JP2004334094A - 撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内視鏡等に適用される撮像装置において、簡易な構成で不要光を防止して良好な画質を得ることができ、さらには部材点数の削減及び組立コストの低減を図ること。
【解決手段】光学像を形成する結像手段11と、該結像手段で形成された光学像を電気信号へ変換する固体撮像素子4とを備えた撮像装置であって、前記固体撮像素子で前記光学像を得るのに不要な光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材B1が配置されている。
【選択図】 図1
【解決手段】光学像を形成する結像手段11と、該結像手段で形成された光学像を電気信号へ変換する固体撮像素子4とを備えた撮像装置であって、前記固体撮像素子で前記光学像を得るのに不要な光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材B1が配置されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体撮像素子を用いた内視鏡装置等に適用される撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型のCCD(固体撮像素子)と結像光学系とを一つのユニットとした撮像装置が、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ及び電子内視鏡等の分野において活用されている。
ここで、電子内視鏡の分野に特に着目すると、新たな医学的効果を目論み、いろいろな改良が日夜行われている。例えば、以下のような新しい内視鏡が挙げられる。
【0003】
(1)内視鏡挿入部を極細くすることで、検査時における患者の苦痛を低減せしめる極細型の内視鏡。
(2)拡大倍率をズーム式にすることが可能であり、病変部を近接観察してその微細構造を観察することで、微小病変の浸潤の度合いや切除範囲を診断せしめる拡大内視鏡(例えば、特許文献1及び2参照)。
(3)オートクレーブ(高圧水蒸気滅菌法)による滅菌プロセスに耐え得る構造とすることで、滅菌にかかるコストを低減せしめるオートクレーブ内視鏡(例えば、特許文献3参照)。
(4)特殊な波長の光を病変に当てて、その光に反応した微弱な蛍光を検出することで、病変組織の診断能を向上せしめる蛍光内視鏡(例えば、特許文献4参照)。
(5)カプセル状の形態の撮像装置を飲み込み、画像を電波で送信することで、体内の画像を外部にて診断せしめるカプセル型の内視鏡(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】
特公昭61−44283号公報
【特許文献2】
特開平4−218012号公報
【特許文献3】
特開2001−112708号公報
【特許文献4】
特開平10−151104号公報
【特許文献5】
特開2001−112710号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の撮像装置には、以下の課題が残されている。すなわち、固体撮像素子において光学像を得るのに不要な光、すなわち本来の結像光以外の不要光が入射すると、正規の結像光以外の不要な像を形成するゴースト現象や、主に光の乱反射によって固体撮像素子全域に不要な光を入射させるフレア現象等が発生し、画像の品質を著しく劣化せしめる不都合があった。
従来の内視鏡撮像装置では、この不要光を防止する方法として、主に薄い金属製のフレア絞りを、結像光を邪魔せずに不要光のみをカットするような位置に配置する手法が取られている。しかし、このフレア対策では、効果が不十分な場合があった。例えば、以下のような場合がある。
【0006】
(ア)上記フレア絞りは、もともと反射率が高い材質であるが、表面に黒色のメッキを施して反射率を低くしている。このため組み立て時に表面に付着したゴミやバリなどを除去するための拭き工程中に、黒色のメッキが剥がれ、フレア絞りが光ってしまい、余計な不要光を発生させてしまう場合がある。
(イ)従来とは異なる構造を採用する際に、より強度が強い光が上記黒色メッキに当たると、黒色メッキの効果が低く、反射光が不要光となってしまう場合がある。
(ウ)最大光線高が高い光学系においては、小径とするためにフレア絞りを配置することができない場合がある。このため光線高が高い部分のレンズ枠に視野外光があたり、その正反射によって不要光が生じてしまう場合がある。
【0007】
一方、撮像装置、特に上記(1)〜(5)で述べたような次世代の内視鏡撮像装置においては、以下のような不要光の発生による画質の劣化という共通の課題が存在する。
(1)極細型の内視鏡においては、生体組織等を回収するための鉗子が通るためのチャンネル口と、対物レンズ及び照明レンズの間隙が狭くコンパクトになってくる。これに伴い、鉗子に照明レンズの光があたりやすくなり、かつあたった光が反射して対物レンズ中に入り易くなる。この場合、主に、上記(ア)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
(2)拡大内視鏡においては、レンズが移動する構造となっており、光線高が大きく移動し、すべての光線高に対応したフレア絞りを設定することが困難となる。この場合、主に、上記(ウ)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
【0008】
(3)オートクレーブ内視鏡においては、高圧蒸気内においても撮像装置に侵入がないように、レンズと枠部材とがハンダ付けされて気密構造をとる。一応、このとき、フレア防止のための黒色メッキを施したフレア絞りが配置されるが、枠が黒色メッキできなかったり、レンズ外周の蒸着等の影響により、フレア絞りにあたる光の強度は従来よりも強くなる。この場合、主に、上記(イ)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
(4)蛍光内視鏡においては、微弱な光を検出するための撮像装置であるため、不要光(特にフレア)が存在すると受光面全体に不要光が広がってしまう、いわゆるバックグラウンドフレアとなってしまい、病変部の微弱光とバックグラウンドフレアとの切り分けができなくなり、十分な検出ができない。したがって、通常の白色観察用内視鏡以上に、不要光の発生を抑える必要がある。この場合、主に、上記(ア)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
【0009】
(5)カプセル型の内視鏡においては、使い捨てで使用されるので、生産数量が多くなる。このため、フレア対策のためのフレア絞りを用いることに伴う面倒な組立作業を含まないような簡略な枠構造とする必要がある。
このようなカプセル内視鏡の従来例について、図15を参照して説明する。従来のカプセル内視鏡では、例えば、最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL1及び第2レンズL2を備え、第2レンズL2側に、CCDカバーガラス3及び受光部4aを有するCCD4が配設されている。
第1及び第2レンズL1、L2は、レンズ枠F1で保持されていると共に、CCD4が、CCD枠6で保持されている。また、第1レンズL1と第2レンズL2との間には、第1間隔管7、フレア絞り8及び第2間隔管9がレンズ枠F1によって位置決め配置されている。また、レンズ枠F1と第1レンズL1とに挟み込まれて、明るさ絞り10が位置決め配置されている。
この従来例からわかるように、3枚もの絞りを配置するような枠構造にする必要があり、組立上も時間がかかり、必然的に組立コストが高いものであった。
【0010】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、簡易な構成で不要光を防止して良好な画質を得ることができ、さらには部材点数の削減及び組立コストの低減を図ることができる撮像装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、撮像装置に関する不要光の除去技術について研究を行ってきた結果、半導体製造技術の中で歓迎されざる現象として知られる、いわゆるブラックシリコン現象に着目した。すなわち、近年、注目技術として、半導体プロセスの技術を用いて、微細なアクチュエータ素子等を実現する、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が挙げられるが、本発明者らは、このMEMS技術においてシリコンで作られている半導体ウェハにエッチング処理を行うことで、従来の機械加工以上の微細加工を行う点に着目した。このような半導体ウェハにエッチング処理を行う際の課題として、例えば特開平10−233387号公報に、ブラックシリコンの発生が述べられている。ここで、ブラックシリコンとは、シリコン基板をエッチングする工程において、意図しない異物が堆積したときに、その異物がエッチング時のマスクとなり、本来必要とされないエッチングがなされてしまった状態をいい、絶縁不良等の不具合を生じせしめるものであり、半導体製作上は歓迎されないものであった。しかしながら、本発明者らは、このブラックシリコンの有する構造が光学的に低反射特性を有する点に着目した。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
【0012】
本発明の撮像装置は、光学像を形成する結像手段と、該結像手段で形成された光学像を電気信号へ変換する固体撮像素子とを備えた撮像装置であって、前記固体撮像素子で前記光学像を得るのに不要な光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材が配置されていることを特徴とする。
この撮像装置では、固体撮像素子で光学像を得るのに不要な光(以下、不要光と称す)の光路上に、表面に無数の柱状構造体を有する光吸収部材が配置されているので、不要光が無数の柱状構造体間で反射を繰り返して不要光を逃がしにくい構造を光吸収部材が有し、不要光の正反射が抑制され、不要光によるゴースト現象やフレア現象の発生を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の撮像装置は、前記無数の柱状構造体が、無数の異物を付着させたシリコン材料の表面をエッチングして形成した無数の剣山状構造体であることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、無数の異物を付着させたシリコン基板の表面をエッチングして形成した微細な無数の剣山状構造体、いわゆるブラックシリコンを用いるので、正反射率を1%以下という超低反射率に抑えることができ、従来の銅を用いたフレア絞りよりも低い反射率で、フレア発生を大幅に抑制することができる。また、ブラックシリコンを用いる場合、遮光布を用いた場合に比べて、固形のために組立がしやすく剣山状構造体の高さも低く小型化が容易であると共に高い寸法精度を有し、さらにゴミ等が生じにくいというメリットがある。
【0014】
また、本発明の撮像装置は、上記各本発明の撮像装置において、前記光吸収部材が、前記結像手段及び前記固体撮像素子を保持する保持部材であることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、光吸収部材が保持部材でもあるので、保持機構に不要光の光吸収作用を兼用させることができ、部材点数の削減、組立の容易化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の撮像装置は、上記各本発明の撮像装置において、前記光吸収部材が、前記結像手段の中で最も光線高の高い位置に配置されていることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、光吸収部材が結像手段の中で最も光線高の高い位置に配置されているので、小型化が可能である。
【0016】
また、本発明の撮像装置は、上記各本発明の撮像装置において、前記光吸収部材が、最も物体面側に位置するレンズに隣接して配置されていることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、光吸収部材が最も物体面側に位置するレンズに隣接して配置されているので、明るさ絞りを兼用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る撮像装置の第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態の撮像装置は、主に極細型の内視鏡や蛍光内視鏡に適用されるものであって、図1に示すように、生体内表面等の物体像(光学像)を光学系を介して形成する結像手段11と、該結像手段11で形成された物体像を受光部4aで電気信号へ変換するCCD(固体撮像素子)4とを備えている。
前記結像手段11は、内視鏡の先端側、すなわち最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL11、第2レンズL12、第3レンズL13、第4レンズL14、第5レンズL15及び芯だしカバーガラスG1を光学系として備えている。
【0019】
第1レンズL11、第2レンズL12及び第3レンズL13は、それぞれ第1レンズ枠F11で直接保持されていると共に、第4レンズL14及び第5レンズL15は、第2レンズ枠F12を介して第1レンズ枠F11に保持されている。
また、第3レンズL13と第4レンズL14との間には、間隔管12が第2レンズ枠F12で保持されて配置されている。
【0020】
また、芯だしカバーガラスG1は、略円環状に形成されたブラックシリコン部材B1を介してCCD枠F13に保持されている。なお、前記第2レンズ枠F12は、第1レンズ枠F11内側に保持され、該第1レンズ枠F11は、CCD枠F13内側に保持されている。
ブラックシリコン部材B1は、CCD4の受光部4aで物体像を得るのに不要な光の光路上に配され、フレア絞りとしても機能している。
【0021】
上記ブラックシリコン部材B1の作製方法について、図2から図10を参照して以下に説明する。
【0022】
ブラックシリコン部材B1は、図2に示すようなエッチング装置によってSiウェハSをドライエッチングすることにより作製される。すなわち、エッチング装置内のサセプタ14上にSiウェハSを載置し、この状態で、反応炉13内に導入した反応性ガスGにRF電源RFによって高周波印加してプラズマPを生成する。プラズマP中、移動度の高い電子はSiウェハSに入射し、陰極は負に帯電する。これにより自己バイアス電圧Vcを生する。
【0023】
一方、プラズマPは、正イオンが過剰となり正に帯電(電圧Vp)し、ラジカルとなる。この電位差(Vp−Vc)により正イオンが加速され、図3に示すように、SiウェハS表面に垂直入射し、ダメージ層Dを形成してエッチングが進行する。このダメージ層Dは、結合が弱いため、ラジカルと結合し、SiBr4やSiCl4等の揮発生成物を生じながら、エッチングされる。エッチング中には、側壁にポリマーPOというエッチング抑制層が形成されるので、垂直方向にのみエッチングが進む。なお、図中の符号Mはマスクである。この工程を数回繰り返すことにより、図4及び図5に示すように、SiウェハS上に複数のブラックシリコン化処理前のブラックシリコン部材B1が配列作製される。
【0024】
SiウェハS上のブラックシリコン部材B1は、図5及び図6に示すように、CCD4の受光部4a形状に合わせるために四角形状の開口部15aを有していて両側に設けられたサポートアーム15bを介して格子状のフレーム15cに支持されている。なお、実際にブラックシリコン部材B1を単体として使用する場合、サポートアーム15bを折って切り離す形態とされている。
ブラックシリコン部材B1のエッジ部によって、フレアカットを行うが、この部分は極力薄い方がフレア絞りとしては好ましい。この観点からエッジ部15dは、およそ厚さ0.03〜0.01mmの極薄形状としている。なお、この厚みは、上記極薄に限るものではなく、最大SiウェハSの厚み分として1mm程度まで厚くすることも可能である。しかも、SiウェハSの厚みを超えた設定の際には、接合処理を行うことでさらに厚く形成することも可能である。
【0025】
上記サポートアーム15bの厚みは、切り離ししやすくするために0.03〜0.01mm程度に設定しており、エッジ部15dと同等の厚みの設定である。このため、切り離したときにエッジ部15dも壊れてしまうことがないように、図6に示すように、およそ0.3mmから1mm程度の厚みの支持層15eを両者間に設けている。サポートアーム15bは、図7に示すように、フレーム15c側のサポートアーム15bの幅をLs、支持層15e側のサポートアーム15bの幅をLmとした場合に、
Lm≦Ls
の関係となるように形成することで、支持層15eの切り離しを行い易くしている。
【0026】
また、支持層15eは、サポートアーム15bから切り離した際に生ずるバリがブラックシリコン部材B1の外周部15fよりもはみ出ることがないように、外周に形成された凹部15gでサポートアーム15bと連結するように構成されている。
このような構成をエッチング処理によって作製した後、図8の(a)に示すように、さらに異物Xを形成する条件を決めて表面をブラックシリコン化するためのエッチングを行い、図8の(b)に示すように、無数の柱状構造体Tを表面に有する光吸収部材とする。これによって、ブラックシリコン部材B1表面の反射率を1%以下の低反射率状態とする。この際、異物XはポリマーPOと想像され、CHF3,CCLF3,(CF4+H2)ガスなどのポリマーを形成しやすいガスを使う方がよい。
【0027】
ブラックシリコン部材B1表面の正反射率は、図9に示すように、可視での波長域で0.1%以下の反射率であり、不要光を有効に防止することができる。一般に、黒色処理を施した金属によるフレア絞りでは、反射率が5%程度であるので、それと比較してブラックシリコン部材B1は、格段の低反射率を有している。
【0028】
物体像の撮像に必要な視野範囲は、CCD4の受光部4aサイズによって制限されているが、実際には視野範囲外の光も結像手段11の光学系内に入射している。例えば、上述したように、生体内の組織を回収する際の生検鉗子を使用する際には、鉗子が金属によって作られている関係上、照明光を反射しやすく、その光が視野範囲外に強い輝点を生じることがある。従来は、このような視野範囲外の光が、受光部4aに入射しないように、芯だしカバーガラスG1の直前にフレア絞りを配置するが、本実施形態では、そのフレア絞りをブラックシリコン部材B1によって形成している。
【0029】
従来、図10の(a)に示すように、銅によるフレア絞りFIDは、マスク製作の関係上、その縁がだれる(R形状となる)ため、黒色メッキがはがれやすく、反射率が高くなり、マスクの縁で光線が反射してCCDの受光部に不要光NLが入射するという不都合があった。
一方、本実施形態では、図10の(b)に示すように、フレア絞りとしてブラックシリコン部材B1を利用しているため、反射率が非常に低く、ブラックシリコン部材B1に入射した光を逃がさないため、縁での反射によって生じる受光部4aへの不要光NLの入射を防ぐことができる。
また、本実施形態では、図10の(c)に示すように、受光部4aの表面で反射した光がブラックシリコン部材B1の裏面にあたっても、破線で示す不要光NLが反射して発生することがなく、バックグラウンドフレアの発生を防ぐことができる。
【0030】
このように本実施形態では、CCD4で物体像を得るのに不要な不要光NLの光路上に、表面に無数の柱状構造体Tを表面に有するブラックシリコン部材B1を備えているので、ブラックシリコン部材B1に入射された不要光NLが無数の柱状構造体T間で反射を繰り返し、不要光NLの正反射が抑制され、不要光によるゴースト現象やフレア現象の発生を防ぐことができる。
【0031】
特に、無数の異物Xを付着させたシリコン材料の表面をエッチングして形成した微細な無数の剣山状構造体、いわゆるブラックシリコンを用いるので、正反射率を1%以下という超低反射率に抑えることができ、従来の銅を用いたフレア絞りよりも低い反射率で、フレア発生を大幅に抑制することができる。
例えば、上記第1実施形態では、フレアに最も影響のある個所として芯だしカバーガラスG1の直前にブラックシリコン部材B1を配置したが、光学系構造によっては、レンズ枠の部材をブラックシリコン部材で形成しても構わない。
【0032】
次に、本発明に係る撮像装置の第2実施形態について、図11を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
本実施形態の撮像装置は、主に拡大内視鏡に適用されるものであって、図11に示すように、結像手段21として、最も物体面側に位置するものから順に、第1レンズL21、第2レンズL22、第3レンズL23及び第4レンズL24から構成される第1群光学系22と、第5レンズである第2変倍群23と、第6レンズL26、第7レンズL27及び第8レンズL28から構成される第3群光学系24と、第9レンズL29とを備えている。また、本実施形態の撮像装置は、第9レンズL29側に、第1実施形態と同様に芯だしカバーガラスG1及びCCD4が配設されている。
【0034】
上記第1群光学系22は、第1レンズ枠F21で保持されていると共に、上記第2変倍群23は、ズーム枠である第2レンズ枠F22で保持されている。また、第3群光学系24は、第3レンズ枠F23で保持されている。さらに、第1〜第3レンズ枠F21、F21、F23は、第4レンズ枠F24によってまとめて全体が保持されている。
そして、第6レンズL26と第7レンズL27との間には、間隔管としても機能するブラックシリコン部材B2が配設されている。
【0035】
拡大内視鏡としての本実施形態の撮像装置において、広角時の光線Lは、第2変倍群23と第3群光学系24との間隔が広くなることに起因して光線高が高くなる。この際、第3レンズ枠F23中のレンズを保持する間隔管に光が当たり、正反射することによって、受光部4aに破線で示す不要光NLが入射してしまう。このような発生原因の不要光NLを、従来のフレア絞りによって対策しようとすると、組立時にピンセット等で保持した際に変形等の不具合を生じてしまうので、絞り内径に対してある程度大きめの外径にする必要がある。しかしながら、レンズ枠外径も大型化することになり、ひいては細径化を図りたい内視鏡先端が大型化してしまうという不都合がある。
【0036】
これに対し、本実施形態の撮像装置では、結像手段21の中で最も光線高の高い位置に間隔管としてブラックシリコン部材B2を配置しているので、このブラックシリコン部材B2に不要光NL等が当たっても正反射を防止することができ、第3群光学系24内の光線高と第3群光学系24のレンズ外径との差を極力小さくすることができる。したがって、大型になりがちな拡大内視鏡としても細径化・小型化を図ることができ、従来の拡大内視鏡よりも患者の苦痛を低減しつつ、詳細な診断を行うことが可能になる。
なお、本実施形態では、フレアに最も影響がある個所として第3レンズ枠F23内にブラックシリコン部材B2を配置したが、光学系構造によっては、第1レンズ枠F21や第2レンズ枠F22内に配置しても構わない。
【0037】
次に、本発明に係る撮像装置の第3実施形態について、図12を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
本実施形態の撮像装置は、オートクレーブ内視鏡に適用されるものであって、図12に示すように、結像手段31として、最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL31、第2レンズL32、第3レンズL33、第4レンズL34、第5レンズL35及び第6レンズL36を備えている。また、この撮像装置には、第6レンズL36側に、第1実施形態と同様に芯だしカバーガラスG1及びCCD4が配設されている。
【0039】
第1〜第6レンズL31〜L36は、それぞれレンズ枠F31で保持されている。また、第1レンズL31と第2レンズL32との間には、間隔管としても機能するブラックシリコン部材B3が配設されていると共に、第2レンズL32と第3レンズL33との間には、第1間隔管32が配設されている。さらに、第4レンズL34と第5レンズL35との間には、第2間隔管33が配設されている。
本実施形態の撮像装置では、高圧蒸気滅菌に耐え得るように、外表面に接する第1レンズL31が側面部34aでレンズ枠F31と半田付けされて気密封止構造とされている。この半田付けを行うために、第1レンズL31の側面部34aは金属蒸着がなされており、このため側面部34aでの反射率が高くなっている。
【0040】
内視鏡では、正規の結像光以外の光も多く存在し、それらの光が側面部34aに当たることもあり得る。従来の通常の内視鏡では、第1レンズL31の底面部34bにフレア絞りを配しており、側面部34aに光が当たっても側面部34aに塗られていた黒色接着剤により、反射光としてフレア絞りにあたる光の強度が弱く、不要光として認識されなかった。しかしながら、オートクレーブ内視鏡では、側面部34aの金属蒸着及び半田付け構造のため、底面部34bに上記内視鏡よりも強い光が当たりやすいことになる。これにより、たとえ黒色処理されたフレア絞りが底面部34bに配置されていたとしても、従来は、底面部34bに入射された光が図中の破線経路をたどり、受光部4aに不要光NLとして入射してしまう不都合がある。
【0041】
本実施形態では、第1レンズL31と第2レンズL32との間に底面部34bを覆うようにブラックシリコン部材B3を配置し、第1レンズL31の側面部34aでの反射光を確実にカットすることで、破線経路の不要光の発生を防止することができる。
また、ブラックシリコン部材B3を採用したとしても、底面部34bのガラス表面での反射が存在するので、底面部に関して反射防止コーティングを施して確実にブラックシリコン部材B3に不要光NLを導くような工夫を行っても構わない。
【0042】
また、上記半田付けを行う際には、強い酸性の液体で金属表面を活性化させることが必要になる。このため、レンズ枠F31は、黒色のメッキを行うことができない。つまり、レンズ枠F31は全体的にある程度の光沢があり、側面部34aに相当する位置以外での不要光も発生する場合がある。このため、第1間隔管32及び第2間隔管33をブラックシリコン部材で形成することにより、上記他の不要光の発生を抑制することが可能になる。
【0043】
次に、本発明に係る撮像装置の第4実施形態について、図13を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
本実施形態の撮像装置は、図13に示すように、主にカプセル内視鏡に適用されるものであって、図15に基づいて上述した従来のカプセル内視鏡と同様の光学系を、ブラックシリコン部材を多用して絞りを一枚も使用しない枠構造を有するものである。すなわち、この撮像装置は、従来と同様に、結像手段41として、最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL1及び第2レンズL2を備えている。また、この撮像装置には、第2レンズL2側に、CCDカバーガラス3及び受光部4aを有するCCD4が配設されている。
【0045】
本実施形態の撮像装置では、明るさ絞りと一体とした枠部材である第1ブラックシリコン部材B4の中に第1レンズL1を収め、単独の光学ユニットとしている。このため、単純に第1レンズL1を第1ブラックシリコン部材B4の中に落とし込むだけでよく、明るさ絞りの貼り付け作業等は不必要になる。また、第1レンズL1を含む第1ブラックシリコン部材B4、第2レンズL2、CCD4が第2ブラックシリコン部材B5で保持されている。
【0046】
この第2ブラックシリコン部材B5は、第1ブラックシリコン部材B4を保持する第1部材42と、該第1部材42と接合され第1レンズL1と第2レンズL2との間に配された間隔管でもある第2部材43と、該第2部材43と接合された第3部材44と、該第3部材44に保持され第2レンズL2とCCD4との間に配された間隔管でもある第4部材45とで構成されている。なお、第1部材42、第2部材43及び第3部材44は、陽極接合法によってパイレックス(登録商標)ガラスを介して接合処理を施している。なお、第2部材43の作用として、レンズ同士を位置決めするための間隔管であり、光線高が高くなる位置にフレア絞りを置かないことによって、装置全体を小型化するメリットがある点に関して、第2実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態における第1レンズL1と第2レンズL2との位置決め方法は、これらレンズを第2ブラックシリコン部材B5へ単純に落とし込むだけでよく、間隔管の落とし込み作業等は行わなくてよい。従来例における間隔管7、9は、反射率が比較的高いので、これらの間隔管だけでは不要光を防止することができず、フレア絞り8をどうしても必要としたが、ブラックシリコン部材の第2部材43ならば、反射率が極めて低く、反射光をすべてブラックシリコン部材にて吸収してしまうので、第2部材43に当たる経路の不要光NLの発生を防ぐことができる。
【0048】
従来例におけるCCD4直前のフレア絞りに関しても、間隔管相当のブラックシリコン材である第4部材45にて、位置出しを行うことで、フレア絞りの組立作業を廃止することができる。ここで、フレア絞りの組立に際しては、高い芯だし精度が要求されるので、従来は受光部4aとフレア絞り8とを顕微鏡で観察しながら中心合わせを行っていたが、ブラックシリコン部材は半導体エッチングの技術を用いて作製されるため、高い寸法精度を有しており、中心合わせの作業も廃止することができるという効果もある。このことは、光学系とCCDとの芯だし作業を簡略化することができることも意味する。このように、本実施形態では、CCDカバーガラス3と結像手段41の光学系とが第1ブラックシリコン部材B4及び第2ブラックシリコン部材B5により芯だしされていることも特徴である。
なお、本実施形態では。すべての枠にブラックシリコン部材を配置したが、光学的構造によっては、一部のみにブラックシリコン部材を用いても構わない。
【0049】
次に、本発明に係る撮像装置の第5実施形態について、図14を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0050】
本実施形態の撮像装置は、図14に示すように、第3実施形態と同様に主にカプセル内視鏡に適用されるものであって、撮像素子としてCMD(Charge Modulation Device)51を用いている。該CMD51は、不要光防止用のフレア絞りを兼ねたブラックシリコン部材B6を介してレンズ枠F51で保持されている。また、CMD51は、ブラックシリコン部材B6によりレンズ枠F51と位置出しされている。また、レンズ枠F51は、結像手段として明るさ絞り52を保持しており、この明るさ絞り52によって、CMD51の受光部51aに結像させることが可能となっている。
【0051】
本実施形態の撮像装置は、上述したように簡単な構造であるため、使い捨てを想定しているカプセル型内視鏡において、コストの面でも有利となり、結像手段に明るさ絞り52を用いたとしても、不要光防止の効果を得ることができる。なお、明るさ絞り52をブラックシリコン部材で作製すれば、開口部の精度をより高くすることができるので、より効果的である。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、上記各実施形態では、低反射部材である光吸収部材として半導体を用いたブラックシリコン材を用いたが、表面形態が、無数の柱状構造体を表面に有するものであれば、同様の作用を有するので、他の材料でも構わない。例えば、金属表面にエッチング処理を施して、無数の柱状構造を形成したものでもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、ブラックシリコン部材の作製をドライエッチングにより行っているが、アルカリ液等のエッチャントに浸漬することでエッチングを行うウェットエッチングで作製しても構わない。この場合、開口部を形成することは可能であるが、ブラックシリコン部材を切り離すために、Siウェハからダイシングソーを用いて直線状に切り出すしかなく、外形が四角形状の部材しか作製することができない。ブラックシリコン部材は、例えば第1実施形態の場合、受光部とCCD枠との間に配された構造物であり、芯だしカバーガラスを四角く高精度に加工するよりも丸く加工する方が容易である。したがって、芯だしカバーガラスに合わせるブラックシリコン部材の外形は丸形状とした方が、受光部の中心軸を高精度に合わせることができて有利となる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る撮像装置によれば、不要光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材を備えているので、不要光の正反射が抑制され、良好な画質を得ることができると共に、部材点数の削減や組立コストの低減等を図ることが可能となる。したがって、次世代内視鏡等に好適な高性能かつ低コストな撮像装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材作製に用いるドライエッチング装置を概略的に示す断面構成図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材作製のうちエッチング工程を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、Siウェハに形成されたブラックシリコン部材を示す平面図である。
【図5】図4におけるA領域を示す拡大図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材を示す断面図及び平面図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材とフレームとの連結部分を示す要部平面図である。
【図8】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン形成のエッチング処理前後を示す断面模式図である。
【図9】ブラックシリコンの波長に対する反射率を示すグラフである。
【図10】本発明に係る従来例及び第1実施形態の撮像装置において、フレア絞り及びブラックシリコン部材による不要光発生の有無を示す断面模式図である。
【図11】本発明に係る第2実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図12】本発明に係る第3実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図13】本発明に係る第4実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図14】本発明に係る第5実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図15】本発明に係る従来例の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【符号の説明】
4 CCD(固体撮像素子)
11、21、31、41 結像手段
52 明るさ絞り(結像手段)
G1 芯だしカバーガラス
B1、B2、B3 ブラックシリコン部材(光吸収部材)
B4 第1ブラックシリコン部材(光吸収部材、保持部材)
B5 第2ブラックシリコン部材(光吸収部材、保持部材)
NL 不要光
T 柱状構造体
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体撮像素子を用いた内視鏡装置等に適用される撮像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型のCCD(固体撮像素子)と結像光学系とを一つのユニットとした撮像装置が、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ及び電子内視鏡等の分野において活用されている。
ここで、電子内視鏡の分野に特に着目すると、新たな医学的効果を目論み、いろいろな改良が日夜行われている。例えば、以下のような新しい内視鏡が挙げられる。
【0003】
(1)内視鏡挿入部を極細くすることで、検査時における患者の苦痛を低減せしめる極細型の内視鏡。
(2)拡大倍率をズーム式にすることが可能であり、病変部を近接観察してその微細構造を観察することで、微小病変の浸潤の度合いや切除範囲を診断せしめる拡大内視鏡(例えば、特許文献1及び2参照)。
(3)オートクレーブ(高圧水蒸気滅菌法)による滅菌プロセスに耐え得る構造とすることで、滅菌にかかるコストを低減せしめるオートクレーブ内視鏡(例えば、特許文献3参照)。
(4)特殊な波長の光を病変に当てて、その光に反応した微弱な蛍光を検出することで、病変組織の診断能を向上せしめる蛍光内視鏡(例えば、特許文献4参照)。
(5)カプセル状の形態の撮像装置を飲み込み、画像を電波で送信することで、体内の画像を外部にて診断せしめるカプセル型の内視鏡(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】
特公昭61−44283号公報
【特許文献2】
特開平4−218012号公報
【特許文献3】
特開2001−112708号公報
【特許文献4】
特開平10−151104号公報
【特許文献5】
特開2001−112710号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の撮像装置には、以下の課題が残されている。すなわち、固体撮像素子において光学像を得るのに不要な光、すなわち本来の結像光以外の不要光が入射すると、正規の結像光以外の不要な像を形成するゴースト現象や、主に光の乱反射によって固体撮像素子全域に不要な光を入射させるフレア現象等が発生し、画像の品質を著しく劣化せしめる不都合があった。
従来の内視鏡撮像装置では、この不要光を防止する方法として、主に薄い金属製のフレア絞りを、結像光を邪魔せずに不要光のみをカットするような位置に配置する手法が取られている。しかし、このフレア対策では、効果が不十分な場合があった。例えば、以下のような場合がある。
【0006】
(ア)上記フレア絞りは、もともと反射率が高い材質であるが、表面に黒色のメッキを施して反射率を低くしている。このため組み立て時に表面に付着したゴミやバリなどを除去するための拭き工程中に、黒色のメッキが剥がれ、フレア絞りが光ってしまい、余計な不要光を発生させてしまう場合がある。
(イ)従来とは異なる構造を採用する際に、より強度が強い光が上記黒色メッキに当たると、黒色メッキの効果が低く、反射光が不要光となってしまう場合がある。
(ウ)最大光線高が高い光学系においては、小径とするためにフレア絞りを配置することができない場合がある。このため光線高が高い部分のレンズ枠に視野外光があたり、その正反射によって不要光が生じてしまう場合がある。
【0007】
一方、撮像装置、特に上記(1)〜(5)で述べたような次世代の内視鏡撮像装置においては、以下のような不要光の発生による画質の劣化という共通の課題が存在する。
(1)極細型の内視鏡においては、生体組織等を回収するための鉗子が通るためのチャンネル口と、対物レンズ及び照明レンズの間隙が狭くコンパクトになってくる。これに伴い、鉗子に照明レンズの光があたりやすくなり、かつあたった光が反射して対物レンズ中に入り易くなる。この場合、主に、上記(ア)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
(2)拡大内視鏡においては、レンズが移動する構造となっており、光線高が大きく移動し、すべての光線高に対応したフレア絞りを設定することが困難となる。この場合、主に、上記(ウ)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
【0008】
(3)オートクレーブ内視鏡においては、高圧蒸気内においても撮像装置に侵入がないように、レンズと枠部材とがハンダ付けされて気密構造をとる。一応、このとき、フレア防止のための黒色メッキを施したフレア絞りが配置されるが、枠が黒色メッキできなかったり、レンズ外周の蒸着等の影響により、フレア絞りにあたる光の強度は従来よりも強くなる。この場合、主に、上記(イ)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
(4)蛍光内視鏡においては、微弱な光を検出するための撮像装置であるため、不要光(特にフレア)が存在すると受光面全体に不要光が広がってしまう、いわゆるバックグラウンドフレアとなってしまい、病変部の微弱光とバックグラウンドフレアとの切り分けができなくなり、十分な検出ができない。したがって、通常の白色観察用内視鏡以上に、不要光の発生を抑える必要がある。この場合、主に、上記(ア)のモードの不要光を対策する必要がでてくる。
【0009】
(5)カプセル型の内視鏡においては、使い捨てで使用されるので、生産数量が多くなる。このため、フレア対策のためのフレア絞りを用いることに伴う面倒な組立作業を含まないような簡略な枠構造とする必要がある。
このようなカプセル内視鏡の従来例について、図15を参照して説明する。従来のカプセル内視鏡では、例えば、最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL1及び第2レンズL2を備え、第2レンズL2側に、CCDカバーガラス3及び受光部4aを有するCCD4が配設されている。
第1及び第2レンズL1、L2は、レンズ枠F1で保持されていると共に、CCD4が、CCD枠6で保持されている。また、第1レンズL1と第2レンズL2との間には、第1間隔管7、フレア絞り8及び第2間隔管9がレンズ枠F1によって位置決め配置されている。また、レンズ枠F1と第1レンズL1とに挟み込まれて、明るさ絞り10が位置決め配置されている。
この従来例からわかるように、3枚もの絞りを配置するような枠構造にする必要があり、組立上も時間がかかり、必然的に組立コストが高いものであった。
【0010】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、簡易な構成で不要光を防止して良好な画質を得ることができ、さらには部材点数の削減及び組立コストの低減を図ることができる撮像装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、撮像装置に関する不要光の除去技術について研究を行ってきた結果、半導体製造技術の中で歓迎されざる現象として知られる、いわゆるブラックシリコン現象に着目した。すなわち、近年、注目技術として、半導体プロセスの技術を用いて、微細なアクチュエータ素子等を実現する、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が挙げられるが、本発明者らは、このMEMS技術においてシリコンで作られている半導体ウェハにエッチング処理を行うことで、従来の機械加工以上の微細加工を行う点に着目した。このような半導体ウェハにエッチング処理を行う際の課題として、例えば特開平10−233387号公報に、ブラックシリコンの発生が述べられている。ここで、ブラックシリコンとは、シリコン基板をエッチングする工程において、意図しない異物が堆積したときに、その異物がエッチング時のマスクとなり、本来必要とされないエッチングがなされてしまった状態をいい、絶縁不良等の不具合を生じせしめるものであり、半導体製作上は歓迎されないものであった。しかしながら、本発明者らは、このブラックシリコンの有する構造が光学的に低反射特性を有する点に着目した。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
【0012】
本発明の撮像装置は、光学像を形成する結像手段と、該結像手段で形成された光学像を電気信号へ変換する固体撮像素子とを備えた撮像装置であって、前記固体撮像素子で前記光学像を得るのに不要な光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材が配置されていることを特徴とする。
この撮像装置では、固体撮像素子で光学像を得るのに不要な光(以下、不要光と称す)の光路上に、表面に無数の柱状構造体を有する光吸収部材が配置されているので、不要光が無数の柱状構造体間で反射を繰り返して不要光を逃がしにくい構造を光吸収部材が有し、不要光の正反射が抑制され、不要光によるゴースト現象やフレア現象の発生を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の撮像装置は、前記無数の柱状構造体が、無数の異物を付着させたシリコン材料の表面をエッチングして形成した無数の剣山状構造体であることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、無数の異物を付着させたシリコン基板の表面をエッチングして形成した微細な無数の剣山状構造体、いわゆるブラックシリコンを用いるので、正反射率を1%以下という超低反射率に抑えることができ、従来の銅を用いたフレア絞りよりも低い反射率で、フレア発生を大幅に抑制することができる。また、ブラックシリコンを用いる場合、遮光布を用いた場合に比べて、固形のために組立がしやすく剣山状構造体の高さも低く小型化が容易であると共に高い寸法精度を有し、さらにゴミ等が生じにくいというメリットがある。
【0014】
また、本発明の撮像装置は、上記各本発明の撮像装置において、前記光吸収部材が、前記結像手段及び前記固体撮像素子を保持する保持部材であることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、光吸収部材が保持部材でもあるので、保持機構に不要光の光吸収作用を兼用させることができ、部材点数の削減、組立の容易化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の撮像装置は、上記各本発明の撮像装置において、前記光吸収部材が、前記結像手段の中で最も光線高の高い位置に配置されていることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、光吸収部材が結像手段の中で最も光線高の高い位置に配置されているので、小型化が可能である。
【0016】
また、本発明の撮像装置は、上記各本発明の撮像装置において、前記光吸収部材が、最も物体面側に位置するレンズに隣接して配置されていることを特徴とする。
すなわち、この撮像装置では、光吸収部材が最も物体面側に位置するレンズに隣接して配置されているので、明るさ絞りを兼用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る撮像装置の第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態の撮像装置は、主に極細型の内視鏡や蛍光内視鏡に適用されるものであって、図1に示すように、生体内表面等の物体像(光学像)を光学系を介して形成する結像手段11と、該結像手段11で形成された物体像を受光部4aで電気信号へ変換するCCD(固体撮像素子)4とを備えている。
前記結像手段11は、内視鏡の先端側、すなわち最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL11、第2レンズL12、第3レンズL13、第4レンズL14、第5レンズL15及び芯だしカバーガラスG1を光学系として備えている。
【0019】
第1レンズL11、第2レンズL12及び第3レンズL13は、それぞれ第1レンズ枠F11で直接保持されていると共に、第4レンズL14及び第5レンズL15は、第2レンズ枠F12を介して第1レンズ枠F11に保持されている。
また、第3レンズL13と第4レンズL14との間には、間隔管12が第2レンズ枠F12で保持されて配置されている。
【0020】
また、芯だしカバーガラスG1は、略円環状に形成されたブラックシリコン部材B1を介してCCD枠F13に保持されている。なお、前記第2レンズ枠F12は、第1レンズ枠F11内側に保持され、該第1レンズ枠F11は、CCD枠F13内側に保持されている。
ブラックシリコン部材B1は、CCD4の受光部4aで物体像を得るのに不要な光の光路上に配され、フレア絞りとしても機能している。
【0021】
上記ブラックシリコン部材B1の作製方法について、図2から図10を参照して以下に説明する。
【0022】
ブラックシリコン部材B1は、図2に示すようなエッチング装置によってSiウェハSをドライエッチングすることにより作製される。すなわち、エッチング装置内のサセプタ14上にSiウェハSを載置し、この状態で、反応炉13内に導入した反応性ガスGにRF電源RFによって高周波印加してプラズマPを生成する。プラズマP中、移動度の高い電子はSiウェハSに入射し、陰極は負に帯電する。これにより自己バイアス電圧Vcを生する。
【0023】
一方、プラズマPは、正イオンが過剰となり正に帯電(電圧Vp)し、ラジカルとなる。この電位差(Vp−Vc)により正イオンが加速され、図3に示すように、SiウェハS表面に垂直入射し、ダメージ層Dを形成してエッチングが進行する。このダメージ層Dは、結合が弱いため、ラジカルと結合し、SiBr4やSiCl4等の揮発生成物を生じながら、エッチングされる。エッチング中には、側壁にポリマーPOというエッチング抑制層が形成されるので、垂直方向にのみエッチングが進む。なお、図中の符号Mはマスクである。この工程を数回繰り返すことにより、図4及び図5に示すように、SiウェハS上に複数のブラックシリコン化処理前のブラックシリコン部材B1が配列作製される。
【0024】
SiウェハS上のブラックシリコン部材B1は、図5及び図6に示すように、CCD4の受光部4a形状に合わせるために四角形状の開口部15aを有していて両側に設けられたサポートアーム15bを介して格子状のフレーム15cに支持されている。なお、実際にブラックシリコン部材B1を単体として使用する場合、サポートアーム15bを折って切り離す形態とされている。
ブラックシリコン部材B1のエッジ部によって、フレアカットを行うが、この部分は極力薄い方がフレア絞りとしては好ましい。この観点からエッジ部15dは、およそ厚さ0.03〜0.01mmの極薄形状としている。なお、この厚みは、上記極薄に限るものではなく、最大SiウェハSの厚み分として1mm程度まで厚くすることも可能である。しかも、SiウェハSの厚みを超えた設定の際には、接合処理を行うことでさらに厚く形成することも可能である。
【0025】
上記サポートアーム15bの厚みは、切り離ししやすくするために0.03〜0.01mm程度に設定しており、エッジ部15dと同等の厚みの設定である。このため、切り離したときにエッジ部15dも壊れてしまうことがないように、図6に示すように、およそ0.3mmから1mm程度の厚みの支持層15eを両者間に設けている。サポートアーム15bは、図7に示すように、フレーム15c側のサポートアーム15bの幅をLs、支持層15e側のサポートアーム15bの幅をLmとした場合に、
Lm≦Ls
の関係となるように形成することで、支持層15eの切り離しを行い易くしている。
【0026】
また、支持層15eは、サポートアーム15bから切り離した際に生ずるバリがブラックシリコン部材B1の外周部15fよりもはみ出ることがないように、外周に形成された凹部15gでサポートアーム15bと連結するように構成されている。
このような構成をエッチング処理によって作製した後、図8の(a)に示すように、さらに異物Xを形成する条件を決めて表面をブラックシリコン化するためのエッチングを行い、図8の(b)に示すように、無数の柱状構造体Tを表面に有する光吸収部材とする。これによって、ブラックシリコン部材B1表面の反射率を1%以下の低反射率状態とする。この際、異物XはポリマーPOと想像され、CHF3,CCLF3,(CF4+H2)ガスなどのポリマーを形成しやすいガスを使う方がよい。
【0027】
ブラックシリコン部材B1表面の正反射率は、図9に示すように、可視での波長域で0.1%以下の反射率であり、不要光を有効に防止することができる。一般に、黒色処理を施した金属によるフレア絞りでは、反射率が5%程度であるので、それと比較してブラックシリコン部材B1は、格段の低反射率を有している。
【0028】
物体像の撮像に必要な視野範囲は、CCD4の受光部4aサイズによって制限されているが、実際には視野範囲外の光も結像手段11の光学系内に入射している。例えば、上述したように、生体内の組織を回収する際の生検鉗子を使用する際には、鉗子が金属によって作られている関係上、照明光を反射しやすく、その光が視野範囲外に強い輝点を生じることがある。従来は、このような視野範囲外の光が、受光部4aに入射しないように、芯だしカバーガラスG1の直前にフレア絞りを配置するが、本実施形態では、そのフレア絞りをブラックシリコン部材B1によって形成している。
【0029】
従来、図10の(a)に示すように、銅によるフレア絞りFIDは、マスク製作の関係上、その縁がだれる(R形状となる)ため、黒色メッキがはがれやすく、反射率が高くなり、マスクの縁で光線が反射してCCDの受光部に不要光NLが入射するという不都合があった。
一方、本実施形態では、図10の(b)に示すように、フレア絞りとしてブラックシリコン部材B1を利用しているため、反射率が非常に低く、ブラックシリコン部材B1に入射した光を逃がさないため、縁での反射によって生じる受光部4aへの不要光NLの入射を防ぐことができる。
また、本実施形態では、図10の(c)に示すように、受光部4aの表面で反射した光がブラックシリコン部材B1の裏面にあたっても、破線で示す不要光NLが反射して発生することがなく、バックグラウンドフレアの発生を防ぐことができる。
【0030】
このように本実施形態では、CCD4で物体像を得るのに不要な不要光NLの光路上に、表面に無数の柱状構造体Tを表面に有するブラックシリコン部材B1を備えているので、ブラックシリコン部材B1に入射された不要光NLが無数の柱状構造体T間で反射を繰り返し、不要光NLの正反射が抑制され、不要光によるゴースト現象やフレア現象の発生を防ぐことができる。
【0031】
特に、無数の異物Xを付着させたシリコン材料の表面をエッチングして形成した微細な無数の剣山状構造体、いわゆるブラックシリコンを用いるので、正反射率を1%以下という超低反射率に抑えることができ、従来の銅を用いたフレア絞りよりも低い反射率で、フレア発生を大幅に抑制することができる。
例えば、上記第1実施形態では、フレアに最も影響のある個所として芯だしカバーガラスG1の直前にブラックシリコン部材B1を配置したが、光学系構造によっては、レンズ枠の部材をブラックシリコン部材で形成しても構わない。
【0032】
次に、本発明に係る撮像装置の第2実施形態について、図11を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
本実施形態の撮像装置は、主に拡大内視鏡に適用されるものであって、図11に示すように、結像手段21として、最も物体面側に位置するものから順に、第1レンズL21、第2レンズL22、第3レンズL23及び第4レンズL24から構成される第1群光学系22と、第5レンズである第2変倍群23と、第6レンズL26、第7レンズL27及び第8レンズL28から構成される第3群光学系24と、第9レンズL29とを備えている。また、本実施形態の撮像装置は、第9レンズL29側に、第1実施形態と同様に芯だしカバーガラスG1及びCCD4が配設されている。
【0034】
上記第1群光学系22は、第1レンズ枠F21で保持されていると共に、上記第2変倍群23は、ズーム枠である第2レンズ枠F22で保持されている。また、第3群光学系24は、第3レンズ枠F23で保持されている。さらに、第1〜第3レンズ枠F21、F21、F23は、第4レンズ枠F24によってまとめて全体が保持されている。
そして、第6レンズL26と第7レンズL27との間には、間隔管としても機能するブラックシリコン部材B2が配設されている。
【0035】
拡大内視鏡としての本実施形態の撮像装置において、広角時の光線Lは、第2変倍群23と第3群光学系24との間隔が広くなることに起因して光線高が高くなる。この際、第3レンズ枠F23中のレンズを保持する間隔管に光が当たり、正反射することによって、受光部4aに破線で示す不要光NLが入射してしまう。このような発生原因の不要光NLを、従来のフレア絞りによって対策しようとすると、組立時にピンセット等で保持した際に変形等の不具合を生じてしまうので、絞り内径に対してある程度大きめの外径にする必要がある。しかしながら、レンズ枠外径も大型化することになり、ひいては細径化を図りたい内視鏡先端が大型化してしまうという不都合がある。
【0036】
これに対し、本実施形態の撮像装置では、結像手段21の中で最も光線高の高い位置に間隔管としてブラックシリコン部材B2を配置しているので、このブラックシリコン部材B2に不要光NL等が当たっても正反射を防止することができ、第3群光学系24内の光線高と第3群光学系24のレンズ外径との差を極力小さくすることができる。したがって、大型になりがちな拡大内視鏡としても細径化・小型化を図ることができ、従来の拡大内視鏡よりも患者の苦痛を低減しつつ、詳細な診断を行うことが可能になる。
なお、本実施形態では、フレアに最も影響がある個所として第3レンズ枠F23内にブラックシリコン部材B2を配置したが、光学系構造によっては、第1レンズ枠F21や第2レンズ枠F22内に配置しても構わない。
【0037】
次に、本発明に係る撮像装置の第3実施形態について、図12を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
本実施形態の撮像装置は、オートクレーブ内視鏡に適用されるものであって、図12に示すように、結像手段31として、最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL31、第2レンズL32、第3レンズL33、第4レンズL34、第5レンズL35及び第6レンズL36を備えている。また、この撮像装置には、第6レンズL36側に、第1実施形態と同様に芯だしカバーガラスG1及びCCD4が配設されている。
【0039】
第1〜第6レンズL31〜L36は、それぞれレンズ枠F31で保持されている。また、第1レンズL31と第2レンズL32との間には、間隔管としても機能するブラックシリコン部材B3が配設されていると共に、第2レンズL32と第3レンズL33との間には、第1間隔管32が配設されている。さらに、第4レンズL34と第5レンズL35との間には、第2間隔管33が配設されている。
本実施形態の撮像装置では、高圧蒸気滅菌に耐え得るように、外表面に接する第1レンズL31が側面部34aでレンズ枠F31と半田付けされて気密封止構造とされている。この半田付けを行うために、第1レンズL31の側面部34aは金属蒸着がなされており、このため側面部34aでの反射率が高くなっている。
【0040】
内視鏡では、正規の結像光以外の光も多く存在し、それらの光が側面部34aに当たることもあり得る。従来の通常の内視鏡では、第1レンズL31の底面部34bにフレア絞りを配しており、側面部34aに光が当たっても側面部34aに塗られていた黒色接着剤により、反射光としてフレア絞りにあたる光の強度が弱く、不要光として認識されなかった。しかしながら、オートクレーブ内視鏡では、側面部34aの金属蒸着及び半田付け構造のため、底面部34bに上記内視鏡よりも強い光が当たりやすいことになる。これにより、たとえ黒色処理されたフレア絞りが底面部34bに配置されていたとしても、従来は、底面部34bに入射された光が図中の破線経路をたどり、受光部4aに不要光NLとして入射してしまう不都合がある。
【0041】
本実施形態では、第1レンズL31と第2レンズL32との間に底面部34bを覆うようにブラックシリコン部材B3を配置し、第1レンズL31の側面部34aでの反射光を確実にカットすることで、破線経路の不要光の発生を防止することができる。
また、ブラックシリコン部材B3を採用したとしても、底面部34bのガラス表面での反射が存在するので、底面部に関して反射防止コーティングを施して確実にブラックシリコン部材B3に不要光NLを導くような工夫を行っても構わない。
【0042】
また、上記半田付けを行う際には、強い酸性の液体で金属表面を活性化させることが必要になる。このため、レンズ枠F31は、黒色のメッキを行うことができない。つまり、レンズ枠F31は全体的にある程度の光沢があり、側面部34aに相当する位置以外での不要光も発生する場合がある。このため、第1間隔管32及び第2間隔管33をブラックシリコン部材で形成することにより、上記他の不要光の発生を抑制することが可能になる。
【0043】
次に、本発明に係る撮像装置の第4実施形態について、図13を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
本実施形態の撮像装置は、図13に示すように、主にカプセル内視鏡に適用されるものであって、図15に基づいて上述した従来のカプセル内視鏡と同様の光学系を、ブラックシリコン部材を多用して絞りを一枚も使用しない枠構造を有するものである。すなわち、この撮像装置は、従来と同様に、結像手段41として、最も物体面側に位置するものから順に第1レンズL1及び第2レンズL2を備えている。また、この撮像装置には、第2レンズL2側に、CCDカバーガラス3及び受光部4aを有するCCD4が配設されている。
【0045】
本実施形態の撮像装置では、明るさ絞りと一体とした枠部材である第1ブラックシリコン部材B4の中に第1レンズL1を収め、単独の光学ユニットとしている。このため、単純に第1レンズL1を第1ブラックシリコン部材B4の中に落とし込むだけでよく、明るさ絞りの貼り付け作業等は不必要になる。また、第1レンズL1を含む第1ブラックシリコン部材B4、第2レンズL2、CCD4が第2ブラックシリコン部材B5で保持されている。
【0046】
この第2ブラックシリコン部材B5は、第1ブラックシリコン部材B4を保持する第1部材42と、該第1部材42と接合され第1レンズL1と第2レンズL2との間に配された間隔管でもある第2部材43と、該第2部材43と接合された第3部材44と、該第3部材44に保持され第2レンズL2とCCD4との間に配された間隔管でもある第4部材45とで構成されている。なお、第1部材42、第2部材43及び第3部材44は、陽極接合法によってパイレックス(登録商標)ガラスを介して接合処理を施している。なお、第2部材43の作用として、レンズ同士を位置決めするための間隔管であり、光線高が高くなる位置にフレア絞りを置かないことによって、装置全体を小型化するメリットがある点に関して、第2実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態における第1レンズL1と第2レンズL2との位置決め方法は、これらレンズを第2ブラックシリコン部材B5へ単純に落とし込むだけでよく、間隔管の落とし込み作業等は行わなくてよい。従来例における間隔管7、9は、反射率が比較的高いので、これらの間隔管だけでは不要光を防止することができず、フレア絞り8をどうしても必要としたが、ブラックシリコン部材の第2部材43ならば、反射率が極めて低く、反射光をすべてブラックシリコン部材にて吸収してしまうので、第2部材43に当たる経路の不要光NLの発生を防ぐことができる。
【0048】
従来例におけるCCD4直前のフレア絞りに関しても、間隔管相当のブラックシリコン材である第4部材45にて、位置出しを行うことで、フレア絞りの組立作業を廃止することができる。ここで、フレア絞りの組立に際しては、高い芯だし精度が要求されるので、従来は受光部4aとフレア絞り8とを顕微鏡で観察しながら中心合わせを行っていたが、ブラックシリコン部材は半導体エッチングの技術を用いて作製されるため、高い寸法精度を有しており、中心合わせの作業も廃止することができるという効果もある。このことは、光学系とCCDとの芯だし作業を簡略化することができることも意味する。このように、本実施形態では、CCDカバーガラス3と結像手段41の光学系とが第1ブラックシリコン部材B4及び第2ブラックシリコン部材B5により芯だしされていることも特徴である。
なお、本実施形態では。すべての枠にブラックシリコン部材を配置したが、光学的構造によっては、一部のみにブラックシリコン部材を用いても構わない。
【0049】
次に、本発明に係る撮像装置の第5実施形態について、図14を参照して説明する。
なお、以下の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0050】
本実施形態の撮像装置は、図14に示すように、第3実施形態と同様に主にカプセル内視鏡に適用されるものであって、撮像素子としてCMD(Charge Modulation Device)51を用いている。該CMD51は、不要光防止用のフレア絞りを兼ねたブラックシリコン部材B6を介してレンズ枠F51で保持されている。また、CMD51は、ブラックシリコン部材B6によりレンズ枠F51と位置出しされている。また、レンズ枠F51は、結像手段として明るさ絞り52を保持しており、この明るさ絞り52によって、CMD51の受光部51aに結像させることが可能となっている。
【0051】
本実施形態の撮像装置は、上述したように簡単な構造であるため、使い捨てを想定しているカプセル型内視鏡において、コストの面でも有利となり、結像手段に明るさ絞り52を用いたとしても、不要光防止の効果を得ることができる。なお、明るさ絞り52をブラックシリコン部材で作製すれば、開口部の精度をより高くすることができるので、より効果的である。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、上記各実施形態では、低反射部材である光吸収部材として半導体を用いたブラックシリコン材を用いたが、表面形態が、無数の柱状構造体を表面に有するものであれば、同様の作用を有するので、他の材料でも構わない。例えば、金属表面にエッチング処理を施して、無数の柱状構造を形成したものでもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、ブラックシリコン部材の作製をドライエッチングにより行っているが、アルカリ液等のエッチャントに浸漬することでエッチングを行うウェットエッチングで作製しても構わない。この場合、開口部を形成することは可能であるが、ブラックシリコン部材を切り離すために、Siウェハからダイシングソーを用いて直線状に切り出すしかなく、外形が四角形状の部材しか作製することができない。ブラックシリコン部材は、例えば第1実施形態の場合、受光部とCCD枠との間に配された構造物であり、芯だしカバーガラスを四角く高精度に加工するよりも丸く加工する方が容易である。したがって、芯だしカバーガラスに合わせるブラックシリコン部材の外形は丸形状とした方が、受光部の中心軸を高精度に合わせることができて有利となる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る撮像装置によれば、不要光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材を備えているので、不要光の正反射が抑制され、良好な画質を得ることができると共に、部材点数の削減や組立コストの低減等を図ることが可能となる。したがって、次世代内視鏡等に好適な高性能かつ低コストな撮像装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材作製に用いるドライエッチング装置を概略的に示す断面構成図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材作製のうちエッチング工程を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、Siウェハに形成されたブラックシリコン部材を示す平面図である。
【図5】図4におけるA領域を示す拡大図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材を示す断面図及び平面図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン部材とフレームとの連結部分を示す要部平面図である。
【図8】本発明に係る第1実施形態の撮像装置において、ブラックシリコン形成のエッチング処理前後を示す断面模式図である。
【図9】ブラックシリコンの波長に対する反射率を示すグラフである。
【図10】本発明に係る従来例及び第1実施形態の撮像装置において、フレア絞り及びブラックシリコン部材による不要光発生の有無を示す断面模式図である。
【図11】本発明に係る第2実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図12】本発明に係る第3実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図13】本発明に係る第4実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図14】本発明に係る第5実施形態の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【図15】本発明に係る従来例の撮像装置において、その構成(断面片側のレンズ周辺部材を省略)を示す断面図である。
【符号の説明】
4 CCD(固体撮像素子)
11、21、31、41 結像手段
52 明るさ絞り(結像手段)
G1 芯だしカバーガラス
B1、B2、B3 ブラックシリコン部材(光吸収部材)
B4 第1ブラックシリコン部材(光吸収部材、保持部材)
B5 第2ブラックシリコン部材(光吸収部材、保持部材)
NL 不要光
T 柱状構造体
Claims (5)
- 光学像を形成する結像手段と、
該結像手段で形成された光学像を電気信号へ変換する固体撮像素子とを備えた撮像装置であって、
前記固体撮像素子で前記光学像を得るのに不要な光の光路上に、無数の柱状構造体を表面に有する光吸収部材が配置されていることを特徴とする撮像装置。 - 請求項1に記載の撮像装置において、
前記無数の柱状構造体が、無数の異物を付着させたシリコン材料の表面をエッチングして形成した無数の剣山状構造体であることを特徴とする撮像装置。 - 請求項1又は2に記載の撮像装置において、
前記光吸収部材が、前記結像手段及び前記固体撮像素子を保持する保持部材であることを特徴とする撮像装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の撮像装置において、
前記光吸収部材が、前記結像手段の中で最も光線高の高い位置に配置されていることを特徴とする撮像装置。 - 請求項1から4のいずれかに記載の撮像装置において、
前記光吸収部材が、最も物体面側に位置するレンズに隣接して配置されていることを特徴とする撮像装置。
Priority Applications (1)
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JP2003133000A JP2004334094A (ja) | 2003-05-12 | 2003-05-12 | 撮像装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009288670A (ja) * | 2008-05-30 | 2009-12-10 | Olympus Medical Systems Corp | 光学ユニット及び撮像装置用光学ユニット |
-
2003
- 2003-05-12 JP JP2003133000A patent/JP2004334094A/ja not_active Withdrawn
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