JP2004323269A - 化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒータと融液面との適正な位置関係を具体的に明らかにすることによって、多結晶化を防止することが可能な化合物半導体単結晶の製造方法を提供すること。
【解決手段】抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さLに対する原料融液の自由表面(融液面)の位置Zの位置関係を、Z>L×(1/2)、好ましくは〔L×(3/4)>Z>L×(1/2)〕、最適にはほぼZ=L×(7/10)に設定してGaAs単結晶などの化合物半導体単結晶を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さLに対する原料融液の自由表面(融液面)の位置Zの位置関係を、Z>L×(1/2)、好ましくは〔L×(3/4)>Z>L×(1/2)〕、最適にはほぼZ=L×(7/10)に設定してGaAs単結晶などの化合物半導体単結晶を製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LEC法を用いてGaAs単結晶等の化合物半導体単結晶を製造する方法、特に原料の融液自由界面と抵抗加熱ヒータの発熱部との位置関係に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LEC法によるGaAs単結晶の製造方法を図1によって説明する。
【0003】
LEC法によるGaAs単結晶製造装置1は、炉体部分(耐圧容器)であるチャンバー2と、結晶を引き上げる為の引上軸3と、原料の容器であるPBNルツボ5と、このルツボを受ける為のルツボ軸4を有する構造となっている。
【0004】
結晶製造方法については、先ず原料の容器となるPBNルツボ5にGaとAs及びAsの揮発防止材である三酸化硼素6を入れ、これをチャンバー2内にセットする。又、引上軸3の先端に結晶の元となる種結晶7を取りつける。この種結晶7はGaAs融液と接する面を(100)面としているのが一般的である。
【0005】
チャンバー2に原料をセットした後、チャンバー2内を真空にし、不活性ガスを充填する。その後、チャンバー2内に設置してある抵抗加熱ヒータ8に通電し、チャンバー2内の温度を昇温させ、GaとAsを合成しGaAsを作製する。その後、更に昇温させGaAsを融液化させ、GaAs融液9を作成する。
【0006】
続いて、引上軸3、ルツボ軸4を回転方向が逆になるように回転させる。この状態で、引上軸3を先端に取り付けてある種結晶7がGaAs融液9に接触するまで下降させる。
【0007】
続いて、抵抗加熱ヒータ8の設定温度を徐々に下げつつ引上軸3を一定の速度で上昇させることで、種結晶7から徐々に結晶径を太らせながら結晶肩部を形成する。肩部形成後、目標とする結晶外径となったならば、外径を一定に保つ為、外形を制御しつつGaAs単結晶10の製造を行う。
【0008】
また、結晶成長中は、GaAs融液の自由界面(融液面)の位置Zを、抵抗加熱ヒータ8の発熱部11の上下方向の中央若しくは中央より下部の位置に配置し、この位置関係が常に一定の位置となるように制御するのが一般的である。具体的には、GaAs融液の自由界面位置Zを成長中常に一定位置にする為に、引上げた結晶10の重量を検知し、その重量から減少するGaAs融液水位を計算し、その分だけルツボ5を上昇させて常に一定位置となるように制御するのが、一般的に取られている手法である。
【0009】
上記GaAsの単結晶を成長する場合、結晶が有転位結晶であるため転位集合防止のために、その固液界面形状は融液側に凸となる形状で行うのが一般的である。
【0010】
従来、固液界面形状の凹面化を抑制して多結晶化を防止するための種々な方法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
この特許文献1の特開平8−91991号公報には、任意に定めた基準点とルツボ内のメルト位置との最適距離関係を単結晶引上げ長さに応じて予め設定し、単結晶引上げ中、単結晶引上げ長さが任意の長さになった時点で、融液面(メルト面)の位置を検出し、検出した融液面位置が基準点に対して最適距離関係を満足するように、上軸及び下軸の上昇速度を調整する技術が開示されている。ここで融液面とは、単結晶と原料融液との固液界面を言い、近似的には原料融液層と封止剤融液層との界面である。基準点は、融液面位置との距離関係を検出するために任意に定めた点であって、特に制約はなく、例えばヒータの特定の箇所を基準点として定めても良い。この技術は、ヒータの特定箇所等に定めた基準点と融液面との最適距離関係を満足させることによって、結晶肌荒れ現象の発生を抑制することができるというものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−91991号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術の場合、肌荒れ現象を低減するためには、融液面がヒータに対して適正な位置関係を維持する必要があり、適正な位置関係については、結晶の温度及び温度勾配の観点から、実験及びシミュレーション等により予め設定されるとされている。
【0014】
しかし、適正な位置関係については具体的に明らかにされていないし、肌荒れ現象を低減するための適正な位置関係についての共通の原則が示されていない。成長させる結晶直径が100mm以上の大口径結晶では、当然ながら固液界面の重要性は小口径結晶よりも増し、安定的に融液側に凸であることが必要となる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ヒータと融液面との適正な位置関係を具体的に明らかにすることによって、多結晶化を防止することが可能な化合物半導体単結晶の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0017】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、原料及び封止剤を入れたルツボの周囲を取り囲んで筒状の抵抗加熱ヒータを配置し、この抵抗加熱ヒータによりルツボを加熱して内部の原料及び封止剤を融解し、融解した原料融液に種結晶を接触させてこれを徐々に引き上げることにより単結晶を育成するLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、ルツボの外周部に配置された抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さをLとし、高さ方向の座標軸の原点を抵抗加熱ヒータの発熱部の下限に取った場合におけるルツボ内に配置した原料融液の自由表面(融液面)位置をZとしたとき、そのLに対するZの位置関係をZ>L×(1/2)に設定することを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、上記Lに対するZの位置関係をL×(3/4)>Z>L×(1/2)に設定することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、上記Lに対するZの位置関係をほぼZ=L×(7/10)に設定することを特徴とする。
【0020】
<発明の要点>
GaAs結晶成長における問題点の一つとして、転位の集合による結晶の多結晶化という問題がある。転位は結晶と融液の境界面である固液界面に垂直に伝播する性質があり、固液界面が融液側に凹面形状をしていると転位の集合が起こってしまう。よって、転位の集合を防止する為には、固液界面の形状を結晶成長中に常に融液側に凸となるように制御する必要がある。又、固液界面は、熱流に対して垂直に形成される。
【0021】
よって、固液界面と凸化させるのは結晶の冷却を促進させ、熱の流れを固液界面→結晶中央部→結晶上部→結晶外部という流れにすることで可能となる。
【0022】
従来では、結晶成長時、特に増径部形成段階等の初期成長段階において、結晶製造炉内の結晶成長方向の温度勾配が不十分である為に結晶の冷却不足により固液界面から結晶上部への熱の流れが取れず、結晶側面から放熱が進むという現象が発生し、固液界面が凹面化、強いては転位集合による結晶の多結晶が発生するという問題があった。
【0023】
そこで、本発明では上記課題を解決するために、LEC法により例えばGaAs単結晶を製造する方法において、結晶及び原料用ルツボの外周部に配置される抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さをLとして、図1に示す様に高さ方向の座標軸の原点Oをヒータ発熱部の下限に取った場合、原料用ルツボ内に配置したGaAs融液の自由表面(融液面)の位置をZとしたとき、そのLに対するZの位置関係がZ>L×(1/2)となるようにする、という手段を取った。
【0024】
又、効果が最大限発揮出来るようにする条件として、上記のLに対するZの位置関係がL×(3/4)>Z>L×(1/2)となるようにする、という手段を取った。
【0025】
上記のZ>L×(1/2)という位置関係を取った理由は下記の通りである。
【0026】
結晶炉内の結晶成長方向の温度分布と抵抗加熱ヒータとの位置関係を見た場合、抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向の中央が最も高温となり、この発熱部の中央から外れるに従い温度が急激に低くなる温度分布を有する。
【0027】
そこで結晶の冷却促進を図るべく、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを、Z>L×(1/2)、つまり、抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向中央から上部の位置へ配置することにより、結晶が結晶炉内の急峻な温度勾配を形成する位置で成長するようにした。これにより、結晶の冷却が促進され、固液界面形状の凸化推進が図れるようにした。
【0028】
また、本発明では、上記位置関係の最適条件として、L×(3/4)>Z>L×(1/2)とするが、この根拠ないし理由は次による。すなわち、一方において、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを抵抗加熱ヒータの発熱部の中央(L×(1/2))に近づけることで、ヒータの結晶への局所加熱的効果によりGaAs融液直上の結晶側面部を局所的に加熱する。これにより結晶側面からの放熱を抑止し、固液界面の凹面化を防止するという効果が期待できる。他方において、この効果は、GaAs融液自由界面位置と発熱部の位置関係が、Z>L×(3/4)、となると極端に減少する。そこで、当発明ではこの局所加熱効果と上記した急峻な温度勾配下での結晶冷却促進の両方の効果を総合的に判断して、上記範囲にZを設定した。また、単結晶化率でみたとき、上記Lに対するZの位置関係をほぼZ=L×(7/10)に設定したとき最大になることから、これを最適条件として設定した。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。
【0030】
本発明の効果を確認するため、以下のように実施例及び比較例について試作を行った。ここでは、試作例として、φ6サイズ(直径6インチ)のGaAs単結晶をLEC法により成長した。前提となる製造装置には上記した図1のものを用いた。試作の方法を図1を用いて説明する。
【0031】
図1のLEC法GaAs単結晶製造装置1を用いて、先ず原料の容器となるPBNルツボ5にGaを12000g、Asを13000g、及びAsの揮発防止材である三酸化硼素6を2000g入れ、これをチャンバー2内にセットした。又、引上軸3の先端に結晶の元となる種結晶7を取りつけた。なお、この種結晶7はGaAs融液と接する面を(100)面とした。
【0032】
チャンバー2に原料をセットした後、チャンバー2内を真空にし、不活性ガスを充填し、その後チャンバー2内に設置してある抵抗加熱ヒータ8に通電してチャンバー2内の温度を昇温させ、GaとAsを合成しGaAsを作製する。その後、更に昇温させGaAsを融液化させ、GaAs融液9とした。
【0033】
続いて、引上軸3を10rpm、ルツボ軸4を回転方向を逆として20rpmで回転させた。この状態で、引上軸3を先端に取り付けてある種結晶7がGaAs融液9に接触するまで下降させ、続いて、抵抗加熱ヒータ8の設定温度を徐々に下げつつ、引上軸3を10mm/hの速度で上昇させることで、GaAs単結晶10の成長試作を行なった。
【0034】
上記の試作成長に際し、下記表1の様に、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを各種設定し、その時の結晶の単結晶化率を調査した。正確には、図1に示す様に、抵抗加熱ヒータ8の発熱部11の長手方向長さをLとして、高さ方向の座標軸の原点Oをヒータ発熱部11の下限に取り、ルツボ5内に配置したGaAs融液の自由表面(融液面)の位置をZとした。ここで、結晶の「単結晶化率」とは、結晶のウェハ取得可能な理想有効長に対して、結晶外観で多結晶でない単結晶部分の有効長の割合を示す指標である。なお、当実験では各設定毎に10ロットの成長を試みた。以下、結果についても記載する。
【0035】
【表1】
【0036】
上記表1から判るように、GaAs融液の自由表面位置Zを抵抗加熱ヒータ8の発熱部11の上下方向長さLの中央位置に設定した場合、つまり0.5L(=L×(1/2))の試作例(従来例)でも、83.4%と比較的高い単結晶化率が得られている。
【0037】
これに対し、GaAs融液の自由表面位置Zをヒータ発熱部11の上下方向中央より下部に配置した場合、つまりZ=0.3L、Z=0.4Lの試作例(比較例1、2)では従来例より低い単結晶化率しか得られなかった。
【0038】
ところが、上記表1の結果からも明らかな様に、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを従来例の0.5L(=L×(1/2))より大きくとった点から、結晶の単結晶化率が大幅に向上し、0.70L(=L×(7/10))で単結晶化率が最大値を示した。正確には、Z=0.6L(実施例1)で単結晶化率87.5%、Z=0.7L(実施例2)で単結晶化率90.8%、Z=0.75L(実施例3)で単結晶化率86.3%と高い数値が得られた。この結果から、本発明の効果が現れているといえる。
【0039】
ただし、この試作実験において、GaAs融液の自由表面(融液面)位置Zの設定値が0.75L(=L×(3/4))を超えた当りから単結晶化率が頭打ちとなり、低下の傾向が見られる(比較例3、4)。よって、Lに対するZの好ましい位置関係は〔L×(3/4)>Z>L×(1/2)〕であり、また最適な位置はほぼZ=L×(7/10)であり、これらは既に上記発明の要点において説明したところの条件の範囲と一致する結果となった。
【0040】
上記実施例では、GaAs単結晶をLEC法により製造する方法を例にして説明したが、GaAs以外の他の化合物半導体単結晶をLEC法により製造する方法についても適用することが可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さLに対する原料融液の自由表面(融液面)の位置Zの位置関係を、Z>L×(1/2)、好ましくは〔L×(3/4)>Z>L×(1/2)〕、最適にはほぼZ=L×(7/10)に設定してGaAs単結晶などの化合物半導体単結晶を製造するので、その固液界面形状を効果的に凸化することができ、結晶に発生する転位の集合が低減され、単結晶の収率向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物半導体単結晶の製造方法を実施するための化合物半導体単結晶製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 GaAs単結晶製造装置
2 チャンバー
3 引上軸
4 ルツボ軸
5 PBNルツボ
6 三酸化硼素
7 種結晶
8 抵抗加熱ヒータ
9 GaAs融液
10 GaAs単結晶
11 発熱部
L 抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さ
Z GaAs融液の自由表面(融液面)の位置
【発明の属する技術分野】
本発明は、LEC法を用いてGaAs単結晶等の化合物半導体単結晶を製造する方法、特に原料の融液自由界面と抵抗加熱ヒータの発熱部との位置関係に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LEC法によるGaAs単結晶の製造方法を図1によって説明する。
【0003】
LEC法によるGaAs単結晶製造装置1は、炉体部分(耐圧容器)であるチャンバー2と、結晶を引き上げる為の引上軸3と、原料の容器であるPBNルツボ5と、このルツボを受ける為のルツボ軸4を有する構造となっている。
【0004】
結晶製造方法については、先ず原料の容器となるPBNルツボ5にGaとAs及びAsの揮発防止材である三酸化硼素6を入れ、これをチャンバー2内にセットする。又、引上軸3の先端に結晶の元となる種結晶7を取りつける。この種結晶7はGaAs融液と接する面を(100)面としているのが一般的である。
【0005】
チャンバー2に原料をセットした後、チャンバー2内を真空にし、不活性ガスを充填する。その後、チャンバー2内に設置してある抵抗加熱ヒータ8に通電し、チャンバー2内の温度を昇温させ、GaとAsを合成しGaAsを作製する。その後、更に昇温させGaAsを融液化させ、GaAs融液9を作成する。
【0006】
続いて、引上軸3、ルツボ軸4を回転方向が逆になるように回転させる。この状態で、引上軸3を先端に取り付けてある種結晶7がGaAs融液9に接触するまで下降させる。
【0007】
続いて、抵抗加熱ヒータ8の設定温度を徐々に下げつつ引上軸3を一定の速度で上昇させることで、種結晶7から徐々に結晶径を太らせながら結晶肩部を形成する。肩部形成後、目標とする結晶外径となったならば、外径を一定に保つ為、外形を制御しつつGaAs単結晶10の製造を行う。
【0008】
また、結晶成長中は、GaAs融液の自由界面(融液面)の位置Zを、抵抗加熱ヒータ8の発熱部11の上下方向の中央若しくは中央より下部の位置に配置し、この位置関係が常に一定の位置となるように制御するのが一般的である。具体的には、GaAs融液の自由界面位置Zを成長中常に一定位置にする為に、引上げた結晶10の重量を検知し、その重量から減少するGaAs融液水位を計算し、その分だけルツボ5を上昇させて常に一定位置となるように制御するのが、一般的に取られている手法である。
【0009】
上記GaAsの単結晶を成長する場合、結晶が有転位結晶であるため転位集合防止のために、その固液界面形状は融液側に凸となる形状で行うのが一般的である。
【0010】
従来、固液界面形状の凹面化を抑制して多結晶化を防止するための種々な方法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
この特許文献1の特開平8−91991号公報には、任意に定めた基準点とルツボ内のメルト位置との最適距離関係を単結晶引上げ長さに応じて予め設定し、単結晶引上げ中、単結晶引上げ長さが任意の長さになった時点で、融液面(メルト面)の位置を検出し、検出した融液面位置が基準点に対して最適距離関係を満足するように、上軸及び下軸の上昇速度を調整する技術が開示されている。ここで融液面とは、単結晶と原料融液との固液界面を言い、近似的には原料融液層と封止剤融液層との界面である。基準点は、融液面位置との距離関係を検出するために任意に定めた点であって、特に制約はなく、例えばヒータの特定の箇所を基準点として定めても良い。この技術は、ヒータの特定箇所等に定めた基準点と融液面との最適距離関係を満足させることによって、結晶肌荒れ現象の発生を抑制することができるというものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−91991号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術の場合、肌荒れ現象を低減するためには、融液面がヒータに対して適正な位置関係を維持する必要があり、適正な位置関係については、結晶の温度及び温度勾配の観点から、実験及びシミュレーション等により予め設定されるとされている。
【0014】
しかし、適正な位置関係については具体的に明らかにされていないし、肌荒れ現象を低減するための適正な位置関係についての共通の原則が示されていない。成長させる結晶直径が100mm以上の大口径結晶では、当然ながら固液界面の重要性は小口径結晶よりも増し、安定的に融液側に凸であることが必要となる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ヒータと融液面との適正な位置関係を具体的に明らかにすることによって、多結晶化を防止することが可能な化合物半導体単結晶の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0017】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、原料及び封止剤を入れたルツボの周囲を取り囲んで筒状の抵抗加熱ヒータを配置し、この抵抗加熱ヒータによりルツボを加熱して内部の原料及び封止剤を融解し、融解した原料融液に種結晶を接触させてこれを徐々に引き上げることにより単結晶を育成するLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、ルツボの外周部に配置された抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さをLとし、高さ方向の座標軸の原点を抵抗加熱ヒータの発熱部の下限に取った場合におけるルツボ内に配置した原料融液の自由表面(融液面)位置をZとしたとき、そのLに対するZの位置関係をZ>L×(1/2)に設定することを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、上記Lに対するZの位置関係をL×(3/4)>Z>L×(1/2)に設定することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、上記Lに対するZの位置関係をほぼZ=L×(7/10)に設定することを特徴とする。
【0020】
<発明の要点>
GaAs結晶成長における問題点の一つとして、転位の集合による結晶の多結晶化という問題がある。転位は結晶と融液の境界面である固液界面に垂直に伝播する性質があり、固液界面が融液側に凹面形状をしていると転位の集合が起こってしまう。よって、転位の集合を防止する為には、固液界面の形状を結晶成長中に常に融液側に凸となるように制御する必要がある。又、固液界面は、熱流に対して垂直に形成される。
【0021】
よって、固液界面と凸化させるのは結晶の冷却を促進させ、熱の流れを固液界面→結晶中央部→結晶上部→結晶外部という流れにすることで可能となる。
【0022】
従来では、結晶成長時、特に増径部形成段階等の初期成長段階において、結晶製造炉内の結晶成長方向の温度勾配が不十分である為に結晶の冷却不足により固液界面から結晶上部への熱の流れが取れず、結晶側面から放熱が進むという現象が発生し、固液界面が凹面化、強いては転位集合による結晶の多結晶が発生するという問題があった。
【0023】
そこで、本発明では上記課題を解決するために、LEC法により例えばGaAs単結晶を製造する方法において、結晶及び原料用ルツボの外周部に配置される抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さをLとして、図1に示す様に高さ方向の座標軸の原点Oをヒータ発熱部の下限に取った場合、原料用ルツボ内に配置したGaAs融液の自由表面(融液面)の位置をZとしたとき、そのLに対するZの位置関係がZ>L×(1/2)となるようにする、という手段を取った。
【0024】
又、効果が最大限発揮出来るようにする条件として、上記のLに対するZの位置関係がL×(3/4)>Z>L×(1/2)となるようにする、という手段を取った。
【0025】
上記のZ>L×(1/2)という位置関係を取った理由は下記の通りである。
【0026】
結晶炉内の結晶成長方向の温度分布と抵抗加熱ヒータとの位置関係を見た場合、抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向の中央が最も高温となり、この発熱部の中央から外れるに従い温度が急激に低くなる温度分布を有する。
【0027】
そこで結晶の冷却促進を図るべく、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを、Z>L×(1/2)、つまり、抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向中央から上部の位置へ配置することにより、結晶が結晶炉内の急峻な温度勾配を形成する位置で成長するようにした。これにより、結晶の冷却が促進され、固液界面形状の凸化推進が図れるようにした。
【0028】
また、本発明では、上記位置関係の最適条件として、L×(3/4)>Z>L×(1/2)とするが、この根拠ないし理由は次による。すなわち、一方において、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを抵抗加熱ヒータの発熱部の中央(L×(1/2))に近づけることで、ヒータの結晶への局所加熱的効果によりGaAs融液直上の結晶側面部を局所的に加熱する。これにより結晶側面からの放熱を抑止し、固液界面の凹面化を防止するという効果が期待できる。他方において、この効果は、GaAs融液自由界面位置と発熱部の位置関係が、Z>L×(3/4)、となると極端に減少する。そこで、当発明ではこの局所加熱効果と上記した急峻な温度勾配下での結晶冷却促進の両方の効果を総合的に判断して、上記範囲にZを設定した。また、単結晶化率でみたとき、上記Lに対するZの位置関係をほぼZ=L×(7/10)に設定したとき最大になることから、これを最適条件として設定した。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。
【0030】
本発明の効果を確認するため、以下のように実施例及び比較例について試作を行った。ここでは、試作例として、φ6サイズ(直径6インチ)のGaAs単結晶をLEC法により成長した。前提となる製造装置には上記した図1のものを用いた。試作の方法を図1を用いて説明する。
【0031】
図1のLEC法GaAs単結晶製造装置1を用いて、先ず原料の容器となるPBNルツボ5にGaを12000g、Asを13000g、及びAsの揮発防止材である三酸化硼素6を2000g入れ、これをチャンバー2内にセットした。又、引上軸3の先端に結晶の元となる種結晶7を取りつけた。なお、この種結晶7はGaAs融液と接する面を(100)面とした。
【0032】
チャンバー2に原料をセットした後、チャンバー2内を真空にし、不活性ガスを充填し、その後チャンバー2内に設置してある抵抗加熱ヒータ8に通電してチャンバー2内の温度を昇温させ、GaとAsを合成しGaAsを作製する。その後、更に昇温させGaAsを融液化させ、GaAs融液9とした。
【0033】
続いて、引上軸3を10rpm、ルツボ軸4を回転方向を逆として20rpmで回転させた。この状態で、引上軸3を先端に取り付けてある種結晶7がGaAs融液9に接触するまで下降させ、続いて、抵抗加熱ヒータ8の設定温度を徐々に下げつつ、引上軸3を10mm/hの速度で上昇させることで、GaAs単結晶10の成長試作を行なった。
【0034】
上記の試作成長に際し、下記表1の様に、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを各種設定し、その時の結晶の単結晶化率を調査した。正確には、図1に示す様に、抵抗加熱ヒータ8の発熱部11の長手方向長さをLとして、高さ方向の座標軸の原点Oをヒータ発熱部11の下限に取り、ルツボ5内に配置したGaAs融液の自由表面(融液面)の位置をZとした。ここで、結晶の「単結晶化率」とは、結晶のウェハ取得可能な理想有効長に対して、結晶外観で多結晶でない単結晶部分の有効長の割合を示す指標である。なお、当実験では各設定毎に10ロットの成長を試みた。以下、結果についても記載する。
【0035】
【表1】
【0036】
上記表1から判るように、GaAs融液の自由表面位置Zを抵抗加熱ヒータ8の発熱部11の上下方向長さLの中央位置に設定した場合、つまり0.5L(=L×(1/2))の試作例(従来例)でも、83.4%と比較的高い単結晶化率が得られている。
【0037】
これに対し、GaAs融液の自由表面位置Zをヒータ発熱部11の上下方向中央より下部に配置した場合、つまりZ=0.3L、Z=0.4Lの試作例(比較例1、2)では従来例より低い単結晶化率しか得られなかった。
【0038】
ところが、上記表1の結果からも明らかな様に、GaAs融液の自由表面(融液面)の位置Zを従来例の0.5L(=L×(1/2))より大きくとった点から、結晶の単結晶化率が大幅に向上し、0.70L(=L×(7/10))で単結晶化率が最大値を示した。正確には、Z=0.6L(実施例1)で単結晶化率87.5%、Z=0.7L(実施例2)で単結晶化率90.8%、Z=0.75L(実施例3)で単結晶化率86.3%と高い数値が得られた。この結果から、本発明の効果が現れているといえる。
【0039】
ただし、この試作実験において、GaAs融液の自由表面(融液面)位置Zの設定値が0.75L(=L×(3/4))を超えた当りから単結晶化率が頭打ちとなり、低下の傾向が見られる(比較例3、4)。よって、Lに対するZの好ましい位置関係は〔L×(3/4)>Z>L×(1/2)〕であり、また最適な位置はほぼZ=L×(7/10)であり、これらは既に上記発明の要点において説明したところの条件の範囲と一致する結果となった。
【0040】
上記実施例では、GaAs単結晶をLEC法により製造する方法を例にして説明したが、GaAs以外の他の化合物半導体単結晶をLEC法により製造する方法についても適用することが可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さLに対する原料融液の自由表面(融液面)の位置Zの位置関係を、Z>L×(1/2)、好ましくは〔L×(3/4)>Z>L×(1/2)〕、最適にはほぼZ=L×(7/10)に設定してGaAs単結晶などの化合物半導体単結晶を製造するので、その固液界面形状を効果的に凸化することができ、結晶に発生する転位の集合が低減され、単結晶の収率向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物半導体単結晶の製造方法を実施するための化合物半導体単結晶製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 GaAs単結晶製造装置
2 チャンバー
3 引上軸
4 ルツボ軸
5 PBNルツボ
6 三酸化硼素
7 種結晶
8 抵抗加熱ヒータ
9 GaAs融液
10 GaAs単結晶
11 発熱部
L 抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さ
Z GaAs融液の自由表面(融液面)の位置
Claims (3)
- 原料及び封止剤を入れたルツボの周囲を取り囲んで筒状の抵抗加熱ヒータを配置し、この抵抗加熱ヒータによりルツボを加熱して内部の原料及び封止剤を融解し、融解した原料融液に種結晶を接触させてこれを徐々に引き上げることにより単結晶を育成するLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、
ルツボの外周部に配置された抵抗加熱ヒータの発熱部の上下方向長さをLとし、高さ方向の座標軸の原点を抵抗加熱ヒータの発熱部の下限に取った場合におけるルツボ内に配置した原料融液の自由表面位置をZとしたとき、そのLに対するZの位置関係を
Z>L×(1/2)
に設定することを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。 - 上記Lに対するZの位置関係を
L×(3/4)>Z>L×(1/2)
に設定することを特徴とする請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法。 - 上記Lに対するZの位置関係をほぼ
Z=L×(7/10)
に設定することを特徴とする請求項2記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
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