JP2004327413A - 固体酸化物燃料電池および燃料改質器用の電極材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高い電子伝導性と酸素透過性を有するAgを高い酸素イオン伝導性固体電解質とのサーメットとすることで、Ag膜と酸素イオン伝導性組成物膜との界面全てがカソード電極としての酸素の潜り込み場やアノード電極としての酸素イオンの噴出しの場として機能させる。更に、Rh、Ru、Pd、Pt、あるいはそれらの合金である貴金属微粉末を担持することでアノード特性を一層向上させる。
【効果】その結果、電極反応による分極抵抗が小さくなり、400−600℃という低温で運転可能なSOFCとすることができ、短時間起動が困難であるというSOFCの課題を解決する。更に、電気化学的部分酸化反応による燃料改質器として用いると、水素を生成すると共に電気エネルギーをも得るので、電極材料として希少なPtやRuを必要とするPEFCの小型化を可能にすることで希少な貴金属の使用量を減らすことが可能となる。
【選択図】 図1
【効果】その結果、電極反応による分極抵抗が小さくなり、400−600℃という低温で運転可能なSOFCとすることができ、短時間起動が困難であるというSOFCの課題を解決する。更に、電気化学的部分酸化反応による燃料改質器として用いると、水素を生成すると共に電気エネルギーをも得るので、電極材料として希少なPtやRuを必要とするPEFCの小型化を可能にすることで希少な貴金属の使用量を減らすことが可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、400℃から600℃で使用する、固体酸化物燃料電池および燃料改質器の、カソード電極およびアノード電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池を自動車などの移動体の動力発電や家庭用コジェネレーションなどの小規模定置式発電に用いるには、起動を短時間で行うことや小型化などが要求される。従来の固体酸化物燃料電池は、ランタンマンガネートなどの電子伝導体酸化物をカソード電極とし安定化ジルコニアとNiとのサーメットをアノード電極としており運転温度が1000℃と高すぎることから短時間での起動が困難であり、これらの用途へは不適切である。そこで、カソード電極としてランタンコバルタイトなどの酸素イオンと電子の混合伝導体酸化物を用いることにより運転温度を下げようとする試みもされている。
【0003】
またこれらの用途に固体高分子燃料電池を用いることも研究されているが、固体高分子燃料電池は燃料として高純度の水素を要求することから、化石燃料から水素を生成する燃料改質器が必要である。燃料改質は水蒸気改質法や部分酸化法などで行うが、得られるエネルギーは水素のみである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
固体酸化物燃料電池では、カソード電極としてランタンコバルタイトなどの酸素イオンと電子の混合伝導体酸化物を用いても比較的小さな分極抵抗となるのは約800℃以上であり、400℃から600℃という低温では電極での反応抵抗が大きすぎる課題がある。また、NiとYSZとのサーメットであるアノード電極でも400℃から600℃という低温では分極抵抗が多きすぎるという課題や、化石燃料を用いるとカーボンが容易に析出するという課題もある。
【0005】
また、燃料改質を水蒸気改質法で行う場合は、吸熱反応であるがゆえに反応温度を維持するために燃料の一部を燃焼によって浪費しなければならない。燃料改質を部分酸化法で行う場合は、化石燃料量あたりの生成水素が少ないので多量の化石燃料を必要とする。これらは、従来の燃料改質器では一定量の発電をするには多くの化石燃料を必要とするという課題である。さらに従来の燃料改質器では得られるエネルギーは水素のみであって電気は得られないことから、必要量の電気を得るためには固体高分子燃料電池が大型となるので、固体高分子燃料電池の電極材料であるPtやRuという希少な貴金属を多量に必要とするので燃料電池の安定供給が困難である課題もある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の膜の表面を全部もしくは一部をAg膜によって被覆するこの発明では、Agは電子伝導性でありながら酸素を透過させることから、カソード電極材料として用いる場合にはAg膜と酸素イオン伝導性組成物の膜との界面全てが酸素の潜り込み場として機能し、アノード電極材料として用いる場合にはAg膜と酸素イオン伝導性組成物の膜との界面全てが酸素イオンの噴出しの場として機能するので、電極反応の分極抵抗を小さくすることを可能にする。
【0007】
この発明では、電子伝導性と酸素透過性を有するAgのメッキを施す酸素イオン伝導性固体電解質としてAサイトがLaとSrでありBサイトがGaとMgあるいは一部をCoで置換した化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有する酸化物やScで一部を置換したジルコニアやSmやGdで一部を置換したセリアという化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸化物とすることによって、400℃から600℃の温度域での酸素イオン伝導率が高くなるので、カソード反応における酸素イオンの潜り込みやアノード反応における酸素イオンの噴出しの場を多くした上で電極中の酸素イオンの移動抵抗を小できるので、電極反応の分極抵抗を更に小さくすることを可能にする。
【0008】
この発明では、電子伝導性と酸素透過性を有するAgのメッキを施す酸素イオン伝導性固体電解質の表面を凹凸にすることや多孔質とすることによって、カソード電極材料として用いる場合の酸素イオンの潜り込み場やアノード電極材料として用いる場合の酸素イオンの噴出し場を更に増やすことが可能であるから、電極反応の分極抵抗を更に小さくすることを可能にする。
【0009】
予め化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物粉末のペーストを塗布してから十分な高温で焼成することによって表面凹凸が大きなあるいは多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜を形成し、メッキによってあるいはAg化合物やAgペーストの含浸と熱分解よってこの酸素イオン伝導性組成物膜表面の全部若しくは一部にAgを析出させるというこの発明による製造方法では、多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜は十分に高温で焼成されることにより結晶粒界が少なくなるので酸素イオン伝導率が十分に高くなる。その結果、カソード電極中のAgと多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜との界面から潜り込んだ多量の酸素イオンがアノード電極中のAgと多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜との界面まで移動するためのイオン伝導抵抗を小さくできるので、電極反応の分極抵抗を小さくすることを可能にする。
【0010】
表面凹凸が大きな若しくは多項質なサーメット構造を有する複合組成物を水に浸した状態でこの複合組成物の上部表面と電解質膜との界面である下部表面との間に電位差を与えてAgをイオンマイグレーションさせるこの発明による製造方法では、組成物の厚さ方向のAg濃度が均一でAg膜の電子伝導率が大きくなるようにすなわちAgが連続膜となるように移動するので、カソード電極材料として用いる場合の酸素イオンの潜り込み場やアノード電極材料として用いる場合の酸素イオンの噴出し場を更に増やすことを可能にする。
【0011】
化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の粉末とAg粉末とをボールミルで分散混合させた後に樹脂や溶剤と混練してAgペーストとしてから塗布・焼成によって表面凹凸が大きい若しくは高い多項性を有するサーメット構造を有する複合組成物を形成するこの発明による製造方法では、酸素イオン伝導性組成物とAg粉末とは界面エネルギーを小さくするように強く固着させる結果としてAg同士の凝集を生じ難くするので、高温耐久性を向上させることを可能にする。
【0012】
化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の膜と、その表面の全部若しくは一部を被覆するAg膜とによってなる表面の凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメットの表面に、Rh、Ru、Pd、Pt若しくはそれらの合金である貴金属微粉末を担持することによりなるこの発明の電極では、これらの貴金属微粉末が化石燃料の酸化触媒として働くので、特にアノード電極とした場合に電極反応抵抗値を下げることを可能にする。
【0013】
このように酸素イオン伝導性組成とのサーメットの表面にRh、Ru、Pd、Pt若しくはそれらの合金である貴金属微粉末を、コロイド溶液を塗布し、乾燥若しくは焼成することで担持するこの発明による方法では、コロイド溶液中の微粉末のサイズ、溶媒の揮発性あるいは塗布量などを制御することで表面に担持する微粉末のサイズを制御することが容易であり、またコロイドを混合使用することで微粉末の組成を制御することも容易であることから、電極反応抵抗値が小さくなるように貴金属微粉末の制御を可能にする。
【0014】
【発明の実施の形態】
【実施例1】
La0.9Sr0.1Ga0.80Mg0.115Co0.085O3(LSGMC)粉末、エチルセルロースおよびαテルピネオールを混練することでペースト化し、LSGMCのペレットに1300℃・1時間保持にて焼き付け、LSGMCの多孔質膜を作製した。作製した多孔質膜表面をAgで被覆する方法として、
(a)電解メッキによってAgを析出させた後700℃・15分間保持することで安定化させる、
(b)ネオデカン酸Agを多孔質膜に含浸させた後に900℃・15分間保持にて熱分解してAgを析出させる、
(c)ネオデカン酸Agを熱分解してAgを析出させた後に水中で電極の上下表面間に電位差を与えることでAgのイオンマイグレーションを生じさせて電極中の厚さ方向のAg濃度を均一でAg膜の電子伝導率が大きくなるように移動させる、
以上3種類を採用した例について、Ag−LSGMC電極の界面導電率を図1に示す。図1には、表面平滑なLSGMCペレット上にAgを電解メッキにより析出させた後に700℃・15分間保持によって安定化させたAg電極、ペースト焼付け法により作製した従来方法の代表である(La0.8Sr0.2)CoO3電極(LSC)の特性も併せて示す。LSC電極の界面導電率は650℃において0.1S/cm2、600℃以下では測定が困難なほど小さかった。一方、表面平滑なLSGMC上のAg電極でも大きな界面導電率を示したが、本発明によるAg−LSGMC電極の界面導電率はいずれも更に大きく、SOFC電極として優れていることがわかる。
【0015】
【実施例2】
(d)Sc2O3を10モル%固溶したZrO2(SSZ)粉末とAg粉末とを遊星回転ポットミルを用いて減圧下で分散混合することによってAg−SSZサーメットとしてから、エチルセルロースおよびαテルピネオールと混練することでペースト化し、Y2O3を8モル%固溶したZrO2(YSZ)のペレットに900℃・15分間保持にて焼き付けたAg−SSZ電極と、
(e)同様の方法でCe0.8Gd0.2O2(GDC)粉末を用いてLSGMCペレット上に作製したAg−GDC電極の、
各々の界面導電率を図2に示す。本発明によるAg−SSZ電極もAg−GDC電極も界面導電率は大きく、SOFC電極として優れていることがわかる。Ag−SSZ電極を500℃大気中で500mVの直流電圧をアノード/カソード間に印加した状態で保持して界面導電率の変化を調べた結果を図3に示す。界面導電率の変化は小さく、優れた耐久性を有していることがわかる。
【0016】
【実施例3】
LSGMCのペレットの両面にAg−LSGMCア電極を形成した。更に、アノード側のAg−LSGMCアノード電極上に粒径が2nmであるRh、Ru、PdあるいはPtのコロイド粒子を担持した。図4にメタンを燃料とした場合の電流−電圧特性を、これらの貴金属コロイドを担持しなかった場合との比較として示す。これらの貴金属コロイドを担持することで電圧効果が小さくなり発電特性が向上することがわかる。
【0017】
この発明の特定の実施例を説明したが、頭書の特許請求範囲に示すこの発明の範囲から逸脱することなく種々の設計変更が想到されることを理解されたい。
【0018】
【発明の効果】
この発明は、400℃から600℃という低温で運転可能な固体酸化物燃料電池を実現することで、発電機として用いる場合の短時間では起動しないという固体酸化物燃料電池の課題を解決する。
更にこの発明は、固体酸化物燃料電池を燃料改質器として用いることで、水素の他に電気エネルギーも得ることを可能にすることで固体高分子燃料電池の小型化を可能にするので、固体高分子燃料電池の電極材料であるPtやRuといった希少な貴金属の使用量を減らすことが可能となり、固体高分子燃料電池の安定供給に関する課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【図1】高温で焼成したLSGMC多孔質膜表面にAgを析出・被覆した電極の界面導電率
【図2】ペースト焼付け法によるAg−SSZ、Ag−GDC電極の界面導電率
【図3】ペースト焼付け法によるAg−SSZ電極の耐久性
【図4】メタンを燃料とした場合のAg−LSGMCアノード電極上に貴金属微粉末を担持することによる電流−電圧特性
【発明の属する技術分野】
本発明は、400℃から600℃で使用する、固体酸化物燃料電池および燃料改質器の、カソード電極およびアノード電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池を自動車などの移動体の動力発電や家庭用コジェネレーションなどの小規模定置式発電に用いるには、起動を短時間で行うことや小型化などが要求される。従来の固体酸化物燃料電池は、ランタンマンガネートなどの電子伝導体酸化物をカソード電極とし安定化ジルコニアとNiとのサーメットをアノード電極としており運転温度が1000℃と高すぎることから短時間での起動が困難であり、これらの用途へは不適切である。そこで、カソード電極としてランタンコバルタイトなどの酸素イオンと電子の混合伝導体酸化物を用いることにより運転温度を下げようとする試みもされている。
【0003】
またこれらの用途に固体高分子燃料電池を用いることも研究されているが、固体高分子燃料電池は燃料として高純度の水素を要求することから、化石燃料から水素を生成する燃料改質器が必要である。燃料改質は水蒸気改質法や部分酸化法などで行うが、得られるエネルギーは水素のみである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
固体酸化物燃料電池では、カソード電極としてランタンコバルタイトなどの酸素イオンと電子の混合伝導体酸化物を用いても比較的小さな分極抵抗となるのは約800℃以上であり、400℃から600℃という低温では電極での反応抵抗が大きすぎる課題がある。また、NiとYSZとのサーメットであるアノード電極でも400℃から600℃という低温では分極抵抗が多きすぎるという課題や、化石燃料を用いるとカーボンが容易に析出するという課題もある。
【0005】
また、燃料改質を水蒸気改質法で行う場合は、吸熱反応であるがゆえに反応温度を維持するために燃料の一部を燃焼によって浪費しなければならない。燃料改質を部分酸化法で行う場合は、化石燃料量あたりの生成水素が少ないので多量の化石燃料を必要とする。これらは、従来の燃料改質器では一定量の発電をするには多くの化石燃料を必要とするという課題である。さらに従来の燃料改質器では得られるエネルギーは水素のみであって電気は得られないことから、必要量の電気を得るためには固体高分子燃料電池が大型となるので、固体高分子燃料電池の電極材料であるPtやRuという希少な貴金属を多量に必要とするので燃料電池の安定供給が困難である課題もある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の膜の表面を全部もしくは一部をAg膜によって被覆するこの発明では、Agは電子伝導性でありながら酸素を透過させることから、カソード電極材料として用いる場合にはAg膜と酸素イオン伝導性組成物の膜との界面全てが酸素の潜り込み場として機能し、アノード電極材料として用いる場合にはAg膜と酸素イオン伝導性組成物の膜との界面全てが酸素イオンの噴出しの場として機能するので、電極反応の分極抵抗を小さくすることを可能にする。
【0007】
この発明では、電子伝導性と酸素透過性を有するAgのメッキを施す酸素イオン伝導性固体電解質としてAサイトがLaとSrでありBサイトがGaとMgあるいは一部をCoで置換した化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有する酸化物やScで一部を置換したジルコニアやSmやGdで一部を置換したセリアという化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸化物とすることによって、400℃から600℃の温度域での酸素イオン伝導率が高くなるので、カソード反応における酸素イオンの潜り込みやアノード反応における酸素イオンの噴出しの場を多くした上で電極中の酸素イオンの移動抵抗を小できるので、電極反応の分極抵抗を更に小さくすることを可能にする。
【0008】
この発明では、電子伝導性と酸素透過性を有するAgのメッキを施す酸素イオン伝導性固体電解質の表面を凹凸にすることや多孔質とすることによって、カソード電極材料として用いる場合の酸素イオンの潜り込み場やアノード電極材料として用いる場合の酸素イオンの噴出し場を更に増やすことが可能であるから、電極反応の分極抵抗を更に小さくすることを可能にする。
【0009】
予め化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物粉末のペーストを塗布してから十分な高温で焼成することによって表面凹凸が大きなあるいは多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜を形成し、メッキによってあるいはAg化合物やAgペーストの含浸と熱分解よってこの酸素イオン伝導性組成物膜表面の全部若しくは一部にAgを析出させるというこの発明による製造方法では、多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜は十分に高温で焼成されることにより結晶粒界が少なくなるので酸素イオン伝導率が十分に高くなる。その結果、カソード電極中のAgと多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜との界面から潜り込んだ多量の酸素イオンがアノード電極中のAgと多孔質な酸素イオン伝導性固体電解質膜との界面まで移動するためのイオン伝導抵抗を小さくできるので、電極反応の分極抵抗を小さくすることを可能にする。
【0010】
表面凹凸が大きな若しくは多項質なサーメット構造を有する複合組成物を水に浸した状態でこの複合組成物の上部表面と電解質膜との界面である下部表面との間に電位差を与えてAgをイオンマイグレーションさせるこの発明による製造方法では、組成物の厚さ方向のAg濃度が均一でAg膜の電子伝導率が大きくなるようにすなわちAgが連続膜となるように移動するので、カソード電極材料として用いる場合の酸素イオンの潜り込み場やアノード電極材料として用いる場合の酸素イオンの噴出し場を更に増やすことを可能にする。
【0011】
化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の粉末とAg粉末とをボールミルで分散混合させた後に樹脂や溶剤と混練してAgペーストとしてから塗布・焼成によって表面凹凸が大きい若しくは高い多項性を有するサーメット構造を有する複合組成物を形成するこの発明による製造方法では、酸素イオン伝導性組成物とAg粉末とは界面エネルギーを小さくするように強く固着させる結果としてAg同士の凝集を生じ難くするので、高温耐久性を向上させることを可能にする。
【0012】
化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の膜と、その表面の全部若しくは一部を被覆するAg膜とによってなる表面の凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメットの表面に、Rh、Ru、Pd、Pt若しくはそれらの合金である貴金属微粉末を担持することによりなるこの発明の電極では、これらの貴金属微粉末が化石燃料の酸化触媒として働くので、特にアノード電極とした場合に電極反応抵抗値を下げることを可能にする。
【0013】
このように酸素イオン伝導性組成とのサーメットの表面にRh、Ru、Pd、Pt若しくはそれらの合金である貴金属微粉末を、コロイド溶液を塗布し、乾燥若しくは焼成することで担持するこの発明による方法では、コロイド溶液中の微粉末のサイズ、溶媒の揮発性あるいは塗布量などを制御することで表面に担持する微粉末のサイズを制御することが容易であり、またコロイドを混合使用することで微粉末の組成を制御することも容易であることから、電極反応抵抗値が小さくなるように貴金属微粉末の制御を可能にする。
【0014】
【発明の実施の形態】
【実施例1】
La0.9Sr0.1Ga0.80Mg0.115Co0.085O3(LSGMC)粉末、エチルセルロースおよびαテルピネオールを混練することでペースト化し、LSGMCのペレットに1300℃・1時間保持にて焼き付け、LSGMCの多孔質膜を作製した。作製した多孔質膜表面をAgで被覆する方法として、
(a)電解メッキによってAgを析出させた後700℃・15分間保持することで安定化させる、
(b)ネオデカン酸Agを多孔質膜に含浸させた後に900℃・15分間保持にて熱分解してAgを析出させる、
(c)ネオデカン酸Agを熱分解してAgを析出させた後に水中で電極の上下表面間に電位差を与えることでAgのイオンマイグレーションを生じさせて電極中の厚さ方向のAg濃度を均一でAg膜の電子伝導率が大きくなるように移動させる、
以上3種類を採用した例について、Ag−LSGMC電極の界面導電率を図1に示す。図1には、表面平滑なLSGMCペレット上にAgを電解メッキにより析出させた後に700℃・15分間保持によって安定化させたAg電極、ペースト焼付け法により作製した従来方法の代表である(La0.8Sr0.2)CoO3電極(LSC)の特性も併せて示す。LSC電極の界面導電率は650℃において0.1S/cm2、600℃以下では測定が困難なほど小さかった。一方、表面平滑なLSGMC上のAg電極でも大きな界面導電率を示したが、本発明によるAg−LSGMC電極の界面導電率はいずれも更に大きく、SOFC電極として優れていることがわかる。
【0015】
【実施例2】
(d)Sc2O3を10モル%固溶したZrO2(SSZ)粉末とAg粉末とを遊星回転ポットミルを用いて減圧下で分散混合することによってAg−SSZサーメットとしてから、エチルセルロースおよびαテルピネオールと混練することでペースト化し、Y2O3を8モル%固溶したZrO2(YSZ)のペレットに900℃・15分間保持にて焼き付けたAg−SSZ電極と、
(e)同様の方法でCe0.8Gd0.2O2(GDC)粉末を用いてLSGMCペレット上に作製したAg−GDC電極の、
各々の界面導電率を図2に示す。本発明によるAg−SSZ電極もAg−GDC電極も界面導電率は大きく、SOFC電極として優れていることがわかる。Ag−SSZ電極を500℃大気中で500mVの直流電圧をアノード/カソード間に印加した状態で保持して界面導電率の変化を調べた結果を図3に示す。界面導電率の変化は小さく、優れた耐久性を有していることがわかる。
【0016】
【実施例3】
LSGMCのペレットの両面にAg−LSGMCア電極を形成した。更に、アノード側のAg−LSGMCアノード電極上に粒径が2nmであるRh、Ru、PdあるいはPtのコロイド粒子を担持した。図4にメタンを燃料とした場合の電流−電圧特性を、これらの貴金属コロイドを担持しなかった場合との比較として示す。これらの貴金属コロイドを担持することで電圧効果が小さくなり発電特性が向上することがわかる。
【0017】
この発明の特定の実施例を説明したが、頭書の特許請求範囲に示すこの発明の範囲から逸脱することなく種々の設計変更が想到されることを理解されたい。
【0018】
【発明の効果】
この発明は、400℃から600℃という低温で運転可能な固体酸化物燃料電池を実現することで、発電機として用いる場合の短時間では起動しないという固体酸化物燃料電池の課題を解決する。
更にこの発明は、固体酸化物燃料電池を燃料改質器として用いることで、水素の他に電気エネルギーも得ることを可能にすることで固体高分子燃料電池の小型化を可能にするので、固体高分子燃料電池の電極材料であるPtやRuといった希少な貴金属の使用量を減らすことが可能となり、固体高分子燃料電池の安定供給に関する課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【図1】高温で焼成したLSGMC多孔質膜表面にAgを析出・被覆した電極の界面導電率
【図2】ペースト焼付け法によるAg−SSZ、Ag−GDC電極の界面導電率
【図3】ペースト焼付け法によるAg−SSZ電極の耐久性
【図4】メタンを燃料とした場合のAg−LSGMCアノード電極上に貴金属微粉末を担持することによる電流−電圧特性
Claims (7)
- 化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の膜と、その表面の全部もしくは一部を被覆するAg膜とによってなり、表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物。
- (a)化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物が、Aサイトがランタノイドから選択した少なくとも1つの元素とアルカリ土類から選択した少なくとも1つの元素よりなりBサイトが、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、CoおよびGaから選択した少なくとも1つの元素よりなり、特に好ましくは、AサイトがLaとSrでありBサイトがGaとMgあるいは一部をCoで置換した組成物であるか、
(b)化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物が、Ce、Pr、Tb、あるいは、ThからAmにいたるアクチノイド、さらにはZrあるいはUの二酸化物中の金属元素を一部、Sc、Y、あるいはランタノイドで置換することによりなり、特に好ましくは、Scで一部を置換したジルコニアかSmやGdで一部を置換したセリアである、
酸素イオン伝導性組成物膜とその表面の全部若しくは一部を被覆するAg膜とによってなる請求項1の表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物。 - 化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の粉末を樹脂や溶剤と混練することによりなるペーストを塗布し、十分な高温で焼成することで表面凹凸が大でありながら若しくは多孔質でありながら酸素イオン伝導抵抗が小さな膜を形成した後、その表面の全部若しくは一部に、メッキによってあるいはAg化合物やAgペーストを含浸させたてから熱分解することによってAgを析出させることによりなる、請求項1若しくは2の表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物の製造方法。
- 請求項3の複合組成物を水に浸した状態で請求項3の複合組成物の上部表面と電解質膜との界面である下部表面との間に電位差を与えて、Agをイオンマイグレーションさせることで、Ag同士を連結させながら組成物の厚さ方向におけるAg濃度を均一化させることによりなる、請求項1若しくは2の表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物の製造方法。
- 化学式ABO3のペロブスカイトのような結晶構造を有するか若しくは化学式AO2の蛍石のような結晶構造を有する酸素イオン伝導性組成物の粉末とAg粉末とをボールミルで分散混合させてから樹脂や溶剤と混練することによりなるAgサーメットペーストを塗布、焼成することによりなる、請求項1若しくは2の表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物の製造方法。
- 請求項1若しくは2の複合組成物表面にRh、Ru、Pd、Ptあるいはそれらの合金である貴金属微粉末を担持させた、表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物。
- 直径が2nmから100nmのRh、Ru、Pd、Ptあるいはそれらの合金である貴金属微粉末を分散させたコロイドを請求項1若しくは2の複合組成物に塗布し、乾燥若しくは焼成することからなる、請求項6の表面凹凸が大きい若しくは多孔質であるサーメット構造を有する複合組成物の製造方法。
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JP2008243744A (ja) * | 2007-03-28 | 2008-10-09 | Univ Of Tokyo | 金属薄膜、金属薄膜の形成方法、及びその金属薄膜を用いた固体酸化物形燃料電池、水素ポンプ、メンブレンリアクター、水素精製装置及び固体酸化物形水蒸気電解装置。 |
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JP2020072047A (ja) * | 2018-11-01 | 2020-05-07 | 太陽誘電株式会社 | 燃料電池、燃料電池スタック、およびそれらの製造方法 |
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2003
- 2003-04-28 JP JP2003158687A patent/JP2004327413A/ja active Pending
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