JP2004339651A - 採型材および採型方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】面倒な石膏による型取りを行うことなく、装着対象に合わせて簡単に採型して、その状態で装着できるような採型材を提供する。
【解決手段】所定温度に加熱することにより、糸同士が融着し、その後所定温度より低い温度で硬化する熱可塑性樹脂の糸、あるいは、所定温度で硬化する熱硬化性樹脂の糸を編み糸としてニットを形成する。かかるニットを採型対象に装着すると、ニットの有する高い伸縮性により採型対象に特段押し当てることなく高フィットして、事実状の採型状態になる。かかる状態のニット面を、加熱することによりその採型状態を保持して採型することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石膏や熱可塑性樹脂シート等を用いることなく簡単に採型ができる採型材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リハビリテーション医学の普及により、人体の骨格筋系を四肢、体幹の外部から支えて、機能障害の軽減、回復を目的とする種々の装具が開発されて
いる。
【0003】
かかる装具は、基本的には、人体の装着部分にフィットした状態で、装着時の不快感や、痛みなどを発生させない状態で使用できることが望まれる。そのために、装具の作成には必要な採寸が行われる。しかし、採寸は、外部からメジャーで寸法を測るもので、採型に比べて十分に装着部の人体の凹凸形状を読み取ることはできない。
【0004】
採寸のみに基づき作成した装具では、装着部の微妙な凹凸に合わせた装着が行えず、装着時などで一部に擦れなどが発生し、ピッタリとした装着感を得ることは難しく、患者にとっては装着が苦痛となる場合も見られる。
【0005】
また、ピッタリとした装着感という点では、上記医療用目的などに使用する装具に限らず、日常的に使用する下着、洋服、靴下、手袋、帽子などの種々の衣料品においても同様である。
【0006】
さらには、衣料品以外に靴などの履物も同様である。足の形状は、その大きさのみならず、甲の高さなど個人差が大きく出るもので、本来的には、個々の足型に合わせた靴が望ましい。しかし、現状では、既製の靴で間に合わせている場合が多い。
【0007】
近年問題となっている外反母趾の問題も、足形に合わない靴を履いたり、狭い靴を履いたりすることにより発生する肉体的障害である。
【0008】
さらに、人体に使用する物以外でも、製品の保護カバーとして、製品形状に合わせたカバーを使用することにより、適切な保護を図る提案がなされている。単に製品を覆えばよいという発想から脱却して、製品のディテールに合わせたカバーを作成することで、カバー内での製品の不要な動きを的確に防止して、その保護を確実にすることが提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように装具を含めて種々の製品で、本来的には、装着する相手に合わせた形で装着できることが理想的と考えられるものが多い。かかる理想的な装着状態を実現するためには、採寸のみの場合よりも採型による製品作りが求められる。
【0010】
しかし、現状では、特段の知識などを持たなくても、日常的に手軽に採型できる技術は十分に開発されておらず、理想的には採型によるオーダーメードが好ましいことは知りつつも、自分のサイズにできるだけ近いサイズ、形の既製品を利用して間に合わせている場合が殆どである。採型は面倒で、コストも高くつき、既製品の方が安価な場合が殆どである。
【0011】
かかる点は、健常者にとっては単に身体になじまない、着心地が良くない等の感覚的な問題としてそれ程大きく取り沙汰されない場合が多いが、障害者が使用する装具などの場合には、その障害の程度が悪化したり、回復、矯正などの治療効果が遅れたり、あるいは装着感の不満足により長期の装着が実質的に行えない等深刻な問題となる。
【0012】
また、採型が容易に行えたとしても、採型技術を含めて、それに基づく製品の生産コストが高くなる場合には、一般に普及し得る程には採型技術を有効に活用することはできない。個々の形が異なる採型に基づく生産は、本来的には、量産方式に適合できず、コスト面における量産効果が得られないのである。
【0013】
従来の採型技術としては、その代表的なものとして、石膏を用いたものが知られている。採型対象に石膏泥を塗布する等して石膏の硬化を待って、その採型を行うものである。
【0014】
例えば、医療用の装具の形成等では、石膏や石膏包帯を用いた採型技術が主流である。石膏包帯は、石膏が軟化している間に患部の軟部組織を必要以上に押しつけることなく適度の巻き付け力で、石膏が乾かない内に手際よく巻き付ける。通常は、約5分程度でその作業を完了する必要があり、良好な採型を行うためには、かなりの熟練度が求められる。
【0015】
実際の医療現場では、有資格者である義肢装具士が、医師の処方を受けてこの採型に従事しなければならず、知識のない者が簡単に行えるものではない。そのため、どうしても義手、義足などの義肢作成のための採型は行われるものの、矯正治療目的などで使用される装具には、往々にして面倒な採型を行わずに、規格化された各種の寸法の既製のシースから、自分に一番適った寸法、形状のものを選択して済ます方法が通用している。
【0016】
しかし、本来的には、かかるシース類はその使用者に合わせた状態で採型することが必要である。
【0017】
このように従来から採型に際しては石膏が使用されてはいるが、かかる石膏を使用する採型作業では、ある程度の熟練度が必要で、且つ採型対象が石膏泥で汚れ、手間がかかり、汚れ等を嫌う場合や低コストを求める場合には、なかなか適用しずらいという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明者は、石膏を使用せずに、誰でも簡単に特段の熟練度を要求されることなく行える採型技術の開発が必要と考えた。
【0019】
また、本発明者は、採型を取れ入れた装具等の最終製品が高コストになる理由として、一つには、採型対象から直接採取したオリジナルの型を元に、雌型、雄型等の幾つかの型製作を経た上で最終製品が完成させられるためではないかと考えた。採型材そのものを最終製品として使用できるようにすることにより、コストの削減を図ることができるのではないかと考えた。
【0020】
本発明の目的は、石膏を用いない採型技術を提供することにある。
【0021】
他の本発明の目的は、従来のような面倒な石膏による型取りを行うことなく、装着対象に合わせて簡単に採型して、その状態で装着できるような採型材を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題につき、種々検討を重ねる内、セータ等のニット製品は、着ている人の身体の凹凸形状が綺麗に再現されることに着目した。ニット製品を着用した際のシルエットをファッションポイントとして敢えてニット製品を着用する場合もある程である。
【0023】
本発明者は、かかる点を、ニット製品の採型性という今までにない全く新しい視点で捉えた。ニット製品が身体の線を綺麗に写し出すことは従来より経験的に知られていることではあるが、かかる点をニット製品の採型性として捉える認識はこれまで全く無かった。
【0024】
本発明者は、かかるニット製品の高フィット性をニット製品の採型性として新たに認識することにより、かかるフィット状態を積極的に維持することで採型が行えるとの着想に初めて想到し、本発明に至ったものである。
【0025】
従来、採型と言えば、前述の如く、石膏泥を採型対象に押し付けたり、あるいは水に濡らした紙を採型対象に殊更に押し付けたり、あるいは熱可塑性樹脂シートを軟化させた状態で採型対象に殊更に押し付けたり等の非日常的状態な作業が必要という発想が一般的概念であった。
【0026】
しかし、日常的なニット製品の着用という状態に、本発明者は採型機能を見出すことによって、殊更に採型対象に石膏等の採型材を押し付ける等の行為を行わなくても、ニット製品を装着した状態でその状態を保持させることで採型を行うという極めて自然で、シンプルな採型技術に思い至ったのである。
【0027】
すなわち、本発明の採型材は、採型対象に装着させた状態で、加熱により硬化させられる糸を編み糸として編んでなる採型用のニット面を有することを特徴とする。かかる構成の採型材において、前記ニット面では、採型可能な状態の未採型部分に、硬化させられた既採型部分が混在させられていていることを特徴とする。
【0028】
ニットの高フィット性を採型性と見做すことによりニット面を採型材とした本発明の上記構成では、セータ等のニット製品のニット面を採型用として使用することができるので、採型材そのものを普段に着用できる衣類等の最終製品として使用することができる。
【0029】
また、普段に着用する衣類等として利用する場合には、ニット面をすべて採型用に利用する必要はなく、その一部を、例えば、肩の部分、あるいはバストの部分、あるいは腰の部分等、採型用に構成したニット面の位置部のみを身体に合わせて採型しておき、着崩れ等が発生しないようにしても構わない。
【0030】
以上の構成を有する採型材において、採型用のニット面を構成する糸としては、ニット面の採型性を維持する機能が求められる。そこで、前記糸は、熱可塑性樹脂の糸であることを特徴とする。あるいは、以上の構成を有する採型材において、前記糸は、熱硬化性樹脂の糸であることを特徴とする。
【0031】
上記いずれかの採型材において、前記採型材を、衣類に形成しておけば、着用する人に合わせた採型が適宜簡単に行える衣類として有効に使用することができる。あるいは、前記採型材を履物に形成しても構わない。あるいは、前記採型材を、物のカバーとして使用することもできる。
【0032】
このように、本発明の採型材は、着用対象に合わせた採型が簡単にできる衣類や、履物、カバー類等として使用できる。特に、採型して障害部分に合わせた対応が必須となる装具等へは、有効に使用することができる。
【0033】
また、採型は、上述の如く、採型対象に装着させた状態で、加熱により硬化させられる糸を編み糸として編んでなるニット面で行うため、採型材としては、かかる機能を有する糸を編んでニット製品として安価に提供することができる。従来の採型技術につきものの高コスト感は、完全に払拭することができる。
【0034】
本発明の採型方法は、加熱により硬化させられる糸を編み糸として編んでなるニット面を前記採型対象に装着させた状態で、前記ニット面を加熱により硬化させて採型することを特徴とする。
【0035】
本発明では、編み糸を編んでなるニット面を採型に使用する点が一つの特徴点である。すなわち、縦糸、横糸からなる織構造では、ニットに見られるような装着対象の被着面に沿った凹凸を綺麗に再現する伸縮性に劣る。布の織構造では、縦糸方向、横糸方向への伸縮性は小さく、斜め方向のバイアス方向で多少の伸縮性が認められる程度である。
【0036】
また、その伸縮性は、ニットとは異なり、部分的に伸縮させるということが綺麗に行えない。織構造の布では、その伸縮性は部分的ではなく全体的に広がるという傾向を有している。
【0037】
かかる伸縮性の顕著な差異は、正に、編み構造であるか、織構造であるかに起因しており、本発明では編み構造のニットを採用することにより、採型に必要な伸縮性を獲得しているのである。
【0038】
すなわち、伸縮性に富み、かつその伸縮性が部分的なものに留め置くことができる高フィット性に優れているニット製品に着目して、本発明の採型材は構成されているのである。
【0039】
このように採型対象に装着した状態で高フィットしている状態のニット面を硬化させることにより、高フィット状態で再現されている採型対象の凹凸が保持され、採型されることとなる。
【0040】
石膏泥や、熱可塑性の樹脂シート等を使用する場合とは異なり、採型材としてのニット面を手で殊更に押し付けたりする必要がない。装着させた状態で、採型が自然に行われているのである。勿論、極めて微細な凹凸形状を再現する場合には、編み糸をより細くしたり、編み工夫等で形状順応性を高めてやればよく、手で装着対象面にニット面を押さえつけなくても構わない。勿論、押さえつけても構わないが、基本的にその必要はない。
【0041】
このように採型できるニット面を、例えば、セータ等のニット製品の全面に形成しておけば、採型材そのものをセータ等のニット製品として使用することができる。採型に必要な硬化性は、ニット面を形成する編み糸に託されている機能であり、採型材としてのニット製品の着用にあたっては、従来のニット製品と比べて何の違和感もなく同様の使用感覚で着用することができる。採型材としての機能を意識することなく着用することができるのである。
【0042】
また、採型に際しての硬化においては、熱可塑性樹脂の糸を使用した場合も、熱硬化性樹脂の糸を使用した場合でも、いずれの場合でも、編み目が塞がれることはなく、通気性が確保された状態で採型状態が確保されるため、蒸れる等の心配は全くなく、本発明の採型材を衣類等に形成して使用しても、かかる採型機能を有しない通常のニット製品に比べて着心地の点で何の遜色もない。
【0043】
かかるニット製品特有の高伸縮性に基づく高フィット性を採型に活かした本発明の採型材は、特に高フィット性が要求される機能回復、矯正に大きな影響をおよぼす装具に適用すれば、従来とは異なり、石膏泥等の面倒な採型作業が必要なくなり、手軽に、安価に、個々の使用者に合わせた装具の作製が容易に行える。
【0044】
本発明は、上記のように、熱により硬化して形状保持を確保させる機能を有する糸を編み糸として使用した採型材を、通常のセータ等のニット製品として活用できるものであるが、かかる採型性は、従来のニット製品が有する着用上の問題点を解決するものでもあった。
【0045】
すなわち、従来のニット製品は、上記のように、確かに、織構造の布を裁断して、その後縫製する場合よりもそのフィット性が確保し易いが、しかし、装着におけるぐずつき等が発生し易い。高い伸縮性を有するが故に、着ているうちにずれて弛んだり、だぶついたり、きくずれし易い等という着心地の問題点が指摘されていた。かかる点が、ニット着用の難点でもあった。
【0046】
つまり、ニット製品の特徴である編み構造による伸縮性の自在さや、順応性に基づき、身体等の装着対象の凹凸に対応した高フィット性が確保される一方で、逆に、その伸縮性が災いして着崩れしたりしてぐずつきが発生し易いのである。
【0047】
ある意味では、高フィット性とぐずつきとは、伸縮性という同一要因に基づく互いに拮抗する性質と見做すこともできる。すなわち、高フィット性をより確保するためには伸縮性を高くすればよいが、しかし、伸縮性を高くすることによりぐずつきは大きくなる。
【0048】
一方、ぐずつき防止を改善するため伸縮性を小さくすれば、高フィット性が抑えられるのである。ニット製品の高伸縮性は、一方では高いフィット性としてのメリットに、他方ではぐずつき等のデメリットの原因となっている。
【0049】
従来のニット製品は、その形状は縫製を用いたものや丸編によるものであっても、平面的な型紙概念によって製作された伸縮対応によるものであり、その伸縮も殆どと言っていいほど画一的である。言い換えれば、ニット製品は形状作りは進んでいるが、着用における着崩れ等という観点まで十分に配慮した製品作りまでには進んではいないとも言える。
【0050】
衣類等の装着性は、気持よく着用するための必須条件である。そのため、一般的な体形に合わせた幾つかのサイズを既製しておき、その中から自分に似た体形の服を選択して装着する既製服よりは、より自分の体形に合わせられるイージーオーダー、さらにはオーダー製品が求められる。
【0051】
また、オーダーにおいても、平面的な型紙により布地を裁断し、その裁断した各部を縫い合わせ、縫製を行うことになるが、何回かの仮縫いを持たせることでフィット性を確保しようとしている。さらに、型紙にも立体裁断等種々の裁断手法が取り入れられ、縫製後により身体の各部へのフィット性を確保するための努力がなされている。
【0052】
しかし、どうしても縦糸、横糸からなる織構造の布では、上記の如く裁断、縫製の工程を経る必要があり、そのフィット性に不満が残る場合が少なくない。
【0053】
一方、ニット製品は、身体に見合ったサイズのものを着用すれば、比較的、縫製品に比べてフィット性が高いと思われていた。ニット製品の着用時に、身体の凹凸の線がくっきり見える等は、そのフィット性の現れとも言える。しかし、布地の縫製品よりもニット製品の方がフィット性に優れるとは言え、まだ十分にフィット性が確保されるとは言えない状況であった。
【0054】
かかるフィット性がおしゃれ感覚の一つとして問題視されている場合には、多少の我慢で済ませられる場合もすくなくないが、身障者の着衣等のその身体的機能に影響を及ぼす場合には、そのフィット性の確保が俄に重要となる。
【0055】
採寸技術、仮縫い等種々の手法が開発され、そのフィット性を高める努力がなされているが、未だ十分にそのフィット性が確保されたとは言えない。
【0056】
本発明者は、身体障害を有する者の補装具等に対する長年の係わりから、このフィット性の確保の重要さを人一倍痛感しているものであり、従来の製品よりも優れたフィット性の確保が簡単な技術で行えないか研究を重ねてきた。
【0057】
ところが本発明の採型材では、ニット面を熱により採型状態が保持できるように硬化する特殊の糸を使用しているため、採型材を例えばセータ等に形成して着用する場合に、例えば、着用するものが撫で肩で型くずれし易い場合には、肩に当るニット面を着た状態で加熱することにより肩部分でのぐすつきや着崩れを発生させないようにすることができる。
【0058】
従来は、かかる場合には、肩パッドをセータの内側に付ける等して対処していたが、本発明の採型材を着用する場合には、セータに形成した採型材の肩部分に採型を施すことで簡単に対処することができる。
【0059】
すなわち、本発明者は、ニット製品の伸縮性の構造的要因としての編み構造を利用して採型材の構成に思い至ったが、また、かかる採型材をセータ等の日用に着用する衣類として使用する場合には、かかる採型性をニット特有のぐずつき防止に役立たせることができたのである。
【0060】
採型性を持たせることで、伸縮性に起因する高フィット性の確保と、ぐずつき防止と言う相い拮抗する問題点を共に解消し得ることを、本発明者は、初めて見出したのである。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0062】
(実施の形態1)
本実施の形態では、ニットを用いた本発明の採型材について、その特性を縦糸と横糸とを織ってなる織布との伸縮性特性と比較しながら以下、説明する。
【0063】
ニット製品と織物(織布)との違いは、その伸縮性に大きな差が現れる。本発明の採型材は、ニット製品の織物とは異なる抜群の伸縮性、高フィット性に着目してなされたものである。伸縮性を活かした装着対象の形に沿った自在さや順応性に関しては、ニット製品の方が織物より格段に優れている。
【0064】
しかし、かかるニット製品の自在さ順応性は、逆に、ニット製品を着用した場合の「ぐずつき」、着崩れ等の問題となって現れる。
【0065】
かかるニット面での採型を行なわせるには、ニット面を構成する編み糸として、ニット面を加熱することによりニット面の形状を維持した状態で硬化させることができる熱可塑性樹脂の糸、あるいは熱硬化性樹脂の糸を使用すればよい。
【0066】
編み糸として熱可塑性樹脂の糸を使用する場合には、ニット面が採型対象の外面に沿った形状になっている状態で、ニット面に熱可塑性樹脂の糸の溶融点に相当する温度の温風を吹き付ける等して加熱することにより、熱可塑性樹脂の糸同士を互いに融着させる。
【0067】
糸というのは元々細く形成されているため、熱伝導性が極めて高い状態にされており、瞬間的に軟化点の温風を吹き付ける等の加熱手段で、瞬間的に糸同士の融着が起きる。ニット面を微細に見ると、編み目の立体構造となっているため、糸に加えられる熱は糸の周囲から3次元的に加えられることとなり、熱可塑性シートを使用する場合には比べて、格段に熱伝達がよく、加熱に要する時間を短くすることができる。
【0068】
一方、瞬間的な温風の吹き付けによる糸同士の融着に際しては、編み目が完全に塞がることはない。そのため、瞬間的に温風吹き付けで融着を起こした糸の温度は溶融点の温度以下に短時間で、すなわち瞬間的に下がる。温度の降下も、編み目構造であるため、シート状の場合に比べて、3次元的に糸の周囲から放熱がおき、短時間で、瞬間的に融着した状態で硬化することとなる。
【0069】
尚、加熱手段としては、ドライヤー等の温風吹き付け手段以外に、アイロン等を軽く押し当てる等種々の加熱手段を適宜採用することができる。
【0070】
このようにニット面を構成していた編み糸としての熱可塑性樹脂の糸同士が融着して硬化することにより、ニット面での採型が行われる。
【0071】
糸同士が単に編み糸として編まれているニット面は、ニットの特徴である縦横の伸縮性を有しており、被着体の外形の凹凸に十分に順応する程にフィット性が確保されている。
【0072】
しかし、加熱により糸同士が融着してその後硬化した場合には、糸同士が融着していない場合に比べて応力が高くなり、加熱温度を適宜選択することによりその硬度を調節することかできる。
【0073】
採型時に硬化させるニット面の硬度としては、例えば、採型対象から採型部のニット面を剥がすことができる程度に、すなわち、自在着脱可能な範囲の硬度に硬化させればよい。自在着脱可能な程度の硬化とは、採型対象から外すに際して、カッター等の切断手段を使用することなく、手で軽く広げたり等して着脱が容易に行える程度の硬度を意味する。
【0074】
かかる硬度に硬化させておけば、全く広げる余地が無い程に完全に固化させる場合とは異なり、既存の採型部分を一部に有した状態で、採型材を採型対象に何度も着用させることができる。例えば、前述の如く、肩の部分のみに採型を行った既採型部分を有し、その他のニット面は未だ採型を行っていない未採型部分として残した状態のセータに採型材を形成してもよい。
【0075】
かかる採型機能を糸に持たせる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系(ナイロン:ナイロン6、ナイロン66等)、ナイロン(アラミド)、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系(ビニロン)、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトル系(アクリル)、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ABS、カプロラクタム等の樹脂が挙げられる。
【0076】
この内、ポリアミド系(ナイロン:ナイロン6、ナイロン66等)、ナイロン(アラミド)、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系は低融点の性質を有しており、採型材を直接人体に着用した状態で加熱して糸同士の融着により硬化を起こさせて採型する採型材素材への適用が考えられる。
【0077】
高融点の場合には、人型を別途成形型として用意しておき、この成形型を採型対象として装着させた状態で、加熱により所要の融点まで加熱して採型を行えばよい。
【0078】
熱可塑性樹脂の糸は通常それぞれ一定の軟化点、溶融点をもつものであるが、各軟化、溶融を含む物性は熱可塑性樹の重合分子構造の様体によるものであり、軟化点、溶融点は実際の採型材のニット製品の製作に合わせた温度のものを選定して使用すればよい。
【0079】
また編み構造における編み糸のしなりは、糸として使用する素材の曲げ応力と、その糸の数および撚りによるものであるが、糸が合着し合っている場合には曲がりにくく、異なる数値になる。その応力は、プラスチックに示される応力(JIS K7 171/ISO 178 ブラスチック曲げ特性の試験方法 9.1 曲げ応力に規定)と同様の特徴をもつものであると考えられる。
【0080】
採型に使用するニット面、すなわちニット生地においては、加熱により糸が曲がりにくくなることによって伸縮しにくい状態となり、なお編目の糸と糸の合着によってバイアスしにくい状態となって、採型状態が得られる。
【0081】
編込みにおいて伸縮性のスパンデックスを地糸に用いた場合、あるいは異なる質の糸を併用した場合であっても、採型時の硬化に際しての生地の状態は合着した糸によるものである。
【0082】
熱可塑性樹脂の糸を編み糸として編んでなるニット生地は、加熱によって次のような変化を持つものになる。すなわち、温度が高くなるに従って、a)からf)まで状態変化する。
【0083】
a)可塑性が高まる→b)伸縮のスパンが狭くなり始める→c)伸長あるいは歪ませたり折り曲げた状態が置状(外力が加わらない状態)になる→d)伸縮のスパンがごく狭くなる→e)生地面に張りが出て曲がりの波長が大きくなる→f)生地面に透明度が生じる。
【0084】
本発明はかかる熱可塑性繊維による加熱変化を次のように用いることによって、ニット製品の伸縮性を利用した採型性、くずつき防止等の装着性を高めるようにした。
【0085】
すなわち、上記構成の採型性を有するニット面を加熱することにより採型状態で、1)特定部分の伸縮(スパン)を低めたり、あるいは2)特定部分の伸縮(スパン)を無くし、腰(張り)を持たせたり、あるいは3)特定部分に曲げや窪み等の凹凸形状を入れて置状(外力が加わらない状態)にするようにした。
【0086】
1)の低伸縮化、及び2)の腰の各度合いは、上記a)〜f)の熱変化に照らして、適当な温度を選択することによって調節でき、かつグラデーションにすることができる。3)の置状には、1)もしくは2)の状態を加えることができる。
【0087】
以上の加工は、1)と2)については、加熱面が平らなアイロン等の熱鏝のような器具と、その受台とで簡便に行うことができる。あるいは、特定部分を加熱するようにさせたホットプレス用の形式でも簡便に行うことができる。
【0088】
3)の場合は、ホットプレス面に採型対象に合わせた成形型を入れたものが考えられるが、加工を加える製品もしくは生地状が立体的である場合は、成形型に加工する製品もしくは生地を被せて圧力槽で加熱する方法を採用すればよい。
【0089】
この場合の加熱は器具による方法と圧力槽による方法があるが、加熱が特定部分であることから、圧力槽の場合は加熱除けカバー等が必要であり、器具による方法が簡便である。グラデーションは、例えば、器具加熱面の熱伝導やフィターによる温度差、あるいは加熱面に網版を入れる等して行うことができる。
【0090】
以上の器具を用いる方法では、ワイシャツのプレスに使用する形を整えるための仕上げ用のアイロン、ホットプレス等の使用が考えられる。
【0091】
また、丸編の袋状の製品においては、平らに型取ったアルミ板に製品を被せ、圧力蒸気釜に曝す等の器具を用いればよい。いずれも平面におけるものではあるが従来から使用されている器具であり、かかる器具をそのまま利用することができ、新たな設備は不要で、既存の設備を利用することができる点で設備経済上も好ましい。
【0092】
採型材の形状としては、上記の如く、筒状、袋状、あるいは平面状のいずれの形態であっても構わない。筒状としては、例えば、頭から被るようにして着用するセータ等をイメージすればよい。袋状としては、例えば、手袋や、靴下等のような形状をイメージすればよい。
【0093】
かかる筒状、あるいは袋状に形成しておけば、装着対象に装着した状態で高フィット状態が得られる。平面状の場合には、押し付け手段で装着対象にフィット性が良好になるように押し付ける必要がある。例えば、採型用のニット面を矩形に形成しておき、その状態で左右から耳に掛けるゴム紐を設けたマスク状にするとか、左右をゴム紐等で連結して装着するとか、ゴム紐等を押し付け手段として使用することができるようにしても構わない。
【0094】
採型材のイメージとしては、上記のように、衣類全体を採型用にニット面として形成して、その一部のみのを実際の採型に使用するようにしても構わない。
【0095】
あるいは、採型に必要な大きさに平面状にニット面を形成するようにしても構わない。あるいは、採型部分に必要な部分にのみ上記ニット面を設けておき、その他の部分は、非採型用のニット、あるいは織布で形成しておいても構わない。
【0096】
本発明の採型材に使用するニット面を構成する糸は、被着対象に合わせて形状変形しているニット面を硬化させることにより形状保持が図れればよく、上記説明の熱可塑性樹脂の糸以外にも、加熱により熱硬化する熱硬化性樹脂の糸も採型機能を持たせた編み糸として使用することができる。
【0097】
熱硬化性樹脂の糸同士が単に編み糸として編まれているニット面は、ニットの特徴である縦横な伸縮性を有しており、被着体の外形の凹凸に十分に順応する程にフィット性が確保されている。
【0098】
かかる状態で採型対象に装着させると、装着体の外観形状に沿ってフィットした状態にニット面が変形している。この状態で、ニット面に硬化点に相当する温度の温風を吹き付ける等の手段で加熱を行えば、ニット面の形状硬化が発生し、硬化する前の糸同士が編まれている状態のニット面とは異なり、装着された部分の採型を確実に行うことができる。
【0099】
勿論、加熱手段は、アイロン等の手段でも構わない。かかる加熱を行うことにより、ニット面を構成している編み糸としての熱硬化性樹脂の糸は、編み目の空隙を残した状態で硬化する。かかる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系(ノボロイド)等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0100】
また、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の糸としては、マルチフィラメント糸でもステープル糸でも使用することができる。
【0101】
(実施の形態2)
本発明の採型材を、装具としての義肢使用者切断部に用いるキャッチピン式ソケット間のカバーに適用した場合について、以下説明する。
【0102】
義肢使用者は、切断部を覆い義肢の連結を果たすソケットを用いている。ソケットは通常、外側の義肢連結の硬ソケットと、内側の切断部のための軟ソケットの二重構造で、この二つの間にニット製の袋状のカバーを用い、外側ソケットへのスムーズな挿入(二つのソケットの内外が合致するものであるため挿入しにくいためかかるスムーズな挿入を目的とした処置が必要)と切断部の太ったりあるいは痩せたり等の状況変化に対応した調整を果たしている。
【0103】
かかる調整は、ニット製のカバーを選択することにより、すなわち生地の薄地、厚地のカバーを適宜選択することにより調整している。
【0104】
北欧で用いられ日本にも普及し出したキャッチピン式ソケット(内側の軟ソケットの先端にピンが取りつけられ、外側の硬ソケットのピン受に差し込んで合着させる方式。内側と外側がぶれ動かず、動きを要する義肢使用者に適し、特にスポーツにも耐えられるとされている。)には、特にこのカバーが必要である。
【0105】
キャッチピン式ソケット用のカバーは通常の袋状のカバーとは異なり、1)先端にピンの通し口が無ければならず、2)先端部に加わるソケット間の圧力疲労を避けることができ、3)ソケット間の合致を妨げないような均一な厚さを持つものでなければならない。
【0106】
しかし、現在使用されているものは、先端が厚手で編み部分を内側に返したものや、先端にプラスチックを施したもので、上記要件を十分に満足させるものとは言えない。
【0107】
前記実施の形態1で説明した採型材をかかるカバーに適用することで、かかる問題を解決することができる。すなわち、本発明のカバーに形成された採型材は、通常のサポータ程の太さの丸編により、スパンデックス糸と熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の繊維糸を用い、先端部分がほどけにくいよう先端部分から編み始め、わずかな間、編み糸に強いテンションをもたせ、本体の太さより細く袋状に編上がるようにする。編上げたニット面が採型に使用することができる。
【0108】
これによって、先端部に特別な工夫を入れずに、本体まで均一な厚さに仕上がるものになる。図1に示すように、このようにして袋状のカバー10aに形成した採型材10を編上げた後、かかる採型材10を、図1に示すように、軟カバー11を装着した義肢使用者の切断部に被せた状態で、先端の細めたカバー先端部10b部分の伸縮を一定の範囲(およそ5cm程の直径円に拡がる伸縮)にするよう、すなわち伸縮(スパン)性を低めるため、採型材10のニット面を加熱して採型を行う。
【0109】
これにより、カバー先端部10bは装着において内側の軟ソケット11から外れることのない広さに拡がり、図1に示すように、カバー先端部10bはソケット間の圧力を避けるものになる。採型はカバー先端部10bを一定の広さまで拡大させた固定的な置状にするものであってもよい。
【0110】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明に係る採型材をX脚、O脚等足底調節装具ホルダーに適用した場合について説明する。
【0111】
X脚、O脚の療法には、通常足底板(インソール)が用いられる。この足底板は下肢の傾斜の矯正として踵のいずれかの側を高めるようにした足底3分の2程までの補綴装具であり、足底板の全体を包むようにした袋状のホルダーによって足底に装着させる。
【0112】
ホルダーには、幾つかのメーカーがあり、足底に対する安定具合には差があるが、それぞれ共通することは、強い伸縮力をもつニット製の生地を用いることで、足底板の高さをもたせた部分に適当に形状順応するような伸縮性と、足底板がホルダーのなかでずれ動かないような安定性との両効果を確保しようとしている。しかし、従来の構成では、上記伸縮性を持たせることにより、足底板は、ホルダー内で動いてしまい、両方を十分に満足させることはできなかった。
【0113】
採型用のニット面を有する本発明の採型材をかかるホルダーに適用することで、かかる問題点を解決することができる。
【0114】
すなわち、図2に示すように、熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂の糸を編み糸として伸縮(スパン)のよいニット製のホルダー12aを採型材12として編上げ、足底板13を中に入れた状態で、足底板13の高さをもたせた部分13a以外のニット面を加熱により硬化させるようにして採型することにより、かかる部分の伸縮(スパン)を低めることができる。
【0115】
これによってホルダー12aとして形成した採型材12は、足底板13の高さのみに伸縮順応し、図2に示すように、足底板全体に対する安定性を維持するものになる。
【0116】
(実施の形態4)
本実施の形態では、180°内の屈曲もしくは弯曲を要するカバー状の製品に、本発明の採型材を適用した場合について説明する。
【0117】
180°内の屈曲もしくは弯曲を要するカバーとは、身体に装着させるものとしては、例えば、手、肘、膝等の身体各部に被覆するもの、用具としては鞭打ち症の頸椎装具等に用いるカバーを指すこととする。
【0118】
各々に共通することは、頸椎装具のように、既に弯曲している製品であっても、そのカバーは、屈曲もしくは弯曲前の180°の状態に作られ、伸縮素材によって順応させるようにしている点である。
【0119】
しかし、これらの製品は、以下のように様々な点で使い勝手の良くないものとなっているのが現状であり、本発明の採型材を適用することにより、かかる使い勝手の向上を図ることができる。
【0120】
例えば、先ず「手袋」の場合について説明する。手袋は、保温、スポーツ、作業用から義手にいたるまで様々な素材によって広く用いられている。しかし、その殆どは、掌面、背面とも同伸縮である。このため、伸縮(スパン)が小さい製品の場合は曲げにくく、伸縮(スパン)が大きい場合には掌面がぐすついて物の掌握が安定しない。
【0121】
手袋をした状態で何かを掴もうとすると、手袋の掌面では布が弛み、手の甲に当る側、すなわち背面では伸びようとする。かかる点を無視して、同伸縮とした点が使いづらい手袋となる理由である。
【0122】
そこで、手袋状に本発明の採型材を編上げ、その状態で、装着対象としての手に装着した状態で、掌面に該当する側を少し加熱して硬化させることで伸縮(スパン)を少なくするよう採型して、背面を掌面より伸縮性を高めるようにした。
【0123】
次に、「サポータ」の例について説明する。肘、膝に用いられるサポータは、通常ストレートであり、圧迫を目的としたもののでなくても多くの人に合うように細めに、かつ伸縮力を強めたものに作られている。
【0124】
ニットは、スパンデックスを用いたものであっても、縦方向、横方向いずれか一方の伸長は、他方に対して、スパンを狭め伸縮力を高くすべく制約するように働く性質を持っている。サポータは、周長(横方向)を伸長させながら、引きずるようにして装着する。このため長さ(縦方向)も同時に伸長させて装着することとなり、必要以上の圧迫を受け、かつ屈曲時に力を要する(=拘束)ことになる。
【0125】
圧迫を目的とするものでない肘、膝にサポータを用いた者が、必要以上に圧迫を感じる違和感はかかる装着態様に基づくものである。かかる装着態様が発生する原因は、ニットが特に縦方向にも伸長するようになっていることによる。
【0126】
そこで、採型材15を筒状のサポータ15aに形成して、さらに、肘あるいは膝の屈曲部に相当する採型対象に装着させた採型状態で、図3に示すように、装着時に伸長しないよう肘、または膝の屈曲の内側16を加熱して硬化させることにより、伸縮(スパン)を少なくする採型部を入れることで、解消することができる。
【0127】
上記説明は、屈曲する部位のサポータについてのものであるが、装着において伸長させないように採型部を形成する構成は、サポータの周長と伸縮力の関係を的確にもたらすことができ、他の形状のサポータにおいても有効である。
【0128】
本発明の採型材を「頸椎装具等のサークル状に用いるカバー」に適用した場合について説明する。
【0129】
サークル状の用具に用いられているカバーも、縫製を用いたものと用いないものとを含めて、その殆どが外側と内側とが同伸縮のニット製に構成されている。
【0130】
頸椎装具用のカバーの場合は、顎受けなしの型は細長いストレート状の袋を片端から引き込むように被せる。顎受け付の型は、外側を額縁状に開けた袋を装具の両端に引っ掛けながら引っ張るようにして被せる。
【0131】
いずれの型のカバーも、サークルの弯曲に沿った曲面をもったものではなく、平らな180°によるものであり、被覆は装具の外側のニット生地が歪まないよう両端に引っ張りながら行なければならない。このため、図4に示すように、外側のニット生地17は歪まないが、装具18の内側の身体面に当る生地19の中程が装具18面から離れて浮き上がるようになる。
【0132】
かかるサークル状に対するカバーは、用具に厚みがある場合、用具の厚みの形に添ったマチを取り、内側と外側の寸法を違えた組合せの縫製により形成されているが、しかし、用具に厚みが無い場合には、あるいは少ない場合には、かかる縫製でも弛みが発生しないように使用することは難しい。
【0133】
かかる場合に、本発明に係る採型材において、内側の伸縮(スパン)を低めるように、内側に相当するニット面を加熱して採型を行うと、上記問題の浮き上がりを防止することができる。
【0134】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の採型材を靴下に形成した場合について説明する。我々が用いている靴下は、踵や爪先の成形編によって足形をしているように見えるが、基本的にはストレートな丸編であり、伸縮によって足の形に応ずるようにしたものである。
【0135】
従って、装着は、伸長させた生地の元に戻ろうとする収縮によって止まっているのであり、特に履き口のウエルトにもたせた伸縮によってずれ落ちないように止まっており、靴のように形が固定しているものではない。
【0136】
靴下は今まで文字通り靴のための「伸縮カバー」のように思われ、収縮による圧迫や元に戻ろうとするずれ動きにあまり注意が払われていない。伸縮が弱ければしっくりせず、適度であってもずれ動き、強ければ圧迫するという姿のままであり、靴下のずれが発生して決して履き心地が良くない。
【0137】
本発明品は、足部の動きについて考え、たたんだり丸めたりする従来の布地の概念を変えることなく、採型用のニット面を利用して伸縮(スパン)の変化を入れ、かつ足形に準じた形状値を持たせることによって、かかる問題点を解決するようにしたものである。
【0138】
靴下は、足部の皮膚のような感覚で着用できることが望ましい。足部の外形と同形であることによって圧迫がなく、屈曲しない部分が一定(伸縮しない)であることによって安定し、屈曲部分が適度に伸縮することによって歩行動作に呼応する。尚、足の屈曲部分としては、図5に示すように、足首屈曲部分21と、踏返し屈曲部分22とがある。
【0139】
靴下で気になる点は、ウエルトに持たせた圧迫であり、踵部分が下がるようなずれ動きである。歩行動作の足底踏返し部分の伸長によって、靴下の踵の位置に相当する部分が前方に引き寄せられるのであり、ウエルトに持たせた圧迫はそれを止めるためのものである。
【0140】
例えば、最大屈曲時の足底の長さは静止時の1.06〜1.08倍程であり、25cmの足底を例にすれば、1.5〜2cm程伸長するとも云われている。
【0141】
従って、靴下の足底部の生地が踏返し後方から踵上に添った一定(伸縮しない)の形状値をもつものであれば、ウエルトに伸縮を持たせたとしても特に細い周長(=圧迫)にする必要はない。
【0142】
そこで、本実施の形態の靴下に形成した採型材は、熱可塑性あるいは熱硬化性の樹脂の糸を編み糸として、併せて伸縮性の優れた糸を用いて編上げた。図6に示すように、本発明の採型材23は、足囲・インステップ囲・下腿最小囲の周長バランスを的確にもたせて靴下23aに編上げた。
【0143】
靴下23a(23)では、1)足形に準じた形の置状を持たせ、2)足底の踏返し後方から踵上にいたる部分の伸縮(スパン)を極小さくした。図7(a)、(b)に示すように、図の網点部は2)の採型により伸縮を小さくした部位を示す。図7(c)、(d)では、素材等の制約によって伸縮力が比較的低い場合について、採型により伸縮を小さくする2)の処置を施す部分を網点で示した。
【0144】
尚、図6に示すように、下腿最小囲とは足首の一番細い部分にあたる箇所を指す。下腿最小囲は足囲やインステップ囲と異なり、足長に対しかなり個人差がある。このため、靴下を編上げるための足形形状の値、並びに上記1)の採型における足形モデル値の規格は、最適なものを選定し、併せて、足形基本モデル値に対して下腿最小囲S、M等を考慮することが好ましい。
【0145】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の採型材をファンデーションウエアに適用した場合について説明する。
【0146】
ファンデーションウエアには、フィップやバストアップ等の美容目的の他、胃下垂や下腹部の弛緩を調整する役割を有するものも考えられる。本発明の採型材により加熱させて硬化させることによる採型性は、例えば、フィップアップや胃下垂のウエアであれば、下部の伸縮(スパン)を少なくし、グラデーションを持たせながら、上方への伸縮を活かすウエアを異なる生地を用いずに作製することができる。
【0147】
また、下腹部の弛緩を調整するガードルあるいはウエアであれば、下腹部に当る部分だけ採型を施して伸縮(スパン)を少なくしたり、あるいは無くすようにすることが可能である。
【0148】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の採型材を容器に密着被覆させることができる保温カバーに適用する場合について説明する。
【0149】
適度な大きさの冷酒や熱燗、あるいは冷やしたワインやシャンパンを、原産の芳りの雰囲気のまま、断熱性の繊維の柔らかいニットに包まれて差し出すことができる。本発明の採型材では、このように酒のビンに用いる保温用のカバーとして形成することができる。
【0150】
かかるカバーは、例えば、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂の糸の編み糸と、伸縮性の優れた糸とを用い、丸編によってビン容器を形取った筒に編上げる。編上げは容器よりいく回りか細めに、且つ上方をさらに細めるようにする。編上げ後、同じく細めに採型対象であるビン容器を形取った成形器具に、器具の底にいくセンチかはみ出るようにして被せ、その部分のニット面を加熱して硬化させることにより採型を加える。
【0151】
かかる採型により、器具の底に当る中心付近の部分の伸縮(スパン)をごく少なくさせることができる。また、必要により上方の細めた部分の伸縮(スパン)を適度に少なくさせてもよい。
【0152】
このようにカバー31aに適宜採型部32を設けることにより、図8(a)、(b)に示すように、カバー31aに形成した採型材31の底の部分は被覆においてビン容器の底部に定着する状態になり、容器をつかんでも側面にずれ上がることはない。カバー31aには、様々な素材の糸や色糸を用いたり、編込みにおいて多色使いの絵やマークあるいは文字を入れたりして意匠面の工夫を自在に施すことができる。勿論、転写によりプリントを施すこともできる。
【0153】
同じく保温用のカバー33aとして、フラワーポットに適用することもできる。フラワーポットはプラスチック製品が多く用いられているが、昨今の製品は厚さがなく暑さ寒さに対する断熱性に欠け、また汚れが落ちにくい欠点があり爽やかで身近に感じた植物をいつからか何か色あせたように見せてしまう。
【0154】
ポットへのカバー33aの使用は、断熱性を補い、且つ布地の柔らかな雰囲気が植物の姿を引き立てることで親しみをも補う効果がある。
【0155】
かかるカバー33aに形成した発明の採型材33は、上記のビン容器の態様と変わらないが、上方は細くせず、被覆においてポットの上縁にややはみ出るような長さに編上げておけばよい。
【0156】
このはみ出る長さは被覆において調節できるものであるが、被覆においてはみ出ることができない長さであってはならない。このはみ出る部分34は、被覆状においてポットの上縁で内側に水平に折れるようになり、図8(b)に示すように、下方へのずれ止めとともに、ポットの水差において外への水や泥の跳ね除けをはたすものになる。
【0157】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の採型材を靴に適用した場合について説明する。靴と靴下は同じ履物であるが、物的な通念としては、靴が固形的な物、靴下が固形的でない柔らかな足に添うものととらえられている。固形的であるかは、そのものが自らの体積を支える応力をもつかであるが、一般的に、足を入れるのが靴であり、取り上げて足を入れるのが靴下と考えられている。
【0158】
本発明の採型材を靴に適用したニット品は、かかる従来の靴のイメージとは異なるもので、主な特徴は、本体の軽量さ、縫製のない製作、足背足底等の接点の足形に沿った形状性にある。
【0159】
すなわち、従来の靴35では、中に入れた足36と靴35との間に、例えば、踵部に、図9(a)に示すように、小さな空隙37が発生するが、本発明の採型材38を靴38aに形成することで、足36の形に沿って採型した状態の靴38aが形成できるので、図9(b)に示すように、足の曲線に沿ったRを有して、不要な空隙37の発生しない靴38aが提供できる。
【0160】
例えば、かかる構成の靴を「軽シューズ」として形成した場合について説明する。熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂の糸の編み糸と伸縮力の高い糸とを用い、図10(a)に示すように、ウエルトのヘリが踝下の靴状の靴下41aに採型材41を編上げ、図10(b)、(c)に示すように、採型対象に合わせた成形型42に履かせた状態で、ニット面を加熱して足形の置状にする。
【0161】
図11には、同様にして形成した別形状の軽シューズの例を示すが、かかる図11の網点部に示すと同様に、足背の楔状骨に当る部分を除く生地の全体の採型を行って、伸縮(スパン)を無くして腰(張り)を持たせる。
【0162】
足背の楔状骨に当る部分は着脱時に伸縮をはたすもので、その境はグラデーションにしておけば、すなわち段々と硬くなるように硬化させておけば、装着時の座りがよい。
【0163】
編上げる「靴下」に上糸と下糸を持たせることにより、柔らかな、あるいは意図する材質を装着の内面に設けることができる。このようにして形成された靴は、ニット製であることから通気性があり、室内に適した履物としての新しい製品姿を提案するものとなる。
【0164】
本発明の採型材を「軽シューズの足底にゴム系材をもたせた履物」に形成した場合について説明する。すなわち、この場合は、軽シューズの足底にゴム系材を塗布あるいは貼ることによって、軽量さをもたせた学校、病院、作業場の上履、あるいは形状性(装着性)をもたせた舞踊やスポーツ用の靴に活かすことができる。
【0165】
あるいは、本発明の採型材を「軽シューズの足底に整形補綴を施した履物」として適用することもできる。すなわち、軽シューズの足底の内側あるいは外側に足部の補綴材を施すことにより、形状性(装着性)を持たせた装具あるいはリハビリ用の履物に活かすことができる。
【0166】
さらには、「水除けの履物」としての応用例も考えられる。熱可塑性あるいは熱硬化性の樹脂の糸を編み糸として用いた通常よりやや長め(踵よりウエルトへりまでの長さ)の「靴下」を、装着対象を象った成形型等に装着させた状態で、ニット面を加熱して硬化させることによりやや大きめの足形の置状にし、伸縮(スパン)を無くし、腰(張り)をもたせ、後に外側全体にゴム系材をディッピングする。
【0167】
採型に際しては、「靴下」のウエルト部分10cmほどを除くようにし伸縮がある「靴下」編上げ状のままとする。ディッピング厚は薄目でよく、「靴下」編上げ状のウエルト部分にも施すようにする。
【0168】
「靴下」は上糸下糸により内側を柔らかな材質にしてもよい。以上により、外側に防水をもたせた履物になる。通常の長靴のようであるが、軽量で履口に伸縮を持たせて水跳ねを避けるようにしてある。浴室の手入れ等の折りに用いることができる他、水作業や洗車時の水除け履き、寒冷地における長靴の内履きに用いる等、新しい姿の履物の提案となる。
【0169】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の採型材を、医療、保健目的を果たすためのサポーター用品に適用する場合について説明する。
【0170】
腰痛症に対する整形外科の治療は、「腰部を引き締めることによって骨盤を安定させ、腹圧を高め、脊椎の支持力をカバーする」としている。ここでいう腰部を「引き締める」の意味は、いわゆるビンディングという固定をともなった引き締めであり、ゴムのようなさらに伸長する状態の引き締めではない。しかし、腰痛用を謳った市販の現状品は、殆ど単なる伸縮によるものである。
【0171】
同様に、乳癌や子宮癌等の手術でリンパ節を切除したために手足がむくむリンパ浮腫や、静脈瘤、あるいは高齢者の歩行促進等にもストッキング状の伸縮サポータが用いられているが、これらもゴムのようなさらに伸長するだけの製品であり、適切な処置を必ずしも満たしているとは言えない。
【0172】
かかる構成の従来品は、適度な伸縮(スパン)の或る範囲を利用したものである。従って、強い伸縮を有するものであっても患部の肥大や突出の抑止を支えるものではない。また、強い伸縮により必要以上に装着内部を締めつけるようにさせなければならないものになる。
【0173】
医療、保健のためのサポータは意図する周長の伸縮範囲(MAX:伸長停止点、MIN:装着前周長)をもたらすことができるものでなければならない。医療、保健関係者はそのことが可能であることによって適切な伸縮(伸長力)のあり様が検討できるのであり、各症状、情況に有効かつ適切な処置を考え出すことができる。
【0174】
そこで、本発明のニット面の採型性を活かすことにより、サポーターにかかる本来の意図する周長の伸縮範囲をもたらすようにした。
【0175】
セータ等は通常一種の糸で編込まれるが、靴下やサポータ等装着のフィット性を要するものは、引張りに対する回復性を高めるため、主糸にスパンデックス等の伸縮性の糸を補糸(地糸とも言う)を添えて編込むようにしている。
【0176】
通常の主糸だけの編物の伸縮は形状的なものであり、編密度を高める程伸縮(スパン)が狭くなる。サポータの周長のMAXは、この主糸の編込み密度による伸長限界によって設定するようにする。ただしこの場合は、編上げが後記のMINより広くならない範囲のMINに近い周長になるように設定する。
【0177】
MINは補糸に熱可塑性のゴム系の糸を用いることにより採型により設定する。採型は、MINに伸長させた状態を置状(外力が加わらない状態)にすることであり、置状を型取った平らなアルミ板に以上の編上げ状を被せ圧力槽によって加熱するが、アルミ板は槽内で加熱後に置状に拡がるようにする。
【0178】
その他、主糸の部分に熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の糸を用いてMINに編上げ、その状態に採型を加えMAXの伸長を組込むことによって同様の状態を現出することができる。この場合の採型も平らなアルミ板による圧力槽によることとなるが、アルミ板はMINに編上げた形のままでもよい。
【0179】
かかるサポーターは、主糸と補糸が生地面に共に出る混用、下糸、上糸(生地における内面と外面)に分ける二重編、補糸を中間に主糸を両側に用いる三重編、三重編の主糸質を異素材にする等の編み方で作ることができる。
【0180】
(実施の形態10)
実施の形態9までに例示した本発明に係る採型材の適用例は、採型対象に高フィットした状態のニット面に、加熱によりニット面を装着対象への自在着脱可能な程度に硬化させて伸縮性を幾分低下させるものであったが、本発明の採型材は、採型する目的ではなく、装着対象を外力から保護することができる程度に剛性が得られるまでニット面を固化させるようにして使用できることに、本発明者は気付いた。これは、実施の形態9までに説明した採型材としての使用とは異なる使用態様と言える。
【0181】
前記実施の形態9までの使用態様では、採型材をそのまま着用することができるようにするために、ニット面の採型に際しては、ニット面の完全固化を図ることなく、すなわち、採型対象への自在着脱が可能な硬度の範囲で硬化させることにより、着たり、脱いだりが通常の衣類等と同様に行えるように配慮していた。
【0182】
しかし、前記実施の形態1でも説明したように、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂であっても、熱の加え方では、完全に固化させて外力が内部に及ばないように保護することができる程度に剛性を上げることができるが、本実施の形態では、かかる特徴を活かした使用態様である。
【0183】
本実施の形態の具体的適用例としては、例えば、捻挫、骨折等治療の固定に用いる他、外科手術後回復の安定、救急現場の応急、骨粗鬆症や関節疲労へのガード、あるいは打撲や損傷を受け易い部位の保護等の所謂プロテクターとしての使用形態が挙げられる。
【0184】
製品は、丸編によって手や足に用いるものであれば、手袋や靴下のように、膝や胴体に用いるものであれば筒型のサポータ状に、一品につき通常糸によって二点、熱可塑性樹脂の糸によって一点(必要により複数枚)を同じ形に編上げる。
【0185】
通常糸による編は、身体に用いるものであれば、肌に当たりがよい、かつ断熱のよい、上述の熱可塑性樹脂の糸より熱的性質の高い素材を用い、必要により装着におけるフィット性を高めるようウーリー糸やスパンデックス等の伸縮糸を地糸として用いる。
【0186】
熱可塑性樹脂の糸の編は低融点によるものを用いるが、いずれの場合もウエルト部分(筒型のサポータ状の場合は両口)は通常の糸によるゴム編、またはスパンデックス糸等に差し替える。
【0187】
また、かかる構成のプロテクターにおけるフィット性をより高くするためには、上述の通常糸による編と同じようにスパンデックス等の伸縮糸を地糸に用いればよい。
【0188】
このようにして編上げた三点を、熱可塑性樹脂の糸の編を中間に三層に重ね合わせ、ウエルト部分(筒型のサポータ状の場合は両口)をリンキング等によって一体の製品になるようにまとめればよい。この場合、製品が長すぎるもの、あるいは巾が広すぎるものについては、必要な箇所にゴム系糸で止め縫いを施してもよい。また、三層がずれ動かない程度に接着させるような熱を加えてもよい。
【0189】
かかるプロテクターは、固化に必要な硬度あるいは強度は主として熱可塑性樹脂の糸の性質により得られるが、同じ性質の糸を用いた場合には、編み生地の密度や厚さを調節することにプロテクターの強度調節をある程度行うこともできる。すなわち、熱可塑性樹脂の繊維糸の編を必要に応じて複数枚使用することによって対応すればよい。
【0190】
かかるプロテクターを用いる際には、骨折部等の固定保護を行う必要がある被装着部にニットを装着させた状態で、ニット面を加熱して固化する必要があるが、かかる加熱温度は、体感温度として耐え得る程度のものでなければならない。
【0191】
実施の形態9までの採型材としての使用形態では、人体あるいはその一部が採型対象であっても、その採型対象に合わせた成形型を別に作製する等して、必ずしも直接人体に装着させた状態での採型が必要な場合だけではなかったが、本実施の形態では、人体に装着させた状態で固定する必要があるため、人体装着での加熱が必須となり、前記実施の形態とは異なる温度対応が求められる。
【0192】
従って、本実施の形態の使用態様に用いる熱可塑性樹脂の糸では、その融点は低融点であることが好ましい。例えば、100℃以下の低融点であればよい。より好ましくは80℃以下で、かかる温度であれば被装着部に耐え難い程の影響を与えずに加熱処理でニット面の固化が行える。
【0193】
かかる低融点の糸は、従来は、強度がないため織布、編物の糸として使用されてはいなかったが、本実施の形態では敢えてかかる低融点の糸を使用することが求められる。因みに、現在、衣類等の人体に着用するものに使用されている合成繊維、化学繊維等の糸は100℃を超える融点を有するものが殆どであり、本実施の形態のプロテクターには使用しにくい。
【0194】
敢えて使用する場合には、被装着部へ予め断熱目的で、ソックスあるいはサポータ等を着用した上に本発明のプロテクターを使用することとなる。
【0195】
尚、使用する熱可塑性樹脂の繊維糸の編に加える加熱に際して、その被装着部への温度の影響を少なくするために、使用する熱可塑性樹脂の糸として低融点のものを選択することと併せて、前記説明のように三層の内側に挟み込む使用形態が好ましい。勿論、十分に低融点であれば、直接肌に触れる状態で製品使用を考えても構わない。
【0196】
三層の通常糸の編の二点の内、外側に用いるものについては、装着において製品がフィットするように高い伸縮性をもたすようにする。内側の身体面に用いるものについては、製品用途に応じ、抗菌性やパイル編等の素材の編組織の工夫を施すことができる。
【0197】
かかる構成のプロテクターは、筒状あるいは袋状に形成しておき、例えば、腕の骨折部を筒状のプロテクターに通したり、あるいは足や手の指の骨折等で靴下や手袋等の袋状に形成したプロテクターに足や手を通し、その状態でニット面を加熱して完全に固化させればよい。
【0198】
高フィットに装着された状態でそのまま固化させることでプロテクターが形成されるため、患部とプロテクターとの間に不要な空間が形成されず、ガタが発生せず固定を要する患部を保護することができる。
【0199】
一方、患部に通したプロテクターは、固化された状態でもニット面には編み目の空隙が残されているので、通気性が確保され、石膏固定や熱可塑性樹脂シート等を用いた固定に比べて患部の蒸れが発生しない。
【0200】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて変更してもよい。
【0201】
【発明の効果】
本発明の採型材は、ニットの有する形状順応性を利用して採型する構成を有するため、石膏を用いる場合に比べて格段に短時間に、容易に採型を行うことができる。
【0202】
採型は、採型対象に被着させで形状順応しているニット面を、加熱してその形状保持をおこなえばよいため、衣料として構成した採型材の一部を加熱により採型してニット特有の着崩れやくずつき等の着心地の問題点を解消した製品とすることができる。
【0203】
採型に際して形状保持が行われるニット面は、加熱により硬化したり、あるいは溶着してその後に硬化したりする糸を編み糸として編んで形成されているため、硬化した状態でも編み目の空隙は確保され、石膏や熱可塑性樹脂板等を用いた採型とは異なり、通気性を確保した状態での採型が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の採型材をキャッチピン式ソケット間のカバーに適用した場合を示す正面図である。
【図2】本発明の採型材をX脚、O脚等足底調節装具ホルダーに適用した場合を示す断面説明図である。
【図3】本発明の採型材をサポーターに適用した場合を示す説明図である。
【図4】180°内の屈曲もしくは弯曲を要する従来のカバーの着用状態を示す部分説明図である。
【図5】足の屈曲部分を示す説明図である。
【図6】本発明の採型材を靴下に適用した場合を示す説明図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の採型材を靴下に適用した場合に、伸縮を小さくする部分を網点で示した説明図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の採型材を、容器、フラワーポットのカバーに適用した場合を示す説明図である。
【図9】(a)は従来の靴と足との関係を示す説明図であり、(b)は本発明の採型材を適用した靴と足との関係を示す説明図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の採型材を靴下状の軽シューズに適用する場合の各工程を示す説明図である。
【図11】軽シューズに構成した場合の採型により伸縮を少なくする部分を網点で示す説明図である。
【符号の説明】
10 採型材
10a カバー
10b カバー先端部
12 採型材
12a ホルダー
13 足底板
13a 高さをもたせた部分
15 採型材
15a サポータ
16 内側
17 ニット生地
18 装具
19 生地
21 足首屈曲部分
22 踏み返し屈曲部分
23 採型材
23a 靴下
31 採型材
31a カバー
32 採型部
33 採型材
33a カバー
34 はみ出る部分
35 靴
36 足
37 空隙
38 採型材
38a 靴
41 採型材
41a 靴下
42 成形型

Claims (5)

  1. 採型対象に装着させた状態で、加熱により硬化させられる糸を編み糸として編んでなる採型用のニット面を有することを特徴とする採型材。
  2. 請求項1記載の採型材において、
    前記ニット面では、採型可能な状態の未採型部分に、硬化させられた既採型部分が混在させられていることを特徴とする採型材。
  3. 請求項1または2記載の採型材において、
    前記糸は、熱可塑性樹脂の糸であることを特徴とする採型材。
  4. 請求項1または2記載の採型材において、
    前記糸は、熱硬化性樹脂の糸であることを特徴とする採型材。
  5. 加熱により硬化させられる糸を編み糸として編んでなるニット面を採型対象に装着させた状態で、前記ニット面を加熱により硬化させて採型することを特徴とする採型方法。
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