JP2004330892A - 車載用故障内容記憶装置 - Google Patents

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真仁 須藤
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Abstract

【課題】故障の診断が中断された場合においても、システム・オフ時の不具合の内容を記憶して、故障の検知を確実に行うために有効な車載用故障内容記憶装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載した装置の故障の診断中に前記車両がシステム・オフの状態となった場合、故障の兆候となる不具合が生じた時間および回数の少なくとも一方に関する情報を記憶するようにした車載用故障内容記憶装置。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車載用故障内容記憶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両に搭載した装置の動作の不具合を検知し、その検知された不具合によって故障の有無を診断して、故障を検知した場合には、その故障内容に関する情報を記録することが行われている。例えば、電動パワーステアリング装置の故障検知時に、故障内容に対応したコードを、電動パワーステアリング装置内のメモリに記録することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来は、不具合の診断の結果、故障であることが確定したときに、その故障内容がメモリに記録されている。そのため、診断の途中にイグニッション・オフ等の操作により車両がシステム・オフ状態とされると、その時点で故障検知動作が終了してしまい、本来、検知するはずであった故障内容が記録されなかった。それゆえ、不具合が発生して故障が生じている兆候が検知されたにも拘わらず、その不具合の再現性が低い場合、不具合の特定による故障の検知を困難にしてしまうという問題があった。特に、不具合の発生が不定期に発生する、長い時間間隔で不具合が発生する等の頻繁には不具合が発生しない場合、また、不具合が所定回数以上発生して初めて故障であると診断できる場合には、診断の途中でシステム・オフの状態となると、その不具合の特定による故障の検知がされないことになる。しかもその診断途中の記録が残されないため、次回のシステム・オン時に再度、不具合の発生を待って故障の診断が開始されることとなるため、故障の検知が困難となる、という問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−157644号公報(請求項4〜請求項7)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、故障診断が中断された場合にも、システム・オフ時の不具合の内容を記憶して、故障の検知を確実に行うために有効な車載用故障内容記憶装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の搭載装置の故障を診断し、その内容を記憶する車載用故障内容記憶装置であって、故障の兆候となる不具合を所定時間または所定回数検知すると前記搭載装置の故障と診断するとともに、前記故障の診断中に前記車両がシステム・オフの状態となった場合、前記不具合が生じた時間および回数の少なくとも一方に関する情報を記憶するようにしたことを特徴とする車載用故障内容記憶装置を発明の構成とする。
【0007】
この車載用故障内容記憶装置では、故障の診断中に前記車両がシステム・オフの状態となった場合、前記故障の兆候となる不具合が生じた時間および回数の少なくとも一方に関する情報を記憶することによって、診断の結果、故障と判明する前に、イグニッション・オフ等のユーザ操作により車両のシステムが停止し、故障の検知が中断した場合にも、前記情報が記録される。なお、本発明において、車両のシステム・オフの状態とは、運転者によってイグニッション・オフされた状態、あるいは車両の搭載装置の動作がキャンセルされた状態(スイッチがオフされた状態)等をいう。また、故障の兆候となる不具合とは、車両の搭載装置が、所期の動作を行わなかった場合、イグニッション電圧の異常、車速の異常など、故障ではないが、故障の可能性があると判断される車両の搭載装置の各種挙動をいう。
【0008】
また、電動パワーステアリング装置において、故障の兆候となる不具合とは、前記の不具合の他に、後記の手動操舵トルクの方向または大きさと、補助トルクの方向または大きさが異なったりすること等をいう。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態は、本発明の故障内容記憶装置を備える電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の全体構成を示す概念図である。
図1に示す電動パワーステアリング装置1は、運転者によるステアリングホイール2の操舵時に、手動操舵力発生手段3によって前輪4、4を転動させて車両の向きを変える装置である。さらに、電動パワーステアリング装置1は、制御装置5からの電動機制御信号VOに基づいて電動機駆動手段6で電動機電圧VMを発生し、この電動機電圧VMで電動機7を駆動して補助操舵力(補助トルク)を発生させ、手動操舵力発生手段3による手動操舵力を軽減する。
【0011】
手動操舵力発生手段3は、ステアリングホイール2に一体に設けられたステアリング軸8に連結軸9を介してステアリング・ギヤボックス10内に設けられたラック&ピニオン機構11のピニオン11aが連結される。連結軸9は、両端に自在継ぎ手9a,9bを備える。ラック&ピニオン機構11は、ピニオン11aに噛み合うラック歯11bがラック軸12に形成され、ピニオン11aとラック歯11bの噛み合いにより、ピニオン11aの回転をラック軸12の横方向の往復運動とする。さらに、ラック軸12には、その両端にタイロッド13,13を介して、転動輪としての左右の前輪4,4が連結される。
【0012】
電動機7は、補助操舵力を発生させるために、ラック軸12と同軸上に配設される。そして、電動機7の回転がラック軸11と同軸に設けられたボールねじ機構14を介して推力に変換され、この推力をラック軸12(ボールねじ軸14a)に作用させる。
【0013】
制御装置5は、各種演算や処理等を行うCPU、入力信号変換手段、信号発生手段、記憶手段、故障内容記憶手段(車載用故障内容記憶装置)等で構成される。この制御装置5には、車速センサ15、操舵トルクセンサ16、電動機電流検出手段17からの各検出信号V,TS,IMO、および他システム40からの操舵要求信号ΔIが入力される。そして、制御装置5は、これらの検出信号V,TS,IMOと操舵要求信号ΔIに基づいて電動機7に流す電動機電流IMの大きさと方向を決定し、電動機駆動手段6に電動機制御信号VOを出力する。
【0014】
車速センサ15は、スピードメータ(図示せず)内に配設され、車両の速度を検出する。そして、車速センサ15は、検出した車速に対応した電気信号の車速信号Vを制御装置5に送信する。
【0015】
操舵トルクセンサ16は、ステアリング・ギアボックス10内に配設され、運転者による手動操舵トルクの大きさと方向を検出する。そして、操舵トルクセンサ16は、検出した手動操舵トルクに対応した電気信号の手動操舵トルク信号TSを制御装置5に送信する。
【0016】
電動機電流検出手段17は、電動機7に対して直列に接続された抵抗またはホール素子等を備え、電動機7に実際に流れる電動機電流IMの大きさと方向を検出する。そして、電動機電流検出手段17は、電動機電流IMに対応した電動機電流信号IMOを制御装置5にフィードバック(負帰還)する。
【0017】
電動機駆動手段6は、電動機制御信号VOに基づいて電動機電圧VMを電動機7に印加し、電動機7を駆動する。電動機7に電動機電圧VMが印加されると、電動機7には電動機電流IMが流れ、電動機7は電動機電流IMに比例したトルクを発生する。
【0018】
次に、図2を参照して制御装置5の構成について説明する。
制御装置5は、A/D変換手段20,21と、目標電流信号設定手段22と、減算手段23と、偏差演算手段24と、駆動制御手段25と、故障内容記憶装置30とから構成される。
【0019】
A/D変換手段20は、F−Vコンバータ(図示せず)を介して車速センサ15から入力された車速信号Vをアナログ信号からディジタル信号に変換し、このディジタル変換された車速信号Vを目標電流信号設定手段22に出力する。
また、A/D変換手段21は、操舵トルクセンサ16から入力された手動操舵トルク信号TSをアナログ信号からディジタル信号に変換し、この変換された手動操舵トルク信号TSを目標電流信号設定手段22と故障内容記憶装置30に出力する。
【0020】
減算手段23は、減算器またはソフト制御の減算機能を備え、目標電流信号設定手段22からの目標電流信号IMSと他システム40からの操舵要求信号ΔIが入力され、偏差演算手段24に補正目標電流信号IMS’を出力する。減算手段23は、目標電流信号IMSから操舵要求信号ΔIを減算して補正目標電流信号IMS’(=IMS−ΔI)を算出し、操舵要求信号ΔIを目標電流信号IMSに加味している。
【0021】
偏差演算手段24は、減算器またはソフト制御の減算機能を備え、減算手段23からの補正目標電流信号IMS’と電動機電流検出手段17からの電動機電流信号IMOが入力され、駆動制御手段25に偏差信号ΔIMを出力する。偏差演算手段24は、補正目標電流信号IMS’から電動機電流信号IMOを減算し、偏差信号ΔIM(=IMS’−IMO)を算出する。
【0022】
駆動制御手段25は、PIDコントローラ、PWM信号発生手段および論理回路等を備え、偏差演算手段24からの偏差信号ΔIMが入力され、電動機駆動手段6と故障内容記憶装置30に電動機制御信号VOを出力する。
【0023】
故障内容記憶装置30は、操舵トルクセンサ16と、電動機電流検出手段17と、駆動制御手段25とが接続され、それぞれ手動操舵トルク信号TS、電動機電流信号IMO、電動機制御信号VOが入力される。
【0024】
この故障内容記憶装置30は、図3に示すように、故障診断手段31と、故障記憶手段32とから構成される。
【0025】
故障診断手段31は、操舵トルクセンサ16、電動機電流検出手段17および駆動制御手段25と接続され、それぞれ手動操舵トルク信号TS、電動機電流信号IMO、電動機制御信号VOの各信号が入力される。そして、故障診断手段31においては、手動操舵トルク信号TS、電動機電流信号IMO、電動機制御信号VOを、予め記憶されている故障兆候リストのデータと比較対照して、故障の兆候である不具合が生じている時間または回数を検知して、故障の有無を診断する。故障診断手段31における診断の結果、故障であると診断された場合には、その故障内容が故障記憶手段32に記憶される。
また、この故障診断手段31における故障の診断中に、イグニッション・オフ等の操作によって車両システムが停止された場合、不具合が生じている時間および回数の検知を中断して、その時間および回数の少なくとも一方が故障記憶手段32に記憶される。故障記憶手段32としては、車両システムが停止された場合にも、前記時間または回数を、さらに故障の検知中であることを示す診断コードとともに記憶し、その記憶が消去されない記憶装置が用いられる。例えば、不揮発性メモリ等を用いた記憶装置が用いられる。
【0026】
次に、図4を参照して、この故障内容記憶装置30による故障内容の記憶動作例を説明する。なお、以下の説明は、手動操舵トルクセンサ16からの手動操舵トルク信号TSと、電動機電流検出手段17からの電動機電流信号IMOとに基づき、電動パワーステアリング装置1の故障を診断して、その故障内容を記憶する場合を例に取る。
【0027】
まず、車両のシステムが起動されると、電動パワーステアリング装置1の制御(EPS制御)が開始される。そして、運転者がステアリングホイール2を操舵すると、ステアリング・ギアボックス10内に配設された操舵トルクセンサ16によって、運転者による手動操舵トルクの大きさと方向が検出される。検出された手動操舵トルクに対応した電気信号(手動操舵トルク信号TS)は、操舵トルクセンサ16より故障診断手段31に入力される。また、電動機電流検出手段17によって、電動機7に実際に流れる電動機電流IMの大きさと方向が検出され、検出された電動機電流IMに対応した電動機電流信号IMOが故障診断手段31に入力される。
【0028】
故障診断手段31は、手動操舵トルク信号TSと電動機電流IMOを比較対照し、例えば、検出した手動操舵トルクの方向と検出した電動機に流れる電流の方向(すなわち、補助トルクの方向)が一致か不一致かを判定し、不一致である場合には、その不一致の程度が予め設定された値(故障閾値)を超えていないかが診断される(ステップS1)。不一致の程度が閾値を超えている場合は、その不一致が生じた回数の計数が開始され、その回数が故障記憶手段32に記憶される。また、このとき、不一致の程度が閾値を超えていない場合は、故障がないと診断され、システムを停止するか否かが判定される(ステップS4)。
【0029】
さらに、ステップS2において、不一致の程度が故障閾値を超えていると判定された場合は、その不一致が継続している時間が予め設定された時間(故障確定時間)を超えている、すなわち、故障確定時間を経過しているか否かが診断される(ステップS3)。不一致が継続している時間が故障確定時間を超えている場合は、不一致が継続している時間の計時が開始され、その時間が故障記憶手段32に記憶される。このとき、不一致が継続している時間が故障確定時間を超えていない場合には、故障がないと診断され、システムを停止するか否かが判定される(ステップS4)。
【0030】
前記ステップS2において、不一致が生じた回数が予め設定された回数を超えた場合、または、前記ステップS3において、不一致が継続している時間が、故障確定時間を経過している場合のいずれかの場合には、故障と診断し、その故障に対応した診断コード記録が故障記憶手段32に記憶される(ステップS3)。
【0031】
次に、以上のS1〜S3のステップを繰り返して電動パワーステアリング装置1の故障の診断が行われている途中で、イグニッション・オフ等の操作によりシステムの停止が検知されると、システムを停止するか否かが判定される(ステップS4)。
【0032】
システム停止の場合には、故障診断手段31において検知中の故障があるか否かが判定される(ステップS5)。
【0033】
検知中の故障がある場合には、その検知中の診断コード記録、すなわち、故障を検知中であることを示すコードが故障記憶手段32に記憶される(ステップS6)。このとき、検知中の故障がない場合には、システムが停止される(ステップS9)。
【0034】
さらに、前記故障閾値を超える不一致が生じた回数、および故障確定時間を超える不一致が継続した時間が、故障判断値および経過時間として故障記憶手段32に記録される(ステップS7、ステップS8)。
そして、システムが停止される(ステップS9)。
【0035】
なお、以上の図4に関する説明は、手動操舵トルクセンサ16からの手動操舵トルク信号TSと、電動機電流検出手段17からの電動機電流信号IMOとに基づき、電動パワーステアリング装置の故障を診断して、その故障内容を記憶する場合に関するものであるが、手動操舵トルク信号TS、電動機電流信号IMO、および電動機制御信号VOのいずれか2つの信号または3つの信号に基づいて故障を診断する場合も同様にして故障内容記憶装置30によって電動パワーステアリング装置の故障を診断して、その故障内容を記憶することができる。また、本発明は、図1に示すラック&ピニオン式以外の方式のステアリング機構にも適用できるのは勿論である。
【0036】
また、以上説明した実施形態は、本発明の故障内容記憶装置を備えた電動パワーステアリング装置に関するものであるが、本発明の車載用故障内容記憶装置は、電動パワーステアリング装置に限定されず、車両に搭載される各種装置の故障内容を記憶する装置として用いることができる。例えば、ステアバイワイヤによる操舵装置、ABS(Antilock Brake System)、TCS(Traction Control System)や左右駆動力配分装置等の様々なシステムに適用し、その故障内容を記憶し、また、故障検知中の不具合に関する情報を記憶することによって、当該装置またはシステムのメンテナンス等を的確に行うことができる。
【0037】
【発明の効果】
請求項1に記載の車載用故障内容記憶装置によれば、運転者のイグニッション・オフ等の操作により故障診断が中断された時でも、故障であるとの確定には至っていないが検知中である故障情報が記憶される。そのため、その故障が原因で発生した不具合を解析して故障を特定する場合、その特定が容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
【図2】電動パワーステアリング装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】故障内容記憶装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】故障内容記憶装置の動作を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
1 電動パワーステアリング装置
2 ステアリングホイール
3 手動操舵力発生手段
4 前輪
5 制御装置
6 電動機駆動手段
7 電動機
8 ステアリング軸
9 連結軸
10 ステアリング・ギヤボックス
11 ラック&ピニオン機構
12 ラック軸
13 タイロッド
14 ボールねじ機構
15 車速センサ
16 操舵トルクセンサ
17 電動機電流検出手段
20,21 A/D変換手段
22 目標電流信号設定手段
23 減算手段
24 偏差演算手段
25 駆動制御手段
30 故障内容記憶装置
31 故障診断手段
32 故障記憶手段

Claims (1)

  1. 車両の搭載装置の故障を診断し、その内容を記憶する車載用故障内容記憶装置であって、
    故障の兆候となる不具合を所定時間または所定回数検知すると前記搭載装置の故障と診断するとともに、前記故障の診断中に前記車両がシステム・オフの状態となった場合、前記不具合が生じた時間および回数の少なくとも一方に関する情報を記憶するようにしたことを特徴とする車載用故障内容記憶装置。
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