JP2004323249A - 高気孔率セラミックフォーム成形体及びその製造方法 - Google Patents

高気孔率セラミックフォーム成形体及びその製造方法 Download PDF

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和司 岸
Eiji Tani
英治 谷
Eiji Maeda
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Abstract

【課題】表面からの粉落ちがなく、大型あるいは異形、複雑形状にすることが容易な高気孔率の耐熱セラミックフォーム成形体とその製造方法を提供する。
【解決手段】無機粉末と水酸化アルミニウムゾル水溶液を混合したスラリーを撹拌して発泡させ、その発泡スラリーを、成形、乾燥後仮焼して得たフォーム成形体の表面に、同一組成のスラリーを塗布あるいは含浸し、それを焼成して、表面に密度の高い強化層を有する高気孔率セラミックフォーム成形体を得る。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い耐熱性を備えた高気孔率セラミックフォーム成形体及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、セラミックフォーム成形体の表面を強化し、高温用構造材、断熱材等としての利用に適するようにした高気孔率セラミックフォーム成形体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在までに、セラミックフォーム成形体の製造方法としては、主に次に挙げる方法が開発されている。
すなわち、特許文献1に示されているように、連続気孔を有する発泡ウレタンフォーム等に、セラミック原料粉末、有機結合剤等を混合したスラリーを含浸、付着させて乾燥した後、加熱して有機物成分を焼却除去しつつ焼結させて製造する方法、特許文献2及び3に示されているように、セラミック原料粉末、有機結合剤等を含むスラリーにウレタン発泡材料を混合して発泡、固化させた後、加熱して有機物成分を焼却除去しつつ焼結させて製造する方法、特許文献4に示されているように、セラミック原料粉末を含む分散媒中で疎水性樹脂結合剤を界面活性剤の添加により乳化してエマルジョンと成し、これを発泡、固化させた後、加熱して有機物成分を焼却除去しつつ焼結させて製造する方法、特許文献5に示されているように、焼成過程で焼滅して空隙となるプラスチックビーズ等の充填物をスラリー中に含有させ乾燥後焼成してフォーム状の構造体を製造する方法がある。
【0003】
本発明者らも、特許文献6,8において、希薄な水酸化アルミニウムゾル水溶液を結合剤として用い、これに量をコントロールして無機粉末を加えた後、発泡させて乾燥、焼成する軽量セラミッフォームの製造方法を提案し、また、特許文献7においてこれにセラミック短繊維を分散した超軽量セラミックフォームの製造方法を提案した。
【0004】
しかし、特許文献1〜4の方法では、いずれにしても多量の有機物を結合材あるいは充填材として加えており、セラミックス粉末を焼結する以前のこれら有機物を焼却除去する過程で、発生するガスや、有機物とセラミック部分の熱膨張差により亀裂や割れを生じ易いという欠点を免れない。特に、大型の高気孔率セラミックフォームを製造する場合、結合の弱いセラミックス粉末からなる骨格が焼結まで全自重を支えることになるため、この欠点の影響はさらに深刻となり、焼結前に成形体自体が崩壊することさえ起こる。これを防ぐためには、結合剤の量を増やさずに骨格の強度を上げる必要があり、そのためには骨格を太くすることが必要で、結果的に得られるフォームの密度が増加し、すなわち気孔率は減少する。
【0005】
一方、本発明者らが特許文献6〜8において示した方法では、希薄なスラリーを発泡して成形するため、気孔率が95%以上と高いが、大型形状や複雑形状に形成するには骨格の強度が十分とは言えず、また、表面を強く擦ると細かい破片が取れたり、角の部分が破損しやすくなる可能性があった。
【0006】
更に、断熱材としてセラミックフォームを用いる場合、その気孔率が高いほど断熱性が高くなることから、高気孔率のセラミックフォームを得る努力がなされてきたが、上記のように、気孔率が高くなるほどフォームの骨格強度が弱くなり、いずれも表面を擦ると細かい破片がとれる、いわゆる粉落ちが起こり、また、角の部分が容易に破損する等の欠点を免れなかった。高性能が要求される分野、例えば半導体産業などの分野では、この粉落ちが致命的な欠点となることから、使用される断熱材は気孔率80%程度のものであり、より高気孔率で断熱性に優れたセラミックフォームが求められている。
【0007】
【特許文献1】
特公昭56−36143号公報
【特許文献2】
特開昭60−195073号公報
【特許文献3】
特開平5−270939号公報
【特許文献4】
特開平11−310482号公報
【特許文献5】
特開平11−236279号公報
【特許文献6】
特開2002−114584号公報
【特許文献7】
特願2002−303707
【特許文献8】
特願2002−088250
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記のような従来のセラミックフォームの欠点を克服し、気孔率90%以上、望ましくは95%以上で、粉落ちを起こさない高気孔率セラミックフォーム成形体及びその製造方法を得ることにある。
本発明の他の課題は、断熱材その他に利用する大型形状あるいは各種の複雑形状を持った高気孔率セラミックフォーム成形体の製造に適用するのに有効な高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、骨格強度の弱い高気孔率のセラミックフォームであっても、その表面のみを強化することによって表面や角の部分の破損を防ぐことができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づくものであって、本発明に係る高気孔率セラミックフォーム成形体は、セラミック粉末とバインダーを混合した水性スラリーを起泡剤で発泡させた発泡スラリーを乾燥、仮焼してなるフォーム成形体の表面に、同一組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸して乾燥、焼成してなり、それによって、上記フォーム成形体の表面に緻密で高強度の薄い骨格を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法は、基本的には、セラミック粉末とバインダーを混合した水性スラリーに起泡剤を添加して撹拌することにより発泡させた発泡スラリーを、型に充填し、乾燥後仮焼してフォーム成形体とし、そのフォーム成形体の表面に、上記と同一またはそれに近い組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸した後、乾燥、焼成することを特徴とするものである。
【0011】
上記方法においては、セラミック粉末とバインダーとを混合した水性スラリーに起泡剤を添加して撹拌することにより発泡させた発泡スラリーを、型に充填し、乾燥後仮焼して得たフォーム成形体の複数個を、上記発泡スラリーを用いて接合して一体化し、それを再度仮焼して接合フォーム成形体とし、あるいは、上記フォーム成形体を別の型に上記発泡スラリーと共に充填して乾燥し、一体化したものを再度仮焼して接合フォーム成形体とし、それらの表面に、上記と同一またはそれに近い組成のセラミック粉末を含有するスラリーを塗布あるいは含浸した後、乾燥、焼成することにより、高気孔率セラミックフォーム成形体を大型形状あるいは複雑形状に形成することができる。
【0012】
上記方法における仮焼は、一般的には、600〜1200℃の温度で行い、焼成は1200〜2000℃の温度で行うのが適切である。
また、上記方法においては、無機粉末とバインダーとを混合してスラリーを作製する際に、焼結助剤及び/または粒成長抑制剤となる物質、あるいは焼成によって焼結助剤及び/または粒成長抑制剤となる物質の可溶性の塩類等を混合することもできる。
【0013】
このようにしてセラミックフォーム成形体を作製することにより、表面の極近傍は緻密で高強度の薄い骨格からなり、全体の大半を占める内部は気孔率95%以上の高気孔率を保ったセラミックフォーム成形体を得ることができる。このセラミックフォーム成形体は、表面近傍の密度の増加により全体の見かけ上の気孔率はやや減少するが、これは見かけ上だけで、フォーム内部は95%以上の高い気孔率を保っているため、断熱性の低下はほとんど無いものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る高気孔率セラミックフォーム成形体は、基本的には、無機粉末であるセラミック原料粉末と、バインダーとして機能する水酸化アルミニウムゾル水溶液とを混合した水性スラリーを、起泡剤を添加して機械的に撹拌することにより発泡させ、その発泡スラリーを型に充填して乾燥、仮焼して得たフォーム成形体の表面に、同一またはそれに近い組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸して乾燥、焼成し、それによって、上記フォーム成形体の表面に緻密で高強度の薄い骨格を形成したものである。
【0015】
上記高気孔率セラミックフォーム成形体の製造に際しては、先ず、セラミック粉末とバインダーを混合した水性スラリーに起泡剤を添加して機械的に撹拌することにより発泡させて発泡スラリーとし、それを型に充填し、乾燥して発泡スラリー乾燥体とし、ついで、それを仮焼してフォーム成形体を得る。そして、そのフォーム成形体の表面に、上記と同一またはそれに近い組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸した後、乾燥、焼成する。
ここで用いるセラミック粉末としては、特に制限はなく、一般的にセラミックフォームの製造に用いられているセラミックス粉末の中から選んで、あるいはそれらを任意に組み合わせて用いることができる。このようなセラミック粉末としては、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、ムライト等がある。
【0016】
上記発泡スラリーを作製するに際しては、乾燥、仮焼及び最終の焼成後に95%以上の高い気孔率を維持するために、特許文献6に述べたごとく水性スラリーの濃度に注意を払わなければならない。すなわち、あまり希薄なスラリーを用いると発泡スラリー乾燥体やフォーム成形体の強度が弱すぎて後の工程を行うことが困難になり、あまり濃厚なスラリーを用いると高気孔率のフォーム成形体が得られない。
【0017】
上記発泡スラリー乾燥体は、寸法収縮がほとんど起こらない温度、すなわち600〜1200℃で仮焼してフォーム成形体を作製する。この発泡スラリー乾燥体では仮焼中に結合剤の水酸化アルミニウムが脱水され、次第に高温型のアルミナに変化し焼結してゆくが、その量が少量であることと、乾燥体の骨格の大部分を占めるセラミックス粉末は上記仮焼温度領域では焼結に至らず、むしろ収縮を防ぐ骨材として働くため、収縮がほとんど起こらないのである。しかし、水酸化アルミニウムから生じたアルミナは焼結によって強度を増すため、フォーム成形体はその骨格強度を増し、その取り扱いは著しく容易になる。
【0018】
次に、発泡スラリー乾燥体の表面に、同一またはそれと近い組成を持つセラミック粉末を含有するよう調整したスラリーを塗布あるいは含浸する。この発泡スラリー乾燥体は、骨格そのものが多孔質な構造になっており、吸水性に富むことから、その表面に仮焼焼結体を形成するセラミックと同一またはそれに近い組成のセラミック粉末を含むスラリーを塗布または含浸すると、スラリー中の分散媒は速やかにフォーム成形体の多孔質骨格に吸収され、スラリー中のセラミック粉末は、あたかも石膏等の多孔質型を用いてスラリーを成形する場合のように、緻密な層として発泡スラリー乾燥体の表面近傍の多孔質骨格に定着される。この際、過度に多量のスラリーを塗布あるいは含浸しない限り、スラリー中のセラミック粉末は発泡スラリー乾燥体表面近傍のみに定着され、内部にまで浸透して成形体全体の気孔率を下げることは無い。
【0019】
スラリーを塗布あるいは含浸した発泡スラリー乾燥体は、乾燥後に、1200〜2000℃で焼成することによって、表面近傍のみが緻密で高強度の骨格からなる多孔質セラミックフォーム成形体となる。フォーム成形体表面に定着されたセラミックは、フォーム成形体を構成するセラミックと同一組成またはそれに近い組成を持つセラミック粉末を含有するよう調整したものであるため、焼成時の収縮はいずれも等しく、焼成によって亀裂の生成や剥離は起こらない。
【0020】
また、特許文献8においても示したように、上記によって得られた複数の発泡スラリー乾燥体あるいはフォーム成形体を部品として、それらを製造するときに用いたものと同じ発泡スラリーを用いてそれらを接合し、あるいは、新たな型を用いて、それに上記発泡スラリー乾燥体あるいはフォーム成形体を発泡スラリーとともに再度充填し、乾燥することによって、大型あるいは異形、複雑形状の発泡スラリー乾燥体を得ることができる。これを600〜1200℃で仮焼することによって、大型あるいは異形、複雑形状の接合フォーム成形体を得ることができ、それに上述の方法を適用することによって、表面近傍のみが緻密で高強度の骨格からなる大型あるいは異形、複雑形状のセラミックフォーム成形体を得ることができる。
【0021】
発泡スラリー乾燥体に塗布あるいは含浸するスラリーは、焼成に際して亀裂の生成や剥離を防ぐために、焼成の際の収縮率を発泡スラリー乾燥体のそれと等しくした、発泡スラリー乾燥体の骨格部分に近い組成でなければならない。スラリーは、あまり希薄であると、塗布あるいは含浸によってフォーム成形体の表面近傍の骨格を強化するに充分な量のセラミック粉末からなる層を定着さることができず、そのことから、少なくともフォーム成形体を作製する際に用いたスラリーと同等以上の固体濃度を持ったものが好ましい。しかし、固体濃度が高すぎると、焼成後緻密になる部分が厚くなりすぎて耐熱衝撃性の低下を招き、断熱材としては好ましくない。そのため、固体体積濃度として60%以下が好ましい。
また、気孔率がやや低下することを厭わなければ、スラリーを発泡スラリー乾燥体の骨格全体に浸透するように含浸し、フォーム全体の骨格を緻密化してその強度を上げることも可能である。
【0022】
焼成後に大気圧に耐え得る骨格強度が得られるセラミックフォーム成形体を得るためには、発泡スラリー乾燥体の表面に、開気孔を含まずに緻密化することができるスラリーを塗布あるいは含浸し、真空中で焼成すればよく、それにより、理論的には内部が真空となったセラミック断熱材を得ることが可能であり、現状では実現不可能な断熱効果を得ることも可能性がある。
【0023】
上述したバインダーとしては、水酸化アルミニウムゾル水溶液ばかりでなく、それと同じ作用を持ち、仮焼、焼成に際してセラミックスの原料となるシリカゾル、水酸化チタニウムゾル等の水溶液を用いても、上記方法の適用によって同様に軽量セラミックフォーム成形体を製造することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明によれば、従来のセラミックフォームの欠点を克服し、気孔率90%以上、望ましくは95%以上で、粉落ちを起こさない高気孔率セラミックフォーム成形体及びその製造方法を得ることができ、断熱材その他に利用する大型形状あるいは各種の複雑形状を持った高気孔率セラミックフォーム成形体を簡単に製造することができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0026】
[実施例1]
アルミニウムイソプロポキシド8.0gを80℃の蒸留水100mlに加え、撹拌して加水分解した。加水分解後冷却した白濁溶液に撹拌しながら希塩酸を加えてpH2に調整した後、4時間撹拌を続けて解膠し、透明の水酸化アルミニウムゾル水溶液を作製した。この溶液に平均粒径0.2μmのアルミナ粉末98g及び焼成時にアルミナの粒成長抑制剤となる硝酸マグネシウム0.5gを加え、窒化ケイ素ボールとともに20時間混合してスラリーを得た。
このスラリーに20重量%のサポニン溶液10mlを加え、家庭用の泡立機で体積が10倍以上になるまで泡立てた。この発泡スラリーを、予めパラジクロルベンゼンを塗布した80mm×80mm×20mmの厚紙製の型に充填し、乾燥後型を取り除き、それを1100℃で1時間空気中で仮焼して、仮焼焼結体フォーム成形体を得た。
【0027】
得られたフォーム成形体は、糸鋸やサンドペーパーを用いて加工できる強度を持っていた。別途、同じアルミナ80g、酸化マグネシウム粉末0.08gに蒸留水30mlを加え、少量のアクリル酸アンモニウムを解膠剤として加えて窒化ケイ素ボールとともに20時間混合し、スラリーを作製した。このスラリーをフォーム成形体の表面に塗布し、乾燥した後、1500℃で1時間空気中で焼成して、外周が緻密な骨格の層で覆われたアルミナフォーム成形体を得た。
【0028】
得られたアルミナフォーム成形体は、67mm×67mm×17mm、かさ密度は0.33g/cmであった。この成形体の表面は釉薬を施した磁器のような光沢があり、表面を指ではじくと緻密なセラミックスと同様の硬質な音がした。
成形体を切断して観察すると、表面から0.5〜1mmに塗布スラリーが染み込んだ骨格の層があり、内部は下記比較例1のフォーム成形体の内部とまったく同じであった。また、塗布スラリーが染み込んだ層と内部のフォーム成形体との境界部分には剥離や亀裂はまったく見られなかった。この成形体の密度は比較例1に比べて高いものの、内部は比較例1と同じ密度、気孔率をもつフォームからなるといえる。
【0029】
[比較例1]
比較のため、上記実施例1の発泡スラリーを、予めパラジクロルベンゼンを塗布した同じ寸法の厚紙製の型に充填し、乾燥後焼成した。得られたアルミナフォーム成形体の嵩密度は0.16g/cm、気孔率は96%であった。
【0030】
[実施例2]
実施例1と同じ方法で80mm×80mm×20mmの発泡スラリー乾燥体を4個作製し、1100℃で1時間空気中で仮焼してフォーム成形体を得た。これらに発泡スラリーを塗ってパラジクロルベンゼンを塗布した厚紙上で接合し、表面にも薄く発泡スラリーを塗って、プラスティック板で平滑に均して乾燥した後、再度1100℃で1時間空気中で仮焼した。
仮焼後の成形体に実施例1と同じスラリーを塗布し、乾燥後、1500℃で1時間空気中で焼成し、135mm×135mm×17mmのアルミナフォーム成形体を得た。
【0031】
[実施例3]
実施例1と同様にして水酸化アルミニウムゾル水溶液を作製した。この溶液にアルミナ粉末65g及びシリカ粉末26.4gを加え、窒化ケイ素ボールとともに20時間混合してスラリーを得た。このスラリーに20重量%のサポニン溶液10mlを加え、家庭用の泡立機で体積が10倍以上になるまで泡立てた。この発泡スラリーを、予めパラジクロルベンゼンを塗布した内法80mmφ、高さ40mmの円筒形の厚紙に充填し乾燥した後、型を取り除き、1100℃で1時間空気中で仮焼して、直径80mm、高さ40mmの円筒形のフォーム成形体を得た。
【0032】
別途、同じアルミナ52g、シリカ粉末21.2gに蒸留水30mlを加え、少量のアクリル酸アンモニウムを解膠剤として加えて、窒化ケイ素ボールとともに20時間混合してスラリーを作製した。このスラリーをフォーム成形体の表面に塗布し、乾燥した後、1550℃で1時間空気中で焼成して、外周が緻密な層で覆われたムライトフォーム成形体を得た。得られた成形体は74mmφ×38mm、かさ密度は0.24g/cmであった。
【0033】
得られたフォーム成形体の表面は、アルミナの場合ほどの光沢はなかったが、表面を指ではじくと、同様に硬質な音がした。成形体を切断して観察すると、表面から0.5〜1mmに塗布スラリーが染み込んだ層が、内部は下記比較例2のフォーム成形体の内部とまったく同じであった。また、塗布スラリーが染み込んだ層と内部のフォームの境界部分には剥離や亀裂はまったく見られなかった。この成形体の密度は比較例2に比べて高いものの、内部は比較例2と同じ密度、気孔率をもつフォームからなるといえる。
【0034】
[比較例2]
比較のため、上記の発泡スラリーを、予めパラジクロルベンゼンを塗布した同じ寸法の厚紙製の型に充填し、乾燥後焼成して得たムライトフォーム成形体の嵩密度は0.11g/cm、気孔率は96.5%であった。
【0035】
[実施例4]
実施例3と同じ方法で120mm×120mm×20mmのフォーム成形体を作製した。このフォーム成形体の上に予めパラジクロルベンゼンを塗布した100mmφ×20mmの円筒型の厚紙を乗せ、同じ組成、同じ手順で作製した発泡スラリーを充填し、上面を均して乾燥させた後、再度1100℃で1時間空気中で仮焼した。仮焼後のフォーム成形体に、実施例3と同じスラリーを塗布し、乾燥後、1550℃で1時間空気中で焼成し、下部が110mm×110mm×17mm、上部が92mmφ×17mmのムライトフォーム成形体を得た。得られたフォームを切断して観察したところ、角形部材と円形部材はよく密着しており、亀裂や剥離はまったく見られなかった。

Claims (7)

  1. セラミック粉末とバインダーを混合した水性スラリーを起泡剤で発泡させた発泡スラリーを乾燥、仮焼してなるフォーム成形体の表面に、上記と同一またはそれに近い組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸して乾燥、焼成してなり、それによって、上記フォーム成形体の表面に緻密で高強度の薄い骨格を形成したことを特徴とする高気孔率セラミックフォーム成形体。
  2. セラミック粉末とバインダーを混合した水性スラリーに起泡剤を添加して撹拌することにより発泡させた発泡スラリーを、型に充填し、乾燥後仮焼してフォーム成形体とし、そのフォーム成形体の表面に、上記と同一またはそれに近い組成セラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸した後、乾燥、焼成することを特徴とする高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法。
  3. セラミック粉末とバインダーとを混合した水性スラリーに起泡剤を添加して撹拌することにより発泡させた発泡スラリーを、型に充填し、乾燥後仮焼して得たフォーム成形体の複数個を、上記発泡スラリーを用いて接合して一体化し、それを再度仮焼して接合フォーム成形体とし、その表面に、上記と同一またはそれに近い組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸した後、乾燥、焼成することを特徴とする高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法。
  4. セラミック粉末とバインダーとを混合した水性スラリーに起泡剤を添加して撹拌することにより発泡させた発泡スラリーを、型に充填し、乾燥後仮焼して得たフォーム成形体を、別の型に上記発泡スラリーと共に充填して乾燥し、一体化したものを再度仮焼して接合フォーム成形体とし、その表面に、上記と同一またはそれに近い組成のセラミック粉末とバインダーを混合したスラリーを塗布あるいは含浸した後、乾燥、焼成することを特徴とする高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法。
  5. 無機粉末とバインダーとを混合してスラリーを作製する際に、焼結助剤及び/または粒成長抑制剤となる物質、あるいは焼成によって焼結助剤及び/または粒成長抑制剤となる物質の可溶性の塩類を混合することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法。
  6. 上記仮焼温度は600〜1200℃の温度で行い、上記焼成温度は1200〜2000℃の温度で行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の軽量セラミックスの製造方法。
  7. バインダーとして水酸化アルミニウムゾル、シリカゾル、または水酸化チタニウムゾルの水溶液を用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の高気孔率セラミックフォーム成形体の製造方法。
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