JP2004323680A - 回転成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な自動車内装材を製造し得るパウダースラッシュ法の如き回転成形法に好適に使用し得ると共に、塩素系物質等の環境負荷の高い物質の使用を皆無とし、更に得られる成形体の脱型性、耐傷付き性および複雑形状への対応に優れた回転成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオールおよびイソシアネートを主原料とし、これに一定温度以上の加熱により触媒活性を発現する金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合触媒を使用するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリオールおよびイソシアネートを主原料とし、これに一定温度以上の加熱により触媒活性を発現する金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合触媒を使用するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱硬化性のポリウレタン系樹脂からなる回転成形体および該成形体を得る製造方法に関し、更に詳細には、2液性ポリウレタン樹脂原料をペースト状塩化ビニル樹脂を加工する回転成形法に応用した技術であって、該技術により得られる回転成形体と、該成形体を製造する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装部材、具体的には、アームレストまたはインストルメントパネル等の表皮等に使用される樹脂成形体を得る方法として、例えばパウダースラッシュ成形法またはゾルスラッシュ成形法といった回転成形法が採用されてきた。前記回転成形法は、▲1▼中空成形体を均一の肉厚で成形できる、▲2▼複雑形状にも対応可能、▲3▼1台の成形機で異なる成形体の製作が可能(多品種少量生産に向く)、▲4▼シェルの転写性がよい、▲5▼肉薄化も容易であり、軽量化が可能、▲6▼色替が容易、▲7▼インサート成形が可能、▲8▼原料ロスが少ない、といった数多くの長所を有している。特に前述の▲1▼〜▲5▼の長所を生かして、アームレスト、ドアグリップおよびインパネ等の自動車用の内装表皮の成形に好適に採用されていた。
【0003】
しかしながら、前記回転成形法の場合、以下の欠点が指摘される。すなわち、▲1▼一般に、パウダースラッシュ成形法またはゾルスラッシュ成形法の好適な成形体の樹脂原料である塩化ビニル(以下、PVCと云う)は、その加工性が高く、容易にパウダー状またはゾル状といった回転成形法に好適に適用し得る形状に加工し得る一方で、その組成中に塩素を含有している。このため、製造時および廃棄時に発生する塩化水素ガスや、該塩化水素等を基として発生する畏れのあるダイオキシン等の低減・削減といった環境的な観点から、その使用が抑制され始めている。
【0004】
▲2▼これに対し、前述の環境的な問題を内在しない樹脂原料として、パウダー状のTPU(熱可塑性ポリウレタン)またはTPO(熱可塑性ポリオレフィン)が挙げられ、前記回転成形法に好適に採用され始めている。しかし、これら樹脂原料の場合、前記回転成形法に好適に使用するために施されるパウダー形状への加工コスト、すなわち原料コストが高い。これは前記回転成形法に好適に使用し得るパウダー粒径の制限(50〜400μm)に対応するぺく実施される、冷凍粉砕法等の特殊な加工法に必要とされるコスト的な問題と、得られるパウダー状樹脂原料の粒径による分離・選別に必要とされる工程的な問題とに起因するものである。
【0005】
▲3▼前記TPUを樹脂原料とした場合、現状では成形に耐え得る該樹脂原料の硬度に制限があり、該硬度は一般にショアーA硬度表示で90以上程度と高い。このため、前記回転成形法により得られた成形体の脱型が困難となる問題が指摘される。またTPOを樹脂原料とした場合、傷が付き易く、例えば該成形体表面に塗装等を実施することで対応しているが、この後工程により製造コストが悪化してしまう問題を内在している。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
前述の各樹脂原料が有する欠点を払拭するため、樹脂原料として熱硬化性のポリウレタン系樹脂原料を採用する方法が考えられる。しかし前記ポリウレタン系樹脂原料は、基本的に主原料であるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを混合することで重合(樹脂化)を開始する原料であるため、前記回転成形法への使用は困難である。そのため、一般には予め60〜80℃程度に加熱された成形型に対して、2液性の前記ポリウレタン系樹脂原料をスプレー等することで所要の成形体を得る、所謂スプレー法の採用により製造がなされている。しかし、このスプレー法の場合、スプレーにより前記ポリウレタン系樹脂原料を成形型に供給するため、該成形型の形状、例えば深いアンダーカット部を有するような場合には、充分な肉厚を達成し得るだけの該原料を供給できない問題等が指摘される。
【0007】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る回転成形体およびその製造方法に関して内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、良好な自動車内装材を製造し得るパウダースラッシュ法の如き回転成形法に好適に使用し得ると共に、塩素系物質等の環境負荷の高い物質の使用を皆無とし、更に得られる成形体の脱型性、耐傷付き性および複雑形状への対応に優れた回転成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明に係る回転成形体は、ポリオールおよびイソシアネートを主原料とし、これに触媒等の各種副原料を混合したポリウレタン系樹脂原料であって、
前記触媒として、金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合触媒を使用し、
一定温度以上の加熱により、前記混合触媒が前記ポリオールおよびイソシアネートの重合を開始させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の別の発明に係る回転成形体の製造方法は、得るべき成形体の外部輪郭形状に合致する内部輪郭形状を有するシェルを備え、該シェルの内側を対向的に閉じることでキャビティが形性される成形型内に、所要量のポリオールおよびイソシアネートからなる主原料並びに触媒等の各種副原料を充分に混合・攪拌しつつ注入し、
前記キャビティを密閉した後、前記成形型を回転させることで、前記主原料および副原料を充分に混合してポリウレタン系樹脂原料を得ると共に、該ポリウレタン系樹脂原料を前記シェルの表面全体に均質に行き渡らせると共に、該シェルの加熱を行なって、
前記キャビティに得られた前記ポリウレタン系樹脂原料を、前記シェルに接触させることで重合を進行させ、
これにより前記シェルの表面に所要厚の成形体を付着成形するようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の更に別の発明に係る回転成形体の製造方法は、主原料となるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを混合して、ポリウレタン系樹脂原料を予め製造しておき、
得るべき成形体の外部輪郭形状に合致する内部輪郭形状を有するシェルを備え、該シェルの内側を対向的に形性することでキャビティが画成される成形型内に、所要量の前記ポリウレタン系樹脂原料を注入し、
前記キャビティを密閉した後、前記成形型に回転させつつ該シェルの加熱を行ない、
前記キャビティに注入した前記ポリウレタン系樹脂原料を、前記シェルに接触させることで重合を進行させ、
これにより前記シェルの表面に所要厚の成形体を付着成形するようにしたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る熱硬化性のポリウレタン系樹脂原料を用いた回転成形体および該成形体の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。本願の発明者は、ポリウレタン系樹脂の主原料であるポリオールと、イソシアネートとの重合を開始させる重合開始剤として使用される触媒として、所定の温度で触媒活性を発現する、所謂熱感応型触媒を使用することで、回転成形法に好適に使用し得るポリウレタン系樹脂原料が容易に得られ、またこの原料を使用することで所要形状の回転成形体が得られることを知見したものである。
【0012】
本発明の好適な実施例に係るポリウレタン系樹脂原料は、図1に示すような製造工程を経て、各種原料から製造されて更に好適な成形体Sとされている。前記製造工程は、原料準備工程S1、原料注入工程S2、成形型回転・加熱工程S3および最終工程S4から基本的に構成されている。
【0013】
また前記各工程S1〜S4については、図2に示すような製造装置12により好適に実施される。前記製造装置12は、前記原料準備工程S1により夫々準備された各原料を混合してポリウレタン系樹脂原料(以下、ポリウレタン原料と云う)とすると共に、所要形状の成形体Sを製造する装置である。この製造装置12は、前記原料準備工程S1を実施し、前記ポリウレタン原料Mを構成する各原料に脱気等の前処理を行なうと共に貯留する真空ポンプ14aおよび攪拌機14bを夫々有する複数の貯留タンク14と、スターラの如き混合・攪拌機構(図示せず)を有する低圧注入機15と、得るべき成形体Sの外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有するシェル30等を備える成形型16とから基本的に構成される。
【0014】
前記成形型16は、図3に示す如く、回動連結部18を中心として互いに開閉可能な第1基体22と第2基体24とから構成される型フレーム20において、成形体Sの外側形状に合致するシェル30を、該第1基体22の開口部22aに固定装着して構成されている。また前記シェル30の裏側には、所定温度に調温された熱媒体の流通を許容すると共に、加熱手段となる流通パイプ26を具備した温度調整ユニット(図示せず)が配設されており、前記シェル30表面を所定温度に加熱・冷却し得るようになっている。
【0015】
(原料準備工程S1について)
前記原料準備工程S1は、主原料であるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを夫々別の貯留タンク14に貯留すると共に、夫々に備えられた真空ポンプ14aおよび攪拌機14bによりエアー抜き等を実施し、後に実施される各工程S2およびS3を好適に行ない得るようにするための工程である。また触媒等の各種副原料については、本工程S1の実施により予め充分に混合・攪拌することが望ましい。
【0016】
(原料注入工程S2について)
前記原料注入工程S2は、前記低圧注入機15の如き混合・攪拌機構を有する装置に対して、前記原料準備工程S1で準備された各原料をポンプP等により定量的に送り込み、該低圧注入機15により混合・攪拌して液状のポリウレタン原料Mを得ると共に、前記成形型16内へ注入するための工程である。具体的には前記成形型16の型フレーム20における第1基体22と第2基体24とを開放した状態とし、前記キャビテイ32の内部に所定量の前記ポリウレタン原料Mを注入して第1基体22を型閉めすることにより、該原料Mをキャビティ32内に収納する。また基本的に前記ポリウレタン原料Mは、所要のポリオールおよびイソシアネートを重合反応させることで得られる反応生成物であり、該ポリオールおよびイソシアネートの種類等を換えることにより、様々な物性を発現する特徴を有する。前記ポリウレタンとは、ウレタン結合を有するポリマーを指し、該ウレタン結合はイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基などの活性水素を有するポリオール等との反応により生成される。
【0017】
一般に前記ポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物を指す。そして本発明において前記ポリオールとしては、通常使用される縮合重合型ポリエステルポリオール、ε一カプロラクトン等の環状エステルの開環重合により得られるポリエステルポリオール、環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルポリオール、またはこれらの共重合によって得られるポリエーテルエステルポリオール等が使用される。
【0018】
一方、前記イソシアネートとしては、通常使用されているイソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、イソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネートが使用可能であり、また該イソシアネートを2種類以上併用するようにしてもよい。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、P−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等の脂肪族イソシアネート類が挙げられる。また、その変性体としてはイソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体またはプレポリマー等が挙げられる。
【0019】
前記添加物としては、通常のポリウレタン系樹脂の製造に使用される重合開始剤としての触媒および架橋剤、更に必要に応じて鎖延長剤、難燃剤または紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、着色剤、防黴剤または抗菌剤等が挙げられ、これら各副原料が必要に応じて添加される。本発明においては、特に前記触媒の種類および使用量が重要な要素であり、この点を以下に詳細に説明する。
【0020】
前記触媒としては、金属アセチルアセトネートと、該金属アセチルアセトネートを希釈する希釈剤たるアセチルアセトンとを所定の割合で混合した混合触媒が好適に使用される。ここで希釈剤たる前記アセチルアセトンは、金属アセチルアセトネートの低温での早期硬化を防止するべく用いられている。前記混合触媒は、一定の温度を越えることで触媒としての機能、すなわち活性を発現する、所謂熱感応型触媒である。基本的に前記混合触媒が触媒活性を発現する温度は、前記成形型16等への負荷等が少なく、加熱コストを低減し得ると共に、前記各種原料の耐熱範囲である120〜180℃程度とされる。
【0021】
前記混合触媒として熱感応型触媒を使用した場合、触媒活性発現温度への加熱前については、該混合触媒は前記ポリウレタン原料Mの重合反応に寄与しない。このため、加熱前における前記ポリオールおよびイソシアネートの重合は殆ど無視できる程度に抑制される。その結果、前記混合触媒が活性化する温度への加熱前には、前記ポリウレタン原料Mの粘度上昇は少ないものとなる。従って、成形体Sを回転成形法によって製造する前記成形型16への注入後における該成形型16の回転運動時において、注入された前記ポリウレタン原料Mが良好な流動性を維持し続ける。すなわち、前記成形型16を加熱して所定の温度となるまでは、その良好な流動性および増粘特性故に回転成形法原料として好適に使用されているPVC原料と同等の加工性を示す。
【0022】
前記混合触媒は、前述の如く、基本的に金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合物からなる。そしてこの混合触媒における、前記両物質の混合比率は、1:0〜1:10の範囲に、好適には1:0.5〜1:5の設定される。一方、前記混合比率が1:10、すなわち前記金属アセチルアセトネートが10倍を越えて希釈される場合、反応時間が長く、成形効率やポリウレタン原料Mの乗り(後述[0023])が悪化するといった問題が生じる。なお、前記アセチルアセトンの量が少なく、前記金属アセチルアセトネートが余り希釈されない場合には、反応の立ち上がりが速く、回転成形による表皮の成形が不均一かつ不均質となり易い傾向が強くなるので注意が必要である。また前記アセチルアセトンによる希釈が全くない場合でも成形は可能であるが、前述した不均一化・不均質化の問題に加えて成形性、具体的には後述([0023])する如く、ピンホール等の形状的欠陥等が発生し易くなる点に注意が必要である。
【0023】
前記混合触媒の混合比率は、基本的に成形時のポリウレタン原料Mの粘度に影響を与えている。一般に前記成形型16内にポリウレタン原料Mを注入した後の成形時において、反応混合液たる該原料Mの粘度が低過ぎると、最終的に得られる成形品の端部および凹部等に該原料Mが乗り辛く(維持が難しく)流れ落ちてしまう。これは前記成形品における凹部は、前記シェル30における凸部となっているためで、これにより低粘度の前記ポリウレタン原料Mは付着、すなわち乗らなくなってしまう事態を引き起こす。一方、前記ポリウレタン原料Mの粘度が高過ぎると、該原料Mが回転している前記成形型16に追従が困難となりその展開が好適にできず、その結果、該原料Mが該成形型16の隅々まで行き渡らず、欠肉およびピンホール等の原因となってしまう。すなわち、後述する成形型回転・加熱工程S3の好適な実施が不可能となってしまう。従って、前記金属アセチルアセトネートを希釈するアセチルアセトンの添加量、すなわち両者の混合比率は、適宜所定の範囲とすることが好ましい。また、イソシアネートの違いによる反応活性の差は、金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合比率に影響を及ぼすこともある。
【0024】
前記ポリウレタン原料Mの前記成形型16内への注入時における粘度については、少なくとも6000cps以下、好適には3000cps以下であることが望ましい。そしてこの粘度は、前記混合触媒の混合比率によっても達成することができる。前記粘度を少なくとも6000cps以下に設定することで、前記成形型16内における前記ポリウレタン原料Mの流動性を充分に確保して展開を容易とすると共に、均質な肉厚を達成し、また3000cps以下に設定することで、成形性の改善もなされる。
【0025】
本発明の理解に資するために、前記熱感応型触媒について説明する。本願発明で用いられる前記熱感応型触媒とは、所定温度以上の温度条件下において初めてウレタン反応触媒として有効に作用し、室温から所定の温度範囲では殆ど触媒活性を示さない触媒のことであり、あたかも温度により触媒として作用するといった触媒活性を示すために熱感応型触媒と呼称されている。具体的には、アミン触媒の触媒活性部分が部分的または全体的にカルボン酸で中和されたブロック触媒、他の化合物で活性が封止または抑制された状態から熱によって他の化合物が解離してアミン触媒が発現する熱活性触媒または加熱によって触媒の分子構造的立体障害が低下することで触媒作用が発現する感熱触媒がこれに当たる。特に、熱による応答性に優れた金属錯体が好ましく、具体的には金属アセチルアセトネートが挙げられる。前記金属アセチルアセトネートにおける金属としては、アルミニウム、バリウム、カドミウム、カルシウム、セリウム(III)、コミウム(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(III)、インジウム、鉄(III)、ランタン、鉛(II)、マンガン(II)、マンガン(III)、ネオジミウム、ニッケル(lI)、パラジウム(II)、ポタシウム、サマリウム、ソジウム、テレビウム、チタニウム、バナジウム、イットリウム、亜鉛またはジルコニウムからなる群から選択される。特に、鉄を含む金属アセチルアセトネートの使用が好適である。
【0026】
前記混合触媒の使用量は、前記ポリオール100重量部に対して、2.5×10−4〜1.0×10−1pbwの範囲に設定される。この使用量が2.5×10−4pbw未満であると、触媒としての機能を充分に果たせなくなり、その結果、充分に重合した良好な成形体Sが得られるポリウレタン原料Mとならない。一方、前記使用量が1.0×10−1pbwを越えるとなると、コストが高くなる一方、過剰な添加により成形性の低下を招く原因ともなる。
【0027】
前記架橋剤としては、従来公知のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類が挙げられる。
【0028】
前記鎖延長剤としては、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどの多価アミン等が、前記難燃剤としては、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が、前記紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2’−(2’ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)5クロロベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セパケート、4−ベンゾイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が夫々挙げられる。この他、各種充填剤、難燃剤または着色剤等も用途等に応じて、適宜添加可能である。
【0029】
前記原料注入工程S2に続いて実施される成形型回転・加熱工程S3、すなわち前記成形型16を用いた成形体Sの製造過程は以下のように説明される。先ず前記成形型16を構成する第1基体22および第2基体24を開放した状態において、該第2基体24内に所定量の前記ポリウレタン原料Mを注入する。そして前記両基体22,24を型閉めした後に前記流通パイプ26内に加熱媒体を流通させて前記シェル30を所定温度に加熱し、更に型フレーム20全体、すなわち成形型16自体を定速回転させる。これらの一連の動作を実施することにより、キャビティ32内のシェル30表面に前記ポリウレタン原料Mが接触して次第に均質、すなわち略一定の所要厚となると共に、該シェル30からの加熱により該原料Mの重合による樹脂化が開始され、最終的に該シェル30に成形体Sとして付着形成される。そして、しかる時間経過後に前記流通パイプ26に冷却媒体を流通させて、前記シェル30を冷却してこれにより前駆成形体Sの樹脂強度を安定させた後に、該成形体Sを該シェル30から剥離して脱型するようになっている。
【0030】
(成形型回転・加熱工程S3について)
前記成形型回転・加熱工程S3は、前記成形型16内に注入された前記ポリウレタン原料Mを、該成形型16を所定の速度で三次元的に回転させることで、得るべき成形体Sの外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有するシェル30の表面に該原料Mを均質な所要厚として付与すると共に、該シェル30を加熱することで、該シェル30表面に付与された該原料Mの重合を進行させて成形体Sを得る工程である。具体的には、成形段階S31、冷却段階S32および脱型段階S33からなる。なお、本発明における所要厚とは、一般肉厚を指す。ここで一般肉厚とは、本発明に係る成形体のような中空成形体の大半を占める平均的な肉厚をいい、テーパー部や逆テーパー部、くびれまたは絞り等の肉薄部が形成される部位を除いた部位の厚みをいう。またここでは三次元的な回転と記載しているが、これに限定されるものではなく、例えば二次元的な回転でもよい。
【0031】
(成形段階S31について)
前記成形段階S31は、図示しない駆動手段により型フレーム20全体を定速回転させることにより、キャビティ32内に注入されたポリウレタン原料Mが前記シェル30の表面に適宜接触させて、均質かつ所要の厚さとして付与すると共に、前記温度調整ユニットにおいて流通パイプ26内へ加熱した高温の熱媒体を供給して、該シェル30の表面全体を所定温度まで均一的に加熱することで混合触媒を活性化させ、これにより該原料Mの重合を進行させて該シェル30の内部輪郭形状と合致する外部輪郭形状を有する成形体Sを得る段階である。また、ここで形成される成形体Sの一般肉厚としては、その機械的物性を確保するために少なくとも0.3mm以上とされる。また回転成形法により得られる成形体Sは、その製造工程上、3mm以下、好適には2mm以下といった薄い構造体とすることも可能である。なお、例えば自動車内装材等として本発明に係る成形体Sを使用する場合、前述の如く、該成形体Sの肉厚が2mm以下といった薄い構造体は、重量の低減等の点で特に優位性が高い。
【0032】
前述したように、前記ポリウレタン原料Mは重合開始剤として使用する混合触媒として、熱感応型触媒を採用しているので、前記シェル30が該混合触媒を活性化させる温度となるまでは重合は抑制される。すなわち、回転する前記成形型16のキャビティ32内に注入された前記ポリウレタン原料Mの粘度は極めて緩やかに昇する。従って、前記シェル30の加熱を開始して前記触媒の活性化温度となるまでは、前記ポリウレタン原料Mのキャビティ32内での流動性は低下せず、その結果、例えば得るべき成形体Sが複雑形状を有し、これにより該シェル30が深いアンダーカット部を有するような場合でも充分な厚さを有する該原料Mからなる層を容易に形成し得る。
【0033】
前記成形型16の回転により、得るべき成形体Sの外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有するシェル30表面には、所要厚とされた前記ポリウレタン原料Mが均一に付着した状態となっている。この状態において、前記シェル30が、前記混合触媒が活性化するのに充分で、かつ得られる成形体Sをなすポリウレタン系樹脂の熱分解温度等より低い温度を有するように、前記温度調節ユニットを制御すれば、該シェル30表面に付着している所要厚とされた前記ポリウレタン原料Mから得るべき形状を有する成形体Sが得られる。前記成形型16の回転速度については、注入された前記ポリウレタン原料Mの粘度にも依存するが、基本的に3〜25回転/分の範囲に設定される。この回転が3回転/分未満であると前記シェル30の表面に均質な付与が困難となり、25回転/分を越えると得るべき成形体Sの全体に亘り、均一な所要厚が維持されず、その結果、剛性が損なわれてしまう。
【0034】
なお前述の加熱は、基本的に前記ポリウレタン原料Mが成形体16の回転により、前記シェル30表面に所要厚の層を形成した後に実施される。しかし、前記シェル30の加熱による温度上昇は急激に起こるものではないため、そのタイムラグを考慮して該加熱は、該成形型16の回転運動の開始と同時に開始するようにして、製造時間の短縮を図ってもよい。
【0035】
(冷却段階S32について)
前記冷却段階S32は、最終的な脱型段階S33を行なうに先立ち実施される段階である。具体的には、前記成形段階S31の実施後から所定時間経過後に、前記温度調整ユニットにおいて流通パイプ26に冷却した低温の熱媒体を流通させることで、前記シェル30を介して得られた成形体Sの効率的な冷却を図るものである。
【0036】
(脱型段階S33について)
前記脱型段階S33は、前述の成形段階S31および冷却段階S32を経て、前記シェル30上に形成された得るべき成形体Sを成形型16から脱型する段階である。具体的には、前記成形型16回転を停止した後に、両基体22,24を開放して、前記冷却段階S32の実施により冷却された成形体Sを前記シェル30から剥離脱型するものである。
【0037】
(最終工程S4について)
最終的に施される前記最終工程S4は、脱型して得られた成形体Sに対して必要とされる後加工および検査等を実施する工程であり、この工程S4を経ることで最終製品たる成形体Sが完成する。通常、前述の成形型回転・加熱工程S3を経ることで得られる成形体Sは、その端部に、所謂バリが付着しており、このバリを除去する後工程等は適宜実施される。
【0038】
【実験例】
次に、前記の製造方法により製造される回転成形体についての実験例を示す。なお、本発明に係る回転成形体およびその製造方法は、本実験例に限定されるものではない。
【0039】
以下の表1に従った実施例1〜5および比較例1〜4に係る各原料を、ウレタン低圧注入機(商品名 スーパーショットEX;日本ソセー工業製)を用いて、温度50℃に温調されると共に、アンダーカット部を有する、所謂複雑形状の回転成形型内に注入し、そして該成形型を密閉しつつ、その温度を150℃まで昇温し、回転数4.8回転/分、時間15分間の条件で該成形型を回転させる。次いで冷却媒体を使用することで、前記成形型の温度を約80℃まで冷却した後、該成形型から得られた成形体を脱形し、必要に応じてキュアを施した。このようにして得られた実施例1〜5および比較例1〜4に係る成形体から所定の試験片を作製した後、JIS K 6251(加硫ゴム引張試験方法)に準拠する引張強度(MPa)を測定し、また得られた成形体の前記回転成形型からの脱形性およびピンホール等の形状的欠陥を目視等により確認し、総合的な回転成形体としての判定をで行なった。ここで脱形性、形状的欠陥および総合判定は、○:良い、△:一部問題有り、×:問題あり、で評価した。なお使用した各原料の詳細は、以下に記する。
【0040】
(使用原料)
・ポリオール:以下に記載する1〜3の各ポリオールの混合物を使用した。
1.3官能エステルポリオール(商品名 タケラックPB628;三井武田ケミカル製、分子量:600):45pbw
2.3官能エーテルポリオール(商品名 サンニックスGP−3700M;三洋化成製、分子量:4000):45.6pbw
3.3官能エーテルポリオール(商品名 サンニックスGP−250;三洋化成製、分子量:250):9.4pbw
・イソシアネートA:カルボジイミド変性MDI(商品名 MTL;日本ポリウレタン工業製)
・イソシアネートB:水添MDI(商品名 ディスモジュールW;Bayer製)
・触媒:アセチルアセトン鉄(商品名 ナーセム第二鉄;日本化学産業製)
・触媒希釈剤:アセチルアセトン(和光純薬製)
【0041】
【表1】
【0042】
(結果)
結果を上記の表1に併せて示す。この表1から、混合触媒の使用量や、該混合触媒における金属アセチルアセトネートおよび該金属アセチルアセトネートの希釈剤たるアセチルアセトンの混合比率が本発明に係る範囲外となると、得られる成形体の引張強度に代表される機械的強度が殆ど発現しなくなったり、均一な所要厚が得られないため、製造された成形体が不良品となってしまうことが確認された。
【0043】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る回転成形体およびその製造方法によれば、該成形体を、熱硬化性のポリウレタン系樹脂原料を、所謂熱感応型触媒により重合させて構成するようにしたので、TPUやTPOを使用した際の成形体の脱型が困難である点や傷が付き易い、といった材質的な欠点を回避し得る。また2液性のポリウレタン系樹脂を原料として使用したスプレー法では対応が困難であった、深いアンダーカット部等への形状的な対応、すなわち複雑形状への対応を容易にし得る効果を奏する。これにより、本発明に係る回転成形体およびその製造方法は、例えば昨今の環境問題に対応し、複雑形状物が要求されると共に、成形体とされた際に良好な脱形性・耐傷付き性を有するため、例えば自動車用内装材等の原料として、また成形方法として好適に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係るポリウレタン原料から成形体を得る製造工程を示すフローチャート図である。
【図2】図1に係る製造工程を実施する製造装置の一例を示す概略図である。
【図3】図2に係る製造装置を構成する成形型を拡大した概略構造を示す縦断側面図ある。
【符号の説明】
16 成形型
30 シェル
32 キャビティ
M ポリウレタン系樹脂原料
S 成形体
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱硬化性のポリウレタン系樹脂からなる回転成形体および該成形体を得る製造方法に関し、更に詳細には、2液性ポリウレタン樹脂原料をペースト状塩化ビニル樹脂を加工する回転成形法に応用した技術であって、該技術により得られる回転成形体と、該成形体を製造する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車内装部材、具体的には、アームレストまたはインストルメントパネル等の表皮等に使用される樹脂成形体を得る方法として、例えばパウダースラッシュ成形法またはゾルスラッシュ成形法といった回転成形法が採用されてきた。前記回転成形法は、▲1▼中空成形体を均一の肉厚で成形できる、▲2▼複雑形状にも対応可能、▲3▼1台の成形機で異なる成形体の製作が可能(多品種少量生産に向く)、▲4▼シェルの転写性がよい、▲5▼肉薄化も容易であり、軽量化が可能、▲6▼色替が容易、▲7▼インサート成形が可能、▲8▼原料ロスが少ない、といった数多くの長所を有している。特に前述の▲1▼〜▲5▼の長所を生かして、アームレスト、ドアグリップおよびインパネ等の自動車用の内装表皮の成形に好適に採用されていた。
【0003】
しかしながら、前記回転成形法の場合、以下の欠点が指摘される。すなわち、▲1▼一般に、パウダースラッシュ成形法またはゾルスラッシュ成形法の好適な成形体の樹脂原料である塩化ビニル(以下、PVCと云う)は、その加工性が高く、容易にパウダー状またはゾル状といった回転成形法に好適に適用し得る形状に加工し得る一方で、その組成中に塩素を含有している。このため、製造時および廃棄時に発生する塩化水素ガスや、該塩化水素等を基として発生する畏れのあるダイオキシン等の低減・削減といった環境的な観点から、その使用が抑制され始めている。
【0004】
▲2▼これに対し、前述の環境的な問題を内在しない樹脂原料として、パウダー状のTPU(熱可塑性ポリウレタン)またはTPO(熱可塑性ポリオレフィン)が挙げられ、前記回転成形法に好適に採用され始めている。しかし、これら樹脂原料の場合、前記回転成形法に好適に使用するために施されるパウダー形状への加工コスト、すなわち原料コストが高い。これは前記回転成形法に好適に使用し得るパウダー粒径の制限(50〜400μm)に対応するぺく実施される、冷凍粉砕法等の特殊な加工法に必要とされるコスト的な問題と、得られるパウダー状樹脂原料の粒径による分離・選別に必要とされる工程的な問題とに起因するものである。
【0005】
▲3▼前記TPUを樹脂原料とした場合、現状では成形に耐え得る該樹脂原料の硬度に制限があり、該硬度は一般にショアーA硬度表示で90以上程度と高い。このため、前記回転成形法により得られた成形体の脱型が困難となる問題が指摘される。またTPOを樹脂原料とした場合、傷が付き易く、例えば該成形体表面に塗装等を実施することで対応しているが、この後工程により製造コストが悪化してしまう問題を内在している。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
前述の各樹脂原料が有する欠点を払拭するため、樹脂原料として熱硬化性のポリウレタン系樹脂原料を採用する方法が考えられる。しかし前記ポリウレタン系樹脂原料は、基本的に主原料であるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを混合することで重合(樹脂化)を開始する原料であるため、前記回転成形法への使用は困難である。そのため、一般には予め60〜80℃程度に加熱された成形型に対して、2液性の前記ポリウレタン系樹脂原料をスプレー等することで所要の成形体を得る、所謂スプレー法の採用により製造がなされている。しかし、このスプレー法の場合、スプレーにより前記ポリウレタン系樹脂原料を成形型に供給するため、該成形型の形状、例えば深いアンダーカット部を有するような場合には、充分な肉厚を達成し得るだけの該原料を供給できない問題等が指摘される。
【0007】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る回転成形体およびその製造方法に関して内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、良好な自動車内装材を製造し得るパウダースラッシュ法の如き回転成形法に好適に使用し得ると共に、塩素系物質等の環境負荷の高い物質の使用を皆無とし、更に得られる成形体の脱型性、耐傷付き性および複雑形状への対応に優れた回転成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明に係る回転成形体は、ポリオールおよびイソシアネートを主原料とし、これに触媒等の各種副原料を混合したポリウレタン系樹脂原料であって、
前記触媒として、金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合触媒を使用し、
一定温度以上の加熱により、前記混合触媒が前記ポリオールおよびイソシアネートの重合を開始させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の別の発明に係る回転成形体の製造方法は、得るべき成形体の外部輪郭形状に合致する内部輪郭形状を有するシェルを備え、該シェルの内側を対向的に閉じることでキャビティが形性される成形型内に、所要量のポリオールおよびイソシアネートからなる主原料並びに触媒等の各種副原料を充分に混合・攪拌しつつ注入し、
前記キャビティを密閉した後、前記成形型を回転させることで、前記主原料および副原料を充分に混合してポリウレタン系樹脂原料を得ると共に、該ポリウレタン系樹脂原料を前記シェルの表面全体に均質に行き渡らせると共に、該シェルの加熱を行なって、
前記キャビティに得られた前記ポリウレタン系樹脂原料を、前記シェルに接触させることで重合を進行させ、
これにより前記シェルの表面に所要厚の成形体を付着成形するようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の更に別の発明に係る回転成形体の製造方法は、主原料となるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを混合して、ポリウレタン系樹脂原料を予め製造しておき、
得るべき成形体の外部輪郭形状に合致する内部輪郭形状を有するシェルを備え、該シェルの内側を対向的に形性することでキャビティが画成される成形型内に、所要量の前記ポリウレタン系樹脂原料を注入し、
前記キャビティを密閉した後、前記成形型に回転させつつ該シェルの加熱を行ない、
前記キャビティに注入した前記ポリウレタン系樹脂原料を、前記シェルに接触させることで重合を進行させ、
これにより前記シェルの表面に所要厚の成形体を付着成形するようにしたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る熱硬化性のポリウレタン系樹脂原料を用いた回転成形体および該成形体の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。本願の発明者は、ポリウレタン系樹脂の主原料であるポリオールと、イソシアネートとの重合を開始させる重合開始剤として使用される触媒として、所定の温度で触媒活性を発現する、所謂熱感応型触媒を使用することで、回転成形法に好適に使用し得るポリウレタン系樹脂原料が容易に得られ、またこの原料を使用することで所要形状の回転成形体が得られることを知見したものである。
【0012】
本発明の好適な実施例に係るポリウレタン系樹脂原料は、図1に示すような製造工程を経て、各種原料から製造されて更に好適な成形体Sとされている。前記製造工程は、原料準備工程S1、原料注入工程S2、成形型回転・加熱工程S3および最終工程S4から基本的に構成されている。
【0013】
また前記各工程S1〜S4については、図2に示すような製造装置12により好適に実施される。前記製造装置12は、前記原料準備工程S1により夫々準備された各原料を混合してポリウレタン系樹脂原料(以下、ポリウレタン原料と云う)とすると共に、所要形状の成形体Sを製造する装置である。この製造装置12は、前記原料準備工程S1を実施し、前記ポリウレタン原料Mを構成する各原料に脱気等の前処理を行なうと共に貯留する真空ポンプ14aおよび攪拌機14bを夫々有する複数の貯留タンク14と、スターラの如き混合・攪拌機構(図示せず)を有する低圧注入機15と、得るべき成形体Sの外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有するシェル30等を備える成形型16とから基本的に構成される。
【0014】
前記成形型16は、図3に示す如く、回動連結部18を中心として互いに開閉可能な第1基体22と第2基体24とから構成される型フレーム20において、成形体Sの外側形状に合致するシェル30を、該第1基体22の開口部22aに固定装着して構成されている。また前記シェル30の裏側には、所定温度に調温された熱媒体の流通を許容すると共に、加熱手段となる流通パイプ26を具備した温度調整ユニット(図示せず)が配設されており、前記シェル30表面を所定温度に加熱・冷却し得るようになっている。
【0015】
(原料準備工程S1について)
前記原料準備工程S1は、主原料であるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを夫々別の貯留タンク14に貯留すると共に、夫々に備えられた真空ポンプ14aおよび攪拌機14bによりエアー抜き等を実施し、後に実施される各工程S2およびS3を好適に行ない得るようにするための工程である。また触媒等の各種副原料については、本工程S1の実施により予め充分に混合・攪拌することが望ましい。
【0016】
(原料注入工程S2について)
前記原料注入工程S2は、前記低圧注入機15の如き混合・攪拌機構を有する装置に対して、前記原料準備工程S1で準備された各原料をポンプP等により定量的に送り込み、該低圧注入機15により混合・攪拌して液状のポリウレタン原料Mを得ると共に、前記成形型16内へ注入するための工程である。具体的には前記成形型16の型フレーム20における第1基体22と第2基体24とを開放した状態とし、前記キャビテイ32の内部に所定量の前記ポリウレタン原料Mを注入して第1基体22を型閉めすることにより、該原料Mをキャビティ32内に収納する。また基本的に前記ポリウレタン原料Mは、所要のポリオールおよびイソシアネートを重合反応させることで得られる反応生成物であり、該ポリオールおよびイソシアネートの種類等を換えることにより、様々な物性を発現する特徴を有する。前記ポリウレタンとは、ウレタン結合を有するポリマーを指し、該ウレタン結合はイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基などの活性水素を有するポリオール等との反応により生成される。
【0017】
一般に前記ポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物を指す。そして本発明において前記ポリオールとしては、通常使用される縮合重合型ポリエステルポリオール、ε一カプロラクトン等の環状エステルの開環重合により得られるポリエステルポリオール、環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルポリオール、またはこれらの共重合によって得られるポリエーテルエステルポリオール等が使用される。
【0018】
一方、前記イソシアネートとしては、通常使用されているイソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、イソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネートが使用可能であり、また該イソシアネートを2種類以上併用するようにしてもよい。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、P−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等の脂肪族イソシアネート類が挙げられる。また、その変性体としてはイソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体またはプレポリマー等が挙げられる。
【0019】
前記添加物としては、通常のポリウレタン系樹脂の製造に使用される重合開始剤としての触媒および架橋剤、更に必要に応じて鎖延長剤、難燃剤または紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、着色剤、防黴剤または抗菌剤等が挙げられ、これら各副原料が必要に応じて添加される。本発明においては、特に前記触媒の種類および使用量が重要な要素であり、この点を以下に詳細に説明する。
【0020】
前記触媒としては、金属アセチルアセトネートと、該金属アセチルアセトネートを希釈する希釈剤たるアセチルアセトンとを所定の割合で混合した混合触媒が好適に使用される。ここで希釈剤たる前記アセチルアセトンは、金属アセチルアセトネートの低温での早期硬化を防止するべく用いられている。前記混合触媒は、一定の温度を越えることで触媒としての機能、すなわち活性を発現する、所謂熱感応型触媒である。基本的に前記混合触媒が触媒活性を発現する温度は、前記成形型16等への負荷等が少なく、加熱コストを低減し得ると共に、前記各種原料の耐熱範囲である120〜180℃程度とされる。
【0021】
前記混合触媒として熱感応型触媒を使用した場合、触媒活性発現温度への加熱前については、該混合触媒は前記ポリウレタン原料Mの重合反応に寄与しない。このため、加熱前における前記ポリオールおよびイソシアネートの重合は殆ど無視できる程度に抑制される。その結果、前記混合触媒が活性化する温度への加熱前には、前記ポリウレタン原料Mの粘度上昇は少ないものとなる。従って、成形体Sを回転成形法によって製造する前記成形型16への注入後における該成形型16の回転運動時において、注入された前記ポリウレタン原料Mが良好な流動性を維持し続ける。すなわち、前記成形型16を加熱して所定の温度となるまでは、その良好な流動性および増粘特性故に回転成形法原料として好適に使用されているPVC原料と同等の加工性を示す。
【0022】
前記混合触媒は、前述の如く、基本的に金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合物からなる。そしてこの混合触媒における、前記両物質の混合比率は、1:0〜1:10の範囲に、好適には1:0.5〜1:5の設定される。一方、前記混合比率が1:10、すなわち前記金属アセチルアセトネートが10倍を越えて希釈される場合、反応時間が長く、成形効率やポリウレタン原料Mの乗り(後述[0023])が悪化するといった問題が生じる。なお、前記アセチルアセトンの量が少なく、前記金属アセチルアセトネートが余り希釈されない場合には、反応の立ち上がりが速く、回転成形による表皮の成形が不均一かつ不均質となり易い傾向が強くなるので注意が必要である。また前記アセチルアセトンによる希釈が全くない場合でも成形は可能であるが、前述した不均一化・不均質化の問題に加えて成形性、具体的には後述([0023])する如く、ピンホール等の形状的欠陥等が発生し易くなる点に注意が必要である。
【0023】
前記混合触媒の混合比率は、基本的に成形時のポリウレタン原料Mの粘度に影響を与えている。一般に前記成形型16内にポリウレタン原料Mを注入した後の成形時において、反応混合液たる該原料Mの粘度が低過ぎると、最終的に得られる成形品の端部および凹部等に該原料Mが乗り辛く(維持が難しく)流れ落ちてしまう。これは前記成形品における凹部は、前記シェル30における凸部となっているためで、これにより低粘度の前記ポリウレタン原料Mは付着、すなわち乗らなくなってしまう事態を引き起こす。一方、前記ポリウレタン原料Mの粘度が高過ぎると、該原料Mが回転している前記成形型16に追従が困難となりその展開が好適にできず、その結果、該原料Mが該成形型16の隅々まで行き渡らず、欠肉およびピンホール等の原因となってしまう。すなわち、後述する成形型回転・加熱工程S3の好適な実施が不可能となってしまう。従って、前記金属アセチルアセトネートを希釈するアセチルアセトンの添加量、すなわち両者の混合比率は、適宜所定の範囲とすることが好ましい。また、イソシアネートの違いによる反応活性の差は、金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合比率に影響を及ぼすこともある。
【0024】
前記ポリウレタン原料Mの前記成形型16内への注入時における粘度については、少なくとも6000cps以下、好適には3000cps以下であることが望ましい。そしてこの粘度は、前記混合触媒の混合比率によっても達成することができる。前記粘度を少なくとも6000cps以下に設定することで、前記成形型16内における前記ポリウレタン原料Mの流動性を充分に確保して展開を容易とすると共に、均質な肉厚を達成し、また3000cps以下に設定することで、成形性の改善もなされる。
【0025】
本発明の理解に資するために、前記熱感応型触媒について説明する。本願発明で用いられる前記熱感応型触媒とは、所定温度以上の温度条件下において初めてウレタン反応触媒として有効に作用し、室温から所定の温度範囲では殆ど触媒活性を示さない触媒のことであり、あたかも温度により触媒として作用するといった触媒活性を示すために熱感応型触媒と呼称されている。具体的には、アミン触媒の触媒活性部分が部分的または全体的にカルボン酸で中和されたブロック触媒、他の化合物で活性が封止または抑制された状態から熱によって他の化合物が解離してアミン触媒が発現する熱活性触媒または加熱によって触媒の分子構造的立体障害が低下することで触媒作用が発現する感熱触媒がこれに当たる。特に、熱による応答性に優れた金属錯体が好ましく、具体的には金属アセチルアセトネートが挙げられる。前記金属アセチルアセトネートにおける金属としては、アルミニウム、バリウム、カドミウム、カルシウム、セリウム(III)、コミウム(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(III)、インジウム、鉄(III)、ランタン、鉛(II)、マンガン(II)、マンガン(III)、ネオジミウム、ニッケル(lI)、パラジウム(II)、ポタシウム、サマリウム、ソジウム、テレビウム、チタニウム、バナジウム、イットリウム、亜鉛またはジルコニウムからなる群から選択される。特に、鉄を含む金属アセチルアセトネートの使用が好適である。
【0026】
前記混合触媒の使用量は、前記ポリオール100重量部に対して、2.5×10−4〜1.0×10−1pbwの範囲に設定される。この使用量が2.5×10−4pbw未満であると、触媒としての機能を充分に果たせなくなり、その結果、充分に重合した良好な成形体Sが得られるポリウレタン原料Mとならない。一方、前記使用量が1.0×10−1pbwを越えるとなると、コストが高くなる一方、過剰な添加により成形性の低下を招く原因ともなる。
【0027】
前記架橋剤としては、従来公知のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類が挙げられる。
【0028】
前記鎖延長剤としては、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどの多価アミン等が、前記難燃剤としては、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が、前記紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2’−(2’ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリーブチルフェニル)5クロロベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セパケート、4−ベンゾイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が夫々挙げられる。この他、各種充填剤、難燃剤または着色剤等も用途等に応じて、適宜添加可能である。
【0029】
前記原料注入工程S2に続いて実施される成形型回転・加熱工程S3、すなわち前記成形型16を用いた成形体Sの製造過程は以下のように説明される。先ず前記成形型16を構成する第1基体22および第2基体24を開放した状態において、該第2基体24内に所定量の前記ポリウレタン原料Mを注入する。そして前記両基体22,24を型閉めした後に前記流通パイプ26内に加熱媒体を流通させて前記シェル30を所定温度に加熱し、更に型フレーム20全体、すなわち成形型16自体を定速回転させる。これらの一連の動作を実施することにより、キャビティ32内のシェル30表面に前記ポリウレタン原料Mが接触して次第に均質、すなわち略一定の所要厚となると共に、該シェル30からの加熱により該原料Mの重合による樹脂化が開始され、最終的に該シェル30に成形体Sとして付着形成される。そして、しかる時間経過後に前記流通パイプ26に冷却媒体を流通させて、前記シェル30を冷却してこれにより前駆成形体Sの樹脂強度を安定させた後に、該成形体Sを該シェル30から剥離して脱型するようになっている。
【0030】
(成形型回転・加熱工程S3について)
前記成形型回転・加熱工程S3は、前記成形型16内に注入された前記ポリウレタン原料Mを、該成形型16を所定の速度で三次元的に回転させることで、得るべき成形体Sの外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有するシェル30の表面に該原料Mを均質な所要厚として付与すると共に、該シェル30を加熱することで、該シェル30表面に付与された該原料Mの重合を進行させて成形体Sを得る工程である。具体的には、成形段階S31、冷却段階S32および脱型段階S33からなる。なお、本発明における所要厚とは、一般肉厚を指す。ここで一般肉厚とは、本発明に係る成形体のような中空成形体の大半を占める平均的な肉厚をいい、テーパー部や逆テーパー部、くびれまたは絞り等の肉薄部が形成される部位を除いた部位の厚みをいう。またここでは三次元的な回転と記載しているが、これに限定されるものではなく、例えば二次元的な回転でもよい。
【0031】
(成形段階S31について)
前記成形段階S31は、図示しない駆動手段により型フレーム20全体を定速回転させることにより、キャビティ32内に注入されたポリウレタン原料Mが前記シェル30の表面に適宜接触させて、均質かつ所要の厚さとして付与すると共に、前記温度調整ユニットにおいて流通パイプ26内へ加熱した高温の熱媒体を供給して、該シェル30の表面全体を所定温度まで均一的に加熱することで混合触媒を活性化させ、これにより該原料Mの重合を進行させて該シェル30の内部輪郭形状と合致する外部輪郭形状を有する成形体Sを得る段階である。また、ここで形成される成形体Sの一般肉厚としては、その機械的物性を確保するために少なくとも0.3mm以上とされる。また回転成形法により得られる成形体Sは、その製造工程上、3mm以下、好適には2mm以下といった薄い構造体とすることも可能である。なお、例えば自動車内装材等として本発明に係る成形体Sを使用する場合、前述の如く、該成形体Sの肉厚が2mm以下といった薄い構造体は、重量の低減等の点で特に優位性が高い。
【0032】
前述したように、前記ポリウレタン原料Mは重合開始剤として使用する混合触媒として、熱感応型触媒を採用しているので、前記シェル30が該混合触媒を活性化させる温度となるまでは重合は抑制される。すなわち、回転する前記成形型16のキャビティ32内に注入された前記ポリウレタン原料Mの粘度は極めて緩やかに昇する。従って、前記シェル30の加熱を開始して前記触媒の活性化温度となるまでは、前記ポリウレタン原料Mのキャビティ32内での流動性は低下せず、その結果、例えば得るべき成形体Sが複雑形状を有し、これにより該シェル30が深いアンダーカット部を有するような場合でも充分な厚さを有する該原料Mからなる層を容易に形成し得る。
【0033】
前記成形型16の回転により、得るべき成形体Sの外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有するシェル30表面には、所要厚とされた前記ポリウレタン原料Mが均一に付着した状態となっている。この状態において、前記シェル30が、前記混合触媒が活性化するのに充分で、かつ得られる成形体Sをなすポリウレタン系樹脂の熱分解温度等より低い温度を有するように、前記温度調節ユニットを制御すれば、該シェル30表面に付着している所要厚とされた前記ポリウレタン原料Mから得るべき形状を有する成形体Sが得られる。前記成形型16の回転速度については、注入された前記ポリウレタン原料Mの粘度にも依存するが、基本的に3〜25回転/分の範囲に設定される。この回転が3回転/分未満であると前記シェル30の表面に均質な付与が困難となり、25回転/分を越えると得るべき成形体Sの全体に亘り、均一な所要厚が維持されず、その結果、剛性が損なわれてしまう。
【0034】
なお前述の加熱は、基本的に前記ポリウレタン原料Mが成形体16の回転により、前記シェル30表面に所要厚の層を形成した後に実施される。しかし、前記シェル30の加熱による温度上昇は急激に起こるものではないため、そのタイムラグを考慮して該加熱は、該成形型16の回転運動の開始と同時に開始するようにして、製造時間の短縮を図ってもよい。
【0035】
(冷却段階S32について)
前記冷却段階S32は、最終的な脱型段階S33を行なうに先立ち実施される段階である。具体的には、前記成形段階S31の実施後から所定時間経過後に、前記温度調整ユニットにおいて流通パイプ26に冷却した低温の熱媒体を流通させることで、前記シェル30を介して得られた成形体Sの効率的な冷却を図るものである。
【0036】
(脱型段階S33について)
前記脱型段階S33は、前述の成形段階S31および冷却段階S32を経て、前記シェル30上に形成された得るべき成形体Sを成形型16から脱型する段階である。具体的には、前記成形型16回転を停止した後に、両基体22,24を開放して、前記冷却段階S32の実施により冷却された成形体Sを前記シェル30から剥離脱型するものである。
【0037】
(最終工程S4について)
最終的に施される前記最終工程S4は、脱型して得られた成形体Sに対して必要とされる後加工および検査等を実施する工程であり、この工程S4を経ることで最終製品たる成形体Sが完成する。通常、前述の成形型回転・加熱工程S3を経ることで得られる成形体Sは、その端部に、所謂バリが付着しており、このバリを除去する後工程等は適宜実施される。
【0038】
【実験例】
次に、前記の製造方法により製造される回転成形体についての実験例を示す。なお、本発明に係る回転成形体およびその製造方法は、本実験例に限定されるものではない。
【0039】
以下の表1に従った実施例1〜5および比較例1〜4に係る各原料を、ウレタン低圧注入機(商品名 スーパーショットEX;日本ソセー工業製)を用いて、温度50℃に温調されると共に、アンダーカット部を有する、所謂複雑形状の回転成形型内に注入し、そして該成形型を密閉しつつ、その温度を150℃まで昇温し、回転数4.8回転/分、時間15分間の条件で該成形型を回転させる。次いで冷却媒体を使用することで、前記成形型の温度を約80℃まで冷却した後、該成形型から得られた成形体を脱形し、必要に応じてキュアを施した。このようにして得られた実施例1〜5および比較例1〜4に係る成形体から所定の試験片を作製した後、JIS K 6251(加硫ゴム引張試験方法)に準拠する引張強度(MPa)を測定し、また得られた成形体の前記回転成形型からの脱形性およびピンホール等の形状的欠陥を目視等により確認し、総合的な回転成形体としての判定をで行なった。ここで脱形性、形状的欠陥および総合判定は、○:良い、△:一部問題有り、×:問題あり、で評価した。なお使用した各原料の詳細は、以下に記する。
【0040】
(使用原料)
・ポリオール:以下に記載する1〜3の各ポリオールの混合物を使用した。
1.3官能エステルポリオール(商品名 タケラックPB628;三井武田ケミカル製、分子量:600):45pbw
2.3官能エーテルポリオール(商品名 サンニックスGP−3700M;三洋化成製、分子量:4000):45.6pbw
3.3官能エーテルポリオール(商品名 サンニックスGP−250;三洋化成製、分子量:250):9.4pbw
・イソシアネートA:カルボジイミド変性MDI(商品名 MTL;日本ポリウレタン工業製)
・イソシアネートB:水添MDI(商品名 ディスモジュールW;Bayer製)
・触媒:アセチルアセトン鉄(商品名 ナーセム第二鉄;日本化学産業製)
・触媒希釈剤:アセチルアセトン(和光純薬製)
【0041】
【表1】
【0042】
(結果)
結果を上記の表1に併せて示す。この表1から、混合触媒の使用量や、該混合触媒における金属アセチルアセトネートおよび該金属アセチルアセトネートの希釈剤たるアセチルアセトンの混合比率が本発明に係る範囲外となると、得られる成形体の引張強度に代表される機械的強度が殆ど発現しなくなったり、均一な所要厚が得られないため、製造された成形体が不良品となってしまうことが確認された。
【0043】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る回転成形体およびその製造方法によれば、該成形体を、熱硬化性のポリウレタン系樹脂原料を、所謂熱感応型触媒により重合させて構成するようにしたので、TPUやTPOを使用した際の成形体の脱型が困難である点や傷が付き易い、といった材質的な欠点を回避し得る。また2液性のポリウレタン系樹脂を原料として使用したスプレー法では対応が困難であった、深いアンダーカット部等への形状的な対応、すなわち複雑形状への対応を容易にし得る効果を奏する。これにより、本発明に係る回転成形体およびその製造方法は、例えば昨今の環境問題に対応し、複雑形状物が要求されると共に、成形体とされた際に良好な脱形性・耐傷付き性を有するため、例えば自動車用内装材等の原料として、また成形方法として好適に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係るポリウレタン原料から成形体を得る製造工程を示すフローチャート図である。
【図2】図1に係る製造工程を実施する製造装置の一例を示す概略図である。
【図3】図2に係る製造装置を構成する成形型を拡大した概略構造を示す縦断側面図ある。
【符号の説明】
16 成形型
30 シェル
32 キャビティ
M ポリウレタン系樹脂原料
S 成形体
Claims (11)
- ポリオールおよびイソシアネートを主原料とし、これに触媒等の各種副原料を混合したポリウレタン系樹脂原料であって、
前記触媒として、金属アセチルアセトネートおよびアセチルアセトンの混合触媒を使用し、
一定温度以上の加熱により、前記混合触媒が前記ポリオールおよびイソシアネートの重合を開始させるようにした
ことを特徴とする回転成形体。 - 前記混合触媒の使用量は、前記ポリオール100重量部に対して2.5×10−4〜1.0×10−1pbwの範囲に設定される請求項1記載の回転成形体。
- 前記混合触媒における金属アセチルアセトネートおよび該金属アセチルアセトネートの希釈剤たるアセチルアセトンの混合比率は、1:0〜1:10の範囲に設定される請求項1または2記載の回転成形体。
- 得るべき成形体(S)の外部輪郭形状に合致する内部輪郭形状を有するシェル(30)を備え、該シェル(30)の内側を対向的に閉成することでキャビティ(32)が画成される成形型(16)内に、所要量のポリオールおよびイソシアネートからなる主原料並びに触媒等の各種副原料を充分に混合・攪拌しつつ注入し、
前記キャビティ(32)を密閉した後、前記成形型(16)を回転させることで、前記主原料および副原料を充分に混合してポリウレタン系樹脂原料(M)を得ると共に、該ポリウレタン系樹脂原料(M)を前記シェル(30)の表面全体に均質に行き渡らせると共に、該シェル(30)の加熱を行なって、
前記キャビティ(32)に得られた前記ポリウレタン系樹脂原料(M)を、前記シェル(30)に接触させることで重合を進行させ、
これにより前記シェル(30)の表面に所要厚の成形体(S)を付着成形するようにした
ことを特徴とする回転成形体の製造方法。 - 前記成形型(16)の回転は、三次元的に実施される請求項4記載の回転成形体の製造方法。
- 得られる前記成形体(S)の一般肉厚は、3mm以下に設定される請求項4または5記載の回転成形体の製造方法。
- 前記シェル(30)の加熱は、キャビティ(32)内に注入された前記ポリウレタン系樹脂原料(M)が前記成形型(16)の回転により、該シェル(30)の表面全体に均質に行き渡った後に実施される請求項4〜6の何れかに記載の回転成形体の製造方法。
- 主原料となるポリオールおよびイソシアネートと、触媒等の各種副原料とを混合して、ポリウレタン系樹脂原料(M)を予め製造しておき、
得るべき成形体(S)の外部輪郭形状に合致する内部輪郭形状を有するシェル(30)を備え、該シェル(30)の内側を対向的に閉成することでキャビティ(32)が画成される成形型(16)内に、所要量の前記ポリウレタン系樹脂原料(M)を注入し、
前記キャビティ(32)を密閉した後、前記成形型(16)に回転させつつ該シェル(30)の加熱を行ない、
前記キャビティ(32)に注入した前記ポリウレタン系樹脂原料(M)を、前記シェル(30)に接触させることで重合を進行させ、
これにより前記シェル(30)の表面に所要厚の成形体(S)を付着成形するようにした
ことを特徴とする回転成形体の製造方法。 - 前記成形型(16)の回転は、三次元的に実施される請求項8記載の回転成形体の製造方法。
- 得られる前記成形体(S)の一般肉厚は、3mm以下に設定される請求項8または9記載の回転成形体の製造方法。
- 前記シェル(30)の加熱は、キャビティ(32)内に注入された前記ポリウレタン系樹脂原料(M)が前記成形型(16)の回転により、該シェル(30)の表面全体に均質に行き渡った後に実施される請求項8〜10の何れかに記載の回転成形体の製造方法。
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-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003120515A patent/JP2004323680A/ja active Pending
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