JP7424559B2 - フェリ磁性体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は種々の磁気デバイスに用いることができるフェリ磁性体及びその製造方法に関する。
上向き電子スピン状態及び下向き電子スピン状態の内、一方の電子スピン状態で金属としての性質を示すのに対して、他方の電子スピン状態で絶縁体或いは半導体としての性質を示す物質(ハーフメタリック反強磁性体)が、ファン・ロイケンとド・グルートによって提案されている(例えば、非特許文献1)。
この様なハーフメタリック反強磁性体としては種々の物質が提案されており、例えば、2重ペロフスカイト構造を有するSrVCuO、LaMnVO、LaMnCoOについて電子状態計算が行われ、これらの金属間化合物の内、LaMnVOがハーフメタリック反強磁性を示す可能性があることが予測されている(非特許文献2)。
また、特許文献1(特開2009-231471号公報)においては、化学的に安定で、然も安定な磁気構造を有するハーフメタリック反強磁性体を提供することを目的として、種々の化合物に関して第1原理電子状態計算を行い、特定の化合物がハーフメタリック反強磁性を有することを確認している。その結果、ニッケルヒ素型、閃亜鉛鉱型、ウルツ鉱型、カルコパイライト型或いは岩塩型の結晶構造を有する化合物であって、2種類以上の磁性元素とカルコゲン或いはプニクトゲンとから構成されており、2種類以上の磁性元素には、有効d電子数が5より少ない磁性元素と有効d電子数が5より多い磁性元素とが含まれ、2種類以上の磁性元素の有効d電子数の総和は10或いは10に近い値である、ハーフメタリック反強磁性体が提案されている。
van Leuken and de Groot, Phys. Rev. Lett. 74,1171(1995). W.E.Pickett, Phys. Rev. B57, 10613(1998).
特開2009-231471号公報
しかしながら、上記非特許文献1、非特許文献2及び特許文献1に記載のハーフメタリック反強磁性体は理論的にその可能性が示されているに過ぎない。即ち、数多くの化合物が提案されているものの、具体的な製造方法は示されておらず、実際の物質としての磁性は確認されていないことに加え、当該磁性と化合物の組成及び結晶構造との関係等は全く明らかになっていない。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、ハーフメタリック反強磁性の可能性があるとされている化合物であって、実際にフェリ磁性を有する化合物及びその効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成すべく、Fe、Cr及びSから構成される化合物の組成、結晶構造及び磁性等について鋭意研究を重ねた結果、(FeCr)S化合物において、特定の組成範囲を有する場合に限って明瞭にフェリ磁性を有することを見出し、本発明に到達した。なお、本願特許請求の範囲及び明細書において、「フェリ磁性」は「反強磁性」を含む概念であり、「フェリ磁性体」は「反強磁性体」を含む。
即ち、本発明は、
Fe、Cr及びSから構成されており、
前記Fe、前記Cr及び前記Sの原子%が下記の式(1)及び式(2)を満たすこと、
を特徴とするフェリ磁性体、を提供する。
0.85<Fe/Cr<1.18 (1)
50<S<55 (2)
なお、Fe/Crは原子%におけるFeとCrの比である。
本発明のフェリ磁性体はFe、Cr及びSから構成されており、当該組み合わせは、上記特許文献1において、第1原理電子状態計算の結果に基づいて、化合物がハーフメタリック反強磁性を有する可能性が示唆されているものである。
ここで、本発明のフェリ磁性の最大の特徴は、各構成元素の量(原子%)であり、「0.85<Fe/Cr<1.18」及び「50<S<55」を共に満たすことで、化合物にフェリ磁性を付与することができる。なお、不可避不純物として混入する極微量の元素は許容される。
本発明のフェリ磁性体においては、六方晶系の結晶構造を有し、前記結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物のみからなること、が好ましい。六方晶系の結晶構造を有し、前記結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物のみからなることで、フェリ磁性をより明瞭に発現させることができる。
更に、本発明のフェリ磁性体においては、50kOe、5Kにおける質量磁化が10emu/g以下であること、が好ましい。50kOe、5Kにおけるより好ましい質量磁化は5emu/g以下であり、最も好ましい質量磁化は3emu/g以下である。
また、本発明は、
Fe、Cr及びSから構成されており、
前記Fe、前記Cr及び前記Sの原子%が下記の式(1)及び式(2)を満たす原料を用いること、
を特徴とするフェリ磁性体の製造方法、も提供する。
0.85<Fe/Cr<1.18 (1)
50<S<55 (2)
本発明のフェリ磁性体の製造方法を用いることで、本発明のフェリ磁性体を簡便に得ることができる。ここで、原料の組成と得られるフェリ磁性体の組成が略同一となり、本発明の効果を損なわない限りにおいて、原料をバルク体や成膜体とする方法は特に限定されず、従来公知の種々の焼結法や物理蒸着法等を用いることができる。
本発明のフェリ磁性体の製造方法においては、Fe粉末、Cr粉末及びS粉末からなる混合粉末からなる圧粉体を製造する第一工程と、前記圧粉体を焼結して焼結体を得る第二工程と、を有すること、が好ましい。Fe粉末、Cr粉末及びS粉末の添加量によって混合粉末の組成を厳密に調整できることに加え、焼結によって任意の大きさのフェリ磁性を得ることができる。また、得られた焼結体(フェリ磁性体)は、物理蒸着法のターゲット材として使用することもできる。
また、本発明のフェリ磁性体の製造方法においては、前記第二工程において、焼結直後の前記焼結体を100~10000℃/秒の冷却速度で冷却すること、が好ましい。焼結直後の焼結体を100~10000℃/秒の冷却速度で冷却することで、単相の(FeCr)S化合物を得ることができる。ここで、100~10000℃/秒の冷却速度は、例えば、焼結直後の焼結体を水冷することで実現することができる。
また、本発明のフェリ磁性体の製造方法においては、前記第二工程において、焼結温度を700~1000℃とすること、が好ましい。焼結温度を700~1000℃とすることで、六方晶系の結晶構造を有し、結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物を確実に得ることができる。
更に、本発明のフェリ磁性体の製造方法においては、前記第二工程において、前記圧粉体を石英管に封入した状態で焼結させること、が好ましい。圧粉体を石英管に封入した状態で焼結させることで、圧粉体の酸化等を抑制することができ、所望の組成を有するフェリ磁性体を効率的に製造することができる。
本発明のフェリ磁性体及びその製造方法によれば、ハーフメタリック反強磁性の可能性があるとされている化合物であって、実際にフェリ磁性を有する化合物及びその効率的な製造方法を提供することができる。
補償型フェリ磁性体の磁化の温度依存性を示す模式図である。 実施例1で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例2で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例3で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例4で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例5で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例6で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例7で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例8で得られた焼結体のXRDパターンである。 実施例1で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例2で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例3で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例4で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例5で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例6で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例7で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例8で得られた焼結体の磁化曲線である。 実施例2で得られた焼結体の熱磁曲線である。 実施例3で得られた焼結体の熱磁曲線である。 実施例5で得られた焼結体の熱磁曲線である。 実施例8で得られた焼結体の熱磁曲線である。 比較例1で得られた焼結体のXRDパターンである。 比較例2で得られた焼結体のXRDパターンである。 比較例3で得られた焼結体のXRDパターンである。 比較例4で得られた焼結体のXRDパターンである。 比較例1で得られた焼結体の磁化曲線である。 比較例2で得られた焼結体の磁化曲線である。 比較例3で得られた焼結体の磁化曲線である。 比較例4で得られた焼結体の磁化曲線である。 比較例1で得られた焼結体の熱磁曲線である。 比較例2で得られた焼結体の熱磁曲線である。 比較例3で得られた焼結体の熱磁曲線である。 比較例4で得られた焼結体の熱磁曲線である。 実施例及び比較例で得られた(FeCr)S化合物の組成と質量磁化の関係を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明のフェリ磁性体及びその製造方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(1)フェリ磁性体
本発明のフェリ磁性体は、Fe、Cr及びSから構成されており、その組成範囲が厳格に規定されている。以下、本発明のフェリ磁性体について詳細に説明する。
本発明のフェリ磁性体は、2種類の磁性元素(Fe及びCr)とカルコゲン(S)から構成されており、組成式(FeCr)Sに関しては、上記特許文献1において、第1原理電子状態計算によってハーフメタリック反強磁性を有することが示唆されている。具体程には、反強磁性状態での状態密度曲線を表わした結果において、状態密度曲線からハーフメタリックが発現していることが確認され、上向きスピン全電子状態密度及び下向きスピン全電子状態密度をそれぞれフェルミエネルギーまで積分した結果、両積分値が等しく、全体として磁化が0になっており、反強磁性であることが確認されている。
これに対し、本発明者がFe、Cr及びSの組成と(FeCr)S化合物の磁性との関係を詳細に調査したところ、原子%で、「0.85<Fe/Cr<1.18」及び「50<S<55」を共に満たす(FeCr)S化合物はフェリ磁性を示すが、それ以外の(FeCr)S化合物は明瞭なフェリ磁性を示さないことが明らかとなった。即ち、第1原理電子状態計算によってハーフメタリック反強磁性の発現が予測されている化合物は必ずしも当該物性を有しているとは言えない。
ここで、各構成元素の割合は、Fe量:23~25原子%、Cr量:23~25原子%、S量:50~55原子%とすることがより好ましい。各構成元素をこれらの範囲とすることで、より確実にフェリ磁性を有する(FeCr)S化合物を得ることができる。(FeCr)S化合物の組成を測定する方法は特に限定されないが、ICP発光分光分析を用いることが好ましい。
また、本発明のフェリ磁性体は、六方晶系の結晶構造を有し、当該結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物のみからなることが好ましい。六方晶系の結晶構造を有し、結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物のみからなることで、フェリ磁性をより明瞭に発現させることができる。
また、結晶構造のa軸の格子間隔は0.343~0.345nm、c軸の格子間隔は0.573~0.575nmであること、が好ましい。(FeCr)S化合物の結晶構造や格子間隔を評価する方法は特に限定されず、例えば、一般的なX線回折法を用いることができる。
本発明のフェリ磁性体においては、50kOe、5Kにおける質量磁化が10emu/g以下であることが好ましい。50kOe、5Kにおけるより好ましい質量磁化は5emu/g以下であり、最も好ましい質量磁化は3emu/g以下である。当該質量磁化の値が小さくなる程、フェリ磁性(補償型フェリ磁性)の特性が顕著になる。
また、本発明のフェリ磁性体は、補償型フェリ磁性体の特徴を有していることが好ましい。強い磁場において磁化の温度依存性を評価し、図1に示すような自発磁気の温度変化を確認することで、(FeCr)S化合物が補償型フェリ磁性体であることを確認することができる。
本発明のフェリ磁性体の形状及びサイズは、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、フェリ磁性体として従来公知の種々の形状及びサイズとすることができる。
(2)フェリ磁性体の製造方法
本発明のフェリ磁性体の製造方法は、原料の組成を厳格に規定していることを最大の特徴としている。以下、本発明のフェリ磁性体の製造方法の一態様について詳細に説明する。
1.原料
本発明のフェリ磁性体の製造方法に用いる原料はFe、Cr及びSから構成されており、各元素が原子%で「0.85<Fe/Cr<1.18」及び「50<S<55」を共に満たす必要がある。
原料の形状及びサイズは特に限定されないが、例えば、Fe粉末、Cr粉末及びS粉末を混合することで、各元素の割合を容易に調整することができる。ここで、不純物の混入を抑制するために、各粉末は可能な限り高純度のものを使用することが好ましく、例えば、99.9質量%以上の純度を有する粉末を用いることが好ましい。
また、原料粉末のサイズは10~300μmとすることが好ましい。原料粉末のサイズを10μm以上とすることで、(FeCr)S化合物への不純物の混入を抑制することができる。一方で、原料粉末のサイズを300μm以下とすることで、圧粉体における各元素の分布を均一化することができると共に、焼結による反応及び緻密化を容易にすることができる。
2.製造工程
本発明のフェリ磁性体の製造方法は、Fe粉末、Cr粉末及びS粉末からなる混合粉末からなる圧粉体を製造する第一工程と、圧粉体を焼結して焼結体を得る第二工程と、を有することが好ましい。
(1)第一工程(圧粉体の製造)
第一工程は、第二工程で焼結するための圧粉体を得るための工程である。組成が原子%で「0.85<Fe/Cr<1.18」及び「50<S<55」を共に満たすように、Fe粉末、Cr粉末及びS粉末を正確に秤量した後、各粉末が均一に分散するまで混合する。混合の方法は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の混合方法を用いることができる。
次に、得られた混合粉末を室温で加圧して緻密な圧粉体とすることで、第二工程の焼結で緻密な(FeCr)S化合物を得ることができる。加圧の方法は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の加圧方法を用いることができ、例えば、一軸プレスを用いることができる。
(2)第二工程(圧粉体の焼結)
第二工程は、第一工程で得られた圧粉体を焼結し、原料粉末の反応及び緻密化によって(FeCr)S化合物を得るための工程である。
圧粉体は、石英管に封入した状態で焼結させることが好ましい。圧粉体を石英管に封入した状態で焼結させることで、圧粉体の酸化等を抑制することができ、所望の組成を有する反強磁性体を効率的に製造することができる。石英管への封入は、例えば、減圧したアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
第二工程における焼結温度は700~1000℃とすることが好ましい。焼結温度を700~1000℃とすることで、六方晶系の結晶構造を有し、結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物を確実に得ることができる。ここで、十分に組成均質な化合物を得るために(拡散が24時間以内で十分に起こるために)は、950~1000℃とすることがより好ましく、より短時間で均質体を得るためには1000℃とすることが最も好ましい。
また、焼結直後の焼結体は100~10000℃/秒の冷却速度で冷却することが好ましい。焼結直後の焼結体を100~10000℃/秒の冷却速度で冷却することで、単相の(FeCr)S化合物を得ることができる。また、化合物相の規則度を保つためには、冷却速度は100~1000℃/秒とすることがより好ましい。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
≪実施例≫
Fe粉末(純度:99.9質量%以上,粒径:53μm未満)、Cr粉末(純度:99.9質量%以上,粒径:180~300μm)及びS粉末(純度:99.99質量%以上,粒径:75μm未満)を原料粉末とし、これらを表1の実施例1~実施例8の各割合となるように秤量及び混合した。
Figure 0007424559000001
得られた各混合粉末を約300MPaで一軸加圧し、圧粉体を作製した。次に、0.1MPaの減圧したアルゴン雰囲気下で圧粉体を石英管に封入した後、表2に示す条件で焼結して焼結体を得た。
Figure 0007424559000002
代表例として、実施例2で得られた焼結体の組成をサーモフィッシャーサイエンティフィック社製のIRIS Advantage DUO instrumentを用いてICP発光分光分析で測定したところ、Fe:24.3原子%、Cr:23.1原子%、S:52.5原子%であった。原料粉末の元素割合はFe:24.1原子%、Cr:23.3原子%、S:52.6原子%であることから、原料粉末と焼結体の組成は同一と見做すことができる。
焼結体の構成相を同定するために、リガク社製のRint-UltimaIIIを用いてXRD測定を行った(Cu-Kα線を使用)。実施例1~実施例8で得られた焼結体のXRDパターンを図2~図9にそれぞれ示す。
図2~図9のXRDパターンは全て原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物に起因するものである。当該結果より、実施例で得られた焼結体は全て六方晶系の結晶構造を有し、結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物のみからなっていることが確認できる。
次に得られた焼結体の磁気特性を調査した。具体的には、日本カンタムデザイン社製のMPMSを用いて、5Kにおける磁化曲線を測定した。実施例1~実施例8で得られた焼結体の磁化曲線を図10~図17にそれぞれ示す。また、50kOeにおける質量磁化を表3に示す。実施例で得られた焼結体の質量磁化は全て10emu/g以下となっていることが分かる。
また、日本カンタムデザイン社製のPPMS(VSM-OVENオプション)を用いて、実施例で得られた焼結体の熱磁曲線を測定した。磁場は5kOe又は500Oeとし、温度範囲は300~600Kとした。実施例2、実施例3、実施例5及び実施例8で得られた焼結体の熱磁曲線を図18、図19、図20及び図21にそれぞれ示す。図18~図21の熱磁曲線は、図1に示す補償型フェリ磁性体の磁化の温度依存性を示している。
≪比較例≫
原料粉末の元素割合を表1の比較例1~比較例4とし、表2の比較例1~比較例4の焼結条件を用いたこと以外は実施例と同様にして、焼結体を得た。
実施例と同様にして測定した比較例1~比較例4で得られた焼結体のXRDパターンを図22~図25にそれぞれ示す。比較例1で得られた焼結体のXRDパターンにおいては、実施例で得られた焼結体のXRDパターンに加えてFeCrに起因する回折パターンが存在する。また、比較例4で得られた焼結体のXRDパターンにおいては、同定することが困難であるが、実施例で得られた焼結体のXRDパターン以外の回折パターンが存在する。これらの結果は、比較例1及び比較例2で得られた焼結体は、単相ではないことを意味している。
実施例と同様にして測定した比較例1~比較例4で得られた焼結体の磁化曲線を図26~図29にそれぞれ示す。また、50kOeにおける質量磁化を表3に示す。比較例で得られた焼結体の質量磁化は全て10emu/gよりも大きくなっていることが分かる。
実施例と同様にして測定した比較例1~比較例4で得られた焼結体の熱磁曲線を図30~図33にそれぞれ示す。比較例で得られた焼結体の熱磁曲線は実施例で得られた焼結体の熱磁曲線とは全く異なり、フェリ磁性の特徴を有していない。
実施例及び比較例で得られた(FeCr)S化合物の組成と質量磁化の関係を図34に示す。図中の丸印の中に記載している数値が表3に示す質量磁化の値である。(FeCr)S化合物において、質量磁化の値は組成に極めて敏感であり、当該値を10emu/g以下とするためには、原子%で「0.85<Fe/Cr<1.18」及び「50<S<55」を共に満たすことが必要である。

Claims (8)

  1. Fe、Cr及びSから構成されており、
    前記Fe、前記Cr及び前記Sの原子%が下記の式(1)及び式(2)を満たすこと、
    を特徴とするフェリ磁性体。
    0.85<Fe/Cr<1.18 (1)
    50<S<55 (2)
  2. 六方晶系の結晶構造を有し、前記結晶構造における原子配列が空間群の表記でP63mcとなる(FeCr)S化合物のみからなること、
    を特徴とする請求項1に記載のフェリ磁性体。
  3. 50kOe、5Kにおける質量磁化が10emu/g以下であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載のフェリ磁性体。
  4. Fe、Cr及びSから構成されており、
    前記Fe、前記Cr及び前記Sの原子%が下記の式(1)及び式(2)を満たす原料を用いること、
    を特徴とするフェリ磁性体の製造方法。
    0.85<Fe/Cr<1.18 (1)
    50<S<55 (2)
  5. Fe粉末、Cr粉末及びS粉末からなる混合粉末からなる圧粉体を製造する第一工程と、
    前記圧粉体を焼結して焼結体を得る第二工程と、を有すること、
    を特徴とする請求項4に記載のフェリ磁性体の製造方法。
  6. 前記第二工程において、焼結直後の前記焼結体を100~10000℃/秒の冷却速度で冷却すること、
    を特徴とする請求項5に記載のフェリ磁性体の製造方法。
  7. 前記第二工程において、焼結温度を700~1000℃とすること、
    を特徴とする請求項5又は6に記載のフェリ磁性体の製造方法。
  8. 前記第二工程において、前記圧粉体を石英管に封入した状態で焼結させること、
    を特徴とする請求項5~7のうちのいずれかに記載のフェリ磁性体の製造方法。
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