JP2004329747A - 血液透析装置のシャント再循環率算出システム - Google Patents
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Abstract
【課題】シャント再循環率を容易にかつ精度良くしかも迅速に算出できるシステムを提供する。
【解決手段】血液透析要素の上流側と下流側の差圧を検出する手段と、血液ポンプの一次側に補液を注入する手段と、補液が注入された後の、差圧の変化量の積分値からシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段を有することを特徴とする、血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
【選択図】 図2
【解決手段】血液透析要素の上流側と下流側の差圧を検出する手段と、血液ポンプの一次側に補液を注入する手段と、補液が注入された後の、差圧の変化量の積分値からシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段を有することを特徴とする、血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液透析装置のシャント再循環率算出システムに関し、とくにシャント再循環率を極めて迅速にかつ精度良く算出できるシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内においては、動脈と静脈は微小血液循環系を介して連続性を保っているが、この微小血液循環系を介さずに動脈と静脈を人為的に短絡させること、あるいは短絡させる流路具を、通常、シャントと呼んでいる。このシャントは、血液透析等の血液浄化療法のアクセスとして使用される。
【0003】
血液透析においては、患者の動脈側から採血され、体外の血液透析装置で透析した後の浄化された血液が静脈側に戻される。血液透析装置は既に広く実用化されており、代表的なものとして、たとえば特許文献1や特許文献2等に記載されたものが知られている。血液透析装置では、血液透析を行うための血液透析要素として、透析膜を内在させた血液透析要素(ダイアライザー)が用いられ、患者の動脈側から送られてきた血液中から、血液透析要素内で血液流路側と透析液流路側との間で透析膜を介して尿成分等が除去され、また、余剰水分が除水されて、透析後の血液が患者の静脈側へと戻される。この患者の体内との間の血液の送液・循環には、通常、血液流路中の血液透析要素の上流側に設けられたチューブポンプからなる血液ポンプが用いられている。
【0004】
このような血液透析装置を使用して血液透析を行う場合、通常、患者の腕の動脈に対して採血のために針が突き刺され、返血のために静脈に対して針が突き刺される。この動脈側穿刺針と静脈側穿刺針とは、通常、比較的近い位置に突き刺され、動脈側と静脈側とを短絡する、いわゆるシャントの系を構成する。そして、動脈側穿刺針と静脈側穿刺針の突き刺し位置が互いに近接していると、静脈側へと戻されてきた血液の一部が、再び動脈側穿刺針を介して血液透析装置へと再循環されてしまう。このシャント再循環率が高くなりすぎることは、それだけ血液透析装置による血液透析の効率が低下することになるので、望ましくない。このシャント再循環率を精度良くかつ迅速に知ることができれば、シャント内の閉塞状況や動脈側穿刺針と静脈側穿刺針との距離の妥当性を的確に判断できることになり、より適切に血液透析を行うことができるようになる。したがって、このような面から、シャント再循環率を、容易にかつ精度良く、しかも迅速に求める手法の出現が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭56−82号公報
【特許文献2】
特公昭61−25382号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、上記のような要望に鑑み、簡単な回路構成でありながら、新しい知見に基づいた特定の演算手法を採用することにより、シャント再循環率を容易にかつ精度良くしかも迅速に算出できる、血液透析装置のシャント再循環率算出システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る血液透析装置のシャント再循環率算出システムは、患者の体内との間で血液を循環させる血液流路と透析液流路との間で血液透析を行う血液透析要素と、血液流路の血液透析要素の上流側に設けられたチューブポンプからなる血液ポンプとを有する血液透析装置において、前記血液透析要素の上流側でかつ前記血液透析要素と前記血液ポンプの間の位置と前記血液透析要素の下流側の位置との血液流路の差圧を検出する差圧検出手段を有するとともに、前記血液ポンプの一次側または前記血液ポンプの一次側および前記血液透析要素の下流側の血液流路内に補液を注入する補液注入手段を有し、かつ、前記補液注入手段により血液流路内に補液が注入された後の、前記差圧検出手段により検出された差圧の変化量の積分値からシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段を有することを特徴とするシステムからなる。
【0008】
このシステムにおいては、上記シャント再循環率演算手段は、上記補液注入手段により血液流路内に補液が注入される前の差圧値をΔP0としたとき、上記補液注入手段により血液流路内に補液が注入された後に、1回目に前記差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP1の変化量の積分値A1と、2回目に前記差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP2の変化量の積分値A2とを算出し、該積分値A1、A2からシャント再循環率Rcを、
Rc=(A2/A1)×100(%)
として算出する。
【0009】
すなわち、実際の血液よりも粘度の低い補液が注入されると、注入後に、差圧が低下する特性領域が生じる(積分値A1に対応する領域)。そして、注入された補液が血液透析装置から戻されてきた後、その一部が再び動脈側回路から血液透析装置へと再循環されてしまうと、再び差圧が低下する特性領域が生じる(積分値A2に対応する領域)。したがって、差圧値ΔP1の変化量の積分値A1に対する差圧値ΔP2の変化量の積分値A2の割合は、シャント再循環率に対応することになり、上式にて再循環された直後に極めて迅速に、しかも精度良くシャント再循環率Rcが算出されることになる。つまり、本発明は、注入補液が再循環される際の差圧変化挙動が、まさにシャント再循環率に対応しているという新規な知見に基づいて、容易に、かつ迅速に精度良くシャント再循環率を求めることができるようにしたものである。
【0010】
上記補液注入手段による血液流路内への補液の注入は、予め定められた一定時間または/および一定量行えばよい。上記シャント再循環率Rcは、積分値A1と積分値A2の相対的な割合として算出されるので、シャント再循環率Rcが算出可能である限り、注入時間や注入量は特定の値にする必要はなく、この面からも測定の容易性が確保されている。
【0011】
上記補液としては、たとえば、通常使用されている生理食塩液を用いればよい。
【0012】
また、上記差圧検出手段による検出差圧信号は、血液ポンプのローラがその周回方向において予め定められた一定の位置にきたときにのみ出力されるようにすることもできる。このようにすれば、血液ポンプの脈動等による影響が最も小さい一定の位置で差圧信号を出力させることができるので、シャント再循環率Rc算出のための不要な変動要因を極力除外できるようになり、より高精度の算出が可能となる。この差圧検知のための一定の位置としては、チューブポンプからなる血液ポンプによる脈動の影響が小さくなる位置、つまり、血液ポンプに設けられた複数のローラのうちの一のローラがチューブを押圧開始する位置から押圧終了する位置までの中間位置にあることが好ましい。なかでも、チューブポンプからなる血液ポンプによる脈流の影響が最も小さくなる位置、たとえば、一定の位置が、血液ポンプに設けられた一のローラがチューブを押圧開始する位置から押圧終了する位置までの中点位置またはその直前あるいは直後の位置であることが好ましい。血液ポンプを構成するチューブポンプは、一対のローラを有するポンプ、3つあるいはそれ以上のローラを有するポンプのいずれであってもよい。
【0013】
上記差圧検出手段としては、たとえば、上記血液透析要素の上下流にそれぞれ設けられた圧力センサを有するものに構成することができる。あるいは、いわゆる差圧計を用い、その両圧力検出端を血液透析要素の上下流に接続して、差圧を直接検出することもできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る血液透析装置の概略構成図を示しており、図2および図3は、それぞれ、補液の注入例を示している。
【0015】
図1において、1は、患者の動脈側2からの血液を血液透析後に静脈側3へと戻すように循環させる血液流路を示している。血液流路1中の血液は、一対のローラ4aを備えたチューブポンプからなる血液ポンプ4によって定量送液され、血液透析要素としての血液透析フィルター5(ダイアライザー)内で、血液流路1と透析液流路6との間で透析膜7を介して血液透析される。透析膜7は、実際には、たとえば多数の中空糸膜からなるが、図1では模式的に示してある。
【0016】
透析液は、たとえば図1に示したように、調製済透析液供給装置8から供給された透析液を、計量チャンバー9の一方の室9aから膜10の押圧を介して吐出し、フィルター11を介して血液透析フィルター5に供給される。血液透析済みの透析液は、循環ポンプ12によって計量チャンバー9の他方の室9bに戻されるとともに、除水ポンプ13を介して一部が除水される。
【0017】
血液流路1の血液透析フィルター5の上流側の位置でかつ、血液ポンプ4と血液透析フィルター5との間の位置には、血液流路1中の圧力を検知する圧力センサ14が設けられており、血液透析フィルター5の下流側の位置には圧力センサ15が設けられている。圧力センサ14は患者の動脈側に対応する圧力を検知し、圧力センサ15は静脈側に対応する圧力を検知し、その差圧はそのときの患者の血圧に対応している。つまり、血液透析フィルター5は、血液流路1中の圧力損失に関して、いわゆる粘度計と同じ機能を有し、そのときの血液の状態に対応した圧力損失を生じさせ、その圧力損失は患者の血圧に対応している。
【0018】
本実施態様では、両圧力センサ14,15による圧力検出信号は制御装置16に送られ、差圧が自動演算されて出力されるようになっている。したがって、圧力センサ14,15と制御装置16は差圧検出手段を構成している。本実施態様では、血液ポンプ4による脈動の影響が小さくなるように、一対のローラ4aのうちの一のローラが予め定められた一定の位置にきたときにのみ差圧が出力されるようになっており、この差圧が、血液ポンプ4の回転に伴って実質的に連続的に出力され、差圧の変化を実質的に連続的に測定できるようになっている。
【0019】
また、上記制御装置16は、後述の如く、上記の実質的に連続的に出力される差圧の変化量の積分値を演算し、それに基づいてシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段も構成している。
【0020】
上記透析回路において、血液ポンプ4の上流側は、患者の動脈側に前述の動脈側穿刺針等を介して接続され、血液透析フィルター5の下流側は、患者の静脈側に前述の静脈側穿刺針等を介して接続され、この部分は、いわゆるシャントを構成する。
【0021】
このようなシャントを含む血液循環回路に対して、本実施態様では、補液として生理食塩液が注入される。たとえば図2に示すように、シャント21から採血される動脈側回路の血液ポンプ4の上流側(一次側)に、たとえば注入ポンプ22により、所定時間、所定量の生理食塩液23(「生食」と略記してある。)が注入される。この生理食塩液23の注入前および注入後の、血液透析フィルター5の上流側の圧力(動脈側の圧力)Paと血液透析フィルター5の下流側の圧力(静脈側の圧力)Pvとの差圧ΔP=Pa−Pvが算出される。
【0022】
あるいは、図3に示すように、血液ポンプ4の上流側(一次側)の動脈側の位置と、血液透析フィルター5の下流側の静脈側の位置で、それぞれシリンジポンプ24a、24bにより生理食塩液を注入するようにしてもよい。
【0023】
次に、上記差圧ΔPの挙動と、その挙動を利用した本発明におけるシャント再循環率の算出について、図4を参照して説明する。血液透析中は、血液ポンプ4の一次側は約−200〜300mmHgの陰圧状態になっていることが多いが、血液ポンプ4の一次側に生理食塩液が注入されると、瞬間的にこの陰圧状態が解放されて大気圧に近くなるので、血液ポンプ4の吐出量が増大して動脈圧が増加し、それに伴って、図4に示すように、生理食塩液注入直後には動静脈差圧ΔPは一旦上昇する。しかしその後、生理食塩液により希釈された血液が循環されることになるので、図4のA1領域に示すように、ある時間、動静脈差圧ΔPは、注入前の初期差圧値P0よりも低下し(ΔP1)、再び回路内は血液に置換されて初期差圧値P0近傍に戻る。
【0024】
ここで、シャント閉塞や狭窄があると、生理食塩液により希釈された血液の一部は静脈側回路から再び動脈側回路に戻って再循環し、再び血液透析フィルター5へ導かれるので、図4のA2領域に示すように、動静脈差圧ΔP(ΔP2)は、注入前の初期差圧値P0よりも低下する。
【0025】
したがって、このような挙動を定量的に解析すれば、シャント再循環率を性格に求めることが可能になる。すなわち、シャント再循環率Rcを下式によって算出することが可能となる。
Rc=(A2/A1)×100(%)
ここで、A1は、生理食塩液注入後1回目に、初期差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP1の変化量(低下量)の積分値〔mmHg〕であり、A2は、生理食塩液で希釈された血液の再循環により2回目に初期差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP2の変化量(低下量)の積分値〔mmHg〕である。これら積分値A1、A2からシャント再循環率Rcが精度良く迅速に算出されることになる。
【0026】
ちなみに、シャントでの再循環がなければ、生理食塩液で希釈された血液は再び動脈側回路には戻らず体内に戻るため、再循環による差圧低下領域A2は現れない。したがって、上式からシャント再循環率Rcは0%となる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る血液透析装置のシャント再循環率算出システムによれば、極めて簡単な回路構成でありながら、補液注入時の血液回路の差圧の挙動を利用することにより、シャント再循環率を容易にかつ精度良くしかも迅速に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る血液透析装置の概略構成図である。
【図2】図1の装置における補液の注入例を示す概略構成図である。
【図3】図1の装置における別の補液の注入例を示す概略構成図である。
【図4】補液注入時の血液回路の差圧の挙動を示す、本発明に係るシャント再循環率算出システムを説明するための特性図である。
【符号の説明】
1 血液流路
2 動脈側
3 静脈側
4 血液ポンプ
4a 血液ポンプのローラ
5 血液透析要素としての血液透析フィルター(ダイアライザー)
6 透析液流路
7 透析膜
8 調製済透析液供給装置
9 計量チャンバー
10 膜
11 フィルター
12 循環ポンプ
13 除水ポンプ
14、15 圧力センサ
16 圧力センサとともに差圧検出手段を構成し、シャント再循環率演算手段を構成する制御装置
21 シャント
22 注入ポンプ
23 補液としての生理食塩液
24a、24b シリンジポンプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液透析装置のシャント再循環率算出システムに関し、とくにシャント再循環率を極めて迅速にかつ精度良く算出できるシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内においては、動脈と静脈は微小血液循環系を介して連続性を保っているが、この微小血液循環系を介さずに動脈と静脈を人為的に短絡させること、あるいは短絡させる流路具を、通常、シャントと呼んでいる。このシャントは、血液透析等の血液浄化療法のアクセスとして使用される。
【0003】
血液透析においては、患者の動脈側から採血され、体外の血液透析装置で透析した後の浄化された血液が静脈側に戻される。血液透析装置は既に広く実用化されており、代表的なものとして、たとえば特許文献1や特許文献2等に記載されたものが知られている。血液透析装置では、血液透析を行うための血液透析要素として、透析膜を内在させた血液透析要素(ダイアライザー)が用いられ、患者の動脈側から送られてきた血液中から、血液透析要素内で血液流路側と透析液流路側との間で透析膜を介して尿成分等が除去され、また、余剰水分が除水されて、透析後の血液が患者の静脈側へと戻される。この患者の体内との間の血液の送液・循環には、通常、血液流路中の血液透析要素の上流側に設けられたチューブポンプからなる血液ポンプが用いられている。
【0004】
このような血液透析装置を使用して血液透析を行う場合、通常、患者の腕の動脈に対して採血のために針が突き刺され、返血のために静脈に対して針が突き刺される。この動脈側穿刺針と静脈側穿刺針とは、通常、比較的近い位置に突き刺され、動脈側と静脈側とを短絡する、いわゆるシャントの系を構成する。そして、動脈側穿刺針と静脈側穿刺針の突き刺し位置が互いに近接していると、静脈側へと戻されてきた血液の一部が、再び動脈側穿刺針を介して血液透析装置へと再循環されてしまう。このシャント再循環率が高くなりすぎることは、それだけ血液透析装置による血液透析の効率が低下することになるので、望ましくない。このシャント再循環率を精度良くかつ迅速に知ることができれば、シャント内の閉塞状況や動脈側穿刺針と静脈側穿刺針との距離の妥当性を的確に判断できることになり、より適切に血液透析を行うことができるようになる。したがって、このような面から、シャント再循環率を、容易にかつ精度良く、しかも迅速に求める手法の出現が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭56−82号公報
【特許文献2】
特公昭61−25382号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、上記のような要望に鑑み、簡単な回路構成でありながら、新しい知見に基づいた特定の演算手法を採用することにより、シャント再循環率を容易にかつ精度良くしかも迅速に算出できる、血液透析装置のシャント再循環率算出システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る血液透析装置のシャント再循環率算出システムは、患者の体内との間で血液を循環させる血液流路と透析液流路との間で血液透析を行う血液透析要素と、血液流路の血液透析要素の上流側に設けられたチューブポンプからなる血液ポンプとを有する血液透析装置において、前記血液透析要素の上流側でかつ前記血液透析要素と前記血液ポンプの間の位置と前記血液透析要素の下流側の位置との血液流路の差圧を検出する差圧検出手段を有するとともに、前記血液ポンプの一次側または前記血液ポンプの一次側および前記血液透析要素の下流側の血液流路内に補液を注入する補液注入手段を有し、かつ、前記補液注入手段により血液流路内に補液が注入された後の、前記差圧検出手段により検出された差圧の変化量の積分値からシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段を有することを特徴とするシステムからなる。
【0008】
このシステムにおいては、上記シャント再循環率演算手段は、上記補液注入手段により血液流路内に補液が注入される前の差圧値をΔP0としたとき、上記補液注入手段により血液流路内に補液が注入された後に、1回目に前記差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP1の変化量の積分値A1と、2回目に前記差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP2の変化量の積分値A2とを算出し、該積分値A1、A2からシャント再循環率Rcを、
Rc=(A2/A1)×100(%)
として算出する。
【0009】
すなわち、実際の血液よりも粘度の低い補液が注入されると、注入後に、差圧が低下する特性領域が生じる(積分値A1に対応する領域)。そして、注入された補液が血液透析装置から戻されてきた後、その一部が再び動脈側回路から血液透析装置へと再循環されてしまうと、再び差圧が低下する特性領域が生じる(積分値A2に対応する領域)。したがって、差圧値ΔP1の変化量の積分値A1に対する差圧値ΔP2の変化量の積分値A2の割合は、シャント再循環率に対応することになり、上式にて再循環された直後に極めて迅速に、しかも精度良くシャント再循環率Rcが算出されることになる。つまり、本発明は、注入補液が再循環される際の差圧変化挙動が、まさにシャント再循環率に対応しているという新規な知見に基づいて、容易に、かつ迅速に精度良くシャント再循環率を求めることができるようにしたものである。
【0010】
上記補液注入手段による血液流路内への補液の注入は、予め定められた一定時間または/および一定量行えばよい。上記シャント再循環率Rcは、積分値A1と積分値A2の相対的な割合として算出されるので、シャント再循環率Rcが算出可能である限り、注入時間や注入量は特定の値にする必要はなく、この面からも測定の容易性が確保されている。
【0011】
上記補液としては、たとえば、通常使用されている生理食塩液を用いればよい。
【0012】
また、上記差圧検出手段による検出差圧信号は、血液ポンプのローラがその周回方向において予め定められた一定の位置にきたときにのみ出力されるようにすることもできる。このようにすれば、血液ポンプの脈動等による影響が最も小さい一定の位置で差圧信号を出力させることができるので、シャント再循環率Rc算出のための不要な変動要因を極力除外できるようになり、より高精度の算出が可能となる。この差圧検知のための一定の位置としては、チューブポンプからなる血液ポンプによる脈動の影響が小さくなる位置、つまり、血液ポンプに設けられた複数のローラのうちの一のローラがチューブを押圧開始する位置から押圧終了する位置までの中間位置にあることが好ましい。なかでも、チューブポンプからなる血液ポンプによる脈流の影響が最も小さくなる位置、たとえば、一定の位置が、血液ポンプに設けられた一のローラがチューブを押圧開始する位置から押圧終了する位置までの中点位置またはその直前あるいは直後の位置であることが好ましい。血液ポンプを構成するチューブポンプは、一対のローラを有するポンプ、3つあるいはそれ以上のローラを有するポンプのいずれであってもよい。
【0013】
上記差圧検出手段としては、たとえば、上記血液透析要素の上下流にそれぞれ設けられた圧力センサを有するものに構成することができる。あるいは、いわゆる差圧計を用い、その両圧力検出端を血液透析要素の上下流に接続して、差圧を直接検出することもできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る血液透析装置の概略構成図を示しており、図2および図3は、それぞれ、補液の注入例を示している。
【0015】
図1において、1は、患者の動脈側2からの血液を血液透析後に静脈側3へと戻すように循環させる血液流路を示している。血液流路1中の血液は、一対のローラ4aを備えたチューブポンプからなる血液ポンプ4によって定量送液され、血液透析要素としての血液透析フィルター5(ダイアライザー)内で、血液流路1と透析液流路6との間で透析膜7を介して血液透析される。透析膜7は、実際には、たとえば多数の中空糸膜からなるが、図1では模式的に示してある。
【0016】
透析液は、たとえば図1に示したように、調製済透析液供給装置8から供給された透析液を、計量チャンバー9の一方の室9aから膜10の押圧を介して吐出し、フィルター11を介して血液透析フィルター5に供給される。血液透析済みの透析液は、循環ポンプ12によって計量チャンバー9の他方の室9bに戻されるとともに、除水ポンプ13を介して一部が除水される。
【0017】
血液流路1の血液透析フィルター5の上流側の位置でかつ、血液ポンプ4と血液透析フィルター5との間の位置には、血液流路1中の圧力を検知する圧力センサ14が設けられており、血液透析フィルター5の下流側の位置には圧力センサ15が設けられている。圧力センサ14は患者の動脈側に対応する圧力を検知し、圧力センサ15は静脈側に対応する圧力を検知し、その差圧はそのときの患者の血圧に対応している。つまり、血液透析フィルター5は、血液流路1中の圧力損失に関して、いわゆる粘度計と同じ機能を有し、そのときの血液の状態に対応した圧力損失を生じさせ、その圧力損失は患者の血圧に対応している。
【0018】
本実施態様では、両圧力センサ14,15による圧力検出信号は制御装置16に送られ、差圧が自動演算されて出力されるようになっている。したがって、圧力センサ14,15と制御装置16は差圧検出手段を構成している。本実施態様では、血液ポンプ4による脈動の影響が小さくなるように、一対のローラ4aのうちの一のローラが予め定められた一定の位置にきたときにのみ差圧が出力されるようになっており、この差圧が、血液ポンプ4の回転に伴って実質的に連続的に出力され、差圧の変化を実質的に連続的に測定できるようになっている。
【0019】
また、上記制御装置16は、後述の如く、上記の実質的に連続的に出力される差圧の変化量の積分値を演算し、それに基づいてシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段も構成している。
【0020】
上記透析回路において、血液ポンプ4の上流側は、患者の動脈側に前述の動脈側穿刺針等を介して接続され、血液透析フィルター5の下流側は、患者の静脈側に前述の静脈側穿刺針等を介して接続され、この部分は、いわゆるシャントを構成する。
【0021】
このようなシャントを含む血液循環回路に対して、本実施態様では、補液として生理食塩液が注入される。たとえば図2に示すように、シャント21から採血される動脈側回路の血液ポンプ4の上流側(一次側)に、たとえば注入ポンプ22により、所定時間、所定量の生理食塩液23(「生食」と略記してある。)が注入される。この生理食塩液23の注入前および注入後の、血液透析フィルター5の上流側の圧力(動脈側の圧力)Paと血液透析フィルター5の下流側の圧力(静脈側の圧力)Pvとの差圧ΔP=Pa−Pvが算出される。
【0022】
あるいは、図3に示すように、血液ポンプ4の上流側(一次側)の動脈側の位置と、血液透析フィルター5の下流側の静脈側の位置で、それぞれシリンジポンプ24a、24bにより生理食塩液を注入するようにしてもよい。
【0023】
次に、上記差圧ΔPの挙動と、その挙動を利用した本発明におけるシャント再循環率の算出について、図4を参照して説明する。血液透析中は、血液ポンプ4の一次側は約−200〜300mmHgの陰圧状態になっていることが多いが、血液ポンプ4の一次側に生理食塩液が注入されると、瞬間的にこの陰圧状態が解放されて大気圧に近くなるので、血液ポンプ4の吐出量が増大して動脈圧が増加し、それに伴って、図4に示すように、生理食塩液注入直後には動静脈差圧ΔPは一旦上昇する。しかしその後、生理食塩液により希釈された血液が循環されることになるので、図4のA1領域に示すように、ある時間、動静脈差圧ΔPは、注入前の初期差圧値P0よりも低下し(ΔP1)、再び回路内は血液に置換されて初期差圧値P0近傍に戻る。
【0024】
ここで、シャント閉塞や狭窄があると、生理食塩液により希釈された血液の一部は静脈側回路から再び動脈側回路に戻って再循環し、再び血液透析フィルター5へ導かれるので、図4のA2領域に示すように、動静脈差圧ΔP(ΔP2)は、注入前の初期差圧値P0よりも低下する。
【0025】
したがって、このような挙動を定量的に解析すれば、シャント再循環率を性格に求めることが可能になる。すなわち、シャント再循環率Rcを下式によって算出することが可能となる。
Rc=(A2/A1)×100(%)
ここで、A1は、生理食塩液注入後1回目に、初期差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP1の変化量(低下量)の積分値〔mmHg〕であり、A2は、生理食塩液で希釈された血液の再循環により2回目に初期差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP2の変化量(低下量)の積分値〔mmHg〕である。これら積分値A1、A2からシャント再循環率Rcが精度良く迅速に算出されることになる。
【0026】
ちなみに、シャントでの再循環がなければ、生理食塩液で希釈された血液は再び動脈側回路には戻らず体内に戻るため、再循環による差圧低下領域A2は現れない。したがって、上式からシャント再循環率Rcは0%となる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る血液透析装置のシャント再循環率算出システムによれば、極めて簡単な回路構成でありながら、補液注入時の血液回路の差圧の挙動を利用することにより、シャント再循環率を容易にかつ精度良くしかも迅速に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る血液透析装置の概略構成図である。
【図2】図1の装置における補液の注入例を示す概略構成図である。
【図3】図1の装置における別の補液の注入例を示す概略構成図である。
【図4】補液注入時の血液回路の差圧の挙動を示す、本発明に係るシャント再循環率算出システムを説明するための特性図である。
【符号の説明】
1 血液流路
2 動脈側
3 静脈側
4 血液ポンプ
4a 血液ポンプのローラ
5 血液透析要素としての血液透析フィルター(ダイアライザー)
6 透析液流路
7 透析膜
8 調製済透析液供給装置
9 計量チャンバー
10 膜
11 フィルター
12 循環ポンプ
13 除水ポンプ
14、15 圧力センサ
16 圧力センサとともに差圧検出手段を構成し、シャント再循環率演算手段を構成する制御装置
21 シャント
22 注入ポンプ
23 補液としての生理食塩液
24a、24b シリンジポンプ
Claims (6)
- 患者の体内との間で血液を循環させる血液流路と透析液流路との間で血液透析を行う血液透析要素と、血液流路の血液透析要素の上流側に設けられたチューブポンプからなる血液ポンプとを有する血液透析装置において、前記血液透析要素の上流側でかつ前記血液透析要素と前記血液ポンプの間の位置と前記血液透析要素の下流側の位置との血液流路の差圧を検出する差圧検出手段を有するとともに、前記血液ポンプの一次側または前記血液ポンプの一次側および前記血液透析要素の下流側の血液流路内に補液を注入する補液注入手段を有し、かつ、前記補液注入手段により血液流路内に補液が注入された後の、前記差圧検出手段により検出された差圧の変化量の積分値からシャント再循環率を算出するシャント再循環率演算手段を有することを特徴とする、血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
- 前記シャント再循環率演算手段は、前記補液注入手段により血液流路内に補液が注入される前の差圧値をΔP0としたとき、前記補液注入手段により血液流路内に補液が注入された後に、1回目に前記差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP1の変化量の積分値A1と、2回目に前記差圧値ΔP0よりも低下する差圧値ΔP2の変化量の積分値A2とを算出し、該積分値A1、A2からシャント再循環率Rcを、
Rc=(A2/A1)×100(%)
として算出する、請求項1の血液透析装置のシャント再循環率算出システム。 - 前記補液注入手段により血液流路内に補液が予め定められた一定時間または/および一定量注入される、請求項1または2の血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
- 前記補液が生理食塩液からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
- 前記差圧検出手段による検出差圧信号は、前記血液ポンプのローラがその周回方向において予め定められた一定の位置にきたときにのみ出力される、請求項1〜4のいずれかに記載の血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
- 前記差圧検出手段が、前記血液透析要素の上下流にそれぞれ設けられた圧力センサを有する、請求項1〜5のいずれかに記載の血液透析装置のシャント再循環率算出システム。
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KR20150058239A (ko) * | 2012-09-21 | 2015-05-28 | 프레제니우스 메디칼 케어 도이칠란드 게엠베하 | 체외 혈액 치료 중 재순환을 검출하는 장치 및 방법 |
-
2003
- 2003-05-12 JP JP2003132960A patent/JP2004329747A/ja active Pending
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KR102220982B1 (ko) | 2012-09-21 | 2021-02-26 | 프레제니우스 메디칼 케어 도이칠란드 게엠베하 | 체외 혈액 치료 중 재순환을 검출하는 장치 및 방법 |
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