JP2004323363A - ビオチニル基含有ポルフィリン化合物及びその用途 - Google Patents

ビオチニル基含有ポルフィリン化合物及びその用途 Download PDF

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泰弘 磯貝
Manabu Ishida
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Abstract

【課題】生体中の微量ヘムタンパク質の精製と標識を迅速かつ簡便に行うことのできるビオチニル基含有ポルフィリン化合物、そのようなビオチニル基含有ポルフィリン化合物を用いたヘムタンパク質の精製方法、ヘムタンパク質用標識試薬、その試薬を用いるヘムタンパク質関連疾患の診断薬、さらには光力学療法用治療薬等を提供する。
【解決手段】本発明の課題は、下記式(I):
Por−A−Bi
(式中、Porは金属錯体を形成してもよいポルフィリン残基;Biは置換されていてもよいビオチニル基;そして、Aは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1〜5個のヘテロ原子を有し、かつ合計で1〜20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基を示す)で表されるビオチニル基含有ポルフィリン化合物、これを用いたヘムタンパク質の精製方法、ヘムタンパク質用標識試薬、これを用いたヘムタンパク質関連疾患の診断薬、光力学療法用治療薬などによって解決される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビオチニル基含有ポルフィリン化合物に関し、より詳しくは、生体中の微量ヘムタンパク質の精製を迅速かつ簡便に行うことのできるビオチニル基含有ポルフィリン化合物に関する。本発明は、そのようなビオチニル基含有ポルフィリン化合物を用いた、ヘムタンパク質の精製方法及び精製装置、ヘムタンパク質用標識試薬、その試薬を用いるヘムタンパク質の検出方法及びヘムタンパク質関連疾患の診断薬、並びに上記ビオチニル基含有ポルフィリン化合物を含有する光力学療法用治療薬にも関する。
【0002】
【従来の技術】
「プロトヘム」あるいは単に「ヘム」と呼ばれる鉄プロトポルフィリンIXは、酵素、酸素運搬体、さらにはバイオセンサーのような数多くのタンパク質の活性中心として種々の役割を演じている(A. Messerschmidt, R. Huber, T. Poulos, K. Wieghardt (Eds) Handbook of Metalloproteins Vol. 1, John Wiley & Sons, New York, 2001等参照)。そのため、これらの生理的機能を研究するにはヘムタンパク質の検出と分離が重要である。
【0003】
従来、アフィニティ−クロマトグラフィーの担体としてヘミンアガロースが、ヘムタンパク質の精製に用いられてきた(Tsutsui & Mueller, Analytical Biochemistry 121, 244−250, 1982:非特許文献1)。しかしながら、このような従来法には、ヘミンに結合しているアガロースとタンパク質との非特異的結合が無視できないという問題がある。その上、アガロースが大きく粒子状であるために、容量あたりのタンパク質結合容量が小さく、ヘムタンパク質との特異的結合を分光学的に検出するのが困難である。また、ヘミンアガロースは、ヘムタンパク質の標識には利用することができないという欠点もある。
一方、最近では、ポルフィリンなどの光活性化剤を患者に投与した後に、治療部位に光を照射してそのポルフィリンを活性化することによって悪性腫瘍や慢性関節リウマチなどの疾患を治療するという、光力学療法(PDT)も開発されている(特表平10−508577号公報:特許文献1)。しかしながら、治療部位に効率的に光活性化剤を供給することができるPDT用治療薬は未だ知られていない。
【0004】
【特許文献1】
特表平10−508577号公報
【非特許文献1】
Tsutsui & Mueller, Analytical Biochemistry 121, 244−250, 1982
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような事情から、ヘムタンパク質の精製を簡易かつ迅速に行うことができるヘムタンパク質の精製法が望まれている。また、生体中のヘムタンパク質(又はヘムタンパク代謝酵素)などの挙動を研究するために、これらのタンパク質を標識化し得る試薬が望まれている。さらに、より効率的な光力学療法用治療薬も望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、
本発明の第1の態様によれば、下記式(I):
Por−A−Bi
(式中、Porは金属錯体を形成してもよいポルフィリン残基;Biは置換されていてもよいビオチニル基;そして、Aは1〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1〜10個のヘテロ原子を有し、かつ1〜30個の炭素原子を有するヘテロヒドロカルビル基を示す)
で表されるビオチニル基含有ポルフィリン化合物が提供される。好ましくは、前記Porは、ヘムa、ヘムb(プロトヘムIX)、ヘムc、バリアントヘムc、ヘムd、ヘムd1、シロヘム(Sirohaem)、ヘムo等の鉄−ポルフィリン誘導体から選択される金属錯体を形成したポルフィリン(ヘム)の残基である。さらに好ましくは、前記Porは、ヘムbの残基である。また、他の好ましい態様によれば、前記Porは、ウロポルフィリン(I型)、ウロポルフィリン(II型)、コプロポルフィリン(III型)、プロトポルフィリン(IX型)及びヘマトポルフィリン(IX型)から選択されるポルフィリンの残基である。なお、前記Biは、好ましくはビオチニル基である。
【0007】
本発明において、前記Aは、好ましくは、炭素原子1個から20個を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基であり、そのアルキレン基中の1又は2以上の隣接しないCH基が−NH−、−NH−NH−、−NHCO−、−CONH−、−N(C1−3アルキル)−、−O−、―S―、−CO−、−O−CO−、−S−CO−、−O−COO−、−CO−S−、−CO−O−、−CH(ハロゲン)−、−CH(CN)、−CH=CH−、−NH−NH−CO−又は−CO−NH−NH−で置換されていてもよい基である。
【0008】
本発明において、前記Aは、より好ましくは、
−NH−NH−、
−NH−NH−CO−(CH−NH−、
−NH−NH−CO−(CH−NH−CO−(CH−NH−、
−NH−(CH−NH−、
−NH−NH−CO−(CH−NH−、
−NH−NH−CO−(CH−CO−NH−NH−、
−NH−(CH−CO−NH−NH−、及び
−NH(CH−CO−NH−(CH−CO−NH−NH−
(これらの式中、各nは独立して1〜10、好ましくは3〜7を示す)から選択される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、上記式(I)のビオチニル基含有ポルフィリン化合物を製造する方法であって、金属錯体を形成してもよいポルフィリンと末端アミノ化ビオチニル基含有化合物とカップリング剤の存在下反応させることを含む、ビオチニル基含有ヘム化合物の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の態様によれば、上記式(I)のビオチニル基含有化合物を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行う工程を含む、ヘムタンパク質の精製方法が提供される。
また、本発明の第4の態様によれば、上記式(1)の化合物、及びアビジン化合物を結合させてなる担体ビーズを含むヘムタンパク質の精製キットが提供される。
また、本発明の第5の態様によれば、上記式(I)のビオチニル基含有化合物に標識物質を結合させてなるヘムタンパク質用標識化合物が提供される。
また、本発明の第6の態様によれば、上記標識化合物を用いてヘムタンパク質を検出する方法が提供される。
また、本発明の第7の態様によれば、上記標識化合物を含有する、ヘムタンパク質関連疾患の診断薬も提供される。
さらに、本発明の第8の態様によれば、式(I)においてPorがポルフィリン残基である化合物を含有する、光力学療法用治療薬が提供される。
【0010】
なお、本発明は、ストレプトアビジンとの高い親和性によって生体高分子の標識と単離に広く利用されているビオチンを、多くのタンパク質中で補欠分子として働いているヘムに結合させた化合物に関するものである。この分子を利用することによって、生体中のヘムタンパク質の標識、単離、微量精製をそれぞれワンステップで迅速に行うことができる。本発明のビオチン基含有ポルフィリン化合物は、単独でタンパク質に結合させた後、種々のアビジン誘導体と結合できるので、上記したヘミンアガロースを用いた従来法の問題を全て解決できる。
【0011】
本明細書中、「ポルフィリン」とは、環状テトラピロールで、4個のピロールが、4個のメチン基により結合閉環したポルフィンの誘導体をいい、例えば、ウロポルフィリン(I型)、ウロポルフィリン(III型)、コプロポルフィリン(III型)、プロトポルフィリン(IX型)、ヘマトポルフィリン(IX型)などが挙げられる。金属錯体を形成したポルフィリンとしては、ヘムが好適なものとして例示される。
【0012】
本明細書中、「ヘム」とは、ボルフィリン類(誘導体)と主にII価又はIII価の鉄の配位化合物をいい、鉄ポルフィリン、ヘマチンと呼ばれることもある。本発明において使用されるヘムとしては、特に限定されないが、例えば、下記に示すような、ヘムa、ヘムb(プロトヘムIX)、ヘムc、バリアントヘムc、ヘムd、ヘムd1、シロヘム(Sirohaem)、ヘムo等の天然ヘムが用いられる(A. Messerschmidt, R. Huber, T. Poulos, K. Wieghardt (Eds) Handbook of Metalloproteins Vol. 1, John Wiley & Sons, New York, 2001等参照)。
【化1】
Figure 2004323363
【0013】
上記式中の、X、Y及びZはそれぞれ下表に示すとおりである。
Figure 2004323363
【0014】
また、本発明においては、上記天然ヘムに限られず、各種の公知の合成ヘムを用いることもできる。そのような合成ヘムは、例えば、David Dolphin ed., The Porphyrins, Vol. 1−5, Academic Press, New York, 1978に記載されている。
【0015】
本明細書中、「ヘムタンパク質」は、上記のようなヘムに結合し得るタンパク質(ヘムタンパク代謝酵素を含む)をいい、例えば、ヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロム、ペルオキシダーゼ、カタラーゼなどが挙げられる。
【0016】
本明細書中、「ヒドロカルビル基」は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい置換又は非置換の炭化水素基をいい、非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれしていてもよい。C〜C20炭化水素基としては、例えば、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C20アルコキシ基、C〜C20アシル基、C〜C20アルキルジエニル基、C〜C20ポリエニル基、C〜C18アリール基、C〜C20アルキルアリール基、C〜C20アリールアルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20シクロアルケニル基、(C〜C10シクロアルキル)C〜C10アルキル基などが挙げられる。なお、本発明においてヒドロカルビル基がスペーサーとして用いられる場合は、上記基から1個の水素原子が除かれた2価の基をいう。
【0017】
本明細書中、「アルキル基」とは、線状でもよいし、枝分かれしてもよいアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。なお、式中のAとして、アルキル基が選択される場合は、実際にはこれらの基から1個の水素原子が除かれたアルキレン基がスペーサーとして用いられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0018】
本明細書中、「アルケニル基」としては、1〜3個の2重結合を有する炭素数2〜20、より好ましくは2〜10の直鎖または分岐鎖のアルケニル基が挙げられ,具体的には、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、1,3−オクタジエニル、2−ノネニル、1,3−ノナジエニル、2−デセニル等が挙げられる。
【0019】
「アリール基」としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基または2−ナフチル基などのナフチル基、2−インデニル基などのインデニル基、2−アンスリル基などのアンスリル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基などのトリル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0020】
本明細書中、「ヘテロヒドロカルビル基」は、上記ヒドロカルビル基に、さらに、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1以上のヘテロ原子を含む基をいい、例えば、炭素原子1個から20個を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基であり、そのアルキレン基中の1又は2以上の隣接しないCH基が−NH−、−NH−NH−、−NHCO−、−CONH−、−N(C1−3アルキル)−、−O−、―S―、−CO−、−O−CO−、−S−CO−、−O−COO−、−CO−S−、−CO−O−、−CH(ハロゲン)−、−CH(CN)−、−CH=CH−、−NH−NH−CO−又は−CO−NH−NH−で置換されていてもよい基等が挙げられる。
【0021】
また、炭化水素基、複素環基などに置換され得る基としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル基等が挙げられる。
【0022】
本明細書中、「ビオチニル基」とは、下記に示すビオチンの如何なる残基をも示すが、狭義では、下記ビオチンの水酸基を除いたビオチン残基をいう。
【化2】
Figure 2004323363
本発明におけるビオチン残基は、ヘムタンパク質の精製・標識化などの妨げとならない限り、如何なる置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル基が挙げられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(製造方法)
本発明のビオチニル基含有ポルフィリン化合物は、例えば、下記スキーム(1)に示す方法によって合成することができる。
【0024】
スキーム(1)
【化3】
Figure 2004323363
(式中、Por’は、金属錯体を形成してもよいポルフィリンからカルボキシ基1個を除いた残基を示し;A’はスペーサ−基を示し;そして、Biはビオチニル基を示す。)
【0025】
上記スキーム(1)において、化合物(1)と末端アミノ化ビオチニル化合物(2)とを、カルボジイミド類等のカップリング剤の存在下反応させて、目的とするビオチニル基含有ポルフィリン化合物(3)を得る。末端アミノ化ビオチニル化合物としては、ビオチンヒドラジド、6−ヒドラジドヘキシル−D−ビオチンアミド、6−(6−ヒドラジドヘキシル)アミドヘキシル−D−ビオチンアミド(これらは市販の公知化合物)等のヒドラジド化ビオチニル化合物が好ましい。この反応は、通常、適当な溶媒の存在下、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜40℃、0.5時間〜48時間、好ましくは1〜24時間行う。
ここで、最終生成物として金属錯体(例えば、ビオチニル基含有ヘム化合物)を得る場合には、ポルフィリンの金属錯体(例えば、ヘム)と末端アミノ化ビオチニル化合物とをカップリング剤の存在下で反応させてもよく、あるいは、ポルフィリンと末端アミノ化ビオチニル化合物とをカップリング剤の存在下で反応させた後に金属(イオン)と反応させて金属錯体とすることもできる。
なお、スキーム(I)では、ポルフィリン(1)は、カルボキシ基を1個有するように模示したが、実際には、複数のカルボキシ基を有する場合がある。例えば、本発明が目的とするヘム化合物は、ビオチニル基が1個ヘムに結合することが好ましい。したがって、対象とするヘムが有するカルボキシ基の数に応じて、出発物質の使用量を調整する必要がある。例えば、鉄プロトポルフィリンIXは、2個のカルボキシ基を有している。ゆえに、ポルフィリン(1)として鉄プロトポルフィリンIXを用いる場合は、ヒドラジド化ビオチニル化合物(2)に対して、ポルフィリン(1)を2当量以上、好ましくは2.5当量以上用いると鉄プロトポルフィリンIXのカルボキシ基1個のみにビオチニル化合物がヒドラジド基を介して結合した化合物が得られる。
【0026】
参考のため、上記カップリング反応のメカニズムを説明するために、鉄プロトポルフィリンIXと6−ヒドラジドヘキシル−D−ビオチンアミドを、ジカルボキシイミドの存在下に反応させて、ビオチニル基含有ポルフィリン化合物を得た例をスキーム(2)に示す。
【0027】
スキーム(2)
【化4】
Figure 2004323363
【0028】
この反応において用いられるカップリング剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−アリル−N’−(β−ヒドロキシエチル)カルボジイミド、N−(α―ジメチルアミノプロピル)−N’−(β−ブロモアリル)カルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−(6−ベンゾイルアミノヘキシル)カルボジイミド、シクロヘキシル−β−(N−メチルモルフォリノ)エチルカルボジイミド、エチル−1,2−ジヒドロ−2−エトキシキノリン−1−カルボキシラート(EEDQ)、イソブチル−1,2−ジヒドロ−2−イソブトキシ−1−キノリンカルボキシラート(IIDQ)、1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、O−{〔シアノ−(エトキシカルボニル)−メチリデン〕−アミノ}−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム−テトラフルオロボラート(TOTU)、プロパンホスホン酸無水物(PPA)、3−ジメチルアミノホスフィノチオイル−2(3H)−オキサゾロン(MPTO)等が挙げられる。
【0029】
また、この反応で用いられる適当な溶媒は、この反応で使用される溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、ピリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族アミン類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類またはこれら二種以上の混合物等が挙げられる。上記反応で特に好ましい溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合物である。
【0030】
上記反応において、「塩基」が用いられる場合は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、などの塩基性塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、ルチジンなどの芳香族アミン類、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリンなどの第3級アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなどの金属アミド類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert−ブトキシドなどの金属アルコキシド類などから選択される。
【0031】
なお、上記の反応によって得られる最終生成物は、濃縮、溶媒抽出、分溜、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどの公知の手段によって反応混合物から単離、精製することができる。
【0032】
上記した末端アミノ化ビオチニル基含有化合物(2)は、例えば、下記スキーム(3)に示す反応で合成することができる。
【0033】
スキーム(3)
【化5】
Figure 2004323363
【0034】
上記スキーム(3)において、ビオチン(4)とヒドラジド化合物(5)を、カルボジイミド類等のカップリング剤の存在下反応させることによって、末端アミノ化ビオチン化合物(2’)を得ることができる。ヒドラジド化合物(5)の代りに、式:NH−NH−CO−A’−CO−NH−NHで表されるジヒドラジド化合物あるいは式:NH−A’−NHで表されるジアミン化合物(式中、A’は1〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1〜6個のヘテロ原子を有し、かつ1〜30個の炭素原子を有するヘテロカルビル基を示す)なども用いることもできる。これらの反応は、スキーム(1)に示したカップリング反応と同様な反応条件下行うことができる。
【0035】
このようにして、式:Por−A−Biにおいて、Aのスペーサー基の両末端がアミノ基である化合物を合成することができる。Aのスペーサー基がこれ以外の基である化合物は、当業者であれば公知の有機合成手法を用いて合成することができる(Bayer et al., Methods Biochem. Anal. 26 (1980), 1−45参照)。
【0036】
(ヘムたんぱく質の精製法)
試料中に存在するヘムタンパク質の精製は、上記ビオチニル基含有ポルフィリン化合物を用いて、アフィニティークロマトグラフィーを利用して行う。ここで、「アフィニティークロマトグラフィー」とは、抗原と抗体、酵素と基質、あるいは受容体とリガンドといった物質間の相互作用(親和性)を利用することにより試料(例えば、血清及び血漿等の体液試料、培養上清あるいは遠心上清等)中に含まれる目的物質を分離または精製する方法を意味する。本発明の精製法においては、上記ビオチニル基含有ポルフィリン化合物とヘムタンパク質との特異的親和性と、ビオチニル基とアビジン化合物との特異的親和性を利用することにより、試料中に含まれるヘム結合蛋白質を分離または精製する。本発明のポルフィリン化合物は、公知のアフィニティークロマトグラフィー技術を用いて種々の態様で試料中に存在するヘムタンパク質を精製することができる。例えば、本発明のポルフィリン化合物とアビジン化合物を結合させてなる担体ビーズを含むヘムタンパク質の精製キットによって、ヘムタンパク質を精製することができる。
【0037】
本発明の好ましい実施態様によれば、まず、標的ヘムタンパク質を含む試料に、上記ビオチニル基含有ポルフィリン化合物を加え、標的ヘムタンパク質とポルフィリン化合物とを結合させる。次いで、この標的ヘムタンパク質がポルフィリン化合物に結合した化合物(以下、「ヘムタンパク・ポルフィリン複合体」という)に、ビーズ等の担体にアビジン等のアビジン化合物を結合させたもの(以下、「アビジンビーズ」という)を加え、このアビジンビーズにアビジン−ビオチン結合を利用して、ヘムタンパク・ポルフィリン複合体を結合させる。そして、アビジンビーズにヘムタンパク・ポルフィリン複合体が結合したものを公知の手段で回収し、イミダゾール、酸、塩酸グアニジンなどの変性剤等のタンパク質からヘムを脱離させる働きを有している化合物を含む溶液に懸濁させることによって、標的タンパク質を分離、回収することができる。なお、上記担体は、アビジン化合物を結合できる担体であれば特に限定されることはなく、例えば、ベクター・ラボラトリーズ社およびピアス社から市販されているストレプトアビジン磁気ビーズ、ストレプトアビジンアガロース等を用いることができる。また、磁気を帯びた磁気ビーズを用いれば、磁石によって回収が容易となるメリットがある。
【0038】
(ヘムタンパク質用標識化合物及びそれを用いた用途)
上記のようにして得られたビオチニル基含有ポルフィリン化合物は、これ単独で、あるいはこれに標識物質を結合させることによってヘムタンパク質用の標識化合物として用いることができる。ここで、本明細書中、「標識物質」とは、ビオチニル基含有ポルフィリン化合物に物理的あるいは化学的に結合させることによりそれらの存在を検出し易くするために用いられる物質を意味する。具体的には、アビジン、ストレプトアビジン等のアビジン化合物を結合したフルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質;H、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体などが挙げられる。この中で、アビジン化合物は入手し易いし、アビジン−ビオチンの特異的結合を利用して簡単にビオチニル基含有ポルフィリン化合物を標識できるので好都合である。
このような標識化合物あるいはこの化合物を含む診断薬を用い、公知の技術を利用して、試料(例えば、血清や血漿等の体液試料、培養上清あるいは遠心上清等)中に含まれるヘムタンパク質を検出、定量することができる。また、このような標識化合物を用いて、ヘムタンパク質の生体内における挙動などを観察することもできる。診断薬は、上記化合物を安定に保存する溶液の形態とすることもできる。試料中に存在するある特定のヘムタンパク質の検出量を、正常値の範囲と比較することによって、その特定のヘムタンパク質が関与している疾患に罹患しているか否か診断することができる。そのようなヘムタンパク質関連疾患として、ヘムオキシゲナーゼ欠損症、バッチ(bach)と称されるヘム結合性転写因子が関与する白血病などが知られている。また、近年、大腸癌などの消化器系の疾患を検査する方法として、消化器官からの出血に起因する糞便中のヒトヘモグロビン(便潜血)の検出が広く行われているが、本発明の診断方法はこのような大腸癌の診断にも利用することができる。
【0039】
(光力学療法(PDT)用治療薬)
本発明に係るビオチニル基含有ポルフィリン化合物は、PDT用治療薬として用いることができる。このポルフィリン化合物(有効成分)をPDT用治療薬として用いる場合には、これに薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤などを混合し、通常は、注射剤の形態で投与する。製剤中、有効成分は、例えば0.1ないし30重量%、より好ましくは1〜5重量%配合される。この治療薬の投与量は、対象患者の症状、年齢、体重などにより異なるが、例えば、1日あたりに投与される有効成分の量は、患者の体重1kgあたり0.05mg〜30mgであり、好ましくは0.05mg〜5mg、さらに好ましくは、0.05mg〜1mgである。なお、有効成分の配合量及び投与量は、上記範囲に制限されることなく、使用する有効成分、担体、賦形剤、希釈剤の種類などに応じて適宜調整される。PDT治療を行う場合は、好ましくは、投与前に、腫瘍が存在する患部組織をアビジンで標識する。このようなアビジン標識は、腫瘍細胞で特異的に発現しているタンパク質(腫瘍マーカー等)に対する抗体を用いることによって行うことができる。そして、患部組織に上記有効成分を含む注射剤を投与する。すると、ビオチンとアビジンとの高い親和性により、その患部組織に部位特異的に必要なポルフィリン化合物を効率良く供給することができる。その後、その患部組織に光を照射し、ポルフィリンを活性化することによって病巣を破壊することができる。照射される光は、そのポルフィリンを活性化するのに適当な波長(例えば、600〜790nm)及び強度(例えば、1〜50J/cm)を有する。光の照射は、例えば、1分〜2時間、好ましくは、10分〜600分間行われる。光の照射は、必要に応じて、カテーテルに挿入された光ファイバーなどを用いて行うことができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。
【0041】
実施例 1: ビオチニル基含有ポルフィリン化合物の合成
実験材料として、鉄プロトポルフィリンIXクロリド(ヘミン)はシグマ社から購入したものを用いた。6―ヒドラジドヘキシル−D−ビオチンアミドはベクター・ラボラトリーズ社から購入したものを用いた。
まず、脱水したDMFとDMSOにヘミンと6―ヒドラジドヘキシル−D−ビオチンアミドとを溶解させてそれぞれ6.7mMおよび2.7mMとした。20μlのビオチンヒドラジド溶液と5.6mgのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)とを1mlのヘミン溶液に加えた。反応混合物を穏かに振り混ぜて暗黒中で3時間、室温でインキュベートした。プロトヘムの2つのプロピオナート基の一つだけをビオチンヒドラジドと結合させるために、約2.5当量の過剰量のヘミンを反応のために用いた。
【0042】
このようにして作成した反応混合物に約5%(v/v)ピリジンを加えてからC18逆相調製用HPLCカラム(ナカライ・テスク製のCOSMOSIL 5C18−ARII)にかけた。0.1%TFAの存在下で40〜60%アセトニトリル勾配を用いてビオチニル基含有ポルフィリン化合物(以下、「ビオチンヘム」という)を溶出させた。ビオチンヘムを含有するピーク画分を集めてからすぐに暗黒中で凍結乾燥させた。試料を最少量のDMSOに溶解させ、−80℃で貯蔵した。試料の純度は、C18逆相分析用HPLCカラム(ナカライ・テスク製のCOSMOSIL 5C18−AR300)を用いて検定した。精製した分子の同定のためにレーザー脱着質量分析法(MALDI/ TOFMS)によって評価を行なった。質量分析の結果を図1示す。
【0043】
この分析によって得られた化合物が約969.4Daの質量を持つことがわかった。これは、プロトヘムの2つのプロピオナート基の一つがビオチンヒドラジドと共役しているビオチンヘムの質量の計算値(969.98Da)に対応する。従って、得られた化合物は、前述のスキーム(2)中に示した最終化合物のビオチンヘムであることが確認された。
【0044】
実施例2:ビオチンヘムを用いたヘム蛋白質の精製
マッコウクジラ・ミオグロビン(Springer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 8961−8965)、設計したグロビン−1(DG1)(Isogai et al., Biochemistry 39 (2999), 5683−5690参照)、ならびに設計した4本螺旋(ヘリックス)束ヘムタンパク質(dA1)をコードする合成遺伝子をpRSET−Cベクター(Invitrogen)にクローン化した。二量体中で4本螺旋束を生成させ、Gibneyらの方法[(Gibney et al., Biochemistry 37 (1988), 4635−4643)に従って2螺旋間のbis−Hisライゲーションによって単量体当たり1ヘムを結合させるように、dA1のアミノ酸配列(ML・KKLREEA・LKLLEEF・KKLLEEH・LKWLEGGGGGGGGELLKL・HEELLKK・FEELLKL・AEERLKK・L:配列番号1)を設計した。pUC19にクローン化したマッコウクジラ・ミオグロビンをコードする合成遺伝子Springer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 8961−8965)を用いて天然ミオグロビンを含む細胞抽出物を得た。これらのヘムタンパク質をコードしているベクターについては、大腸菌株BL21(DE3)に導入してから、100mg/Lのアンピシリンを加えたTerrificブロス(液体培地)中でIPTGを用いてT7プロモーターのコントロール下に発現させた。細胞群については、遠心して集めてから10 mM TRIS−HCl, pH 8.0と1 mM EDTAとで洗浄した。生成したペレットは、6M ウレア, 0.5 M NaCl, 1 mM EDTA, および0.1 % ODP(octyl glucopyranoside)を含む溶解緩衝液中に懸濁させてから音波破砕処理によって溶解させた。遠心による不溶性画分を除いた後で、上清を集めてTN緩衝液に対して透析した。細胞抽出物中でタンパク質に結合しているほとんどすべてのヘムがこれらの処理過程中に取り除かれ、該タンパク質類が再び折り畳まれた。遠心して不溶性画分を除いた後で、Centriprep−10(Amicon)を用いて該タンパク質類を適切な濃度にまで濃縮した。ビオチン化ヘムを用いて組換えアポヘムタンパク質を精製するための出発物質として、上記のようにして得た細胞抽出物を用いた。
【0045】
前述のようにして得た細胞抽出物に、終濃度10〜40μMとなるように少しずつビオチン化ヘムを加え、その後、4℃で、30分以上インキュベートした。図2に、人工ヘム蛋白質dA1を含む細胞抽出液にビオチンヘムを加えたときの紫外可視光吸収スペクトル変化を示す。図2において、一番下のスペクトルがビオチンヘムなしのものを示し、下から上へビオチンヘムを段階的に添加することによってヘム結合型dA1濃度が増加していることが分かる。縦軸は吸光度を示す。
【0046】
次いで、遠心して不溶性物質を除いてから、20mMトリス・塩酸(pH8.0)、500mMのNaCl及び0.5%(v/v)Tween20を含む洗浄用緩衝液で事前に洗浄しておいたストレプトアビジン・アガロース(Sigma)またはストレプトアビジン磁石ビーズ(Pierce)を入れたサンプルチューブに該溶液を移した。得られたタンパク質・ビオチン・ヘム・ストレプトアビジン複合体をアガロース複合体の場合は遠心によって、また磁石ビーズ複合体の場合は磁石を用いて回収した。洗浄用緩衝液で該ペレットを二回洗浄してから10Mイミダゾール(pH8.0)でインキュベートして結合タンパク質を溶出させた。アガロースまたは磁石ビーズを取り除いてから該溶液を脱塩して凍結乾燥させた。凍結乾燥させた試料を少量のTN緩衝液中に溶解させてから15%(w/v)ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGE法によって分析した。図3に、ビオチンヘムによって精製されたヘム蛋白質のSDS−PAGEを示す。図3において、レーン1は分子量マーカー(上から94、67、43、30,20.1,14.4 kDa)、レーン2及び3は、それぞれ、組換えミオグロビンの細胞抽出液及びその精製画分、レーン4及び5は、それぞれ、dA1の細胞抽出液及びその精製画分、そしてレーン6及び7は、それぞれ、DG1の細胞抽出液及びその精製画分を示す。
上記のようにして、マッコウクジラ・ミオグロビン、設計したグロビン(DG1)、または設計した4本螺旋束ヘムタンパク質(dA1)をそれぞれ含む3種類の試料を調製したが、これらにビオチン化ヘムを添加することによって、これらタンパク質内の結合ヘムに特徴的である強いソレー吸収帯が生じ、この吸収帯によって、生体分子の濃厚混合物中でさえも結合ヘムがタンパク質に効果的に組み込まれていることがわかった。これら混合物からの再構成ヘムタンパク質の回収は、ストレプトアビジン磁石ビーズを使うと容易であったし、他のタンパク質による重大な汚染を生じなかった(図3参照)。
【0047】
比較例1
緩衝液で磁石ビーズを洗浄してからイミダゾールを添加してアポヘムタンパク質を溶出させる代わりに、酸を添加したり、塩酸グアニジンのような変性剤を添加したりする方法によっても該タンパク質を溶出させた。ところがこの場合には、該ビーズにもビオチン化ヘムにも結合しない変性ストレプトアビジン・サブユニットがヘムタンパク質と共溶出した。ストレプトアビジン・アガロースを用いることによっても該ヘムタンパク質を精製した。ところが、アガロースとタンパク質の非特異的相互作用のために、アガロースを使うと汚染の増加が生じた。
結論として、ビオチン化ヘムは、天然及び人造のヘムタンパク質の検出と精製に有用な試薬であることが分かった。また、上記のように、ビオチン化ヘムの調製は、簡単であるし、天然あるいは人造のヘムタンパク質を用いるその特異的なライゲーションをUV−Vis吸収分光法によってモニターすることも容易であることが確認された。
【0048】
実施例3: ビオチンヘムのミオグロビンへの結合(標識化)
アスコリら(F. Ascoli, M.R. Fanelli, E. Antonini, Preparation and properties of apohemoglobin and reconstituted hemoglobins, MethodsEnzymol. 76 (1981), 72−87)に記述してあるメチルエチルケトン抽出法を適用してウマ心臓メトミオグロビンからアポミオグロビンを調製した。10mMトリス塩酸(pH8.0)と200mM塩化ナトリウムとを含むTN緩衝液に対して4℃でヘム除去アポ・タンパク質を透析した。遠心によって不溶性の画分を除いた後に、Centriprep10(Amicon製)を用いて上清を1〜2mMに濃縮した。ビオチンヘムによるミオグロビンの再構成は、アポミオグロビン溶液にビオチンヘム溶液を、そのタンパク質に対して0.1〜0.2当量にあたる少量の過剰量ずつ添加して行なった。本混合物を4℃で30分超の時間でインキュベートしてから20,000×gで30分間遠心した。ビオチンヘム結合ミオグロビンを上清中に集め、UV−Vis吸収スペクトルを測定したところ、天然メトミオグロビンのそれとほぼ同等に有意な安定性を保持した。
【0049】
なお、ビオチンヘムによって再構成したミオグロビンをTN緩衝液で10〜20μMに希釈し、さらに光路長1.0cmの石英キュベットを用いてHitachi U−3000分光光度計でUV−Vis吸収スペクトルを記録した。上記アスコリらの文献に従った分光学的な測定用に第ニ鉄、デオキシ第一鉄、ならびに第一鉄COフォームを調製した。
第二鉄(実線)、デオキシ第一鉄(破線)、ならびに第一鉄COフォーム(点線)においてビオチンヘム結合ミオグロビンのUV−Vis吸収スペクトルを図4に示す。これらのスペクトルは、天然ミオグロビンの該スペクトルから区別できなかった。さらに、ビオチンヘム結合ミオグロビンのO結合能は安定に保たれていたことを確認した。これらの結果から、ミオグロビン中の正常なプロトヘムと同じようにしてビオチンヘムがミオグロビンのヘムポケットに組込まれていることが分かった。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、本発明は、生体中の微量ヘムタンパク質の精製を迅速かつ簡便に行うことのできるビオチニル基含有ヘム化合物を提供することができる。また、本発明は、そのようなビオチニル基含有ヘム化合物を用いた、ヘムタンパク質の簡便な精製方法も提供できる。また、本発明によれば、ヘムタンパク質用標識試薬、及びその試薬を用いるヘムタンパク質関連疾患の診断薬をも提供することができる。さらに、本発明によれば、新規な光力学療法用治療薬をも提供することができる。
【0051】
【配列表】
Figure 2004323363
Figure 2004323363

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られたビオチニル基含有ヘム化合物の質量分析結果を示す。
【図2】図2は、実施例2において、人工ヘム蛋白質dA1を含む細胞抽出液にビオチンヘムを加えたときの紫外可視光吸収スペクトル変化を示す。
【図3】図3は、実施例2における、ビオチンヘムによって精製されたヘム蛋白質のSDS−PAGEを示す。
【図4】図4は、実施例3における、ビオチンヘムによって再構成されたミオグロビンのUV−Vis吸収スペクトルを示す。

Claims (14)

  1. 下記式(I):
    Por−A−Bi
    (式中、Porは、金属錯体を形成してもよいポルフィリン残基;Biは置換されていてもよいビオチニル基;そして、Aは1〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1〜10個のヘテロ原子を有し、かつ1〜30個の炭素原子を有するヘテロヒドロカルビル基を示す)
    で表されるビオチニル基含有ポルフィリン化合物。
  2. 前記Porが、ヘムa、ヘムb、ヘムc、バリアントヘムc、ヘムd、ヘムd1、シロヘム及びヘムoから選択される金属錯体を形成したポルフィリンの残基である前記請求項1に記載の化合物。
  3. 前記Porが、ヘムbの残基である前記請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記Porが、ウロポルフィリン(I型)、ウロポルフィリン(II型)、コプロポルフィリン(III型)、プロトポルフィリン(IX型)及びヘマトポルフィリン(IX型)から選択されるポルフィリンの残基である前記請求項1に記載の化合物。
  5. 前記Biが、ビオチニル基である前記請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
  6. 前記Aが、炭素原子1個から20個を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基であり、そのアルキレン基中の1又は2以上の隣接しないCH基が−NH−、−NH−NH−、−NHCO−、−CONH−、−N(C1−3アルキル)−、−O−、―S―、−CO−、−O−CO−、−S−CO−、−O−COO−、−CO−S−、−CO−O−、−CH(ハロゲン)−、−CH(CN)−、−CH=CH−、−NH−NH−CO−又は−CO−NH−NH−で置換されていてもよい基である、前記請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
  7. 前記Aが、
    −NH−NH−、
    −NH−NH−CO−(CH−NH−、
    −NH−NH−CO−(CH−NH−CO−(CH−NH−、
    −NH−(CH−NH−、
    −NH−NH−CO−(CH−NH−、
    −NH−NH−CO−(CH−CO−NH−NH−、
    −NH−(CH−CO−NH−NH−、及び
    −NH(CH−CO−NH−(CH−CO−NH−NH−
    (これらの式中、各nは独立して1〜10)から選択される、前記請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
  8. 請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、金属錯体を形成してもよいポルフィリンと末端アミノ化ビオチニル基含有化合物とカップリング剤の存在下反応させることを含む、ビオチニル基含有ポルフィリン化合物の製造方法。
  9. 請求項1に記載の化合物を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行う工程を含む、ヘムタンパク質の精製方法。
  10. 請求項1に記載の化合物、及びアビジン化合物を結合させてなる担体ビーズを含むヘムタンパク質の精製キット。
  11. 請求項1に記載の化合物であるヘムタンパク質用標識化合物。
  12. 請求項11に記載の標識化合物を用いてヘムタンパク質を検出する方法。
  13. 請求項11に記載の標識化合物を含有する、ヘムタンパク質関連疾患の診断薬。
  14. 請求項4に記載の化合物を含有する、光力学療法用治療薬。
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