JPWO2018042971A1 - 固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置 - Google Patents

固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【要約書】励起光としてフェムト秒パルスレーザー4を、λ/4波長板6を回転させることで偏光状態を変化させトポロジカル絶縁体の固体試料8の表面に照射し、固体試料8の表面に、逆ファラデー効果又は逆コットン・ムートン効果を誘起せしめ、該効果に基づいて生じるλ/4波長板回転角依存性を計測することにより、トポロジカル絶縁体等における固体試料8の表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価を行い、トポロジカル絶縁性を評価する。

Description

本発明は、超短パルスレーザーを用いて、非接触かつ室温・大気中で、トポロジカル絶縁体(Topological insulator:物質の内部は絶縁体でありながら、表面は電気を通すという物質)等において固体表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価を同時に行う方法及び装置を提供するものである。
スピントロニクスへの応用が考えられるトポロジカル絶縁体は、Te又はSbを主成分とするカルコゲンと呼ばれる化合物が主なものであり、トポロジカル絶縁体の表面では、表面のバンド構造を反映したスピン電流が流れる。このスピン電流を測定する技術は、幾つかの文献で報告されている。
例えば、ポンピングするレーザー光の偏光状態に対するスピン電流の強度の変化を測定することで、トポロジカル絶縁体の評価がされている(非特許文献1参照)。
一方、走査トンネル顕微鏡(STM)や、角度分解型光電子分光法(ARPES)により、トポロジカル絶縁体におけるバンド・ギャップ(Eg)の評価が行われており、トポロジカル絶縁体(Topological insulator: TI)(Eg = 0)と通常の絶縁体(Normal insulator: NI)(Eg ≠0)の見分けが可能になり、特に、膜厚に依存して起こる、TI⇔NI量子相転移の観測が可能となっている(非特許文献2、非特許文献3参照)。
特許第3918054号(特開2004−226224号)公報
J. W. McIver, D. Hsieh, H. Steinberg, P. Jarillo-Herrero1 and N. Gedik, Nature Nanotechnology Vol. 7, 96-100(2011) Y. Jiang, Y. Wang, M. Chen, Z. Li, C. Song, K. He, L. Wang, X. Chen, X. Ma, and Q.-K. Xue, Physical Review Letters Vol.108, 016401 (2012) Y. Zhang, K. He, C.-Z. Chang, C.-L. Song, L.-L. Wang, X. Chen, J.-F. Jia, Z. Fang, X. Dai, W.-Y. Shan, S.-Q. Shen, Q. Niu, X.-L. Qi, S.-C. Zhang, X.-C. Ma and Q.-K. Xue, Nature Physics Vol. 6, 584-588(2010) A. V. Kimel, A. Kirilyuk, P. A. Usachev, R. V. Pisarev, A. M. Balbashov and Th. Rasing, Nature Vol. 435, 655-657 (2005)
上記のとおり報告されているレーザー光の偏光状態に対するスピン電流の変化から、トポロジカル絶縁体におけるバンド・ギャップを評価する技術や、TI⇔NI量子相転移を評価する手法は確立されていない。
バンド・ギャップや、TI⇔NI量子相転移を評価する技術は、走査トンネル顕微鏡(STM)や、角度分解型光電子分光法(ARPES)によって主に行われている。
しかし、走査トンネル顕微鏡(STM)や、角度分解型光電子分光法(ARPES)を用いるには、試料は室温かつ大気中という条件での評価が難しく、通常は、真空中あるいは極低温の雰囲気下でバンド・ギャップや、TI⇔NI量子相転移の評価を行う必要が生ずる(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照)。
即ち、トポロジカル絶縁体のバンド・ギャップや、TI⇔NI量子相転移を室温かつ大気中という雰囲気下で評価する技術は存在していない。
本発明では、非接触かつ、室温・大気中の条件下で、トポロジカル絶縁体等における固体表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価を同時に行う方法及び装置を実現することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するために、励起光としてフェムト秒レーザーパルスを、λ/4波長板を回転させることで偏光状態を変化させトポロジカル絶縁体の固体試料である固体表面に照射し、固体表面に、逆ファラデー効果又は逆コットン・ムートン効果を誘起せしめ、該効果に基づいて生じるλ/4波長板回転角依存性を計測することにより、トポロジカル絶縁体等における固体表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価を行い、トポロジカル絶縁性を評価することを特徴とする固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法を提供する。
λ/4波長板回転角依存性は、コヒーレントスピン又は磁化Mとバンド構造を、フェムト秒レーザーパルスの励起光に対して時間遅延をつけた検出光である同じフェムト秒レーザー光源から分割したプローブパルスを、不透明な固体試料である固体に照射し、その反射光によってカー回転角を検出することにより評価することが好ましい。
カー回転角によって、検出フェムト秒レーザーパルス照射後、1ピコ秒以内の超高速時間に現れる逆ファラデー効果又は逆コットン・ムートン効果により過渡的に誘起された磁化Mに伴うスピンを検出することが好ましい。
λ/4波長板回転角依存性は、コヒーレントスピン又は磁化Mとバンド構造を、フェムト秒レーザーパルスの励起光に対して時間遅延をつけた検出光である同じフェムト秒レーザー光源から分割したプローブパルスを、透明な固体試料である固体に照射し、該照射の透過光によって透過型のファラデー回転角を検出することにより、評価することが好ましい。
逆ファラデー効果は、フェムト秒レーザーパルスを円偏光にして固体表面に照射することで誘起することが好ましい。
逆コットン・ムートン効果は、フェムト秒レーザーパルスを直線偏光にして固体表面に照射することで誘起することが好ましい。
本発明は上記課題を解決するために、励起光としてフェムト秒レーザーパルスを、λ/4波長板を回転させることで偏光状態を変化させてトポロジカル絶縁体における固体表面に照射し、固体表面に、逆ファラデー効果及び逆コットン・ムートン効果の両方又は一方を誘起せしめ、該効果に基づいて生じるλ/4波長板依存性を計測することにより、固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置であって、フェムト秒パルスレーザーからのビームを励起光と検出光の2つに分割する分割装置と、励起光の偏光状態を変化させるλ/4波長板と、検出光をp偏光させるp偏光板と、固体試料から反射された検出光をさらに反射するミラーと、ミラーからの反射光を縦偏光と横偏光に分波する偏光ビームスプリッターと、縦偏光と横偏光をそれぞれ検出する光検出器と、を備えていることを特徴とするトポロジカル絶縁性を評価する装置を提供する。
本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置によれば、次のような効果が生じる。
(1)固体におけるスピンの特性を、時間分解カー回転(Kerr回転)測定あるいは時間分解ファラデー回転(Faraday回転)測定により得ることで、トポロジカル絶縁性を評価する方法が可能となった。
(2)このトポロジカル絶縁性を評価する方法は、トポロジカル絶縁体をはじめ、光記録や電気メモリに使用される相変化記録膜材料や、あるいは半導体などのあらゆる固体材料に対して適用可能である。
(3)このトポロジカル絶縁性を評価する方法によれば、評価対象試料の膜厚を1nm〜10mmの幅広い領域で可能とし、かつ、室温・大気中で評価を可能とする装置を実現できる。
(a)は、本発明の実施例において、固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法に使用する装置の光学系を示す図であり、(b)は、上記実施例において、λ/4波長板を回転することにより励起光の偏光状態を回転角度毎に示す図である。 本発明の試験例における測定結果であり、カー回転(Kerr回転)信号の時間波形を示すグラフである。 本発明の試験例における測定結果であり、膜厚の異なる固体試料について、それぞれカー回転角(Kerr回転角)Δθ信号をλ/4波長板の回転角αに対してプロットしたグラフである。 本発明の試験例における測定結果であり、膜厚の異なる固体試料について、それぞれカー回転角(Kerr回転角)Δθ信号をλ/4波長板の回転角αに対してプロットしたグラフである。 本発明の試験例における測定結果であり、係数Lの値を膜厚に対してプロットしたグラフである。
本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置を実施するための形態を図面を参照して、以下に説明する。
まず、先行技術について一部繰り返しの説明が含まれるがさらに詳説した上で、本発明について説明する。
前記したとおり、磁性体が光に作用する効果として、磁場により、光の偏光面が回転するファラデー効果(Faraday効果)と、光の複屈折が生じるコットン・ムートン効果(Cotton-Mouton効果)が知られている。
これらの効果とは逆に、光が磁性体に作用する効果として、円偏光の光を照射して物質内に有効磁場を生じさせる逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)と、直線偏光の光を照射して物質内に有効磁場を生じさせる逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)が知られている。
例えば、フェムト秒レーザーを物質に照射した際には、そのレーザー光の偏光状態に応じて、物質に瞬時的に磁化Mを発生させることができる。ここで磁化Mは電子の磁気モーメントμの平均値を足し合わせたものであり、さらに磁気モーメントμは電子のスピンSで記述できることから、磁化Mの発生は、電子スピンのコヒーレントな集団が生じたのと同等である。この点について、以下さらに説明する。
具体的には、物質に照射するレーザー光が円偏光の場合は、非線形光学効果の一種である逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)により固体試料z軸方向に磁化Mが生じる(例えば、非特許文献4:A. V. Kimel, A. Kirilyuk, P. A. Usachev, R. V. Pisarev, A. M. Balbashov and Th. Rasing, Nature Vol. 435, pp. 655-657 (2005)の図1参照)。これらの逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)等に関する現象は、非特許文献4などにより周知技術である。
一方、照射するレーザー光が直線偏光の場合は、スピン−軌道相互作用(電子のスピンと、電子の軌道角運動量との相互作用)が特に大きい場合にのみ起こる非線形光学効果の一種である逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)により固体試料x−y軸方向に磁化Mが生じる。
従来は、このうち、主にレーザー光が円偏光の場合の逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)を用いて、固体試料に瞬時的に磁化Mを発生する試みがなされている(例えば、非特許文献4参照)。
しかし、直線偏光のレーザー光を用いて逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)により固体試料に瞬時的に磁化Mを発生する試みはほとんど実施されていない。また、逆ファラデー効果や逆コットン・ムートン効果を利用して、トポロジカル絶縁体等における固体表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価を同時に行うことはなされていないのが実情である。本発明では、この2つの非線形光学効果の中でも、特に逆コットン・ムートン効果を積極的に利用することで、当該課題を解決する。
非特許文献1によれば、BiSeなどのトポロジカル絶縁体においては、レーザー照射下で生じるスピン電流Jの励起光偏光依存性が、λ/4波長板の回転角αの関数として、次の式(1)で表されている。
J=Csin2α+Lsin4α+Lcos4α+D ……(1)
なお、この回転角αは、後の図3、4、5で示す横軸と同じである。
この式(1)のうち、sin2α成分の振幅Cは、円偏光により誘起される円形光ガルヴァニ効果(Circular photo galvanic効果)によるスピン電流であり、sin4α成分の振幅Lは、直線偏光により誘起される直線光ガルヴァニ効果(linear photo galvanic効果)によるスピン電流であると示唆されている。
しかし、cos4α成分の振幅L、及びDは、表面ではなく、バルクの寄与であり(要するに、固体試料の内部における、Lは直線光ガルヴァニ効果によるスピン電流であり、Dはλ/4波長板の回転角αには依存しない通常流れるスピン電流である)、今課題としている固体表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価には関係がない成分である。
すなわち、スピン電流を単に電流計等で計測する従来技術では、本来必要な固体表面に局在するスピン状態や表面バンド状態に加えて、不要な情報であるバルクの寄与が信号に現れるため、式(1)によるデータの解析が必須となっている。
さらに、非特許文献1等のスピン電流を単に電流計等で計測する従来技術では、例えばチタンなどの金属電極及び電流測定のための配線を必要とするため、非接触ではない測定方法になっていた。
これに対して、本発明で提案する方法、装置では、スピン電流を電流計等で計測する代わりに、そのスピン電流が現れる時間(通常は励起パルス照射後、数ピコ秒以降)以前の、1ピコ秒以内の超高速時間領域に着目し、その時間で現れる逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)又は逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)により過渡的に誘起された磁化Mに伴うスピンを、磁気光学効果を通じてプローブ光のカー回転で検出するものである。
つまり、円形光ガルヴァニ効果(Circular photo galvanic効果)や直線光ガルヴァニ効果(Linear photo galvanic効果)は、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)や逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)よりも時間的に遅れて観測されるスピン電流信号であり、起源は同じであるが、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)や逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)の方が先に起こる現象であると言える。
さらに非特許文献1との相違点を説明すると、非特許文献1では、円形光ガルヴァニ効果(Circular photo galvanic効果)や直線光ガルヴァニ効果(Linear photo galvanic効果)によるスピン電流を電流計で計測し、トポロジカル絶縁体の評価をするのに対して、本件発明では、ポンプ光を固体試料に照射し逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)又は逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)を生じさせ、それによって生じるλ/4波長板回転角α依存性を、プローブ光で非接触に計測することによりトポロジカル絶縁体の評価をするという相違がある。
なお、ガルヴァニ効果(photo galvanic効果)とは、光吸収により励起電子やイオンの数が変化するために電流値が影響を受け、放電空間に光が入射してくることによって、放電電流が変化する現象である。
この非特許文献1では、膜厚が100nmのバルク結晶BiSeが用いられており、このように膜厚が光の侵入長(波長が800nmの場合、侵入長は約15nmである)よりも十分大きいトポロジカル絶縁体の固体試料のスピン特性の接触型での評価は可能となっている。
一方、前記のとおり、走査トンネル顕微鏡(STM)や、角度分解型光電子分光法(ARPES)を用いて、固体試料のバンド構造の評価も可能となっている(非特許文献2、非特許文献3参照)。
しかし、走査トンネル顕微鏡(STM)や、角度分解型光電子分光法(ARPES)は、前記したとおり高真空・極低温の環境を必要とし、また、スピン電流測定は、電流を測定するための金属端子を固体試料の両端につける必要があり、非接触かつ、大気中・室温という簡便な条件下での評価方法は今までなかった。
(本発明)
本発明は、上記従来の技術の問題を解決しようとするものであり、その内容を、以下説明する。
本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置は、非接触のプローブ手段(検知手段)を備え、非接触のプローブ手段は、非線形光学効果の一種である逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)だけではなく、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)を用い、固体試料の表面バンド構造及びスピン特性にアクセスする技術である。
ここで、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)は、トポロジカル絶縁性を有さない全ての固体材料において起こりえる非線形光学効果であるが、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、トポロジカル絶縁性を有する固体材料で特に強く発現する現象である。言い換えると、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)は必ず観測される一般的なものであるが、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、トポロジカル絶縁体でない材料では観測できない。
即ち、本発明は、非線形光学効果の一種である、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)及び逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)の両方又はその一方を、フェムト秒レーザーパルスを用いてトポロジカル絶縁体における固体表面に誘起し、そのλ/4波長板の回転角α依存性を計測することにより、非接触かつ、室温・大気中の条件下で、トポロジカル絶縁体等における固体表面に局在するスピン状態の評価(すなわち、表面バンド状態の評価)を行う方法及び装置である。
具体的には、トポロジカル絶縁体の表面の電子状態は、ディラック・コーン(Dirac cone:直線的エネルギー分散関係があり、特定の波数においてバンド・ギャップが閉じているグラフェンなどにも見られるバンド状態)と呼ばれる特殊な表面バンド状態を有することが知られており、さらに、トポロジカル絶縁体の表面には、このディラック・コーンで特徴付けられる純スピン流と呼ばれるスピン電流が流れる。
非特許文献1では、この純スピン流と呼ばれるスピン電流を、レーザー照射の試料への入射角を変える(入射角が56度の入射)ことにより実施している。また非特許文献1では、垂直入射(入射角が90度の入射)では純スピン流と呼ばれるスピン電流は観測できない。
本発明は、このような入射角の調整を必要とせず、段落0034、0038等でも前記したように、このスピン電流が流れる前の段階で過渡的に誘起された磁化Mに伴うスピンを、磁気光学効果を通じてプローブ光のカー回転で検出することにより、このディラック・コーンの存在を評価する方法及び装置を提供する。
本発明では、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)は、励起光(この技術分野では「ポンプ光」ともいう)としてフェムト秒レーザーパルスを円偏光にして固体試料に照射することで誘起され、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、励起光としてフェムト秒レーザーパルスを直線偏光にして照射することで誘起される。
そして、上記逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)又は逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)においては、固体試料に磁化M(磁化Mは電子の磁気モーメントμの平均値を足し合わせたものであり、磁気モーメントμは電子のスピンSで記述できる。したがって、マクロな物理量としての磁化Mとは、ミクロな物理量であるスピンSに由来している。)が生じる。
このような電子スピンに由来した磁化Mは固体試料の表面のバンド構造に依存し、特に逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、ディラック・コーンを表面に有するトポロジカル絶縁性固体材料で特に強く発現する。この関係を用いれば、固体試料のバンド構造を、検出光(この技術分野では「プローブ光」ともいう)を照射して検出することができる。
その場合、フェムト秒レーザーパルス光源からのレーザービームを予めビームスプリッターで、例えば約90対10の強度比で2分割し、一方の10%の弱いレーザービームを検出光(プローブパルス)、また90%の強いフェムト秒レーザーパルスを励起光(ポンプパルス)とする。
そして、強い励起光の光路には、マイクロメートル以下の位置決め精度を有する電動ステージ上に配置したミラーを設置して、この電動ステージを移動させることにより、ポンプパルスに対して時間遅延τをつけたプローブパルス(検出パルス)を照射することができる。このようにして電動ステージなどを用いて光学的に時間遅延を生じさせる方法については、特許文献1などにより公知の技術である。
そして、不透明な固体試料については、前記検出光(プローブ光)の反射光によって反射型のカー回転(Kerr Rotation)を検出することにより評価し、透明な固体試料については、前記検出光(プローブ光)の透過光によって透過型のファラデー回転(Faraday Rotation)を検出することにより評価する。なお、後記図1では、反射型のカー回転(Kerr Rotation)を検出する場合について説明する。
ここで、カー回転(Kerr回転)は、カー効果(Kerr効果:磁化を有する物質に直線偏光を入射した際に、反射する光が楕円偏光となり、その主軸が入射光の偏光方向から回転する現象)における主軸の回転角である。
また、ファラデー回転(Faraday Rotation)は、ファラデー効果(磁場に平行な直線偏光を物質に透過させたときに透過光の偏光面が回転する現象)における偏光面の回転角である。
本発明に係る方法及び装置では、角度分解型光電子分光法(ARPES)や走査トンネル顕微鏡(STM)のように、高真空・極低温の環境を必要としない。
非線形光学効果の一種である逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)については、カー回転(Kerr回転)あるいはファラデー回転(Faraday回転)の信号のλ/4波長板回転角α依存性においては、sin2αの依存性を示す。
これは、図1bに示した励起光の偏光状態のλ/4波長板回転角度依存性において、円偏光の周期性を見れば、α=45度で左回り円偏光になり、135度で右回り円偏光になっていることから、ちょうどsin2αになっていることが分かる。
一方、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)については、カー回転(Kerr回転)あるいはファラデー回転(Faraday回転)の信号のλ/4波長板回転角α依存性においては、sin4αの依存性を示す。
これは、図1bにも示すように、直線偏光の周期性であるcos2αと円偏光の周期性であるsin2αの乗算の形(2sin2αcos2α=sin4α)をしており、逆コットン・ムートン効果は、直線偏光で誘起される逆ファラデー効果であるとも言える。このように逆コットン・ムートン効果とsin4αの依存性を関係付けるアイデアは公知ではなく、発明者の独自の考察に基づくものである。
これらのλ/4波長板回転角α依存性は、スピン電流が示す依存性(上記の式(1))に似ている現象であるが、本質的にプローブの原理が異なる。本発明で提案する方法、装置では、スピン電流を電流計等で計測する代わりに、そのスピン電流が現れる時間(通常は励起パルス照射後、数ピコ秒以降)以前の、1ピコ秒以内の超高速時間領域に着目し、その時間で現れる逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)又は逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)により過渡的に誘起された磁化Mに伴うスピンを、磁気光学効果を通じてプローブ光のカー回転で検出するものである。
つまり、円形光ガルヴァニ効果(Circular photo galvanic効果)や直線光ガルヴァニ効果(Linear photo galvanic効果)は、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)や逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)よりも時間的に遅れて観測されるスピン電流信号であり、起源は同じであるが、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)や逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)の方が先に起こる現象であると言える。
逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)は、円偏光のレーザーパルスを照射すれば、基本的に全ての固体において有効磁場が誘起される効果であり、トポロジカル絶縁体に限らず、GaAsなどの通常の半導体材料でも観測される一般的なものである。
しかし、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、sin4αの依存性を示すが、今まで、トポロジカル絶縁体には適用されておらず、sin4αの依存性の起源については未知であった。
ここで発明者は、図1bにも示すように、直線偏光の周期性であるcos2αと円偏光の周期性であるsin2αの乗算の形(sin2αcos2α=sin4α)をしていることに着目し、逆コットン・ムートン効果は、直線偏光で誘起される逆ファラデー効果に似た効果であると考えた。
これは、直線偏光がトポロジカル絶縁体などの光吸収が強く且つスピン−軌道相互作用も強い試料に入射した瞬間、直線偏光が光吸収の効果で楕円偏光に変わり、この楕円偏光のうちの円偏光成分がスピン−軌道相互作用を通じて逆ファラデー効果に似た形で磁化Mを誘起するのである。
本発明者等は、この逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)によるsin4αの依存性を指標にすれば、トポロジカル絶縁体に限らず、全ての固体試料について、スピン特性とバンド構造の同時評価が可能であることを初めて見いだした。
なお、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)の場合については、トポロジカル絶縁性を有さない全ての材料において観測される非線形光学効果である。従って、今課題としているトポロジカル絶縁体にのみ存在するディラック・コーンの存在を評価する方法としては、以下の段落0073でも述べるように、逆コットン・ムートン効果を主たる指標とし、同時に観測される逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)の寄与である式(2)にもある係数Cは、トポロジカル絶縁体の評価には用いない。
カー回転(Kerr回転)あるいはファラデー回転(Faraday回転)の信号のλ/4波長板回転角α依存性を測定し、式(1)の代わりに、カー回転信号θを、次の式(2)で最小二乗フィットすることにより、sin2αとsin4αの係数であるCとLを得る。
θ=Csin2α+Lsin4α …… (2)
なお、ここで、係数C及びLはそれぞれ、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)及び逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)によるカー回転を表す振幅である。
逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、スピン−軌道相互作用(電子のスピンと、電子の軌道角運動量との相互作用)の強い系において大きな値を示す。また、光カー回転信号で、係数Lは逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)による振幅であることから、スピン−軌道相互作用が大きい程、係数Lは大きい値を示すことになる。つまり、この係数Lの大きさを見れば、スピン−軌道相互作用の大きい典型的な材料であるトポロジカル絶縁体としての評価が可能となる。
本発明に係るトポロジカル絶縁性を評価する装置の全体構成を図1(a)に示す。トポロジカル絶縁性を評価する装置1は、フェムト秒パルスレーザー4からのビームを励起光2と検出光(プローブ)3の2つに分割する分割装置5と、励起光2の偏光状態を変化させるλ/4波長板6と、検出光3をp偏光させるp偏光板7と、固体試料8から反射された検出光11をさらに反射するミラー12と、ミラー12からの反射光13を縦偏光16と横偏光17に分波する偏光ビームスプリッター18と、縦偏光16と横偏光17をそれぞれ検出する縦偏光検出器21及び横偏光検出器22と、を備えている。
この光学系による検出動作は、次のとおりである。フェムト秒パルスレーザー4からのビームを、まず分割装置5で2つに分割し、一方を励起光2、もう一方を検出光3とする。この時、励起光2と検出光3の強度比は、9対1程度が望ましい。
励起光2の偏光状態を、λ/4波長板6を回転して回転角αを変化させる。この回転によって励起光2の偏光状態は、λ/4波長板の回転角αが0度から360度まで変化する際、図1(b)のように変わる。図1(b)のように励起光の偏光状態を変化させながら、固体試料8に向けて照射する。
このように励起光2を固体試料8に照射させながら、検出光2をp偏光板7でp偏光(入射面内で振動している光)として固体試料8に入射し、その固体試料8で反射された検出光11をミラー12でさらに反射させ、偏光ビームスプリッター18により、縦偏光16と横偏光17に分波し、それぞれ縦偏光検出器21及び横偏光検出器22で検出する。
これらの縦偏光検出器21及び横偏光検出器22それぞれからの光電流の差は、プローブ光の楕円偏光率(楕円偏光の楕円率)に比例しており、得られたカー回転(Kerr回転)信号のピーク強度あるいはファラデー回転(Faraday回転)信号のピーク強度のλ/4波長板回転角α依存性をプロットする。
ここで、ピーク強度とは、図2に示すカー回転(Kerr回転)信号の時間波形において、時間遅延ゼロ近傍における鋭い信号のピークの強度を指す。このプロットしたデータを、図3、図4に「フィット」として実線で示すように、式(2)で最小二乗フィットすることにより(段落0073参照)、フィットパラメータとして、sin2α成分とsin4α成分の係数であるCとLを得る。
なお、前記したとおり、検出光として、前述したフェムト秒レーザーパルス(励起パルス)に対して時間遅延τをつけたプローブパルス(検出パルス)を照射し、不透明な固体試料については、その反射光によってカー回転(Kerr Rotation)信号を検出することにより評価し、透明な固体試料については、その透過光によってファラデー回転(Faraday Rotation)信号を検出する。
前記のとおり、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)は、スピン−軌道相互作用(電子のスピンと、電子の軌道角運動量との相互作用)の強い系において大きな値を示す。つまり、式(2)において、sin4α成分の係数Lは、段落0063、0074等でも説明したように、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)によるものであることから、スピン−軌道相互作用の大きさを反映している。
本発明で提案する方法、装置では、スピン電流を電流計等で計測する代わりに、そのスピン電流が現れる時間(通常は励起パルス照射後、数ピコ秒以降)以前の、1ピコ秒以内の超高速時間領域に着目し、その時間で現れる逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)又は逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)により過渡的に誘起された磁化Mに伴うスピンを、磁気光学効果を通じてプローブ光のカー回転で検出するものである。
つまり、逆ファラデー効果(Inverse Faraday効果)と円形光ガルヴァニ効果(Circular photo galvanic効果)は同じ起源を有しており、逆コットン・ムートン効果(Inverse Cotton-Mouton効果)と直線光ガルヴァニ効果(Linear photo galvanic効果)は同じ起源を有していると言える。
従って、段落0048、0049等でも説明したように、ディラック・コーン(Dirac cone:直線的エネルギー分散関係があり、特定の波数においてバンド・ギャップが閉じているグラフェンなどにも見られるバンド状態)を有する場合には、係数Lの値が敏感に大きくなる。
逆に、バンド・ギャップが開いている場合には、ディラック・コーンが存在しないので、係数Lの値がゼロになる。このように、係数Lの値の変化を見れば、バンド・ギャップに関する情報を得ることが可能になる。
(試験例)
本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置についての具体的な試験例を説明する。この試験例では、代表的なトポロジカル絶縁体であるSbTeを測定すべき固体試料として用いた。
このSbTeはシリコン基板上にマグネトロン・スパッタリングにより成長させた結晶薄膜であり、膜厚は、t=2nm〜10nmのものである。図1(a)に示す本発明に係る装置を使用し、励起光として用いるフェムト秒パルスレーザーは、パルス幅約30fs、繰り返し周期80MHz、中心波長830nmのチタン・サファイアレーザーを用いた。
図2は、測定結果を示し、t=3nmのSbTe結晶薄膜で得られたカー回転(Kerr回転)信号の時間波形である。縦軸はカー回転角(Kerr回転角)Δθ、横軸は励起光と検出光の時間遅延τを示す。
σとσは、典型的な偏光状態に対応しており、σは回転角α=45度の場合の左回り円偏光の場合を示し、σは回転角α=135度の場合の右回り円偏光の場合を示す。時間遅延τがゼロのときに、σでは、正のKerr回転角Δθを示し、一方、σでは負のカー回転角(Kerr回転角)Δθを示す。
このカー回転角(Kerr回転角)Δθ信号をλ/4波長板回転角αに対してプロットしたものが、図3及び図4である。図3には、膜厚が、t=3nm(3QL)及びt=4nm(4QL)の場合を示し、図4には、膜厚が、t=5nm(5QL)及びt=6nm(6QL)の場合を示す。
ここで、●は実験値を示し、実線は、式(2)によるカーブフィッティング(https://ja.wikipedia.org/wiki/曲線あてはめ)の結果を示しており、また膜厚の単位は、SbTe結晶を2次元層状物質と見たときの1層分(5原子層)として、1QL(quintuple layer)≒ 1nmと換算できる。
図3において、3QL、4QLの時には、回転角αが360度の範囲で2回だけ上下に凸となる信号を示すが、5QL、6QLの時には、回転角αが360度の範囲で2回以上、上下に凸となる信号を示すことが分かる。
段落0073で説明したとおり、このカーブフィッティングで得られたフィッティングパラメータである係数Cと係数Lのうち、係数Lの値を膜厚に対してプロットしたものが図5である。以上のとおりの試験例の結果得られた図5のデータにより、トポロジカル絶縁性を評価は次のように行われる。
図5を見ると、t=3QL(3nm)までは係数Lの値がほぼゼロであるが、t=4QL(4nm)以上になると係数Lの値が次第に大きくなり、t=10QL(10nm)まで非常に大きい値を示していることが分かる。
段落0074及び0086でも述べたように係数Lの値はバンド・ギャップの大きさに直接関係している物理量であるから、このグラフより、係数Lの値がほぼゼロであるt=3QL(3nm)までがバンド・ギャップが開いたエネルギーバンド構造を有する通常の絶縁体(Normal insulator: NI)であり、係数Lの値がゼロではなくなるt=4QL(4nm)からがバンド・ギャップが閉じたエネルギーバンド構造を有するトポロジカル絶縁体(Topological insulator: TI)であることが分かる。
この結果は、従来技術である角度分解型光電子分光法(ARPES)や走査トンネル顕微鏡(STM)の結果(例えば、非特許文献2)とほぼ一致しており、本発明の有効性を示している。なお、ここでは説明しないが、固体試料BiTeについての試験例においても、同様の試験結果が得られている。
近年、トポロジカル絶縁体は、スピンデバイスの創成という観点で、非常に活発に基礎研究が進む一方、応用面での進展はあまり進んでいない。その原因に、応用する際に重要となるスピン電流はトポロジカル絶縁体の表面しか流れないこと、トポロジカル絶縁体になる物質系が主にカルコゲン半導体に限られていることなどが考えられる。
本発明により、非接触かつ、大気中・室温という簡易な条件下で、トポロジカル絶縁性の評価が可能になるため、新規のトポロジカル絶縁体の発見や、トポロジカル絶縁体の評価に有用である。
以上、本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置は、評価対象試料の膜厚を1nm〜10mmの幅広い領域で可能とし、かつ、室温・大気中で評価を可能する。
そして、本発明に係る固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置は、新規のトポロジカル絶縁体の発見や、トポロジカル絶縁体の評価に有用であり、トポロジカル絶縁体をはじめ、光記録や電気メモリに使用される相変化記録膜材料や、あるいは半導体などのあらゆる固体材料に対して適用可能である。
1 トポロジカル絶縁性を評価する装置
2 励起光(ポンプ光)
3 検出光(プローブ光)
4 フェムト秒パルスレーザー
5 分割装置
6 λ/4波長板
7 p偏光板
8 固体試料
11 固体試料で反射された検出光
12 ミラー
13 反射光
16 縦偏光
17 横偏光
18 偏光ビームスプリッター
21 縦偏光検出器
22 横偏光検出器

Claims (8)

  1. 励起光としてフェムト秒レーザーパルスを、λ/4波長板を回転させることで偏光状態を変化させトポロジカル絶縁体の固体試料である固体表面に照射し、固体表面に、逆ファラデー効果及び逆コットン・ムートン効果の両方又は一方を誘起せしめ、
    該効果に基づいて生じるλ/4波長板回転角依存性を計測することにより、トポロジカル絶縁体等における固体表面に局在するスピン状態の評価と表面バンド状態の評価を行い、トポロジカル絶縁性を評価することを特徴とする固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  2. λ/4波長板回転角依存性は、コヒーレントスピン又は磁化Mとバンド構造を、フェムト秒レーザーパルスに対して時間遅延をつけた検出光であるプローブパルスを、不透明な固体試料である固体に照射し、その反射光によって磁気光学効果を利用してカー回転角を検出することにより評価することを特徴とする請求項1に記載の固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  3. カー回転角によって、検出フェムト秒レーザーパルス照射後、1ピコ秒以内の超高速時間に現れる逆ファラデー効果又は逆コットン・ムートン効果により過渡的に誘起された磁化Mに伴うスピンを検出することを特徴とする請求項2に記載の固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  4. λ/4波長板回転角依存性は、コヒーレントスピン又は磁化Mとバンド構造を、フェムト秒レーザーパルスに対して時間遅延をつけた検出光であるプローブパルスを、透明な固体試料である固体に照射し、該照射の透過光によって透過型のファラデー回転角を検出することにより、評価することを特徴とする請求項1に記載の固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  5. 逆ファラデー効果は、フェムト秒レーザーパルスを円偏光にして固体表面に照射することで誘起することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  6. 逆コットン・ムートン効果は、フェムト秒レーザーパルスを直線偏光にして固体表面に照射することで誘起することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  7. カー回転角又はファラデー回転角のλ/4波長板回転角α依存性を計測することによって、Lは逆コットン・ムートン効果によるカー回転を表す振幅とした場合に、Lsin4α成分の有無を測定することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法。
  8. 励起光としてフェムト秒レーザーパルスを、λ/4波長板を回転させることで偏光状態を変化させてトポロジカル絶縁体における固体表面に照射し、固体表面に、逆ファラデー効果及び逆コットン・ムートン効果の両方又は一方を誘起せしめ、
    該効果に基づいて生じるλ/4波長板回転角依存性を計測することにより、固体のスピン特性からトポロジカル絶縁性を評価する方法及び装置であって、
    フェムト秒パルスレーザーからのビームを励起光と検出光の2つに分割する分割装置と、励起光の偏光状態を変化させるλ/4波長板と、検出光をp偏光させるp偏光板と、固体試料から反射された検出光をさらに反射するミラーと、ミラーからの反射光を縦偏光と横偏光に分波に分波する偏光ビームスプリッターと、縦偏光と横偏光をそれぞれ検出する光検出器と、を備えていることを特徴とするトポロジカル絶縁性を評価する装置。
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