JP2004325504A - 光ファイバテープ心線の単心分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5のみを破断させる。
【解決手段】アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬した繊維部材51によって光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’を挟んだりすることにより、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、しごき部材31,37によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5をしごくことにより、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを光ファイバ心線3毎に単心分離する。
【選択図】 図2
【解決手段】アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬した繊維部材51によって光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’を挟んだりすることにより、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、しごき部材31,37によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5をしごくことにより、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを光ファイバ心線3毎に単心分離する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバテープ心線の被処理部を単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、光ファイバケーブルの内部には、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化してなる光ファイバテープ心線を多数枚収容されている。また、前記光ファイバケーブルの有効利用を図るために、前記光ファイバケーブルを構成する光ファイバテープ心線の一部(被処理部)を光ファイバ心線毎に単心分離することは広く行われている。そして、光ファイバテープ心線の単心分離方法の技術としては例えば特許文献1に示すような技術があり、次のような構成を有している。
【0003】
即ち、前記光ファイバテープ心線をスライダにおけるセット部に前記光ファイバテープ心線の幅方向へ移動不能にセットする。次に、前記スライダに設けられた複数の第1分離刃によって、それぞれ前記テープコート層の表側部分における対応する心線境界部位に切り目を入れると共に、前記スライダに設けられた複数の第2分離刃によって、それぞれ前記テープコート層の裏側部分における対応する心線境界部位に切り目を入れる。ここで、前記心線境界部位とは、隣接する前記光ファイバ心線の境界部分の位置のことをいう。そして、複数の前記第1分離刃及び複数の前記第2分離刃を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記スライダと一体的に移動させることにより、切り目が拡大して前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0004】
【特許文献1】
特許3309378号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記光ファイバテープ心線の単心分離を確実に行うためには、前記テープコート層の切り目を前記光ファイバ心線の径に応じて深くする必要がある。そのため、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における複数の前記光ファイバ心線の配列状態に乱れがある場合、複数の前記第1分離刃又は複数の前記第2分離刃の刃間ピッチに位置ずれがある場合、前記スライダにおける前記セット部に対する前記光ファイバテープ心線のセット状態が適切でない場合等にあっては、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバを誤って切断することがある。
【0006】
そこで、前述の課題を解決するため、本発明にあっては、前記テープコート層に切り目を入れることなく、前記テープコート層を破断させることを可能にした光ファイバテープ心線の単心分離方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明にあっては、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を押圧しつつ、前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする。
【0008】
ここで、予め前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近の弾性率を低下させることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さく設定できる。
【0009】
また、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層をしごくことにより、前記しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部との間の摩擦力によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層にせん断応力を発生させ、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の前記テープコート層を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0010】
なお、「前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させる」とは、前記光ファイバテープ心線を固定した状態の下で、前記しごき部材を前記長手方向へ移動させることの他に、前記しごき部材を固定した状態の下で、前記光ファイバテープ心線を前記長手方向へ移動させることも含まれる。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
第1しごき部材と第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を挟むように押圧しつつ、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面及び裏面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする。
【0012】
ここで、予め前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近の弾性率を低下させることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記第1しごき部材と前記第2しごき部材による押圧力を小さくできる。
【0013】
また、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面及び裏面をしごくことにより、前記第1しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の表面との間の摩擦力及び前記第2しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の裏面との間の摩擦力によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層にせん断応力を発生させ、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0014】
なお、「前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させる」とは、前記光ファイバテープ心線を固定した状態の下で、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記長手方向へ移動させることの他に、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を固定した状態の下で、前記光ファイバテープ心線を前記長手方向へ移動させることも含まれる。
【0015】
請求項3に記載の発明にあっては、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近におけるテープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を単心分離台に支持せしめ、
前記光ファイバテープ心線の前記被処理部をしごき部材によって前記単心分離台側へ押圧しつつ、前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする。
【0016】
ここで、予め前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近の弾性率を低下させることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さくできる。
【0017】
また、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の表面との間の摩擦力によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分にせん断応力を発生させ、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分を破断等によって除去して、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0018】
更に、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分のみを破断させており、換言すれば前記しごき部材によるしごきによっても前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分は破断されないため、前記しごき部材によってしごく際に、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分によって複数の前記光ファイバテープ心線は保持される。
【0019】
なお、「前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させる」とは、前記光ファイバテープ心線を固定した状態の下で、前記しごき部材を前記長手方向へ移動させることの他に、前記しごき部材を固定した状態の下で、前記光ファイバテープ心線を前記長手方向へ移動させることも含まれる。
【0020】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれか請求項に記載の発明特定事項の他に、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
ここで、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きいため、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくできる。
【0022】
請求項5に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれか請求項に記載の発明特定事項の他に、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記光ファイバ心線における着色層の構成材料の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【0023】
ここで、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記光ファイバ心線における前記着色層の構成材料の弾性率よりも小さいため、前記しごき部材の硬度を前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできる。
【0024】
請求項6に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれか請求項に記載の発明特定事項の他に、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における着色層の構成材料の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【0025】
ここで、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における前記着色層の構成材料の弾性率よりも小さいため、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
第1の発明の実施の形態について図1から図6を参照して説明する。
【0027】
図1及び図2は、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図であって、図3(a)は、アルコール溶液に光ファイバテープ心線の被処理部付近を漬けた状態を示す図であって、図3(b)は、アルコール溶液が浸漬した繊維部材によって光ファイバテープ心線の被処理部付近を挟んだ状態を示す図であって、図4は、発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の断面図であって、図5は、第1の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図であって、図6は、図3におけるI−I線に沿った図である。「左右」とは、図1(a),図2(a),図5において左右,図6において紙面に向かって表裏のことをいい、「前後」とは、図1(a),図2(a),図5において紙面に向かって表裏,図6において右左のことをいい、「上下」とは、図1(a),図2(a),図5,図6において上下のことをいう。
【0028】
第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明する前に、まず、図5を参照して光ファイバテープ心線1の一般的な構成について説明する。
【0029】
光ファイバテープ心線1は、複数本の光ファイバ心線3と、複数本の光ファイバ心線3を並べてテープ状に一体化するテープコート層5とを備えている。更に、各光ファイバ心線3は、光ファイバ素線7と、この光ファイバ素線7の外周部に一体成形された着色層9とをそれぞれ有している。ここで、テープコート層5及び光ファイバ心線3における着色層9は紫外線硬化型樹脂によりそれぞれ構成されている。
【0030】
次に、図3及び図4を参照して、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法に使用される単心分離工具11について詳細に説明する。
【0031】
即ち、単心分離工具11は工具ベース13を備えており、この工具ベース13は、左右方向(工具ベースの長手方向)に離隔した一対の支持ブロック15L,15Rと、一対の支持ブロック15L,15Rを連結する複数(本発明の実施の形態にあっては2つ)の連結バー17とからなっている。ここで、各連結バー17は左右方向へ延びるようにそれぞれ構成されている。
【0032】
また、一方の支持ブロック15L,15Rには光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)19Lがクランプガイド(図示省略)を介して左右方向へ位置調節可能に設けられており、他方の支持ブロック15Rには光ファイバテープ心線1の被処理部1aの右側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)19Rが設けられている。そして、一方のテープ心線クランプ19Lを左右方向へ位置調節するため、一方の支持ブロック15Lにはブラケット21が設けられており、このブラケット21には一方のテープ心線クランプ19Lの左面に当接可能な調節ねじ23が螺合して設けられてあって、この調節ねじ23は螺合作用により左右方向へ移動可能である。また、各テープ心線クランプ19L,19Rの把持部は熱可塑性樹脂等の合成樹脂によりそれぞれ構成されている。なお、一対のテープ心線クランプ19L,19Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を把持する代わりに、別の一対のテープ心線保持部材により光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を吸着するようにしても差し支えない。
【0033】
そして、複数の連結バー17には左右方向へ移動可能なスライダ25が設けられており、このスライダ25は上下に対向した第1アーム27と第2アーム29を備えている。スライダ25における第1アーム27には光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごく第1しごき部材31が設けられており、この第1しごき部材31はスライダ25に対して一対のしごきガイド33を介して回転不能かつ上下方向へ移動可能に構成されてあって、第1しごき部材27の頂部(上部)には進入穴35が形成されている。また、スライダ25における第2アーム29には光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏面をしごく第2しごき部材37が設けられており、この第2しごき部材37は、スライダ25に対して固定されてあって、第1しごき部材31と協働して光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を挟むように押圧可能である。
【0034】
ここで、第1しごき部材31及び第2しごき部材37は熱可塑性樹脂によりそれぞれ構成されており、第1しごき部材31及び第2しごき部材37の構成材料(熱可塑性樹脂)の弾性率は、テープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)における低下後の弾性率(アルコール作用によって低下した弾性率、後述参照)よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の構成材料(紫外線硬化型樹脂)よりも小さくなるようにそれぞれ構成してある。これによって、第1しごき部材31及び第2しごき部材37の硬度をテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできる。なお、第1しごき部材31及び第2しごき部材37は熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化型樹脂により構成されても差し支えない。
【0035】
更に、スライダ25には第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を調節する押圧力調節機構39が設けられている。
【0036】
即ち、スライダ25における第1アーム27には調節ねじ41が螺合して設けられており、この調節ねじ41は螺合作用により上下方向(第2しごき部材37に接近離反する接近方向・離反方向)へ移動可能である。また、調節ねじ41の外周部にはピン状又はフランジ状の支持突起43が有してあって、調節ねじ41の先端部(下端部)は第1しごき部材31の進入穴35に進入可能である。そして、調節ねじ41における支持突起43と第1しごき部材31の間には第1しごき部材31を下方向(前記接近方向)へ付勢するスプリング45が座金47を介して設けられている。
【0037】
従って、調節ねじ41を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング45を徐々に縮めると、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくすることができる。なお、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を解除する場合には、調節ねじ41を螺合作用により上方向(前記離反方向)へ移動させてスプリング45を元の状態に復帰させる。
【0038】
前述の単心分離工具11を使用した第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明すると、次のようになる。
【0039】
即ち、図3(a)に示すように容器49内におけるアルコール濃度40%以上のアルコール溶液に光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’を漬けたり、或いは図3(b)に示すようにアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬した紙,布,不織布等の繊維部材51によって光ファイバテープ心線1の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)の弾性率をアルコール作用によって低下させる。
【0040】
光ファイバテープ心線の被処理部付近におけるテープコート層の弾性率をアルコール作用によって低下させた後に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を第1しごき部材31と第2しごき部材37の間に挿入する。次に、一方のテープ心線クランプ19Lによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持すると共に、他方のテープ心線クランプ19Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの右側を把持する。これによって、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを工具ベース13に対して固定することができる。なお、調節ねじ23を螺合作用より左方向へ僅かに移動させて、一方のテープ心線クランプ19Lを他方のテープ心線クランプ19Rに僅かに離反するように左方向へ位置調節して、光ファイバテープ心線1を弛まないようにしておく。
【0041】
光ファイバテープ心線1の被処理部1aを工具ベース13に対して固定した後に、調節ねじ41を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング45を徐々に縮めると、第1しごき部材31と第2しごき部材37の協働によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を挟むように押圧する。そして、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧状態を保ちつつ、第1しごき部材31及び第2しごき部材37を左右方向へスライダ25と一体的に移動させて、第1しごき部材31及び第2しごき部材37によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面及び裏面をしごく。これにより、第1しごき部材31と光ファイバテープ心線1の被処理部1aの表面との間の摩擦力及び第2しごき部材37と光ファイバテープ心線1の被処理部1aの裏面との間の摩擦力によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5にせん断応力を発生させて、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5のみを破断させる。
【0042】
以上により、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを光ファイバ心線3毎に単心分離することができる。
【0043】
ここで、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させているため、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さく設定できる。
【0044】
また、第1しごき部材31及び第2しごき部材37によるしごき回数は一回に限られるものではなく、複数回としても差し支えない。即ち、第1しごき部材31及び第2しごき部材37による一回目のしごきにあっては、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さく設定し、第1しごき部材31と第2しごき部材37による2回目以降のしごきにあっては、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくする。これによって、テープコート層5の特性(テープコート層5の材料特性,寸法特性を含む)に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことができる。
【0045】
従って、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法によれば、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5のみを破断させるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中に光ファイバ心線3を誤って切断することがなくなる。
【0046】
また、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さく設定できるため、光ファイバ心線3の微小な曲がりを抑制して、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を小さくすることができる。特に、テープコート層5の特性に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことが可能であるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を極力小さくできる。
【0047】
更に、第1しごき部材31及び第2しごき部材37の硬度をアルコール作用による低下後におけるテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできるため、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の破断が容易になって、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業能率が向上すると共に、光ファイバテープ心線1の作業中に光ファイバ心線3における着色層9に外傷がほとんど生じなくなる。
【0048】
次に、第2の発明の実施の形態について図7から図12を参照して説明する。
【0049】
図7から図9は、第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図であって、図10は、第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図であって、図11は、第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の左側面図であって、図12は、図10におけるII−II線に沿った図である。ここで、「左右」とは、図7(a),図8(a),図10において左右,図11及び図12において紙面に向かって表裏のことをいい、「前後」とは、図7(a),図8(a),図10において紙面に向かって表裏,図11及び図12において右左のことをいい、「上下」とは、図7(a),図8(a),図10から図12において上下のことをいう。
【0050】
第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明する前に、図10から図12を参照して、第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法に使用される単心分離工具53について説明する。
【0051】
即ち、第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具53は工具ベースとしての単心分離台55を備えており、この単心分離台(工具ベース)55は、左右方向へ延びてあって、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを支持するテープ心線支持面(テープ心線支持部)55fを有している。
【0052】
単心分離台55におけるテープ心線支持面55fの左側には光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)57Lが設けられており、単心分離台55におけるテープ心線支持面55fの右側には光ファイバテープ心線1の右側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)57Rが設けられている。各テープ心線クランプ57L,57Rの把持部はそれぞれ熱可塑性樹脂等の合成樹脂により構成されている。なお、一対のテープ心線クランプ57L,57Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を把持する代わりに、別の一対のテープ心線保持部材により光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を吸着するようにしても差し支えない。
【0053】
単心分離台55には一対の支柱59L,59Rが左右に離隔して立設されており、一対の支柱59L,59Rの間には左右方向へ延びたガイドバー61が架設されてあって、単心分離台55の後部には左右方向へ延びかつガイドバー61に対して平行なガイドレール63が設けられている。このガイドレール63には左右方向へ移動可能なスライダ65が設けられており、このスライダ65の上部はガイドバー61に左右方向へ移動可能に支持されている。
【0054】
スライダ65は前方向へ延びた支持アーム67を備えてあって、スライダ65における支持アーム67には光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごくしごき部材69が設けられている。このしごき部材69はスライダ65に対して一対のしごきガイド71を介して回転不能かつ上下方向へ移動可能に構成されてあって、しごき部材69の頂部(上部)には進入穴73が形成されている。
【0055】
ここで、しごき部材69は熱可塑性樹脂により構成されており、しごき部材69の構成材料(熱可塑性樹脂)の弾性率は、テープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)における低下後の弾性率(アルコール作用によって低下した弾性率、後述参照)よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の構成材料(紫外線硬化型樹脂)よりも小さくなるように設定してある。これによって、しごき部材69の硬度をテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできる。なお、しごき部材69は熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化型樹脂により構成されても差し支えない。
【0056】
更に、スライダ65にはしごき部材69による押圧力を調節する押圧力調節機構75が設けられている。
【0057】
即ち、スライダ65における支持アーム67には調節ねじ77が螺合して設けられており、この調節ねじ77は螺合作用により上下方向(テープ心線支持面55fに接近離反する接近方向・離反方向)へ移動可能である。また、調節ねじ77の外周部にはピン状又はフランジ状の支持突起79が有してあって、調節ねじ77の先端部(下端部)はしごき部材69の進入穴73に進入可能である。そして、調節ねじ77における支持突起79としごき部材69の間にはしごき部材69を下方向(前記接近方向)へ付勢するスプリング81が座金83を介して設けられている。
【0058】
従って、調節ねじ77を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング81を徐々に縮めると、しごき部材69による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくすることができる。なお、しごき部材69による押圧力を解除する場合には、調節ねじ77を螺合作用により上方向(前記離反方向)へ移動させてスプリング81を元の状態に復帰させる。
【0059】
前述の単心分離工具53を使用した第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明すると、次のようになる。
【0060】
即ち、まず、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法と同様に、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)の弾性率をアルコール作用によって低下させる。
【0061】
次に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を単心分離台(工具ベース)55におけるテープ心線支持面55fとしごき部材69の間に挿入する。そして、一方のテープ心線クランプ59Lによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持すると共に、他方のテープ心線クランプ59Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの右側を把持する。これによって、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを単心分離台55におけるテープ心線支持面55fに対して固定することができる。
【0062】
光ファイバテープ心線1の被処理部1aを単心分離台55におけるテープ心線支持面55fに対して固定した後に、調節ねじ77を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング81を徐々に縮めると、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5をテープ心線支持面55f側へ押圧する。そして、しごき部材69による押圧状態を保ちつつ、しごき部材69を左右方向へスライダ65と一体的に移動させて、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごく。これにより、しごき部材69と光ファイバテープ心線1の被処理部1aの表面との間の摩擦力によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5にせん断応力を発生させて、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表側部分のみを破断させる。
【0063】
ここで、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごくことにより、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表側部分のみを破断させており、換言すればしごき部材69によるしごきによっても光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分は破断されないため、しごき部材69によってしごく際に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分によって複数の光ファイバ心線3は保持される。
【0064】
以上により、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分を破断等によって除去して、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを光ファイバ心線3毎に単心分離することができる。
【0065】
ここで、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させているため、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、しごき部材69による押圧力を小さく設定できる。
【0066】
また、しごき部材69によるしごき回数は一回に限られるものではなく、複数回としても差し支えない。即ち、しごき部材69による一回目のしごきにあっては、しごき部材69による押圧力を小さく設定し、しごき部材69による2回目以降のしごきにあっては、しごき部材69による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくする。これによって、テープコート層5の特性(テープコート層5の材料特性,寸法特性を含む)に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことができる。
【0067】
従って、第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法によれば、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表側部分のみを破断させるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中に光ファイバ心線3を誤って切断することがなくなる。
【0068】
また、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、しごき部材69による押圧力を小さく設定できると共に、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごく際に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分によって複数の光ファイバ心線3は保持されるため、光ファイバ心線3の微小な曲がりを抑制して、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を小さくできる。特に、テープコート層5の特性に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことが可能であるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を極力小さくできる。
【0069】
更に、しごき部材69の硬度をテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできるため、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の破断が容易になって、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業能率が向上すると共に、光ファイバテープ心線1の作業中に光ファイバ心線3における着色層9に外傷がほとんど生じなくなる。
【0070】
なお、本発明は、前述の発明の実施の形態の説明に限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他種々の態様で実施可能である。
【0071】
【実施例】
次に、実施例について簡単に説明する。
【0072】
テープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)における初期の弾性率E1を600MPaとし、テープコート層5の構成材料における低下後の弾性率をE1’とし、着色層9の構成材料(紫外線硬化型樹脂)の弾性率E2を1020MPaとし、第1しごき部材31及び第2しごき部材37(又はしごき部材69)の構成材料(熱可塑性樹脂)の弾性率E3を変更して、第1(又は第2)の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法を用いて単心分離の試験を行い、その結果をまとめると、表1及び表2に示すようになる。なお、テープコート層5の構成材料における低下後の弾性率はE1’とする。
【0073】
【表1】
【表2】
ここで、単心分離の可否の欄における○は、テープコート層5が破断して単心分離できたことを示し、単心分離の可否の欄における×は、テープコート層5が破断せずに単心分離ができなかったことを示している。
【0074】
また、着色層の外傷の有無の欄における○は、単心分離後において着色層9に外傷が無かったことを示しており、着色層9の外傷の有無の欄における×は、単心分離後において着色層9に外傷があったことを示している。なお、着色層9の外傷の有無に関しては、単心分離後において光ファイバ心線3の一部分(長さ100mmの部分)を顕微鏡で観察して判断した。
【0075】
更に、作業時の伝送損失変動は、波長1.55μmの光源及びパワーメータを用いて各光ファイバ心線3の伝送損失変動を調査した結果の最大の伝送損失変動を示している。
【0076】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層に切れ目を入れることなく、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層のみを破断させるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバ心線を誤って切断することがなくなる。
【0077】
また、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さく設定できるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率が向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を小さくすることができる。
【0078】
請求項2に記載の発明によれば、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層に切れ目を入れることなく、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層のみを破断させるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバ心線を誤って切断することがなくなる。
【0079】
また、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記第1しごき部材と前記第2しごき部材による押圧力を小さくできるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率が向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を小さくすることができる。
【0080】
請求項3に記載の発明にあっては、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層に切れ目を入れることなく、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分のみを破断させるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバ心線を誤って切断することがなくなる。
【0081】
また、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さく設定できるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率が向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の微小な曲がりを抑制して、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を小さくすることができる。特に、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごく際に、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分によって複数の前記光ファイバテープ心線は保持されるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を極めて小さくすることができる。
【0082】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明の効果の他に、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくできるため、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の破断が容易になって、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率がより一層向上する。
【0083】
請求項5に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明の効果の他に、前記しごき部材の硬度を前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできるため、前記光ファイバテープ心線の作業中に前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記着色層に外傷がほとんど生じなくなる。
【0084】
請求項6に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明の効果の他に、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできるため、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の破断が容易になって、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率がより一層向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の作業中に前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記着色層に外傷がほとんど生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図2】第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図3】図3(a)は、アルコール溶液に光ファイバテープ心線の被処理部付近を漬けた状態を示す図であって、図3(b)は、アルコール溶液が浸漬した繊維部材によって光ファイバテープ心線の被処理部付近を挟んだ状態を示す図である。
【図4】発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の断面図である。
【図5】第1の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図である。
【図6】図5におけるI−I線に沿った図である。
【図7】第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図8】第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図9】第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図10】第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図である。
【図11】第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の左側面図である。
【図12】図10におけるII−II線に沿った図である。
【符号の説明】
1 光ファイバテープ心線
1a 被処理部
3 光ファイバ心線
5 テープコート層
11 単心分離工具
25 スライダ
31 第1しごき部材
37 第2しごき部材
49 容器
51 浸漬部材
53 単心分離工具
55 単心分離台
55f テープ心線支持面
65 スライダ
69 しごき部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバテープ心線の被処理部を単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、光ファイバケーブルの内部には、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化してなる光ファイバテープ心線を多数枚収容されている。また、前記光ファイバケーブルの有効利用を図るために、前記光ファイバケーブルを構成する光ファイバテープ心線の一部(被処理部)を光ファイバ心線毎に単心分離することは広く行われている。そして、光ファイバテープ心線の単心分離方法の技術としては例えば特許文献1に示すような技術があり、次のような構成を有している。
【0003】
即ち、前記光ファイバテープ心線をスライダにおけるセット部に前記光ファイバテープ心線の幅方向へ移動不能にセットする。次に、前記スライダに設けられた複数の第1分離刃によって、それぞれ前記テープコート層の表側部分における対応する心線境界部位に切り目を入れると共に、前記スライダに設けられた複数の第2分離刃によって、それぞれ前記テープコート層の裏側部分における対応する心線境界部位に切り目を入れる。ここで、前記心線境界部位とは、隣接する前記光ファイバ心線の境界部分の位置のことをいう。そして、複数の前記第1分離刃及び複数の前記第2分離刃を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記スライダと一体的に移動させることにより、切り目が拡大して前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0004】
【特許文献1】
特許3309378号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記光ファイバテープ心線の単心分離を確実に行うためには、前記テープコート層の切り目を前記光ファイバ心線の径に応じて深くする必要がある。そのため、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における複数の前記光ファイバ心線の配列状態に乱れがある場合、複数の前記第1分離刃又は複数の前記第2分離刃の刃間ピッチに位置ずれがある場合、前記スライダにおける前記セット部に対する前記光ファイバテープ心線のセット状態が適切でない場合等にあっては、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバを誤って切断することがある。
【0006】
そこで、前述の課題を解決するため、本発明にあっては、前記テープコート層に切り目を入れることなく、前記テープコート層を破断させることを可能にした光ファイバテープ心線の単心分離方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明にあっては、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を押圧しつつ、前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする。
【0008】
ここで、予め前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近の弾性率を低下させることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さく設定できる。
【0009】
また、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層をしごくことにより、前記しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部との間の摩擦力によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層にせん断応力を発生させ、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の前記テープコート層を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0010】
なお、「前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させる」とは、前記光ファイバテープ心線を固定した状態の下で、前記しごき部材を前記長手方向へ移動させることの他に、前記しごき部材を固定した状態の下で、前記光ファイバテープ心線を前記長手方向へ移動させることも含まれる。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
第1しごき部材と第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を挟むように押圧しつつ、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面及び裏面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする。
【0012】
ここで、予め前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近の弾性率を低下させることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記第1しごき部材と前記第2しごき部材による押圧力を小さくできる。
【0013】
また、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面及び裏面をしごくことにより、前記第1しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の表面との間の摩擦力及び前記第2しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の裏面との間の摩擦力によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層にせん断応力を発生させ、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0014】
なお、「前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させる」とは、前記光ファイバテープ心線を固定した状態の下で、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記長手方向へ移動させることの他に、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を固定した状態の下で、前記光ファイバテープ心線を前記長手方向へ移動させることも含まれる。
【0015】
請求項3に記載の発明にあっては、複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近におけるテープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を単心分離台に支持せしめ、
前記光ファイバテープ心線の前記被処理部をしごき部材によって前記単心分離台側へ押圧しつつ、前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする。
【0016】
ここで、予め前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近の弾性率を低下させることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さくできる。
【0017】
また、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記しごき部材と前記光ファイバテープ心線の前記被処理部の表面との間の摩擦力によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分にせん断応力を発生させ、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分を破断させることができる。これによって、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分を破断等によって除去して、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することができる。
【0018】
更に、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分のみを破断させており、換言すれば前記しごき部材によるしごきによっても前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分は破断されないため、前記しごき部材によってしごく際に、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分によって複数の前記光ファイバテープ心線は保持される。
【0019】
なお、「前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させる」とは、前記光ファイバテープ心線を固定した状態の下で、前記しごき部材を前記長手方向へ移動させることの他に、前記しごき部材を固定した状態の下で、前記光ファイバテープ心線を前記長手方向へ移動させることも含まれる。
【0020】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれか請求項に記載の発明特定事項の他に、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
ここで、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きいため、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくできる。
【0022】
請求項5に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれか請求項に記載の発明特定事項の他に、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記光ファイバ心線における着色層の構成材料の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【0023】
ここで、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記光ファイバ心線における前記着色層の構成材料の弾性率よりも小さいため、前記しごき部材の硬度を前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできる。
【0024】
請求項6に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれか請求項に記載の発明特定事項の他に、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における着色層の構成材料の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【0025】
ここで、前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における前記着色層の構成材料の弾性率よりも小さいため、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
第1の発明の実施の形態について図1から図6を参照して説明する。
【0027】
図1及び図2は、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図であって、図3(a)は、アルコール溶液に光ファイバテープ心線の被処理部付近を漬けた状態を示す図であって、図3(b)は、アルコール溶液が浸漬した繊維部材によって光ファイバテープ心線の被処理部付近を挟んだ状態を示す図であって、図4は、発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の断面図であって、図5は、第1の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図であって、図6は、図3におけるI−I線に沿った図である。「左右」とは、図1(a),図2(a),図5において左右,図6において紙面に向かって表裏のことをいい、「前後」とは、図1(a),図2(a),図5において紙面に向かって表裏,図6において右左のことをいい、「上下」とは、図1(a),図2(a),図5,図6において上下のことをいう。
【0028】
第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明する前に、まず、図5を参照して光ファイバテープ心線1の一般的な構成について説明する。
【0029】
光ファイバテープ心線1は、複数本の光ファイバ心線3と、複数本の光ファイバ心線3を並べてテープ状に一体化するテープコート層5とを備えている。更に、各光ファイバ心線3は、光ファイバ素線7と、この光ファイバ素線7の外周部に一体成形された着色層9とをそれぞれ有している。ここで、テープコート層5及び光ファイバ心線3における着色層9は紫外線硬化型樹脂によりそれぞれ構成されている。
【0030】
次に、図3及び図4を参照して、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法に使用される単心分離工具11について詳細に説明する。
【0031】
即ち、単心分離工具11は工具ベース13を備えており、この工具ベース13は、左右方向(工具ベースの長手方向)に離隔した一対の支持ブロック15L,15Rと、一対の支持ブロック15L,15Rを連結する複数(本発明の実施の形態にあっては2つ)の連結バー17とからなっている。ここで、各連結バー17は左右方向へ延びるようにそれぞれ構成されている。
【0032】
また、一方の支持ブロック15L,15Rには光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)19Lがクランプガイド(図示省略)を介して左右方向へ位置調節可能に設けられており、他方の支持ブロック15Rには光ファイバテープ心線1の被処理部1aの右側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)19Rが設けられている。そして、一方のテープ心線クランプ19Lを左右方向へ位置調節するため、一方の支持ブロック15Lにはブラケット21が設けられており、このブラケット21には一方のテープ心線クランプ19Lの左面に当接可能な調節ねじ23が螺合して設けられてあって、この調節ねじ23は螺合作用により左右方向へ移動可能である。また、各テープ心線クランプ19L,19Rの把持部は熱可塑性樹脂等の合成樹脂によりそれぞれ構成されている。なお、一対のテープ心線クランプ19L,19Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を把持する代わりに、別の一対のテープ心線保持部材により光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を吸着するようにしても差し支えない。
【0033】
そして、複数の連結バー17には左右方向へ移動可能なスライダ25が設けられており、このスライダ25は上下に対向した第1アーム27と第2アーム29を備えている。スライダ25における第1アーム27には光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごく第1しごき部材31が設けられており、この第1しごき部材31はスライダ25に対して一対のしごきガイド33を介して回転不能かつ上下方向へ移動可能に構成されてあって、第1しごき部材27の頂部(上部)には進入穴35が形成されている。また、スライダ25における第2アーム29には光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏面をしごく第2しごき部材37が設けられており、この第2しごき部材37は、スライダ25に対して固定されてあって、第1しごき部材31と協働して光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を挟むように押圧可能である。
【0034】
ここで、第1しごき部材31及び第2しごき部材37は熱可塑性樹脂によりそれぞれ構成されており、第1しごき部材31及び第2しごき部材37の構成材料(熱可塑性樹脂)の弾性率は、テープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)における低下後の弾性率(アルコール作用によって低下した弾性率、後述参照)よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の構成材料(紫外線硬化型樹脂)よりも小さくなるようにそれぞれ構成してある。これによって、第1しごき部材31及び第2しごき部材37の硬度をテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできる。なお、第1しごき部材31及び第2しごき部材37は熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化型樹脂により構成されても差し支えない。
【0035】
更に、スライダ25には第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を調節する押圧力調節機構39が設けられている。
【0036】
即ち、スライダ25における第1アーム27には調節ねじ41が螺合して設けられており、この調節ねじ41は螺合作用により上下方向(第2しごき部材37に接近離反する接近方向・離反方向)へ移動可能である。また、調節ねじ41の外周部にはピン状又はフランジ状の支持突起43が有してあって、調節ねじ41の先端部(下端部)は第1しごき部材31の進入穴35に進入可能である。そして、調節ねじ41における支持突起43と第1しごき部材31の間には第1しごき部材31を下方向(前記接近方向)へ付勢するスプリング45が座金47を介して設けられている。
【0037】
従って、調節ねじ41を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング45を徐々に縮めると、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくすることができる。なお、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を解除する場合には、調節ねじ41を螺合作用により上方向(前記離反方向)へ移動させてスプリング45を元の状態に復帰させる。
【0038】
前述の単心分離工具11を使用した第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明すると、次のようになる。
【0039】
即ち、図3(a)に示すように容器49内におけるアルコール濃度40%以上のアルコール溶液に光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’を漬けたり、或いは図3(b)に示すようにアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬した紙,布,不織布等の繊維部材51によって光ファイバテープ心線1の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)の弾性率をアルコール作用によって低下させる。
【0040】
光ファイバテープ心線の被処理部付近におけるテープコート層の弾性率をアルコール作用によって低下させた後に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を第1しごき部材31と第2しごき部材37の間に挿入する。次に、一方のテープ心線クランプ19Lによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持すると共に、他方のテープ心線クランプ19Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの右側を把持する。これによって、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを工具ベース13に対して固定することができる。なお、調節ねじ23を螺合作用より左方向へ僅かに移動させて、一方のテープ心線クランプ19Lを他方のテープ心線クランプ19Rに僅かに離反するように左方向へ位置調節して、光ファイバテープ心線1を弛まないようにしておく。
【0041】
光ファイバテープ心線1の被処理部1aを工具ベース13に対して固定した後に、調節ねじ41を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング45を徐々に縮めると、第1しごき部材31と第2しごき部材37の協働によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を挟むように押圧する。そして、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧状態を保ちつつ、第1しごき部材31及び第2しごき部材37を左右方向へスライダ25と一体的に移動させて、第1しごき部材31及び第2しごき部材37によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面及び裏面をしごく。これにより、第1しごき部材31と光ファイバテープ心線1の被処理部1aの表面との間の摩擦力及び第2しごき部材37と光ファイバテープ心線1の被処理部1aの裏面との間の摩擦力によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5にせん断応力を発生させて、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5のみを破断させる。
【0042】
以上により、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを光ファイバ心線3毎に単心分離することができる。
【0043】
ここで、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させているため、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さく設定できる。
【0044】
また、第1しごき部材31及び第2しごき部材37によるしごき回数は一回に限られるものではなく、複数回としても差し支えない。即ち、第1しごき部材31及び第2しごき部材37による一回目のしごきにあっては、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さく設定し、第1しごき部材31と第2しごき部材37による2回目以降のしごきにあっては、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくする。これによって、テープコート層5の特性(テープコート層5の材料特性,寸法特性を含む)に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことができる。
【0045】
従って、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法によれば、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5のみを破断させるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中に光ファイバ心線3を誤って切断することがなくなる。
【0046】
また、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、第1しごき部材31と第2しごき部材37による押圧力を小さく設定できるため、光ファイバ心線3の微小な曲がりを抑制して、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を小さくすることができる。特に、テープコート層5の特性に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことが可能であるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を極力小さくできる。
【0047】
更に、第1しごき部材31及び第2しごき部材37の硬度をアルコール作用による低下後におけるテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできるため、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の破断が容易になって、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業能率が向上すると共に、光ファイバテープ心線1の作業中に光ファイバ心線3における着色層9に外傷がほとんど生じなくなる。
【0048】
次に、第2の発明の実施の形態について図7から図12を参照して説明する。
【0049】
図7から図9は、第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図であって、図10は、第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図であって、図11は、第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の左側面図であって、図12は、図10におけるII−II線に沿った図である。ここで、「左右」とは、図7(a),図8(a),図10において左右,図11及び図12において紙面に向かって表裏のことをいい、「前後」とは、図7(a),図8(a),図10において紙面に向かって表裏,図11及び図12において右左のことをいい、「上下」とは、図7(a),図8(a),図10から図12において上下のことをいう。
【0050】
第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明する前に、図10から図12を参照して、第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法に使用される単心分離工具53について説明する。
【0051】
即ち、第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具53は工具ベースとしての単心分離台55を備えており、この単心分離台(工具ベース)55は、左右方向へ延びてあって、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを支持するテープ心線支持面(テープ心線支持部)55fを有している。
【0052】
単心分離台55におけるテープ心線支持面55fの左側には光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)57Lが設けられており、単心分離台55におけるテープ心線支持面55fの右側には光ファイバテープ心線1の右側を把持するテープ心線クランプ(テープ心線保持部材の一例)57Rが設けられている。各テープ心線クランプ57L,57Rの把持部はそれぞれ熱可塑性樹脂等の合成樹脂により構成されている。なお、一対のテープ心線クランプ57L,57Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を把持する代わりに、別の一対のテープ心線保持部材により光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左右両側を吸着するようにしても差し支えない。
【0053】
単心分離台55には一対の支柱59L,59Rが左右に離隔して立設されており、一対の支柱59L,59Rの間には左右方向へ延びたガイドバー61が架設されてあって、単心分離台55の後部には左右方向へ延びかつガイドバー61に対して平行なガイドレール63が設けられている。このガイドレール63には左右方向へ移動可能なスライダ65が設けられており、このスライダ65の上部はガイドバー61に左右方向へ移動可能に支持されている。
【0054】
スライダ65は前方向へ延びた支持アーム67を備えてあって、スライダ65における支持アーム67には光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごくしごき部材69が設けられている。このしごき部材69はスライダ65に対して一対のしごきガイド71を介して回転不能かつ上下方向へ移動可能に構成されてあって、しごき部材69の頂部(上部)には進入穴73が形成されている。
【0055】
ここで、しごき部材69は熱可塑性樹脂により構成されており、しごき部材69の構成材料(熱可塑性樹脂)の弾性率は、テープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)における低下後の弾性率(アルコール作用によって低下した弾性率、後述参照)よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の構成材料(紫外線硬化型樹脂)よりも小さくなるように設定してある。これによって、しごき部材69の硬度をテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできる。なお、しごき部材69は熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化型樹脂により構成されても差し支えない。
【0056】
更に、スライダ65にはしごき部材69による押圧力を調節する押圧力調節機構75が設けられている。
【0057】
即ち、スライダ65における支持アーム67には調節ねじ77が螺合して設けられており、この調節ねじ77は螺合作用により上下方向(テープ心線支持面55fに接近離反する接近方向・離反方向)へ移動可能である。また、調節ねじ77の外周部にはピン状又はフランジ状の支持突起79が有してあって、調節ねじ77の先端部(下端部)はしごき部材69の進入穴73に進入可能である。そして、調節ねじ77における支持突起79としごき部材69の間にはしごき部材69を下方向(前記接近方向)へ付勢するスプリング81が座金83を介して設けられている。
【0058】
従って、調節ねじ77を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング81を徐々に縮めると、しごき部材69による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくすることができる。なお、しごき部材69による押圧力を解除する場合には、調節ねじ77を螺合作用により上方向(前記離反方向)へ移動させてスプリング81を元の状態に復帰させる。
【0059】
前述の単心分離工具53を使用した第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法について説明すると、次のようになる。
【0060】
即ち、まず、第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法と同様に、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)の弾性率をアルコール作用によって低下させる。
【0061】
次に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5を単心分離台(工具ベース)55におけるテープ心線支持面55fとしごき部材69の間に挿入する。そして、一方のテープ心線クランプ59Lによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの左側を把持すると共に、他方のテープ心線クランプ59Rによって光ファイバテープ心線1の被処理部1aの右側を把持する。これによって、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを単心分離台55におけるテープ心線支持面55fに対して固定することができる。
【0062】
光ファイバテープ心線1の被処理部1aを単心分離台55におけるテープ心線支持面55fに対して固定した後に、調節ねじ77を螺合作用により下方向へ移動させて、スプリング81を徐々に縮めると、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5をテープ心線支持面55f側へ押圧する。そして、しごき部材69による押圧状態を保ちつつ、しごき部材69を左右方向へスライダ65と一体的に移動させて、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごく。これにより、しごき部材69と光ファイバテープ心線1の被処理部1aの表面との間の摩擦力によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5にせん断応力を発生させて、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表側部分のみを破断させる。
【0063】
ここで、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごくことにより、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表側部分のみを破断させており、換言すればしごき部材69によるしごきによっても光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分は破断されないため、しごき部材69によってしごく際に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分によって複数の光ファイバ心線3は保持される。
【0064】
以上により、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分を破断等によって除去して、光ファイバテープ心線1の被処理部1aを光ファイバ心線3毎に単心分離することができる。
【0065】
ここで、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させているため、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、しごき部材69による押圧力を小さく設定できる。
【0066】
また、しごき部材69によるしごき回数は一回に限られるものではなく、複数回としても差し支えない。即ち、しごき部材69による一回目のしごきにあっては、しごき部材69による押圧力を小さく設定し、しごき部材69による2回目以降のしごきにあっては、しごき部材69による押圧力を小さい押圧力から徐々に大きくする。これによって、テープコート層5の特性(テープコート層5の材料特性,寸法特性を含む)に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことができる。
【0067】
従って、第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法によれば、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5に切れ目を入れることなく、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表側部分のみを破断させるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中に光ファイバ心線3を誤って切断することがなくなる。
【0068】
また、光ファイバテープ心線1の被処理部付近1a’におけるテープコート層5の破断強度を小さくでき、しごき部材69による押圧力を小さく設定できると共に、しごき部材69によって光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の表面をしごく際に、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の裏側部分によって複数の光ファイバ心線3は保持されるため、光ファイバ心線3の微小な曲がりを抑制して、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を小さくできる。特に、テープコート層5の特性に適した押圧力を調査しつつ、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業を行うことが可能であるため、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業中における光ファイバ心線3の伝送損失変動を極力小さくできる。
【0069】
更に、しごき部材69の硬度をテープコート層5の硬度よりも大きくかつ光ファイバ心線3における着色層9の硬度よりも小さくできるため、光ファイバテープ心線1の被処理部1aにおけるテープコート層5の破断が容易になって、光ファイバテープ心線1の単心分離の作業能率が向上すると共に、光ファイバテープ心線1の作業中に光ファイバ心線3における着色層9に外傷がほとんど生じなくなる。
【0070】
なお、本発明は、前述の発明の実施の形態の説明に限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他種々の態様で実施可能である。
【0071】
【実施例】
次に、実施例について簡単に説明する。
【0072】
テープコート層5の構成材料(紫外線硬化型樹脂)における初期の弾性率E1を600MPaとし、テープコート層5の構成材料における低下後の弾性率をE1’とし、着色層9の構成材料(紫外線硬化型樹脂)の弾性率E2を1020MPaとし、第1しごき部材31及び第2しごき部材37(又はしごき部材69)の構成材料(熱可塑性樹脂)の弾性率E3を変更して、第1(又は第2)の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法を用いて単心分離の試験を行い、その結果をまとめると、表1及び表2に示すようになる。なお、テープコート層5の構成材料における低下後の弾性率はE1’とする。
【0073】
【表1】
【表2】
ここで、単心分離の可否の欄における○は、テープコート層5が破断して単心分離できたことを示し、単心分離の可否の欄における×は、テープコート層5が破断せずに単心分離ができなかったことを示している。
【0074】
また、着色層の外傷の有無の欄における○は、単心分離後において着色層9に外傷が無かったことを示しており、着色層9の外傷の有無の欄における×は、単心分離後において着色層9に外傷があったことを示している。なお、着色層9の外傷の有無に関しては、単心分離後において光ファイバ心線3の一部分(長さ100mmの部分)を顕微鏡で観察して判断した。
【0075】
更に、作業時の伝送損失変動は、波長1.55μmの光源及びパワーメータを用いて各光ファイバ心線3の伝送損失変動を調査した結果の最大の伝送損失変動を示している。
【0076】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層に切れ目を入れることなく、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層のみを破断させるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバ心線を誤って切断することがなくなる。
【0077】
また、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さく設定できるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率が向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を小さくすることができる。
【0078】
請求項2に記載の発明によれば、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層に切れ目を入れることなく、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層のみを破断させるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバ心線を誤って切断することがなくなる。
【0079】
また、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記第1しごき部材と前記第2しごき部材による押圧力を小さくできるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率が向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を小さくすることができる。
【0080】
請求項3に記載の発明にあっては、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層に切れ目を入れることなく、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表側部分のみを破断させるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中に前記光ファイバ心線を誤って切断することがなくなる。
【0081】
また、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の破断強度を小さくでき、前記しごき部材による押圧力を小さく設定できるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率が向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の微小な曲がりを抑制して、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を小さくすることができる。特に、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごく際に、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の裏側部分によって複数の前記光ファイバテープ心線は保持されるため、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業中における前記光ファイバ心線の伝送損失変動を極めて小さくすることができる。
【0082】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明の効果の他に、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくできるため、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の破断が容易になって、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率がより一層向上する。
【0083】
請求項5に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明の効果の他に、前記しごき部材の硬度を前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできるため、前記光ファイバテープ心線の作業中に前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記着色層に外傷がほとんど生じなくなる。
【0084】
請求項6に記載の発明にあっては、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の発明の効果の他に、前記しごき部材の硬度を前記テープコート層の硬度よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における前記着色層の硬度よりも小さくできるため、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の破断が容易になって、前記光ファイバテープ心線の単心分離の作業能率がより一層向上すると共に、前記光ファイバテープ心線の作業中に前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記着色層に外傷がほとんど生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図2】第1の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図3】図3(a)は、アルコール溶液に光ファイバテープ心線の被処理部付近を漬けた状態を示す図であって、図3(b)は、アルコール溶液が浸漬した繊維部材によって光ファイバテープ心線の被処理部付近を挟んだ状態を示す図である。
【図4】発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の断面図である。
【図5】第1の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図である。
【図6】図5におけるI−I線に沿った図である。
【図7】第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図8】第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図9】第2の発明の実施の形態に係わる光ファイバテープ心線の単心分離方法の説明図である。
【図10】第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の正面図である。
【図11】第2の発明の実施の形態に係わる単心分離工具の左側面図である。
【図12】図10におけるII−II線に沿った図である。
【符号の説明】
1 光ファイバテープ心線
1a 被処理部
3 光ファイバ心線
5 テープコート層
11 単心分離工具
25 スライダ
31 第1しごき部材
37 第2しごき部材
49 容器
51 浸漬部材
53 単心分離工具
55 単心分離台
55f テープ心線支持面
65 スライダ
69 しごき部材
Claims (6)
- 複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬した繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を押圧しつつ、前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする光ファイバテープ心線の単心分離方法。 - 複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
第1しごき部材と第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を挟むように押圧しつつ、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記第1しごき部材及び前記第2しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面及び裏面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする光ファイバテープ心線の単心分離方法。 - 複数本の光ファイバ心線をテープコート層によってテープ状に一体化した光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離する光ファイバテープ心線の単心分離方法において、
アルコール濃度40%以上のアルコール溶液に前記光ファイバテープ心線の被処理部付近(前記被処理部を含む)を漬けたり或いはアルコール濃度50%以上のアルコール溶液が浸漬された繊維部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近を挟んだりすることにより、前記光ファイバテープ心線の前記被処理部付近における前記テープコート層の構成材料の弾性率をアルコール作用によって低下させて、
前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を単心分離台に支持せしめ、
しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部を前記単心分離台側へ押圧しつつ、前記しごき部材を前記光ファイバテープ心線の長手方向へ前記光ファイバテープ心線に対して相対的に移動させて、前記しごき部材によって前記光ファイバテープ心線の前記被処理部における前記テープコート層の表面をしごくことにより、前記光ファイバテープ心線の被処理部を前記光ファイバ心線毎に単心分離することを特徴とする光ファイバテープ心線の単心分離方法。 - 前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の光ファイバテープ心線の単心分離方法。
- 前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記光ファイバ心線における着色層の構成材料の弾性率よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の光ファイバテープ心線の単心分離方法。
- 前記しごき部材の構成材料の弾性率が前記テープコート層の構成材料における低下後の弾性率よりも大きくかつ前記光ファイバ心線における着色層の構成材料の弾性率よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の光ファイバテープ心線の単心分離方法。
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JP2003115892A JP2004325504A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 光ファイバテープ心線の単心分離方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017009976A (ja) * | 2015-06-26 | 2017-01-12 | 株式会社フジクラ | テープ化材剥離方法およびテープ化材剥離用部材キット |
-
2003
- 2003-04-21 JP JP2003115892A patent/JP2004325504A/ja active Pending
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