JP2004335623A - 遷移金属又は希土類金属を固溶する透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物及びその強磁性特性の調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光を透過するアルカリ・カルコゲン化合物を用いて完全スピン分極した透明な強磁性が得られる強磁性アルカリ・カルコゲン化合物の提供、およびその強磁性特性を調整することができる方法を提供する。
【解決手段】逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲン化合物に、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの3d、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、又はRhの4d、又はHf、Ta、W、Os、Re、又はIrの5d遷移金属元素及びCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuのランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶され、強磁性特性を有する透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。これらの金属元素の濃度の調整、2種類以上の金属元素の組合せ、アクセプターおよびドナーの添加などにより価電子制御を行いその強磁性特性を調整する。
【選択図】 図2
【解決手段】逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲン化合物に、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの3d、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、又はRhの4d、又はHf、Ta、W、Os、Re、又はIrの5d遷移金属元素及びCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuのランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶され、強磁性特性を有する透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。これらの金属元素の濃度の調整、2種類以上の金属元素の組合せ、アクセプターおよびドナーの添加などにより価電子制御を行いその強磁性特性を調整する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイドバンドギャップを持ち、透明なアルカリ・カルコゲナイド化合物に強磁性特性を実現させた単結晶のアルカリ・カルコゲナイド化合物及びその強磁性特性の調整方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、大きな磁気光学効果を有し、所望の強磁性特性、例えば、強磁性転移温度などが得られる透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物及びその強磁性特性の調整方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
アルカリ・カルコゲナイド化合物は無色・透明であり、そのバンドギャップ(Eg)が3eV以上と大きく、可視領域から紫外光、さらには超紫外光の波長の光でも透過するという性質を有すると共に、そのエキシトンの結合エネルギーが大きく、この材料で大きなスピン・軌道相互作用をする強磁性材料が得られれば、スピンの自由度を利用したスピントランジスターや光アイソレーター、又はコヒーレントなスピン状態を利用した光量子コンピュータなどの光量子デバイスの作製や量子情報処理のためのデバイスの開発に大きな発展が期待される。
【0004】
しかし、従来は、アルカリ・カルコゲナイド化合物に3d、4d、又は5d遷移金属、又はランタン系希土類元素をドープした完全スピン分極した強磁性状態の報告例はなく、高い強磁性転移温度(キューリー点)を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性状態の実現も報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光を透過するとともに、優れた強磁性特性を有する単結晶の強磁性薄膜が得られれば、これらの磁気光学効果を利用して、大量の情報伝達に必要な光アイソレータや光による高密度磁気記録が可能になり、また、電子の持っている電荷の自由度に加えてスピンの自由度と光を積極的に利用した将来の大容量・超高速・超省エネルギーの情報伝達に必要なデバイスに応用する電子光磁気材料を作製することができる。さらに、巨大な磁気光学効果を持ち、しかも、光を透過しながら強磁性を有する完全スピン分極した強磁性材料が望まれている。
【0006】
前述のように、アルカリ・カルコゲナイド化合物を用いて可視領域の光を通し、磁気光学効果を利用する安定した強磁性特性が得られれば、そのバンドギャップ・エネルギーが大きいアルカリ・カルコゲナイド化合物からなる半導体レーザなどの発光素子と組み合わせて利用することができ、磁気状態を反映させた円偏光した光を発生させることができ、大きなスピン・軌道相互作用による巨大な磁気光学効果を利用する磁気光学スピンデバイスの応用が、光情報通信やスピンエレクトロニクスへと広がる。
【0007】
さらに、前述のように、アルカリ・カルコゲナイド化合物に光を照射し、磁化状態によって大きな円偏光を利用し、磁気光学効果を変化させることにより、強磁性体メモリを構成する場合には、強磁性転移温度(キュリー温度)を光の照射により磁性状態が変化するような温度(室温よりわずかに高い温度)に設定するなど、強磁性特性が所望の特性になるように作製できる必要がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光を透過するアルカリ・カルコゲナイド化合物を用いて、完全スピン分極した強磁性が得られる透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物を提供する。
【0009】
また、本発明は、強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物を作成するに当り、例えば、強磁性転移温度などの、その強磁性特性を調整することができる透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性を調整する方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、大きなスピン・軌道相互作用を持つけれども、通常の4d遷移金属化合物、又は5d遷移金属化合物では強磁性状態とはならないこれらの遷移金属元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に固溶することにより、希薄な混晶状態において完全スピン分極した強磁性状態を実現し、その強磁性特性を調整することができる強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性を調整する方法を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、光を透過する材料として特に適したワイドバンドギャップを持ち、しかも、格子定数が大きいアルカリ・カルコゲナイド化合物を用い、強磁性特性を有する単結晶を得るために鋭意検討を重ねた結果、4d(Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRh)、5d(Hf,Ta,W,Os,Re,又はIr)、3d(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,又はCu)の各遷移金属元素、又はランタン系希土類元素(Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb又はLu)は、非平衡結晶成長法により低温でアルカリ金属イオンの25at%程度までを置き換え(混晶化させ)ても十分に単結晶が得られること、上記の各元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に混晶させると、電子状態の変化からホール又は電子をドープする(電子を増やすか減らす)ことにより、強磁性状態が得られること、上記の各元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に混晶させることにより、d電子にホールや電子を添加したのと同様の効果が得られること(上記の各元素自身がp型あるいはn型ドーパントとなり得ること)、を見出し、上記の各元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に混晶化させることにより、これらの金属元素単体を混晶させるだけで安定した完全スピン分極した透明強磁性状態にすることができることを見出した。
【0012】
4d遷移金属では、Zr, Nb, Tc, R u, Rhのみが強磁性を呈する元素であり、Moはスピングラスを呈する元素である。しかしながら、Moはp型キャリアーをドープすると強磁性を呈する元素になる。5d遷移金属では、Hf,Ta,Re,Os,Irのみが強磁性を呈する元素であり、Wはスピングラスを呈する元素である。しかしながら、Wはp型キャリアーをドープすると強磁性を呈する元素になる。3d遷移金属では、Ti,V,,Mn,Fe,Co,Ni,Cuのみが強磁性を呈する元素であり、Crはスピングラスを呈する元素である。しかしながら、Crはp型キャリアーをドープすると強磁性を呈する元素になる。特に、上記の4d、5d遷移金属は大きなスピン軌道相互作用を持ち、大きな磁気光学効果が得られる。
【0013】
そして、本発明者らがさらに鋭意検討を重ねた結果、上記の各元素は、電子スピンs=1、3/2、2をもつ高スピン状態となり、その添加濃度を変化したり、これらの元素の2種類以上の組合せや、その割合を変えた混晶にしたり、n型及び/又はp型のドーパントを添加したりすることにより、強磁性転移温度を変えることが可能なこと、反強磁性やスピングラス状態及び常磁性状態を安定化させるよりも強磁性状態を安定化させ得ること、その強磁性状態のエネルギー(例えば、僅かの差でスピングラス状態もしくは常磁性状態になるが、通常は強磁性状態を維持するエネルギー)を調整し得ること、上記の各元素の種類により光の最低透過波長が異なり、2種類以上の元素を選択的に混晶することにより、所望の光学フィルタ機能をもたせること、を見出し、上記の各元素の添加濃度や混合割合を調整することにより、所望の磁気特性を有する単結晶性で、かつ、完全スピン分極した透明強磁性(一方のスピン状態にバンドギャップがあり、他方のスピンだけが遍歴する状態を言い、「ハーフメタリック強磁性」ともいう)のアルカリ・カルコゲナイド化合物が得られることを見出した。
【0014】
本発明による完全スピン分極した透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物は、アルカリ・カルコゲナイド化合物に、前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶している。
【0015】
ここに、逆蛍石構造(Anti−CaF2structure)を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物とは、アルカリ金属(Na,K,Rb,Cs)とカルコゲン原子(O,S,Se,Te)を含む化合物、具体例としては、K2S,K2Se,K2Te,K2O,Na2S,Na2Se,Na2Te,Na2O,Li2O,Li2S,Li2Se,Li2Te,Rb2O,Rb2S,Rb2Se,Rb2Te,Cs2O,Cs2S,Cs2Se,Cs2Teなどである。
【0016】
上記化合物の格子定数は大きいので、不純物の軌道と母体原子の軌道の混成が弱く、前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素はK,Na,Li,Rbなどのアルカリ金属原子を置換することができ、非平衡結晶成長法により低温で25at%位まで置換しても逆蛍石型構造の単結晶を維持すると共に、アルカリ・カルコゲナイド化合物の透明性を維持しながら、逆蛍石型構造で完全スピン分極した強磁性の性質を呈する。
【0017】
前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも2種の金属元素が固溶されることにより、その遷移金属元素不純物に起因するd及びf電子不純物状態が、母体となる化合物の原子軌道と混成し、幅の狭い不純物バンドを形成するために大きな電子相関効果が得られ、強磁性となり、しかも、完全スピン分極した透明強磁性状態を実現する。このように、ホール又は電子をドープするよりも直接的に強磁性特性が変化し、強磁性転移温度などの強磁性特性を調整することができる。
【0018】
n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方がドーピングされると、ドープされたキャリアーはバンドギャップ中に形成された幅の狭い不純物バンドに入るため、ドープした遷移金属のd電子不純物状態又はf電子不純物状態の占有電子数を変えることができ、不純物バンドを形成しているd及びf電子の価電子制御により、その強磁性特性を調整することができる。
【0019】
本発明による逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法は、下記の(1)〜(3)により行う。
(1)前記のようなアルカリ・カルコゲナイド化合物に、前記の3d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素か、前記の4d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素か、前記の5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素か、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素を添加し、添加した元素の濃度の調整、
(2)前記の3d遷移金属元素、前記の4d遷移金属元素、前記の5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素の同じ元素群又は異なる元素群から選ばれる少なくとも2種の金属元素の種類の組合せ、
(3)さらに、n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方を添加し、添加したドーパントの濃度の調整。
【0020】
具体的には、前記濃度(遷移金属元素又は希土類金属元素及びドーパントの濃度)の調整、又は2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素の組合せにより、強磁性転移温度を所望の温度に調整することができ、また、2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素を混晶させ、強磁性の安定化エネルギーを調整すると共に、該遷移金属元素自身により導入されたホール又は電子による運動エネルギーによって全エネルギーを低下させることにより、強磁性状態を安定化させることができ、また、2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素を混晶させ、該遷移金属元素自身により導入されたホール又は電子によって、該遷移金属原子間の磁気的相互作用の大きさと符号を制御することにより、強磁性状態を安定化させることができる。
【0021】
さらに、2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素を混晶させ、該遷移金属元素自身により導入されたホール又は電子によって、該遷移金属原子間の磁気的相互作用の大きさと符号を制御すると共に、該遷移金属元素の混晶による光の透過特性を制御することにより、所望の光フィルタ特性を有する完全スピン分極した透明強磁性のアルカリ・カルコゲナイド化合物とすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら本発明による完全スピン分極した透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物、及びその強磁性特性の調整方法について説明をする。本発明による完全スピン分極した透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物は、逆蛍石構造を有するアルカリ・カルコゲナイド化合物に、前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶している。
【0023】
前述のように、本発明者らは、逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物の一種であるK2Sを用いて完全スピン分極した透明強磁性材料を得るために鋭意検討を重ねた結果、図2に示される、K2Sにおける反強磁性スピングラス状態の全エネルギーと強磁性状態の全エネルギーとの差△Eから、Zr,Nb,Tc,Ru,又はRhの4d遷移金属元素のみを単独で混晶させるだけで強磁性を示すことを見出した。図2において、正の値は強磁性状態が安定であることを示し、負の値は、反強磁性スピングラス状態が安定であることを示している。
【0024】
この混晶割合は、K2SのKに対して5at%の例であるが、混晶割合としては、数at%でも強磁性を示し、また、多くしても結晶性及び透明性を害することがなく、1at%から99at%、好ましくは、1at%〜25at%であれば、充分な強磁性を得やすい。この遷移金属元素は1種類である必要はなく、後述するように2種類以上を混晶(合金化)することができる。
【0025】
このような遷移金属元素を固溶するアルカリ・カルコゲナイド化合物の薄膜を成膜するには、例えば、MBE法を使用する。図1に、MBE法に用いる装置の概略説明図を示すように、1.33×10−6Pa程度の超高真空を維持できるチャンバー1内の基板ホルダー4に、例えば、SiC、SiO2やサファイアなどからなる基板上にK2Sなどのアルカリ・カルコゲナイド化合物を成長させる基板5を設置し、ヒータ7により基板5を加熱できるようになっている。
【0026】
そして、基板ホルダー4に保持される基板5と対向するように、成長する化合物を構成する元素の材料(ソース源)Kを入れたセル2a、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの遷移金属元素を入れたセル(1個しか示されていないが、2種類以上を混晶させる場合は2個以上設けられている)2b、n型ドーパントのCl,F,CaやMgなどを入れたセル2c、p型ドーパントのP,As,SbやNを入れたセル2d、ラジカルSを発生させるRFラジカルセル3aが設けられている。なお、Kや遷移金属などの固体原料はこれらの金属のカルコゲン化合物をセルに入れて原子状にすることもできる。
【0027】
なお、固体(単体)を入れるセル2a〜2dは、図示されていないが、それぞれに設けられ、加熱により固体ソースを原子状にして蒸発させられる様になっており、ラジカルセル3aは、図1に示されるように、RF(高周波)コイル8により活性化させている。このK、遷移金属元素及びn型ドーパント材料としては、純度99.99999%の固体ソースを原子状にし、また、原子状のSをつくるために前述のラジカルセルにより活性化して使用する。加熱によるSの原子状ビーム作成もできるようにしてある。なお、K,Sや遷移金属元素は分子ガスにマイクロ波領域の電磁波を照射することにより原子状にすることもできる。
【0028】
そして、K2Sを成長させながら、n型ドーパントのCl,F,CaやMgなどを流量1.33×10−5Paで、さらに、p型ドーパントである原子状P,As,やNを6.65×10−5Paで、また、例えば、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの原子状遷移金属元素を1.33×10−5Paで、同時に基板5上に流しながら、250〜850℃で成長することにより、遷移金属元素を混晶させたK2S薄膜6を成長させることができる。
【0029】
以上の説明では、n型ドーパントやp型ドーパントをドーピングする例で説明しているが、前述の図2及び後述する表1及び表2の例は、いずれのドーパントもドーピングしないで、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの4d遷移金属のみを固溶した例である。
【0030】
このようにして、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhを混晶させたK2S薄膜は、図2に示されるように、Zr,Nb,Tc,Ru,又はRhがそれぞれ5at%ドープされた時に、反強磁性スピングラス状態エネルギーと強磁性状態における遷移金属原子あたりのエネルギーの差△Eが、それぞれ、0.39×13.6meV、0.38×13.6meV、0.3×13.6meV,0.1×13.6meV、0.2×13.6meV、0.28×13.6meV、と大きく、安定な強磁性を示していることが分かる。また、Moは反強磁性スピングラス状態が−0.39×13.6meVだけ安定となっている。
【0031】
このようにして、強磁性状態とスピングラス状態を示す透明強磁性半導体についてドープする原子種を変えることにより所望の磁性状態をデザインに基づいて作製することができる。
【0032】
この例では、K2S化合物に遷移金属元素をドープしたが、K2Sの代わりにK2Se,K2Te,K2O,Na2S,Na2Se,Na2Te,Na2O,Li2O,Li2S,Li2Se,Li2Te,Rb2O,Rb2S,Rb2Se,Rb2Te,Cs2O,Cs2S,Cs2Se,Cs2Te(以下K2S系化合物と呼ぶ)などの逆蛍石構造を持つ化合物では、バンドギャップの大きさが制御でき、同様の逆蛍石構造であり、しかも、バンドギャップが異なるのみであるので、透過する光の波長だけが異なる。これらは遷移金属をドープしたK2Sと同じように完全スピン分極した(ハーフメタル)透明強磁性半導体となり単結晶が得られる。
【0033】
ハーフメタル状態とは、図6、及び図7に示すように、フェルミ準位において一方のスピン状態だけに電子状態が存在し、逆向きスピンを持つ状態はバンドギャップが開き、フェルミ準位における状態が存在することができない状態である。従って、電子は100%スピン分極したものが物質の中を遍歴するため、他の物質へのスピン注入に本発明の化合物を利用したり、絶縁体を本発明の化合物でサンドイッチすることにより完全スピン分極を利用した磁気メモリーや演算装置に関するデバイスを開発するときには不可欠の材料となることができる。
【0034】
本発明の完全スピン分極したハーフメタル透明強磁性K2S系化合物は、K+が遷移金属元素のZr+,Nb+,Tc+,Ru+,又はRh+と置換されて、逆蛍石構造を維持する。しかも、Zr,Nb,Tc,Ru,又はRhの遷移金属元素は、大きなバンドギャップ中にできた不純物バンドを電子やホールが遍歴する電子構造になっており、図2に示されるように、ホールや電子をドープすることなく、遷移金属を固溶した状態のままで強磁性状態が安定化する。
【0035】
しかも、このハーフメタル透明強磁性K2S系化合物は、後述する表1及び表2にも示されるように、その磁気モーメントが大きく、3.94×9.274J/T(3.94μB(ボーア磁子))の磁気モーメントを持つNbやTc固溶K2S系化合物が得られ、大きなスピン軌道相互作用により大きな磁気光学特性を持った、非常に磁気異方性が大きく、強い、しかも、完全スピン分極した透明強磁性磁石が得られる。
【0036】
次に、遷移金属元素の濃度を変えることによる磁気特性の変化を調べた。前述の5at%濃度の遷移金属元素を固溶させたものの他に、濃度が10 at%,15 at%,20at%,25at%のものを作製し、それぞれの磁気モーメント(×9.247J/T)及び強磁性転移温度(度K)を調べた。磁気モーメント及び強磁性転移温度はSQUID(superconducting quantum interference device ; 超伝導量子干渉素子)による帯磁率の測定から得られたものである。その結果が表1及び表2に示されている。
【0037】
表1及び表2から、遷移金属濃度が高いほど強磁性転移温度が上昇する傾向が見られ、混晶割合が増加するに従って、強磁性転移温度も増加する。図3に、K2Sに混晶させる遷移金属の濃度を変えたときの強磁性転移温度の変化を示す。また、スピン間の強磁性的相互作用も遷移金属元素の濃度の増加に伴って増大することがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
前述のように、遷移金属元素は、電子スピンs=3/2、2、2をもつ高スピン状態となり、この表1及び表2、ならびに図3からも明らかなように、その濃度を変化させることにより、強磁性的なスピン間相互作用と強磁性転移温度を調整し、制御することができることが分かる。なお、強磁性転移温度は、室温以上で作動するスピンエレクトロニクスへの応用を考えると300度K以上になるようにすることが、実用上好ましい。
【0041】
さらに、本発明者らは、前記の遷移金属元素を2種類以上混晶させることにより、ホールや電子の状態を調整できると共に、それぞれの磁気特性を併せ持たせることができることを見出した。例えば、ZrやNbとMoを混晶させ、ZrとMo、NbとMo、TcとMoを合せて25at%とし、Nb0.25−XMoxK1.75SのXを種々変化させた。
【0042】
その結果を図4に示す。図4は、2種類以上の遷移金属元素を混晶させたときのその割合による強磁性転移温度の変化の状態を説明する図である。図4に示されるように、強磁性転移温度を大きく変化させることができ、x=0.13で0度Kとすることができ、x=0〜0.25の範囲を選定することにより、所望の強磁性転移温度に設定することができる。また、ZrやRuとMoを同様に合せて25at%混晶させ、Zr0.25−xMoxK1.75SやRu0.25−xMoxK0.75S0.5のxを種々変化させることができる。また、図示されていないが、磁気モーメントについても両者の混合割合に応じた磁気モーメントが得られる。
【0043】
前述の各例は、前記の遷移金属元素を2種類以上ドープすることにより、その強磁性特性を変化させたが、n型ドーパント又はp型ドーパントをドープしても、同様にホール又は電子の量を変化させることができ、その強磁性状態を変化させることができる。
【0044】
この場合、n型ドーパント又はp型ドーパントにより導入された電子やホールは、K2Sのバンドギャップ中に形成される遷移金属のd軌道とK2Sのp軌道の強く混成した不純物バンドに入り、その強磁性状態を変化させ、強磁性転移温度にも変化を与える。例えば、n型ドーパントをドープすることにより、電子を供給したことになり、強磁性を示すZr,Nbにn型ドーパントをドープすることは、前述のZrやNbにMoを添加するのと同様の効果が得られ、強磁性を示すTc,Ru,Rhにp型ドーパントをドープすることは、前述のTc,Ru,RhにMoを添加するのと同様の効果が得られる。
【0045】
例えば、n型ドーパント又はp型ドーパント(ホールをドープする)のドーピングによる反強磁性スピングラス状態の全エネルギーと強磁性状態の全エネルギー差である△Eの変化が顕著であるNbやZrの場合を例にすると、p型ドーパントをドープしたときのp型ドーパント不純物濃度(at%)に対する△Eの関係を図5に示す。図5は、Nbを例としたn型及びp型のドーパントを添加したときの磁性状態の変化を示す説明図である。このようにホールの導入により強磁性が安定化し、一方、n型ドーパントにより電子をドープすると強磁性が消失するので、その強磁性特性を調整することができる。
【0046】
一方、Tc,Ru,Rhの4d遷移金属元素も元々強磁性を示すが、Zr, Nbとは逆にホールをドープすることによって強磁性状態を不安定化して強磁性転移温度が低下し、スピングラス状態にさせることができ、強磁性転移温度をp型ドーパントの濃度を変えることによって調整できる。
【0047】
n型ドーパントとしては、Cl,F,CaやMgを使用することができ、ドーピングの原料としては、これらのカルコゲン化合物を使用することもできる。また、ドナー濃度としては、1×1018cm−3以上であることが好ましい。例えば、1020〜1021cm−3程度にドープすれば、前述の混晶割合の1〜10at%程度に相当する。また、p型ドーパントとしては、前述のように、P,As,SbやNを用いることができる。この場合、p型ドーパントはドーピングしにくいが、n型ドーパントを同時に僅かにドーピングすることにより、p型濃度を大きくすることができる。
【0048】
本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、アルカリ・カルコゲン化合物に混晶させる母体化合物の種類と前記の遷移金属元素の種類を変えることにより、バンドギャップの大きさとd電子によって透過する最小の波長が異なり、混晶する前記の遷移金属元素を2種類以上混合することにより、その通す光の最小波長を調整することができ、所望の波長以下の光をカットする光フィルタを形成することができることを見出した。
【0049】
すなわち、所望の波長の光だけを透過させる強磁性のアルカリ・カルコゲン化合物が得られる。前記の各遷移金属元素を25at%K2Sに混晶させたときに透過する光の最小波長は表3に示すとおりになった。すなわち、この例によれば、所望の波長の光に対して、透明な強磁性磁石を得ることができる。
【0050】
【表3】
【0051】
以上のように、本発明によれば、混晶される金属元素自身などにより導入されたホール又は電子の運動エネルギーによって、強磁性状態の全エネルギーを変化させることができ、その全エネルギーを低下させるように導入するホール又は電子を調整しているため、強磁性状態を安定化させることができる。
【0052】
また、導入されるホール又は電子によって遷移金属金属原子間の磁気的相互作用の大きさ及び符号が大きく変化し、そのホール又は電子によってこれらを制御することにより、強磁性状態を安定化させたり、逆に不安定化させて強磁性を消失させ反強磁性スピングラス状態にすることができる。
【0053】
前述の例では、遷移金属元素を固溶するアルカリ・カルコゲン化合物の薄膜を成膜する方法として、MBE(分子線エピタキシー)装置を用いたが、MOCVD(有機金属化学気相成長)装置でも同様に成膜することができる。この場合、K,Naなどのアルカリ金属や遷移金属などの金属は、例えば、ジメチルカリウムやジメチルナトリウムなどの有機金属化合物として、MOCVD装置内に導入する。
【0054】
このようなMBE法やMOCVD法などを用いれば、非平衡状態で成膜することができ、所望の濃度で遷移金属元素などを高濃度にドーピングすることができる。成膜の成長法としては、これらの方法に限らず、アルカリ・カルコゲン化合物固体、遷移金属元素金属固体をターゲットとし、活性化したドーパントを基板上に吹きつけながら成膜するレーザ・アブレーション法でも薄膜を成膜することができる。
【0055】
さらに、遷移金属元素やそのカルコゲン化合物を原料としてドープする場合、ラジオ波、レーザ、X線、又は電子線によって電子励起して原子状にするECRプラズマを用いることもできる。n型ドーパントやp型ドーパントでも同様にECRプラズマを用いることができる。このようなECRプラズマを用いることにより、原子状にして高濃度までドープすることができるというメリットがある。
【0056】
完全スピン分極した透明強磁性体となるTcをドープした物質では、Tcはベータ崩壊により寿命が10000年以上あり、この間ガンマー線と電子を放出する。これらの電子は物質が完全スピン分極していることにより100%スピン分極した電子を放出し続けるため、スピン・バッテリー源や電池や電源を必要としないスピン注入源やスピン・バッテリーとして利用できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリ・カルコゲン化合物に大きな磁気光学効果を持つ遷移金属元素やランタン系希土類元素を固溶させるだけで、完全スピン分極した透明強磁性単結晶が得られるため、すでに実現しているn型又はp型の透明電極として使用されているZnOや透明伝導酸化物(TCO)、光ファイバと組み合わせることにより、量子コンピュータや大容量光磁気記録、また、可視光から紫外領域に亘る光エレクトロニクス材料として、高性能な情報通信、量子コンピュータへの応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、完全スピン分極した透明強磁性単結晶薄膜を形成する装置の一例の説明図である。
【図2】Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの4d遷移金属をK2Sに混晶させたときの反強磁性スピングラス状態の全エネルギーと強磁性状態の全エネルギーとの差△Eを示す図である。
【図3】K2Sに混晶させる遷移金属の濃度を変えたときの強磁性転移温度の変化を示す図である。
【図4】2種類以上の遷移金属元素を混晶させたときのその割合による強磁性転移温度の変化の状態を説明する図である。
【図5】Nbを例としたn型及びp型のドーパントを添加したときの磁性状態の変化を示す説明図である。
【図6】K2S中のNb(6a)及びTc(6b)の電子状態密度であり、ハーフメタリック(上向きスピンがメタルで下向きスピンは半導体)状態を示す図である。
【図7】K2S中のTa(7a)及びOs(7b)の電子状態密度であり、ハーフメタリック(上向きスピンがメタルで下向きスピンは半導体)状態を示す図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2、3 セル
5 基板
6 遷移金属を固溶したK2S薄膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイドバンドギャップを持ち、透明なアルカリ・カルコゲナイド化合物に強磁性特性を実現させた単結晶のアルカリ・カルコゲナイド化合物及びその強磁性特性の調整方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、大きな磁気光学効果を有し、所望の強磁性特性、例えば、強磁性転移温度などが得られる透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物及びその強磁性特性の調整方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
アルカリ・カルコゲナイド化合物は無色・透明であり、そのバンドギャップ(Eg)が3eV以上と大きく、可視領域から紫外光、さらには超紫外光の波長の光でも透過するという性質を有すると共に、そのエキシトンの結合エネルギーが大きく、この材料で大きなスピン・軌道相互作用をする強磁性材料が得られれば、スピンの自由度を利用したスピントランジスターや光アイソレーター、又はコヒーレントなスピン状態を利用した光量子コンピュータなどの光量子デバイスの作製や量子情報処理のためのデバイスの開発に大きな発展が期待される。
【0004】
しかし、従来は、アルカリ・カルコゲナイド化合物に3d、4d、又は5d遷移金属、又はランタン系希土類元素をドープした完全スピン分極した強磁性状態の報告例はなく、高い強磁性転移温度(キューリー点)を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性状態の実現も報告されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
光を透過するとともに、優れた強磁性特性を有する単結晶の強磁性薄膜が得られれば、これらの磁気光学効果を利用して、大量の情報伝達に必要な光アイソレータや光による高密度磁気記録が可能になり、また、電子の持っている電荷の自由度に加えてスピンの自由度と光を積極的に利用した将来の大容量・超高速・超省エネルギーの情報伝達に必要なデバイスに応用する電子光磁気材料を作製することができる。さらに、巨大な磁気光学効果を持ち、しかも、光を透過しながら強磁性を有する完全スピン分極した強磁性材料が望まれている。
【0006】
前述のように、アルカリ・カルコゲナイド化合物を用いて可視領域の光を通し、磁気光学効果を利用する安定した強磁性特性が得られれば、そのバンドギャップ・エネルギーが大きいアルカリ・カルコゲナイド化合物からなる半導体レーザなどの発光素子と組み合わせて利用することができ、磁気状態を反映させた円偏光した光を発生させることができ、大きなスピン・軌道相互作用による巨大な磁気光学効果を利用する磁気光学スピンデバイスの応用が、光情報通信やスピンエレクトロニクスへと広がる。
【0007】
さらに、前述のように、アルカリ・カルコゲナイド化合物に光を照射し、磁化状態によって大きな円偏光を利用し、磁気光学効果を変化させることにより、強磁性体メモリを構成する場合には、強磁性転移温度(キュリー温度)を光の照射により磁性状態が変化するような温度(室温よりわずかに高い温度)に設定するなど、強磁性特性が所望の特性になるように作製できる必要がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光を透過するアルカリ・カルコゲナイド化合物を用いて、完全スピン分極した強磁性が得られる透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物を提供する。
【0009】
また、本発明は、強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物を作成するに当り、例えば、強磁性転移温度などの、その強磁性特性を調整することができる透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性を調整する方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、大きなスピン・軌道相互作用を持つけれども、通常の4d遷移金属化合物、又は5d遷移金属化合物では強磁性状態とはならないこれらの遷移金属元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に固溶することにより、希薄な混晶状態において完全スピン分極した強磁性状態を実現し、その強磁性特性を調整することができる強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性を調整する方法を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、光を透過する材料として特に適したワイドバンドギャップを持ち、しかも、格子定数が大きいアルカリ・カルコゲナイド化合物を用い、強磁性特性を有する単結晶を得るために鋭意検討を重ねた結果、4d(Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRh)、5d(Hf,Ta,W,Os,Re,又はIr)、3d(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,又はCu)の各遷移金属元素、又はランタン系希土類元素(Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb又はLu)は、非平衡結晶成長法により低温でアルカリ金属イオンの25at%程度までを置き換え(混晶化させ)ても十分に単結晶が得られること、上記の各元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に混晶させると、電子状態の変化からホール又は電子をドープする(電子を増やすか減らす)ことにより、強磁性状態が得られること、上記の各元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に混晶させることにより、d電子にホールや電子を添加したのと同様の効果が得られること(上記の各元素自身がp型あるいはn型ドーパントとなり得ること)、を見出し、上記の各元素をアルカリ・カルコゲナイド化合物に混晶化させることにより、これらの金属元素単体を混晶させるだけで安定した完全スピン分極した透明強磁性状態にすることができることを見出した。
【0012】
4d遷移金属では、Zr, Nb, Tc, R u, Rhのみが強磁性を呈する元素であり、Moはスピングラスを呈する元素である。しかしながら、Moはp型キャリアーをドープすると強磁性を呈する元素になる。5d遷移金属では、Hf,Ta,Re,Os,Irのみが強磁性を呈する元素であり、Wはスピングラスを呈する元素である。しかしながら、Wはp型キャリアーをドープすると強磁性を呈する元素になる。3d遷移金属では、Ti,V,,Mn,Fe,Co,Ni,Cuのみが強磁性を呈する元素であり、Crはスピングラスを呈する元素である。しかしながら、Crはp型キャリアーをドープすると強磁性を呈する元素になる。特に、上記の4d、5d遷移金属は大きなスピン軌道相互作用を持ち、大きな磁気光学効果が得られる。
【0013】
そして、本発明者らがさらに鋭意検討を重ねた結果、上記の各元素は、電子スピンs=1、3/2、2をもつ高スピン状態となり、その添加濃度を変化したり、これらの元素の2種類以上の組合せや、その割合を変えた混晶にしたり、n型及び/又はp型のドーパントを添加したりすることにより、強磁性転移温度を変えることが可能なこと、反強磁性やスピングラス状態及び常磁性状態を安定化させるよりも強磁性状態を安定化させ得ること、その強磁性状態のエネルギー(例えば、僅かの差でスピングラス状態もしくは常磁性状態になるが、通常は強磁性状態を維持するエネルギー)を調整し得ること、上記の各元素の種類により光の最低透過波長が異なり、2種類以上の元素を選択的に混晶することにより、所望の光学フィルタ機能をもたせること、を見出し、上記の各元素の添加濃度や混合割合を調整することにより、所望の磁気特性を有する単結晶性で、かつ、完全スピン分極した透明強磁性(一方のスピン状態にバンドギャップがあり、他方のスピンだけが遍歴する状態を言い、「ハーフメタリック強磁性」ともいう)のアルカリ・カルコゲナイド化合物が得られることを見出した。
【0014】
本発明による完全スピン分極した透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物は、アルカリ・カルコゲナイド化合物に、前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶している。
【0015】
ここに、逆蛍石構造(Anti−CaF2structure)を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物とは、アルカリ金属(Na,K,Rb,Cs)とカルコゲン原子(O,S,Se,Te)を含む化合物、具体例としては、K2S,K2Se,K2Te,K2O,Na2S,Na2Se,Na2Te,Na2O,Li2O,Li2S,Li2Se,Li2Te,Rb2O,Rb2S,Rb2Se,Rb2Te,Cs2O,Cs2S,Cs2Se,Cs2Teなどである。
【0016】
上記化合物の格子定数は大きいので、不純物の軌道と母体原子の軌道の混成が弱く、前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素はK,Na,Li,Rbなどのアルカリ金属原子を置換することができ、非平衡結晶成長法により低温で25at%位まで置換しても逆蛍石型構造の単結晶を維持すると共に、アルカリ・カルコゲナイド化合物の透明性を維持しながら、逆蛍石型構造で完全スピン分極した強磁性の性質を呈する。
【0017】
前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも2種の金属元素が固溶されることにより、その遷移金属元素不純物に起因するd及びf電子不純物状態が、母体となる化合物の原子軌道と混成し、幅の狭い不純物バンドを形成するために大きな電子相関効果が得られ、強磁性となり、しかも、完全スピン分極した透明強磁性状態を実現する。このように、ホール又は電子をドープするよりも直接的に強磁性特性が変化し、強磁性転移温度などの強磁性特性を調整することができる。
【0018】
n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方がドーピングされると、ドープされたキャリアーはバンドギャップ中に形成された幅の狭い不純物バンドに入るため、ドープした遷移金属のd電子不純物状態又はf電子不純物状態の占有電子数を変えることができ、不純物バンドを形成しているd及びf電子の価電子制御により、その強磁性特性を調整することができる。
【0019】
本発明による逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法は、下記の(1)〜(3)により行う。
(1)前記のようなアルカリ・カルコゲナイド化合物に、前記の3d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素か、前記の4d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素か、前記の5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素か、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素を添加し、添加した元素の濃度の調整、
(2)前記の3d遷移金属元素、前記の4d遷移金属元素、前記の5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素の同じ元素群又は異なる元素群から選ばれる少なくとも2種の金属元素の種類の組合せ、
(3)さらに、n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方を添加し、添加したドーパントの濃度の調整。
【0020】
具体的には、前記濃度(遷移金属元素又は希土類金属元素及びドーパントの濃度)の調整、又は2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素の組合せにより、強磁性転移温度を所望の温度に調整することができ、また、2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素を混晶させ、強磁性の安定化エネルギーを調整すると共に、該遷移金属元素自身により導入されたホール又は電子による運動エネルギーによって全エネルギーを低下させることにより、強磁性状態を安定化させることができ、また、2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素を混晶させ、該遷移金属元素自身により導入されたホール又は電子によって、該遷移金属原子間の磁気的相互作用の大きさと符号を制御することにより、強磁性状態を安定化させることができる。
【0021】
さらに、2種以上の前記遷移金属元素又は前記希土類金属元素を混晶させ、該遷移金属元素自身により導入されたホール又は電子によって、該遷移金属原子間の磁気的相互作用の大きさと符号を制御すると共に、該遷移金属元素の混晶による光の透過特性を制御することにより、所望の光フィルタ特性を有する完全スピン分極した透明強磁性のアルカリ・カルコゲナイド化合物とすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら本発明による完全スピン分極した透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物、及びその強磁性特性の調整方法について説明をする。本発明による完全スピン分極した透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物は、逆蛍石構造を有するアルカリ・カルコゲナイド化合物に、前記の3d、4d、又は5d遷移金属元素、又は前記のランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶している。
【0023】
前述のように、本発明者らは、逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物の一種であるK2Sを用いて完全スピン分極した透明強磁性材料を得るために鋭意検討を重ねた結果、図2に示される、K2Sにおける反強磁性スピングラス状態の全エネルギーと強磁性状態の全エネルギーとの差△Eから、Zr,Nb,Tc,Ru,又はRhの4d遷移金属元素のみを単独で混晶させるだけで強磁性を示すことを見出した。図2において、正の値は強磁性状態が安定であることを示し、負の値は、反強磁性スピングラス状態が安定であることを示している。
【0024】
この混晶割合は、K2SのKに対して5at%の例であるが、混晶割合としては、数at%でも強磁性を示し、また、多くしても結晶性及び透明性を害することがなく、1at%から99at%、好ましくは、1at%〜25at%であれば、充分な強磁性を得やすい。この遷移金属元素は1種類である必要はなく、後述するように2種類以上を混晶(合金化)することができる。
【0025】
このような遷移金属元素を固溶するアルカリ・カルコゲナイド化合物の薄膜を成膜するには、例えば、MBE法を使用する。図1に、MBE法に用いる装置の概略説明図を示すように、1.33×10−6Pa程度の超高真空を維持できるチャンバー1内の基板ホルダー4に、例えば、SiC、SiO2やサファイアなどからなる基板上にK2Sなどのアルカリ・カルコゲナイド化合物を成長させる基板5を設置し、ヒータ7により基板5を加熱できるようになっている。
【0026】
そして、基板ホルダー4に保持される基板5と対向するように、成長する化合物を構成する元素の材料(ソース源)Kを入れたセル2a、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの遷移金属元素を入れたセル(1個しか示されていないが、2種類以上を混晶させる場合は2個以上設けられている)2b、n型ドーパントのCl,F,CaやMgなどを入れたセル2c、p型ドーパントのP,As,SbやNを入れたセル2d、ラジカルSを発生させるRFラジカルセル3aが設けられている。なお、Kや遷移金属などの固体原料はこれらの金属のカルコゲン化合物をセルに入れて原子状にすることもできる。
【0027】
なお、固体(単体)を入れるセル2a〜2dは、図示されていないが、それぞれに設けられ、加熱により固体ソースを原子状にして蒸発させられる様になっており、ラジカルセル3aは、図1に示されるように、RF(高周波)コイル8により活性化させている。このK、遷移金属元素及びn型ドーパント材料としては、純度99.99999%の固体ソースを原子状にし、また、原子状のSをつくるために前述のラジカルセルにより活性化して使用する。加熱によるSの原子状ビーム作成もできるようにしてある。なお、K,Sや遷移金属元素は分子ガスにマイクロ波領域の電磁波を照射することにより原子状にすることもできる。
【0028】
そして、K2Sを成長させながら、n型ドーパントのCl,F,CaやMgなどを流量1.33×10−5Paで、さらに、p型ドーパントである原子状P,As,やNを6.65×10−5Paで、また、例えば、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの原子状遷移金属元素を1.33×10−5Paで、同時に基板5上に流しながら、250〜850℃で成長することにより、遷移金属元素を混晶させたK2S薄膜6を成長させることができる。
【0029】
以上の説明では、n型ドーパントやp型ドーパントをドーピングする例で説明しているが、前述の図2及び後述する表1及び表2の例は、いずれのドーパントもドーピングしないで、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの4d遷移金属のみを固溶した例である。
【0030】
このようにして、Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhを混晶させたK2S薄膜は、図2に示されるように、Zr,Nb,Tc,Ru,又はRhがそれぞれ5at%ドープされた時に、反強磁性スピングラス状態エネルギーと強磁性状態における遷移金属原子あたりのエネルギーの差△Eが、それぞれ、0.39×13.6meV、0.38×13.6meV、0.3×13.6meV,0.1×13.6meV、0.2×13.6meV、0.28×13.6meV、と大きく、安定な強磁性を示していることが分かる。また、Moは反強磁性スピングラス状態が−0.39×13.6meVだけ安定となっている。
【0031】
このようにして、強磁性状態とスピングラス状態を示す透明強磁性半導体についてドープする原子種を変えることにより所望の磁性状態をデザインに基づいて作製することができる。
【0032】
この例では、K2S化合物に遷移金属元素をドープしたが、K2Sの代わりにK2Se,K2Te,K2O,Na2S,Na2Se,Na2Te,Na2O,Li2O,Li2S,Li2Se,Li2Te,Rb2O,Rb2S,Rb2Se,Rb2Te,Cs2O,Cs2S,Cs2Se,Cs2Te(以下K2S系化合物と呼ぶ)などの逆蛍石構造を持つ化合物では、バンドギャップの大きさが制御でき、同様の逆蛍石構造であり、しかも、バンドギャップが異なるのみであるので、透過する光の波長だけが異なる。これらは遷移金属をドープしたK2Sと同じように完全スピン分極した(ハーフメタル)透明強磁性半導体となり単結晶が得られる。
【0033】
ハーフメタル状態とは、図6、及び図7に示すように、フェルミ準位において一方のスピン状態だけに電子状態が存在し、逆向きスピンを持つ状態はバンドギャップが開き、フェルミ準位における状態が存在することができない状態である。従って、電子は100%スピン分極したものが物質の中を遍歴するため、他の物質へのスピン注入に本発明の化合物を利用したり、絶縁体を本発明の化合物でサンドイッチすることにより完全スピン分極を利用した磁気メモリーや演算装置に関するデバイスを開発するときには不可欠の材料となることができる。
【0034】
本発明の完全スピン分極したハーフメタル透明強磁性K2S系化合物は、K+が遷移金属元素のZr+,Nb+,Tc+,Ru+,又はRh+と置換されて、逆蛍石構造を維持する。しかも、Zr,Nb,Tc,Ru,又はRhの遷移金属元素は、大きなバンドギャップ中にできた不純物バンドを電子やホールが遍歴する電子構造になっており、図2に示されるように、ホールや電子をドープすることなく、遷移金属を固溶した状態のままで強磁性状態が安定化する。
【0035】
しかも、このハーフメタル透明強磁性K2S系化合物は、後述する表1及び表2にも示されるように、その磁気モーメントが大きく、3.94×9.274J/T(3.94μB(ボーア磁子))の磁気モーメントを持つNbやTc固溶K2S系化合物が得られ、大きなスピン軌道相互作用により大きな磁気光学特性を持った、非常に磁気異方性が大きく、強い、しかも、完全スピン分極した透明強磁性磁石が得られる。
【0036】
次に、遷移金属元素の濃度を変えることによる磁気特性の変化を調べた。前述の5at%濃度の遷移金属元素を固溶させたものの他に、濃度が10 at%,15 at%,20at%,25at%のものを作製し、それぞれの磁気モーメント(×9.247J/T)及び強磁性転移温度(度K)を調べた。磁気モーメント及び強磁性転移温度はSQUID(superconducting quantum interference device ; 超伝導量子干渉素子)による帯磁率の測定から得られたものである。その結果が表1及び表2に示されている。
【0037】
表1及び表2から、遷移金属濃度が高いほど強磁性転移温度が上昇する傾向が見られ、混晶割合が増加するに従って、強磁性転移温度も増加する。図3に、K2Sに混晶させる遷移金属の濃度を変えたときの強磁性転移温度の変化を示す。また、スピン間の強磁性的相互作用も遷移金属元素の濃度の増加に伴って増大することがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
前述のように、遷移金属元素は、電子スピンs=3/2、2、2をもつ高スピン状態となり、この表1及び表2、ならびに図3からも明らかなように、その濃度を変化させることにより、強磁性的なスピン間相互作用と強磁性転移温度を調整し、制御することができることが分かる。なお、強磁性転移温度は、室温以上で作動するスピンエレクトロニクスへの応用を考えると300度K以上になるようにすることが、実用上好ましい。
【0041】
さらに、本発明者らは、前記の遷移金属元素を2種類以上混晶させることにより、ホールや電子の状態を調整できると共に、それぞれの磁気特性を併せ持たせることができることを見出した。例えば、ZrやNbとMoを混晶させ、ZrとMo、NbとMo、TcとMoを合せて25at%とし、Nb0.25−XMoxK1.75SのXを種々変化させた。
【0042】
その結果を図4に示す。図4は、2種類以上の遷移金属元素を混晶させたときのその割合による強磁性転移温度の変化の状態を説明する図である。図4に示されるように、強磁性転移温度を大きく変化させることができ、x=0.13で0度Kとすることができ、x=0〜0.25の範囲を選定することにより、所望の強磁性転移温度に設定することができる。また、ZrやRuとMoを同様に合せて25at%混晶させ、Zr0.25−xMoxK1.75SやRu0.25−xMoxK0.75S0.5のxを種々変化させることができる。また、図示されていないが、磁気モーメントについても両者の混合割合に応じた磁気モーメントが得られる。
【0043】
前述の各例は、前記の遷移金属元素を2種類以上ドープすることにより、その強磁性特性を変化させたが、n型ドーパント又はp型ドーパントをドープしても、同様にホール又は電子の量を変化させることができ、その強磁性状態を変化させることができる。
【0044】
この場合、n型ドーパント又はp型ドーパントにより導入された電子やホールは、K2Sのバンドギャップ中に形成される遷移金属のd軌道とK2Sのp軌道の強く混成した不純物バンドに入り、その強磁性状態を変化させ、強磁性転移温度にも変化を与える。例えば、n型ドーパントをドープすることにより、電子を供給したことになり、強磁性を示すZr,Nbにn型ドーパントをドープすることは、前述のZrやNbにMoを添加するのと同様の効果が得られ、強磁性を示すTc,Ru,Rhにp型ドーパントをドープすることは、前述のTc,Ru,RhにMoを添加するのと同様の効果が得られる。
【0045】
例えば、n型ドーパント又はp型ドーパント(ホールをドープする)のドーピングによる反強磁性スピングラス状態の全エネルギーと強磁性状態の全エネルギー差である△Eの変化が顕著であるNbやZrの場合を例にすると、p型ドーパントをドープしたときのp型ドーパント不純物濃度(at%)に対する△Eの関係を図5に示す。図5は、Nbを例としたn型及びp型のドーパントを添加したときの磁性状態の変化を示す説明図である。このようにホールの導入により強磁性が安定化し、一方、n型ドーパントにより電子をドープすると強磁性が消失するので、その強磁性特性を調整することができる。
【0046】
一方、Tc,Ru,Rhの4d遷移金属元素も元々強磁性を示すが、Zr, Nbとは逆にホールをドープすることによって強磁性状態を不安定化して強磁性転移温度が低下し、スピングラス状態にさせることができ、強磁性転移温度をp型ドーパントの濃度を変えることによって調整できる。
【0047】
n型ドーパントとしては、Cl,F,CaやMgを使用することができ、ドーピングの原料としては、これらのカルコゲン化合物を使用することもできる。また、ドナー濃度としては、1×1018cm−3以上であることが好ましい。例えば、1020〜1021cm−3程度にドープすれば、前述の混晶割合の1〜10at%程度に相当する。また、p型ドーパントとしては、前述のように、P,As,SbやNを用いることができる。この場合、p型ドーパントはドーピングしにくいが、n型ドーパントを同時に僅かにドーピングすることにより、p型濃度を大きくすることができる。
【0048】
本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、アルカリ・カルコゲン化合物に混晶させる母体化合物の種類と前記の遷移金属元素の種類を変えることにより、バンドギャップの大きさとd電子によって透過する最小の波長が異なり、混晶する前記の遷移金属元素を2種類以上混合することにより、その通す光の最小波長を調整することができ、所望の波長以下の光をカットする光フィルタを形成することができることを見出した。
【0049】
すなわち、所望の波長の光だけを透過させる強磁性のアルカリ・カルコゲン化合物が得られる。前記の各遷移金属元素を25at%K2Sに混晶させたときに透過する光の最小波長は表3に示すとおりになった。すなわち、この例によれば、所望の波長の光に対して、透明な強磁性磁石を得ることができる。
【0050】
【表3】
【0051】
以上のように、本発明によれば、混晶される金属元素自身などにより導入されたホール又は電子の運動エネルギーによって、強磁性状態の全エネルギーを変化させることができ、その全エネルギーを低下させるように導入するホール又は電子を調整しているため、強磁性状態を安定化させることができる。
【0052】
また、導入されるホール又は電子によって遷移金属金属原子間の磁気的相互作用の大きさ及び符号が大きく変化し、そのホール又は電子によってこれらを制御することにより、強磁性状態を安定化させたり、逆に不安定化させて強磁性を消失させ反強磁性スピングラス状態にすることができる。
【0053】
前述の例では、遷移金属元素を固溶するアルカリ・カルコゲン化合物の薄膜を成膜する方法として、MBE(分子線エピタキシー)装置を用いたが、MOCVD(有機金属化学気相成長)装置でも同様に成膜することができる。この場合、K,Naなどのアルカリ金属や遷移金属などの金属は、例えば、ジメチルカリウムやジメチルナトリウムなどの有機金属化合物として、MOCVD装置内に導入する。
【0054】
このようなMBE法やMOCVD法などを用いれば、非平衡状態で成膜することができ、所望の濃度で遷移金属元素などを高濃度にドーピングすることができる。成膜の成長法としては、これらの方法に限らず、アルカリ・カルコゲン化合物固体、遷移金属元素金属固体をターゲットとし、活性化したドーパントを基板上に吹きつけながら成膜するレーザ・アブレーション法でも薄膜を成膜することができる。
【0055】
さらに、遷移金属元素やそのカルコゲン化合物を原料としてドープする場合、ラジオ波、レーザ、X線、又は電子線によって電子励起して原子状にするECRプラズマを用いることもできる。n型ドーパントやp型ドーパントでも同様にECRプラズマを用いることができる。このようなECRプラズマを用いることにより、原子状にして高濃度までドープすることができるというメリットがある。
【0056】
完全スピン分極した透明強磁性体となるTcをドープした物質では、Tcはベータ崩壊により寿命が10000年以上あり、この間ガンマー線と電子を放出する。これらの電子は物質が完全スピン分極していることにより100%スピン分極した電子を放出し続けるため、スピン・バッテリー源や電池や電源を必要としないスピン注入源やスピン・バッテリーとして利用できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、アルカリ・カルコゲン化合物に大きな磁気光学効果を持つ遷移金属元素やランタン系希土類元素を固溶させるだけで、完全スピン分極した透明強磁性単結晶が得られるため、すでに実現しているn型又はp型の透明電極として使用されているZnOや透明伝導酸化物(TCO)、光ファイバと組み合わせることにより、量子コンピュータや大容量光磁気記録、また、可視光から紫外領域に亘る光エレクトロニクス材料として、高性能な情報通信、量子コンピュータへの応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、完全スピン分極した透明強磁性単結晶薄膜を形成する装置の一例の説明図である。
【図2】Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,又はRhの4d遷移金属をK2Sに混晶させたときの反強磁性スピングラス状態の全エネルギーと強磁性状態の全エネルギーとの差△Eを示す図である。
【図3】K2Sに混晶させる遷移金属の濃度を変えたときの強磁性転移温度の変化を示す図である。
【図4】2種類以上の遷移金属元素を混晶させたときのその割合による強磁性転移温度の変化の状態を説明する図である。
【図5】Nbを例としたn型及びp型のドーパントを添加したときの磁性状態の変化を示す説明図である。
【図6】K2S中のNb(6a)及びTc(6b)の電子状態密度であり、ハーフメタリック(上向きスピンがメタルで下向きスピンは半導体)状態を示す図である。
【図7】K2S中のTa(7a)及びOs(7b)の電子状態密度であり、ハーフメタリック(上向きスピンがメタルで下向きスピンは半導体)状態を示す図である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2、3 セル
5 基板
6 遷移金属を固溶したK2S薄膜
Claims (13)
- 逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物に、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、又はRhの4d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶し、強磁性特性を有することを特徴とする単結晶の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。
- 逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物に、Hf、Ta、W、Os、Re、又はIrの5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶し、強磁性特性を有することを特徴とする単結晶の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。
- 逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、又はLuのランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶し、強磁性特性を有することを特徴とする単結晶の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。
- 逆蛍石構造を持つアルカリ・カルコゲナイド化合物に、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの3d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属が固溶し、強磁性特性を有することを特徴とする単結晶の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。
- 前記3d遷移金属元素、前記4d遷移金属元素、前記5d遷移金属元素、又はランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも2種の金属元素が混晶を形成していることを特徴とする請求項1、2、3、又は4記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。
- n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方がドーピングされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物。
- アルカリ・カルコゲナイド化合物に前記3d遷移金属元素、前記4d遷移金属元素、前記5d遷移金属元素、又は前記ランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素を添加して固溶させ、添加した元素の濃度の調整により強磁性特性を調整することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
- アルカリ・カルコゲナイド化合物に前記3d遷移金属元素、前記4d遷移金属元素、前記5d遷移金属元素、又は前記ランタン系希土類元素から選ばれる少なくとも2種の金属元素を添加して固溶させ、添加した元素の種類の組合せにより強磁性特性を調整することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
- アルカリ・カルコゲナイド化合物に、さらに、n型ドーパント又はp型ドーパントの少なくとも一方を添加することを特徴とする請求項7又は8記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
- 強磁性特性が強磁性転移温度であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
- 強磁性特性の調整は、強磁性のエネルギー状態を調整するとともに、該金属元素自身により導入されたホール又は電子によるキャリアー数の調整によって強磁性状態やスピングラス状態の全エネルギーを相対的に低下させることにより、所望の強磁性状態やスピングラス状態を安定化させ、発現させることであることを特徴とする請求項8記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
- 添加した該金属元素自身により導入されたホール又は電子によって、金属原子間の磁気的相互作用の大きさと符号を制御することにより、強磁性状態を安定化させることを特徴とする請求項8記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
- 添加した該金属元素自身により導入されたホール又は電子によって、金属原子間の磁気的相互作用の大きさと符号を制御するとともに、該金属元素の混晶によるバンドギャップの大きさを調整して光の透過特性を制御することにより、所望の光フィルタ特性を有する強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物とすることを特徴とする請求項8記載の透明強磁性アルカリ・カルコゲナイド化合物の強磁性特性の調整方法。
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