JP2004322879A - ステアリングコラム装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミダイカスト製のハウジング状のアッパクランプを有するステアリングコラム装置の二次衝突時における安定した有効なエネルギー吸収構造を提供する。
【解決手段】アッパクランプ1の車体取付部3の前面にリッピングプレート5の端部5bを係止すると共に、後面の開口部4に端部5aを離脱可能に係合させて、開口部4を挿通するボルトに係止する。アッパジャケットチューブ7が挿通する筒部2の内面に凹溝8を設けると共に、この凹溝8に対向してアジャストスクリュー9を設ける。アッパジャケットチューブ7とロアジャケットチューブ25との間にボール26を介在させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車のステアリングコラム装置に係り、特にその二次衝突時におけるエネルギー吸収構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の正面衝突事故時において、運転乗員の可能な限りの安全を確保するために、ステアリングコラム装置は二次衝突時におけるエネルギー吸収構造を採用している。すなわち、運転乗員がステアリングホイールに衝突すると、ステアリングコラムが衝突エネルギーを消耗しながら車体から離脱し、かつ、軸方向で収縮する構造である。
【0003】
ステアリングコラムが車体から離脱する構造は、例えば特許文献1に示すように、ステアリングホイール側を車体に固定するアッパクランプが乗員の衝突により、車体前方側へ外れて移動する構造である。また、ステアリングコラムの軸方向で収縮する構造は、収縮可能なステアリングシャフトを挿通するアッパジャケットチューブとロアジャケットチューブが、内外で同軸かつ圧接嵌合して軸方向収縮可能な構造である。
【0004】
ところで、近時はステアリングコラムを車体に固定するアッパクランプがアルミダイカスト製のハウジング状であるものが出現しており、それは、車体取付部を形成した本体に筒部を一体形成し、その筒部にアッパジャケットチューブを挿通し、かつ、そのアッパジャケットチューブにロアジャケットチューブを収縮可能に同軸嵌合したものである。そして、アッパジャケットチューブの端部には、ステアリングホイールを回転自在に軸支したアルミダイカスト製のブラケットが連結される。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−24842号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アッパクランプはアッパジャケットチューブを挿入する筒部の内面精度にばらつきが多く、従って、アッパジャケットチューブはガタを有してアッパクランプに組付けられる可能性が高いために、二次衝突によるエネルギー吸収時のコラム収縮荷重が不安定となる面があるという不都合がある。
【0007】
筒部の内面精度のばらつきを無くすには、鋳型や鋳造精度の向上や、円周内面修正工程の付加が想到できるものの、これらは総じてステアリングコラム装置のコスト上昇をもたらす不都合がある。
【0008】
かくして、アルミダイカスト製のハウジングからなるアッパクランプは、二次衝突時における安定した有効性の高いコラム収縮構造を設計し難い面があると云う不都合を有する。
【0009】
また、二次衝突の初期は、アッパクランプの車体からの離脱や、アッパジャケットチューブ等の移動が一度に発生するため、この初期に発生する荷重が高くなる傾向にあり、この初期荷重の低減が要望されている。
【0010】
そこで、この発明はこのような不都合を解消しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明のステアリングコラム装置は、請求項1によれば、車体取付部と筒部を一体形成したハウジング状であって、車体に離脱可能に固定するアッパクランプと、ステアリングホイールを一端部に支持して他端部を前記筒部に挿通するアッパジャケットチューブと、前記アッパジャケットチューブに収縮可能に同軸嵌合してその一端部がロアクランプを介し車体に支持されるロアジャケットチューブと、前記アッパジャケットチューブとロアジャケットチューブを挿通する収縮可能なステアリングシャフトと、前記車体取付部に挿通するボルトに一端部を係合し、他端部を前記アッパクランプに係止したエネルギー吸収部材と、前記筒部の内面に軸方向に形成した凹溝と、前記筒部の外面にこの凹溝と直交方向で対向し螺入してその先端部を前記アッパジャケットチューブの外周面に圧接させるアジャストスクリューとを有することを特徴とする。
【0012】
これにより、二次衝突時のエネルギー吸収は、初めにアッパジャケットチューブとアッパクランプの筒部との間の収縮で行われ、ついで、アッパクランプが車体から離脱することでアッパジャケットチューブとアッパクランプが一体となって移動し、この時、アッパクランプと車体側のボルトとの間に設けたエネルギー吸収部材により行われる段階的ばエネルギー吸収構造が達成される。
【0013】
また、アジャストスクリューはアッパジャケットチューブを筒部内でガタなく安定して固定するから、エネルギー吸収時のコラム収縮荷重が安定する。
【0014】
そして、請求項2によれば、請求項1記載のステアリングコラム装置において、前記アジャストスクリューの先端部は、前記アッパジャケットチューブの外周面に圧接する端面と、その端面の中心に形成した突起部とを有し、この突起部は前記アッパジャケットチューブに軸方向へ開設した所定長さの長孔に係合していることを特徴とする。
【0015】
これにより、二次衝突時の初めにアッパジャケットチューブがロアジャケットチューブ側へ収縮する際の荷重を安定させることができると共に、アジャストスクリューの締付けトルクの管理により収縮荷重の設定を容易に行うことができる。 さらに、請求項3によれば、請求項1記載のステアリングコラム装置において、前記アッパジャケットチューブとロアジャケットチューブ間にボールを介在させたことを特徴とする。
【0016】
これにより、アッパジャケットチューブとロアジャケットチューブの収縮においても、エネルギー吸収を行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明をチルトステアリングコラム装置に実施した例の図面に基づき説明する。図1は半断面右側面図、図2は左側面図、図3は図1の平面図、図4は図1中のA−A断面図、図5は図1中のB−B断面図、図6は図1中のC−C断面図である。
【0018】
車体に離脱可能に固定するアッパクランプ1は、アルミダイカスト製のハウジング状であって、所定長さの筒部2の左右両側に車体取付部3,3が一体形成され、この車体取付部3,3にはそれぞれ車体後側(R)へ開く開口部4,4が形成されている。開口部4,4に対向する車体前側(F)にはエネルギー吸収部材であるリッピングプレート5の一端部を挿入する切欠部からなる係止部6,6が形成されている。
【0019】
開口部4には、金属板を略U字形に折り曲げたスライドプレート30の端部30aが、開口部4内辺に形成した肉薄部4aを挟持して、覆うように装着されている。端部30aは平面視略方形でその面内には、開口部4内に突出するフランジを有するボルト挿通孔30cが上下方向で開設されている。このボルト挿通孔30cに挿通したボルト(図示略)を介してチルトステアリングコラム装置は車体に離脱可能に固定される。なお、30bはスライドプレート30の両端部30a,30aを連結するU字形状の連結部である。
【0020】
リッピングプレート5は短冊状の金属片を、その一端部の中心線に切り込みを入れて左右を略逆人字形に開き、一端部5aにはスライドプレート30のボルト挿通孔30cと重なる位置に略同形状のボルト挿通孔5cが形成され、ボルトによりスライドプレート30と共に車体に固定され、また、他端部を略T字形にしてこれを前記係止部6に係合させてある。
【0021】
アッパクランプ1の筒部2は、アッパジャケットチューブ7を挿通するもので、その上部内面には軸方向へ略台形状の凹溝8が形成されている。この凹溝8にアッパジャケットチューブ7の外周面の一部がわずかに嵌まり込むことができる。
【0022】
この凹溝8に対向する筒部2には、軸芯線C−Cと直交する方向へアジャストスクリュー9が螺合している。アジャストスクリュー9は筒部2内に進退調節可能で、その軸部の一端部に六角穴9cを有するとともに、他端部の中心に突起部9bを形成してある。なお、アジャストスクリュー9の一端部側には、緩み止めのためのナット9aが螺着されている。
【0023】
突起部9bはアッパジャケットチューブ7の肉厚とほぼ同じ高さで突出するもので、アッパジャケットチューブ7に軸方向へ所定長さで形成した長孔7aに進入している。突起部9cが長孔7の所定長さ内で移動できるので、アッパクランプ1のストローク吸収が可能である。
【0024】
なお、突起部9bをアジャストスクリュー9とは別に独立して設けてもよい。すなわち、突起部9bは長孔7aに係合することでアッパジャケットチューブ7がアッパクランプ1に対して回転しないようにする働きをしている。また、突起部9b側のアジャストスクリュー9の端面は、アッパジャケットチューブ7の外周面に圧接しているので、二次衝突時におけるアッパクランプ1のストローク吸収を可能にすると共に、筒部2内におけるアッパジャケットチューブ7のガタ付きを防止する作用をしており、そのため、突起部9bが無くともアッパジャケットチューブ7の外周面に圧接すれば足りる。
【0025】
このアジャストスクリュー9の端面がアッパジャケットチューブ7の外周面に圧接する力、すなわち、アッパクランプ1の筒部2とアッパジャケットチューブ7の間で摺動する荷重は、スライドプレート30がアッパクランプ1の肉薄部4aを挟持する力、すなわち、アッパクランプ1が車体側から離脱する荷重よりも小さくなるように、アジャストスクリュー9により設定される。
【0026】
アッパジャケットチューブ7にはチルトブラケット10の固定側ブラケット10aが連結され、固定側ブラケット10aには可動側ブラケット10bが左右両側のチルトヒンジ11,11を介して回転可能に支持されている。固定側ブラケット10aと可動側ブラケット10bとの間には、これらの下部中央で、跳ね上げ用スプリング21が介在し圧縮して装着されている。
【0027】
チルトブラケット10の可動側ブラケット10bは、ステアリングホイールを一端に固定するシャフト12を軸中心で回転可能に支持している。シャフト12の内側端部には自在継手13を介してアッパステアリングシャフト14が連結されている。
【0028】
可動側ブラケット10bにはチルト角度を設定するためのチルトレバー22とそのリターンバネ23が装着されている。チルトレバー22はリターンバネ23により車体前側方向へ回転付勢されているので、可動側ブラケット10bに軸支したロックプレート31の歯部が、固定側ブラケット10aに固定したロック部材32の歯部に噛合する状態を保持し、車体後側方向への回動操作により、ロックプレート31の歯部がロック部材32の歯部から外れることで、固定側ブラケット10aに対する可動側ブラケット10bのチルト位置を調節するできるようになっている。
【0029】
アッパステアリングシャフト14は中空ロッドであって内周面にはセレーション15が形成されると共に、これと同軸で嵌合するロアステアリングシャフト16は中実ロッドであってその外周面にはセレーション15と係合するセレーション17が端部に形成されている。
【0030】
アッパジャケットチューブ7にはロアジャケットチューブ25が同軸嵌合し、それらの間に複数のボール26を周方向及び軸方向に配置したスペーサー27を介在させてある。
【0031】
ここで、ボール26は、アッパジャケットチューブ7の内周面とロアジャケットチューブ25の外周面との間に圧入されている。そのため、アッパジャケットチューブ7とロアジャケットチューブ25が収縮する際には、ボール26がアッパジャケットチューブ7の内周面とロアジャケットチューブ25の外周面をそれぞれ塑性変形させることでエネルギー吸収が行われる。
【0032】
ロアジャケットチューブ25の車体前側端部はロアクランプ18に設けたフランジ付の孔18aに圧入されており、ロアクランプ18を介して車体に支持される。ロアジャケットチューブ25内にはロアステアリングシャフト16を軸中心で回転可能に支持する軸受19が嵌合している。
【0033】
ロアステアリングシャフト16は自在継手20を介して中間シャフト(図示略)に連結され、中間シャフトは自動車のステアリングギヤボックスに連結される。
【0034】
ここで、ロアジャケットチューブ25の車体前側端部はロアクランプ18の孔18aに圧入されているため、ロアジャケットチューブ25に軸線方向の設定された以上の荷重が作用すると、ロアジャケットチューブ25がロアクランプ18から離脱する。
【0035】
この離脱荷重は、上記アッパジャケットチューブ7とロアジャケットチューブ25が収縮する荷重よりも大きく設定される。すなわち、二次衝突時にアッパジャケットチューブ7が車体前側方向に移動しても、ロアジャケットチューブ25がロアクランプ18から離脱することがなく、アッパジャケットチューブ7とロアジャケットチューブ25が収縮する。そのため、ロアジャケットチューブ25とロアクランプ18は溶接等により固定してもよい。
【0036】
なお、この実施例において、ロアジャケットチューブ25をロアクランプ18に圧入により支持するようにしたのは、一次衝突時にステアリングギヤボックスが車体後側に後退し、中間シャフトを介してロアステアリングシャフト16に突き上げ荷重が作用した際に、ロアジャケットチューブ25がロアクランプ18から車体後方側に離脱することで、一次衝突時のストローク吸収を行うためである。
【0037】
この際、アッパジャケットチューブ7は、アジャストスクリュー9の突起部9bが長孔7aの車体前側の端部に位置しているため車体後方側に移動することがなく、アッパジャケットチューブ7とロアジャケットチューブ25が収縮する。
【0038】
そこで、このチルトステアリングコラム装置の二次衝突時におけるエネルギー吸収作用を説明する。
【0039】
運転乗員がステアリングホイールに衝突すると、初めに、チルトブラケット10とアッパジャケットチューブ7が一体となってロアジャケットチューブ25側へ移動する。このとき、アッパジャケットチューブ7が筒部2内を摺動抵抗を生じながら移動すると共に、ボール26が摺動抵抗を生じながら転動することでエネルギー吸収が行われる。
【0040】
ついで、チルトブラケット10の固定側ブラケット10aがアッパクランプ1に衝突すると、アッパクランプ1は車体から離脱する。このとき、リッピングプレート5の端部5aはボルトと共に車体側に残り、端部5bはアッパクランプ1とともに移動するので、リッピングプレート5は引き裂かれることでエネルギー吸収を行うと共に、ボール26が引き続き摺動抵抗を生じながら移動することでエネルギー吸収が行われる。かくして、段階的なエネルギー吸収を行うものである。
【0041】
このようなエネルギー吸収作用は、アッパジャケットチューブ7と筒部2との間の圧接力を適宜設定することにより安定した収縮荷重で行われる。すなわち、アジャストスクリュー9を回して突起部9bの周辺の端面がアッパジャケットチューブ7の外周面に圧接する強さを増大させること、すなわち、締付け荷重の設定により、ロアジャケットチューブ7は筒部2の内部上面側へ押され、これによりその外周面が凹溝8内にわずかに嵌まり込み、凹溝8の左右両側がロアジャケットチューブ7の外周面に圧接する。
【0042】
したがって、図7に示すように、アジャストスクリュー9の突起部9b周辺の端面が圧接する部分a,b(但し、突起部9bは小さいので実質的には一点となる)と、凹溝8の左右両側が圧接する部分c,dとの3点で、ロアジャケットチューブ7は筒部2に圧接することにより、3点支持の安定したコラムのガタ防止構造ができる。
【0043】
なお、チルトの操作は、チルトレバー22を運転乗員の手前側へ引くとロックが解除されてチルトブラケット10がチルトヒンジ11,11を中心に、跳ね上げ用スプリング21の力で上方へ跳ね上がるから、ステアリングホイールを抑えて適宜のチルト位置を設定した状態でチルトレバー22をリターンバネ23の力で戻すと、ロックがなされ、その状態が維持される。
【0044】
【発明の効果】
この発明によれば、二次衝突時の初めに、アッパジャケットチューブとアッパクランプとの間の移動によりエネルギー吸収が行われ、ついで、アッパジャケットチューブとアッパクランプが一体となって移動する段階で、アッパクランプが車体から離脱することとなるので、二次衝突時の安定した有効なエネルギー吸収が段階的に行われる。すなわち、二次衝突時の初めに発生する初期荷重を軽減することができ、運転乗員に作用する負荷を軽減して安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す半断面右側面図。
【図2】この発明の実施の形態を示す左側面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】図1のA−A断面図。
【図5】図1のB−B断面図。
【図6】図1のD−D断面図。
【図7】アッパジャケットチューブとアッパクランプの関係を示す断面図。
【符号の説明】
1…アッパクランプ
2…筒部
3…車体取付部
4…開口部
4a…肉薄部
5…リッピングプレート
5a,5b…端部
5c…ボルト挿通孔
6…係止部
7…アッパジャケットチューブ
7a…長孔
8…凹溝
9…アジャストスクリュー
9a…ナット
9b…突起部
10…チルトブラケット
11…チルトヒンジ
12…シャフト
13…自在継手
14…アッパステアリングシャフト
15,17…セレーション
16…ロアステアリングシャフト
18…ロアクランプ
21…跳ね上げ用スプリング
22…チルトレバー
23…リターンバネ
25…ロアジャケットチューブ
26…ボール

Claims (3)

  1. 車体取付部と筒部を一体形成したハウジング状であって、車体に離脱可能に固定するアッパクランプと、ステアリングホイールを一端部に支持して他端部を前記筒部に挿通するアッパジャケットチューブと、前記アッパジャケットチューブに収縮可能に同軸嵌合してその一端部がロアクランプを介し支持されるロアジャケットチューブと、前記アッパジャケットチューブとロアジャケットチューブを挿通する収縮可能なステアリングシャフトと、前記車体取付部に挿通するボルトに一端部を係合し、他端部を前記アッパクランプに係止したエネルギー吸収部材と、前記筒部の内面に軸方向に形成した凹溝と、前記筒部の外面にこの凹溝と直交方向で対向し螺入してその先端部を前記アッパジャケットチューブの外周面に圧接させるアジャストスクリューとを有することを特徴とするステアリングコラム装置。
  2. 前記アジャストスクリューの先端部は、前記アッパジャケットチューブの外周面に圧接する端面と、その端面の中心に形成した突起部とを有し、この突起部は前記アッパジャケットチューブに軸方向へ開設した所定長さの長孔に係合していることを特徴とする請求項1記載のステアリングコラム装置。
  3. 前記アッパジャケットチューブとロアジャケットチューブ間にボールを介在させたことを特徴とする請求項1記載のステアリングコラム装置。
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