JP2004333184A - タンパク質相互作用測定のためのクロマトグラム作成法およびそれにより作成されたクロマトグラムを利用する方法 - Google Patents
タンパク質相互作用測定のためのクロマトグラム作成法およびそれにより作成されたクロマトグラムを利用する方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合にもクロマトグラムを作成することを可能にする。
【解決手段】リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のクロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法において、タンパク質をそれをコードする核酸と結合させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成する。
【選択図】 図1
【解決手段】リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のクロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法において、タンパク質をそれをコードする核酸と結合させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質相互作用測定のためのクロマトグラム作成法およびそれにより作成されたクロマトグラムを利用したタンパク質相互作用の測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のゲノムプロジェクトにより、ヒトをはじめとする様々な生物種における遺伝子の塩基配列が解読されている。しかし、多くの遺伝子がコードするタンパク質の機能は未だに不明である。個々の遺伝子がコードするタンパク質の機能を解明する学問分野はゲノム機能解析と呼ばれる。ゲノム機能解析では、ゲノムDNAやcDNAライブラリーに含まれる多種類の遺伝子がコードするタンパク質の機能を、網羅的、並列的に解析し、より多くの情報をハイスループットに得ることが求められる。
【0003】
一方、所望の機能をもつタンパク質を人工的に構築する工学分野として、進化分子工学がある。進化分子工学ではダーウィン進化を利用する。機能を高めたいタンパク質をコードする遺伝子に様々な変異を導入し、それを基に変異タンパク質のライブラリーを構築する。このライブラリーの中から優れた機能をもつタンパク質を選択する。選択されたタンパク質の遺伝子を同定後、その遺伝子にさらに変異を導入し、再び変異タンパク質のライブラリーを構築する。この新しいライブラリーの中から、より優れた機能をもつタンパク質を選択する。このように変異導入と選択を繰返し、進化したタンパク質を得ることが可能である。
【0004】
核酸(遺伝子)とそれがコードするタンパク質とを連結した対応付け分子は、ゲノム機能解析と進化分子工学の両分野において強力なツールとなる。対応付け分子としては、STABLE法(特許文献1、非特許文献1)によるもの、試験管内ウイルス(in vitro virus)法(特許文献2、非特許文献2、特許文献3)によるものが知られている。
【0005】
例えば、in vitro virus法では、mRNAとそれがコードするタンパク質が、抗生物質であるピューロマイシンを介して共有結合で連結される。ゲノム機能解析の場合では、ゲノムDNA、cDNA、あるいはmRNAライブラリーからin vitro virusライブラリーが構築される。進化分子工学の場合では、変異遺伝子のライブラリーからin vitro virusライブラリーが構築される。これらのin vitro virusライブラリーとリガンドを結合した樹脂を混合し、バッチ法あるいはクロマトグラフ法などの精製法を用いて、リガンドに親和性をもつタンパク質を提示したin vitro virus分子を精製する。精製されたin vitro virus分子は情報タグであるmRNAをもつので、逆転写−PCRを行った後DNAシークエンシングを行うことにより、リガンドに親和性をもつタンパク質の遺伝子を迅速に同定できる(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
バッチ法やクロマトグラフ法による精製の過程は、ゲノム機能解析や進化分子工学にとって最も重要な過程の1つである。バッチ法による精製では、一度リガンドから解離した分子は洗浄液により体積的に希釈されるため、リガンドに再結合しにくい。そのため樹脂やリガンドに非特異的吸着した分子を短時間で効率的に除くことができる利点をもつが、リガンドに親和性を有する分子の回収率は低くなる。一方、クロマトグラフ法による精製では、リガンドに対して結合能をもつ分子はカラムに充填されたリガンドと可逆的な結合と解離を繰り返し行なうことができ、その間に非特異的吸着した分子を洗浄することが可能である。クロマトグラフ法では洗浄に時間を要するが、目的分子を比較的高い回収率で得ることができる。クロマトグラフ法では、カラムからの溶出液の、精製対象となる分子を含む画分を特定するため、その分子を標識する必要があり、標識には放射性同位体が一般に用いられている。
【0007】
クロマトグラフ法において作成されるクロマトグラムは、相互作用の解析に使用することができるので、精製対象となる分子の相互作用を測定するためだけでなく、既知のタンパク質とリガンドとの相互作用を測定するためにも作成され得る。
【0008】
【非特許文献1】
FEBS Lett., 457, 227 (1999)
【特許文献1】
特開2001−128690号公報
【特許文献2】
国際公開第WO 98/16636号パンフレット
【非特許文献2】
FEBS Lett., 414, 405 (1997)
【特許文献3】
国際公開第WO 02/48347号パンフレット
【特許文献4】
特表2002−513281号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ゲノム機能解析および進化分子工学のどちらの場合においても、リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定することは重要であると考えられる。
【0010】
従って、本発明の課題は、リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりするための、クロマトグラムの作成法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合、クロマトグラフ法による溶出画分に含まれるタンパク質は極めて微量になる。
【0012】
本発明者らは、従来、タンパク質遺伝子の同定に使用されていた対応付け分子を構成する核酸をタンパク質の定量タグとして利用してリアルタイムPCRにより検出することにより、目的のリガンドと相互作用するタンパク質がクロマトグラフ法による溶出画分に極めて微量にしか存在しない場合でも、目的のタンパク質を検出することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1) リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のアフィニティークロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法において、タンパク質を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成することを特徴とする前記方法。
【0014】
(2) リガンドと相互作用するタンパク質を検出する方法であって、試料のタンパク質について(1)の方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてリガンドと相互作用するタンパク質を検出することを含む前記方法。
【0015】
(3) タンパク質とリガンドとの相互作用を測定する方法であって、測定対象のタンパク質について(1)の方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてタンパク質とリガンドとの相互作用を測定することを含む前記方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
<1>本発明作成法
本発明作成法は、リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のアフィニティークロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法であって、タンパク質を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成することを特徴とする。
【0017】
本発明作成法は、目的タンパク質(検出・測定の対象となるタンパク質)を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中の目的タンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定することの他は、通常のアフィニティークロマトグラフィーによるクロマトグラムの作成法と同様である。リガンドとは、機能タンパク質が特異的に結合する物質である。例えば、核酸のプロモーター配列、タンパク質サブユニット、酵素阻害剤、ホルモン、神経伝達物質等の種々の薬剤等が挙げられる。リガンドの担体への結合は、アフィニティークロマトグラフィーの担体の作成に関して通常の方法によって行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーは、通常には、試料中の目的タンパク質を、親和性による結合が生じる条件で、担体に結合させたリガンドに接触させ、担体を洗浄して夾雑物を除去した後、リガンドに結合した目的タンパク質を溶出(脱離)させることによって行われる。ここで、洗浄および溶出は、通常、カラムに担体を充填して洗浄液および溶出液をカラムに流すことによって行われる。担体のカラムへの充填は、目的タンパク質をリガンドに接触させる前でもよいし、タンパク質をリガンドに接触させた後でもよい。前者の場合には、担体を充填したカラムに、親和性による結合が生じる条件で試料をアプライする。後者の場合は、試料と担体とが、親和性による結合が生じる条件で混合し、混合物をカラムに充填する。洗浄液および溶出液を流すことによりカラムから流出する液を分取し、各画分に含まれる目的タンパク質を定量することによりクロマトグラムが作成される。クロマトグラムは、通常、縦軸にタンパク質量(相対量であってもよい)、横軸に溶出液量(溶出液量が時間に依存する場合には溶出時間であってもよい)をとって作成される。
以下、対応付け分子およびリアルタイムPCRについて説明する。
【0018】
<1−1>対応付け分子
対応付け分子は、タンパク質と、それをコードする核酸とが連結された分子である。
【0019】
核酸は、対応付け分子の態様に応じて一本鎖および二本鎖のいずれでもよく、また、DNA、RNAおよびDNAとRNAとのハイブリッドのいずれでもよい。タンパク質は、対応付け分子の態様に応じて融合タンパク質とされていてもよい。
【0020】
タンパク質と核酸とが連結されているとは、タンパク質と核酸とが、その他の分子を介して連結されていることも包含し、また、それらの相互間の結合は、共有結合、生体分子が持つ親和力による結合等の非共有結合のいずれでもよい。生体分子が持つ親和力による結合の例としては、抗原と抗体との結合、ホルモンと受容体との結合、DNAとDNA結合蛋白質との結合等が挙げられる。
【0021】
対応付け分子の例としては、STABLE法(特許文献1、非特許文献1)によるもの、試験管内ウイルス(in vitro virus)法(特許文献2、非特許文献2、特許文献3)によるものが挙げられる。以下、具体例を説明する。
【0022】
(a)STABLE法による対応付け分子
STABLE法による対応付け分子は、機能解析、機能改変等の対象となるタンパク質とアダプタータンパク質との融合タンパク質と、該融合タンパク質をコードし、かつ該アダプタータンパク質のリガンドが結合したDNAとが、該アダプタータンパク質と該リガンドとの結合を介して連結されることによって構成されている。
【0023】
被標的タンパク質は、天然タンパク質又はその変異体、および人工タンパク質又はその変異体の何れでもよい。天然タンパク質としては、種々の生物の器官、組織又は細胞に由来するcDNAライブラリーから転写翻訳される多様性を有するタンパク質のライブラリーを含むものである。人工タンパク質としては、天然タンパク質の全てもしくは部分配列を組み合わせた配列、又はランダムなアミノ酸配列を含むものである。
【0024】
アダプタータンパク質とは、ある分子(アダプター結合リガンド)と特異的に結合する能力を有するタンパク質を意味し、これらの中には、結合タンパク質、受容体を構成する受容体タンパク質、抗体等も含まれる。アダプター結合リガンドとは、アダプタータンパク質に特異的に結合する分子を意味する。アダプタータンパク質/アダプター結合リガンドの組み合わせとしては、例えば、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合蛋白質/ビオチン、マルトース結合蛋白質/マルトース、Gタンパク質/グアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合タンパク質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質/ATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質/エストラジオール等の各種受容体タンパク質/そのリガンド等が挙げられる。
【0025】
これらの中で、アダプタータンパク質/アダプター結合リガンドの組み合わせとしては、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質/ビオチン、マルトース結合タンパク質/マルトース、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、抗体/抗原分子(エピトープ)等が好ましく、特に、ストレプトアビジン/ビオチンが最も好ましい。
【0026】
この態様で用いる融合タンパク質をコードするDNAにおいては、通常、その一方の末端にアダプター結合リガンドが結合している。該DNAの末端に結合したアダプター結合リガンドと該DNAにより発現される融合タンパク質中のアダプタータンパク質部分との結合を介して、融合タンパク質とDNAとが物理的に連結される。
【0027】
この態様の対応付け分子は、少なくとも転写翻訳開始領域、被標的タンパク質とアダプタータンパク質との融合タンパク質をコードする領域を有し、かつアダプター結合リガンドが結合したDNAを、無細胞転写翻訳系で発現させてタンパク質を合成することにより製造できる。好ましくは、少なくとも転写翻訳開始領域、被標的タンパク質とアダプタータンパク質との融合タンパク質をコードする領域を有し、かつアダプター結合リガンドが結合したDNAのライブラリーを、該DNAのライブラリー内のDNAが、一種類もしくは1分子ずつ含まれるように隔離した無細胞転写翻訳系で発現させてタンパク質を合成することにより製造される。
【0028】
STABLE法による対応付け分子は、アダプタータンパク質とそのリガンドとの結合が、本発明作成方法におけるクロマトグラフィーの条件で解離しない場合に使用できる。
【0029】
(b)試験管内ウイルス法による対応付け分子
試験管内ウイルス法による対応付け分子は、機能解析、機能改変等の対象となるタンパク質を含む表現型分子と、該タンパク質をコードする核酸を含む遺伝子型分子とが結合してなる。遺伝子型分子は、タンパク質をコードする領域を、その領域の塩基配列が翻訳され得るような形態で有するコード分子と、スペーサー部とが結合してなる。説明の便宜のため、対応付け分子における、表現形分子に由来する部分、スペーサー分子に由来する部分、および、コード分子に由来する部分をそれぞれ、デコード部、スペーサー部およびコード部と呼ぶ。また、遺伝子型分子における、スペーサー分子に由来する部分、および、コード分子に由来する部分をそれぞれ、スペーサー部およびコード部と呼ぶ。
【0030】
この態様におけるスペーサー分子は、核酸の3’末端に結合できるドナー領域と、ドナー領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域と、PEG領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを含む。PEG領域はなくてもよい。
【0031】
核酸の3’末端に結合できるドナー領域は、通常、1以上のヌクレオチドからなる。ヌクレオチドの数は、通常には1〜15、好ましくは1〜2である。ヌクレオチドはリボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもよい。
【0032】
ドナー領域の5’末端の配列は、ライゲーション効率を左右する。コード部とスペーサー部をライゲーションさせるためには、少なくとも1残基以上を含むことが必要であり、ポリA配列をもつアクセプターに対しては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)または2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。塩基の種類としては、C>U又はT>G>Aの順で好ましい。
【0033】
PEG領域はポリエチレングリコールを主成分とするものである。ここで、主成分とするとは、PEG領域に含まれるヌクレオチドの数の合計が20塩基以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が400以上であることを意味する。好ましくは、ヌクレオチドの合計の数が10塩基以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が2000以上であることを意味する。
【0034】
PEG領域のポリエチレングリコールの平均分子量は、通常には、400〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。ここで、ポリエチレングリコールの分子量が約400より低いと、このスペーサー分子に由来するスペーサー部を含む遺伝子型分子を対応付け翻訳したときに、対応付け翻訳の後処理が必要となることがあるが(Liu, R., Barrick, E., Szostak, J.W., Roberts, R.W. (2000) Methods in Enzymology, vol. 318, 268−293)、分子量1000以上、より好ましくは2000以上のPEGを用いると、対応付け翻訳のみで高効率の対応付けができるため、翻訳の後処理が必要なくなる。また、ポリエチレングリコールの分子量が増えると、遺伝子型分子の安定性が増す傾向があり、特に分子量1000以上で良好であり、分子量400以下ではDNAスペーサーと性質がそれほどかわらず不安定となることがある。
【0035】
ペプチドアクセプター領域は、ペプチドのC末端に結合できるものであれば特に限定されないが、例えば、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3’−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside, PANS−アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、バリンのPANS−Val、アラニンのPANS−Ala、その他、全アミノ酸に対応するPANS−全アミノ酸が利用できる。また、化学結合として3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形成されたアミド結合でつながった3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3’−Aminoacyladenosine aminonucleoside, AANS−アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、バリンのAANS−Val、アラニンのAANS−Ala、その他、全アミノ酸に対応するAANS−全アミノ酸が利用できる。また、ヌクレオシドまたはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。その他、ヌクレオシドまたはヌクレオシドに類似した化学構造骨格を有する物質と、アミノ酸またはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質を化学的に結合可能な結合様式のものなら全て利用することができる。
【0036】
ペプチドアクセプター領域は、好ましくは、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなることが好ましい。ここで、誘導体とはタンパク質翻訳系においてペプチドのC末端に結合できる誘導体を意味する。ピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシン構造を完全に有しているものに限られず、ピューロマイシン構造の一部が欠落しているものも包含する。ピューロマイシン誘導体の具体例としては、PANS−アミノ酸、AANS−アミノ酸などが挙げられる。
【0037】
ペプチドアクセプター領域は、ピューロマイシンのみの構成でもかまわないが、5’側に1残基以上のDNAおよび/またはRNAからなる塩基配列を持つことが好ましい。配列としては、dC−Puromycin, rC−Puromycinなど、より好ましくはdCdC−Puromycin, rCrC−Puromycin, rCdC−Puromycin, dCrC−Puromycinなどの配列で、アミノアシル−tRNAの3’末端を模倣したCCA配列(Philipps, G.R. (1969) Nature 223, 374−377)が適当である。塩基の種類としては、C>U又はT>G>Aの順で好ましい。
【0038】
スペーサー分子は、ドナー領域とPEG領域との間に、少なくとも1つの機能付与ユニットを含むことが好ましい。機能付与ユニットは、好ましくは、少なくとも1残基のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの塩基に機能修飾を施したものである。例えば、機能修飾物質として、蛍光物質、ビオチン、またはHis−tagなど各種分離タグなどを導入したものが可能である。
【0039】
この態様におけるコード分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合したポリA配列を持ち、かつポリA配列の5’上流に親和性タグ配列を含む核酸である。
【0040】
コード分子は、DNAでもRNAでもよく、RNAの場合、5’末端にCap構造があってもなくても良い。また、コード分子は任意のベクターやプラスミドに組み込まれたものとしてもよい。
【0041】
3’末端領域は、親和性タグ配列とその下流にポリA配列を含む。スペーサー分子とコード分子とのライゲーション効率に影響を与える要素としては3’末端領域のポリA配列が重要であり、ポリA配列は、少なくとも2残基以上のdAおよび/またはrAの混合または単一のポリA連続鎖であり、好ましくは、3残基以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8残基以上のポリA連続鎖である。
【0042】
コード分子の翻訳効率に影響する要素としては、転写プロモーターと翻訳エンハンサーからなる5’UTR、および、ポリA配列を含む3’末端領域の組み合わせがある。3’末端領域のポリA配列の効果は通常には10残基以下で発揮される。5’UTRの転写プロモーターはT7/T3またはSP6などが利用でき、特に制限はない。好ましくはSP6であり、特に、翻訳のエンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の一部を含む配列を利用する場合はSP6を用いることが特に好ましい。翻訳エンハンサーは好ましくはオメガ配列の一部であり、オメガ配列の一部としては、TMVのオメガ配列の一部(O29; Gallie D.R., Walbot V. (1992) Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631−4638、及び、WO 02/48347の図3参照)を含んだものが好ましい。
【0043】
親和性タグ配列としては、抗原抗体反応など、タンパク質を検出できるいかなる手段を用いるための配列であればよく、制限はない。好ましくは、抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag−tag配列やHis−tag配列である。
【0044】
ORF領域については、DNAおよび/またはRNAからなるいかなる配列でもよい。遺伝子配列、エキソン配列、イントロン配列、ランダム配列、または、いかなる自然界の配列、人為的配列が可能であり、配列の制限はない。また、コード分子の5’UTRをSP6+O29とし、3’末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+An(n=8)とすることで、各長さは、5’UTRで約60bp、3’末端領域で約32bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として組み込める長さである。このため、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、5’UTRと3’末端領域をもったコード分子を簡単に作成できる。コード分子において、翻訳はORF領域を超えてされてもよい。すなわち、ORF領域の末端に終止コドンがなくてもよい。
【0045】
この態様におけるコード分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列を含む3’末端領域を含む核酸である。
【0046】
遺伝子型分子は、上記コード分子を、必要により、タンパク質をコードする領域の塩基配列が翻訳され得るような形態に変換した後(例えば転写した後)、コード分子の3’末端と、スペーサー分子のドナー領域を、通常のリガーゼ反応により結合させることにより製造できる。反応条件としては、通常、4〜25℃で4〜48時間の条件が挙げられ、PEG領域を含むスペーサー分子のPEG領域内のポリエチレングリコールと同じ分子量のポリエチレングリコールを反応系に添加する場合には、15℃で0.5〜4時間に短縮することも可能である。
【0047】
スペーサー分子とコード分子の組み合わせはライゲーション効率に重要な効果をもたらす。アクセプターにあたるコード部の3’末端領域において、少なくとも2残基以上、好ましくは3残基以上、さらに好ましくは6〜8残基以上のDNAおよび/またはRNAのポリA配列があること、さらに、5’UTRの翻訳エンハンサーとしては、オメガ配列の部分配列(O29)が好ましく、スペーサー部のドナー領域としては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)または2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。このことによって、RNAリガーゼを用いることでDNAリガーゼのもつ問題点を回避し、かつ効率を60〜80%に保つことができる。
【0048】
(a)転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列を含む3’末端領域を含むRNAであるコード分子の3’末端と、(b)上記スペーサー分子のドナー領域であってRNAからなるものとを、スペーサー分子内のPEG領域を構成するポリエチレングリコールと同じ分子量をもつ遊離のポリエチレングリコールの存在下で、RNAリガーゼにより結合させることが好ましい。
【0049】
ライゲーション反応時に、PEG領域を含むスペーサー部のPEG領域と同じ分子量のポリエチレングリコールを添加することによって、スペーサー部のポリエチレングリコールの分子量によらずライゲーション効率が80〜90%以上に向上し、反応後の分離工程も省略することができる。
【0050】
この態様の対応付け分子は、上記の遺伝子型分子を無細胞翻訳系で翻訳することにより、ペプチド転移反応で、遺伝子型分子内のORF領域によりコードされたタンパク質である表現型分子と連結することができる。無細胞翻訳系は、好ましくは、小麦胚芽又はウサギ網状赤血球のものである。翻訳の条件は通常に採用される条件でよい。例えば、25〜37℃で15〜240分の条件が挙げられる。また、この態様の対応付け分子の核酸部分は、翻訳後に逆転写によりRNAとDNAとのハイブリッドとすることができる。
【0051】
<1−2>リアルタイムPCR
リアルタイムPCRによる定量は、対応付け分子の核酸部分が定量できるようにプライマー(および必要によりプローブ)が設計され、かつ反応系が選択される他は、通常のリアルタイムPCRによる定量と同様にして行うことができる。リアルタイムPCRでは、増幅産物が特異的に蛍光標識される系で、蛍光強度を検出する装置を備えた温度サイクラー装置によりPCR反応が行われ、従って、反応液中の増幅産物の量をサンプリングをすることなく測定できる。そして、その測定結果から、試料中に存在する目的配列の量(初期鋳型量)を算出できる。
【0052】
増幅産物を特異的に蛍光標識する方法としては、蛍光標識したプローブを用いる方法、二本鎖DNAに特異的に結合する試薬を用いる方法等がある。前者のプローブとしてはTaqMan(商標)プローブ等が知られている。また、後者の試薬としては、SYBR(商標)グリーン等が知られている。
【0053】
プライマー(および必要によりプローブ)は、核酸部分の配列に基づいて設定される。cDNAライブラリー等を対象にする場合には、核酸の一部(例えば5’末端等)にこれらに対応する配列を連結して用いることが好ましい。
【0054】
分子進化実験等において、タンパク質をコードする領域内にほとんど変異がない部分がある場合や、該領域内の一部分に変異があるものは検出・測定対象としない場合などには、該部分に基づいてプライマー(および必要によりプローブ)を設定してもよい。
【0055】
リアルタイムPCRのシステムは市販のものが使用でき、反応液の組成や反応の条件は、システムに添付の指示書に従って選択することができる。核酸がRNAの場合には、RT−PCR用の反応系を使用すればよい。プライマーおよびプローブの具体的配列もシステムに添付のソフトウェア等を利用して選択することができる。
【0056】
本発明作成方法によれば、対応付け分子の核酸部分(特に試験管内ウイルス法ではmRNA部分)を増幅して定量できるため、目的のタンパク質が極めて微量であってもクロマトグラムを作成できる。従って、リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合にもクロマトグラムを作成することが可能となる。
【0057】
<2>本発明作成方法により作成されたクロマトグラムを使用する方法
リガンドと相互作用するタンパク質をクロマトグラムを作成して検出する方法、タンパク質とリガンドとの相互作用をクロマトグラムを作成して測定する方法等、クロマトグラムを使用する方法において、本発明作成方法によりクロマトグラムを作成することができる。
【0058】
従って、本発明は、リガンドと相互作用するタンパク質を検出する方法であって、試料のタンパク質について本発明作成方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてリガンドと相互作用するタンパク質を検出することを含むを特徴とする方法、および、タンパク質とリガンドとの相互作用を測定する方法であって、測定対象のタンパク質について本発明作成方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてタンパク質とリガンドとの相互作用を測定することを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0059】
クロマトグラムに基づくリガンドと相互作用するタンパク質の検出は、通常の方法により行うことができ、例えば、クロマトグラムによりリガンドに結合したタンパク質の有無を確認することにより行うことができる。また、クロマトグラムに基づくタンパク質とリガンドとの相互作用の測定は、通常の方法により行うことができ、例えば、クロマトグラムから、担体へ結合した量と結合しなかった量の比を求めたり、クロマトグラフィーにおける溶出をグラディエント条件で行い、クロマトグラムにおける溶出位置の変化を確認したりすることにより相互作用を評価することができる。
【0060】
【実施例】
以下、具体的に本発明の実施例を記述するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。
【0061】
【実施例1】FLAG配列と抗FLAG抗体の相互作用の測定
(1)試験管内ウイルス(in vitro virus)ライブラリーの作製
DNAライブラリーとして、ヒトエストロゲン受容体リガンド結合ドメイン由来の人工選択的スプライシングDNAライブラリー(Tsuji et al., (2001) Nucleic Acids Res. 29, e97)を用いた。このDNAライブラリーに含まれる遺伝子がコードするタンパク質はN末端にFLAGタグ、C末端にヒスチジンタグをもつ。DNAライブラリーをRiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて転写し、RNAライブラリーに変換した。反応液(100μl)の組成は、10μgのDNAライブラリー、逆転写酵素添付の反応緩衝液、10μlのSP6 Enzyme Mix、5 mMの基質(ATP、UTP、CTP)、400μMのGTP、および、2 mMのm7G(5’)ppp(5’)G capアナログ(Invitrogen社製)であった。反応は37℃で3時間行なった。鋳型DNAをDNaseI(Promega社製)で分解した後、フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈澱によりRNAライブラリーを精製した。RNAとスペーサーピューロマイシン(p(dCp)2T(Fl)pPEG(2000)p(dCp)2Puro(記号はWO 02/48347に定義されたとおりである))は、T4 RNAリガーゼ(宝酒造製)を用い、WO 02/48347の実施例1に記載の方法に従い連結した。連結反応は15℃で12時間行なった。ライゲーション産物をRNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。方法はキットに添付のマニュアルに従った。精製されたライゲーション産物を無細胞翻訳系に加えて翻訳を行い、in vitro virusライブラリーを構築した。無細胞翻訳反応液の組成は10μlの小麦胚芽抽出液(Promega社製)、80μMのアミノ酸混合液、50 mMの酢酸カリウム、10ユニットのRNA分解酵素阻害剤(Invitrogen)、および、2 pmolのライゲーション産物であった。反応は25℃で40分行なった。
【0062】
(2)In vitro virusライブラリーのHis−tagによる前精製と逆転写反応
無細胞翻訳反応液には、タンパク質を結合していない未反応のmRNAが混在する。反応液からタンパク質を結合したmRNA、つまりin vitro virus分子を精製する目的で、His−tagによる精製を行なった。無細胞翻訳液に380μlの結合用緩衝液(50 mMリン酸(pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/6 M塩酸グアニジン)と100μl分のNi−NTA Magnetic Agarose Beads(QIAGEN社製)を加え、室温で80分撹拌した。続いて、400μlの洗浄用緩衝液(50 mMリン酸 (pH 6.3)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/8 M尿素)を用い、バッチ法により4回洗浄した。洗浄後400μlのリフォールディング用緩衝液(50 mMリン酸 (pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール)中で、磁石により固定されたニッケル結合ビーズ上でin vitro virusのタンパク質部分の巻き戻しを行なった。逆転写反応を行ない、in vitro virusのmRNA部分をDNAとのハイブリッドとした。逆転写反応液(60μl)の組成は、500μMのdNTP、0.6 pMのリバースプライマー(5’−TTTTTTGTGATGGTGATGGTGATGGTGATG−3’(配列番号1))、10 mMのDTT、600ユニットのsuper script II逆転写酵素およびキット添付の反応緩衝液(Invitrogen社製)であった。反応は37℃で30分行なった。逆転写反応後、リフォールディング用緩衝液で2回洗浄した後、400μlのイミダゾール溶出用緩衝液(50 mMリン酸 (pH7.0)/500 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/250 mMイミダゾール)でin vitro virus分子を溶出し回収した。Micro Bio−Spin Columns P−30 Tri RNase−Free(BIO−RAD社製)を用いたゲルろ過スピンカラムにより、イミダゾールを除き、溶液(500μl)の組成を最終的に50 mM Tris−HCl(pH 7.5)/150 mM NaCl/0.2% Tween 20とした。
【0063】
(3)抗FLAG抗体とリアルタイムPCRを用いたアフィニティクロマトグラフィー In vitro virus分子を含んだ溶液500μlと、抗FLAG抗体を結合したアガロース樹脂(ANTI−FLAG M2−アガロース、SIGMA社製)200μlを混合し、4℃で1時間撹拌したのち、懸濁液をカラムに注入した。500μlの洗浄用緩衝液(50 mM Tris−HCl (pH 7.4)/ 150 mM NaCl/ 0.2% Tween 20)で洗浄した後、1 mlの溶出液(1mlあたり100μgのFLAGペプチドを含む)で溶出した。流量は毎分20μlであった。各画分が40μlになるように分取した。
【0064】
各々の画分に存在するin vitro virus分子の分子数をリアルタイムPCR(LightCycler、ロッシュ社製)により測定した。各々の画分を1000倍希釈し、その2.5μlを鋳型として用いた。反応液はライトサイクラーファストスタートDNAマスターSYBRグリーンI(ロッシュ社製)を用い、添付のマニュアルに従い調製した。プライマーの塩基配列は、フォワードを5’−gga gtg tac aca ttt ctg tcc ag−3’(配列番号2)、リバースを5’−tgc ctt ggc cat cag gtg gat−3’(配列番号3)とした。プライマーの塩基配列は、エストロゲン受容体をコードする配列の一部であり、本実施例で用いたライブラリー中の大部分の配列はこれらの配列を含んでいるので、本実施例における相互作用の測定を検証する目的には十分なものである。反応条件は第1段階(1サイクル)94℃/10分、第2段階(40サイクル)94℃/10秒、60℃/10秒、72℃/10秒であった。検量線は濃度が100倍ずつ異なる標準物質を3種調製し作成した。標準物質の濃度は吸光度から推定した。なお、ヌクレオチドのモル吸光係数はA、T、G、Cの平均値である10950とした。測定結果から、縦軸に分子数、横軸に液量をとりクロマトグラムを作成した(図1)。FLAGペプチドによる溶出開始後に明確なピークが出現した。これは、in vitro virus分子のタンパク質部分のFLAG配列が、抗FLAG抗体と特異的な相互作用をしていたことを示している。以上の結果から、FLAG配列が少量であっても、抗FLAG抗体とFLAG配列の相互作用を、in vitro virus法とリアルタイムPCR法を用いたクロマトグラフ法により測定できることが判明した。
【0065】
【実施例2】His−tag配列とNi−NTA樹脂の相互作用の測定
(1) In vitro virusライブラリーの作製
実施例1と同様に行った。
【0066】
(2)In vitro virusライブラリーのヒスチジンタグによる前精製と逆転写反応実施例1と同様に行った。ただし、ゲルろ過スピンカラムによりイミダゾールを除去した後、溶液の組成を最終的に50 mMリン酸 (pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノールとした。
【0067】
(3)Ni−NTA樹脂とリアルタイムPCRを用いたアフィニティクロマトグラフィー In vitro virus分子を含んだ溶液500μlと、Ni−NTAアガロース(QIAGEN社製)200μlを混合し、4℃で1時間撹拌したのち、懸濁液をカラムに注入した。500μlの洗浄用緩衝液(50 mMリン酸 (pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール)で洗浄した後、1 mlのイミダゾール溶出用緩衝液(50 mMリン酸 (pH7.0)/500mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/250mMイミダゾール)で溶出した。流量は毎分20μlであった。各画分が40μlになるように分取した。
【0068】
各々の画分に存在するin vitro virus分子の分子数を実施例1と同様にしてリアルタイムPCR(LightCycler、ロッシュ社製)により測定した。測定結果から、縦軸に分子数、横軸に液量とりクロマトグラムを作成した(図2)。イミダゾールによる溶出開始後に明確なピークが出現した。これは、in vitro virus分子のタンパク質部分のHis−tag配列が、Ni−NTA樹脂と特異的な相互作用をしていたことを示している。以上の結果から、His−tag配列が少量であっても、His−tag配列とNi−NTA樹脂の相互作用が、in vitro virus法とリアルタイムPCR法を用いたクロマトグラフ法により測定できることが判明した。
【0069】
【発明の効果】
リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合にもクロマトグラムを作成することが可能となる。作成されたクロマトグラムに基づいて上述のような検出や測定を行うことが可能になる。
【0070】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】FLAG配列と抗FLAG抗体の相互作用を測定したクロマトグラム。矢印はフラッグペプチドを含む溶出用緩衝液を加えた時の液量を示す。
【図2】His−tag配列とNi−NTA樹脂の相互作用を測定したクロマトグラム。矢印はイミダゾールを含む溶出用緩衝液を加えた時の液量を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質相互作用測定のためのクロマトグラム作成法およびそれにより作成されたクロマトグラムを利用したタンパク質相互作用の測定法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のゲノムプロジェクトにより、ヒトをはじめとする様々な生物種における遺伝子の塩基配列が解読されている。しかし、多くの遺伝子がコードするタンパク質の機能は未だに不明である。個々の遺伝子がコードするタンパク質の機能を解明する学問分野はゲノム機能解析と呼ばれる。ゲノム機能解析では、ゲノムDNAやcDNAライブラリーに含まれる多種類の遺伝子がコードするタンパク質の機能を、網羅的、並列的に解析し、より多くの情報をハイスループットに得ることが求められる。
【0003】
一方、所望の機能をもつタンパク質を人工的に構築する工学分野として、進化分子工学がある。進化分子工学ではダーウィン進化を利用する。機能を高めたいタンパク質をコードする遺伝子に様々な変異を導入し、それを基に変異タンパク質のライブラリーを構築する。このライブラリーの中から優れた機能をもつタンパク質を選択する。選択されたタンパク質の遺伝子を同定後、その遺伝子にさらに変異を導入し、再び変異タンパク質のライブラリーを構築する。この新しいライブラリーの中から、より優れた機能をもつタンパク質を選択する。このように変異導入と選択を繰返し、進化したタンパク質を得ることが可能である。
【0004】
核酸(遺伝子)とそれがコードするタンパク質とを連結した対応付け分子は、ゲノム機能解析と進化分子工学の両分野において強力なツールとなる。対応付け分子としては、STABLE法(特許文献1、非特許文献1)によるもの、試験管内ウイルス(in vitro virus)法(特許文献2、非特許文献2、特許文献3)によるものが知られている。
【0005】
例えば、in vitro virus法では、mRNAとそれがコードするタンパク質が、抗生物質であるピューロマイシンを介して共有結合で連結される。ゲノム機能解析の場合では、ゲノムDNA、cDNA、あるいはmRNAライブラリーからin vitro virusライブラリーが構築される。進化分子工学の場合では、変異遺伝子のライブラリーからin vitro virusライブラリーが構築される。これらのin vitro virusライブラリーとリガンドを結合した樹脂を混合し、バッチ法あるいはクロマトグラフ法などの精製法を用いて、リガンドに親和性をもつタンパク質を提示したin vitro virus分子を精製する。精製されたin vitro virus分子は情報タグであるmRNAをもつので、逆転写−PCRを行った後DNAシークエンシングを行うことにより、リガンドに親和性をもつタンパク質の遺伝子を迅速に同定できる(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
バッチ法やクロマトグラフ法による精製の過程は、ゲノム機能解析や進化分子工学にとって最も重要な過程の1つである。バッチ法による精製では、一度リガンドから解離した分子は洗浄液により体積的に希釈されるため、リガンドに再結合しにくい。そのため樹脂やリガンドに非特異的吸着した分子を短時間で効率的に除くことができる利点をもつが、リガンドに親和性を有する分子の回収率は低くなる。一方、クロマトグラフ法による精製では、リガンドに対して結合能をもつ分子はカラムに充填されたリガンドと可逆的な結合と解離を繰り返し行なうことができ、その間に非特異的吸着した分子を洗浄することが可能である。クロマトグラフ法では洗浄に時間を要するが、目的分子を比較的高い回収率で得ることができる。クロマトグラフ法では、カラムからの溶出液の、精製対象となる分子を含む画分を特定するため、その分子を標識する必要があり、標識には放射性同位体が一般に用いられている。
【0007】
クロマトグラフ法において作成されるクロマトグラムは、相互作用の解析に使用することができるので、精製対象となる分子の相互作用を測定するためだけでなく、既知のタンパク質とリガンドとの相互作用を測定するためにも作成され得る。
【0008】
【非特許文献1】
FEBS Lett., 457, 227 (1999)
【特許文献1】
特開2001−128690号公報
【特許文献2】
国際公開第WO 98/16636号パンフレット
【非特許文献2】
FEBS Lett., 414, 405 (1997)
【特許文献3】
国際公開第WO 02/48347号パンフレット
【特許文献4】
特表2002−513281号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ゲノム機能解析および進化分子工学のどちらの場合においても、リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定することは重要であると考えられる。
【0010】
従って、本発明の課題は、リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりするための、クロマトグラムの作成法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合、クロマトグラフ法による溶出画分に含まれるタンパク質は極めて微量になる。
【0012】
本発明者らは、従来、タンパク質遺伝子の同定に使用されていた対応付け分子を構成する核酸をタンパク質の定量タグとして利用してリアルタイムPCRにより検出することにより、目的のリガンドと相互作用するタンパク質がクロマトグラフ法による溶出画分に極めて微量にしか存在しない場合でも、目的のタンパク質を検出することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1) リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のアフィニティークロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法において、タンパク質を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成することを特徴とする前記方法。
【0014】
(2) リガンドと相互作用するタンパク質を検出する方法であって、試料のタンパク質について(1)の方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてリガンドと相互作用するタンパク質を検出することを含む前記方法。
【0015】
(3) タンパク質とリガンドとの相互作用を測定する方法であって、測定対象のタンパク質について(1)の方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてタンパク質とリガンドとの相互作用を測定することを含む前記方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
<1>本発明作成法
本発明作成法は、リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のアフィニティークロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法であって、タンパク質を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成することを特徴とする。
【0017】
本発明作成法は、目的タンパク質(検出・測定の対象となるタンパク質)を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中の目的タンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定することの他は、通常のアフィニティークロマトグラフィーによるクロマトグラムの作成法と同様である。リガンドとは、機能タンパク質が特異的に結合する物質である。例えば、核酸のプロモーター配列、タンパク質サブユニット、酵素阻害剤、ホルモン、神経伝達物質等の種々の薬剤等が挙げられる。リガンドの担体への結合は、アフィニティークロマトグラフィーの担体の作成に関して通常の方法によって行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーは、通常には、試料中の目的タンパク質を、親和性による結合が生じる条件で、担体に結合させたリガンドに接触させ、担体を洗浄して夾雑物を除去した後、リガンドに結合した目的タンパク質を溶出(脱離)させることによって行われる。ここで、洗浄および溶出は、通常、カラムに担体を充填して洗浄液および溶出液をカラムに流すことによって行われる。担体のカラムへの充填は、目的タンパク質をリガンドに接触させる前でもよいし、タンパク質をリガンドに接触させた後でもよい。前者の場合には、担体を充填したカラムに、親和性による結合が生じる条件で試料をアプライする。後者の場合は、試料と担体とが、親和性による結合が生じる条件で混合し、混合物をカラムに充填する。洗浄液および溶出液を流すことによりカラムから流出する液を分取し、各画分に含まれる目的タンパク質を定量することによりクロマトグラムが作成される。クロマトグラムは、通常、縦軸にタンパク質量(相対量であってもよい)、横軸に溶出液量(溶出液量が時間に依存する場合には溶出時間であってもよい)をとって作成される。
以下、対応付け分子およびリアルタイムPCRについて説明する。
【0018】
<1−1>対応付け分子
対応付け分子は、タンパク質と、それをコードする核酸とが連結された分子である。
【0019】
核酸は、対応付け分子の態様に応じて一本鎖および二本鎖のいずれでもよく、また、DNA、RNAおよびDNAとRNAとのハイブリッドのいずれでもよい。タンパク質は、対応付け分子の態様に応じて融合タンパク質とされていてもよい。
【0020】
タンパク質と核酸とが連結されているとは、タンパク質と核酸とが、その他の分子を介して連結されていることも包含し、また、それらの相互間の結合は、共有結合、生体分子が持つ親和力による結合等の非共有結合のいずれでもよい。生体分子が持つ親和力による結合の例としては、抗原と抗体との結合、ホルモンと受容体との結合、DNAとDNA結合蛋白質との結合等が挙げられる。
【0021】
対応付け分子の例としては、STABLE法(特許文献1、非特許文献1)によるもの、試験管内ウイルス(in vitro virus)法(特許文献2、非特許文献2、特許文献3)によるものが挙げられる。以下、具体例を説明する。
【0022】
(a)STABLE法による対応付け分子
STABLE法による対応付け分子は、機能解析、機能改変等の対象となるタンパク質とアダプタータンパク質との融合タンパク質と、該融合タンパク質をコードし、かつ該アダプタータンパク質のリガンドが結合したDNAとが、該アダプタータンパク質と該リガンドとの結合を介して連結されることによって構成されている。
【0023】
被標的タンパク質は、天然タンパク質又はその変異体、および人工タンパク質又はその変異体の何れでもよい。天然タンパク質としては、種々の生物の器官、組織又は細胞に由来するcDNAライブラリーから転写翻訳される多様性を有するタンパク質のライブラリーを含むものである。人工タンパク質としては、天然タンパク質の全てもしくは部分配列を組み合わせた配列、又はランダムなアミノ酸配列を含むものである。
【0024】
アダプタータンパク質とは、ある分子(アダプター結合リガンド)と特異的に結合する能力を有するタンパク質を意味し、これらの中には、結合タンパク質、受容体を構成する受容体タンパク質、抗体等も含まれる。アダプター結合リガンドとは、アダプタータンパク質に特異的に結合する分子を意味する。アダプタータンパク質/アダプター結合リガンドの組み合わせとしては、例えば、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合蛋白質/ビオチン、マルトース結合蛋白質/マルトース、Gタンパク質/グアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合タンパク質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質/ATP、あるいはエストラジオール受容体タンパク質/エストラジオール等の各種受容体タンパク質/そのリガンド等が挙げられる。
【0025】
これらの中で、アダプタータンパク質/アダプター結合リガンドの組み合わせとしては、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質/ビオチン、マルトース結合タンパク質/マルトース、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、抗体/抗原分子(エピトープ)等が好ましく、特に、ストレプトアビジン/ビオチンが最も好ましい。
【0026】
この態様で用いる融合タンパク質をコードするDNAにおいては、通常、その一方の末端にアダプター結合リガンドが結合している。該DNAの末端に結合したアダプター結合リガンドと該DNAにより発現される融合タンパク質中のアダプタータンパク質部分との結合を介して、融合タンパク質とDNAとが物理的に連結される。
【0027】
この態様の対応付け分子は、少なくとも転写翻訳開始領域、被標的タンパク質とアダプタータンパク質との融合タンパク質をコードする領域を有し、かつアダプター結合リガンドが結合したDNAを、無細胞転写翻訳系で発現させてタンパク質を合成することにより製造できる。好ましくは、少なくとも転写翻訳開始領域、被標的タンパク質とアダプタータンパク質との融合タンパク質をコードする領域を有し、かつアダプター結合リガンドが結合したDNAのライブラリーを、該DNAのライブラリー内のDNAが、一種類もしくは1分子ずつ含まれるように隔離した無細胞転写翻訳系で発現させてタンパク質を合成することにより製造される。
【0028】
STABLE法による対応付け分子は、アダプタータンパク質とそのリガンドとの結合が、本発明作成方法におけるクロマトグラフィーの条件で解離しない場合に使用できる。
【0029】
(b)試験管内ウイルス法による対応付け分子
試験管内ウイルス法による対応付け分子は、機能解析、機能改変等の対象となるタンパク質を含む表現型分子と、該タンパク質をコードする核酸を含む遺伝子型分子とが結合してなる。遺伝子型分子は、タンパク質をコードする領域を、その領域の塩基配列が翻訳され得るような形態で有するコード分子と、スペーサー部とが結合してなる。説明の便宜のため、対応付け分子における、表現形分子に由来する部分、スペーサー分子に由来する部分、および、コード分子に由来する部分をそれぞれ、デコード部、スペーサー部およびコード部と呼ぶ。また、遺伝子型分子における、スペーサー分子に由来する部分、および、コード分子に由来する部分をそれぞれ、スペーサー部およびコード部と呼ぶ。
【0030】
この態様におけるスペーサー分子は、核酸の3’末端に結合できるドナー領域と、ドナー領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域と、PEG領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを含む。PEG領域はなくてもよい。
【0031】
核酸の3’末端に結合できるドナー領域は、通常、1以上のヌクレオチドからなる。ヌクレオチドの数は、通常には1〜15、好ましくは1〜2である。ヌクレオチドはリボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもよい。
【0032】
ドナー領域の5’末端の配列は、ライゲーション効率を左右する。コード部とスペーサー部をライゲーションさせるためには、少なくとも1残基以上を含むことが必要であり、ポリA配列をもつアクセプターに対しては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)または2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。塩基の種類としては、C>U又はT>G>Aの順で好ましい。
【0033】
PEG領域はポリエチレングリコールを主成分とするものである。ここで、主成分とするとは、PEG領域に含まれるヌクレオチドの数の合計が20塩基以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が400以上であることを意味する。好ましくは、ヌクレオチドの合計の数が10塩基以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が2000以上であることを意味する。
【0034】
PEG領域のポリエチレングリコールの平均分子量は、通常には、400〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。ここで、ポリエチレングリコールの分子量が約400より低いと、このスペーサー分子に由来するスペーサー部を含む遺伝子型分子を対応付け翻訳したときに、対応付け翻訳の後処理が必要となることがあるが(Liu, R., Barrick, E., Szostak, J.W., Roberts, R.W. (2000) Methods in Enzymology, vol. 318, 268−293)、分子量1000以上、より好ましくは2000以上のPEGを用いると、対応付け翻訳のみで高効率の対応付けができるため、翻訳の後処理が必要なくなる。また、ポリエチレングリコールの分子量が増えると、遺伝子型分子の安定性が増す傾向があり、特に分子量1000以上で良好であり、分子量400以下ではDNAスペーサーと性質がそれほどかわらず不安定となることがある。
【0035】
ペプチドアクセプター領域は、ペプチドのC末端に結合できるものであれば特に限定されないが、例えば、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3’−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside, PANS−アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、バリンのPANS−Val、アラニンのPANS−Ala、その他、全アミノ酸に対応するPANS−全アミノ酸が利用できる。また、化学結合として3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形成されたアミド結合でつながった3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3’−Aminoacyladenosine aminonucleoside, AANS−アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、バリンのAANS−Val、アラニンのAANS−Ala、その他、全アミノ酸に対応するAANS−全アミノ酸が利用できる。また、ヌクレオシドまたはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。その他、ヌクレオシドまたはヌクレオシドに類似した化学構造骨格を有する物質と、アミノ酸またはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質を化学的に結合可能な結合様式のものなら全て利用することができる。
【0036】
ペプチドアクセプター領域は、好ましくは、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなることが好ましい。ここで、誘導体とはタンパク質翻訳系においてペプチドのC末端に結合できる誘導体を意味する。ピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシン構造を完全に有しているものに限られず、ピューロマイシン構造の一部が欠落しているものも包含する。ピューロマイシン誘導体の具体例としては、PANS−アミノ酸、AANS−アミノ酸などが挙げられる。
【0037】
ペプチドアクセプター領域は、ピューロマイシンのみの構成でもかまわないが、5’側に1残基以上のDNAおよび/またはRNAからなる塩基配列を持つことが好ましい。配列としては、dC−Puromycin, rC−Puromycinなど、より好ましくはdCdC−Puromycin, rCrC−Puromycin, rCdC−Puromycin, dCrC−Puromycinなどの配列で、アミノアシル−tRNAの3’末端を模倣したCCA配列(Philipps, G.R. (1969) Nature 223, 374−377)が適当である。塩基の種類としては、C>U又はT>G>Aの順で好ましい。
【0038】
スペーサー分子は、ドナー領域とPEG領域との間に、少なくとも1つの機能付与ユニットを含むことが好ましい。機能付与ユニットは、好ましくは、少なくとも1残基のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの塩基に機能修飾を施したものである。例えば、機能修飾物質として、蛍光物質、ビオチン、またはHis−tagなど各種分離タグなどを導入したものが可能である。
【0039】
この態様におけるコード分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合したポリA配列を持ち、かつポリA配列の5’上流に親和性タグ配列を含む核酸である。
【0040】
コード分子は、DNAでもRNAでもよく、RNAの場合、5’末端にCap構造があってもなくても良い。また、コード分子は任意のベクターやプラスミドに組み込まれたものとしてもよい。
【0041】
3’末端領域は、親和性タグ配列とその下流にポリA配列を含む。スペーサー分子とコード分子とのライゲーション効率に影響を与える要素としては3’末端領域のポリA配列が重要であり、ポリA配列は、少なくとも2残基以上のdAおよび/またはrAの混合または単一のポリA連続鎖であり、好ましくは、3残基以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8残基以上のポリA連続鎖である。
【0042】
コード分子の翻訳効率に影響する要素としては、転写プロモーターと翻訳エンハンサーからなる5’UTR、および、ポリA配列を含む3’末端領域の組み合わせがある。3’末端領域のポリA配列の効果は通常には10残基以下で発揮される。5’UTRの転写プロモーターはT7/T3またはSP6などが利用でき、特に制限はない。好ましくはSP6であり、特に、翻訳のエンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の一部を含む配列を利用する場合はSP6を用いることが特に好ましい。翻訳エンハンサーは好ましくはオメガ配列の一部であり、オメガ配列の一部としては、TMVのオメガ配列の一部(O29; Gallie D.R., Walbot V. (1992) Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631−4638、及び、WO 02/48347の図3参照)を含んだものが好ましい。
【0043】
親和性タグ配列としては、抗原抗体反応など、タンパク質を検出できるいかなる手段を用いるための配列であればよく、制限はない。好ましくは、抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag−tag配列やHis−tag配列である。
【0044】
ORF領域については、DNAおよび/またはRNAからなるいかなる配列でもよい。遺伝子配列、エキソン配列、イントロン配列、ランダム配列、または、いかなる自然界の配列、人為的配列が可能であり、配列の制限はない。また、コード分子の5’UTRをSP6+O29とし、3’末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+An(n=8)とすることで、各長さは、5’UTRで約60bp、3’末端領域で約32bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として組み込める長さである。このため、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、5’UTRと3’末端領域をもったコード分子を簡単に作成できる。コード分子において、翻訳はORF領域を超えてされてもよい。すなわち、ORF領域の末端に終止コドンがなくてもよい。
【0045】
この態様におけるコード分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列を含む3’末端領域を含む核酸である。
【0046】
遺伝子型分子は、上記コード分子を、必要により、タンパク質をコードする領域の塩基配列が翻訳され得るような形態に変換した後(例えば転写した後)、コード分子の3’末端と、スペーサー分子のドナー領域を、通常のリガーゼ反応により結合させることにより製造できる。反応条件としては、通常、4〜25℃で4〜48時間の条件が挙げられ、PEG領域を含むスペーサー分子のPEG領域内のポリエチレングリコールと同じ分子量のポリエチレングリコールを反応系に添加する場合には、15℃で0.5〜4時間に短縮することも可能である。
【0047】
スペーサー分子とコード分子の組み合わせはライゲーション効率に重要な効果をもたらす。アクセプターにあたるコード部の3’末端領域において、少なくとも2残基以上、好ましくは3残基以上、さらに好ましくは6〜8残基以上のDNAおよび/またはRNAのポリA配列があること、さらに、5’UTRの翻訳エンハンサーとしては、オメガ配列の部分配列(O29)が好ましく、スペーサー部のドナー領域としては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)または2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。このことによって、RNAリガーゼを用いることでDNAリガーゼのもつ問題点を回避し、かつ効率を60〜80%に保つことができる。
【0048】
(a)転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列を含む3’末端領域を含むRNAであるコード分子の3’末端と、(b)上記スペーサー分子のドナー領域であってRNAからなるものとを、スペーサー分子内のPEG領域を構成するポリエチレングリコールと同じ分子量をもつ遊離のポリエチレングリコールの存在下で、RNAリガーゼにより結合させることが好ましい。
【0049】
ライゲーション反応時に、PEG領域を含むスペーサー部のPEG領域と同じ分子量のポリエチレングリコールを添加することによって、スペーサー部のポリエチレングリコールの分子量によらずライゲーション効率が80〜90%以上に向上し、反応後の分離工程も省略することができる。
【0050】
この態様の対応付け分子は、上記の遺伝子型分子を無細胞翻訳系で翻訳することにより、ペプチド転移反応で、遺伝子型分子内のORF領域によりコードされたタンパク質である表現型分子と連結することができる。無細胞翻訳系は、好ましくは、小麦胚芽又はウサギ網状赤血球のものである。翻訳の条件は通常に採用される条件でよい。例えば、25〜37℃で15〜240分の条件が挙げられる。また、この態様の対応付け分子の核酸部分は、翻訳後に逆転写によりRNAとDNAとのハイブリッドとすることができる。
【0051】
<1−2>リアルタイムPCR
リアルタイムPCRによる定量は、対応付け分子の核酸部分が定量できるようにプライマー(および必要によりプローブ)が設計され、かつ反応系が選択される他は、通常のリアルタイムPCRによる定量と同様にして行うことができる。リアルタイムPCRでは、増幅産物が特異的に蛍光標識される系で、蛍光強度を検出する装置を備えた温度サイクラー装置によりPCR反応が行われ、従って、反応液中の増幅産物の量をサンプリングをすることなく測定できる。そして、その測定結果から、試料中に存在する目的配列の量(初期鋳型量)を算出できる。
【0052】
増幅産物を特異的に蛍光標識する方法としては、蛍光標識したプローブを用いる方法、二本鎖DNAに特異的に結合する試薬を用いる方法等がある。前者のプローブとしてはTaqMan(商標)プローブ等が知られている。また、後者の試薬としては、SYBR(商標)グリーン等が知られている。
【0053】
プライマー(および必要によりプローブ)は、核酸部分の配列に基づいて設定される。cDNAライブラリー等を対象にする場合には、核酸の一部(例えば5’末端等)にこれらに対応する配列を連結して用いることが好ましい。
【0054】
分子進化実験等において、タンパク質をコードする領域内にほとんど変異がない部分がある場合や、該領域内の一部分に変異があるものは検出・測定対象としない場合などには、該部分に基づいてプライマー(および必要によりプローブ)を設定してもよい。
【0055】
リアルタイムPCRのシステムは市販のものが使用でき、反応液の組成や反応の条件は、システムに添付の指示書に従って選択することができる。核酸がRNAの場合には、RT−PCR用の反応系を使用すればよい。プライマーおよびプローブの具体的配列もシステムに添付のソフトウェア等を利用して選択することができる。
【0056】
本発明作成方法によれば、対応付け分子の核酸部分(特に試験管内ウイルス法ではmRNA部分)を増幅して定量できるため、目的のタンパク質が極めて微量であってもクロマトグラムを作成できる。従って、リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合にもクロマトグラムを作成することが可能となる。
【0057】
<2>本発明作成方法により作成されたクロマトグラムを使用する方法
リガンドと相互作用するタンパク質をクロマトグラムを作成して検出する方法、タンパク質とリガンドとの相互作用をクロマトグラムを作成して測定する方法等、クロマトグラムを使用する方法において、本発明作成方法によりクロマトグラムを作成することができる。
【0058】
従って、本発明は、リガンドと相互作用するタンパク質を検出する方法であって、試料のタンパク質について本発明作成方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてリガンドと相互作用するタンパク質を検出することを含むを特徴とする方法、および、タンパク質とリガンドとの相互作用を測定する方法であって、測定対象のタンパク質について本発明作成方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてタンパク質とリガンドとの相互作用を測定することを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0059】
クロマトグラムに基づくリガンドと相互作用するタンパク質の検出は、通常の方法により行うことができ、例えば、クロマトグラムによりリガンドに結合したタンパク質の有無を確認することにより行うことができる。また、クロマトグラムに基づくタンパク質とリガンドとの相互作用の測定は、通常の方法により行うことができ、例えば、クロマトグラムから、担体へ結合した量と結合しなかった量の比を求めたり、クロマトグラフィーにおける溶出をグラディエント条件で行い、クロマトグラムにおける溶出位置の変化を確認したりすることにより相互作用を評価することができる。
【0060】
【実施例】
以下、具体的に本発明の実施例を記述するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。
【0061】
【実施例1】FLAG配列と抗FLAG抗体の相互作用の測定
(1)試験管内ウイルス(in vitro virus)ライブラリーの作製
DNAライブラリーとして、ヒトエストロゲン受容体リガンド結合ドメイン由来の人工選択的スプライシングDNAライブラリー(Tsuji et al., (2001) Nucleic Acids Res. 29, e97)を用いた。このDNAライブラリーに含まれる遺伝子がコードするタンパク質はN末端にFLAGタグ、C末端にヒスチジンタグをもつ。DNAライブラリーをRiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて転写し、RNAライブラリーに変換した。反応液(100μl)の組成は、10μgのDNAライブラリー、逆転写酵素添付の反応緩衝液、10μlのSP6 Enzyme Mix、5 mMの基質(ATP、UTP、CTP)、400μMのGTP、および、2 mMのm7G(5’)ppp(5’)G capアナログ(Invitrogen社製)であった。反応は37℃で3時間行なった。鋳型DNAをDNaseI(Promega社製)で分解した後、フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈澱によりRNAライブラリーを精製した。RNAとスペーサーピューロマイシン(p(dCp)2T(Fl)pPEG(2000)p(dCp)2Puro(記号はWO 02/48347に定義されたとおりである))は、T4 RNAリガーゼ(宝酒造製)を用い、WO 02/48347の実施例1に記載の方法に従い連結した。連結反応は15℃で12時間行なった。ライゲーション産物をRNeasy Mini Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。方法はキットに添付のマニュアルに従った。精製されたライゲーション産物を無細胞翻訳系に加えて翻訳を行い、in vitro virusライブラリーを構築した。無細胞翻訳反応液の組成は10μlの小麦胚芽抽出液(Promega社製)、80μMのアミノ酸混合液、50 mMの酢酸カリウム、10ユニットのRNA分解酵素阻害剤(Invitrogen)、および、2 pmolのライゲーション産物であった。反応は25℃で40分行なった。
【0062】
(2)In vitro virusライブラリーのHis−tagによる前精製と逆転写反応
無細胞翻訳反応液には、タンパク質を結合していない未反応のmRNAが混在する。反応液からタンパク質を結合したmRNA、つまりin vitro virus分子を精製する目的で、His−tagによる精製を行なった。無細胞翻訳液に380μlの結合用緩衝液(50 mMリン酸(pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/6 M塩酸グアニジン)と100μl分のNi−NTA Magnetic Agarose Beads(QIAGEN社製)を加え、室温で80分撹拌した。続いて、400μlの洗浄用緩衝液(50 mMリン酸 (pH 6.3)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/8 M尿素)を用い、バッチ法により4回洗浄した。洗浄後400μlのリフォールディング用緩衝液(50 mMリン酸 (pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール)中で、磁石により固定されたニッケル結合ビーズ上でin vitro virusのタンパク質部分の巻き戻しを行なった。逆転写反応を行ない、in vitro virusのmRNA部分をDNAとのハイブリッドとした。逆転写反応液(60μl)の組成は、500μMのdNTP、0.6 pMのリバースプライマー(5’−TTTTTTGTGATGGTGATGGTGATGGTGATG−3’(配列番号1))、10 mMのDTT、600ユニットのsuper script II逆転写酵素およびキット添付の反応緩衝液(Invitrogen社製)であった。反応は37℃で30分行なった。逆転写反応後、リフォールディング用緩衝液で2回洗浄した後、400μlのイミダゾール溶出用緩衝液(50 mMリン酸 (pH7.0)/500 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/250 mMイミダゾール)でin vitro virus分子を溶出し回収した。Micro Bio−Spin Columns P−30 Tri RNase−Free(BIO−RAD社製)を用いたゲルろ過スピンカラムにより、イミダゾールを除き、溶液(500μl)の組成を最終的に50 mM Tris−HCl(pH 7.5)/150 mM NaCl/0.2% Tween 20とした。
【0063】
(3)抗FLAG抗体とリアルタイムPCRを用いたアフィニティクロマトグラフィー In vitro virus分子を含んだ溶液500μlと、抗FLAG抗体を結合したアガロース樹脂(ANTI−FLAG M2−アガロース、SIGMA社製)200μlを混合し、4℃で1時間撹拌したのち、懸濁液をカラムに注入した。500μlの洗浄用緩衝液(50 mM Tris−HCl (pH 7.4)/ 150 mM NaCl/ 0.2% Tween 20)で洗浄した後、1 mlの溶出液(1mlあたり100μgのFLAGペプチドを含む)で溶出した。流量は毎分20μlであった。各画分が40μlになるように分取した。
【0064】
各々の画分に存在するin vitro virus分子の分子数をリアルタイムPCR(LightCycler、ロッシュ社製)により測定した。各々の画分を1000倍希釈し、その2.5μlを鋳型として用いた。反応液はライトサイクラーファストスタートDNAマスターSYBRグリーンI(ロッシュ社製)を用い、添付のマニュアルに従い調製した。プライマーの塩基配列は、フォワードを5’−gga gtg tac aca ttt ctg tcc ag−3’(配列番号2)、リバースを5’−tgc ctt ggc cat cag gtg gat−3’(配列番号3)とした。プライマーの塩基配列は、エストロゲン受容体をコードする配列の一部であり、本実施例で用いたライブラリー中の大部分の配列はこれらの配列を含んでいるので、本実施例における相互作用の測定を検証する目的には十分なものである。反応条件は第1段階(1サイクル)94℃/10分、第2段階(40サイクル)94℃/10秒、60℃/10秒、72℃/10秒であった。検量線は濃度が100倍ずつ異なる標準物質を3種調製し作成した。標準物質の濃度は吸光度から推定した。なお、ヌクレオチドのモル吸光係数はA、T、G、Cの平均値である10950とした。測定結果から、縦軸に分子数、横軸に液量をとりクロマトグラムを作成した(図1)。FLAGペプチドによる溶出開始後に明確なピークが出現した。これは、in vitro virus分子のタンパク質部分のFLAG配列が、抗FLAG抗体と特異的な相互作用をしていたことを示している。以上の結果から、FLAG配列が少量であっても、抗FLAG抗体とFLAG配列の相互作用を、in vitro virus法とリアルタイムPCR法を用いたクロマトグラフ法により測定できることが判明した。
【0065】
【実施例2】His−tag配列とNi−NTA樹脂の相互作用の測定
(1) In vitro virusライブラリーの作製
実施例1と同様に行った。
【0066】
(2)In vitro virusライブラリーのヒスチジンタグによる前精製と逆転写反応実施例1と同様に行った。ただし、ゲルろ過スピンカラムによりイミダゾールを除去した後、溶液の組成を最終的に50 mMリン酸 (pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノールとした。
【0067】
(3)Ni−NTA樹脂とリアルタイムPCRを用いたアフィニティクロマトグラフィー In vitro virus分子を含んだ溶液500μlと、Ni−NTAアガロース(QIAGEN社製)200μlを混合し、4℃で1時間撹拌したのち、懸濁液をカラムに注入した。500μlの洗浄用緩衝液(50 mMリン酸 (pH8.0)/250 mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール)で洗浄した後、1 mlのイミダゾール溶出用緩衝液(50 mMリン酸 (pH7.0)/500mM NaCl/0.2% Tween 20/0.1% β−メルカプトエタノール/250mMイミダゾール)で溶出した。流量は毎分20μlであった。各画分が40μlになるように分取した。
【0068】
各々の画分に存在するin vitro virus分子の分子数を実施例1と同様にしてリアルタイムPCR(LightCycler、ロッシュ社製)により測定した。測定結果から、縦軸に分子数、横軸に液量とりクロマトグラムを作成した(図2)。イミダゾールによる溶出開始後に明確なピークが出現した。これは、in vitro virus分子のタンパク質部分のHis−tag配列が、Ni−NTA樹脂と特異的な相互作用をしていたことを示している。以上の結果から、His−tag配列が少量であっても、His−tag配列とNi−NTA樹脂の相互作用が、in vitro virus法とリアルタイムPCR法を用いたクロマトグラフ法により測定できることが判明した。
【0069】
【発明の効果】
リガンドとの相互作用が比較的弱いタンパク質、また強く相互作用するタンパク質であってもライブラリー中にわずかにしか存在しないタンパク質を検出したり、それらのタンパク質の、リガンドとの相互作用を測定したりする場合にもクロマトグラムを作成することが可能となる。作成されたクロマトグラムに基づいて上述のような検出や測定を行うことが可能になる。
【0070】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】FLAG配列と抗FLAG抗体の相互作用を測定したクロマトグラム。矢印はフラッグペプチドを含む溶出用緩衝液を加えた時の液量を示す。
【図2】His−tag配列とNi−NTA樹脂の相互作用を測定したクロマトグラム。矢印はイミダゾールを含む溶出用緩衝液を加えた時の液量を示す。
Claims (3)
- リガンドを結合した担体を用いてタンパク質のアフィニティークロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを作成する方法において、タンパク質を、それをコードする核酸と連結させた対応付け分子としてクロマトグラフィーを行い、クロマトグラフィーにおいて分取された画分中のタンパク質量を、前記核酸をリアルタイムPCR法により測定することにより測定してクロマトグラムを作成することを特徴とする前記方法。
- リガンドと相互作用するタンパク質を検出する方法であって、試料のタンパク質について請求項1に記載の方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてリガンドと相互作用するタンパク質を検出することを含む前記方法。
- タンパク質とリガンドとの相互作用を測定する方法であって、測定対象のタンパク質について請求項1に記載の方法によりクロマトグラムを作成し、作成されたクロマトグラムに基づいてタンパク質とリガンドとの相互作用を測定することを含む前記方法。
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