JP2004340105A - 2サイクルエンジンの排気デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】膨張管の異なる位置に設けられた複数のブランチ排気管の内、その一つがエンジンの運転状態に応じて排気ガス排出のために選択されることで、排気管における排気脈動の同調を得てエンジン出力の向上を図る。
【解決手段】排気デバイスの膨張管1にはその口元からの距離を異にして、第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3が取付けられている。第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3は切換弁4により適宜排気ガス排出のために選択され、該選択のための切換弁4の切換え制御はエンジンの運転状態に応じてなされ、これにより、エンジン運転状態に応じた排気管における排気脈動の同調が得られ、エンジン出力の向上が図られる。また、第1のブランチ排気管2には、そのエンジン排気ポートに近い位置に触媒8,9が設けられ、この触媒はエンジン冷機運転時において早期反応が促進される。
【選択図】 図4
【解決手段】排気デバイスの膨張管1にはその口元からの距離を異にして、第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3が取付けられている。第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3は切換弁4により適宜排気ガス排出のために選択され、該選択のための切換弁4の切換え制御はエンジンの運転状態に応じてなされ、これにより、エンジン運転状態に応じた排気管における排気脈動の同調が得られ、エンジン出力の向上が図られる。また、第1のブランチ排気管2には、そのエンジン排気ポートに近い位置に触媒8,9が設けられ、この触媒はエンジン冷機運転時において早期反応が促進される。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、2サイクルエンジンにおける排気デバイスに関し、特に膨張管と、該膨張管への取付位置が互いに異なる複数のブランチ排気管を備えるサイドブランチ式の排気管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2サイクルエンジンの排気管において、膨張管の後端部が閉塞され、該膨張管の最大径部周壁に取付けられたブランチ排気管から排気ガスを排出させることによって、その消音効果を向上させたサイドブランチ式排気管構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、エンジン排気ポートに接続される排気管の下流端に膨張管の上流端が接続され、該膨張管の下流側に内外を連通する排気排出用開口が形成され、該排気排出用開口に対抗して該膨張管の外周に通気可能な薄肉触媒が配設された構造の排気浄化装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭50−95632号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平8−135436号公報(第3頁−第4頁、第3図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載された従来のサイドブランチ式排気管構造は、図7に図示されるように、2サイクルエンジン0Eの排気ポート部0E1に円筒部を介して接続された膨張管01は、その後端部01eが閉塞されており、その最大径部01c周壁にブランチ排気管02が取付けられ、このブランチ排気管02から排気ガスが排出される構造を備えている。
【0005】
そして、このサイドブランチ式排気管構造においては、排気管内において発生する排気慣性波(マスフロー)と排気反射波の脈動の同調効果を利用して2サイクルエンジンの出力の向上が図られている。
【0006】
しかしながら、前記脈動の同調効果によるエンジン出力の向上は、エンジン速度との関係において、特定の設定エンジン速度域においては最大の効果がもたらされるものであるが、他のエンジン速度域においては逆にエンジン出力の低下を来たすものであり、エンジンの低速(低回転)運転域から高速(高回転)運転域の広い運転速度(回転)域にわたり安定したエンジン出力の向上を図るという視点からは課題を残すものである。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の排気浄化装置は、図8に図示されるように、内燃機関の排気ポートに接続される排気管(図示されず)の下流端に膨張管01の上流端が接続され、該膨張管01の下流側に内外を連通する排気排出用開口02が形成され、該排気排出用開口02に対抗して該膨張管01の外周に通気可能な薄肉触媒03が配設された構造を備えている。なお、06は消音室、09はモノリス型の触媒である。
【0008】
そして、この排気浄化装置においては、エンジンの冷機運転区間における触媒の早期反応促進を如何に達成するかという点においてまだ課題が残されている。
【0009】
ところで、エンジンの冷機運転区間における触媒の早期反応促進において最も効果的な方法は、触媒をエンジン排気ポート出口の近傍、すなわち、触媒をエンジン直下に設けることであるが、一方、特に自動2輪車やスポーツ系の自動車など、高出力エンジンの場合においては、エンジン直下に触媒が設けられると、エンジンの高負荷運転の連続により、該触媒が熱劣化してしまうことが考えられる。
【0010】
したがって、上述したような状況の中で、エンジンの低速(低回転)運転域から高速(高回転)運転域にかけて安定したエンジン出力の向上が図られ、かつ、エンジンの冷機運転時から早期に触媒の反応促進がなされる排気デバイスの改良構造が求められている。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本願発明は、前記課題を解決するための、エンジンの低負荷、低速(低回転)運転域から高負荷、高速(高回転)運転域に亘る広い運転域において安定したエンジン出力の向上が図られ、また、エンジンの冷機運転時から早期に触媒の反応促進が図られる2サイクルエンジンの排気デバイスの改良構造に関し、2サイクルエンジンの排気ポートに接続される膨張管と、該膨張管に取付けられるブランチ排気管とを備えた2サイクルエンジンの排気デバイスにおいて、前記膨張管に取付けられるブランチ排気管は複数本であり、それらの取付けは、前記排気ポートからの距離を互いに異にする位置においてそれぞれなされており、これらブランチ排気管にはその排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管を選択するための弁手段が具備されており、該弁手段による前記排気ガス排出のための選択されるべきブランチ排気管の選択は、前記エンジンの運転状態に応じてなされることを特徴とする。
【0012】
また、前記膨張管に取付けられる前記複数ブランチ排気管の内、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記取付けがなされるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上と、他のブランチ排気管の適宜位置の管路上には触媒が設けられたことを特徴とし、さらに、前記複数ブランチ排気管の管路が集合されて一つの排気管路とされ、該一つの排気管路に触媒が設けられたことを特徴とする。
また、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記膨張管に取付けられるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上に設けられる前記触媒が、薄肉パイプ状触媒であることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載された発明のものは、前記膨張管に取付けられるブランチ排気管は複数本であり、それらの取付けは、前記排気ポートからの距離を互いに異にする位置においてそれぞれなされており、これらブランチ排気管にはその排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管を選択するための弁手段が具備されており、該弁手段による前記排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管の選択は、前記エンジンの運転状態に応じてなされるから、前記エンジン排気ポートからの距離を互いに異にする位置にそれぞれ取付けられた複数本のブランチ排気管の中からエンジン運転(出力)状態に応じて該運転(出力)状態に適応した任意の取付位置のブランチ排気管が選択される。
【0014】
そして、エンジンの運転(出力)状態に適応した前記任意のブランチ排気管が排気ガス排出のために選択され、これにより、エンジンの運転(出力)状態に対応して膨張管内における排気ガスの慣性効果と排気ガスの反射波による脈動効果の同調が得られるから、低負荷,低速(低回転)運転域から高負荷,高速(高回転)運転域までの広いエンジン運転域において、排気管における排気ガスの脈動効果の同調が得られ、エンジン出力の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載された発明のものは、請求項1に記載の発明において、前記膨張管に取付けられる前記複数のブランチ排気管の内、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記取付けがなされるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上と、他のブランチ排気管の適宜位置の管路上には触媒が設けられているから、前記エンジン排気ポートに最も近い位置に取付けられた前記ブランチ排気管が排気ガス排出のために選択されることで、エンジン排気ポート近傍、すなわち、エンジン直下に設けられた触媒がエンジンの冷機運転時から早期に反応促進される。また、同時に、エンジン高負荷、高回転(高速)運転時には、他のブランチ排気管が排気ガス排出のために選択されることで、前記触媒の熱劣化が防止され、エンジンのエミッションが低減される。
【0016】
請求項3に記載された発明のものは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記複数ブランチ排気管の管路が集合されて一つの排気管路とされ、該一つの排気管路に触媒が設けられているから、分散配置されたそれぞれのブランチ排気管に触媒をそれぞれ設ける必要性がなく、集合された一つの排気管路にまとめて設ければよく、その分コストの低減が図られる。
【0017】
請求項4に記載された発明のものは、請求項2または請求項3に記載の発明において、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記膨張管に取付けられるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上に設けられる前記触媒が、薄肉パイプ状触媒であるから、エンジン冷機運転時から触媒が効果的に早期反応促進され、また、排気ガスがブランチ排気管の集合された一つの排気管路に設けられた触媒に到達するまでの間、薄肉パイプ状触媒の反応熱により該排気ガス温度が下がり過ぎることなく適温に保たれ、前記一つの排気管に設けられた触媒に有効接触させることができるので、さらにエンジンのエミッションを低減できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の排気デバイスの実施形態における膨張管(エキスパンションチャンバ)10が図示されており、該膨張管10は、その断面形状が円形である中空の筒状部材であり、その外形形状は図示のとおりその長手方向両端部の径が細く、該両端部からその長手方向中央部へ指向して次第に拡径し、全体として中太の形状を呈している。
【0019】
膨張管10は、図1における左方端の細径部が図示されない2サイクルエンジンの排気ポートに接続される接続部10aとして形成され、該接続部10aから次第にその管経を拡径しつつ延伸する拡径管部10b(ダイバジェットコーン)と、該拡径管部10bに連接される膨張管10の最大管径部を構成する同径で延伸する同径管部(ストレート管)10cと、該同径管部10cに連なり次第にその管経を縮径しつつ延伸して膨張管10の閉塞された終端部10eに至る縮径管部(コンバジェットコーン)10dとを備えるものとして形成されており、このような膨張管10は既に良く知られている。
【0020】
そして、膨張管10にはブランチ排気管20が取付けられ、さらに図1には図示されない消音器等が装備されて、これにより実質的に排気デバイスが構成されている。
エンジン排気ガスは、図1には図示されないエンジン排気ポートから該ポートにその接続部10aを介して接続された膨張管10、ブランチ排気管20を経て、消音器に導かれテールパイプを介して排出される(図4等参照)。
【0021】
図1には、膨張管10の異なる位置に取付けられるブランチ排気管20の3例が図示されている。そして、図1のAに図示されたブランチ排気管20Aは、膨張管10口元の前記エンジン排気ポートへの接続部10a近傍位置に取付けられた例であり、より具体的には膨張管10の口元から略50mm程の位置に取付けられている(図2参照)。
【0022】
また、Bに図示されたブランチ排気管20Bは、前記口元から離れた略拡径管路部10bの中間部近傍位置に取付けられた例であり、より具体的には前記膨張管10の口元から略300mm程の位置に取付けられ、さらに、Cに図示されたブランチ排気管20Cは、拡径管路部10bの中間部からやや終端寄りに取付けられた例であり、より具体的には前記膨張管10の口元から略500mm程の位置に取付けられているものである(図2も参照)。
【0023】
ところで、膨張管10の異なる位置に取付けられるブランチ排気管20は、その取付位置、すなわち、膨張管10の口元(エンジン排気ポート)からブランチ排気管20の取付位置までの距離により、該排気管20内を流れるエンジン排気ガスの温度特性がそれぞれ異なり、たとえば、図2には、前記図1のA,B,Cの3例に図示された膨張管10の異なる位置に取付けられるブランチ排気管20A,20B,20Cの管内を流れるエンジン排気ガスの温度特性がその測定結果として図示されている。該測定結果は、一般的な2サイクルエンジンに上述の排気管を適用して任意の運転条件で運転した時における排気管内の温度分布である。
【0024】
図2において、横軸は膨張管10の口元からの距離(mm)であり、また、縦軸は排気ガス温度(°C)であり、そして、図1におけるAの取付位置におけるブランチ排気管20Aが排気ガス排出管路として選択された時の排気ガス温度の測定結果はa曲線により示され、また、Bの取付位置におけるブランチ排気管20Bが排気ガス排出管路として選択された時の排気ガス温度の測定結果はb曲線により示され、さらに、Cの取付位置におけるブランチ排気管20Cが排気ガス排出管路として選択された時の排気ガス温度の測定結果はc曲線により示されている。
【0025】
図2におけるa,b,cの3曲線により示される排気管内を流れる排気ガスの温度特性は、エンジンの出力特性と関連するものである。
例えば、Aの取付位置のブランチ排気管20Aの排気ガス排出のための選択においては、図示されるように、排気ガス温度は、ブランチ排気管20Aの取付部においては若干下がるが、該取付部から離れるに従い急激に温度降下し、その後は比較的低めに推移する。結局、排気ガスの排気慣性波は前記取付部から該ブランチ排気管20Aを通って排出され、膨張管10内においては、排気ガスの透過反射波のみが存在することとなり、前記排気管20Aからの放熱により、膨張管10内の排気ガス温度はその後端に行くほど急激に冷却され、排気管20A内における排気ガスの流速は低下し、膨張管10における排気ガスの脈動による同調域はエンジンの低速域対応となる。
【0026】
そして、Cの取付位置のブランチ排気管20Cの排気ガス排出のための選択においては、該排気管20C内における排気ガスの温度降下は比較的緩やかであり、排気ガス温度は比較的高めに推移する。結局、排気ガスの排気慣性波は比較的長い距離膨張管10内を通るので、該膨張管10内における排気ガスの温度降下は比較的小さく、排気管20C内における排気ガスの流速は比較的早く、膨張管10における排気ガスによる排気慣性効果と排気反射波による脈動の同調域はエンジンの高速域対応となる。
【0027】
また、図1におけるブランチ排気管取付位置の3例、すなわち、A,B,Cに対応する取付位置におけるブランチ排気管20A、20B、20Cの排気ガス排出のための選択は、エンジントルク特性と密接に関連しており、該関連が図3に図示されている。
図3において、横軸はエンジン速度(r/min)であり、縦軸はトルク(Nm)である。
【0028】
前記図1におけるAの取付位置に対応するブランチ排気管20Aの排気ガス排出のための選択と、エンジントルク特性の関係は図3におけるa曲線により示される状態となり、Bの取付位置のブランチ排気管20Bの排気ガス排出のための選択と、エンジントルク特性の関係は図3におけるb曲線により示される状態となり、さらにCの取付位置のブランチ排気管20Cの排気ガス排出のための選択と、エンジントルク特性の関係は図3におけるc曲線により示される状態となる。
【0029】
そして、図3においてエンジントルク特性を表すa,b,cの各曲線によれば、a曲線におけるトルクのピークは略4000r/min付近であり、b曲線におけるトルクのピークは略5000r/min付近であり、c曲線におけるトルクのピークは略6000r/min付近である。すなわち、膨張管10への取付位置が該膨張管10の口元近傍であるブランチ排気管20Aの排気ガス排出のための選択は、エンジンの低速(低回転)、低負荷運転対応となり、膨張管10へのその取付位置が該膨張管10の口元から離れる位置にあるブランチ排気管20Cの排気ガス排出のための選択は、エンジンの高速(高回転)、高負荷運転対応となる。
【0030】
上述したように、エンジン出力特性(エンジン運転状態)と、膨張管10への異なる取付位置のブランチ排気管20A、20B、20Cの流通のための選択は、互いに密接な関係にある。
したがって、エンジン出力特性(エンジン運転状態)に適応する取付位置のブランチ排気管20の選択により、すなわち、図1におけるA,B,Cのいずれかに対応する位置に取付けられたブランチ排気管20A,20B,20Cの選択がなされることにより、エンジン出力特性に対応する排気脈動波の同調が得られ、エンジン出力特性の向上が図られる。
【0031】
例えば、エンジン出力特性の低速(低回転)、低負荷運転対応により膨張管10の口元近傍の位置であるAの取付位置のブランチ排気管20Aがその排気ガス排出のために選択され、エンジン出力特性の高速(高回転)、高負荷運転対応によりCの取付位置、すなわち、膨張管10の口元から離れた取付位置のブランチ排気管20Cがその排気ガス排出のために選択され、また、エンジン出力特性が略両者の中間的な運転対応においては、Bの取付位置のブランチ排気管20Bがその流通のために選択され、前記それぞれのエンジン出力特性に対応して低速、低負荷運転域から高速、高負荷運転域までの広い範囲に亘り排気脈動波の同調が得られ、エンジン出力の向上が図られる。
【0032】
ここで、エンジン出力特性と、膨張管10におけるブランチ排気管20の取付位置との上述の特徴的な関係に基づいて開発された、エンジン出力特性(運転状態)に対応して膨張管10の異なる位置にそれぞれ取付けられるブランチ排気管20の流通のための選択が可能な排気デバイス(サイドブランチ式排気管)の具体的な実施形態を図4ないし図6に基づいて説明する。
【0033】
図4に図示されるサイドブランチ式排気管の膨張管1は、図1に図示された既述の膨張管10と同様の、所謂エキスパンションチャンバであり、図4における左方端に位置するエンジンEの排気ポートE1に接続される膨張管1の口元における接続部1aと、該接続部1aから次第にその管径を拡径しつつ延伸する拡径管部(ダイバジェットコーン)1bと、該拡径管部1bに連なる管径が同径で延伸する最大径部となる短い同径管部(ストレート管)1cと、該同径管部1cに連なりその管径が縮径しつつ延伸する終端部1eが閉塞された縮径管部(コンバジェットコーン)1dと、を備えた全体として中太の形状のものである。
【0034】
そして、前記膨張管1は、エンジン排気ポートE1から排出された高圧の排気ガスが、その拡径管部1bを進み、その容積が急激に拡大するため、該膨張管1内の排気ガス圧力は低くなり、図示されないエンジンシリンダ内の排気ガスの排出が促進され、混合気が該シリンダ内により多く吸収される。
【0035】
前記排気ガスの伝播が同径管部1cを過ぎて縮径管部1dに達すると、この部分は容積が小さくなっていくため、再び膨張管1内の圧力が高くなり、この時掃気が終わり排気ポートE1が開いていれば、排気ガスと共に、膨張管1に吹きぬけようとする混合気が前記シリンダ内に押し戻されるので、充填効率を高めることができるという機能を備えるものであり、この膨張管1における機能は既によく知られたところである。
【0036】
膨張管1には、2本のブランチ排気管2,3が取付けられており、その一つは、エンジン排気ポートE1への接続部1aである口元近傍の細径部にその取付部2aを介して取付けられる第1のブランチ排気管2であり、第1のブランチ排気管2は、膨張管1の周壁から該膨張管1の長手方向に対して略直交する方向へ向かって延伸する管路部2bと、該管路部2bに連なる膨張管1の長手方向に沿って比較的長い距離をもって延伸する平行管路部2cを備え、該平行管路部2cは、後述するブランチ排気管2の排気ガス排出のための選択手段である切換弁4に接続される。
【0037】
また、他の一つは膨張管1の前記拡径管部1bの後部、すなわち、前記最大径部である同径管部1cへと連なる構造部の近傍にその取付部3aを介して取付けられる第2のブランチ排気管3であり、第2のブランチ排気管3は、第1のブランチ排気管2同様、膨張管1の周壁から該膨張管1の長手方向に対して略直交方向へ向かって所定長さ延伸する管路部3bと、該管路部3bに連なる膨張管1の長手方向に沿って僅かな距離延伸し、前記切換弁4に接続される平行管路部3cを備えている。
【0038】
そして、第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3は、前記切換弁4において互いに選択的に該切換弁4の切換制御によりその後方の一つの排気管5に流通接続されるようになされており、該排気管5には消音器6が設けられ、さらに該消音器6後方にはテールパイプ7が接続されている。
【0039】
したがって、前記ブランチ排気管2,3は、その切換弁4の制御操作により、すなわち、エンジン負荷とエンジン回転数に基づく後述するサーボモータMによるコントロールワイヤWを介した制御手段により(図5参照)、エンジン出力特性に対応して、前記第1のブランチ排気管2もしくは第2のブランチ排気管3がその排気ガス排出のために選択され、該選択に基づくエンジン排気ガスの前記第1のブランチ排気管2もしくは第2のブランチ排気管3への導入を通して、該排気ガスは、切換弁4を経て、該切換弁4後方の排気管5に接続の消音器6、さらにテールパイプ7へと送気され、排出される。
【0040】
第1のブランチ排気管2には、その膨張管1への前記取付部2aの口元からその全長に亘り、すなわち、前記口元から上述の切換弁4に達する位置まで、その管路全長に亘り薄肉パイプ状の触媒8が設けられており、この触媒8は、エミッション評価モード等のエンジン冷機運転時における排気浄化促進に対応すべく機能を備えた触媒8であり、一種のヒートパイプとしての役割を果たす触媒である。
【0041】
前記薄肉パイプ状触媒8としては、たとえば、図6に図示されるような多数の通気孔である小孔8aを有するパンチング板をパイプ状にした部材8bに、触媒を担持させたものが使用され、該パイプ状部材8bが前記ブランチ排気管2の管内周面に沿い所定の間隙を存して配設されることで前記第1のブランチ排気管2に設けられている。
【0042】
また、膨張管1口元部の第1のブランチ排気管2の取付部2a近傍位置には第2の触媒9aが設けられ、この触媒9aは、その断面が蜂巣状をしたモノリス型触媒であり、この触媒9aも、前記第1の触媒8同様、エンジン冷機運転時における排気浄化促進に対応すべく機能を備えた触媒であり、この実施形態においては該触媒9aが前記第1の触媒8と併用されている。
【0043】
さらに、第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3が接続される前記切換弁4の後方に位置する一つの排気管5に接続された消音器6には、その断面が蜂巣状のモノリス型の触媒9bが設けられている。そして、この触媒9bにおける反応に必要な排気ガス温度を維持し、該排気ガスの効果的な浄化作用促進のために、上述の第1のブランチ排気管2内周面に沿って設けられた実質的なヒートパイプを構成する前記第1の触媒である薄肉パイプ状触媒8が寄与しているのである。
【0044】
前記サイドブランチ式排気管は、上述のような構造であるから、既述のようにエンジンEの出力特性(エンジン運転状態)に対応する取付位置のブランチ排気管、すなわち、前記第1のブランチ排気管2、もしくは第2のブランチ排気管3が前記切換弁4の切換制御により選択される。
【0045】
そして、前記切換弁4の切換制御は、エンジンEの運転状態、つまり、エンジンEの負荷とエンジンの回転数が検出され、この検出結果に基づく図5に図示されるようなサーボモータMの作動によりなされ、該サーボモータMの作動が切換弁4の切換機構に連動されるコントロールワイヤWを介して該切換弁切換機構に伝達され、該切換機構により該弁4の切換作動がなされ、これにより、前記ブランチ排気管2もしくは3が前記エンジンEの運転状態に応じてその排気ガス排出のために選択される。
【0046】
たとえば、エンジンEの低負荷、低回転(低速)運転時には、エンジンEの低負荷、低回転(低速)の運転状態が検出され、該検出に基づき膨張管1口元側の第1のブランチ排気管2がその排気ガス排出のための排気管として前記切換弁4の切換制御により選択される。
【0047】
そして、前記第1のブランチ排気管2の前記選択により、上述の膨張管1内における排気ガスによる排気脈動の同調作用が、第1のブランチ排気管2の連通による排気ガス排出作用と相俟ってエンジンEの低負荷、低回転運転対応における脈動波の同調を得るものとして調整される。
【0048】
また、同時に、排気ガスは、第1のブランチ排気管2の取付部2aを介して、該取付部2aからその直角方向に向かって延伸する管路部2b、彎曲管路部を経て、膨張管1の長手方向に沿って延伸する平行管路部2cを流れ、前記切換弁4の切換えを通して、該切換弁4後方の排気管5へと流れ、消音器6を経て外部へ排出される。
【0049】
そして、上述のエンジン排気ガスの流れにおいて、該排気ガスは、前記口元近傍の取付部2aから直角方向に向かって延伸する管路部2bに設けられたエンジン直下の断面蜂巣状のモノリス型触媒9aと、前記ブランチ排気管2内周に、かつその管路全域に亘り設けられた薄肉パイプ状触媒8による早期反応によりエンジン低負荷、低回転(低速)運転時(冷機運転時等)においても良好な浄化反応が得られ、効果的な排気ガス浄化がなされ、そのエミッションが低減される。
【0050】
また、第1ブランチ排気管2内を移動する排気ガスの温度は、該管2内に設けられた前記薄肉パイプ状触媒8による反応温度でその降下が抑制され、この一次浄化され、温度が下がり過ぎることなく維持された排気ガスは、さらに切換弁4後方の排気管5接続の消音器6内に設けられた断面蜂巣状のモノリス型触媒9bに適切な反応温度に保たれて接触し、効果的な2次浄化がなされ、テールパイプ7を経て排出される。
【0051】
上述のように、エンジンEの低負荷、低回転(低速)運転時におけるエンジン排気ポートE1への接続部1aである膨張管1口元近傍の取付位置における第1ブランチ排気管2の排気ガス排出のための選択において、該排出のための選択と関連する膨張管1内における排気ガスによる排気脈動の調整作用で、エンジン低負荷、低回転運転に対応した排気脈動の同調が得られ、エンジン出力の向上が図られる。また、エンジン低負荷、低回転(低速)運転時における触媒8,9aの早期反応による排気ガスの効率的な浄化作用が促進される。
【0052】
そして、エンジンEの高負荷、高回転(高速)運転時には、膨張管1の接続部1a口元から遠い位置に取付けられたブランチ排気管、すなわち、第2のブランチ排気管3が排気ガス排出のために選択され、該排気管3を通して排気ガスが排出されるように前記切換弁4が制御される。該切換弁4の制御は、前述と同様、エンジンEの運転状態に連動したサーボモータMとコントロールワイヤWの作動を介してなされる。
【0053】
第2のブランチ排気管3内を流れる比較的温度が高めの排気ガス(図2参照)は、その流れの過程において緩やかに温度降下して、該排気ガスが消音器6内のモノリス型触媒9bに到達し、接触する時点においてはほぼ適温まで下がり、触媒9bの熱劣化は防止されると同時に、適切な反応温度に保たれ排気ガスは効果的に浄化される。
【0054】
また、このときは、膨張管1の接続部1a口元に取付けられた第1のブランチ排気管2は、その下流が前記切換弁4の切換えにより閉塞されており、排気ガスの流通が阻止され、該ガスの流れがないため、該排気管2内は触媒以上の高温になることは防止される。
【0055】
図1ないし図6に図示の実施形態は前記のように構成されるので、第1、第2のブランチ排気管2,3の排気ガス排出のための選択は、エンジンEの運転状態に応じてなされるから、エンジンEの出力状態に応じて該出力状態に適応した前記第1もしくは第2のブランチ排気管2,3が選択される。
【0056】
したがって、エンジンEの運転状態に対応して排気管内における排気ガスの脈動効果の同調が得られ、低負荷,低回転(低速)運転域と高負荷,高回転(高速)運転域におけるエンジン運転域において、排気管における排気ガスの脈動効果の同調を得ることができ、エンジン出力の向上を図ることができる。
【0057】
エンジン排気ポートE1に最も近い位置において取付けられる第1のブランチ排気管2の該取付部2a近傍の管路2b上に触媒8,9aが設けられているから、エンジン冷機運転時から早期に触媒8,9aの反応が促進され、同時に、高負荷、高回転(高速)運転時の第2のブランチ排気管2の排気ガス排出のための選択により、前記触媒8,9aの熱劣化が防止される。
【0058】
第1、第2のブランチ排気管2,3の管路が集合されて一つの排気管(管路集合部)5とされ、該排気管5にモノリス型触媒9bが設けられているから、分散配置される第1、第2のそれぞれのブランチ排気管2,3に触媒をそれぞれ設ける必要性はなく、触媒9bは一つの排気管5にまとめて設ければよく、また、消音器も複数設ける必要性がないから、その分コストの削減を図ることができる。
【0059】
第1のブランチ排気管2の薄肉パイプ状触媒8の反応熱により排気ガスの温度が下がり過ぎることなく適温に保たれ、管路2,3が集合された排気管(集合部)5に設けられたモノリス型触媒9bを有効に機能させることができるので、さらにエンジンEのエミッションを低減できる。
【0060】
本発明の前記実施形態に換えて他の実施形態が考えられる。
【0061】
前記実施形態においては、ブランチ排気管は、第1,第2の排気管2,3の2本とされているが、これに限定される理由はなく、適宜必要に応じてその本数は選択することができ、該ブランチ排気管の膨張管1への取付位置も適宜選択できるものである。
【0062】
前記実施形態においては、膨張管1へのブランチ排気管2,3の取付けがいずれも該膨張管1の周壁側面においてなされているが、該ブランチ排気管としては膨張管1の縮径管部1d終端部1eの閉塞端部が開口されて、該部分がブランチ排気管とされるものをも含ませることが可能である。
【0063】
前記実施形態においては、第1のブランチ排気管2に第1の触媒としての薄肉パイプ状触媒8と、第2の触媒としてのモノリス型触媒9aが併用されているが、これら触媒8,9aは、その排気ガス浄化機能の類似性からして、その一方のみが選択されて採用されてもよい。
【0064】
前記実施形態においては、第1のブランチ排気管2に設けられる第1の触媒である薄肉パイプ状触媒8は、該ブランチ排気管2の全長に亘り設けられているが、必ずしも全長に亘り設けられる必要性はなく、該管において適宜部分的に設けられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】膨張管の異なる位置に取付けられるブランチ排気管を示す説明用の図である。
【図2】図1における異なる位置に取付けられるブランチ排気管の管内における排気ガス温度の測定結果を示す図である。
【図3】図1における異なる位置に取付けられるブランチ排気管とエンジントルク特性との関係を示す図である。
【図4】本発明の排気デバイスの具体的実施形態を示す図である。
【図5】本発明の切換弁の切換機構が図示された排気デバイスの斜視図である。
【図6】本発明の薄肉パイプ状触媒の一例を示す図である。
【図7】従来の排気デバイスの主要部を示す図であり、(a)は、該主要部の全体図、(b)は、(a)における0A−0A断面図である。
【図8】従来の別の排気デバイスの主要部を示す図である。
【符号の説明】
1,10・・・膨張管、1a,10a・・・接続部、1b,10b・・・拡径管部、1c,10c・・・同径管部、1d,10d・・・縮径管部、1e,10e・・・終端部、2・・・第1のブランチ排気管、2a・・・取付部、2b・・・管路部、2c・・・平行管路部、3・・・第2のブランチ排気管、3a・・・取付部、3b・・・管路部、3c・・・平行管路部、4・・・切換弁、5・・・排気管、6・・・消音器、7・・・、テールパイプ、8・・・薄肉パイプ状触媒、8a・・・小孔、8b・・・パイプ状部材、9a,9b・・・モノリス型触媒、20,20A,20B,20C・・・ブランチ排気管、M・・・サーボモータ、W・・・コントロールワイヤ。
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、2サイクルエンジンにおける排気デバイスに関し、特に膨張管と、該膨張管への取付位置が互いに異なる複数のブランチ排気管を備えるサイドブランチ式の排気管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2サイクルエンジンの排気管において、膨張管の後端部が閉塞され、該膨張管の最大径部周壁に取付けられたブランチ排気管から排気ガスを排出させることによって、その消音効果を向上させたサイドブランチ式排気管構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、エンジン排気ポートに接続される排気管の下流端に膨張管の上流端が接続され、該膨張管の下流側に内外を連通する排気排出用開口が形成され、該排気排出用開口に対抗して該膨張管の外周に通気可能な薄肉触媒が配設された構造の排気浄化装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭50−95632号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】
特開平8−135436号公報(第3頁−第4頁、第3図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載された従来のサイドブランチ式排気管構造は、図7に図示されるように、2サイクルエンジン0Eの排気ポート部0E1に円筒部を介して接続された膨張管01は、その後端部01eが閉塞されており、その最大径部01c周壁にブランチ排気管02が取付けられ、このブランチ排気管02から排気ガスが排出される構造を備えている。
【0005】
そして、このサイドブランチ式排気管構造においては、排気管内において発生する排気慣性波(マスフロー)と排気反射波の脈動の同調効果を利用して2サイクルエンジンの出力の向上が図られている。
【0006】
しかしながら、前記脈動の同調効果によるエンジン出力の向上は、エンジン速度との関係において、特定の設定エンジン速度域においては最大の効果がもたらされるものであるが、他のエンジン速度域においては逆にエンジン出力の低下を来たすものであり、エンジンの低速(低回転)運転域から高速(高回転)運転域の広い運転速度(回転)域にわたり安定したエンジン出力の向上を図るという視点からは課題を残すものである。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の排気浄化装置は、図8に図示されるように、内燃機関の排気ポートに接続される排気管(図示されず)の下流端に膨張管01の上流端が接続され、該膨張管01の下流側に内外を連通する排気排出用開口02が形成され、該排気排出用開口02に対抗して該膨張管01の外周に通気可能な薄肉触媒03が配設された構造を備えている。なお、06は消音室、09はモノリス型の触媒である。
【0008】
そして、この排気浄化装置においては、エンジンの冷機運転区間における触媒の早期反応促進を如何に達成するかという点においてまだ課題が残されている。
【0009】
ところで、エンジンの冷機運転区間における触媒の早期反応促進において最も効果的な方法は、触媒をエンジン排気ポート出口の近傍、すなわち、触媒をエンジン直下に設けることであるが、一方、特に自動2輪車やスポーツ系の自動車など、高出力エンジンの場合においては、エンジン直下に触媒が設けられると、エンジンの高負荷運転の連続により、該触媒が熱劣化してしまうことが考えられる。
【0010】
したがって、上述したような状況の中で、エンジンの低速(低回転)運転域から高速(高回転)運転域にかけて安定したエンジン出力の向上が図られ、かつ、エンジンの冷機運転時から早期に触媒の反応促進がなされる排気デバイスの改良構造が求められている。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本願発明は、前記課題を解決するための、エンジンの低負荷、低速(低回転)運転域から高負荷、高速(高回転)運転域に亘る広い運転域において安定したエンジン出力の向上が図られ、また、エンジンの冷機運転時から早期に触媒の反応促進が図られる2サイクルエンジンの排気デバイスの改良構造に関し、2サイクルエンジンの排気ポートに接続される膨張管と、該膨張管に取付けられるブランチ排気管とを備えた2サイクルエンジンの排気デバイスにおいて、前記膨張管に取付けられるブランチ排気管は複数本であり、それらの取付けは、前記排気ポートからの距離を互いに異にする位置においてそれぞれなされており、これらブランチ排気管にはその排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管を選択するための弁手段が具備されており、該弁手段による前記排気ガス排出のための選択されるべきブランチ排気管の選択は、前記エンジンの運転状態に応じてなされることを特徴とする。
【0012】
また、前記膨張管に取付けられる前記複数ブランチ排気管の内、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記取付けがなされるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上と、他のブランチ排気管の適宜位置の管路上には触媒が設けられたことを特徴とし、さらに、前記複数ブランチ排気管の管路が集合されて一つの排気管路とされ、該一つの排気管路に触媒が設けられたことを特徴とする。
また、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記膨張管に取付けられるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上に設けられる前記触媒が、薄肉パイプ状触媒であることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載された発明のものは、前記膨張管に取付けられるブランチ排気管は複数本であり、それらの取付けは、前記排気ポートからの距離を互いに異にする位置においてそれぞれなされており、これらブランチ排気管にはその排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管を選択するための弁手段が具備されており、該弁手段による前記排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管の選択は、前記エンジンの運転状態に応じてなされるから、前記エンジン排気ポートからの距離を互いに異にする位置にそれぞれ取付けられた複数本のブランチ排気管の中からエンジン運転(出力)状態に応じて該運転(出力)状態に適応した任意の取付位置のブランチ排気管が選択される。
【0014】
そして、エンジンの運転(出力)状態に適応した前記任意のブランチ排気管が排気ガス排出のために選択され、これにより、エンジンの運転(出力)状態に対応して膨張管内における排気ガスの慣性効果と排気ガスの反射波による脈動効果の同調が得られるから、低負荷,低速(低回転)運転域から高負荷,高速(高回転)運転域までの広いエンジン運転域において、排気管における排気ガスの脈動効果の同調が得られ、エンジン出力の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載された発明のものは、請求項1に記載の発明において、前記膨張管に取付けられる前記複数のブランチ排気管の内、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記取付けがなされるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上と、他のブランチ排気管の適宜位置の管路上には触媒が設けられているから、前記エンジン排気ポートに最も近い位置に取付けられた前記ブランチ排気管が排気ガス排出のために選択されることで、エンジン排気ポート近傍、すなわち、エンジン直下に設けられた触媒がエンジンの冷機運転時から早期に反応促進される。また、同時に、エンジン高負荷、高回転(高速)運転時には、他のブランチ排気管が排気ガス排出のために選択されることで、前記触媒の熱劣化が防止され、エンジンのエミッションが低減される。
【0016】
請求項3に記載された発明のものは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記複数ブランチ排気管の管路が集合されて一つの排気管路とされ、該一つの排気管路に触媒が設けられているから、分散配置されたそれぞれのブランチ排気管に触媒をそれぞれ設ける必要性がなく、集合された一つの排気管路にまとめて設ければよく、その分コストの低減が図られる。
【0017】
請求項4に記載された発明のものは、請求項2または請求項3に記載の発明において、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記膨張管に取付けられるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上に設けられる前記触媒が、薄肉パイプ状触媒であるから、エンジン冷機運転時から触媒が効果的に早期反応促進され、また、排気ガスがブランチ排気管の集合された一つの排気管路に設けられた触媒に到達するまでの間、薄肉パイプ状触媒の反応熱により該排気ガス温度が下がり過ぎることなく適温に保たれ、前記一つの排気管に設けられた触媒に有効接触させることができるので、さらにエンジンのエミッションを低減できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の排気デバイスの実施形態における膨張管(エキスパンションチャンバ)10が図示されており、該膨張管10は、その断面形状が円形である中空の筒状部材であり、その外形形状は図示のとおりその長手方向両端部の径が細く、該両端部からその長手方向中央部へ指向して次第に拡径し、全体として中太の形状を呈している。
【0019】
膨張管10は、図1における左方端の細径部が図示されない2サイクルエンジンの排気ポートに接続される接続部10aとして形成され、該接続部10aから次第にその管経を拡径しつつ延伸する拡径管部10b(ダイバジェットコーン)と、該拡径管部10bに連接される膨張管10の最大管径部を構成する同径で延伸する同径管部(ストレート管)10cと、該同径管部10cに連なり次第にその管経を縮径しつつ延伸して膨張管10の閉塞された終端部10eに至る縮径管部(コンバジェットコーン)10dとを備えるものとして形成されており、このような膨張管10は既に良く知られている。
【0020】
そして、膨張管10にはブランチ排気管20が取付けられ、さらに図1には図示されない消音器等が装備されて、これにより実質的に排気デバイスが構成されている。
エンジン排気ガスは、図1には図示されないエンジン排気ポートから該ポートにその接続部10aを介して接続された膨張管10、ブランチ排気管20を経て、消音器に導かれテールパイプを介して排出される(図4等参照)。
【0021】
図1には、膨張管10の異なる位置に取付けられるブランチ排気管20の3例が図示されている。そして、図1のAに図示されたブランチ排気管20Aは、膨張管10口元の前記エンジン排気ポートへの接続部10a近傍位置に取付けられた例であり、より具体的には膨張管10の口元から略50mm程の位置に取付けられている(図2参照)。
【0022】
また、Bに図示されたブランチ排気管20Bは、前記口元から離れた略拡径管路部10bの中間部近傍位置に取付けられた例であり、より具体的には前記膨張管10の口元から略300mm程の位置に取付けられ、さらに、Cに図示されたブランチ排気管20Cは、拡径管路部10bの中間部からやや終端寄りに取付けられた例であり、より具体的には前記膨張管10の口元から略500mm程の位置に取付けられているものである(図2も参照)。
【0023】
ところで、膨張管10の異なる位置に取付けられるブランチ排気管20は、その取付位置、すなわち、膨張管10の口元(エンジン排気ポート)からブランチ排気管20の取付位置までの距離により、該排気管20内を流れるエンジン排気ガスの温度特性がそれぞれ異なり、たとえば、図2には、前記図1のA,B,Cの3例に図示された膨張管10の異なる位置に取付けられるブランチ排気管20A,20B,20Cの管内を流れるエンジン排気ガスの温度特性がその測定結果として図示されている。該測定結果は、一般的な2サイクルエンジンに上述の排気管を適用して任意の運転条件で運転した時における排気管内の温度分布である。
【0024】
図2において、横軸は膨張管10の口元からの距離(mm)であり、また、縦軸は排気ガス温度(°C)であり、そして、図1におけるAの取付位置におけるブランチ排気管20Aが排気ガス排出管路として選択された時の排気ガス温度の測定結果はa曲線により示され、また、Bの取付位置におけるブランチ排気管20Bが排気ガス排出管路として選択された時の排気ガス温度の測定結果はb曲線により示され、さらに、Cの取付位置におけるブランチ排気管20Cが排気ガス排出管路として選択された時の排気ガス温度の測定結果はc曲線により示されている。
【0025】
図2におけるa,b,cの3曲線により示される排気管内を流れる排気ガスの温度特性は、エンジンの出力特性と関連するものである。
例えば、Aの取付位置のブランチ排気管20Aの排気ガス排出のための選択においては、図示されるように、排気ガス温度は、ブランチ排気管20Aの取付部においては若干下がるが、該取付部から離れるに従い急激に温度降下し、その後は比較的低めに推移する。結局、排気ガスの排気慣性波は前記取付部から該ブランチ排気管20Aを通って排出され、膨張管10内においては、排気ガスの透過反射波のみが存在することとなり、前記排気管20Aからの放熱により、膨張管10内の排気ガス温度はその後端に行くほど急激に冷却され、排気管20A内における排気ガスの流速は低下し、膨張管10における排気ガスの脈動による同調域はエンジンの低速域対応となる。
【0026】
そして、Cの取付位置のブランチ排気管20Cの排気ガス排出のための選択においては、該排気管20C内における排気ガスの温度降下は比較的緩やかであり、排気ガス温度は比較的高めに推移する。結局、排気ガスの排気慣性波は比較的長い距離膨張管10内を通るので、該膨張管10内における排気ガスの温度降下は比較的小さく、排気管20C内における排気ガスの流速は比較的早く、膨張管10における排気ガスによる排気慣性効果と排気反射波による脈動の同調域はエンジンの高速域対応となる。
【0027】
また、図1におけるブランチ排気管取付位置の3例、すなわち、A,B,Cに対応する取付位置におけるブランチ排気管20A、20B、20Cの排気ガス排出のための選択は、エンジントルク特性と密接に関連しており、該関連が図3に図示されている。
図3において、横軸はエンジン速度(r/min)であり、縦軸はトルク(Nm)である。
【0028】
前記図1におけるAの取付位置に対応するブランチ排気管20Aの排気ガス排出のための選択と、エンジントルク特性の関係は図3におけるa曲線により示される状態となり、Bの取付位置のブランチ排気管20Bの排気ガス排出のための選択と、エンジントルク特性の関係は図3におけるb曲線により示される状態となり、さらにCの取付位置のブランチ排気管20Cの排気ガス排出のための選択と、エンジントルク特性の関係は図3におけるc曲線により示される状態となる。
【0029】
そして、図3においてエンジントルク特性を表すa,b,cの各曲線によれば、a曲線におけるトルクのピークは略4000r/min付近であり、b曲線におけるトルクのピークは略5000r/min付近であり、c曲線におけるトルクのピークは略6000r/min付近である。すなわち、膨張管10への取付位置が該膨張管10の口元近傍であるブランチ排気管20Aの排気ガス排出のための選択は、エンジンの低速(低回転)、低負荷運転対応となり、膨張管10へのその取付位置が該膨張管10の口元から離れる位置にあるブランチ排気管20Cの排気ガス排出のための選択は、エンジンの高速(高回転)、高負荷運転対応となる。
【0030】
上述したように、エンジン出力特性(エンジン運転状態)と、膨張管10への異なる取付位置のブランチ排気管20A、20B、20Cの流通のための選択は、互いに密接な関係にある。
したがって、エンジン出力特性(エンジン運転状態)に適応する取付位置のブランチ排気管20の選択により、すなわち、図1におけるA,B,Cのいずれかに対応する位置に取付けられたブランチ排気管20A,20B,20Cの選択がなされることにより、エンジン出力特性に対応する排気脈動波の同調が得られ、エンジン出力特性の向上が図られる。
【0031】
例えば、エンジン出力特性の低速(低回転)、低負荷運転対応により膨張管10の口元近傍の位置であるAの取付位置のブランチ排気管20Aがその排気ガス排出のために選択され、エンジン出力特性の高速(高回転)、高負荷運転対応によりCの取付位置、すなわち、膨張管10の口元から離れた取付位置のブランチ排気管20Cがその排気ガス排出のために選択され、また、エンジン出力特性が略両者の中間的な運転対応においては、Bの取付位置のブランチ排気管20Bがその流通のために選択され、前記それぞれのエンジン出力特性に対応して低速、低負荷運転域から高速、高負荷運転域までの広い範囲に亘り排気脈動波の同調が得られ、エンジン出力の向上が図られる。
【0032】
ここで、エンジン出力特性と、膨張管10におけるブランチ排気管20の取付位置との上述の特徴的な関係に基づいて開発された、エンジン出力特性(運転状態)に対応して膨張管10の異なる位置にそれぞれ取付けられるブランチ排気管20の流通のための選択が可能な排気デバイス(サイドブランチ式排気管)の具体的な実施形態を図4ないし図6に基づいて説明する。
【0033】
図4に図示されるサイドブランチ式排気管の膨張管1は、図1に図示された既述の膨張管10と同様の、所謂エキスパンションチャンバであり、図4における左方端に位置するエンジンEの排気ポートE1に接続される膨張管1の口元における接続部1aと、該接続部1aから次第にその管径を拡径しつつ延伸する拡径管部(ダイバジェットコーン)1bと、該拡径管部1bに連なる管径が同径で延伸する最大径部となる短い同径管部(ストレート管)1cと、該同径管部1cに連なりその管径が縮径しつつ延伸する終端部1eが閉塞された縮径管部(コンバジェットコーン)1dと、を備えた全体として中太の形状のものである。
【0034】
そして、前記膨張管1は、エンジン排気ポートE1から排出された高圧の排気ガスが、その拡径管部1bを進み、その容積が急激に拡大するため、該膨張管1内の排気ガス圧力は低くなり、図示されないエンジンシリンダ内の排気ガスの排出が促進され、混合気が該シリンダ内により多く吸収される。
【0035】
前記排気ガスの伝播が同径管部1cを過ぎて縮径管部1dに達すると、この部分は容積が小さくなっていくため、再び膨張管1内の圧力が高くなり、この時掃気が終わり排気ポートE1が開いていれば、排気ガスと共に、膨張管1に吹きぬけようとする混合気が前記シリンダ内に押し戻されるので、充填効率を高めることができるという機能を備えるものであり、この膨張管1における機能は既によく知られたところである。
【0036】
膨張管1には、2本のブランチ排気管2,3が取付けられており、その一つは、エンジン排気ポートE1への接続部1aである口元近傍の細径部にその取付部2aを介して取付けられる第1のブランチ排気管2であり、第1のブランチ排気管2は、膨張管1の周壁から該膨張管1の長手方向に対して略直交する方向へ向かって延伸する管路部2bと、該管路部2bに連なる膨張管1の長手方向に沿って比較的長い距離をもって延伸する平行管路部2cを備え、該平行管路部2cは、後述するブランチ排気管2の排気ガス排出のための選択手段である切換弁4に接続される。
【0037】
また、他の一つは膨張管1の前記拡径管部1bの後部、すなわち、前記最大径部である同径管部1cへと連なる構造部の近傍にその取付部3aを介して取付けられる第2のブランチ排気管3であり、第2のブランチ排気管3は、第1のブランチ排気管2同様、膨張管1の周壁から該膨張管1の長手方向に対して略直交方向へ向かって所定長さ延伸する管路部3bと、該管路部3bに連なる膨張管1の長手方向に沿って僅かな距離延伸し、前記切換弁4に接続される平行管路部3cを備えている。
【0038】
そして、第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3は、前記切換弁4において互いに選択的に該切換弁4の切換制御によりその後方の一つの排気管5に流通接続されるようになされており、該排気管5には消音器6が設けられ、さらに該消音器6後方にはテールパイプ7が接続されている。
【0039】
したがって、前記ブランチ排気管2,3は、その切換弁4の制御操作により、すなわち、エンジン負荷とエンジン回転数に基づく後述するサーボモータMによるコントロールワイヤWを介した制御手段により(図5参照)、エンジン出力特性に対応して、前記第1のブランチ排気管2もしくは第2のブランチ排気管3がその排気ガス排出のために選択され、該選択に基づくエンジン排気ガスの前記第1のブランチ排気管2もしくは第2のブランチ排気管3への導入を通して、該排気ガスは、切換弁4を経て、該切換弁4後方の排気管5に接続の消音器6、さらにテールパイプ7へと送気され、排出される。
【0040】
第1のブランチ排気管2には、その膨張管1への前記取付部2aの口元からその全長に亘り、すなわち、前記口元から上述の切換弁4に達する位置まで、その管路全長に亘り薄肉パイプ状の触媒8が設けられており、この触媒8は、エミッション評価モード等のエンジン冷機運転時における排気浄化促進に対応すべく機能を備えた触媒8であり、一種のヒートパイプとしての役割を果たす触媒である。
【0041】
前記薄肉パイプ状触媒8としては、たとえば、図6に図示されるような多数の通気孔である小孔8aを有するパンチング板をパイプ状にした部材8bに、触媒を担持させたものが使用され、該パイプ状部材8bが前記ブランチ排気管2の管内周面に沿い所定の間隙を存して配設されることで前記第1のブランチ排気管2に設けられている。
【0042】
また、膨張管1口元部の第1のブランチ排気管2の取付部2a近傍位置には第2の触媒9aが設けられ、この触媒9aは、その断面が蜂巣状をしたモノリス型触媒であり、この触媒9aも、前記第1の触媒8同様、エンジン冷機運転時における排気浄化促進に対応すべく機能を備えた触媒であり、この実施形態においては該触媒9aが前記第1の触媒8と併用されている。
【0043】
さらに、第1のブランチ排気管2と第2のブランチ排気管3が接続される前記切換弁4の後方に位置する一つの排気管5に接続された消音器6には、その断面が蜂巣状のモノリス型の触媒9bが設けられている。そして、この触媒9bにおける反応に必要な排気ガス温度を維持し、該排気ガスの効果的な浄化作用促進のために、上述の第1のブランチ排気管2内周面に沿って設けられた実質的なヒートパイプを構成する前記第1の触媒である薄肉パイプ状触媒8が寄与しているのである。
【0044】
前記サイドブランチ式排気管は、上述のような構造であるから、既述のようにエンジンEの出力特性(エンジン運転状態)に対応する取付位置のブランチ排気管、すなわち、前記第1のブランチ排気管2、もしくは第2のブランチ排気管3が前記切換弁4の切換制御により選択される。
【0045】
そして、前記切換弁4の切換制御は、エンジンEの運転状態、つまり、エンジンEの負荷とエンジンの回転数が検出され、この検出結果に基づく図5に図示されるようなサーボモータMの作動によりなされ、該サーボモータMの作動が切換弁4の切換機構に連動されるコントロールワイヤWを介して該切換弁切換機構に伝達され、該切換機構により該弁4の切換作動がなされ、これにより、前記ブランチ排気管2もしくは3が前記エンジンEの運転状態に応じてその排気ガス排出のために選択される。
【0046】
たとえば、エンジンEの低負荷、低回転(低速)運転時には、エンジンEの低負荷、低回転(低速)の運転状態が検出され、該検出に基づき膨張管1口元側の第1のブランチ排気管2がその排気ガス排出のための排気管として前記切換弁4の切換制御により選択される。
【0047】
そして、前記第1のブランチ排気管2の前記選択により、上述の膨張管1内における排気ガスによる排気脈動の同調作用が、第1のブランチ排気管2の連通による排気ガス排出作用と相俟ってエンジンEの低負荷、低回転運転対応における脈動波の同調を得るものとして調整される。
【0048】
また、同時に、排気ガスは、第1のブランチ排気管2の取付部2aを介して、該取付部2aからその直角方向に向かって延伸する管路部2b、彎曲管路部を経て、膨張管1の長手方向に沿って延伸する平行管路部2cを流れ、前記切換弁4の切換えを通して、該切換弁4後方の排気管5へと流れ、消音器6を経て外部へ排出される。
【0049】
そして、上述のエンジン排気ガスの流れにおいて、該排気ガスは、前記口元近傍の取付部2aから直角方向に向かって延伸する管路部2bに設けられたエンジン直下の断面蜂巣状のモノリス型触媒9aと、前記ブランチ排気管2内周に、かつその管路全域に亘り設けられた薄肉パイプ状触媒8による早期反応によりエンジン低負荷、低回転(低速)運転時(冷機運転時等)においても良好な浄化反応が得られ、効果的な排気ガス浄化がなされ、そのエミッションが低減される。
【0050】
また、第1ブランチ排気管2内を移動する排気ガスの温度は、該管2内に設けられた前記薄肉パイプ状触媒8による反応温度でその降下が抑制され、この一次浄化され、温度が下がり過ぎることなく維持された排気ガスは、さらに切換弁4後方の排気管5接続の消音器6内に設けられた断面蜂巣状のモノリス型触媒9bに適切な反応温度に保たれて接触し、効果的な2次浄化がなされ、テールパイプ7を経て排出される。
【0051】
上述のように、エンジンEの低負荷、低回転(低速)運転時におけるエンジン排気ポートE1への接続部1aである膨張管1口元近傍の取付位置における第1ブランチ排気管2の排気ガス排出のための選択において、該排出のための選択と関連する膨張管1内における排気ガスによる排気脈動の調整作用で、エンジン低負荷、低回転運転に対応した排気脈動の同調が得られ、エンジン出力の向上が図られる。また、エンジン低負荷、低回転(低速)運転時における触媒8,9aの早期反応による排気ガスの効率的な浄化作用が促進される。
【0052】
そして、エンジンEの高負荷、高回転(高速)運転時には、膨張管1の接続部1a口元から遠い位置に取付けられたブランチ排気管、すなわち、第2のブランチ排気管3が排気ガス排出のために選択され、該排気管3を通して排気ガスが排出されるように前記切換弁4が制御される。該切換弁4の制御は、前述と同様、エンジンEの運転状態に連動したサーボモータMとコントロールワイヤWの作動を介してなされる。
【0053】
第2のブランチ排気管3内を流れる比較的温度が高めの排気ガス(図2参照)は、その流れの過程において緩やかに温度降下して、該排気ガスが消音器6内のモノリス型触媒9bに到達し、接触する時点においてはほぼ適温まで下がり、触媒9bの熱劣化は防止されると同時に、適切な反応温度に保たれ排気ガスは効果的に浄化される。
【0054】
また、このときは、膨張管1の接続部1a口元に取付けられた第1のブランチ排気管2は、その下流が前記切換弁4の切換えにより閉塞されており、排気ガスの流通が阻止され、該ガスの流れがないため、該排気管2内は触媒以上の高温になることは防止される。
【0055】
図1ないし図6に図示の実施形態は前記のように構成されるので、第1、第2のブランチ排気管2,3の排気ガス排出のための選択は、エンジンEの運転状態に応じてなされるから、エンジンEの出力状態に応じて該出力状態に適応した前記第1もしくは第2のブランチ排気管2,3が選択される。
【0056】
したがって、エンジンEの運転状態に対応して排気管内における排気ガスの脈動効果の同調が得られ、低負荷,低回転(低速)運転域と高負荷,高回転(高速)運転域におけるエンジン運転域において、排気管における排気ガスの脈動効果の同調を得ることができ、エンジン出力の向上を図ることができる。
【0057】
エンジン排気ポートE1に最も近い位置において取付けられる第1のブランチ排気管2の該取付部2a近傍の管路2b上に触媒8,9aが設けられているから、エンジン冷機運転時から早期に触媒8,9aの反応が促進され、同時に、高負荷、高回転(高速)運転時の第2のブランチ排気管2の排気ガス排出のための選択により、前記触媒8,9aの熱劣化が防止される。
【0058】
第1、第2のブランチ排気管2,3の管路が集合されて一つの排気管(管路集合部)5とされ、該排気管5にモノリス型触媒9bが設けられているから、分散配置される第1、第2のそれぞれのブランチ排気管2,3に触媒をそれぞれ設ける必要性はなく、触媒9bは一つの排気管5にまとめて設ければよく、また、消音器も複数設ける必要性がないから、その分コストの削減を図ることができる。
【0059】
第1のブランチ排気管2の薄肉パイプ状触媒8の反応熱により排気ガスの温度が下がり過ぎることなく適温に保たれ、管路2,3が集合された排気管(集合部)5に設けられたモノリス型触媒9bを有効に機能させることができるので、さらにエンジンEのエミッションを低減できる。
【0060】
本発明の前記実施形態に換えて他の実施形態が考えられる。
【0061】
前記実施形態においては、ブランチ排気管は、第1,第2の排気管2,3の2本とされているが、これに限定される理由はなく、適宜必要に応じてその本数は選択することができ、該ブランチ排気管の膨張管1への取付位置も適宜選択できるものである。
【0062】
前記実施形態においては、膨張管1へのブランチ排気管2,3の取付けがいずれも該膨張管1の周壁側面においてなされているが、該ブランチ排気管としては膨張管1の縮径管部1d終端部1eの閉塞端部が開口されて、該部分がブランチ排気管とされるものをも含ませることが可能である。
【0063】
前記実施形態においては、第1のブランチ排気管2に第1の触媒としての薄肉パイプ状触媒8と、第2の触媒としてのモノリス型触媒9aが併用されているが、これら触媒8,9aは、その排気ガス浄化機能の類似性からして、その一方のみが選択されて採用されてもよい。
【0064】
前記実施形態においては、第1のブランチ排気管2に設けられる第1の触媒である薄肉パイプ状触媒8は、該ブランチ排気管2の全長に亘り設けられているが、必ずしも全長に亘り設けられる必要性はなく、該管において適宜部分的に設けられるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】膨張管の異なる位置に取付けられるブランチ排気管を示す説明用の図である。
【図2】図1における異なる位置に取付けられるブランチ排気管の管内における排気ガス温度の測定結果を示す図である。
【図3】図1における異なる位置に取付けられるブランチ排気管とエンジントルク特性との関係を示す図である。
【図4】本発明の排気デバイスの具体的実施形態を示す図である。
【図5】本発明の切換弁の切換機構が図示された排気デバイスの斜視図である。
【図6】本発明の薄肉パイプ状触媒の一例を示す図である。
【図7】従来の排気デバイスの主要部を示す図であり、(a)は、該主要部の全体図、(b)は、(a)における0A−0A断面図である。
【図8】従来の別の排気デバイスの主要部を示す図である。
【符号の説明】
1,10・・・膨張管、1a,10a・・・接続部、1b,10b・・・拡径管部、1c,10c・・・同径管部、1d,10d・・・縮径管部、1e,10e・・・終端部、2・・・第1のブランチ排気管、2a・・・取付部、2b・・・管路部、2c・・・平行管路部、3・・・第2のブランチ排気管、3a・・・取付部、3b・・・管路部、3c・・・平行管路部、4・・・切換弁、5・・・排気管、6・・・消音器、7・・・、テールパイプ、8・・・薄肉パイプ状触媒、8a・・・小孔、8b・・・パイプ状部材、9a,9b・・・モノリス型触媒、20,20A,20B,20C・・・ブランチ排気管、M・・・サーボモータ、W・・・コントロールワイヤ。
Claims (4)
- 2サイクルエンジンの排気ポートに接続される膨張管と、該膨張管に取付けられるブランチ排気菅とを備えた2サイクルエンジンの排気デバイスにおいて、
前記膨張管に取付けられるブランチ排気管は複数本であり、それらの取付けは、前記排気ポートからの距離を互いに異にする位置においてそれぞれなされており、これらブランチ排気管にはその排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管を選択するための弁手段が具備されており、該弁手段による前記排気ガス排出のために選択されるべきブランチ排気管の選択は、前記エンジンの運転状態に応じてなされることを特徴とする2サイクルエンジンの排気デバイス。 - 前記膨張管に取付けられる前記複数ブランチ排気管の内、前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記取付けがなされるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上と、他のブランチ排気管の適宜位置の管路上には触媒が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の2サイクルエンジンの排気デバイス。
- 前記複数ブランチ排気管の管路が集合されて一つの排気管路とされ、該一つの排気管路に触媒が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の2サイクルエンジンの排気デバイス。
- 前記エンジン排気ポートに最も近い位置において前記膨張管に取付けられるブランチ排気管の該取付部近傍位置の管路上に設けられる前記触媒が、薄肉パイプ状触媒であることを特徴とする請求項2または3に記載の2サイクルエンジンの排気デバイス。
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- 2003-05-19 JP JP2003140831A patent/JP2004340105A/ja not_active Withdrawn
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