JP2004339085A - α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体の製法 - Google Patents
α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体の製法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体の新規な工業的製法の提供。
【解決手段】一般式(1)
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
【選択図】 なし
【解決手段】一般式(1)
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体の新規な製造方法に関する。更に詳しく言えば、本発明は、医薬品の有効成分として有用であるフルルビプロフェン、イブプロフェンなどに代表されるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸を製造するのに有用な中間体の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(4)
【化16】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子である]で表される化合物は、人間や動物に対して消炎、鎮痛、解熱等の薬効を示す。中でもRがメチル基、R1がイソブチル基、R2が水素原子である化合物(イブプロフェン)、Rがメチル基、R1がフェニル基、R2がR1に対してオルト位に位置するフッ素原子である化合物(フルルビプロフェン)及びこれらの塩は、特に優れた消炎、鎮痛、解熱の薬理効果を示すことが知られている。
これらのα−置換フェニル−アルカンカルボン酸またはその塩の、従来から知られている製造法としては、例えば、特許文献1〜10がある。これらの製法は、何れもよく知られた化学反応を巧みに組み合わせたものであるが、一般に工程が長く低収率であるため、必ずしも満足できるものではない。また、特許文献11、12記載の製法は、製造工程が短く、収率も高いが、各々ヨウ化マンガンやヘキサメチル燐酸トリアミドなど、工業的に一般的でなく、非常に高価な原料を用いているため、工業的製法としては適していない。更に特許文献13、14においては、白金等の高価な触媒を用いるため、触媒の回収操作に手間がかかるという課題がある。そして、特許文献15に記載されている製法は、工程が短く有利な方法であるが、やはり低収率という課題を残している。
【特許文献1】
特開昭56−97247号公報
【特許文献2】
特公平2−37335号公報
【特許文献3】
特開昭2−223542号公報
【特許文献4】
特開昭57−9757号公報
【特許文献5】
特公昭62−24419号公報
【特許文献6】
特開昭55−157523号公報
【特許文献7】
特開昭55−157530号公報
【特許文献8】
特開昭54−9249号公報
【特許文献9】
特開昭60−243040号公報
【特許文献10】
特公昭62−20175号公報
【特許文献11】
特開昭60−11439号公報
【特許文献12】
特公平3−19216号公報
【特許文献13】
特開昭51−127042号公報
【特許文献14】
特開昭56−95147号公報
【特許文献15】
特開昭58−35145号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、医薬品の有効成分として有用であるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸の新規な工業的製法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸の製造における有用な中間体であるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステルの製法において、
従来知られている製法に比べ、反応温度を適切に制御管理すること、及び触媒以外に触媒配位子等を添加することにより、簡便かつ高収率で容易に目的物を得る新規な製造方法を見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、以下のような構成を有する。
1) 一般式(1)
【化17】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化18】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化19】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
2) 一般式(1)
【化20】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化21】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化22】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の混合時反応温度で混合し、反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
3) 一般式(1)
【化23】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化24】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化25】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応温度で反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
4)上記1)記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
5)上記1)記載の製法において、反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
6)一般式(1)
【化26】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化27】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化28】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物及びニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒に、更に還元剤または錯体形成量を超える量の触媒配位子を加え、反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
7)上記6)記載の製法において、−40℃以上80℃以下の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
8)上記7)記載の製法において、−40℃以上10℃以下の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
9)上記6)記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
10)上記6)記載の製法において、反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
11)上記6)〜8)のいずれかに記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上80℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
12)上記6)記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上−10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
13)上記6)記載の製法において、反応温度が−40℃以上−10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
14)X1が、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である上記1)〜13)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
15)ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒が、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体である上記1)〜14)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
16)触媒配位子が、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン(DPPE)、1,2−ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)から選ばれたいずれか1つあるいは複数の組み合わせであることを特徴とする上記6)〜15)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
17)還元剤が水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)のいずれか1つあるいは複数の組み合わせであることを特徴とする上記6)〜15)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
18)一般式(1)で表される化合物が、
【化29】
[式中、Yは、請求項1と同じ意味を示す]である上記1)〜17)のいずれかに記載の製法。
19)一般式(1)で表される化合物が、
【化30】
[式中、Yは、請求項1と同じ意味を示す]である上記1)〜17)のいずれかに記載の製法。
20)上記1)〜19)のいずれかに記載の製法において得られた一般式(1)で表される化合物をカルボン酸の保護基の脱保護反応を行うことにより、一般式(4)
【化31】
で表される化合物を得ることを特徴とする化合物の製法。
【0005】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の製法の目的物である一般式(1)について説明する。
本明細書においては特に断らない限り、ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子が例示される。また、アルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状、又はそれらの組み合わせからなる飽和炭化水素基が例示される。従って、C1〜C4アルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、又はシクロプロピルメチル基が挙げられ、C1〜C6アルキル基の具体的な例としては、上記C1〜C4アルキル基の具体例に加えて、例えば、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、シクロプロピルエチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロプロピルプロピル基などが挙げられ、C1〜C7アルキル基の具体的な例としては、上記C1〜C6アルキル基の具体例に加えて、例えば、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基などが挙げられる。
【0006】
アリール基としては、例えば、単環式芳香族炭化水素基、単環式芳香族複素環基、縮合芳香族炭化水素基、縮合芳香族複素環基などが挙げられ、単環式芳香族炭化水素基、縮合芳香族炭化水素基が好ましく、単環式芳香族炭化水素基がさらに好ましい。単環式芳香族炭化水素基としては、フェニル基が好ましく、縮合芳香族炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アンスリル基などが好ましい。また、単環式芳香族複素環基としては、2−または3−チエニル基、2−,3−または4−ピリジル基などが好ましく、縮合芳香族複素環基として、2−,3−,4−,5−または8−キノリル基、1−,3−,4−,5−,6−,7−または8−イソキノリル基、1−,2−,3−,4−,5−,6−または7−インドリル基などが好ましい。
【0007】
フッ素化アリール基としては、上記アリール基において、1乃至3個、好ましくは1乃至2個、より好ましくは1個の任意の水素原子がフッ素原子に置換したアリール基が挙げられる。具体的には、フッ素化単環式芳香族炭化水素基、フッ素化単環式芳香族複素環基、フッ素化縮合芳香族炭化水素基、フッ素化縮合芳香族複素環基などが挙げられ、フッ素化単環式芳香族炭化水素基、フッ素化縮合芳香族炭化水素基が好ましく、フッ素化単環式芳香族炭化水素基がさらに好ましい。フッ素化アリール基の好ましい例としては、例えば、2−,3−、または4−フルオロフェニル基などが挙げられる。
【0008】
アリールオキシ基としては、単環式芳香族炭化水素のエーテル基、単環式芳香族複素環のエーテル基、フッ素化縮合芳香族炭化水素のエーテル基、フッ素化縮合芳香族複素環のエーテル基などが挙げられ、単環式芳香族炭化水素のエーテル基、縮合芳香族炭化水素のエーテル基が好ましく、単環式芳香族炭化水素のエーテル基がさらに好ましい。アリールオキシ基の好ましい例としては、例えば、フェノキシ基、2−または3−チエニルオキシ基、2−,3−または4−ピリジルオキシ基などが挙げられ、フェノキシ基が特に好ましい。
【0009】
アラルキル基としては、直鎖状、分枝状の飽和炭化水素基の1個以上、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個の任意の水素原子が芳香環に置換した炭化水素基が例示され、通常、C7−19アラルキル基が好ましい。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などが好ましく、ベンジル基、フェネチル基がさらに好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
【0010】
Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基である。Rとしては、水素原子、C1〜C4アルキル基、ベンジル基が好ましく、なかでも水素原子、メチル基、ベンジル基が好ましい。また、C1〜C4アルキル基、ベンジル基がさらに好ましく、なかでもメチル基、ベンジル基がさらに好ましい。さらには、C1〜C4アルキル基が特に好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基である。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、2−,3−または4−フルオロフェニル基またはフェノキシ基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、フェニル基、ベンジル基がさらに好ましく、i−ブチル基、フェニル基が特に好ましい。
R2は、水素原子またはフッ素原子である。R2としては、水素原子が好ましく、また、フッ素原子も大変に好ましい。フッ素原子である場合の置換位置は、R1に対してオルト位またはメタ位が挙げられるが、オルト位及びメタ位が好ましく、オルト位が特に好ましい。
Yは、カルボン酸の保護基である。カルボン酸の保護基としては、公知のカルボン酸の保護基であれば何を用いてもよいが、例えば、C1〜C7アルキル基、アリール基またはアラルキル基が好ましい。Yとしては、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基などが好ましく、メチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
【0011】
目的物(1)において、各置換基の好ましい組み合わせは特に限定されないが、例えば、
(1)Rが、水素原子、メチル基またはベンジル基である化合物;
(2)Rが、C1〜C4アルキル基である化合物
(3)Rが、メチル基である化合物;
(4)R1が、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、2−,3−または4−フルオロフェニル基またはフェノキシ基である化合物;
(5)R1が、i−ブチル基、フェニル基である化合物;
(6)R1が、フェニル基である化合物;
(7)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基である化合物;
(8)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である化合物;
(9)Rが、水素原子、メチル基またはベンジル基であり、R1が、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、2−,3−または4−フルオロフェニル基またはフェノキシ基であり、Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基である化合物;
(10)Rが、メチル基であり、R1が、i−ブチル基、フェニル基であり、Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である化合物;
(11)Rが、メチル基であり、R1が、フェニル基である化合物;
(12)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である上記(11)に記載の化合物;
(13)R2が、フッ素原子である上記(1)〜(12)に記載の化合物;
(14)R2の置換位置がR1のオルト位である上記(1)〜(13)に記載の化合物;
(15)Rが、メチル基であり、R1が、i−ブチル基である化合物;
(16)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である上記(15)に記載の化合物;
(17)R2が、水素原子である上記(1)〜(10)、(15)または(16)に記載の化合物;
がより好ましい。
【0012】
次に、一般式(2)及び一般式(3)、さらには各用語について説明する。
X1は、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子がさらに好ましく、臭素原子及びヨウ素原子が特に好ましい。
X2は、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子がさらに好ましく、臭素原子及びヨウ素原子が特に好ましい。
ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒としては、ニッケルまたはパラジウムなどの金属単体触媒、あるいは無機酸塩及び有機酸塩などの化合物、さらには、それらの任意の比率の混合触媒が挙げられるが、ニッケルまたはパラジウムなどの無機酸塩及び有機酸塩が好ましい。また、ニッケルまたはパラジウムなどの金属単体のホスフィン系錯体も好ましい。無機酸塩としては、例えば、ハロゲン化物が好ましい。該ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが好ましく、また、該ハロゲン化物のホスフィン錯体なども好ましい。例えば、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体が好ましく、そのうち、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、それらのホスフィン系錯体、ニッケルまたはパラジウムなどの金属単体のホスフィン系錯体または塩化パラジウム(PdCl2)のホスフィン系錯体が特に好ましい。また、無機酸塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩等が好ましく、有機酸塩としては、例えば、炭酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート等が好ましい。ニッケル化合物及び/又はパラジウム化合物としては、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体が好ましく、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、それらのホスフィン系錯体、または塩化パラジウム(PdCl2)のホスフィン系錯体がさらに好ましい。ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の具体例としては、NiCl2、NiBr2、NiI2、PdCl2、NiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2CH2P(C6H5)2]、PdCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]などから選ばれる1種以上からなる触媒があげられるが、そのうちでも、NiCl2、NiBr2、NiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2CH2P(C6H5)2]、PdCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]などから選ばれる1種以上からなる触媒がより好ましく、さらに、そのうちでもNiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2]、などから選ばれる1種以上からなる触媒が特に好ましく、NiCl2[P(C6H5)3]2が最も好ましい。
また、これら触媒が何らかの担体、例えば、炭素粉末等に担持された触媒も好ましい。
【0013】
錯体形成量を超える量を添加する触媒配位子としては、ホスフィン系が好ましく、例えば、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン(DPPE)、1,2−ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)などが好ましく、そのうちでも、トリフェニルホスフィンが特に好ましい。通常、ニッケル化合物、パラジウム化合物からなる触媒として、ニッケルまたはパラジウムなどのハロゲン化物、またはそれらのホスフィン系錯体を用いている場合には、これらホスフィン系錯体の触媒配位子を用いるのが好ましい。触媒と触媒配位子の組み合わせは、何ら限定されるものではないが、特に、ニッケル化合物及び/又はパラジウム化合物として、ニッケルまたはパラジウムなどのハロゲン化物のホスフィン系錯体を用いている場合、ホスフィン系錯体の種類と同一の種類の触媒配位子を選択することが好ましい。
還元剤としては、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)などが好ましく、DIBALがさらに好ましい。
【0014】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応は、反応開始時温度、混合時反応温度、反応温度によって管理される。
ここで、反応開始時温度とは反応が開始されるときの温度をいう。
例えば、化合物(3)および触媒の混合溶液に化合物(2)を少量ずつ添加することによって反応が開始される場合には、反応開始時温度は化合物(3)および触媒の混合溶液の温度に限りなく近いものとなり、この温度をあらかじめ所望の温度に管理制御することが重要となる。
また、化合物(2)および(3)をあらかじめ混合して混合溶液とし、触媒等の添加により反応が開始されるような場合にあっては、(2)および(3)の混合溶液の温度を所望の反応開始時温度に制御しておく必要がある。
混合時反応温度とは化合物(2)、化合物(3)および反応に必要な触媒等の混合が開始されてから終了するまでの温度をいう。
例えば、(2)と触媒等があらかじめ混合して調整され、それに化合物(3)を混合(添加)することによって反応が開始される場合には、混合時反応温度とは、化合物(3)の混合(添加)が開始してから混合(添加)が終了するまでの反応溶液の温度をさす。従って、混合時反応温度には反応開始時温度が含まれる。反応温度とは反応が開始してから反応が終了するまでの温度をいい、反応温度には反応開始時温度が含まれ、また、混合時反応温度も含まれる。ここで、化合物等を混合しているときに、瞬時に反応が起こり、混合終了と同時に反応が終了する場合には、混合時反応温度と反応温度は実質的に同じ意味をもつことになる。しかし、混合終了後もなお、反応が進行している場合には、混合終了時点と反応終了時点とは異なるものとなり、その結果として、混合時反応温度と反応温度も異なるものとなる。
【0015】
触媒配位子または還元剤等の補助原料を加えない場合、反応開始時温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−35℃以上がさらに好ましく、上限としては、−10℃未満が好ましく、−15℃以下がさらに好ましい。
また、混合時反応温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−25℃以上がさらに好ましく、上限としては、+10℃以下が好ましく、+5℃以下がさらに好ましく、−10℃未満が特に好ましい。
混合時反応温度のうち、混合が開始し、反応の大部分が行われる温度を特に混合時要維持反応温度(以下要維持温度という)といい、これは混合時反応温度のうちでも温度管理が最も重要な部分である。すなわち、反応開始直後は反応熱により反応液は反応開始時温度より次第に上昇する。しかし、適正な温度制御管理により一定の温度とすることができる。このように、混合液を要維持温度に制御することで収率の向上を図ることが可能となる。要維持温度は、通常、開始時温度よりも数℃〜5℃位高い温度となっている。
【0016】
一方、触媒配位子または還元剤等の補助原料を加える場合の反応開始時温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−25℃以上がさらに好ましく、上限としては80℃以下が好ましく、+10℃以下がさらに好ましく、0℃以下がより一層好ましく、−10℃未満が特に好ましく、−15℃以下が大変に好ましい。
また、混合時反応温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−25℃以上がさらに好ましく、−20℃以上が特に好ましく、上限としては、80℃以下が好ましく、+10℃以下がさらに好ましく、+5℃以下がより一層好ましく、−10℃未満が特に好ましい。
反応に用いる溶媒としては、不活性溶媒であれば何れでも良いが、エーテル系溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル等が好ましい。また、これら溶媒の任意の比率の混合溶媒を用いてもよい。さらには、これらの溶媒に、炭化水素系溶媒などを適当な比率で混合した溶媒を用いてもよい。該炭化水素系溶媒としては、飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。飽和炭化水素系溶媒としては、例えば、C5〜C10の直鎖状アルカン溶媒、C5〜C10の分岐状アルカン溶媒、または直鎖状及び/又は分岐状アルキル置換基を有してもよい炭素数が6個〜10個の環状アルカン溶媒があげられ、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどが好ましい例としてあげられる。また、芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが好ましい例としてあげられる。
【0017】
次に、本発明の製法について説明する。
本発明の製法は、一般式(2)
【化32】
[式中、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は水素原子またはフッ素原子、X2はハロゲン原子である]で表される化合物、即ちグリニャール試薬と、一般式(3)
【化33】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、X2はハロゲン原子であり、Yはカルボン酸の保護基である。]で示されるα−ハロアルカンカルボン酸エステルを、ニッケル化合物又はパラジウム化合物に代表される触媒の存在下、特に、反応開始時温度を−40℃以上−10℃未満に制御して反応を開始させること、若しくは上記の混合物にさらにトリフェニルホスフィンに代表される金属配位子、または水素化ジイソブチルアルミニウムリチウムに代表される還元剤を加えて、特に、反応開始時温度を−40℃以上+10℃未満に制御して反応を開始させることにより、一般式(1)で表される化合物を収率よく得る工程を特徴とする。
【0018】
一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物の混合方法としては、一般式(3)で表される化合物に対して一般式(2)で表される化合物を滴下する方法、あるいは、一般式(2)で表される化合物に対して一般式(3)で表される化合物を滴下する方法、が挙げられ、共に好ましいが、一般式(3)で表される化合物に対して一般式(2)で表される化合物を滴下する方法がより好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物において、置換基Rが置換する炭素原子は、Rが水素原子以外の場合は不斉炭素である。この不斉炭素の立体配置は特に限定されず、S配置又はR配置のいずれであってもよく、この不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性対の任意の混合物またはラセミ体であってもよいが、本発明の製法の目的物としては、ラセミ体が好ましい。
また、上記一般式(1)で表される化合物は、置換基の種類に応じてさらに1または2以上の不斉炭素を有する場合があるが、上記の特定の不斉炭素以外の立体配置は特に限定されず、任意の立体配置であってもよい。1または2以上の不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性体またはジアステレオ異性体などの立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の製法の目的物として一般式(1)に包含される。
【0020】
得られた一般式(1)で表される化合物は、ついで加水分解することにより、容易に一般式(4)
【化34】
[式中、R、R1及びR2は、前記と同じ意味を示す]で表されるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸に変換し得る。
【0021】
本発明を実施するにあたり、出発物質として使用される一般式(2)で表される化合物は、次のようにして製造することができる。一般式(5)
【化35】
[式中、R1及びR2は、前記と同じ意味を示す]で表されるハロゲン化ベンゼンと、金属マグネシウムを、無水エーテル系溶媒中で窒素等不活性ガス雰囲気下にて反応させる、通常のグリニャール試薬を得る反応に準じて行えばよい。反応に用いる溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル等が好ましい例として挙げられる。一般式(5)で表される化合物は、市販化合物として入手するか、公知の方法、例えば、特許文献「DE 2241913」、「FR 2231393」、「DE 2426160」、または文献「Synth.Commun., 32, 2, 279−286(2002)」に記載の方法に準じて製造することができる。
【0022】
また、一般式(3)で表される化合物は、市販化合物として入手するか、公知の方法、例えば、文献「Helv.Chim.Acta,, 66(4), 1028−1030 (1983)」、「J.Indian Chem.Soc.,10, 592,(1933)」、「Chem.Zentralbl., 105(I), 2105(1934)」に記載の方法に準じて製造することができる。一般式(3)で表される化合物において、置換基Rが置換する炭素原子は、Rが水素原子以外の場合は、不斉炭素原子である。一般式(3)で表される化合物としては、この不斉炭素の立体配置は特に限定されず、S配置又はR配置のいずれであってもよく、この不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性対の任意の混合物またはラセミ体を用いてもよいが、通常、本発明としては、ラセミ体を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の方法、即ち一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物とにより、一般式(1)で表される化合物を製造する方法をさらに詳述する。
(方法1)
予め一般式(3)で表される化合物とニッケル化合物またはパラジウム化合物触媒のテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒溶液または懸濁液を窒素等の不活性ガス雰囲気下にて調製し、反応開始時温度の下限として、−40℃以上、さらに好ましくは−35℃以上、上限として−10℃、さらに好ましくは−15℃以下で反応を開始させる。
すなわち、反応開始時温度の範囲としては、−40℃以上−10℃未満、好ましくは−35℃以上−15℃以下に冷却攪拌しておく。これに一般式(2)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、混合時反応温度の下限として、−40℃以上、好ましくは−25℃以上、上限として、+10℃以下、好ましくは+5℃以下、さらに好ましくは−10℃未満で混合し、反応させる。すなわち、混合時反応温度の範囲として−40℃以上+10℃以下、好ましくは−40℃以上+5℃以下、さらに好ましくは−25℃以上−10℃未満に制御しながら8時間以内、好ましくは60分以内に添加(混合)する。添加終了後、反応液を0〜48時間攪拌する反応時間が例示されるが、該反応時間は特に限定はされず、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)その他の分析手段により反応の進行状態を容易に追跡できるため、目的物の収量が最大となる時点で終了すればよい。
反応後の反応液を塩化アンモニウム水溶液中に加え、本発明の目的物である一般式(1)で表される化合物の粗精製物を含む有機層を回収する。
【0024】
(方法2)
予め一般式(3)で表される化合物とニッケル化合物またはパラジウム化合物触媒のテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒溶液または懸濁液にトリフェニルホスフィン等の触媒配位子または水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を加えたものを窒素等の不活性ガス雰囲気下にて調製し、反応開始時温度の下限として、−40℃以上、さらに好ましくは−25℃以上、上限として80℃以下、さらに好ましくは+10℃以下、一層好ましくは0℃以下、なお一層好ましくは−10℃未満、大変好ましくは−15℃以下で反応を開始させる。すなわち、反応開始時温度の範囲としては、−40℃以上+80℃以下、好ましくは、−40℃以上+10℃以下、さらに好ましくは−40℃以上−10℃未満、なお好ましくは−25℃以上−10℃未満に冷却攪拌しておく。
これに一般式(2)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、混合時反応温度の下限として−40℃以上、好ましくは−25℃以上、さらに好ましくは−20℃以上、上限としては、80℃以下、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは5℃以下、特に好ましくは−10℃未満で混合し、反応させる。すなわち、混合時反応温度の範囲としては、−40℃以上+80℃以下、好ましくは−25℃以上+10℃以下、なお好ましくは−25℃以上−10℃未満、さらに好ましくは−20℃以上−10℃未満に制御しながら8時間以内、好ましくは60分以内に混合(添加)する。添加終了後、反応液を0〜48時間攪拌する反応時間が例示されるが、前記の分析手段を用いて目的物の収量が最大となる時点で終了すればよい。反応後の反応液を塩化アンモニウム水溶液中に加え、本発明の目的物である一般式(1)で表される化合物の粗精製物を含む有機層を回収する。
【0025】
上記、方法1及び方法2において、一般式(1)で表される化合物を単離する場合は、この後、脱水、濃縮等の操作を行い、シリカゲルカラムクロマト、減圧蒸留または結晶化等の処理により精製取得できる。しかし、この一般式(1)で表される化合物は単離することなく加水分解等のカルボン酸の保護基の脱保護反応を行い、鎮痛抗炎症作用を持つ一般式(4)で表される化合物、即ち、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸に誘導するのがよい。一般式(3)で表される化合物としては、ラセミ体を用いることが好ましく、光学活性体を用いた場合は、一般式(4)で表される化合物を得るための加水分解の条件としては、酸条件が好ましい。
【0026】
本発明における一般式(2)で表される化合物で示されるハロゲン化ベンゼンと金属マグネシウムから調製したグリニャール試薬を一般式(3)で表される化合物で示されるα−ハロアルカンカルボン酸エステルと反応させるときに用いるニッケル化合物及び/又はパラジウム化合物の使用量は、グリニャール試薬に対して0.01モル%〜10モル%が好ましく、0.05モル%〜0.5モル%がさらに好ましい。一般式(3)で表されるα−ハロアルカンカルボン酸エステルの使用量は、グリニャール試薬調製時に用いた一般式(2)で表されるハロゲン化ベンゼンの0.8倍モル〜約2倍モルが好ましく、1.0倍モル〜1.5倍モルがさらに好ましい。
【0027】
また、本発明において触媒配位子を使用する場合、その使用量は、触媒がホスフィン系錯体以外の場合は、触媒と該触媒配位子とが、錯体を形成するのに必要な量を超える量の触媒配位子を加えることが好ましい。具体的には、触媒がニッケル及び/又はパラジウムの金属単体触媒の場合は、下限としては、4倍モルを超える量が好ましく、4.5倍モル以上がより好ましく、5.5倍モル以上がさらに好ましい。この時、上限としては、9倍モル以下が好ましく、6.5倍モル以下がさらに好ましい。
また、触媒が2価のニッケル及び/又はパラジウム化合物であり、且つ、ホスフィン系錯体以外である場合、例えば、NiCl2などの場合は、加える触媒配位子の量の下限としては、2倍モルを超える量が好ましく、2.5倍モル以上がより好ましく、3.5倍モル以上がさらに好ましい。また、この時、上限としては、7倍モル以下が好ましく、4.5倍モル以下がさらに好ましい。
そして、触媒がホスフィン系錯体である場合、例えば、NiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4などの場合は、加える触媒配位子の量の下限としては、0.1倍モルを超える量が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上がさらに好ましい。この時、上限としては、5倍モル以下が好ましく、2.5倍モル以下がさらに好ましい。
本発明の方法により得られた一般式(1)で表されるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステルは一般的なエステルの脱保護条件、例えば加水分解や、保護基によっては水素添加による脱保護反応等により容易に脱保護され、相当するα−置換フェニル−アルカンカルボン酸を与える。
【0028】
【実施例】
次に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
[実施例1] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製法
窒素雰囲気下、金属マグネシウム片437mg(18mmol)及びテトラヒドロフラン18ml中に4−ブロモ−2−フルオロビフェニル(Aldrich Chem.Co.社製;4.52g、18mmol)をテトラヒドロフラン18mlに溶解した溶液を室温にて滴下後、3時間攪拌し、グリニャール試薬を調節した。
一方、予め別の容器にて窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル(東京化成(株)社製;3.1g、18mmol)を溶解し、触媒として塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体(東京化成(株)社製;117mg、0.18mmol)を加え、−30℃に冷却した。これに上記の方法にて取得した4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を、要維持温度を−26℃〜−24℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.6g(収率78%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
7.1−7.6(8H,m),3.8(1H,q,J=7Hz),3.7(3H,s),1.5(3H,d,J=7Hz)
【0029】
[実施例2] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸エチルエステルの製法
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに2−ブロモプロピオン酸エチルエステル(東京化成(株)社製;3.3g、18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸エチルエステル3.7g(収率76%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
7.1−7.6(8H,m),4.1−4.2(2H,q,J=3Hz),3.7(1H,q,J=7Hz),1.5(3H,d,J=7Hz),1.2(3H,t,J=7Hz)
【0030】
[実施例3] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸tert−ブチルエステルの製法
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに2−ブロモプロピオン酸tert−ブチルエステル(東京化成(株)社製;3.8g、18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸tert−ブチルエステル3.3g(収率61%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
7.1−7.6(8H,m),3.8(1H,q,J=7Hz),1.5(3H,d,J=7Hz),1.5(9H,s)
【0031】
[実施例4]
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに2−クロロプロピオン酸メチルエステル(和光純薬(株)社製;2.2g、18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル2.9g(収率63%)を得た。
【0032】
[実施例5]
工程1:「2−ヨードプロピオン酸メチルエステルの合成」
2−ヒドロキシプロピオン酸メチルエステル8.7g(84mmol)を塩化メチレンに溶解し、p−トルエンスルフォニルクロリド18.9g(110mmol)、さらにトリエチルアミン11.1g(110mmol)を加え、50℃にて2時間攪拌した。水洗した後、有機層を脱水、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(p−トルエンスルフォニル)プロピオン酸メチルエステル16.0g(62mmol)を得た。
次にヨウ化ナトリウム19.8g(132mmol)をアセトンに懸濁し、これに上記で取得した2−(p−トルエンスルフォニル)プロピオン酸メチルエステル11.4g(44mmol)のアセトン溶液を加え、室温にて一晩攪拌した。反応液を抽出、濃縮後減圧蒸留し、2−ヨードプロピオン酸メチルエステル5.7g(27mmmol)を紫色オイルとして取得し、これ以上精製することなく次の工程へ供した。
工程2:「2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの合成」
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに、実施例5工程1で合成した2−ヨードプロピオン酸メチルエステル3.9g(18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.5g(収率75%)を得た。
【0033】
[実施例6]
実施例1の反応開始時温度を−20℃に制御し、要維持温度を−16〜−14℃に制御した以外は、実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0034】
[実施例7]
実施例1の反応開始時温度を−11℃に制御し、要維持温度を−6〜−4℃に制御した以外は、実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル2.8g(収率60%)を得た。
【0035】
[実施例8] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製法
窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0g(18mmol)を溶解し、触媒として塩化ニッケル (II)(和光純薬(株)社製;47mg、0.36mmol)を加え、−20℃に冷却した。これに実施例1の方法と同様にして得られた4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を、要維持温度を−16℃〜−14℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.1g(収率67%)を得た。
【0036】
[実施例9] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製法
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに臭化ニッケル(II)(和光純薬(株)社製;79mg、0.36mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0037】
[実施例10]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに塩化ニッケル(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン錯体(Strem Chemicals社製;95mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.3g(収率71%)を得た。
【0038】
[実施例11]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに塩化ニッケル(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン錯体(東京化成(株)社製;98mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0039】
[実施例12]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに塩化ニッケル(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体(Aldrich Chem.Co.社製;123mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0040】
[実施例13]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II) 47mgの代わりにテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)錯体(Aldrich Chem.Co.社製;199mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.1g(収率67%)を得た。
【0041】
[実施例14]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II) 47mgの代わりに塩化パラジウム(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体(東京化成(株)社製;132mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.2g(収率69%)を得た。
【0042】
[実施例15]
窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0g(18mmol)を溶解し、塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体116mg(0.18mmol)、更にトリフェニルホスフィン(和光純薬(株)社製;94mg、0.36mmol)を加え、−20℃に冷却した。これに実施例1の方法と同様にして得られた4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を要維持温度を、−16℃〜−14℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.6g(収率77%)を得た。
【0043】
[実施例16]
実施例15で用いたトリフェニルホスフィン94mgの代わりに水素化ジイソブチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(和光純薬(株)社製(1mol/L);0.35ml、0.35mmol)を用い、他は実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.5g(収率75%)を得た。
【0044】
[実施例17]
実施例15の反応開始時温度を−33℃に制御し、要維持温度を−27〜−25℃に制御した以外は、実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.2g(収率69%)を得た。
【0045】
[実施例18]
実施例15の反応開始時温度を−11℃に制御し、要維持温度を−9〜−7℃に制御した以外は、実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.5g(収率76%)を得た。
【0046】
[実施例19]
実施例15の反応開始時温度を0℃に制御し、要維持温度を+1〜+2℃に制御した以外は、実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.1g(収率67%)を得た。
【0047】
[実施例20] α−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸エチルエステルの製法
実施例1で用いた4−ブロモ−2−フルオロビフェニル4.52g(18mmol)の代わりに、文献「Synth.Commun., 32, 2, 279−286(2002)」に記載の方法に準じてイソブチルベンゼン(東京化成社製)から合成したp−クロルイソブチルベンゼン3.7g(18mmol)を用い、2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.1g(18mmol)の代わりに2−ブロモプロピオン酸エチルエステル3.3g(18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、α−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸エチルエステル3.2g(収率75%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
6.9−7.3(4H,m),4.01(2H,q,J=3Hz),3.6(1H,q,J=7Hz),2.4(2H,d,J=7Hz),1.6−2.0(1H,m),1.4(3H,d,J=7Hz),1.1(3H,t,J=7Hz),0.8(6H,d,J=7Hz)
【0048】
[実施例21]
実施例15で用いた4−ブロモ−2−フルオロビフェニル4.52g(18mmol)の代わりにp−クロルイソブチルベンゼン3.7g(18mmol)を用い、2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.1g(18mmol)の代わりに2−ブロモプロピオン酸エチルエステル3.3g(18mmol)を用い、他は実施例15と同様にして、α−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸エチルエステル3.3g(収率77%)を得た。
次に、特開昭58−35145記載の製法を比較例として示す。表1が示す通り、本発明の製法は、特開昭58−35145記載の製法に比べて、収率を著しく向上させることがわかる(実施例1と比較例1、または実施例8と比較例2より)。触媒配位子、または還元剤などの補助原料を使用しない場合、反応開始時温度が−30℃付近で75%、−20℃付近でも60%を越える高い収率が達成でき、工業的な製法として十分に満足のいく収率の製法であることがわかる。さらには、触媒配位子、または還元剤などの補助原料を使用した場合、反応開始時温度が−10℃〜0℃付近で65%、−20〜−10℃付近に限れば75%を越える高い収率が達成でき、工業的な製法として、触媒配位子、または還元剤などの補助原料を使用することが好ましいことがわかる。
【0049】
[比較例1]
窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0g(18mmol)を溶解し、塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体119mg(0.18mmol)を加え、0℃に冷却した。これに実施例1の方法と同様にして得られた4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を要維持温度1〜2℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル1.5g(収率32%)を得た。
【0050】
[比較例2]
比較例1で用いた塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体119mgの代わりに塩化ニッケル(II)47mg(0.36mmol)を用い、25℃で反応を開始し、要維持温度を27〜29℃で制御した以外は比較例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル2.2g(収率48%)を得た。
【0051】
【表1】
各実施例と比較例の条件と収率を表1に示す。
次に、本発明の製法で得られる一般式(1)で表される化合物を、一般式(4)で表される化合物へ変換する例を、以下に参考例として示す。
参考例が示す通り、本発明の製法で得られる一般式(1)で表される化合物は、単離精製することなく、一般式(4)で表される化合物へ変換することができる。従って、本発明の製法は、一般式(4)で表される化合物の有用な中間体である一般式(1)で表される化合物の工業的な製法として有用である。
【0052】
[参考例1] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸(フルルビプロフェン)の製造
実施例1と同様の方法にて取得した2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル64g(247mmol)を含む反応液(テトラヒドロフラン溶液)792gを減圧下に濃縮し、243gの油状物を得た。これに10%塩化アンモニウム水溶液を加え抽出した後、有機層に2規定水酸化ナトリウムを加えて50℃にて4時間攪拌した。反応液を放冷後、濾過した。濾過後の残渣を水に溶解し、トルエンにて抽出した後の水層に塩酸水を加え、pHを2とした。析出した結晶を濾過、水洗後、乾燥し、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸(フルルビプロフェン)54g(221mmol)を白色結晶として取得した。
【0053】
【発明の効果】
本発明の製法は、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体を、短工程且つ高収率で製造することができ、さらに、取得したα−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体を、単離精製することなく加水分解して、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸を製造できることから、本発明の製法は、医薬品として有用なα−置換フェニル−アルカンカルボン酸の製造中間体の工業的な製法として非常に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体の新規な製造方法に関する。更に詳しく言えば、本発明は、医薬品の有効成分として有用であるフルルビプロフェン、イブプロフェンなどに代表されるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸を製造するのに有用な中間体の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(4)
【化16】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子である]で表される化合物は、人間や動物に対して消炎、鎮痛、解熱等の薬効を示す。中でもRがメチル基、R1がイソブチル基、R2が水素原子である化合物(イブプロフェン)、Rがメチル基、R1がフェニル基、R2がR1に対してオルト位に位置するフッ素原子である化合物(フルルビプロフェン)及びこれらの塩は、特に優れた消炎、鎮痛、解熱の薬理効果を示すことが知られている。
これらのα−置換フェニル−アルカンカルボン酸またはその塩の、従来から知られている製造法としては、例えば、特許文献1〜10がある。これらの製法は、何れもよく知られた化学反応を巧みに組み合わせたものであるが、一般に工程が長く低収率であるため、必ずしも満足できるものではない。また、特許文献11、12記載の製法は、製造工程が短く、収率も高いが、各々ヨウ化マンガンやヘキサメチル燐酸トリアミドなど、工業的に一般的でなく、非常に高価な原料を用いているため、工業的製法としては適していない。更に特許文献13、14においては、白金等の高価な触媒を用いるため、触媒の回収操作に手間がかかるという課題がある。そして、特許文献15に記載されている製法は、工程が短く有利な方法であるが、やはり低収率という課題を残している。
【特許文献1】
特開昭56−97247号公報
【特許文献2】
特公平2−37335号公報
【特許文献3】
特開昭2−223542号公報
【特許文献4】
特開昭57−9757号公報
【特許文献5】
特公昭62−24419号公報
【特許文献6】
特開昭55−157523号公報
【特許文献7】
特開昭55−157530号公報
【特許文献8】
特開昭54−9249号公報
【特許文献9】
特開昭60−243040号公報
【特許文献10】
特公昭62−20175号公報
【特許文献11】
特開昭60−11439号公報
【特許文献12】
特公平3−19216号公報
【特許文献13】
特開昭51−127042号公報
【特許文献14】
特開昭56−95147号公報
【特許文献15】
特開昭58−35145号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、医薬品の有効成分として有用であるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸の新規な工業的製法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸の製造における有用な中間体であるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステルの製法において、
従来知られている製法に比べ、反応温度を適切に制御管理すること、及び触媒以外に触媒配位子等を添加することにより、簡便かつ高収率で容易に目的物を得る新規な製造方法を見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、以下のような構成を有する。
1) 一般式(1)
【化17】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化18】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化19】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
2) 一般式(1)
【化20】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化21】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化22】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の混合時反応温度で混合し、反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
3) 一般式(1)
【化23】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化24】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化25】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応温度で反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
4)上記1)記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
5)上記1)記載の製法において、反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
6)一般式(1)
【化26】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は、水素原子またはフッ素原子であり、Yは、カルボン酸の保護基]で表される化合物の製法であって、一般式(2)
【化27】
[式中、X1は、ハロゲン原子であり、R1、R2は、前記と同じ意味を示す]で表される化合物と、一般式(3)
【化28】
[式中、X2は、ハロゲン原子であり、Yは、前記と同じ意味を示す]
で表される化合物及びニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒に、更に還元剤または錯体形成量を超える量の触媒配位子を加え、反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
7)上記6)記載の製法において、−40℃以上80℃以下の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
8)上記7)記載の製法において、−40℃以上10℃以下の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
9)上記6)記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
10)上記6)記載の製法において、反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
11)上記6)〜8)のいずれかに記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上80℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
12)上記6)記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上−10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
13)上記6)記載の製法において、反応温度が−40℃以上−10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
14)X1が、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である上記1)〜13)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
15)ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒が、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体である上記1)〜14)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
16)触媒配位子が、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン(DPPE)、1,2−ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)から選ばれたいずれか1つあるいは複数の組み合わせであることを特徴とする上記6)〜15)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
17)還元剤が水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)のいずれか1つあるいは複数の組み合わせであることを特徴とする上記6)〜15)のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
18)一般式(1)で表される化合物が、
【化29】
[式中、Yは、請求項1と同じ意味を示す]である上記1)〜17)のいずれかに記載の製法。
19)一般式(1)で表される化合物が、
【化30】
[式中、Yは、請求項1と同じ意味を示す]である上記1)〜17)のいずれかに記載の製法。
20)上記1)〜19)のいずれかに記載の製法において得られた一般式(1)で表される化合物をカルボン酸の保護基の脱保護反応を行うことにより、一般式(4)
【化31】
で表される化合物を得ることを特徴とする化合物の製法。
【0005】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の製法の目的物である一般式(1)について説明する。
本明細書においては特に断らない限り、ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子が例示される。また、アルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状、又はそれらの組み合わせからなる飽和炭化水素基が例示される。従って、C1〜C4アルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、又はシクロプロピルメチル基が挙げられ、C1〜C6アルキル基の具体的な例としては、上記C1〜C4アルキル基の具体例に加えて、例えば、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、シクロプロピルエチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロプロピルプロピル基などが挙げられ、C1〜C7アルキル基の具体的な例としては、上記C1〜C6アルキル基の具体例に加えて、例えば、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基などが挙げられる。
【0006】
アリール基としては、例えば、単環式芳香族炭化水素基、単環式芳香族複素環基、縮合芳香族炭化水素基、縮合芳香族複素環基などが挙げられ、単環式芳香族炭化水素基、縮合芳香族炭化水素基が好ましく、単環式芳香族炭化水素基がさらに好ましい。単環式芳香族炭化水素基としては、フェニル基が好ましく、縮合芳香族炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アンスリル基などが好ましい。また、単環式芳香族複素環基としては、2−または3−チエニル基、2−,3−または4−ピリジル基などが好ましく、縮合芳香族複素環基として、2−,3−,4−,5−または8−キノリル基、1−,3−,4−,5−,6−,7−または8−イソキノリル基、1−,2−,3−,4−,5−,6−または7−インドリル基などが好ましい。
【0007】
フッ素化アリール基としては、上記アリール基において、1乃至3個、好ましくは1乃至2個、より好ましくは1個の任意の水素原子がフッ素原子に置換したアリール基が挙げられる。具体的には、フッ素化単環式芳香族炭化水素基、フッ素化単環式芳香族複素環基、フッ素化縮合芳香族炭化水素基、フッ素化縮合芳香族複素環基などが挙げられ、フッ素化単環式芳香族炭化水素基、フッ素化縮合芳香族炭化水素基が好ましく、フッ素化単環式芳香族炭化水素基がさらに好ましい。フッ素化アリール基の好ましい例としては、例えば、2−,3−、または4−フルオロフェニル基などが挙げられる。
【0008】
アリールオキシ基としては、単環式芳香族炭化水素のエーテル基、単環式芳香族複素環のエーテル基、フッ素化縮合芳香族炭化水素のエーテル基、フッ素化縮合芳香族複素環のエーテル基などが挙げられ、単環式芳香族炭化水素のエーテル基、縮合芳香族炭化水素のエーテル基が好ましく、単環式芳香族炭化水素のエーテル基がさらに好ましい。アリールオキシ基の好ましい例としては、例えば、フェノキシ基、2−または3−チエニルオキシ基、2−,3−または4−ピリジルオキシ基などが挙げられ、フェノキシ基が特に好ましい。
【0009】
アラルキル基としては、直鎖状、分枝状の飽和炭化水素基の1個以上、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個の任意の水素原子が芳香環に置換した炭化水素基が例示され、通常、C7−19アラルキル基が好ましい。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などが好ましく、ベンジル基、フェネチル基がさらに好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
【0010】
Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基である。Rとしては、水素原子、C1〜C4アルキル基、ベンジル基が好ましく、なかでも水素原子、メチル基、ベンジル基が好ましい。また、C1〜C4アルキル基、ベンジル基がさらに好ましく、なかでもメチル基、ベンジル基がさらに好ましい。さらには、C1〜C4アルキル基が特に好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基である。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、2−,3−または4−フルオロフェニル基またはフェノキシ基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、フェニル基、ベンジル基がさらに好ましく、i−ブチル基、フェニル基が特に好ましい。
R2は、水素原子またはフッ素原子である。R2としては、水素原子が好ましく、また、フッ素原子も大変に好ましい。フッ素原子である場合の置換位置は、R1に対してオルト位またはメタ位が挙げられるが、オルト位及びメタ位が好ましく、オルト位が特に好ましい。
Yは、カルボン酸の保護基である。カルボン酸の保護基としては、公知のカルボン酸の保護基であれば何を用いてもよいが、例えば、C1〜C7アルキル基、アリール基またはアラルキル基が好ましい。Yとしては、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基などが好ましく、メチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
【0011】
目的物(1)において、各置換基の好ましい組み合わせは特に限定されないが、例えば、
(1)Rが、水素原子、メチル基またはベンジル基である化合物;
(2)Rが、C1〜C4アルキル基である化合物
(3)Rが、メチル基である化合物;
(4)R1が、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、2−,3−または4−フルオロフェニル基またはフェノキシ基である化合物;
(5)R1が、i−ブチル基、フェニル基である化合物;
(6)R1が、フェニル基である化合物;
(7)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基である化合物;
(8)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である化合物;
(9)Rが、水素原子、メチル基またはベンジル基であり、R1が、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、2−,3−または4−フルオロフェニル基またはフェノキシ基であり、Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、ベンジル基である化合物;
(10)Rが、メチル基であり、R1が、i−ブチル基、フェニル基であり、Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である化合物;
(11)Rが、メチル基であり、R1が、フェニル基である化合物;
(12)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である上記(11)に記載の化合物;
(13)R2が、フッ素原子である上記(1)〜(12)に記載の化合物;
(14)R2の置換位置がR1のオルト位である上記(1)〜(13)に記載の化合物;
(15)Rが、メチル基であり、R1が、i−ブチル基である化合物;
(16)Yが、メチル基、エチル基、t−ブチル基である上記(15)に記載の化合物;
(17)R2が、水素原子である上記(1)〜(10)、(15)または(16)に記載の化合物;
がより好ましい。
【0012】
次に、一般式(2)及び一般式(3)、さらには各用語について説明する。
X1は、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子がさらに好ましく、臭素原子及びヨウ素原子が特に好ましい。
X2は、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子がさらに好ましく、臭素原子及びヨウ素原子が特に好ましい。
ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒としては、ニッケルまたはパラジウムなどの金属単体触媒、あるいは無機酸塩及び有機酸塩などの化合物、さらには、それらの任意の比率の混合触媒が挙げられるが、ニッケルまたはパラジウムなどの無機酸塩及び有機酸塩が好ましい。また、ニッケルまたはパラジウムなどの金属単体のホスフィン系錯体も好ましい。無機酸塩としては、例えば、ハロゲン化物が好ましい。該ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが好ましく、また、該ハロゲン化物のホスフィン錯体なども好ましい。例えば、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体が好ましく、そのうち、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、それらのホスフィン系錯体、ニッケルまたはパラジウムなどの金属単体のホスフィン系錯体または塩化パラジウム(PdCl2)のホスフィン系錯体が特に好ましい。また、無機酸塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩等が好ましく、有機酸塩としては、例えば、炭酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート等が好ましい。ニッケル化合物及び/又はパラジウム化合物としては、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体が好ましく、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、それらのホスフィン系錯体、または塩化パラジウム(PdCl2)のホスフィン系錯体がさらに好ましい。ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の具体例としては、NiCl2、NiBr2、NiI2、PdCl2、NiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2CH2P(C6H5)2]、PdCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]などから選ばれる1種以上からなる触媒があげられるが、そのうちでも、NiCl2、NiBr2、NiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2CH2P(C6H5)2]、PdCl2[(C6H5)2PFeP(C6H5)2]などから選ばれる1種以上からなる触媒がより好ましく、さらに、そのうちでもNiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4、NiCl2[(C6H5)2PCH2CH2P(C6H5)2]、などから選ばれる1種以上からなる触媒が特に好ましく、NiCl2[P(C6H5)3]2が最も好ましい。
また、これら触媒が何らかの担体、例えば、炭素粉末等に担持された触媒も好ましい。
【0013】
錯体形成量を超える量を添加する触媒配位子としては、ホスフィン系が好ましく、例えば、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン(DPPE)、1,2−ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)などが好ましく、そのうちでも、トリフェニルホスフィンが特に好ましい。通常、ニッケル化合物、パラジウム化合物からなる触媒として、ニッケルまたはパラジウムなどのハロゲン化物、またはそれらのホスフィン系錯体を用いている場合には、これらホスフィン系錯体の触媒配位子を用いるのが好ましい。触媒と触媒配位子の組み合わせは、何ら限定されるものではないが、特に、ニッケル化合物及び/又はパラジウム化合物として、ニッケルまたはパラジウムなどのハロゲン化物のホスフィン系錯体を用いている場合、ホスフィン系錯体の種類と同一の種類の触媒配位子を選択することが好ましい。
還元剤としては、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)などが好ましく、DIBALがさらに好ましい。
【0014】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の反応は、反応開始時温度、混合時反応温度、反応温度によって管理される。
ここで、反応開始時温度とは反応が開始されるときの温度をいう。
例えば、化合物(3)および触媒の混合溶液に化合物(2)を少量ずつ添加することによって反応が開始される場合には、反応開始時温度は化合物(3)および触媒の混合溶液の温度に限りなく近いものとなり、この温度をあらかじめ所望の温度に管理制御することが重要となる。
また、化合物(2)および(3)をあらかじめ混合して混合溶液とし、触媒等の添加により反応が開始されるような場合にあっては、(2)および(3)の混合溶液の温度を所望の反応開始時温度に制御しておく必要がある。
混合時反応温度とは化合物(2)、化合物(3)および反応に必要な触媒等の混合が開始されてから終了するまでの温度をいう。
例えば、(2)と触媒等があらかじめ混合して調整され、それに化合物(3)を混合(添加)することによって反応が開始される場合には、混合時反応温度とは、化合物(3)の混合(添加)が開始してから混合(添加)が終了するまでの反応溶液の温度をさす。従って、混合時反応温度には反応開始時温度が含まれる。反応温度とは反応が開始してから反応が終了するまでの温度をいい、反応温度には反応開始時温度が含まれ、また、混合時反応温度も含まれる。ここで、化合物等を混合しているときに、瞬時に反応が起こり、混合終了と同時に反応が終了する場合には、混合時反応温度と反応温度は実質的に同じ意味をもつことになる。しかし、混合終了後もなお、反応が進行している場合には、混合終了時点と反応終了時点とは異なるものとなり、その結果として、混合時反応温度と反応温度も異なるものとなる。
【0015】
触媒配位子または還元剤等の補助原料を加えない場合、反応開始時温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−35℃以上がさらに好ましく、上限としては、−10℃未満が好ましく、−15℃以下がさらに好ましい。
また、混合時反応温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−25℃以上がさらに好ましく、上限としては、+10℃以下が好ましく、+5℃以下がさらに好ましく、−10℃未満が特に好ましい。
混合時反応温度のうち、混合が開始し、反応の大部分が行われる温度を特に混合時要維持反応温度(以下要維持温度という)といい、これは混合時反応温度のうちでも温度管理が最も重要な部分である。すなわち、反応開始直後は反応熱により反応液は反応開始時温度より次第に上昇する。しかし、適正な温度制御管理により一定の温度とすることができる。このように、混合液を要維持温度に制御することで収率の向上を図ることが可能となる。要維持温度は、通常、開始時温度よりも数℃〜5℃位高い温度となっている。
【0016】
一方、触媒配位子または還元剤等の補助原料を加える場合の反応開始時温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−25℃以上がさらに好ましく、上限としては80℃以下が好ましく、+10℃以下がさらに好ましく、0℃以下がより一層好ましく、−10℃未満が特に好ましく、−15℃以下が大変に好ましい。
また、混合時反応温度の下限としては、−40℃以上が好ましく、−25℃以上がさらに好ましく、−20℃以上が特に好ましく、上限としては、80℃以下が好ましく、+10℃以下がさらに好ましく、+5℃以下がより一層好ましく、−10℃未満が特に好ましい。
反応に用いる溶媒としては、不活性溶媒であれば何れでも良いが、エーテル系溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル等が好ましい。また、これら溶媒の任意の比率の混合溶媒を用いてもよい。さらには、これらの溶媒に、炭化水素系溶媒などを適当な比率で混合した溶媒を用いてもよい。該炭化水素系溶媒としては、飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。飽和炭化水素系溶媒としては、例えば、C5〜C10の直鎖状アルカン溶媒、C5〜C10の分岐状アルカン溶媒、または直鎖状及び/又は分岐状アルキル置換基を有してもよい炭素数が6個〜10個の環状アルカン溶媒があげられ、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどが好ましい例としてあげられる。また、芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが好ましい例としてあげられる。
【0017】
次に、本発明の製法について説明する。
本発明の製法は、一般式(2)
【化32】
[式中、R1は、水素原子、C1〜C6アルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素化アリール基またはアリールオキシ基、R2は水素原子またはフッ素原子、X2はハロゲン原子である]で表される化合物、即ちグリニャール試薬と、一般式(3)
【化33】
[式中、Rは、水素原子、C1〜C4アルキル基またはアラルキル基、X2はハロゲン原子であり、Yはカルボン酸の保護基である。]で示されるα−ハロアルカンカルボン酸エステルを、ニッケル化合物又はパラジウム化合物に代表される触媒の存在下、特に、反応開始時温度を−40℃以上−10℃未満に制御して反応を開始させること、若しくは上記の混合物にさらにトリフェニルホスフィンに代表される金属配位子、または水素化ジイソブチルアルミニウムリチウムに代表される還元剤を加えて、特に、反応開始時温度を−40℃以上+10℃未満に制御して反応を開始させることにより、一般式(1)で表される化合物を収率よく得る工程を特徴とする。
【0018】
一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物の混合方法としては、一般式(3)で表される化合物に対して一般式(2)で表される化合物を滴下する方法、あるいは、一般式(2)で表される化合物に対して一般式(3)で表される化合物を滴下する方法、が挙げられ、共に好ましいが、一般式(3)で表される化合物に対して一般式(2)で表される化合物を滴下する方法がより好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物において、置換基Rが置換する炭素原子は、Rが水素原子以外の場合は不斉炭素である。この不斉炭素の立体配置は特に限定されず、S配置又はR配置のいずれであってもよく、この不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性対の任意の混合物またはラセミ体であってもよいが、本発明の製法の目的物としては、ラセミ体が好ましい。
また、上記一般式(1)で表される化合物は、置換基の種類に応じてさらに1または2以上の不斉炭素を有する場合があるが、上記の特定の不斉炭素以外の立体配置は特に限定されず、任意の立体配置であってもよい。1または2以上の不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性体またはジアステレオ異性体などの立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の製法の目的物として一般式(1)に包含される。
【0020】
得られた一般式(1)で表される化合物は、ついで加水分解することにより、容易に一般式(4)
【化34】
[式中、R、R1及びR2は、前記と同じ意味を示す]で表されるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸に変換し得る。
【0021】
本発明を実施するにあたり、出発物質として使用される一般式(2)で表される化合物は、次のようにして製造することができる。一般式(5)
【化35】
[式中、R1及びR2は、前記と同じ意味を示す]で表されるハロゲン化ベンゼンと、金属マグネシウムを、無水エーテル系溶媒中で窒素等不活性ガス雰囲気下にて反応させる、通常のグリニャール試薬を得る反応に準じて行えばよい。反応に用いる溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル等が好ましい例として挙げられる。一般式(5)で表される化合物は、市販化合物として入手するか、公知の方法、例えば、特許文献「DE 2241913」、「FR 2231393」、「DE 2426160」、または文献「Synth.Commun., 32, 2, 279−286(2002)」に記載の方法に準じて製造することができる。
【0022】
また、一般式(3)で表される化合物は、市販化合物として入手するか、公知の方法、例えば、文献「Helv.Chim.Acta,, 66(4), 1028−1030 (1983)」、「J.Indian Chem.Soc.,10, 592,(1933)」、「Chem.Zentralbl., 105(I), 2105(1934)」に記載の方法に準じて製造することができる。一般式(3)で表される化合物において、置換基Rが置換する炭素原子は、Rが水素原子以外の場合は、不斉炭素原子である。一般式(3)で表される化合物としては、この不斉炭素の立体配置は特に限定されず、S配置又はR配置のいずれであってもよく、この不斉炭素に基づく純粋な形態の光学活性対の任意の混合物またはラセミ体を用いてもよいが、通常、本発明としては、ラセミ体を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の方法、即ち一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物とにより、一般式(1)で表される化合物を製造する方法をさらに詳述する。
(方法1)
予め一般式(3)で表される化合物とニッケル化合物またはパラジウム化合物触媒のテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒溶液または懸濁液を窒素等の不活性ガス雰囲気下にて調製し、反応開始時温度の下限として、−40℃以上、さらに好ましくは−35℃以上、上限として−10℃、さらに好ましくは−15℃以下で反応を開始させる。
すなわち、反応開始時温度の範囲としては、−40℃以上−10℃未満、好ましくは−35℃以上−15℃以下に冷却攪拌しておく。これに一般式(2)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、混合時反応温度の下限として、−40℃以上、好ましくは−25℃以上、上限として、+10℃以下、好ましくは+5℃以下、さらに好ましくは−10℃未満で混合し、反応させる。すなわち、混合時反応温度の範囲として−40℃以上+10℃以下、好ましくは−40℃以上+5℃以下、さらに好ましくは−25℃以上−10℃未満に制御しながら8時間以内、好ましくは60分以内に添加(混合)する。添加終了後、反応液を0〜48時間攪拌する反応時間が例示されるが、該反応時間は特に限定はされず、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)その他の分析手段により反応の進行状態を容易に追跡できるため、目的物の収量が最大となる時点で終了すればよい。
反応後の反応液を塩化アンモニウム水溶液中に加え、本発明の目的物である一般式(1)で表される化合物の粗精製物を含む有機層を回収する。
【0024】
(方法2)
予め一般式(3)で表される化合物とニッケル化合物またはパラジウム化合物触媒のテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒溶液または懸濁液にトリフェニルホスフィン等の触媒配位子または水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を加えたものを窒素等の不活性ガス雰囲気下にて調製し、反応開始時温度の下限として、−40℃以上、さらに好ましくは−25℃以上、上限として80℃以下、さらに好ましくは+10℃以下、一層好ましくは0℃以下、なお一層好ましくは−10℃未満、大変好ましくは−15℃以下で反応を開始させる。すなわち、反応開始時温度の範囲としては、−40℃以上+80℃以下、好ましくは、−40℃以上+10℃以下、さらに好ましくは−40℃以上−10℃未満、なお好ましくは−25℃以上−10℃未満に冷却攪拌しておく。
これに一般式(2)で表される化合物のテトラヒドロフラン溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、混合時反応温度の下限として−40℃以上、好ましくは−25℃以上、さらに好ましくは−20℃以上、上限としては、80℃以下、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは5℃以下、特に好ましくは−10℃未満で混合し、反応させる。すなわち、混合時反応温度の範囲としては、−40℃以上+80℃以下、好ましくは−25℃以上+10℃以下、なお好ましくは−25℃以上−10℃未満、さらに好ましくは−20℃以上−10℃未満に制御しながら8時間以内、好ましくは60分以内に混合(添加)する。添加終了後、反応液を0〜48時間攪拌する反応時間が例示されるが、前記の分析手段を用いて目的物の収量が最大となる時点で終了すればよい。反応後の反応液を塩化アンモニウム水溶液中に加え、本発明の目的物である一般式(1)で表される化合物の粗精製物を含む有機層を回収する。
【0025】
上記、方法1及び方法2において、一般式(1)で表される化合物を単離する場合は、この後、脱水、濃縮等の操作を行い、シリカゲルカラムクロマト、減圧蒸留または結晶化等の処理により精製取得できる。しかし、この一般式(1)で表される化合物は単離することなく加水分解等のカルボン酸の保護基の脱保護反応を行い、鎮痛抗炎症作用を持つ一般式(4)で表される化合物、即ち、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸に誘導するのがよい。一般式(3)で表される化合物としては、ラセミ体を用いることが好ましく、光学活性体を用いた場合は、一般式(4)で表される化合物を得るための加水分解の条件としては、酸条件が好ましい。
【0026】
本発明における一般式(2)で表される化合物で示されるハロゲン化ベンゼンと金属マグネシウムから調製したグリニャール試薬を一般式(3)で表される化合物で示されるα−ハロアルカンカルボン酸エステルと反応させるときに用いるニッケル化合物及び/又はパラジウム化合物の使用量は、グリニャール試薬に対して0.01モル%〜10モル%が好ましく、0.05モル%〜0.5モル%がさらに好ましい。一般式(3)で表されるα−ハロアルカンカルボン酸エステルの使用量は、グリニャール試薬調製時に用いた一般式(2)で表されるハロゲン化ベンゼンの0.8倍モル〜約2倍モルが好ましく、1.0倍モル〜1.5倍モルがさらに好ましい。
【0027】
また、本発明において触媒配位子を使用する場合、その使用量は、触媒がホスフィン系錯体以外の場合は、触媒と該触媒配位子とが、錯体を形成するのに必要な量を超える量の触媒配位子を加えることが好ましい。具体的には、触媒がニッケル及び/又はパラジウムの金属単体触媒の場合は、下限としては、4倍モルを超える量が好ましく、4.5倍モル以上がより好ましく、5.5倍モル以上がさらに好ましい。この時、上限としては、9倍モル以下が好ましく、6.5倍モル以下がさらに好ましい。
また、触媒が2価のニッケル及び/又はパラジウム化合物であり、且つ、ホスフィン系錯体以外である場合、例えば、NiCl2などの場合は、加える触媒配位子の量の下限としては、2倍モルを超える量が好ましく、2.5倍モル以上がより好ましく、3.5倍モル以上がさらに好ましい。また、この時、上限としては、7倍モル以下が好ましく、4.5倍モル以下がさらに好ましい。
そして、触媒がホスフィン系錯体である場合、例えば、NiCl2[P(C6H5)3]2、Ni[P(C6H5)3]4などの場合は、加える触媒配位子の量の下限としては、0.1倍モルを超える量が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上がさらに好ましい。この時、上限としては、5倍モル以下が好ましく、2.5倍モル以下がさらに好ましい。
本発明の方法により得られた一般式(1)で表されるα−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステルは一般的なエステルの脱保護条件、例えば加水分解や、保護基によっては水素添加による脱保護反応等により容易に脱保護され、相当するα−置換フェニル−アルカンカルボン酸を与える。
【0028】
【実施例】
次に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
[実施例1] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製法
窒素雰囲気下、金属マグネシウム片437mg(18mmol)及びテトラヒドロフラン18ml中に4−ブロモ−2−フルオロビフェニル(Aldrich Chem.Co.社製;4.52g、18mmol)をテトラヒドロフラン18mlに溶解した溶液を室温にて滴下後、3時間攪拌し、グリニャール試薬を調節した。
一方、予め別の容器にて窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル(東京化成(株)社製;3.1g、18mmol)を溶解し、触媒として塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体(東京化成(株)社製;117mg、0.18mmol)を加え、−30℃に冷却した。これに上記の方法にて取得した4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を、要維持温度を−26℃〜−24℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.6g(収率78%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
7.1−7.6(8H,m),3.8(1H,q,J=7Hz),3.7(3H,s),1.5(3H,d,J=7Hz)
【0029】
[実施例2] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸エチルエステルの製法
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに2−ブロモプロピオン酸エチルエステル(東京化成(株)社製;3.3g、18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸エチルエステル3.7g(収率76%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
7.1−7.6(8H,m),4.1−4.2(2H,q,J=3Hz),3.7(1H,q,J=7Hz),1.5(3H,d,J=7Hz),1.2(3H,t,J=7Hz)
【0030】
[実施例3] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸tert−ブチルエステルの製法
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに2−ブロモプロピオン酸tert−ブチルエステル(東京化成(株)社製;3.8g、18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸tert−ブチルエステル3.3g(収率61%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
7.1−7.6(8H,m),3.8(1H,q,J=7Hz),1.5(3H,d,J=7Hz),1.5(9H,s)
【0031】
[実施例4]
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに2−クロロプロピオン酸メチルエステル(和光純薬(株)社製;2.2g、18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル2.9g(収率63%)を得た。
【0032】
[実施例5]
工程1:「2−ヨードプロピオン酸メチルエステルの合成」
2−ヒドロキシプロピオン酸メチルエステル8.7g(84mmol)を塩化メチレンに溶解し、p−トルエンスルフォニルクロリド18.9g(110mmol)、さらにトリエチルアミン11.1g(110mmol)を加え、50℃にて2時間攪拌した。水洗した後、有機層を脱水、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(p−トルエンスルフォニル)プロピオン酸メチルエステル16.0g(62mmol)を得た。
次にヨウ化ナトリウム19.8g(132mmol)をアセトンに懸濁し、これに上記で取得した2−(p−トルエンスルフォニル)プロピオン酸メチルエステル11.4g(44mmol)のアセトン溶液を加え、室温にて一晩攪拌した。反応液を抽出、濃縮後減圧蒸留し、2−ヨードプロピオン酸メチルエステル5.7g(27mmmol)を紫色オイルとして取得し、これ以上精製することなく次の工程へ供した。
工程2:「2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの合成」
実施例1で用いた2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0gの代わりに、実施例5工程1で合成した2−ヨードプロピオン酸メチルエステル3.9g(18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.5g(収率75%)を得た。
【0033】
[実施例6]
実施例1の反応開始時温度を−20℃に制御し、要維持温度を−16〜−14℃に制御した以外は、実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0034】
[実施例7]
実施例1の反応開始時温度を−11℃に制御し、要維持温度を−6〜−4℃に制御した以外は、実施例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル2.8g(収率60%)を得た。
【0035】
[実施例8] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製法
窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0g(18mmol)を溶解し、触媒として塩化ニッケル (II)(和光純薬(株)社製;47mg、0.36mmol)を加え、−20℃に冷却した。これに実施例1の方法と同様にして得られた4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を、要維持温度を−16℃〜−14℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.1g(収率67%)を得た。
【0036】
[実施例9] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステルの製法
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに臭化ニッケル(II)(和光純薬(株)社製;79mg、0.36mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0037】
[実施例10]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに塩化ニッケル(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン錯体(Strem Chemicals社製;95mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.3g(収率71%)を得た。
【0038】
[実施例11]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに塩化ニッケル(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン錯体(東京化成(株)社製;98mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0039】
[実施例12]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II)47mgの代わりに塩化ニッケル(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体(Aldrich Chem.Co.社製;123mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.0g(収率65%)を得た。
【0040】
[実施例13]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II) 47mgの代わりにテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)錯体(Aldrich Chem.Co.社製;199mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.1g(収率67%)を得た。
【0041】
[実施例14]
実施例8で用いた塩化ニッケル(II) 47mgの代わりに塩化パラジウム(II)・1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体(東京化成(株)社製;132mg、0.18mmol)を用い、他は実施例8と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.2g(収率69%)を得た。
【0042】
[実施例15]
窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0g(18mmol)を溶解し、塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体116mg(0.18mmol)、更にトリフェニルホスフィン(和光純薬(株)社製;94mg、0.36mmol)を加え、−20℃に冷却した。これに実施例1の方法と同様にして得られた4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を要維持温度を、−16℃〜−14℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.6g(収率77%)を得た。
【0043】
[実施例16]
実施例15で用いたトリフェニルホスフィン94mgの代わりに水素化ジイソブチルアルミニウムのn−ヘキサン溶液(和光純薬(株)社製(1mol/L);0.35ml、0.35mmol)を用い、他は実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.5g(収率75%)を得た。
【0044】
[実施例17]
実施例15の反応開始時温度を−33℃に制御し、要維持温度を−27〜−25℃に制御した以外は、実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.2g(収率69%)を得た。
【0045】
[実施例18]
実施例15の反応開始時温度を−11℃に制御し、要維持温度を−9〜−7℃に制御した以外は、実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.5g(収率76%)を得た。
【0046】
[実施例19]
実施例15の反応開始時温度を0℃に制御し、要維持温度を+1〜+2℃に制御した以外は、実施例15と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル3.1g(収率67%)を得た。
【0047】
[実施例20] α−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸エチルエステルの製法
実施例1で用いた4−ブロモ−2−フルオロビフェニル4.52g(18mmol)の代わりに、文献「Synth.Commun., 32, 2, 279−286(2002)」に記載の方法に準じてイソブチルベンゼン(東京化成社製)から合成したp−クロルイソブチルベンゼン3.7g(18mmol)を用い、2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.1g(18mmol)の代わりに2−ブロモプロピオン酸エチルエステル3.3g(18mmol)を用い、他は実施例1と同様にして、α−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸エチルエステル3.2g(収率75%)を得た。
1H−NMR(CDCl3,δppm)
6.9−7.3(4H,m),4.01(2H,q,J=3Hz),3.6(1H,q,J=7Hz),2.4(2H,d,J=7Hz),1.6−2.0(1H,m),1.4(3H,d,J=7Hz),1.1(3H,t,J=7Hz),0.8(6H,d,J=7Hz)
【0048】
[実施例21]
実施例15で用いた4−ブロモ−2−フルオロビフェニル4.52g(18mmol)の代わりにp−クロルイソブチルベンゼン3.7g(18mmol)を用い、2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.1g(18mmol)の代わりに2−ブロモプロピオン酸エチルエステル3.3g(18mmol)を用い、他は実施例15と同様にして、α−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸エチルエステル3.3g(収率77%)を得た。
次に、特開昭58−35145記載の製法を比較例として示す。表1が示す通り、本発明の製法は、特開昭58−35145記載の製法に比べて、収率を著しく向上させることがわかる(実施例1と比較例1、または実施例8と比較例2より)。触媒配位子、または還元剤などの補助原料を使用しない場合、反応開始時温度が−30℃付近で75%、−20℃付近でも60%を越える高い収率が達成でき、工業的な製法として十分に満足のいく収率の製法であることがわかる。さらには、触媒配位子、または還元剤などの補助原料を使用した場合、反応開始時温度が−10℃〜0℃付近で65%、−20〜−10℃付近に限れば75%を越える高い収率が達成でき、工業的な製法として、触媒配位子、または還元剤などの補助原料を使用することが好ましいことがわかる。
【0049】
[比較例1]
窒素雰囲気下テトラヒドロフラン18ml中に2−ブロモプロピオン酸メチルエステル3.0g(18mmol)を溶解し、塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体119mg(0.18mmol)を加え、0℃に冷却した。これに実施例1の方法と同様にして得られた4−ブロモ−2−フルオロビフェニルのグリニャール試薬テトラヒドロフラン溶液を要維持温度1〜2℃に制御しながら加えた。10分間攪拌を続けた後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を食塩水で洗浄,乾燥,濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル1.5g(収率32%)を得た。
【0050】
[比較例2]
比較例1で用いた塩化ニッケル(II)・ビス(トリフェニルホスフィン)錯体119mgの代わりに塩化ニッケル(II)47mg(0.36mmol)を用い、25℃で反応を開始し、要維持温度を27〜29℃で制御した以外は比較例1と同様にして、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル2.2g(収率48%)を得た。
【0051】
【表1】
各実施例と比較例の条件と収率を表1に示す。
次に、本発明の製法で得られる一般式(1)で表される化合物を、一般式(4)で表される化合物へ変換する例を、以下に参考例として示す。
参考例が示す通り、本発明の製法で得られる一般式(1)で表される化合物は、単離精製することなく、一般式(4)で表される化合物へ変換することができる。従って、本発明の製法は、一般式(4)で表される化合物の有用な中間体である一般式(1)で表される化合物の工業的な製法として有用である。
【0052】
[参考例1] 2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸(フルルビプロフェン)の製造
実施例1と同様の方法にて取得した2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸メチルエステル64g(247mmol)を含む反応液(テトラヒドロフラン溶液)792gを減圧下に濃縮し、243gの油状物を得た。これに10%塩化アンモニウム水溶液を加え抽出した後、有機層に2規定水酸化ナトリウムを加えて50℃にて4時間攪拌した。反応液を放冷後、濾過した。濾過後の残渣を水に溶解し、トルエンにて抽出した後の水層に塩酸水を加え、pHを2とした。析出した結晶を濾過、水洗後、乾燥し、2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)プロピオン酸(フルルビプロフェン)54g(221mmol)を白色結晶として取得した。
【0053】
【発明の効果】
本発明の製法は、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体を、短工程且つ高収率で製造することができ、さらに、取得したα−置換フェニル−アルカンカルボン酸エステル誘導体を、単離精製することなく加水分解して、α−置換フェニル−アルカンカルボン酸を製造できることから、本発明の製法は、医薬品として有用なα−置換フェニル−アルカンカルボン酸の製造中間体の工業的な製法として非常に有用である。
Claims (20)
- 一般式(1)
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。 - 一般式(1)
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の混合時反応温度で混合し、反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。 - 一般式(1)
で表される化合物とをニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒の存在下、−40℃以上−10℃未満の反応温度で反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。 - 請求項1記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項1記載の製法において、反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 一般式(1)
で表される化合物及びニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒に、更に還元剤または錯体形成量を超える量の触媒配位子を加え、反応させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。 - 請求項6記載の製法において、−40℃以上80℃以下の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項7記載の製法において、−40℃以上10℃以下の反応開始時温度で反応を開始させることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項6記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項6記載の製法において、反応温度が−40℃以上10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項6〜8のいずれかに記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上80℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項6記載の製法において、混合時反応温度が−40℃以上−10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- 請求項6記載の製法において、反応温度が−40℃以上−10℃以下であることを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製法。
- X1が、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である請求項1〜13のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
- ニッケル、ニッケル化合物、パラジウム及びパラジウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる触媒が、塩化ニッケル(NiCl2)、臭化ニッケル(NiBr2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、塩化パラジウム(PdCl2)、またはそれらのホスフィン系錯体である請求項1〜14のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
- 触媒配位子が、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン(DPPE)、1,2−ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)から選ばれたいずれか1つあるいは複数の組み合わせであることを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
- 還元剤が水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)のいずれか1つあるいは複数の組み合わせであることを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の一般式(1)で表される化合物の製法。
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-
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