JP2004335782A - 注入同期式レーザ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】増幅レーザ光のブロードバンド成分を低減することが可能な注入同期式レーザ装置を提供する。
【解決手段】
レーザガスが充填されたオシレータチャンバ(12A)内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光(21A)を発生させるオシレータ(11A)と、レーザガスが充填された増幅チャンバ(12B)内で放電を起こし、オシレータレーザ光(21A)を増幅する増幅器(11B)とを備えた注入同期式レーザ装置において、オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)が所定の閾値(Ith)以上となり、かつ、オシレータレーザ光(21A)のスペクトル線幅(Δλ)が、所定の閾値(Δλth)よりも狭い状態にある時間内に、増幅チャンバ(12B)内での放電を発生させるようにしたことを特徴とする注入同期式レーザ装置。
【選択図】 図1
【解決手段】
レーザガスが充填されたオシレータチャンバ(12A)内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光(21A)を発生させるオシレータ(11A)と、レーザガスが充填された増幅チャンバ(12B)内で放電を起こし、オシレータレーザ光(21A)を増幅する増幅器(11B)とを備えた注入同期式レーザ装置において、オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)が所定の閾値(Ith)以上となり、かつ、オシレータレーザ光(21A)のスペクトル線幅(Δλ)が、所定の閾値(Δλth)よりも狭い状態にある時間内に、増幅チャンバ(12B)内での放電を発生させるようにしたことを特徴とする注入同期式レーザ装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、注入同期式のレーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光を発生させるオシレータと、このオシレータレーザ光を増幅してパワーの大きな増幅レーザ光を発生させる増幅器とを備えた、注入同期式レーザ装置が知られている。
【0003】
図15に、フッ素分子レーザ装置を例に取って、一般的な注入同期式レーザ装置11の平面図を示す。図15において、注入同期式レーザ装置11は、波長を狭帯域化されたオシレータレーザ光21Aを発生させるオシレータ11Aと、オシレータレーザ光21Aを増幅して増幅レーザ光21Bを発生させる増幅器11Bとを備えている。
【0004】
オシレータ11Aは、フッ素を含むレーザガスを封入したオシレータチャンバ12Aを備えており、その前後にはレーザ光を透過するウィンドウ17A,19Aが付設されている。オシレータ11Aの内部には、オシレータ電極14A,15Aが紙面と略垂直に対向して設置されている。
オシレータ電源23Aからオシレータ電極14A,15A間に高電圧を印加することによってオシレータチャンバ12A内での放電を起こし、レーザガスを励起してパルスレーザ光であるオシレータレーザ光21Aを発生させる。
【0005】
発生したオシレータレーザ光21Aは、オシレータチャンバ12Aの後方(図15中左方)に設置された狭帯域化ボックス31に入射する。狭帯域化ボックス31の内部には、プリズム32,32及びグレーティング33が設置されている。オシレータレーザ光21Aは、プリズム32,32でビーム幅を広げられ、グレーティング33によって、波長を所望の中心波長λcを中心とした領域に狭帯域化される。
【0006】
オシレータチャンバ12Aの前後方には、それぞれ図示しないスリットが付設され、所定の方向以外に進行するオシレータレーザ光21Aを遮って、グレーティング33の狭帯域化性能を向上させている。
【0007】
また、増幅チャンバ12Bの前後部には、オシレータレーザ光21Aを透過するウィンドウ17B,19Bが付設されている。フロントミラー16から出射したオシレータレーザ光21Aは、有孔凹面鏡39の小孔40及びウィンドウ19Bを通って、増幅チャンバ12Bに入射する。
【0008】
オシレータレーザ光21Aは、増幅チャンバ12B内で、増幅電源23Bから増幅電極14B,15B間に高電圧を印加して行なわれる増幅チャンバ12B内での放電によってパワーを増幅され、パルスレーザ光である増幅レーザ光21Bが発生する。増幅レーザ光21Bは、凸面鏡38及び有孔凹面鏡39で反射して、凸面鏡38の周囲から増幅レーザ光21Bとなって出射する。
【0009】
尚、以下の従来技術及び実施形態の説明においては、注入同期式レーザ装置11として、増幅器11Bが凸面鏡38及び有孔凹面鏡39からなる共振器を持つようなMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式レーザ装置について説明するが、これに限られるものではない。
即ち、共振器を持たなかったり、有孔凹面鏡39を持たずに、凸面鏡38や凸面鏡38の代わりに配置された全反射ミラーのみを有するような、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式レーザ装置についても有効である。
【0010】
図16に、オシレータレーザ光21A及び増幅レーザ光21Bの、スペクトル波形の一例を示す。図16において、横軸が波長λ(単位:nm)であり、縦軸が強度である。そして、実線がオシレータレーザ光21Aの波形であり、破線が増幅レーザ光21Bの波形を示している。尚、比較のために両波形は、それぞれ強度のピーク値を用いて規格化されている。
【0011】
図16に示すように、従来の注入同期式レーザ装置11においては、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλを、露光等に好適な許容範囲内に狭帯域化したとしても、増幅レーザ光21Bにおいては広いスペクトル成分が発生してしまう(ハッチング参照)。
【0012】
これは、増幅チャンバ12B内で発生する自然放出光が種(シード)となって増幅チャンバ12B内での放電によって増幅され、増幅器11Bが狭帯域化手段を持たないためにそのまま出射してしまうということによる。以下、このような広い(ブロードな)スペクトル成分を、ブロードバンド成分と呼ぶ。
【0013】
その結果、例えばこのような注入同期式レーザ装置11を露光に用いた場合に、露光の解像度が低下してしまうといった不具合が生じることがある。
【0014】
上記のような問題に鑑み、例えば非特許文献1には、オシレータレーザ光21Aのエネルギーを増加させることにより、上記のブロードバンド成分を低減させることができるという技術が示されている。
【0015】
【非特許文献1】
Injection Locking of a KrF Laser Using a Frequency−Doubled Argon−Ion Laser Pulse (IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, VOL.26, NO.1, JAN 1990 pp.169−176)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、その後の研究により、オシレータレーザ光21Aのエネルギーを増加させるだけでは、必ずしも上記のような効果を得ることができるとは、限らないことが判明した。
【0017】
即ち、オシレータレーザ光21Aのエネルギーが同一であっても、増幅レーザ光21Bのブロードバンド成分をオシレータレーザ光21Aと略同一まで低減できる場合と、低減できない場合とが存在することがわかった。
そのため、従来技術のみによっては、露光に適した波長の増幅レーザ光21Bを確実に得ることが困難であった。
【0018】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、増幅レーザ光のブロードバンド成分をオシレータレーザ光と同程度にまで低減することが可能な注入同期式レーザ装置を提供することを目的としている。
【0019】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
レーザガスが充填されたオシレータチャンバ内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光を発生させるオシレータと、
レーザガスが充填された増幅チャンバ内で放電を起こし、オシレータレーザ光を増幅する増幅器とを備えた注入同期式レーザ装置において、
オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上となっている時間内に、増幅チャンバ内での放電を発生させるようにしている。
オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上になった時点で、増幅チャンバ内での放電を発生させることにより、ブロードバンド比率の低い増幅レーザ光を得ることができ、これを露光に用いる場合に好適な露光が可能である。
【0020】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
オシレータトリガ信号によってオシレータ電極に高電圧を印加するオシレータ電源と、
増幅トリガ信号によって増幅電極に高電圧を印加する増幅電源と、
オシレータレーザ光のパワー密度の時間変化を検出し、これが所定の閾値を越えている時刻を検出するパワー密度検出手段と、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が発生するまでの時間を計測する増幅時間計測手段とを備え、
オシレータレーザ光のパワー密度が閾値以上となっている間に増幅チャンバ内での放電が発生するように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間を設定している。
オシレータトリガ信号の出力時刻と増幅トリガ信号の出力時刻との間の遅延時間を適切に設定することによって、オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上になった時点で、確実に増幅チャンバ内での放電を発生させることができる。
【0021】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
レーザガスが充填されたオシレータチャンバ内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光を発生させるオシレータと、
レーザガスが充填された増幅チャンバ内で放電を起こし、オシレータレーザ光を増幅する増幅器とを備えた注入同期式レーザ装置において、
オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上となり、かつ、オシレータレーザ光のスペクトル線幅が、所定の閾値よりも狭い状態にある時間内に、増幅チャンバ内での放電を発生させるようにしている。
即ち、スペクトル線幅がより狭い時点でのオシレータレーザ光を増幅することにより、スペクトル線幅の狭い増幅レーザ光を得ることが可能となる。
【0022】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
オシレータトリガ信号によってオシレータ電極に高電圧を印加するオシレータ電源と、
増幅トリガ信号によって増幅電極に高電圧を印加する増幅電源と、
オシレータレーザ光のパワー密度の時間変化を検出し、これが所定の閾値を越えている時刻を検出するパワー密度検出手段と、
オシレータレーザ光のスペクトル線幅の時間変化を検出し、これが所定の閾値よりも狭くなる時刻を検出するスペクトル線幅検出手段と、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が発生するまでの時間を計測する増幅時間計測手段とを備え、
オシレータレーザ光のパワー密度が閾値以上となり、かつ、オシレータレーザ光のスペクトル線幅が、所定の閾値よりも狭い状態にある時間内に増幅チャンバ内での放電を発生させるように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間を設定するようにしている。
オシレータトリガ信号の出力時刻と増幅トリガ信号の出力時刻との間の遅延時間を適切に設定することによって、レーザ光のパワー密度が所定の閾値以上、かつ、レーザ光のスペクトル線幅が、所定の閾値よりも狭い状態になった時点で、確実に増幅チャンバ内での放電を発生させることができる。
【0023】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
前記パワー密度検出手段は、オシレータチャンバ内での放電時に発生するオシレータサイドライトの強度を測定するオシレータサイドライトセンサと、オシレータレーザ光のパルスエネルギーを測定するオシレータパワーセンサとを備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサを備えている。
これにより、オシレータレーザ光と増幅チャンバ内での放電の発生とを確実に検出できる。
【0024】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
前記パワー密度検出手段は、オシレータレーザ光のパルスの時間波形とパルスエネルギーとを測定するオシレータパワーセンサを備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサを備えている。
これにより、オシレータレーザ光と増幅チャンバ内での放電の発生を確実に検出できる。
【0025】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ内での放電が起きるまでの時間の変動の大きさと、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が発生するまでの時間の変動の大きさとを考慮して、
増幅チャンバ内での放電を行なうようにしている。
トリガ信号から放電までの時間変動の大きさを考慮することにより、より確実に最適なタイミングで増幅チャンバ内での放電を行なうことが可能となっている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に関わる実施形態を詳細に説明する。
図1に、実施形態に関わる注入同期式レーザ装置11の構成図を示す。図1において、図15と同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。
【0027】
注入同期式レーザ装置11は、同期コントローラ36とレーザコントローラ29とを備えている。レーザコントローラ29は、露光機25と通信回線によって接続されており、互いに通信可能となっている。同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づいてオシレータ電源23A及び増幅電源23Bに、オシレータトリガ信号及び増幅トリガ信号をそれぞれ送信し、放電のタイミングを決定する。
【0028】
フロントミラー16を部分透過したオシレータレーザ光21Aは、ビームスプリッタ22Aに入射する。そして、一部がサンプリングされてオシレータレーザ光21Aのレーザパルスの時間波形とパルスエネルギーとを測定するオシレータパワーセンサ42Aと、波長特性を検出するオシレータ波長センサ43Aとに入射する。尚、波長特性としては、例えばスペクトル線幅や中心波長λc等がある。 オシレータパワーセンサ42Aの例としては、バイプラナー光電管や高速のフォトダイオード等がある。レーザパルスの時間波形の瞬時値を積分することにより、パルスエネルギーが測定できる。或いは、レーザパルス波形の測定は高速の光センサでおこない、パルスエネルギーの計測には、フォトダイオードやパイロ素子等の、別のセンサを使用してもよい。
【0029】
オシレータレーザ光21Aのパワーは、オシレータ電源23Aからオシレータ電極14A,15A間に印加される電圧値に依存する。オシレータコントローラ35Aは、オシレータパワーセンサ42Aの出力に基づいてオシレータ電源23Aに電圧指示信号を出力し、オシレータ電極14A,15A間に印加する電圧値を制御して、オシレータレーザ光21Aのパワーを所定値に制御する。
また、オシレータコントローラ35Aは、オシレータ波長センサ43Aの出力に基づいて、例えばグレーティング33に対するオシレータレーザ光21Aの入射角を調整し、オシレータレーザ光21Aの中心波長λcを所定値に制御する。
【0030】
また、増幅チャンバ12Bから出射した増幅レーザ光21Bは、ビームスプリッタ22Bに入射し、その一部がサンプリングされて、増幅パワーセンサ42B及び増幅波長センサ43Bに入射し、そのパワー(例えば、パルスエネルギーや平均出力)や波長特性を測定される。ここで増幅レーザ光21Bのパワーは、増幅電源23Bから増幅電極14B,15B間に印加される電圧値に依存する。増幅コントローラ35Bは、増幅パワーセンサ42Bの出力に基づいて増幅電源23Bに電圧指示信号を出力し、増幅電極14B,15B間に印加される電圧値を制御して、増幅レーザ光21Bのパワーを所定値に制御する。
ビームスプリッタ22Bを透過した増幅レーザ光21Bは、露光機25に入射して、露光用光となる。
【0031】
オシレータチャンバ12Aの側方には、図示しない窓が設けられており、オシレータチャンバ12A内での放電時に発生する自然放出光(以下、オシレータサイドライトと呼ぶ)を検出するための、オシレータサイドライトセンサ37Aが付設されている。オシレータサイドライトセンサ37Aは、オシレータコントローラ35Aに接続されており、オシレータコントローラ35Aはオシレータサイドライトセンサ37Aの出力信号に基づいて、オシレータチャンバ12A内での放電の発生を検知する。
【0032】
増幅チャンバ12Bの側方には、増幅チャンバ12B内での放電時に発生する自然放出光(以下、増幅サイドライトと呼ぶ)を検出するための、増幅サイドライトセンサ37Bが付設されている。増幅サイドライトセンサ37Bは、増幅コントローラ35Bに接続されており、増幅コントローラ35Bは増幅サイドライトセンサ37Bの出力信号に基づいて、増幅チャンバ12B内での放電の発生を検知する。
なお、オシレータチャンバ12A内での放電及び増幅チャンバ12B内での放電の発生を検知する手段としては、オシレータサイドライトセンサ37A及び増幅サイドライトセンサ37Bに限るものではない。例えば、オシレータ電源23A及び増幅電源23Bの、スイッチング動作をモニタしてもよい。
【0033】
次に、レーザ光におけるスペクトル純度及びブロードバンド比率について説明する。
スペクトル純度とは、スペクトルエネルギーの集中度に関する1つの指標であり、スペクトル波形全体の面積のうち、中心波長を中心とした、ある面積比率(一般的には90%又は95%)を占めるスペクトル線幅で表される。
【0034】
図2に、オシレータレーザ光21Aのスペクトル波形の一例を示す。図2において、横軸は波長λ、縦軸がその強度であり、中心波長はλcで表されている。
このとき、ハッチングで示した波長λc±Δλcの領域におけるスペクトル波形の面積が、スペクトル波形全体の面積の例えば95%を占めている場合に、ハッチング領域のスペクトル線幅(2・Δλc)を、オシレータレーザ光21Aの95%純度幅(E95)と言う。
【0035】
図3に、オシレータレーザ光21A(実線)及び増幅レーザ光21B(破線)のスペクトル波形の一例を示す。尚、比較のために両波形は、それぞれ強度のピーク値を用いて、規格化されている。
オシレータレーザ光21Aの95%純度(E95)内に入る、増幅レーザ光21Bのエネルギー(ハッチング領域の面積)をS(NR)とし、増幅レーザ光21Bの総エネルギーをS(Total)とすると、次の数式1で表すηを、ブロードバンド比率と呼ぶ。
η=1−S(NR)/S(Total) ………… (1)
即ち、ブロードバンド比率ηが低いほど、オシレータレーザ光21Aに近いスペクトル線幅Δλの増幅レーザ光21Bを得ることができる。
【0036】
次に、低いブロードバンド比率ηを得るための、オシレータレーザ光21Aの条件について、説明する。
図4、図5に、パルスエネルギーの総和が略同一のオシレータレーザ光21Aの、1パルスにおける時間的なパワー密度Iの変動をグラフで示す。図4、図5において、横軸が時刻tであり、縦軸が各時刻におけるオシレータレーザ光21Aのパワー密度I(単位:W/cm^2)である。
【0037】
尚、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iとは、有効凹面鏡39の小孔40を通過したオシレータレーザ光21Aのパワーを、増幅チャンバ12Bから出射した増幅レーザ光21Bの断面積で除したものである。また、増幅レーザ光21Bのパワー密度Iとは、増幅レーザ光21Bのパワーを、やはり増幅チャンバ12Bから出射した増幅レーザ光21Bの断面積で除したものである。
【0038】
図4に示したオシレータレーザ光21Aの、1パルスにおける時間的なパワー密度Iの変動においては、すべての時間において、パワー密度Iが所定の閾値Ith未満となっているのに対し、図5に示したオシレータレーザ光21Aの、1パルスにおける時間的なパワー密度Iの変動においては、時刻t2〜t1におけるパワー密度が、所定の閾値Ithを越えている。
【0039】
このとき、図4に示したようなパワー密度の時間分布を有するオシレータレーザ光21Aを用いて増幅レーザ光21Bを発生させた場合には、エネルギーが高くても、増幅レーザ光21Bのブロードバンド比率ηは高くなってしまう。
【0040】
これに対して、図5に示したようなパワー密度の時間分布を有するオシレータレーザ光21Aを増幅チャンバ12Bに入射させ、パワー密度Iが閾値Ithを越えている間に増幅チャンバ12B内で放電を発生させるようにすると、増幅レーザ光21Bのブロードバンド比率ηが低くなることが判明した。
【0041】
図6に、横軸にオシレータレーザ光のパワー密度I、縦軸に、1からブロードバンド比率ηを引いた(1−η)及び増幅レーザ光21BのパワーWを取ったグラフを示す。図6に示すように、パワー密度Iが所定の閾値Ithを越えると、1からブロードバンド比率を引いた(1−η)が1に近くなり、所望の値(1−ηth)を越える。
【0042】
即ち、本発明は、ある時点での瞬間的なパワー密度Iが、所定の閾値Ithを越えているオシレータレーザ光21Aを増幅チャンバ12Bに入射させ、瞬間的なパワー密度Iが所定の閾値Ithを越えている時間内に増幅チャンバ12B内で放電を発生させる。これにより、低いブロードバンド比率ηの増幅レーザ光21Bを得るようにするものである。
【0043】
図7の最上部に、オシレータトリガ信号ならびに増幅トリガ信号のタイミングチャートを示す。また図7の中部にオシレータサイドライト(破線)の強度及びオシレータレーザ光21A(実線)のパワー密度Iの時間的変化の波形を示す。また図7の下部に、増幅器11Bにおけるサイドライト(破線)の強度及び増幅レーザ光21B(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。図7の中部及び下部において、縦軸が強度及びパワー密度I、横軸が時刻tである。
尚、図7において、サイドライト(破線)はサイドライトセンサ37A,37B、レーザ光21A,21Bは、パワーセンサ42A,42Bにより、その強度及びパワー密度Iの時間的変化の測定を行なっている。
【0044】
図7に示すように、同期コントローラ36からオシレータ電源23Aにオシレータトリガ信号が出力され、時間Δt0経過後、時刻t0においてオシレータチャンバ12A内での放電が起きてオシレータサイドライトが発生する。これによってオシレータチャンバ12A内部のレーザガスが励起され、オシレータレーザ光21Aが発生する。
【0045】
そして、時刻t2においてパワー密度Iが閾値Ithを越えたオシレータレーザ光21Aは、ピークを過ぎた後に次第に減衰し、時刻t1において閾値Ithよりも小さくなる。従って、ブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを得るためには、時刻t2〜t1の間に、増幅チャンバ12B内での放電が発生するようにすればよい。
【0046】
増幅器11Bにおいては、同期コントローラ36から増幅電源23Bに増幅トリガ信号が出力され、時間Δt4経過後、時刻t4において、増幅チャンバ12B内での放電が開始されて増幅サイドライトが発生する。これによって増幅チャンバ12B内部のレーザガスが励起され、時刻t3に、増幅レーザ光21Bが発生する。
【0047】
オシレータトリガ信号が出力されてから時刻t2までの所要時間を時間Δt02、時刻t2から時刻t1までの所要時間を時間Δt1、増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ12B内での放電が開始される時刻t4までの所要時間を時間Δt4とする。
また、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始される時刻t0までの所要時間をΔt0、時刻t0から時刻t2までの所要時間を時間Δt2とする。さらに、オシレータトリガ信号が出力されてから、増幅トリガ信号が出力されるまでの遅延時間をΔtdとする。
【0048】
図8に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための第1実施形態に関わる概略手順を、フローチャートで示す。
図8において、レーザコントローラ29は、まず所定の条件で調整発振と呼ばれる予備的な発振を行なって、時刻t2,t1を測定する(ステップS101)。
【0049】
そして、この時刻t2,t1に基づいて、時刻t4が時刻t2〜t1間に入るためには、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号が出力されるまでの遅延時間Δtdが、どのような値を取ればよいかを求める(ステップS102)。そして、ステップS102で求めた遅延時間Δtdに基づいて、オシレータトリガ信号及び増幅トリガ信号を出力し、露光のためのレーザ発振(以下、露光発振と言う)を行なう(ステップS103)。
【0050】
図9に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための、第1実施形態に関わる詳細な手順をフローチャートで示す。
まず、同期コントローラ36はレーザコントローラ29の指示に従い、オシレータ電源23Aに対するオシレータトリガ信号を出力する(ステップS201)。これに伴い、オシレータ11Aからオシレータレーザ光21Aが発生する(ステップS202)。
【0051】
オシレータパワーセンサ42Aは、オシレータレーザ光21Aのパルスの時間波形(パワー密度Iの時間的変化)とパルスエネルギーとを検出し、その出力信号を同期コントローラ36に送信する(ステップS203)。
同期コントローラ36は、これを閾値Ithと比較して、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時刻t2及びオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ith未満となった時刻t1を求める(ステップS206)。
【0052】
そして同期コントローラ36は、これらのデータから、上記時刻t2から上記時刻t1までの時間Δt1と、オシレータトリガ信号が出力されてから上記時刻t2までの時間Δt02とを求める(ステップS207)。
もしくはΔt02に代えて、オシレータチャンバ12A内での放電開始時刻t0から上記時刻t2までの時間Δt2を算出するとともに、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始されるまでの時間Δt0を求めてもよい。ここで、時間Δt0,Δt2を求めるにあたっては、オシレータサイドライトセンサ37Aが検出した、オシレータサイドライトの発生時刻(オシレータチャンバ12A内での放電開始時刻)t0もデータとして用いる。
【0053】
次に同期コントローラ36はレーザコントローラ29の指示に従い、増幅電源23Bに対する増幅トリガ信号を出力する(ステップS210)。これに伴い、増幅器11Bから増幅レーザ光21Bが発生する(ステップS211)。
【0054】
増幅サイドライトセンサ37Bは、増幅サイドライトを検出し、その出力信号を同期コントローラ36に送信する(ステップS212)。同期コントローラ36は、これに基づいて、増幅トリガ信号の出力から増幅チャンバ12B内での放電が開始される時刻t4までの時間Δt4を求める(ステップS213)。
以上、ステップS201〜S213が、図8におけるステップS101に相当する。
【0055】
そして同期コントローラ36は、増幅チャンバ12B内で放電が開始される時刻t4が、オシレータレーザ光21Aのパワー密度が閾値Ithを越える時刻t2〜t1の間に来るように、時間Δt02(もしくはΔt0,Δt2),Δt1,Δt4に基づき、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号の出力までの遅延時間Δtdを定める(ステップS214)。
【0056】
露光発振においては、同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づき、オシレータトリガ信号をオシレータ電源23Aに出力し(ステップS215)、遅延時間Δtdだけ後に、増幅トリガ信号を増幅電源23Bに出力する(ステップS216)。
【0057】
以上説明したように第1実施形態によれば、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時点で、増幅チャンバ12B内での放電が発生するようにしている。これにより、ブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを得ることができ、これを露光に用いる場合に好適な露光が可能である。
【0058】
またこれを実現する手段として、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時刻t2までの時間Δt02、時刻t2からパワー密度Iが閾値Ith未満となる時刻t1までの時間Δt1、及び増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が開始されるまでの時間Δt4を求めている。
そして、これらのデータから、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間Δtdを、定めている。これにより、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時点で、確実に増幅チャンバ12B内での放電を発生させることが可能である。
尚、上記時間Δt02に代えて、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始されるまでの時間Δt0、及びオシレータチャンバ12A内での放電開始時刻t0から上記時刻t2までの時間Δt2を求めてもよい。
【0059】
また、上記フローチャートにおいては、ステップS201〜S207においてオシレータ11Aを発振させて、時間Δt02(又は時間Δt0及びΔt2)及びΔt1を求め、その後にステップS210〜S213において、増幅器11Bを発振させて時間Δt4を求めているが、これに限られるものではない。即ち、逆の順序で求めてもよく、同時に並行して求めてもよい。
【0060】
また、調整発振を行なった後、露光発振を行なうようにしているが、露光発振中にも、所定パルス発振ごとや所定時間経過ごとに調整発振を行なって、そのたびに遅延時間Δtdを求め、これを補正してもよい。これらは、以下の実施形態についても同様である。
【0061】
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態においては、増幅チャンバ12B内での放電の開始(時刻t4)が、時刻t2〜t1のどの時点で起きてもいいように説明したが、第2実施形態においては、そのタイミングをより最適化する。
【0062】
図10に、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を示す。図10において、横軸が時刻tであり、縦軸がスペクトル線幅Δλである。ここで、図10の時間原点は、サイドライトの立ち上がり開始時刻、即ち、オシレータチャンバ12A内での放電の開始時刻である。図10に示すように、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλは、時間が経過するに従って、発生直後よりも狭くなっていく。
【0063】
即ち、比較的初期(例えば時刻tA)に出射したオシレータレーザ光21Aは、グレーティング33に数回程度しか反射されておらず、充分に回折されていないため、中心波長λcから外れた波長の光をも含んでいる。その結果、全体としてスペクトル線幅Δλが広がっている。
【0064】
これに対し、充分時間が経過してから(例えば時刻tB)出射したオシレータレーザ光21Aは、グレーティング33に多数回回折されているため、中心波長λcから外れた波長を殆んど含んでおらず、狭いスペクトル線幅Δλとなっている。
【0065】
従って図10において、時刻tAにおけるオシレータレーザ光21Aを増幅するよりも、スペクトル線幅Δλの狭くなった時刻tBにおけるオシレータレーザ光21Aを増幅したほうが、増幅レーザ光21Bのスペクトル線幅Δλを狭くすることができる。
【0066】
ここで、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの狭帯域化は、サイドライトが発生した時点から開始される。しかしながら、オシレータレーザ光21Aが共振器外に出力されるのは、サイドライトが発生してから所定の時間が経過してからとなる。従って、スペクトル線幅Δλの計測は、レーザパルスが立ち上がってから行なわれる。
【0067】
発明者らは、オシレータ11Aにおいて、オシレータ電極14A,15Aへの印加電圧や、オシレータチャンバ12A内のレーザガスのフッ素濃度、或いはレーザガスの圧力等の発振条件を調整して、オシレータチャンバ12A内での放電開始からオシレータレーザ光21Aが立ち上がるまでの時間を変化させた。そして、立ち上がるまでの時間のそれぞれの場合に対して、スペクトル線幅Δλの時間的推移を計測した。その結果、オシレータチャンバ12A内での放電開始時点から計測開始までの時間に関わらず、スペクトル線幅Δλの時間的推移は、いずれも図10に示したものと略同一の曲線上にプロットされた。
【0068】
そこで、オシレータチャンバ12A内での放電開始からオシレータレーザ光21Aが立ち上がるまでの時間が、できるだけ短くなるように上記の各発振条件を定めた状態で、スペクトル線幅Δλの時間的推移を計測した。
尚、スペクトル線幅Δλの時間的推移の検出は、オシレータ波長センサ43Aを用いて行ったが、これに限るものではなく、注入同期式レーザ装置11と独立した個別の検出器で測定してもよい。
【0069】
以下、具体的に説明する。
図11の最上部に、オシレータトリガ信号ならびに増幅トリガ信号のタイミングチャートを示す。また図11の中部に、図10に示したオシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を、破線Hによって示す。さらに図11の中部に、第2実施形態に関わるオシレータサイドライト(破線)の強度及びオシレータレーザ光21A(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。
【0070】
さらに図11の下部に、増幅器11Bにおけるサイドライト(破線)の強度及び増幅レーザ光21B(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。
図11の中部及び下部において、左の縦軸が強度及びパワー密度I、右の縦軸がスペクトル線幅Δλ、横軸が時刻tである。
【0071】
図11において、Δλthを、所望するスペクトル線幅Δλの上限値とする。
オシレータトリガ信号が出力されてから時間Δt06が経過した(オシレータサイドライトが発生した時刻t0から時間Δt6が経過した)時刻t5において、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλは、上限値Δλthよりも小さくなって、所望する許容範囲内に入る。尚、第1実施形態と同様に、時刻t2から時刻t1の間に、パワー密度Iが閾値Ith以上となっている。
従って、増幅チャンバ12B内での放電が開始される時刻t4が、時刻t5〜t1の間に来るように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間Δtdを定めればよい。
【0072】
図12に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための、第2実施形態に関わる手順をフローチャートで示す。
ステップS300において、オシレータチャンバ内での放電開始から、オシレータレーザ光12Aが発生するまでの時間ができるだけ短くなるように、オシレータ電極14A,15Aへの印加電圧や、オシレータチャンバ12A内のレーザガスのフッ素濃度、或いはレーザガスの圧力等を調整する。そして、オシレータチャンバ内での放電開始時点を原点としてスペクトル線幅Δλの時間的推移を検出する。
【0073】
尚、上記したように、スペクトル線幅Δλの時間的推移の検出は、オシレータ波長センサ43Aを用いても、注入同期式レーザ装置11とは独立した個別の検出器で測定してもよい。
測定データは、同期コントローラ36に記憶される。
このとき、上記スペクトル線幅Δλの時間的推移は、オシレータ11Aの狭帯域化ボックス31内の狭帯域化素子(ここではプリズム32及びグレーティング33)の性能、及びオシレータ11Aの共振器長に依存するので、これらが変化しない限り再度測定する必要はない。
【0074】
ステップS300で、スペクトル線幅Δλの時間的推移のデータを採取後、オシレータ電極14A,15Aへの印加電圧や、オシレータチャンバ12A内のレーザガスのフッ素濃度、レーザガスの圧力等を所定条件に戻す。
図12におけるステップS301〜S303は、ステップ201〜203と同一であるので、説明を省略する。
【0075】
同期コントローラ36は、ステップS300で記憶したスペクトル線幅Δλの時間的推移のデータ、及びステップS303で受信したオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iの時間的変化のデータに基づき、パワー密度Iが閾値Ithを越え、かつスペクトル線幅Δλが所定の上限値Δλthよりも小さくなった時刻t5及びオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ith未満となった時刻t1を求める(ステップS307)。
【0076】
そして同期コントローラ36は、これらのデータから、上記時刻t5から上記時刻t1までの時間Δt5、及びオシレータトリガ信号が出力されてから上記時刻t5までの時間Δt06を求める。
もしくは時間Δt06に代えて、オシレータチャンバ12A内での放電開始時刻t0から上記時刻t5までの時間Δt6を算出するとともに、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内で放電が開始されるまでの時間Δt0を求めてもよい。ここで、時間Δt0,Δt6を求めるにあたっては、オシレータサイドライトセンサ37Aが検出した、オシレータサイドライトの発生時刻(オシレータチャンバ12B内での放電開始時刻)t0もデータとして用いる(ステップS308)。
【0077】
次に同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に従い、増幅電源23Bに対する増幅トリガ信号を出力する(ステップS310)。これに伴い、増幅器11Bから増幅レーザ光21Bが発生する(ステップS311)。
【0078】
増幅サイドライトセンサ37Bは、増幅サイドライトを検出し、その出力信号を同期コントローラ36に送信する(ステップS312)。同期コントローラ36は、これに基づいて、増幅トリガ信号の出力から増幅チャンバ12B内での放電が開始されるまでの時間Δt4を求める(ステップS313)。
【0079】
そして同期コントローラ36は、時間Δt06(もしくは、Δt0、Δt6),Δt5,Δt4に基づき、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号の出力までの遅延時間Δtdを定める(ステップS314)。これにより、増幅チャンバ12B内で放電が発生する時刻t4が、オシレータレーザ光21Aのパワー密度が閾値Ithを越え、かつスペクトル線幅Δλが所定の上限値Δλthよりも小さくなった、時刻t5〜t1の間に来るようになる。
【0080】
露光発振においては、同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づき、オシレータトリガ信号をオシレータ電源23Aに出力し(ステップS315)、遅延時間Δtdだけ後に、増幅トリガ信号を増幅電源23Bに出力する(ステップS316)。
【0081】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時点で、増幅チャンバ12B内での放電を発生させている。そして更に、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλが次第に狭くなるのを利用して、なるべく狭い状態のオシレータレーザ光21Aを増幅するようにしている。
【0082】
これにより、ブロードバンド比率ηがより低く、オシレータレーザ光21Aに近いスペクトル線幅Δλの増幅レーザ光21Bを得ることができ、これを露光に用いる場合に、好適な露光が可能である。
尚、Δthを所望するスペクトル線幅Δλの上限値としたが、これに限られるものではなく、例えばもう少し小さな閾値Δthとすることにより、より確実にブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを得ることができる。
【0083】
次に、第3実施形態について説明する。
第1、第2実施形態においては、オシレータトリガ信号を出力してからオシレータサイドライト(即ちオシレータチャンバ12A内での放電)が発生するまでの時間Δt0と、増幅トリガ信号を出力してから増幅サイドライト(即ち増幅チャンバ12B内での放電)が発生するまでの時間Δt4とを、ほぼ不変と仮定して説明していた。
【0084】
しかしながら実際には、トリガ信号からサイドライト(即ちチャンバ12A,12B内での放電)の発生までの時間には、オシレータ11A及び増幅器11Bの双方において、レーザパルスごとに変動が生じる。これを、ジッタと呼ぶ。
【0085】
ジッタは、例えば電極14,15間に印加される高電圧や、高圧電源23内部の温度によって変化することが知られている。またジッタの大きさは、オシレータ11Aと増幅器11Bでは、互いに相違することが多い。
【0086】
従って、第3実施形態においては、オシレータ11A及び増幅器11Bのそれぞれのジッタについて予め測定しておき、ジッタ分だけタイミングがずれても良好に放電が行なわれるように、制御を行なうようにしている。
【0087】
図13の最上部に、オシレータトリガ信号ならびに増幅トリガ信号のタイミングチャートを示す。また図13の中部に、図10に示したオシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を、破線Hによって示す。さらに図13の中部に、第3実施形態に関わるオシレータサイドライト(破線)の強度及びオシレータレーザ光21A(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。
【0088】
また図13の下部に、増幅器11Bにおけるサイドライト(破線)の強度及び増幅レーザ光21B(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。図13において、左の縦軸が強度及びパワー密度I、右の縦軸がスペクトル線幅Δλ、横軸が時刻tである。
【0089】
オシレータ11Aにおいては、時刻t2にパワー密度Iが閾値Ithを越え、時刻t5においてスペクトル線幅Δλが上限値Δλthよりも狭くなる。そして、時刻t1にパワー密度Iが閾値Ithよりも小さくなる。従って、第2実施形態と同様に、増幅チャンバ内での放電が開始される時刻t4が時刻t5〜t1の間に来るように、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ内での放電が開始されるまでの遅延時間Δtdを定めればよい。
【0090】
ところが、オシレータ11A及び増幅器11Bのジッタの影響によって、時刻t5,t1,及びt4に誤差が生じ、時刻t4が時刻t5〜t1の間から外れることがある。
これを防ぐために第3実施形態においては、オシレータ11A及び増幅器11Bのジッタの大きさに対応した時間ΔtAだけ考慮して、時刻t5を後方に修正し、時刻t51とする。また、上記ジッタの大きさに対応した時間ΔtBだけ考慮して、上記時刻t1を前方に修正し、時刻t11とする。
【0091】
そして、時刻t4が時刻t5〜t1の間に来るように遅延時間Δtdを定めるのではなく、時刻t4が時刻t51〜t11の、より短い時間Δt9内に来るように、遅延時間Δtdを定める。これにより、ジッタが生じても、常にパワー密度Iが閾値Ith以上で、かつスペクトル線幅Δλが上限値Δλthよりも小さくなった時点で、増幅チャンバ12B内での放電を行なうことが可能となる。
【0092】
図14に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための第3実施形態に関わる手順を、フローチャートで示す。
図14のステップS4001において、同期コントローラ36は、第2実施形態のステップS300と同様にして、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を記憶する。次に同期コントローラ36は、オシレータ11A及び増幅器11Bにトリガ信号をそれぞれ出力してそれぞれのジッタの大きさを予め測定し、このジッタの大きさに基づいて、時間ΔtA,ΔtBを定める(ステップS4002)。
【0093】
図14におけるステップS401〜S407は、ステップS301〜S307と同一であるので、説明を省略する。そして同期コントローラ36は、時間ΔtA,ΔtBに基づいて時刻t5,t1をそれぞれ時刻t51,t11に修正する(ステップS408)。
【0094】
さらに同期コントローラ36は、これらのデータから、上記時刻t51から上記時刻t11までの時間Δt9とオシレータトリガ信号が出力されてから上記時刻t51までの時間Δt010とを求める。
もしくは時間Δt010に代えて、オシレータチャンバ内での放電開始時刻t0から上記時刻t51までの時間Δt10、及びオシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始されるまでの時間Δt0を求めてもよい。ここで、時間Δt0,Δt10を求めるときは、オシレータサイドライトセンサ37Aが検出した、オシレータサイドライトが発生した時刻(オシレータチャンバ12B内での放電開始時刻)t0もデータとして用いる(ステップS408)。
【0095】
ステップS410〜S413に関しては、ステップS310〜S313と同一であるので、説明を省略する。そして同期コントローラ36は、増幅チャンバ12B内で放電が発生する時刻t4が、時刻t51〜t11の間に来るように、時間Δt010(もしくは、Δt0、Δt10),Δt9、Δt4に基づき、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号の出力までの遅延時間Δtdを定める(ステップS414)。
【0096】
露光発振においては、同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づき、オシレータトリガ信号をオシレータ電源23Aに出力し(ステップS415)、そのときの印加する高電圧における遅延時間Δtdだけ後に、増幅トリガ信号を増幅電源23Bに出力する(ステップS416)。
【0097】
尚、ステップS4001,S4002における時間ΔtA,ΔtBの測定は、例えば所定発振パルス数ごとや所定時間ごとなど、適宜行なうとさらによい。これによって、例えば電極14,15の消耗やレーザガスの劣化など、さまざまな原因によるジッタの変動を補正することができ、適正なタイミングで増幅チャンバ12B内での放電を行なうことができる。
【0098】
以上説明したように第3実施形態によれば、オシレータ11A及び増幅器11Bにおけるジッタの大きさを予め測定し、オシレータトリガ信号から増幅トリガ信号までの遅延時間Δtdを、そのジッタの大きさ分だけ修正している。
これにより、ジッタが変動しても、その分だけ予め修正を行なっているので、最適なタイミングで増幅を行なうことができ、ブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを、常に得ることが可能となっている。
【0099】
尚、上記の説明においては、同期コントローラ36が中心となってトリガ信号の出力時間を制御するように説明したが、これに限られるものではなく、オシレータコントローラ35Aや増幅コントローラ35Bが中心になって行なってもよく、レーザコントローラ29が行なってもよい。
また、上記の説明は、フッ素分子レーザ装置を例に取って説明を行なったが、エキシマレーザ装置等においても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に関わる注入同期式レーザ装置の構成図。
【図2】オシレータレーザ光及び増幅レーザ光のスペクトル波形の一例を示す説明図。
【図3】オシレータレーザ光及び増幅レーザ光のスペクトル波形の一例を示す説明図。
【図4】オシレータレーザ光の時間的なパワーの変動を示すグラフ。
【図5】オシレータレーザ光の時間的なパワーの変動を示すグラフ。
【図6】オシレータレーザ光のパワー密度とブロードバンド比率との関係を示すグラフ。
【図7】第2実施形態に関わるサイドライト及びレーザ光のパワー密度の波形を示すグラフ。
【図8】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第1実施形態に関わる概略手順を示すフローチャート。
【図9】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第1実施形態に関わる手順を示すフローチャート。
【図10】オシレータレーザ光のスペクトル線幅の時間的推移を示すグラフ。
【図11】第2実施形態に関わるサイドライト及びレーザ光のパワー密度の波形を示すグラフ。
【図12】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第2実施形態に関わる手順を示すフローチャート。
【図13】第3実施形態に関わるサイドライト及びレーザ光のパワー密度の波形を示すグラフ。
【図14】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第3実施形態に関わる手順を示すフローチャート。
【図15】一般的な注入同期式レーザ装置の平面図。
【図16】オシレータレーザ光及び増幅レーザ光のスペクトル波形の一例を示す説明図。
【符号の説明】
11:エキシマレーザ装置、12A:オシレータチャンバ、12B:増幅チャンバ、14A,15A:オシレータ電極、14B,15B:増幅電極、16:フロントミラー、17,19:ウィンドウ、21A:オシレータレーザ光、21B:増幅レーザ光、22:ビームスプリッタ、23A:オシレータ電源、23B:増幅電源、25:露光機、29:レーザコントローラ、31:狭帯域化ボックス、32:プリズム、33:グレーティング、35A:オシレータコントローラ、35B:増幅コントローラ、36:同期コントローラ、37A:オシレータサイドライトセンサ、37B:増幅サイドライトセンサ、38:凸面鏡、39:有孔凹面鏡、40:小孔、42A:オシレータパワーセンサ、42B:増幅パワーセンサ、43A:オシレータ波長センサ、43B:増幅波長センサ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、注入同期式のレーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光を発生させるオシレータと、このオシレータレーザ光を増幅してパワーの大きな増幅レーザ光を発生させる増幅器とを備えた、注入同期式レーザ装置が知られている。
【0003】
図15に、フッ素分子レーザ装置を例に取って、一般的な注入同期式レーザ装置11の平面図を示す。図15において、注入同期式レーザ装置11は、波長を狭帯域化されたオシレータレーザ光21Aを発生させるオシレータ11Aと、オシレータレーザ光21Aを増幅して増幅レーザ光21Bを発生させる増幅器11Bとを備えている。
【0004】
オシレータ11Aは、フッ素を含むレーザガスを封入したオシレータチャンバ12Aを備えており、その前後にはレーザ光を透過するウィンドウ17A,19Aが付設されている。オシレータ11Aの内部には、オシレータ電極14A,15Aが紙面と略垂直に対向して設置されている。
オシレータ電源23Aからオシレータ電極14A,15A間に高電圧を印加することによってオシレータチャンバ12A内での放電を起こし、レーザガスを励起してパルスレーザ光であるオシレータレーザ光21Aを発生させる。
【0005】
発生したオシレータレーザ光21Aは、オシレータチャンバ12Aの後方(図15中左方)に設置された狭帯域化ボックス31に入射する。狭帯域化ボックス31の内部には、プリズム32,32及びグレーティング33が設置されている。オシレータレーザ光21Aは、プリズム32,32でビーム幅を広げられ、グレーティング33によって、波長を所望の中心波長λcを中心とした領域に狭帯域化される。
【0006】
オシレータチャンバ12Aの前後方には、それぞれ図示しないスリットが付設され、所定の方向以外に進行するオシレータレーザ光21Aを遮って、グレーティング33の狭帯域化性能を向上させている。
【0007】
また、増幅チャンバ12Bの前後部には、オシレータレーザ光21Aを透過するウィンドウ17B,19Bが付設されている。フロントミラー16から出射したオシレータレーザ光21Aは、有孔凹面鏡39の小孔40及びウィンドウ19Bを通って、増幅チャンバ12Bに入射する。
【0008】
オシレータレーザ光21Aは、増幅チャンバ12B内で、増幅電源23Bから増幅電極14B,15B間に高電圧を印加して行なわれる増幅チャンバ12B内での放電によってパワーを増幅され、パルスレーザ光である増幅レーザ光21Bが発生する。増幅レーザ光21Bは、凸面鏡38及び有孔凹面鏡39で反射して、凸面鏡38の周囲から増幅レーザ光21Bとなって出射する。
【0009】
尚、以下の従来技術及び実施形態の説明においては、注入同期式レーザ装置11として、増幅器11Bが凸面鏡38及び有孔凹面鏡39からなる共振器を持つようなMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式レーザ装置について説明するが、これに限られるものではない。
即ち、共振器を持たなかったり、有孔凹面鏡39を持たずに、凸面鏡38や凸面鏡38の代わりに配置された全反射ミラーのみを有するような、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式レーザ装置についても有効である。
【0010】
図16に、オシレータレーザ光21A及び増幅レーザ光21Bの、スペクトル波形の一例を示す。図16において、横軸が波長λ(単位:nm)であり、縦軸が強度である。そして、実線がオシレータレーザ光21Aの波形であり、破線が増幅レーザ光21Bの波形を示している。尚、比較のために両波形は、それぞれ強度のピーク値を用いて規格化されている。
【0011】
図16に示すように、従来の注入同期式レーザ装置11においては、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλを、露光等に好適な許容範囲内に狭帯域化したとしても、増幅レーザ光21Bにおいては広いスペクトル成分が発生してしまう(ハッチング参照)。
【0012】
これは、増幅チャンバ12B内で発生する自然放出光が種(シード)となって増幅チャンバ12B内での放電によって増幅され、増幅器11Bが狭帯域化手段を持たないためにそのまま出射してしまうということによる。以下、このような広い(ブロードな)スペクトル成分を、ブロードバンド成分と呼ぶ。
【0013】
その結果、例えばこのような注入同期式レーザ装置11を露光に用いた場合に、露光の解像度が低下してしまうといった不具合が生じることがある。
【0014】
上記のような問題に鑑み、例えば非特許文献1には、オシレータレーザ光21Aのエネルギーを増加させることにより、上記のブロードバンド成分を低減させることができるという技術が示されている。
【0015】
【非特許文献1】
Injection Locking of a KrF Laser Using a Frequency−Doubled Argon−Ion Laser Pulse (IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, VOL.26, NO.1, JAN 1990 pp.169−176)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、その後の研究により、オシレータレーザ光21Aのエネルギーを増加させるだけでは、必ずしも上記のような効果を得ることができるとは、限らないことが判明した。
【0017】
即ち、オシレータレーザ光21Aのエネルギーが同一であっても、増幅レーザ光21Bのブロードバンド成分をオシレータレーザ光21Aと略同一まで低減できる場合と、低減できない場合とが存在することがわかった。
そのため、従来技術のみによっては、露光に適した波長の増幅レーザ光21Bを確実に得ることが困難であった。
【0018】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、増幅レーザ光のブロードバンド成分をオシレータレーザ光と同程度にまで低減することが可能な注入同期式レーザ装置を提供することを目的としている。
【0019】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
レーザガスが充填されたオシレータチャンバ内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光を発生させるオシレータと、
レーザガスが充填された増幅チャンバ内で放電を起こし、オシレータレーザ光を増幅する増幅器とを備えた注入同期式レーザ装置において、
オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上となっている時間内に、増幅チャンバ内での放電を発生させるようにしている。
オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上になった時点で、増幅チャンバ内での放電を発生させることにより、ブロードバンド比率の低い増幅レーザ光を得ることができ、これを露光に用いる場合に好適な露光が可能である。
【0020】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
オシレータトリガ信号によってオシレータ電極に高電圧を印加するオシレータ電源と、
増幅トリガ信号によって増幅電極に高電圧を印加する増幅電源と、
オシレータレーザ光のパワー密度の時間変化を検出し、これが所定の閾値を越えている時刻を検出するパワー密度検出手段と、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が発生するまでの時間を計測する増幅時間計測手段とを備え、
オシレータレーザ光のパワー密度が閾値以上となっている間に増幅チャンバ内での放電が発生するように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間を設定している。
オシレータトリガ信号の出力時刻と増幅トリガ信号の出力時刻との間の遅延時間を適切に設定することによって、オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上になった時点で、確実に増幅チャンバ内での放電を発生させることができる。
【0021】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
レーザガスが充填されたオシレータチャンバ内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光を発生させるオシレータと、
レーザガスが充填された増幅チャンバ内で放電を起こし、オシレータレーザ光を増幅する増幅器とを備えた注入同期式レーザ装置において、
オシレータレーザ光のパワー密度が所定の閾値以上となり、かつ、オシレータレーザ光のスペクトル線幅が、所定の閾値よりも狭い状態にある時間内に、増幅チャンバ内での放電を発生させるようにしている。
即ち、スペクトル線幅がより狭い時点でのオシレータレーザ光を増幅することにより、スペクトル線幅の狭い増幅レーザ光を得ることが可能となる。
【0022】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
オシレータトリガ信号によってオシレータ電極に高電圧を印加するオシレータ電源と、
増幅トリガ信号によって増幅電極に高電圧を印加する増幅電源と、
オシレータレーザ光のパワー密度の時間変化を検出し、これが所定の閾値を越えている時刻を検出するパワー密度検出手段と、
オシレータレーザ光のスペクトル線幅の時間変化を検出し、これが所定の閾値よりも狭くなる時刻を検出するスペクトル線幅検出手段と、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が発生するまでの時間を計測する増幅時間計測手段とを備え、
オシレータレーザ光のパワー密度が閾値以上となり、かつ、オシレータレーザ光のスペクトル線幅が、所定の閾値よりも狭い状態にある時間内に増幅チャンバ内での放電を発生させるように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間を設定するようにしている。
オシレータトリガ信号の出力時刻と増幅トリガ信号の出力時刻との間の遅延時間を適切に設定することによって、レーザ光のパワー密度が所定の閾値以上、かつ、レーザ光のスペクトル線幅が、所定の閾値よりも狭い状態になった時点で、確実に増幅チャンバ内での放電を発生させることができる。
【0023】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
前記パワー密度検出手段は、オシレータチャンバ内での放電時に発生するオシレータサイドライトの強度を測定するオシレータサイドライトセンサと、オシレータレーザ光のパルスエネルギーを測定するオシレータパワーセンサとを備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサを備えている。
これにより、オシレータレーザ光と増幅チャンバ内での放電の発生とを確実に検出できる。
【0024】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
前記パワー密度検出手段は、オシレータレーザ光のパルスの時間波形とパルスエネルギーとを測定するオシレータパワーセンサを備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサを備えている。
これにより、オシレータレーザ光と増幅チャンバ内での放電の発生を確実に検出できる。
【0025】
また本発明に関わる注入同期式レーザ装置は、
オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ内での放電が起きるまでの時間の変動の大きさと、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が発生するまでの時間の変動の大きさとを考慮して、
増幅チャンバ内での放電を行なうようにしている。
トリガ信号から放電までの時間変動の大きさを考慮することにより、より確実に最適なタイミングで増幅チャンバ内での放電を行なうことが可能となっている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に関わる実施形態を詳細に説明する。
図1に、実施形態に関わる注入同期式レーザ装置11の構成図を示す。図1において、図15と同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。
【0027】
注入同期式レーザ装置11は、同期コントローラ36とレーザコントローラ29とを備えている。レーザコントローラ29は、露光機25と通信回線によって接続されており、互いに通信可能となっている。同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づいてオシレータ電源23A及び増幅電源23Bに、オシレータトリガ信号及び増幅トリガ信号をそれぞれ送信し、放電のタイミングを決定する。
【0028】
フロントミラー16を部分透過したオシレータレーザ光21Aは、ビームスプリッタ22Aに入射する。そして、一部がサンプリングされてオシレータレーザ光21Aのレーザパルスの時間波形とパルスエネルギーとを測定するオシレータパワーセンサ42Aと、波長特性を検出するオシレータ波長センサ43Aとに入射する。尚、波長特性としては、例えばスペクトル線幅や中心波長λc等がある。 オシレータパワーセンサ42Aの例としては、バイプラナー光電管や高速のフォトダイオード等がある。レーザパルスの時間波形の瞬時値を積分することにより、パルスエネルギーが測定できる。或いは、レーザパルス波形の測定は高速の光センサでおこない、パルスエネルギーの計測には、フォトダイオードやパイロ素子等の、別のセンサを使用してもよい。
【0029】
オシレータレーザ光21Aのパワーは、オシレータ電源23Aからオシレータ電極14A,15A間に印加される電圧値に依存する。オシレータコントローラ35Aは、オシレータパワーセンサ42Aの出力に基づいてオシレータ電源23Aに電圧指示信号を出力し、オシレータ電極14A,15A間に印加する電圧値を制御して、オシレータレーザ光21Aのパワーを所定値に制御する。
また、オシレータコントローラ35Aは、オシレータ波長センサ43Aの出力に基づいて、例えばグレーティング33に対するオシレータレーザ光21Aの入射角を調整し、オシレータレーザ光21Aの中心波長λcを所定値に制御する。
【0030】
また、増幅チャンバ12Bから出射した増幅レーザ光21Bは、ビームスプリッタ22Bに入射し、その一部がサンプリングされて、増幅パワーセンサ42B及び増幅波長センサ43Bに入射し、そのパワー(例えば、パルスエネルギーや平均出力)や波長特性を測定される。ここで増幅レーザ光21Bのパワーは、増幅電源23Bから増幅電極14B,15B間に印加される電圧値に依存する。増幅コントローラ35Bは、増幅パワーセンサ42Bの出力に基づいて増幅電源23Bに電圧指示信号を出力し、増幅電極14B,15B間に印加される電圧値を制御して、増幅レーザ光21Bのパワーを所定値に制御する。
ビームスプリッタ22Bを透過した増幅レーザ光21Bは、露光機25に入射して、露光用光となる。
【0031】
オシレータチャンバ12Aの側方には、図示しない窓が設けられており、オシレータチャンバ12A内での放電時に発生する自然放出光(以下、オシレータサイドライトと呼ぶ)を検出するための、オシレータサイドライトセンサ37Aが付設されている。オシレータサイドライトセンサ37Aは、オシレータコントローラ35Aに接続されており、オシレータコントローラ35Aはオシレータサイドライトセンサ37Aの出力信号に基づいて、オシレータチャンバ12A内での放電の発生を検知する。
【0032】
増幅チャンバ12Bの側方には、増幅チャンバ12B内での放電時に発生する自然放出光(以下、増幅サイドライトと呼ぶ)を検出するための、増幅サイドライトセンサ37Bが付設されている。増幅サイドライトセンサ37Bは、増幅コントローラ35Bに接続されており、増幅コントローラ35Bは増幅サイドライトセンサ37Bの出力信号に基づいて、増幅チャンバ12B内での放電の発生を検知する。
なお、オシレータチャンバ12A内での放電及び増幅チャンバ12B内での放電の発生を検知する手段としては、オシレータサイドライトセンサ37A及び増幅サイドライトセンサ37Bに限るものではない。例えば、オシレータ電源23A及び増幅電源23Bの、スイッチング動作をモニタしてもよい。
【0033】
次に、レーザ光におけるスペクトル純度及びブロードバンド比率について説明する。
スペクトル純度とは、スペクトルエネルギーの集中度に関する1つの指標であり、スペクトル波形全体の面積のうち、中心波長を中心とした、ある面積比率(一般的には90%又は95%)を占めるスペクトル線幅で表される。
【0034】
図2に、オシレータレーザ光21Aのスペクトル波形の一例を示す。図2において、横軸は波長λ、縦軸がその強度であり、中心波長はλcで表されている。
このとき、ハッチングで示した波長λc±Δλcの領域におけるスペクトル波形の面積が、スペクトル波形全体の面積の例えば95%を占めている場合に、ハッチング領域のスペクトル線幅(2・Δλc)を、オシレータレーザ光21Aの95%純度幅(E95)と言う。
【0035】
図3に、オシレータレーザ光21A(実線)及び増幅レーザ光21B(破線)のスペクトル波形の一例を示す。尚、比較のために両波形は、それぞれ強度のピーク値を用いて、規格化されている。
オシレータレーザ光21Aの95%純度(E95)内に入る、増幅レーザ光21Bのエネルギー(ハッチング領域の面積)をS(NR)とし、増幅レーザ光21Bの総エネルギーをS(Total)とすると、次の数式1で表すηを、ブロードバンド比率と呼ぶ。
η=1−S(NR)/S(Total) ………… (1)
即ち、ブロードバンド比率ηが低いほど、オシレータレーザ光21Aに近いスペクトル線幅Δλの増幅レーザ光21Bを得ることができる。
【0036】
次に、低いブロードバンド比率ηを得るための、オシレータレーザ光21Aの条件について、説明する。
図4、図5に、パルスエネルギーの総和が略同一のオシレータレーザ光21Aの、1パルスにおける時間的なパワー密度Iの変動をグラフで示す。図4、図5において、横軸が時刻tであり、縦軸が各時刻におけるオシレータレーザ光21Aのパワー密度I(単位:W/cm^2)である。
【0037】
尚、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iとは、有効凹面鏡39の小孔40を通過したオシレータレーザ光21Aのパワーを、増幅チャンバ12Bから出射した増幅レーザ光21Bの断面積で除したものである。また、増幅レーザ光21Bのパワー密度Iとは、増幅レーザ光21Bのパワーを、やはり増幅チャンバ12Bから出射した増幅レーザ光21Bの断面積で除したものである。
【0038】
図4に示したオシレータレーザ光21Aの、1パルスにおける時間的なパワー密度Iの変動においては、すべての時間において、パワー密度Iが所定の閾値Ith未満となっているのに対し、図5に示したオシレータレーザ光21Aの、1パルスにおける時間的なパワー密度Iの変動においては、時刻t2〜t1におけるパワー密度が、所定の閾値Ithを越えている。
【0039】
このとき、図4に示したようなパワー密度の時間分布を有するオシレータレーザ光21Aを用いて増幅レーザ光21Bを発生させた場合には、エネルギーが高くても、増幅レーザ光21Bのブロードバンド比率ηは高くなってしまう。
【0040】
これに対して、図5に示したようなパワー密度の時間分布を有するオシレータレーザ光21Aを増幅チャンバ12Bに入射させ、パワー密度Iが閾値Ithを越えている間に増幅チャンバ12B内で放電を発生させるようにすると、増幅レーザ光21Bのブロードバンド比率ηが低くなることが判明した。
【0041】
図6に、横軸にオシレータレーザ光のパワー密度I、縦軸に、1からブロードバンド比率ηを引いた(1−η)及び増幅レーザ光21BのパワーWを取ったグラフを示す。図6に示すように、パワー密度Iが所定の閾値Ithを越えると、1からブロードバンド比率を引いた(1−η)が1に近くなり、所望の値(1−ηth)を越える。
【0042】
即ち、本発明は、ある時点での瞬間的なパワー密度Iが、所定の閾値Ithを越えているオシレータレーザ光21Aを増幅チャンバ12Bに入射させ、瞬間的なパワー密度Iが所定の閾値Ithを越えている時間内に増幅チャンバ12B内で放電を発生させる。これにより、低いブロードバンド比率ηの増幅レーザ光21Bを得るようにするものである。
【0043】
図7の最上部に、オシレータトリガ信号ならびに増幅トリガ信号のタイミングチャートを示す。また図7の中部にオシレータサイドライト(破線)の強度及びオシレータレーザ光21A(実線)のパワー密度Iの時間的変化の波形を示す。また図7の下部に、増幅器11Bにおけるサイドライト(破線)の強度及び増幅レーザ光21B(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。図7の中部及び下部において、縦軸が強度及びパワー密度I、横軸が時刻tである。
尚、図7において、サイドライト(破線)はサイドライトセンサ37A,37B、レーザ光21A,21Bは、パワーセンサ42A,42Bにより、その強度及びパワー密度Iの時間的変化の測定を行なっている。
【0044】
図7に示すように、同期コントローラ36からオシレータ電源23Aにオシレータトリガ信号が出力され、時間Δt0経過後、時刻t0においてオシレータチャンバ12A内での放電が起きてオシレータサイドライトが発生する。これによってオシレータチャンバ12A内部のレーザガスが励起され、オシレータレーザ光21Aが発生する。
【0045】
そして、時刻t2においてパワー密度Iが閾値Ithを越えたオシレータレーザ光21Aは、ピークを過ぎた後に次第に減衰し、時刻t1において閾値Ithよりも小さくなる。従って、ブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを得るためには、時刻t2〜t1の間に、増幅チャンバ12B内での放電が発生するようにすればよい。
【0046】
増幅器11Bにおいては、同期コントローラ36から増幅電源23Bに増幅トリガ信号が出力され、時間Δt4経過後、時刻t4において、増幅チャンバ12B内での放電が開始されて増幅サイドライトが発生する。これによって増幅チャンバ12B内部のレーザガスが励起され、時刻t3に、増幅レーザ光21Bが発生する。
【0047】
オシレータトリガ信号が出力されてから時刻t2までの所要時間を時間Δt02、時刻t2から時刻t1までの所要時間を時間Δt1、増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ12B内での放電が開始される時刻t4までの所要時間を時間Δt4とする。
また、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始される時刻t0までの所要時間をΔt0、時刻t0から時刻t2までの所要時間を時間Δt2とする。さらに、オシレータトリガ信号が出力されてから、増幅トリガ信号が出力されるまでの遅延時間をΔtdとする。
【0048】
図8に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための第1実施形態に関わる概略手順を、フローチャートで示す。
図8において、レーザコントローラ29は、まず所定の条件で調整発振と呼ばれる予備的な発振を行なって、時刻t2,t1を測定する(ステップS101)。
【0049】
そして、この時刻t2,t1に基づいて、時刻t4が時刻t2〜t1間に入るためには、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号が出力されるまでの遅延時間Δtdが、どのような値を取ればよいかを求める(ステップS102)。そして、ステップS102で求めた遅延時間Δtdに基づいて、オシレータトリガ信号及び増幅トリガ信号を出力し、露光のためのレーザ発振(以下、露光発振と言う)を行なう(ステップS103)。
【0050】
図9に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための、第1実施形態に関わる詳細な手順をフローチャートで示す。
まず、同期コントローラ36はレーザコントローラ29の指示に従い、オシレータ電源23Aに対するオシレータトリガ信号を出力する(ステップS201)。これに伴い、オシレータ11Aからオシレータレーザ光21Aが発生する(ステップS202)。
【0051】
オシレータパワーセンサ42Aは、オシレータレーザ光21Aのパルスの時間波形(パワー密度Iの時間的変化)とパルスエネルギーとを検出し、その出力信号を同期コントローラ36に送信する(ステップS203)。
同期コントローラ36は、これを閾値Ithと比較して、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時刻t2及びオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ith未満となった時刻t1を求める(ステップS206)。
【0052】
そして同期コントローラ36は、これらのデータから、上記時刻t2から上記時刻t1までの時間Δt1と、オシレータトリガ信号が出力されてから上記時刻t2までの時間Δt02とを求める(ステップS207)。
もしくはΔt02に代えて、オシレータチャンバ12A内での放電開始時刻t0から上記時刻t2までの時間Δt2を算出するとともに、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始されるまでの時間Δt0を求めてもよい。ここで、時間Δt0,Δt2を求めるにあたっては、オシレータサイドライトセンサ37Aが検出した、オシレータサイドライトの発生時刻(オシレータチャンバ12A内での放電開始時刻)t0もデータとして用いる。
【0053】
次に同期コントローラ36はレーザコントローラ29の指示に従い、増幅電源23Bに対する増幅トリガ信号を出力する(ステップS210)。これに伴い、増幅器11Bから増幅レーザ光21Bが発生する(ステップS211)。
【0054】
増幅サイドライトセンサ37Bは、増幅サイドライトを検出し、その出力信号を同期コントローラ36に送信する(ステップS212)。同期コントローラ36は、これに基づいて、増幅トリガ信号の出力から増幅チャンバ12B内での放電が開始される時刻t4までの時間Δt4を求める(ステップS213)。
以上、ステップS201〜S213が、図8におけるステップS101に相当する。
【0055】
そして同期コントローラ36は、増幅チャンバ12B内で放電が開始される時刻t4が、オシレータレーザ光21Aのパワー密度が閾値Ithを越える時刻t2〜t1の間に来るように、時間Δt02(もしくはΔt0,Δt2),Δt1,Δt4に基づき、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号の出力までの遅延時間Δtdを定める(ステップS214)。
【0056】
露光発振においては、同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づき、オシレータトリガ信号をオシレータ電源23Aに出力し(ステップS215)、遅延時間Δtdだけ後に、増幅トリガ信号を増幅電源23Bに出力する(ステップS216)。
【0057】
以上説明したように第1実施形態によれば、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時点で、増幅チャンバ12B内での放電が発生するようにしている。これにより、ブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを得ることができ、これを露光に用いる場合に好適な露光が可能である。
【0058】
またこれを実現する手段として、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時刻t2までの時間Δt02、時刻t2からパワー密度Iが閾値Ith未満となる時刻t1までの時間Δt1、及び増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ内での放電が開始されるまでの時間Δt4を求めている。
そして、これらのデータから、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間Δtdを、定めている。これにより、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時点で、確実に増幅チャンバ12B内での放電を発生させることが可能である。
尚、上記時間Δt02に代えて、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始されるまでの時間Δt0、及びオシレータチャンバ12A内での放電開始時刻t0から上記時刻t2までの時間Δt2を求めてもよい。
【0059】
また、上記フローチャートにおいては、ステップS201〜S207においてオシレータ11Aを発振させて、時間Δt02(又は時間Δt0及びΔt2)及びΔt1を求め、その後にステップS210〜S213において、増幅器11Bを発振させて時間Δt4を求めているが、これに限られるものではない。即ち、逆の順序で求めてもよく、同時に並行して求めてもよい。
【0060】
また、調整発振を行なった後、露光発振を行なうようにしているが、露光発振中にも、所定パルス発振ごとや所定時間経過ごとに調整発振を行なって、そのたびに遅延時間Δtdを求め、これを補正してもよい。これらは、以下の実施形態についても同様である。
【0061】
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態においては、増幅チャンバ12B内での放電の開始(時刻t4)が、時刻t2〜t1のどの時点で起きてもいいように説明したが、第2実施形態においては、そのタイミングをより最適化する。
【0062】
図10に、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を示す。図10において、横軸が時刻tであり、縦軸がスペクトル線幅Δλである。ここで、図10の時間原点は、サイドライトの立ち上がり開始時刻、即ち、オシレータチャンバ12A内での放電の開始時刻である。図10に示すように、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλは、時間が経過するに従って、発生直後よりも狭くなっていく。
【0063】
即ち、比較的初期(例えば時刻tA)に出射したオシレータレーザ光21Aは、グレーティング33に数回程度しか反射されておらず、充分に回折されていないため、中心波長λcから外れた波長の光をも含んでいる。その結果、全体としてスペクトル線幅Δλが広がっている。
【0064】
これに対し、充分時間が経過してから(例えば時刻tB)出射したオシレータレーザ光21Aは、グレーティング33に多数回回折されているため、中心波長λcから外れた波長を殆んど含んでおらず、狭いスペクトル線幅Δλとなっている。
【0065】
従って図10において、時刻tAにおけるオシレータレーザ光21Aを増幅するよりも、スペクトル線幅Δλの狭くなった時刻tBにおけるオシレータレーザ光21Aを増幅したほうが、増幅レーザ光21Bのスペクトル線幅Δλを狭くすることができる。
【0066】
ここで、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの狭帯域化は、サイドライトが発生した時点から開始される。しかしながら、オシレータレーザ光21Aが共振器外に出力されるのは、サイドライトが発生してから所定の時間が経過してからとなる。従って、スペクトル線幅Δλの計測は、レーザパルスが立ち上がってから行なわれる。
【0067】
発明者らは、オシレータ11Aにおいて、オシレータ電極14A,15Aへの印加電圧や、オシレータチャンバ12A内のレーザガスのフッ素濃度、或いはレーザガスの圧力等の発振条件を調整して、オシレータチャンバ12A内での放電開始からオシレータレーザ光21Aが立ち上がるまでの時間を変化させた。そして、立ち上がるまでの時間のそれぞれの場合に対して、スペクトル線幅Δλの時間的推移を計測した。その結果、オシレータチャンバ12A内での放電開始時点から計測開始までの時間に関わらず、スペクトル線幅Δλの時間的推移は、いずれも図10に示したものと略同一の曲線上にプロットされた。
【0068】
そこで、オシレータチャンバ12A内での放電開始からオシレータレーザ光21Aが立ち上がるまでの時間が、できるだけ短くなるように上記の各発振条件を定めた状態で、スペクトル線幅Δλの時間的推移を計測した。
尚、スペクトル線幅Δλの時間的推移の検出は、オシレータ波長センサ43Aを用いて行ったが、これに限るものではなく、注入同期式レーザ装置11と独立した個別の検出器で測定してもよい。
【0069】
以下、具体的に説明する。
図11の最上部に、オシレータトリガ信号ならびに増幅トリガ信号のタイミングチャートを示す。また図11の中部に、図10に示したオシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を、破線Hによって示す。さらに図11の中部に、第2実施形態に関わるオシレータサイドライト(破線)の強度及びオシレータレーザ光21A(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。
【0070】
さらに図11の下部に、増幅器11Bにおけるサイドライト(破線)の強度及び増幅レーザ光21B(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。
図11の中部及び下部において、左の縦軸が強度及びパワー密度I、右の縦軸がスペクトル線幅Δλ、横軸が時刻tである。
【0071】
図11において、Δλthを、所望するスペクトル線幅Δλの上限値とする。
オシレータトリガ信号が出力されてから時間Δt06が経過した(オシレータサイドライトが発生した時刻t0から時間Δt6が経過した)時刻t5において、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλは、上限値Δλthよりも小さくなって、所望する許容範囲内に入る。尚、第1実施形態と同様に、時刻t2から時刻t1の間に、パワー密度Iが閾値Ith以上となっている。
従って、増幅チャンバ12B内での放電が開始される時刻t4が、時刻t5〜t1の間に来るように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間Δtdを定めればよい。
【0072】
図12に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための、第2実施形態に関わる手順をフローチャートで示す。
ステップS300において、オシレータチャンバ内での放電開始から、オシレータレーザ光12Aが発生するまでの時間ができるだけ短くなるように、オシレータ電極14A,15Aへの印加電圧や、オシレータチャンバ12A内のレーザガスのフッ素濃度、或いはレーザガスの圧力等を調整する。そして、オシレータチャンバ内での放電開始時点を原点としてスペクトル線幅Δλの時間的推移を検出する。
【0073】
尚、上記したように、スペクトル線幅Δλの時間的推移の検出は、オシレータ波長センサ43Aを用いても、注入同期式レーザ装置11とは独立した個別の検出器で測定してもよい。
測定データは、同期コントローラ36に記憶される。
このとき、上記スペクトル線幅Δλの時間的推移は、オシレータ11Aの狭帯域化ボックス31内の狭帯域化素子(ここではプリズム32及びグレーティング33)の性能、及びオシレータ11Aの共振器長に依存するので、これらが変化しない限り再度測定する必要はない。
【0074】
ステップS300で、スペクトル線幅Δλの時間的推移のデータを採取後、オシレータ電極14A,15Aへの印加電圧や、オシレータチャンバ12A内のレーザガスのフッ素濃度、レーザガスの圧力等を所定条件に戻す。
図12におけるステップS301〜S303は、ステップ201〜203と同一であるので、説明を省略する。
【0075】
同期コントローラ36は、ステップS300で記憶したスペクトル線幅Δλの時間的推移のデータ、及びステップS303で受信したオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iの時間的変化のデータに基づき、パワー密度Iが閾値Ithを越え、かつスペクトル線幅Δλが所定の上限値Δλthよりも小さくなった時刻t5及びオシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ith未満となった時刻t1を求める(ステップS307)。
【0076】
そして同期コントローラ36は、これらのデータから、上記時刻t5から上記時刻t1までの時間Δt5、及びオシレータトリガ信号が出力されてから上記時刻t5までの時間Δt06を求める。
もしくは時間Δt06に代えて、オシレータチャンバ12A内での放電開始時刻t0から上記時刻t5までの時間Δt6を算出するとともに、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内で放電が開始されるまでの時間Δt0を求めてもよい。ここで、時間Δt0,Δt6を求めるにあたっては、オシレータサイドライトセンサ37Aが検出した、オシレータサイドライトの発生時刻(オシレータチャンバ12B内での放電開始時刻)t0もデータとして用いる(ステップS308)。
【0077】
次に同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に従い、増幅電源23Bに対する増幅トリガ信号を出力する(ステップS310)。これに伴い、増幅器11Bから増幅レーザ光21Bが発生する(ステップS311)。
【0078】
増幅サイドライトセンサ37Bは、増幅サイドライトを検出し、その出力信号を同期コントローラ36に送信する(ステップS312)。同期コントローラ36は、これに基づいて、増幅トリガ信号の出力から増幅チャンバ12B内での放電が開始されるまでの時間Δt4を求める(ステップS313)。
【0079】
そして同期コントローラ36は、時間Δt06(もしくは、Δt0、Δt6),Δt5,Δt4に基づき、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号の出力までの遅延時間Δtdを定める(ステップS314)。これにより、増幅チャンバ12B内で放電が発生する時刻t4が、オシレータレーザ光21Aのパワー密度が閾値Ithを越え、かつスペクトル線幅Δλが所定の上限値Δλthよりも小さくなった、時刻t5〜t1の間に来るようになる。
【0080】
露光発振においては、同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づき、オシレータトリガ信号をオシレータ電源23Aに出力し(ステップS315)、遅延時間Δtdだけ後に、増幅トリガ信号を増幅電源23Bに出力する(ステップS316)。
【0081】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、オシレータレーザ光21Aのパワー密度Iが閾値Ithを越えた時点で、増幅チャンバ12B内での放電を発生させている。そして更に、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλが次第に狭くなるのを利用して、なるべく狭い状態のオシレータレーザ光21Aを増幅するようにしている。
【0082】
これにより、ブロードバンド比率ηがより低く、オシレータレーザ光21Aに近いスペクトル線幅Δλの増幅レーザ光21Bを得ることができ、これを露光に用いる場合に、好適な露光が可能である。
尚、Δthを所望するスペクトル線幅Δλの上限値としたが、これに限られるものではなく、例えばもう少し小さな閾値Δthとすることにより、より確実にブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを得ることができる。
【0083】
次に、第3実施形態について説明する。
第1、第2実施形態においては、オシレータトリガ信号を出力してからオシレータサイドライト(即ちオシレータチャンバ12A内での放電)が発生するまでの時間Δt0と、増幅トリガ信号を出力してから増幅サイドライト(即ち増幅チャンバ12B内での放電)が発生するまでの時間Δt4とを、ほぼ不変と仮定して説明していた。
【0084】
しかしながら実際には、トリガ信号からサイドライト(即ちチャンバ12A,12B内での放電)の発生までの時間には、オシレータ11A及び増幅器11Bの双方において、レーザパルスごとに変動が生じる。これを、ジッタと呼ぶ。
【0085】
ジッタは、例えば電極14,15間に印加される高電圧や、高圧電源23内部の温度によって変化することが知られている。またジッタの大きさは、オシレータ11Aと増幅器11Bでは、互いに相違することが多い。
【0086】
従って、第3実施形態においては、オシレータ11A及び増幅器11Bのそれぞれのジッタについて予め測定しておき、ジッタ分だけタイミングがずれても良好に放電が行なわれるように、制御を行なうようにしている。
【0087】
図13の最上部に、オシレータトリガ信号ならびに増幅トリガ信号のタイミングチャートを示す。また図13の中部に、図10に示したオシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を、破線Hによって示す。さらに図13の中部に、第3実施形態に関わるオシレータサイドライト(破線)の強度及びオシレータレーザ光21A(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。
【0088】
また図13の下部に、増幅器11Bにおけるサイドライト(破線)の強度及び増幅レーザ光21B(実線)のパワー密度Iの、時間的変化の波形を示す。図13において、左の縦軸が強度及びパワー密度I、右の縦軸がスペクトル線幅Δλ、横軸が時刻tである。
【0089】
オシレータ11Aにおいては、時刻t2にパワー密度Iが閾値Ithを越え、時刻t5においてスペクトル線幅Δλが上限値Δλthよりも狭くなる。そして、時刻t1にパワー密度Iが閾値Ithよりも小さくなる。従って、第2実施形態と同様に、増幅チャンバ内での放電が開始される時刻t4が時刻t5〜t1の間に来るように、オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ内での放電が開始されるまでの遅延時間Δtdを定めればよい。
【0090】
ところが、オシレータ11A及び増幅器11Bのジッタの影響によって、時刻t5,t1,及びt4に誤差が生じ、時刻t4が時刻t5〜t1の間から外れることがある。
これを防ぐために第3実施形態においては、オシレータ11A及び増幅器11Bのジッタの大きさに対応した時間ΔtAだけ考慮して、時刻t5を後方に修正し、時刻t51とする。また、上記ジッタの大きさに対応した時間ΔtBだけ考慮して、上記時刻t1を前方に修正し、時刻t11とする。
【0091】
そして、時刻t4が時刻t5〜t1の間に来るように遅延時間Δtdを定めるのではなく、時刻t4が時刻t51〜t11の、より短い時間Δt9内に来るように、遅延時間Δtdを定める。これにより、ジッタが生じても、常にパワー密度Iが閾値Ith以上で、かつスペクトル線幅Δλが上限値Δλthよりも小さくなった時点で、増幅チャンバ12B内での放電を行なうことが可能となる。
【0092】
図14に、増幅チャンバ12B内での放電のタイミングを最適化するための第3実施形態に関わる手順を、フローチャートで示す。
図14のステップS4001において、同期コントローラ36は、第2実施形態のステップS300と同様にして、オシレータレーザ光21Aのスペクトル線幅Δλの時間的推移を記憶する。次に同期コントローラ36は、オシレータ11A及び増幅器11Bにトリガ信号をそれぞれ出力してそれぞれのジッタの大きさを予め測定し、このジッタの大きさに基づいて、時間ΔtA,ΔtBを定める(ステップS4002)。
【0093】
図14におけるステップS401〜S407は、ステップS301〜S307と同一であるので、説明を省略する。そして同期コントローラ36は、時間ΔtA,ΔtBに基づいて時刻t5,t1をそれぞれ時刻t51,t11に修正する(ステップS408)。
【0094】
さらに同期コントローラ36は、これらのデータから、上記時刻t51から上記時刻t11までの時間Δt9とオシレータトリガ信号が出力されてから上記時刻t51までの時間Δt010とを求める。
もしくは時間Δt010に代えて、オシレータチャンバ内での放電開始時刻t0から上記時刻t51までの時間Δt10、及びオシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ12A内での放電が開始されるまでの時間Δt0を求めてもよい。ここで、時間Δt0,Δt10を求めるときは、オシレータサイドライトセンサ37Aが検出した、オシレータサイドライトが発生した時刻(オシレータチャンバ12B内での放電開始時刻)t0もデータとして用いる(ステップS408)。
【0095】
ステップS410〜S413に関しては、ステップS310〜S313と同一であるので、説明を省略する。そして同期コントローラ36は、増幅チャンバ12B内で放電が発生する時刻t4が、時刻t51〜t11の間に来るように、時間Δt010(もしくは、Δt0、Δt10),Δt9、Δt4に基づき、オシレータトリガ信号の出力から増幅トリガ信号の出力までの遅延時間Δtdを定める(ステップS414)。
【0096】
露光発振においては、同期コントローラ36は、レーザコントローラ29の指示に基づき、オシレータトリガ信号をオシレータ電源23Aに出力し(ステップS415)、そのときの印加する高電圧における遅延時間Δtdだけ後に、増幅トリガ信号を増幅電源23Bに出力する(ステップS416)。
【0097】
尚、ステップS4001,S4002における時間ΔtA,ΔtBの測定は、例えば所定発振パルス数ごとや所定時間ごとなど、適宜行なうとさらによい。これによって、例えば電極14,15の消耗やレーザガスの劣化など、さまざまな原因によるジッタの変動を補正することができ、適正なタイミングで増幅チャンバ12B内での放電を行なうことができる。
【0098】
以上説明したように第3実施形態によれば、オシレータ11A及び増幅器11Bにおけるジッタの大きさを予め測定し、オシレータトリガ信号から増幅トリガ信号までの遅延時間Δtdを、そのジッタの大きさ分だけ修正している。
これにより、ジッタが変動しても、その分だけ予め修正を行なっているので、最適なタイミングで増幅を行なうことができ、ブロードバンド比率ηの低い増幅レーザ光21Bを、常に得ることが可能となっている。
【0099】
尚、上記の説明においては、同期コントローラ36が中心となってトリガ信号の出力時間を制御するように説明したが、これに限られるものではなく、オシレータコントローラ35Aや増幅コントローラ35Bが中心になって行なってもよく、レーザコントローラ29が行なってもよい。
また、上記の説明は、フッ素分子レーザ装置を例に取って説明を行なったが、エキシマレーザ装置等においても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に関わる注入同期式レーザ装置の構成図。
【図2】オシレータレーザ光及び増幅レーザ光のスペクトル波形の一例を示す説明図。
【図3】オシレータレーザ光及び増幅レーザ光のスペクトル波形の一例を示す説明図。
【図4】オシレータレーザ光の時間的なパワーの変動を示すグラフ。
【図5】オシレータレーザ光の時間的なパワーの変動を示すグラフ。
【図6】オシレータレーザ光のパワー密度とブロードバンド比率との関係を示すグラフ。
【図7】第2実施形態に関わるサイドライト及びレーザ光のパワー密度の波形を示すグラフ。
【図8】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第1実施形態に関わる概略手順を示すフローチャート。
【図9】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第1実施形態に関わる手順を示すフローチャート。
【図10】オシレータレーザ光のスペクトル線幅の時間的推移を示すグラフ。
【図11】第2実施形態に関わるサイドライト及びレーザ光のパワー密度の波形を示すグラフ。
【図12】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第2実施形態に関わる手順を示すフローチャート。
【図13】第3実施形態に関わるサイドライト及びレーザ光のパワー密度の波形を示すグラフ。
【図14】増幅チャンバ内での放電のタイミングを最適化するための第3実施形態に関わる手順を示すフローチャート。
【図15】一般的な注入同期式レーザ装置の平面図。
【図16】オシレータレーザ光及び増幅レーザ光のスペクトル波形の一例を示す説明図。
【符号の説明】
11:エキシマレーザ装置、12A:オシレータチャンバ、12B:増幅チャンバ、14A,15A:オシレータ電極、14B,15B:増幅電極、16:フロントミラー、17,19:ウィンドウ、21A:オシレータレーザ光、21B:増幅レーザ光、22:ビームスプリッタ、23A:オシレータ電源、23B:増幅電源、25:露光機、29:レーザコントローラ、31:狭帯域化ボックス、32:プリズム、33:グレーティング、35A:オシレータコントローラ、35B:増幅コントローラ、36:同期コントローラ、37A:オシレータサイドライトセンサ、37B:増幅サイドライトセンサ、38:凸面鏡、39:有孔凹面鏡、40:小孔、42A:オシレータパワーセンサ、42B:増幅パワーセンサ、43A:オシレータ波長センサ、43B:増幅波長センサ。
Claims (9)
- レーザガスが充填されたオシレータチャンバ(12A)内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光(21A)を発生させるオシレータ(11A)と、
レーザガスが充填された増幅チャンバ(12B)内で放電を起こし、オシレータレーザ光(21A)を増幅する増幅器(11B)とを備えた注入同期式レーザ装置において、
オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)が所定の閾値(Ith)以上となっている時間内に、増幅チャンバ(12B)内での放電を発生させるようにしたことを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項1記載の注入同期式レーザ装置において、
オシレータトリガ信号によってオシレータ電極(14A,15A)に高電圧を印加するオシレータ電源(23A)と、
増幅トリガ信号によって増幅電極(14B,15B)に高電圧を印加する増幅電源(23B)と、
オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)の時間変化を検出し、これが所定の閾値(Ith)を越えている時刻(t2,t1)を検出するパワー密度検出手段と、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ(12B)内での放電が発生するまでの時間(Δt4)を計測する増幅時間計測手段とを備え、
オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)が閾値(Ith)以上となっている間に増幅チャンバ(12B)内での放電が発生するように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間(Δtd)を設定したことを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項2記載の注入同期式レーザ装置において、
前記パワー密度検出手段は、オシレータチャンバ(12A)内での放電時に発生するオシレータサイドライトの強度を測定するオシレータサイドライトセンサ(37A)と、オシレータレーザ光(21A)のパルスエネルギーを測定するオシレータパワーセンサ(42A)とを備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ(12B)内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサ(37B)を備えていることを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項2記載の注入同期式レーザ装置において、
前記パワー密度検出手段は、オシレータレーザ光(21A)のパルスの時間波形とパルスエネルギーとを測定するオシレータパワーセンサ(42A)を備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ(12B)内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサ(37B)を備えていることを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - レーザガスが充填されたオシレータチャンバ(12A)内で放電を起こし、波長を狭帯域化したオシレータレーザ光(21A)を発生させるオシレータ(11A)と、
レーザガスが充填された増幅チャンバ(12B)内で放電を起こし、オシレータレーザ光(21A)を増幅する増幅器(11B)とを備えた注入同期式レーザ装置において、
オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)が所定の閾値(Ith)以上となり、かつ、オシレータレーザ光(21A)のスペクトル線幅(Δλ)が、所定の閾値(Δλth)よりも狭い状態にある時間内に、増幅チャンバ(12B)内での放電を発生させるようにしたことを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項5記載の注入同期式レーザ装置において、
オシレータトリガ信号によってオシレータ電極(14A,15A)に高電圧を印加するオシレータ電源(23A)と、
増幅トリガ信号によって増幅電極(14B,15B)に高電圧を印加する増幅電源(23B)と、
オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)の時間変化を検出し、これが所定の閾値(Ith)を越えている時刻(t2,t1)を検出するパワー密度検出手段と、
オシレータレーザ光(21A)のスペクトル線幅(Δλ)の時間変化を検出し、これが所定の閾値(Δλth)よりも狭くなる時刻(t5)を検出するスペクトル線幅検出手段と、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ(12B)内での放電が発生するまでの時間(Δt4)を計測する増幅時間計測手段とを備え、
オシレータレーザ光(21A)のパワー密度(I)が閾値(Ith)以上となり、かつ、オシレータレーザ光(21A)のスペクトル線幅(Δλ)が、所定の閾値(Δλth)よりも狭い状態にある時間内に増幅チャンバ(12B)内での放電を発生させるように、オシレータトリガ信号を出力してから増幅トリガ信号を出力するまでの遅延時間(Δtd)を設定したことを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項5記載の注入同期式レーザ装置において、
前記パワー密度検出手段は、オシレータチャンバ(12A)内での放電時に発生するオシレータサイドライトの強度を測定するオシレータサイドライトセンサ(37A)と、オシレータレーザ光(21A)のパルスエネルギーを測定するオシレータパワーセンサ(42A)とを備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ(12B)内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサ(37B)を備えていることを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項5記載の注入同期式レーザ装置において、
前記パワー密度検出手段は、オシレータレーザ光(21A)のパルスの時間波形とパルスエネルギーとを測定するオシレータパワーセンサ(42A)を備え、
増幅時間計測手段は、増幅チャンバ(12B)内での放電時に発生する増幅サイドライトの強度を測定する増幅サイドライトセンサ(37B)を備えていることを特徴とする注入同期式レーザ装置。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の注入同期式レーザ装置において、
オシレータトリガ信号が出力されてからオシレータチャンバ(12A)内での放電が起きるまでの時間の変動の大きさと、
増幅トリガ信号が出力されてから増幅チャンバ(12B)内での放電が起きるまでの時間の変動の大きさとを考慮して、
増幅チャンバ(12B)内での放電を行なうようにしたことを特徴とする注入同期式レーザ装置。
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