出するのが難しく前記摩擦係合装置の正確な制御が困難である場合の変速ショックを確実に防止できる。
【0047】
また、前記変速制御手段88は、前記車速判定手段100(SB3)の判定及び回転速度差判定手段102(SB3)の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止するものであるため、変速ショックを更に確実に防止できるという利点がある。
【0048】
また、前記変速に同期して駆動力源である前記エンジン12により発生させられる駆動トルクを所定量増大させると共に、その変速の終了に際してその駆動トルクを定常値まで漸減させる駆動トルク制御手段108(SC3乃至SC11)を含むことから、前記変速が終了してもなお前記エンジン12の出力増加制御が継続させられるため、その変速後のギヤ段又は変速比に付随するエンジンブレーキ力を十分に減殺することができ、変速ショックの発生を確実に防止できる。
【0049】
また、前記駆動トルク制御手段108は、予め定められた関係から車速Vに基づいて前記変速の終了に際しての前記駆動トルクの減少割合を決定する減少割合決定手段110(SC7)を含むものであるため、変速ショックを更に確実に防止できるという利点がある。
【0050】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0051】
例えば、前述の実施例では、複数の遊星歯車装置を含む有段変速式の自動変速機16を備えた車両に本発明が適用されていたが、例えば、変速比を無段階に変更し得るベルト式或いはトロイダル式の無段変速機を備えた車両に本発明が適用されても構わない。
【0052】
また、前述の実施例では、前記ブレーキB1を解放側の摩擦係合装置とし、前記クラッチC1を係合側の摩擦係合装置とする4→3コーストダウン変速について説明したが、これはあくまで好適な一例であり、解放側及び係合側の摩擦係合装置は変速の態様に応じて適宜変更され得るものであることは言うまでもない。例えば、前記自動変速機16において、3→2ダウン変速では前記クラッチC0が解放側の摩擦係合装置となり、前記ブレーキB1が係合側の摩擦係合装置となる。
【0053】
また、前述の実施例では、前記駆動トルク制御手段108は、前記ISC弁58を介して前記エンジン12により発生させられる駆動トルクを制御するものであったが、前記ISC弁58は、必ずしも設けられていなくともよい。この場合、前記駆動トルク制御手段108は、前記スロットルアクチュエータ54により駆動される前記スロットル弁56を介して前記エンジン12により発生させられる駆動トルクを制御する。
【0054】
また、前述の実施例では特に言及していないが、前記駆動トルク制御手段108は、図16に示す前記変速後の駆動トルクを維持する所定時間t0 を車速V等に応じて変更するものであっても構わない。
【0055】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の制御によるクラッチツウクラッチ変速時の弊害を説明するタイムチャートである。
【図2】本発明が適用された車両用駆動力伝達装置の骨子図である。
【図3】図2の自動変速機の各変速段を成立させるためのクラッチ及びブレーキの係合作動を説明する係合表である。
【図4】図2の駆動力伝達装置を制御するために車両に設けられた電気系統を説明するブロック線図である。
【図5】図4の電子制御装置によるスロットル開度の制御に用いられるアクセルペダル操作量とスロットル開度との関係を示す図である。
【図6】図4の電子制御装置による自動変速機の変速制御に用いられる変速線図を表す図である。
【図7】図4の電子制御装置の入力信号及び出力信号を説明する図である。
【図8】図4の油圧制御回路の要部を簡単に示す図である。
【図9】図4の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図10】図9の電子制御装置による4→3コーストダウン変速制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図11】図9に示す変速進行判定手段の判定が否定され、且つ車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合のコーストダウン変速制御一例を示すタイムチャートである。
【図12】図9に示す変速進行判定手段の判定が肯定され、且つ車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合のコーストダウン変速制御一例を示すタイムチャートである。
【図13】図9の電子制御装置による4→3乃至3→2コーストダウン変速制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図14】図9の電子制御装置による4→3乃至3→2コーストダウン変速制御を示すタイムチャートであり、(a)に通常の変速制御を、(b)に図13のフローチャートに対応した変速制御を対比して示すものである。
【図15】図9の電子制御装置による4→3コーストダウン変速制御作動の他の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図16】図15のフローチャートに対応した4→3コーストダウン変速制御を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
12:エンジン(駆動力源)
16:自動変速機
88:変速制御手段
94:変速進行判定手段
100:車速判定手段
102:回転速度差判定手段
104:車速予測手段
106:回転速度差予測手段
108:駆動トルク制御手段
B1:ブレーキ(解放側の摩擦係合装置)
C1:クラッチ(係合側の摩擦係合装置)
Claims (10)
- 解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への変速を制御する車両用自動変速機の変速制御装置であって、
該変速が所定段階まで進行しているか否かを判定する変速進行判定手段と、
車速が予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する車速判定手段と、前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する回転速度差判定手段と、
前記変速の実行中において、前記変速進行判定手段の判定が否定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記解放側の摩擦係合装置を再係合させると共に前記第2ギヤ段又は変速比への変速を禁止する一方、前記変速進行判定手段の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記係合側の摩擦係合装置の伝達トルクを所定値まで低下させる変速制御手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御装置。 - 前記変速制御手段は、前記変速進行判定手段の判定が肯定され、且つ前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定の少なくとも一方が肯定された場合には、前記係合側の摩擦係合装置の伝達トルクを零とするものである請求項1の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 前記変速進行判定手段は、前記変速のイナーシャ相が開始されたか否かを判定するものである請求項1又は2の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 前記変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速である請求項1から3の何れかの車両用自動変速機の変速制御装置。
- 解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への第1変速及び該第2ギヤ段又は変速比から第3ギヤ段又は変速比への第2変速を制御する車両用自動変速機の変速制御装置であって、
該第1変速又は第2変速が終了するまでに車速が予め定められた所定速度よりも低くなることが予測されるか否かを判定する車速予測手段と、
前記第1変速又は第2変速が終了するまでに前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さくなることが予測されるか否かを判定する回転速度差予測手段と、
前記第1変速の実行中において、前記車速予測手段の判定及び回転速度差予測手段の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止する変速制御手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御装置。 - 車速が予め定められた所定速度よりも低いか否かを判定する車速判定手段と、
前記自動変速機の入力回転速度と出力回転速度との回転速度差が予め定められた所定速度差よりも小さいか否かを判定する回転速度差判定手段とを、含み、
前記変速制御手段は、前記車速判定手段の判定及び回転速度差判定手段の判定のうち少なくとも一方が肯定される場合には、前記第2変速を禁止するものである請求項5の車両用自動変速機の変速制御装置。 - 前記第1変速及び第2変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速である請求項5又は6の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 解放側の摩擦係合装置を解放させると共に係合側の摩擦係合装置を係合させることで実行される第1ギヤ段又は変速比から第2ギヤ段又は変速比への変速を制御する車両用自動変速機の変速制御装置であって、
該変速に同期して駆動力源により発生させられる駆動トルクを所定量増大させると共に、該変速の終了に際して該駆動トルクを定常値まで漸減させる駆動トルク制御手段を含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御装置。 - 前記駆動トルク制御手段は、予め定められた関係から車速に基づいて前記変速の終了に際しての前記駆動トルクの減少割合を決定するものである請求項8の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 前記変速は、アクセルオフでの走行中における高速側ギヤ段又は変速比から低速側ギヤ段又は変速比へのコーストダウン変速である請求項8又は9の車両用自動変速機の変速制御装置。
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