JP2004339394A - インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセット - Google Patents
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Abstract
【課題】得られるモノトーン濃淡画像が、全体に黄色味を帯びたものとならず、光透過媒体におけるインク付与部と非付与部との間で滑らかな階調性を達成し、画像の擬似輪郭防止に有効なインクジェット記録用インクの提供。
【解決手段】同一の色相を有し、互いに色材濃度が異なる3種のインクを含むインク群と共に、光透過媒体に多階調画像を記録する際に用いられる染料を含むインクジェット記録用インクであって、上記インク群を構成する各インクの色相とは異なる色相を有し、且つインクジェット方式で100%のデューティで光透過媒体にインクを付与したときの、該光透過媒体におけるインク付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差(ΔC*)が、式(I)を満たすインク: ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦5 式(I)。
【選択図】 なし
【解決手段】同一の色相を有し、互いに色材濃度が異なる3種のインクを含むインク群と共に、光透過媒体に多階調画像を記録する際に用いられる染料を含むインクジェット記録用インクであって、上記インク群を構成する各インクの色相とは異なる色相を有し、且つインクジェット方式で100%のデューティで光透過媒体にインクを付与したときの、該光透過媒体におけるインク付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差(ΔC*)が、式(I)を満たすインク: ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦5 式(I)。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高階調性が要求されるシステム、例えば、医療分野での診断用及び参照画像等のモノクロ濃淡透過画像に好適に利用可能な、インクジェット記録用インク、画像形成方法、及びインクジェット記録用インクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医療分野における、レントゲン写真等の診断画像や、その参照画像のハードコピーを得る方式としては、現像液による現像工程を含むウェット処理方式による銀塩写真が主流である。しかしながら、ウェット処理方式では現像処理過程で廃液が生じるため、その廃液の回収や減量、更には、その再資源化が課題となっている。そのため、近年では、ウェット処理方式から現像工程が不要であるドライ処理へのニーズの高まりが顕著となり、レーザー露光熱現像方式やサーマルヘッド方式、レーザーヒートモード方式といったドライ処理の方式が急速に普及してきている。
【0003】
一方、近年のインクジェット記録方式の進歩は著しく、高精細の画像が得られるに至っている。かかる高精細の画像は、インクジェットのプリンター、インク及び記録紙、のそれぞれの技術発展により達成されてきている。例えば、インクジェットプリンターヘッドの進歩によるインク滴の微細化、精密なインク滴の吐出によるインク滴の記録紙への着弾精度の向上、インクの物性及び光学特性の改良によるドットの広がりや形状、色や濃度の改良、更には、記録紙の進歩によるインクのにじみ防止、等によってインクジェットプリント方式の画質は改良されてきている。
【0004】
かかるインクジェット記録方式の進歩に伴い、近年では、前記した医療分野におけるレントゲン写真等の診断画像や参照画像のハードコピーに、インクジェット記録方式を利用することについての提案が数多くなされている。例えば、インク受容層の白濁現象を緩和するために、複数のインクを組み合わせたインクセットにおいて、インク中に含まれる溶剤の含有量を当該インクの色材濃度に比例して変化させ、即ち、色材濃度の薄い淡インクほど溶剤量を低減させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該公報にも記載されているように、医療分野では、診断画像や参照画像を利用する特殊な形態として、シャウカステンといわれるバックライトでレントゲン写真等の画像を明るく照らし、透過画像により患部の診断をすることが行なわれている。このような透過画像の場合は、一般的なインクジェット印字物のように反射光で観察するものよりも、画像のザラツキや粒状性、色調の階調性の不良等が、より顕著に現れやすい。特に、医療分野における診断画像や参照画像については、その性格上、ハイライト部の高い階調性が要求される。
【0005】
一方、医療用の診断画像や参照画像に使用される記録媒体には、従来のウェット処理方式の時代から、好ましいものとして、基材自体が青色の、透光性の記録媒体(以下、光透過媒体という)であるブルーベースフィルムが広く用いられている。そのため、出力される画像も全体的に青味がかったモノクロ濃淡画像が好まれている。これに対して、例えば、色材濃度の異なる複数のブラックインクからなる階調表現用の濃淡インクと、色相を調整するための色相調整用インクとをセットにして用いることについての提案がある(例えば、特許文献2及び3参照)。又、二種類以上の濃度の異なるブラックインクと、色材を含まないインクとをセットにして用いることについての提案がある(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
本発明者らは、色材濃度の異なる同一色相の複数のインクからなる濃淡インクを用いて階調表現したモノトーン濃淡画像の画質について、特に、3種類以上の濃度の異なるブラックインクを用い、青色の色調を有している光透過媒体(ブルーベースフィルム)にインクジェット記録方式で画像を形成した場合に、従来より銀塩写真として提供されている医療用の診断画像や参照画像に代替できる良好なモノクロ濃淡画像を得ることについて鋭意検討した結果、下記の課題があることを見出した。
【0007】
先ず、色材濃度の異なる濃淡インクのうち、色材量が最も少ない極淡インク(以下、極淡インクという)は、通常の階調表現の他に、画像に擬似輪郭ができることを防止する目的等でも用いられるため、画像形成部の広範囲にわたって使用されるケースが多く、この極淡インクの色相が、記録画像全体に与える影響が極めて大きいことが判明し、極淡インクを改良することが重要であるとの結論を得た。例えば、色材濃度が異なる3種類以上の濃淡インクを用いて画像を形成する場合に、極淡インクとして、色材濃度の濃いインクの色材量だけを単純に低減したインクを用いると、インクが付与されていない光透過媒体の非印字部の色相と比べて、CIELAB空間におけるb*値がプラスの方向、即ち、黄色い方向へ色相が大きくシフトすることがあった。この場合には、得られる画像が、全体に黄色味がかり、特に、光透過媒体のインクが付与されていない非印字部から低濃度域の階調性が劣った印象を与えるものとなる。
【0008】
又、この極淡インクの代わりに、使用する濃淡インクから色材を除いた、色材を全く含まない液体組成物(以下、クリアインクという)を用いても、同様な現象が起こることがあった。更に、このシフトする度合いは、色材濃度が薄い程、より顕著であった。そして、モノトーンの濃淡画像の形成に、このような極淡インクを用いると、記録画像全体が黄色味がかったものとなり、特に、モノクロ濃淡画像からなる医療用の診断画像や参照画像においては、その高い要求を十分に満足できるものではなく、改良の余地があった。更に、特にこの傾向は、画像を形成するための光透過媒体が、青色の色調を有する透光性基材上にインク受容層が形成されている媒体である場合に顕著であることがわかった。詳細は明らかではないが、これは、インク中の溶剤が光透過媒体中に残存した状態で透過画像を観察した場合、光透過媒体のインク受容層内部が非印字部に比べてより不均一な状態となっているため、可視域の光の散乱が特に短波長側で顕著になり、この結果、透過画像が黄色味を帯びたものになったと思われる。更に、詳細に検討した結果、上記した現象は、インク中に、蒸発し難い溶剤が添加されている場合に顕著になることもわかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−277510号公報
【特許文献2】
特開平11−61019号公報
【特許文献3】
特開2003−39712号公報
【特許文献4】
特開2001−270217号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、インク中に含有させる溶剤量や溶剤種に対する制約が少なく、インクの構成材料に対する選択の余地が広く、該インクを用いることで、得られるモノトーン濃淡画像が全体に黄色味を帯びたものとならず、且つ、光透過媒体における、インクの付与部と、インクの非付与部との間で滑らかな階調性を達成し、画像の擬似輪郭防止に有効な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットを提供することである。本発明の目的は、特に、医療分野で、診断用及び参照画像等として用いられているモノクロ濃淡透過画像を提供するシステムに好適な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明の一実施態様によれば、[1]同一の色相を有し、互いに色材濃度が異なっている少なくとも3種のインクを含んでいるインクジェット記録用インク群と共に光透過媒体に多階調のインクジェット画像を記録するのに用いられる、色材として染料を含んでいるインクジェット記録用インクであって、該インクジェット記録用インクは、前記インクジェット記録用インク群を構成している各インクが有している色相とは異なる色相を有し、且つインクジェット記録方式で、体積4〜5plの滴として解像度1,200dpi、100%のデューティで該光透過媒体に付与したときの、該光透過媒体におけるインク付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差(ΔC*)が、下記式(I)を満たす関係を有するものであることを特徴とするインクジェット記録用インクが提供される:
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦5 式(I)。
【0012】
又、上記したインクの好ましい形態は、[2]上記彩度の差(ΔC*)が、下記式(II)を満たす関係を有する上記[1]のインクジェット記録用インクである:
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦3 式(II)。
【0013】
[3]本発明の別の実施形態は、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを第一のインク群とし、該インク群から選ばれる少なくとも1つのインクをインクジェット方式により光透過媒体に付与する工程と、上記インク群を構成している各インクとは色相の異なる第二のインクをインクジェット方式により上記光透過媒体に付与する工程とを有する画像形成方法であって、上記第二のインクとして、上記[1]又は[2]のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とする画像形成方法である。又、上記した画像形成方法の好ましい形態は、[4]上記光透過媒体が、青色の色調を有している透光性基材上にインク受容層が配置された青色の色調を有する光透過媒体である画像形成方法である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、[5]インクジェット記録に用いられるインクセットであって、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを独立に有してなる第一のインク群と、該第一のインク群を構成している各インクとは色相の異なる第二のインクとをそれぞれ独立に有してなり、且つ上記第二のインクが、前記[1]又は[2]のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクセットである。
【0015】
尚、上記した各構成における同一色相とは、インクが、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、レッド色、グリーン色、ブルー色という分類において、実質的に同じ分類の色であることを意味する。更に、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクとは、3種類以上の濃淡インクであることを意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、色材濃度の異なる、同一の色相を有する3種類以上の濃淡インク(第一のインク群)とは別に、極淡インクとして、濃淡インクとは別の色相のインクを用い、更に、該極淡インクの色材の濃度や溶剤等の構成を、画像を形成する際に用いる光透過媒体、好ましくは、青色の色調を有している光透過媒体における非印字部の彩度と、該光透過媒体に極淡インクを付与した印字部(付与部)の彩度との差ΔC*が、5以下であるように調整したものを用いれば、濃淡インクを用いて形成したモノクロ濃淡画像の色相が全体に黄色味がかることがなく、特に、光透過媒体のインクが付与されていない非印字部(非付与部)から低濃度域の階調性が良好で、医療用の診断画像や参照画像として実用上問題なく使用することができる画像が得られることを見出して本発明に至った。更に、好ましくは、上記彩度の差ΔC*が、3以下となるように構成すれば、医療用の診断画像や参照画像として、より満足のいく画質の画像形成が可能となることがわかった。
【0017】
本発明を特徴づける極淡インク、及び画像形成の際に該極淡インクとともに用いる濃淡インクの構成材料について説明する。これらのインクを構成する色材としては、例えば、水溶性の染料及び水分散性の顔料が好ましく用いられる。水溶性の染料としては、直接染料、酸性染料、反応性染料、塩基性染料のいずれも用いることができる。又、カラーインデックスに記載のないものでも、水溶性染料であれば使用することができる。
【0018】
直接染料の一例としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同71、同86、同106、同199等が挙げられる。
【0019】
酸性染料の一例としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドイエロー7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同265、同276、同289、C.I.アシッドバイオレット15、同17、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同103、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27等が挙げられる。
【0020】
塩基性染料の一例としては、C.I.ベーシックブラック2、同8、C.I.ベーシックイエロー1、同2、同21、C.I.ベーシックオレンジ2、同14、同32、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同14、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、C.I.ベーシックブラウン12、C.I.アシッドブルー3、同26、C.I.ベーシックグリーン49等が挙げられる。
【0021】
反応性染料の一例としては、C.I.リアクティブイエロー2、15、37、42、76、95、C.I.リアクティブレッド21、22、24、33、45、111、112、114、180、218、226、C.I.リアクティブブルー15、19、21、38、49、72、77、176、203、220、C.I.リアクティブブラック5、8、31、39等が挙げられる。
【0022】
本発明で使用できる顔料の例としては、ブラックインクについては、カーボンブラックが好適に使用される。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品や、別途新たに調製されたものも使用することができる。
【0023】
カラーインクに用いる顔料としては、有機顔料が好ましく用いられる。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が例示できる。
【0024】
又、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64
C.I.ピグメントグリーン7、36
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0025】
本発明に用いることのできる顔料は、上記に列挙したものの中から適宜に選択して使用することができるが、自己分散性のものでも、或いは水溶性樹脂等からなる分散剤の吸着により分散する樹脂分散性のもの等、いずれのものでも使用できる。
【0026】
顔料の分散剤としては、水溶性樹脂ならどのようなものでも使用することができる。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(但し、このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。
【0027】
本発明にかかる画像形成方法は、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを第一のインク群とし、これらから選ばれる少なくとも1つのインクをインクジェット方式により青色の色調を有している光透過媒体に付与する工程と、上記第一のインク群とは色相の異なる第二のインクをインクジェット方式により上記光透過媒体に付与する工程とを有するが、医療用のX線診断画像や参照画像等の出力に用いる場合には、モノクロ濃淡画像の形成を目的とするため、上記第一のインク群としてブラック色の3種類以上の濃淡インクを用いることが好ましい。更に、本発明にかかる画像形成方法では、上記第二のインクとして、この第一のインク群とは色相の異なるインクを用いるが、かかる第二のインクの構成を決定する場合に、光透過媒体における、該第二のインクの印字部と、非印字部とのそれぞれの色相を測色し、その彩度の差(ΔC*)が下記の関係を満足するものとする。即ち、本発明者らの検討によれば、下記式(I)、更に好ましくは、下記式(II)を満たす、上記第一のインク群と色相の異なる極淡インクを第二のインクとして用いることで、得られるモノトーン画像の色調を良好な状態に制御できることがわかった。かかる構成とした場合に、良好な画像の階調性を達成でき、擬似輪郭を防止した画像が得られる。
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2≦5 式(I)
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2≦3 式(II)
【0028】
先に述べたように、本発明における同一色相とは、インクが、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、レッド色、グリーン色、ブルー色という分類において実質的に同じ分類の色であることを意味するが、本発明にかかる画像形成方法では、これらの色からなる、色材濃度が異なる3種類以上のインク(以下、濃淡インクという)を用いて光透過媒体に画像を形成する。
【0029】
本発明者らの検討によれば、その際に、高階調性を表現することを可能とする上では、特に、下記のように調整された濃淡インクを使用すること好ましい。即ち、色材量の多いインクから順に色材量をA1、A2、A3、…A(n−1)、Anとしたとき、2種類のインクの色材量の比An/A(n−1)が、0.1〜0.7、更には0.2〜0.6の範囲になるものを使用することが好ましい。
【0030】
又、本発明にかかる画像形成方法において、上記したような濃淡インクとともに用いる第二のインクである極淡インクにおける好ましい色材量は、多い場合には、単位面積あたりのインクの打ち込み量を減らすことで使用可能であるが、例えば、質量基準で、インク中に、0.01〜0.8%、更には0.05〜0.5%の範囲とすることが好ましい。色材量が0.01%よりも少ない場合には、実質的にクリアインクになってしまうため、濃淡インクと色相の異なる極淡インクを併用することで達成される本発明の効果を得ることが難しくなる。
【0031】
本発明にかかる画像形成方法を実現するために、インクジェットプリンタ本体に、この第二のインクである極淡インク(以下、極淡インクという)を搭載する方法としては、下記の方法が挙げられる。第一のインク群である濃淡インク(以下、濃淡インクという)が充填されたタンクのどれか1つのタンクと、極淡インクが充填されたタンクとを交換して使用してもよいし、極淡インクが、別途、吐出する専用のヘッドを設けてもよい。更に、極淡インクを印字して色調を調整する必要がない場合には、極淡インクを印字しないシーケンスをプリンタ本体に設けておけばよい。このようにすることで様々な種類の媒体に対応可能である。
【0032】
又、本発明にかかる画像形成方法に用いられる第一のインク群、及び第二のインクは、先に説明したような色材と、該色材を溶解或いは分散するための水性液媒体とからなるが、インクジェット記録方式に適用する場合の、ノズルの目詰まり防止や吐出信頼性の点で、水性液媒体中に、下記に挙げるような溶剤を含有させることが好ましい。
【0033】
具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の水溶性有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0034】
更に、上記に列挙した溶剤以外のものとして、トリメチロールプロパン、尿素、エチレン尿素等の、常温で固体の物質を含有させてもよい。本発明においては、上記のような常温で固体の物質も含めて、インク中に含有させる溶剤と呼ぶ。
【0035】
本発明で用いる第一のインク群である濃淡インク、及び第二のインクである極淡インクは、いずれもインクジェット記録用であり、ノズルの目詰まり防止や、吐出安定性の観点から、インク中の溶剤量を、質量基準で、10〜50%、更には15〜35%程度とすることが好ましい。又、本発明においては、例えば、インク吐出性や吸引回復性の点で、第一及び第二のインクの粘度を略等しくする必要が生じた場合には、各インクの構成材料である、この溶剤種や溶剤量を適宜に調整することで対応可能である。
【0036】
又、第一のインク群を構成している各インク及び第二のインクを構成している成分の一つとして好適に用いられる水としては、脱イオン水を使用することが望ましい。インクに含有される水の含有量はインク全量に対して、質量基準で、50〜95%の範囲とすることが好ましい。
【0037】
更に、本発明で用いる第一のインク群を構成している各インク及び第二のインクには、上記で説明した成分の他に、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加しても構わない。
【0038】
本発明にかかる画像形成方法は、上記で説明した構成を有する第一のインク群に含まれる濃淡インクをインクジェット方式により青色の色調を有している光透過媒体に付与する工程と、該第一のインク群とは色相の異なる極淡インクを第二のインクとしてインクジェット方式により光透過媒体に付与する工程とを有するが、該光透過媒体としては、支持体である透光性基材上に、シリカ又はアルミナ等から構成される多孔質のインク受容層を構成しているものを使用することが好ましい。インク受容層としてアルミナを使用している光透過媒体の例としては、例えば、特開平02−276670号公報が挙げられる。又、インク受容層としてシリカを用いている例としては、特開2001−150803公報が挙げられる。本発明は、青色の透光性基材上に多孔質タイプのインク受容層をもつ光透過媒体に対して記録する場合に、特に効果が発揮される。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、必ずしもこれに限られるものではない。尚、以下で用いる%は、特に断りのない限り質量%を表すものである。
【0040】
<第一のインク群(濃淡ブラックインク(1)〜(3))の調製>
同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上の濃淡インクとして、下記の各組成を有する色材濃度の異なる3種類のブラックインク(1)〜(3)を調製した。尚、下記のアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物としては、アセチレノールEH(商品名:川研ファインケミカル社製)を使用し、又、インクの全量は、水で調整して100とした。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
<第二のインク(極淡インク(1)〜(3))の調製>
第二のインクとして、以下の各組成を有する、上記した第一のインク群とは色相の異なる極淡インク(1)〜(3)を調製した。尚、下記のアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物としては、アセチレノールEH(商品名:川研ファインケミカル社製)を使用し、又、インクの全量は、水で調整して100とした。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
<クリアインクの調製>
上記第二のインクの組成から色材を除き、イオン交換水に置き換えて、クリアインクを調製した。
【0049】
<光透過媒体の作成>
予め青色に着色した、厚さ175μmのポリエステル製の透明基材を用い、該基材の両面に、コロナ放電処理を行った。そして、以下に示す組成を有する塗布液を用いて、基材の片面にインク受容層を形成した。尚、このフィルムのCIELAB色空間で表されるLab値はL*=77、a*=−7、b*=−1であった。
【0050】
[塗布液の組成]
・スノーテックスPS−M(日産化学製、球状コロイ
ダルシリカ分散液、固形分20.5%) 1kg
・ポリビニルアルコール10%水溶液(クラレ製、P
VA−235) 200g
先ず、上記成分をスターラー上で攪拌・混合した。その後、これに5%ホウ酸水溶液を50g加えて、インク受容層形成用の塗布液を得た。そして、得られた塗布液を上記フィルムに塗布して光透過媒体を得た。
【0051】
(極淡インク及びクリアインクの評価)
インクジェット記録装置としてキヤノン(株)製BJF−870を用い、上記で作製した青色の光透過媒体に対して、上記で得た極淡インク(1)〜(3)及びクリアインクを付与して、印字部の色相を測色した。その際、それぞれ、体積4〜5plの滴として解像度1,200dpi、100%のデューティでベタ印字した。又、あわせて、上記で作製した光透過媒体の非印字部についても測色を行い、光透過媒体におけるインクの付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差ΔC*を算出した。その結果を表1に示した。尚、色相の測色には村上色彩社製CMS−500を用いた。
【0052】
【0053】
(画像形成試験)
次に、上記で作製した青色の光透過媒体に、前記したBJF−870を用いて、胸部X線画像を印字した。その際に、インクとして、上記で調製したブラックインク(1)〜(3)を含んでなる濃淡インクを第一のインク群とし、これと組み合わせる第二のインクには、上記極淡インク(1)〜(3)及びクリアインク(1)から選択した各インクを用いた。そして、表2に示したように、それぞれ4種類のインクを独立に有してなる3種類のインクセットをそれぞれに用いて、画像を形成した。そして、得られた画像について目視で観察して、記録画像全体の色調と階調性を、下記の基準で評価した。その結果を表2に示した。
【0054】
[評価基準]
○:光透過媒体の非印字部から低濃度域、更には、高濃度域まで階調性が良好である。
×:画像全体が黄色味がかっており、光透過媒体の非印字部から低濃度域の階調性も好ましくない。
【0055】
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インク中に含有させる溶剤量や溶剤種に対する制約が少なく、インクの構成材料に対する選択の余地が広く、得られるモノトーン濃淡画像が、全体に黄色味を帯びたものとならず、且つ、光透過媒体における、インクが付与されている印字部と、インクが付与されていない非印字部との間で滑らかな階調性を達成した、画像の擬似輪郭防止に有効な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットが提供される。又、本発明によれば、特に、医療分野で、診断用及び参照画像等として用いられているモノクロ濃淡透過画像を提供するシステムに好適な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットが提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高階調性が要求されるシステム、例えば、医療分野での診断用及び参照画像等のモノクロ濃淡透過画像に好適に利用可能な、インクジェット記録用インク、画像形成方法、及びインクジェット記録用インクセットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医療分野における、レントゲン写真等の診断画像や、その参照画像のハードコピーを得る方式としては、現像液による現像工程を含むウェット処理方式による銀塩写真が主流である。しかしながら、ウェット処理方式では現像処理過程で廃液が生じるため、その廃液の回収や減量、更には、その再資源化が課題となっている。そのため、近年では、ウェット処理方式から現像工程が不要であるドライ処理へのニーズの高まりが顕著となり、レーザー露光熱現像方式やサーマルヘッド方式、レーザーヒートモード方式といったドライ処理の方式が急速に普及してきている。
【0003】
一方、近年のインクジェット記録方式の進歩は著しく、高精細の画像が得られるに至っている。かかる高精細の画像は、インクジェットのプリンター、インク及び記録紙、のそれぞれの技術発展により達成されてきている。例えば、インクジェットプリンターヘッドの進歩によるインク滴の微細化、精密なインク滴の吐出によるインク滴の記録紙への着弾精度の向上、インクの物性及び光学特性の改良によるドットの広がりや形状、色や濃度の改良、更には、記録紙の進歩によるインクのにじみ防止、等によってインクジェットプリント方式の画質は改良されてきている。
【0004】
かかるインクジェット記録方式の進歩に伴い、近年では、前記した医療分野におけるレントゲン写真等の診断画像や参照画像のハードコピーに、インクジェット記録方式を利用することについての提案が数多くなされている。例えば、インク受容層の白濁現象を緩和するために、複数のインクを組み合わせたインクセットにおいて、インク中に含まれる溶剤の含有量を当該インクの色材濃度に比例して変化させ、即ち、色材濃度の薄い淡インクほど溶剤量を低減させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該公報にも記載されているように、医療分野では、診断画像や参照画像を利用する特殊な形態として、シャウカステンといわれるバックライトでレントゲン写真等の画像を明るく照らし、透過画像により患部の診断をすることが行なわれている。このような透過画像の場合は、一般的なインクジェット印字物のように反射光で観察するものよりも、画像のザラツキや粒状性、色調の階調性の不良等が、より顕著に現れやすい。特に、医療分野における診断画像や参照画像については、その性格上、ハイライト部の高い階調性が要求される。
【0005】
一方、医療用の診断画像や参照画像に使用される記録媒体には、従来のウェット処理方式の時代から、好ましいものとして、基材自体が青色の、透光性の記録媒体(以下、光透過媒体という)であるブルーベースフィルムが広く用いられている。そのため、出力される画像も全体的に青味がかったモノクロ濃淡画像が好まれている。これに対して、例えば、色材濃度の異なる複数のブラックインクからなる階調表現用の濃淡インクと、色相を調整するための色相調整用インクとをセットにして用いることについての提案がある(例えば、特許文献2及び3参照)。又、二種類以上の濃度の異なるブラックインクと、色材を含まないインクとをセットにして用いることについての提案がある(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
本発明者らは、色材濃度の異なる同一色相の複数のインクからなる濃淡インクを用いて階調表現したモノトーン濃淡画像の画質について、特に、3種類以上の濃度の異なるブラックインクを用い、青色の色調を有している光透過媒体(ブルーベースフィルム)にインクジェット記録方式で画像を形成した場合に、従来より銀塩写真として提供されている医療用の診断画像や参照画像に代替できる良好なモノクロ濃淡画像を得ることについて鋭意検討した結果、下記の課題があることを見出した。
【0007】
先ず、色材濃度の異なる濃淡インクのうち、色材量が最も少ない極淡インク(以下、極淡インクという)は、通常の階調表現の他に、画像に擬似輪郭ができることを防止する目的等でも用いられるため、画像形成部の広範囲にわたって使用されるケースが多く、この極淡インクの色相が、記録画像全体に与える影響が極めて大きいことが判明し、極淡インクを改良することが重要であるとの結論を得た。例えば、色材濃度が異なる3種類以上の濃淡インクを用いて画像を形成する場合に、極淡インクとして、色材濃度の濃いインクの色材量だけを単純に低減したインクを用いると、インクが付与されていない光透過媒体の非印字部の色相と比べて、CIELAB空間におけるb*値がプラスの方向、即ち、黄色い方向へ色相が大きくシフトすることがあった。この場合には、得られる画像が、全体に黄色味がかり、特に、光透過媒体のインクが付与されていない非印字部から低濃度域の階調性が劣った印象を与えるものとなる。
【0008】
又、この極淡インクの代わりに、使用する濃淡インクから色材を除いた、色材を全く含まない液体組成物(以下、クリアインクという)を用いても、同様な現象が起こることがあった。更に、このシフトする度合いは、色材濃度が薄い程、より顕著であった。そして、モノトーンの濃淡画像の形成に、このような極淡インクを用いると、記録画像全体が黄色味がかったものとなり、特に、モノクロ濃淡画像からなる医療用の診断画像や参照画像においては、その高い要求を十分に満足できるものではなく、改良の余地があった。更に、特にこの傾向は、画像を形成するための光透過媒体が、青色の色調を有する透光性基材上にインク受容層が形成されている媒体である場合に顕著であることがわかった。詳細は明らかではないが、これは、インク中の溶剤が光透過媒体中に残存した状態で透過画像を観察した場合、光透過媒体のインク受容層内部が非印字部に比べてより不均一な状態となっているため、可視域の光の散乱が特に短波長側で顕著になり、この結果、透過画像が黄色味を帯びたものになったと思われる。更に、詳細に検討した結果、上記した現象は、インク中に、蒸発し難い溶剤が添加されている場合に顕著になることもわかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−277510号公報
【特許文献2】
特開平11−61019号公報
【特許文献3】
特開2003−39712号公報
【特許文献4】
特開2001−270217号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、インク中に含有させる溶剤量や溶剤種に対する制約が少なく、インクの構成材料に対する選択の余地が広く、該インクを用いることで、得られるモノトーン濃淡画像が全体に黄色味を帯びたものとならず、且つ、光透過媒体における、インクの付与部と、インクの非付与部との間で滑らかな階調性を達成し、画像の擬似輪郭防止に有効な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットを提供することである。本発明の目的は、特に、医療分野で、診断用及び参照画像等として用いられているモノクロ濃淡透過画像を提供するシステムに好適な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明の一実施態様によれば、[1]同一の色相を有し、互いに色材濃度が異なっている少なくとも3種のインクを含んでいるインクジェット記録用インク群と共に光透過媒体に多階調のインクジェット画像を記録するのに用いられる、色材として染料を含んでいるインクジェット記録用インクであって、該インクジェット記録用インクは、前記インクジェット記録用インク群を構成している各インクが有している色相とは異なる色相を有し、且つインクジェット記録方式で、体積4〜5plの滴として解像度1,200dpi、100%のデューティで該光透過媒体に付与したときの、該光透過媒体におけるインク付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差(ΔC*)が、下記式(I)を満たす関係を有するものであることを特徴とするインクジェット記録用インクが提供される:
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦5 式(I)。
【0012】
又、上記したインクの好ましい形態は、[2]上記彩度の差(ΔC*)が、下記式(II)を満たす関係を有する上記[1]のインクジェット記録用インクである:
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦3 式(II)。
【0013】
[3]本発明の別の実施形態は、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを第一のインク群とし、該インク群から選ばれる少なくとも1つのインクをインクジェット方式により光透過媒体に付与する工程と、上記インク群を構成している各インクとは色相の異なる第二のインクをインクジェット方式により上記光透過媒体に付与する工程とを有する画像形成方法であって、上記第二のインクとして、上記[1]又は[2]のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とする画像形成方法である。又、上記した画像形成方法の好ましい形態は、[4]上記光透過媒体が、青色の色調を有している透光性基材上にインク受容層が配置された青色の色調を有する光透過媒体である画像形成方法である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、[5]インクジェット記録に用いられるインクセットであって、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを独立に有してなる第一のインク群と、該第一のインク群を構成している各インクとは色相の異なる第二のインクとをそれぞれ独立に有してなり、且つ上記第二のインクが、前記[1]又は[2]のインクジェット記録用インクであることを特徴とするインクセットである。
【0015】
尚、上記した各構成における同一色相とは、インクが、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、レッド色、グリーン色、ブルー色という分類において、実質的に同じ分類の色であることを意味する。更に、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクとは、3種類以上の濃淡インクであることを意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、色材濃度の異なる、同一の色相を有する3種類以上の濃淡インク(第一のインク群)とは別に、極淡インクとして、濃淡インクとは別の色相のインクを用い、更に、該極淡インクの色材の濃度や溶剤等の構成を、画像を形成する際に用いる光透過媒体、好ましくは、青色の色調を有している光透過媒体における非印字部の彩度と、該光透過媒体に極淡インクを付与した印字部(付与部)の彩度との差ΔC*が、5以下であるように調整したものを用いれば、濃淡インクを用いて形成したモノクロ濃淡画像の色相が全体に黄色味がかることがなく、特に、光透過媒体のインクが付与されていない非印字部(非付与部)から低濃度域の階調性が良好で、医療用の診断画像や参照画像として実用上問題なく使用することができる画像が得られることを見出して本発明に至った。更に、好ましくは、上記彩度の差ΔC*が、3以下となるように構成すれば、医療用の診断画像や参照画像として、より満足のいく画質の画像形成が可能となることがわかった。
【0017】
本発明を特徴づける極淡インク、及び画像形成の際に該極淡インクとともに用いる濃淡インクの構成材料について説明する。これらのインクを構成する色材としては、例えば、水溶性の染料及び水分散性の顔料が好ましく用いられる。水溶性の染料としては、直接染料、酸性染料、反応性染料、塩基性染料のいずれも用いることができる。又、カラーインデックスに記載のないものでも、水溶性染料であれば使用することができる。
【0018】
直接染料の一例としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同71、同86、同106、同199等が挙げられる。
【0019】
酸性染料の一例としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドイエロー7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同265、同276、同289、C.I.アシッドバイオレット15、同17、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同103、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27等が挙げられる。
【0020】
塩基性染料の一例としては、C.I.ベーシックブラック2、同8、C.I.ベーシックイエロー1、同2、同21、C.I.ベーシックオレンジ2、同14、同32、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同14、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、C.I.ベーシックブラウン12、C.I.アシッドブルー3、同26、C.I.ベーシックグリーン49等が挙げられる。
【0021】
反応性染料の一例としては、C.I.リアクティブイエロー2、15、37、42、76、95、C.I.リアクティブレッド21、22、24、33、45、111、112、114、180、218、226、C.I.リアクティブブルー15、19、21、38、49、72、77、176、203、220、C.I.リアクティブブラック5、8、31、39等が挙げられる。
【0022】
本発明で使用できる顔料の例としては、ブラックインクについては、カーボンブラックが好適に使用される。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品や、別途新たに調製されたものも使用することができる。
【0023】
カラーインクに用いる顔料としては、有機顔料が好ましく用いられる。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が例示できる。
【0024】
又、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64
C.I.ピグメントグリーン7、36
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0025】
本発明に用いることのできる顔料は、上記に列挙したものの中から適宜に選択して使用することができるが、自己分散性のものでも、或いは水溶性樹脂等からなる分散剤の吸着により分散する樹脂分散性のもの等、いずれのものでも使用できる。
【0026】
顔料の分散剤としては、水溶性樹脂ならどのようなものでも使用することができる。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(但し、このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。或いは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。
【0027】
本発明にかかる画像形成方法は、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを第一のインク群とし、これらから選ばれる少なくとも1つのインクをインクジェット方式により青色の色調を有している光透過媒体に付与する工程と、上記第一のインク群とは色相の異なる第二のインクをインクジェット方式により上記光透過媒体に付与する工程とを有するが、医療用のX線診断画像や参照画像等の出力に用いる場合には、モノクロ濃淡画像の形成を目的とするため、上記第一のインク群としてブラック色の3種類以上の濃淡インクを用いることが好ましい。更に、本発明にかかる画像形成方法では、上記第二のインクとして、この第一のインク群とは色相の異なるインクを用いるが、かかる第二のインクの構成を決定する場合に、光透過媒体における、該第二のインクの印字部と、非印字部とのそれぞれの色相を測色し、その彩度の差(ΔC*)が下記の関係を満足するものとする。即ち、本発明者らの検討によれば、下記式(I)、更に好ましくは、下記式(II)を満たす、上記第一のインク群と色相の異なる極淡インクを第二のインクとして用いることで、得られるモノトーン画像の色調を良好な状態に制御できることがわかった。かかる構成とした場合に、良好な画像の階調性を達成でき、擬似輪郭を防止した画像が得られる。
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2≦5 式(I)
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2≦3 式(II)
【0028】
先に述べたように、本発明における同一色相とは、インクが、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、レッド色、グリーン色、ブルー色という分類において実質的に同じ分類の色であることを意味するが、本発明にかかる画像形成方法では、これらの色からなる、色材濃度が異なる3種類以上のインク(以下、濃淡インクという)を用いて光透過媒体に画像を形成する。
【0029】
本発明者らの検討によれば、その際に、高階調性を表現することを可能とする上では、特に、下記のように調整された濃淡インクを使用すること好ましい。即ち、色材量の多いインクから順に色材量をA1、A2、A3、…A(n−1)、Anとしたとき、2種類のインクの色材量の比An/A(n−1)が、0.1〜0.7、更には0.2〜0.6の範囲になるものを使用することが好ましい。
【0030】
又、本発明にかかる画像形成方法において、上記したような濃淡インクとともに用いる第二のインクである極淡インクにおける好ましい色材量は、多い場合には、単位面積あたりのインクの打ち込み量を減らすことで使用可能であるが、例えば、質量基準で、インク中に、0.01〜0.8%、更には0.05〜0.5%の範囲とすることが好ましい。色材量が0.01%よりも少ない場合には、実質的にクリアインクになってしまうため、濃淡インクと色相の異なる極淡インクを併用することで達成される本発明の効果を得ることが難しくなる。
【0031】
本発明にかかる画像形成方法を実現するために、インクジェットプリンタ本体に、この第二のインクである極淡インク(以下、極淡インクという)を搭載する方法としては、下記の方法が挙げられる。第一のインク群である濃淡インク(以下、濃淡インクという)が充填されたタンクのどれか1つのタンクと、極淡インクが充填されたタンクとを交換して使用してもよいし、極淡インクが、別途、吐出する専用のヘッドを設けてもよい。更に、極淡インクを印字して色調を調整する必要がない場合には、極淡インクを印字しないシーケンスをプリンタ本体に設けておけばよい。このようにすることで様々な種類の媒体に対応可能である。
【0032】
又、本発明にかかる画像形成方法に用いられる第一のインク群、及び第二のインクは、先に説明したような色材と、該色材を溶解或いは分散するための水性液媒体とからなるが、インクジェット記録方式に適用する場合の、ノズルの目詰まり防止や吐出信頼性の点で、水性液媒体中に、下記に挙げるような溶剤を含有させることが好ましい。
【0033】
具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の水溶性有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0034】
更に、上記に列挙した溶剤以外のものとして、トリメチロールプロパン、尿素、エチレン尿素等の、常温で固体の物質を含有させてもよい。本発明においては、上記のような常温で固体の物質も含めて、インク中に含有させる溶剤と呼ぶ。
【0035】
本発明で用いる第一のインク群である濃淡インク、及び第二のインクである極淡インクは、いずれもインクジェット記録用であり、ノズルの目詰まり防止や、吐出安定性の観点から、インク中の溶剤量を、質量基準で、10〜50%、更には15〜35%程度とすることが好ましい。又、本発明においては、例えば、インク吐出性や吸引回復性の点で、第一及び第二のインクの粘度を略等しくする必要が生じた場合には、各インクの構成材料である、この溶剤種や溶剤量を適宜に調整することで対応可能である。
【0036】
又、第一のインク群を構成している各インク及び第二のインクを構成している成分の一つとして好適に用いられる水としては、脱イオン水を使用することが望ましい。インクに含有される水の含有量はインク全量に対して、質量基準で、50〜95%の範囲とすることが好ましい。
【0037】
更に、本発明で用いる第一のインク群を構成している各インク及び第二のインクには、上記で説明した成分の他に、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加しても構わない。
【0038】
本発明にかかる画像形成方法は、上記で説明した構成を有する第一のインク群に含まれる濃淡インクをインクジェット方式により青色の色調を有している光透過媒体に付与する工程と、該第一のインク群とは色相の異なる極淡インクを第二のインクとしてインクジェット方式により光透過媒体に付与する工程とを有するが、該光透過媒体としては、支持体である透光性基材上に、シリカ又はアルミナ等から構成される多孔質のインク受容層を構成しているものを使用することが好ましい。インク受容層としてアルミナを使用している光透過媒体の例としては、例えば、特開平02−276670号公報が挙げられる。又、インク受容層としてシリカを用いている例としては、特開2001−150803公報が挙げられる。本発明は、青色の透光性基材上に多孔質タイプのインク受容層をもつ光透過媒体に対して記録する場合に、特に効果が発揮される。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、必ずしもこれに限られるものではない。尚、以下で用いる%は、特に断りのない限り質量%を表すものである。
【0040】
<第一のインク群(濃淡ブラックインク(1)〜(3))の調製>
同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上の濃淡インクとして、下記の各組成を有する色材濃度の異なる3種類のブラックインク(1)〜(3)を調製した。尚、下記のアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物としては、アセチレノールEH(商品名:川研ファインケミカル社製)を使用し、又、インクの全量は、水で調整して100とした。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
<第二のインク(極淡インク(1)〜(3))の調製>
第二のインクとして、以下の各組成を有する、上記した第一のインク群とは色相の異なる極淡インク(1)〜(3)を調製した。尚、下記のアセチレングリコールエチレンオキサイド付加物としては、アセチレノールEH(商品名:川研ファインケミカル社製)を使用し、又、インクの全量は、水で調整して100とした。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
<クリアインクの調製>
上記第二のインクの組成から色材を除き、イオン交換水に置き換えて、クリアインクを調製した。
【0049】
<光透過媒体の作成>
予め青色に着色した、厚さ175μmのポリエステル製の透明基材を用い、該基材の両面に、コロナ放電処理を行った。そして、以下に示す組成を有する塗布液を用いて、基材の片面にインク受容層を形成した。尚、このフィルムのCIELAB色空間で表されるLab値はL*=77、a*=−7、b*=−1であった。
【0050】
[塗布液の組成]
・スノーテックスPS−M(日産化学製、球状コロイ
ダルシリカ分散液、固形分20.5%) 1kg
・ポリビニルアルコール10%水溶液(クラレ製、P
VA−235) 200g
先ず、上記成分をスターラー上で攪拌・混合した。その後、これに5%ホウ酸水溶液を50g加えて、インク受容層形成用の塗布液を得た。そして、得られた塗布液を上記フィルムに塗布して光透過媒体を得た。
【0051】
(極淡インク及びクリアインクの評価)
インクジェット記録装置としてキヤノン(株)製BJF−870を用い、上記で作製した青色の光透過媒体に対して、上記で得た極淡インク(1)〜(3)及びクリアインクを付与して、印字部の色相を測色した。その際、それぞれ、体積4〜5plの滴として解像度1,200dpi、100%のデューティでベタ印字した。又、あわせて、上記で作製した光透過媒体の非印字部についても測色を行い、光透過媒体におけるインクの付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差ΔC*を算出した。その結果を表1に示した。尚、色相の測色には村上色彩社製CMS−500を用いた。
【0052】
【0053】
(画像形成試験)
次に、上記で作製した青色の光透過媒体に、前記したBJF−870を用いて、胸部X線画像を印字した。その際に、インクとして、上記で調製したブラックインク(1)〜(3)を含んでなる濃淡インクを第一のインク群とし、これと組み合わせる第二のインクには、上記極淡インク(1)〜(3)及びクリアインク(1)から選択した各インクを用いた。そして、表2に示したように、それぞれ4種類のインクを独立に有してなる3種類のインクセットをそれぞれに用いて、画像を形成した。そして、得られた画像について目視で観察して、記録画像全体の色調と階調性を、下記の基準で評価した。その結果を表2に示した。
【0054】
[評価基準]
○:光透過媒体の非印字部から低濃度域、更には、高濃度域まで階調性が良好である。
×:画像全体が黄色味がかっており、光透過媒体の非印字部から低濃度域の階調性も好ましくない。
【0055】
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インク中に含有させる溶剤量や溶剤種に対する制約が少なく、インクの構成材料に対する選択の余地が広く、得られるモノトーン濃淡画像が、全体に黄色味を帯びたものとならず、且つ、光透過媒体における、インクが付与されている印字部と、インクが付与されていない非印字部との間で滑らかな階調性を達成した、画像の擬似輪郭防止に有効な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットが提供される。又、本発明によれば、特に、医療分野で、診断用及び参照画像等として用いられているモノクロ濃淡透過画像を提供するシステムに好適な、インクジェット記録用インク、画像形成方法及びインクセットが提供される。
Claims (5)
- 同一の色相を有し、互いに色材濃度が異なっている少なくとも3種のインクを含んでいるインクジェット記録用インク群と共に光透過媒体に多階調のインクジェット画像を記録するのに用いられる、色材として染料を含んでいるインクジェット記録用インクであって、該インクジェット記録用インクは、前記インクジェット記録用インク群を構成している各インクが有している色相とは異なる色相を有し、且つインクジェット記録方式で、体積4〜5plの滴として解像度1,200dpi、100%のデューティで該光透過媒体に付与したときの、該光透過媒体におけるインク付与部と非付与部との間におけるCIELAB色空間で表される彩度の差(ΔC*)が、下記式(I)を満たす関係を有するものであることを特徴とするインクジェット記録用インク:
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦5 式(I)。 - 前記彩度の差(ΔC*)が、下記式(II)を満たす関係を有する請求項1に記載のインクジェット記録用インク:
ΔC*=(Δa*2+Δb*2)1/2 ≦3 式(II)。 - 同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを第一のインク群とし、該インク群から選ばれる少なくとも1つのインクをインクジェット方式により光透過媒体に付与する工程と、上記インク群を構成している各インクとは色相の異なる第二のインクをインクジェット方式により上記光透過媒体に付与する工程とを有する画像形成方法であって、上記第二のインクとして、請求項1又は2に記載のインクを用いることを特徴とする画像形成方法。
- 前記光透過媒体が、青色の色調を有している透光性基材上にインク受容層が配置された青色の色調を有する光透過媒体である請求項3に記載の画像形成方法。
- インクジェット記録に用いられるインクセットであって、同一色相で、色材濃度が異なる3種類以上のインクを独立に有してなる第一のインク群と、該第一のインク群を構成している各インクとは色相の異なる第二のインクとをそれぞれ独立に有してなり、且つ上記第二のインクが、請求項1又は2に記載のインクであることを特徴とするインクセット。
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