JP2004321253A - 脈波伝播速度情報測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】手首60に向かって押圧させられる押圧面38、42に、表皮上から橈骨動脈56に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する半導体感圧素子と、橈骨58に向かって押圧させられる圧電シート34とを備えるとともに、指先に装着されて末梢脈波を検出するプローブ46を備える。さらに、電話機本体部21に、圧電シート34から出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、その抽出された心音と前記橈骨動脈波に基づいて心臓から手首までの脈波伝播速度(中枢側脈波伝播速度)を算出する中枢側脈波伝播速度算出手段と、前記橈骨動脈波と前記末梢脈波に基づいて手首から指先までの脈波伝播速度(末梢側脈波伝播速度)を算出する末梢側脈波伝播速度算出手段とを備える。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体情報測定装置に関し、特に、生体情報として、中枢側の脈波伝播速度情報および末梢側の脈波伝播速度情報を測定する脈波伝播速度情報測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の所定の2部位間の動脈内を脈波が伝播する速度や時間など、脈波の伝播速度に関連した情報である脈波伝播速度情報を測定する脈波伝播速度情報測定装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。この脈波伝播速度情報は、動脈硬化度の診断や、血圧の推定などに用いられる。たとえば、前記特許文献1に記載されている装置では、動脈硬化の診断に用いるために、脈波伝播速度を測定している。特許文献1の装置では、脈波伝播速度は、心電図と上腕脈波とに基づいて測定されているので、心臓から上腕までの区間の脈波伝播速度を表している。心臓から上腕までの区間は中枢側の区間であり、従来の脈波伝播速度は、中枢側の区間において測定されていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−122091号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、循環動態は、中枢側と末梢側のバランスにより制御される。そこで、中枢側の区間の脈波伝播速度情報に加えて、末梢側の区間の脈波伝播速度情報を測定することが考えられる。しかし、脈波伝播速度情報は生体の所定の2部位間を脈波が伝播する速度に関連した情報であるので、一つの脈波伝播速度情報を測定するには、心音、心電波形(心電図)、動脈脈波など生体から直接得られる信号すなわち生体信号を2つ測定するために、2つのセンサを生体に装着する必要がある。従って、中枢側と末梢側の2つの区間の脈波伝播速度情報を測定する場合には、生体に装着しなければならないセンサの数が多くなるので、測定作業が比較的面倒となってしまう。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、中枢側脈波伝播速度情報および末梢側脈波伝播速度情報を簡単に測定することができる脈波伝播速度情報測定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための第1の手段】
上記目的を達成するための第1発明は、(a)手首に向かって押圧させられる押圧面を備えた生体信号測定装置と、(b)その押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、(c)その押圧面に設けられ、表皮と接触させられる第1電極と、(d)前記生体信号測定装置においてその押圧面とは異なる面に設けられ、前記手首とは反対側の手に接触させられるための第2電極と、(e)前記手首よりも末梢側の表皮に装着されて、末梢脈波を検出する末梢脈波センサと、(f)前記第1電極と前記第2電極との電位差が表す心電波形において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、心臓から手首までの動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である中枢側脈波伝播速度情報を算出する中枢側脈波伝播速度情報算出手段と、(g)前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間と、前記末梢脈波センサにより検出された末梢脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、手首よりも末梢側の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である末梢側脈波伝播速度情報を算出する末梢側脈波伝播速度情報算出手段とを含むことを特徴とする脈波伝播速度情報測定装置である。
【0008】
【第1発明の効果】
この発明によれば、末梢脈波センサを手首よりも末梢側の表皮に装着するとともに、押圧面に設けられた圧力検出素子が橈骨動脈を押圧するように、生体信号測定装置の押圧面を手首に押圧し、他方の手を生体信号測定装置の第2電極に接触させている状態では、圧力検出素子により橈骨動脈波が検出され、第1電極と第2電極との電位差が心電図を表し、末梢脈波センサにより末梢脈波が検出されるので、簡単に、心電図、橈骨動脈波、および末梢脈波を同時に測定することができる。そして、中枢側脈波伝播速度情報算出手段により、その心電図と橈骨動脈波から中枢側脈波伝播速度情報が算出され、末梢側脈波伝播速度情報算出手段により、その橈骨動脈波と末梢脈波から末梢側脈波伝播速度情報が算出されるので、簡単に、中枢側と末梢側の脈波伝播速度情報を得ることができる。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明は、(a)手首に向かって押圧させられる押圧面を備えた生体信号測定装置と、(b)その押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、(c)その押圧面に設けられ、前記手首の骨に向かって押圧させられる振動センサと、(d)その振動センサから出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、(e)前記手首よりも末梢側の表皮に装着されて、末梢脈波を検出する末梢脈波センサと、(f)前記心音抽出手段により抽出された心音において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、心臓から手首までの動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である中枢側脈波伝播速度情報を算出する中枢側脈波伝播速度情報算出手段と、(g)前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間と、前記末梢脈波センサにより検出された末梢脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、手首よりも末梢側の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である末梢側脈波伝播速度情報を算出する末梢側脈波伝播速度情報算出手段とを含むことを特徴とする脈波伝播速度情報測定装置である。
【0010】
【第2発明の効果】
この発明によれば、末梢脈波センサを手首よりも末梢側の表皮に装着するとともに、押圧面に設けられた圧力検出素子が橈骨動脈を押圧し、押圧面に設けられた振動センサが手首の骨を押圧するように、生体信号測定装置の押圧面を手首に押圧した状態では、圧力検出素子により橈骨動脈波が検出され、振動センサにより骨を媒体として手首に伝播した心音を含む振動が検出され、末梢脈波センサにより末梢脈波が検出され、心音抽出手段により、その振動センサにより検出された振動から心音が抽出されるので、簡単に、心音、橈骨動脈波、および末梢脈波を同時に測定することができる。そして、中枢側脈波伝播速度情報算出手段により、その心音と橈骨動脈波から中枢側脈波伝播速度情報が算出され、末梢側脈波伝播速度情報算出手段により、その橈骨動脈波と末梢脈波から末梢側脈波伝播速度情報が算出されるので、簡単に、中枢側と末梢側の脈波伝播速度情報を得ることができる。
【0011】
【課題を解決するための第3の手段】
また、前記目的を達成するための第3発明は、(a)手首に向かって押圧させられる押圧面を備えた生体信号測定装置と、(b)その押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、(c)その圧力検出素子から出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、(d)前記手首よりも末梢側の表皮に装着されて、末梢脈波を検出する末梢脈波センサと、(e)前記心音抽出手段により抽出された心音において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、心臓から手首までの動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である中枢側脈波伝播速度情報を算出する中枢側脈波伝播速度情報算出手段と、(f)前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間と、前記末梢脈波センサにより検出された末梢脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、手首よりも末梢側の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である末梢側脈波伝播速度情報を算出する末梢側脈波伝播速度情報算出手段とを含むことを特徴とする脈波伝播速度情報測定装置である。
【0012】
【第3発明の効果】
この発明によれば、末梢脈波センサを手首よりも末梢側の表皮に装着するとともに、押圧面の圧力検出素子が橈骨動脈を押圧するように、生体信号測定装置の押圧面を手首に押圧した状態では、圧力検出素子により橈骨動脈波が検出され、末梢脈波センサにより末梢脈波が検出され、心音抽出手段により、圧力検出素子から出力された信号から心音が抽出されるので、簡単に、心音、橈骨動脈波、および末梢脈波を同時に測定することができる。そして、中枢側脈波伝播速度情報算出手段により、その心音と橈骨動脈波から中枢側脈波伝播速度情報が算出され、末梢側脈波伝播速度情報算出手段により、その橈骨動脈波と末梢脈波から末梢側脈波伝播速度情報が算出されるので、簡単に、中枢側と末梢側の脈波伝播速度情報を得ることができる。
【0013】
【発明の他の態様】
ここで、好ましくは、前記脈波伝播速度情報測定装置は、前記末梢脈波センサが、酸素飽和度によってヘモグロビンの吸光係数が変化する第1波長の照射光およびその第1波長よりも酸素飽和度によるヘモグロビンの吸光係数の変化が少ない第2波長の照射光を生体組織へ向かって照射する発光素子と、その第1波長の二次光およびその第2波長の二次光をそれぞれ検出してそれら第1波長の二次光および第2波長の二次光をそれぞれ表す第1光電脈波信号および第2光電脈波信号を出力する受光素子とを備えた酸素飽和度測定用センサであり、その第1光電脈波信号の強度とその第2光電脈波信号の強度に基づいて、予め定められた関係から酸素飽和度を算出する酸素飽和度算出手段をさらに含むものである。このようにすれば、末梢脈波を検出するためのセンサとは別に酸素飽和度測定用センサを追加することなく、末梢側の生体情報として酸素飽和度をさらに得ることができる。なお、上記二次光とは、生体組織内で散乱された後方散乱光または生体組織を通過した透過光を意味する。
【0014】
また、好ましくは、前記脈波伝播速度情報測定装置は、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波の立ち上がり点とノッチとの時間差から駆出時間を算出する駆出時間算出手段をさらに含むものである。このようにすれば、中枢側の生体情報として駆出時間をさらに得ることができる。
【0015】
【発明の好適な実施の形態】
次に、本発明の好適な実施の形態を説明する。まず、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例であって、脈波伝播速度測定装置として機能する携帯電話機10を示す斜視図である。
【0016】
携帯電話機10は、一般的な携帯電話機に備えられたものと同様の表示器12、複数の入力キー14、スピーカ16、マイク18、アンテナ20を備えた電話機本体部21と、その電話機本体部21の下部に設けられた図示しないコネクタに差し込まれることにより、電話機本体部21と一体化させられる生体信号センサユニット22とを有している。この生体信号センサユニット22が備えられることにより、携帯電話機10は生体信号測定装置として機能する。
【0017】
図2はその生体信号センサユニット22の正面図であり、図3はその生体信号センサユニット22の底面図である。図2および図3に示すように、生体信号センサユニット22には、ユニット本体部24と、そのユニット本体部24から上側(電話機本体部21側)に突き出して設けられたコネクタ26と、ユニット本体部24からコネクタ26とは反対側に突き出して設けられた検出部28とを備えている。上記ユニット本体部24には、検出部28により生体から検出された信号を増幅し、アナログ−デジタル変換するための回路が収容されている。
【0018】
生体信号センサユニット22の検出部28は、感圧素子設置台30、ゴムシート32、圧電シート34、第1電極36を備えている。感圧素子設置台30は、ユニット本体部24の下面略中央においてその下面から下方に突き出す角柱状であり、この感圧素子設置台30の水平断面の大きさは、長手方向(図2、図3の横方向)の長さがユニット本体部24の長手方向長さの1/3程度であり、幅方向長さがユニット本体部24の幅方向長さの半分程度とされている。感圧素子設置台30の下面は手首の表皮に向かって押圧させられる押圧面(以下、第1押圧面38という)であり、その第1押圧面38には、圧力検出素子として機能する複数の半導体感圧素子40(以下、単に感圧素子40という)が第1押圧面38の長手方向に一列に埋設されている。
【0019】
上記ゴムシート32は、前記感圧素子設置台30を取り囲むようにしてユニット本体部24の下面に設けられている。このゴムシート32の下面も、手首の表皮に向かって押圧させられる押圧面(以下、第2押圧面42という)であるが、その第2押圧面42には、平面形状がゴムシート32の平面形状と同一とされた圧電シート34が設けられているので、第2押圧面42は圧電シート34により覆われている。この圧電シート34は、振動センサとして機能し、圧電性高分子として良く知られているポリフッ化ビニリデン樹脂製であり、表皮の凹凸に対応するのに十分な可撓性を有している。
【0020】
第1電極36は、膜状の薄い部材であり、圧電シート34に積層されている。すなわち、第2押圧面42には、圧電シート34を介して第1電極36が設けられている。この第1電極36の平面形状もゴムシート32の平面形状と同一とされているので、圧電シート34の下面は第1電極36により覆われている。
【0021】
図1に戻って、携帯電話機10には、さらに、本体部21の両側面の略中央部に、その側面から正面(表示器12や入力キー14が設けられている面)および裏面にかけて一対の第2電極44が設けられており、本体部21の上面に図4に示すプローブ46の入力端子48が差し込まれるコネクタ50が設けられている。
【0022】
図4は、上記プローブ46の斜視図である。プローブ46は、酸素飽和度測定用センサおよび末梢脈波センサとして機能するものであり、指先に装着される本体部52、入力端子48、および本体部52と入力端子48とを接続するコード54を備えている。上記本体部52は、回動軸心Aを支点として互いに接近離隔可能な一対のつまみ部52aと、同じく回動軸心Aを支点として互いに接近離隔可能とされ、指先を挟持する一対の挟持部52bとを有するクリップ状であり、一対のつまみ部52aを持って、その一対のつまみ部52aを互いに接近させる方向に操作すると、一対の挟持部52bは図示しないバネの力に抗して互いに離隔する方向に回動し、つまみ部52aから手を離すと、上記図示しないバネの付勢力により、一対の挟持部52bは互いに接近する方向に回動する。
【0023】
図5は、携帯電話機10により脈波伝播速度PWVなどの生体情報を測定している状態を示す図である。携帯電話機10により脈波伝播速度PWVなどの生体情報を測定するには、まず、プローブ46の本体部52を指先に装着するとともに、プローブ46の入力端子48を電話機本体部21のコネクタ50に差し込んむ。そして、図示しない一方の手(図5の場合には右手)で第2電極44に触れるようにして携帯電話機10を把持して、第1押圧面38が表皮上から橈骨動脈56を押圧し、同時に、第2押圧面42が表皮上から橈骨58を押圧するように、携帯電話機10を他方の手首60に押圧する。
【0024】
前述のように第1電極36は薄い膜状であり、また、その第1電極36に積層されている圧電シート34は可撓性を有しており、さらに、圧電シート34の第1電極36とは反対側にはゴムシート32が積層されているので、第2押圧面42が表皮上から橈骨58に向かって押圧させられると、第1電極36およびそれに積層された圧電シート34は、手首の凹凸形状に対応して変形させられる。従って、橈骨からの振動が第1電極36を介して圧電シート34に伝達される。また、第1押圧面38には複数の感圧素子40が埋設されているので、第1押圧面38が橈骨動脈に向かって押圧させられると、それら複数の感圧素子40により橈骨動脈波がそれぞれ検出される。
【0025】
図6は、携帯電話機10の内部の回路構成を概略的に示す図である。図6に示すように、生体信号センサユニット22のユニット本体部24には、電極36、44間の電位差すなわち心電図を表す心電信号SE、圧電シート34から出力され橈骨の振動を表す振動信号SV、複数の感圧素子40からそれぞれ出力され橈骨動脈波を表す圧脈波信号SMPをそれぞれ増幅する増幅器62、64、66と、それら増幅器62、64、66に接続され、増幅器62、64、66により増幅された信号をA/D変換するA/D変換器68、70、72が設けられている。そして、A/D変換器68、70、72によりデジタル信号に変換された信号は、電話機本体部21内に備えられた電子制御装置74に供給される。
【0026】
また、プローブ46の本体部52には、一方の挟持部52bの表皮と接触させられる面に、LED等から成る第1発光素子78aおよび第2発光素子78b (以下、特に区別しない場合は単に発光素子78という)と、フォトダイオードやフォトトランジスタ等から成る受光素子80とが備えられている。上記第1発光素子78aは、第1波長として赤色光(例えば660nm程度の波長の光)を発光し、第2発光素子78bは、第2波長として赤外光(例えば800nm程度の波長の光)を発光するものである。これら第1発光素子78a及び第2発光素子78bは、一定時間づつ順番に所定周波数で発光させられると共に、それら発光素子78から体表面に向かって照射された光が体内の毛細血管が密集している部位で散乱させられた後方散乱光は、共通の受光素子80によりそれぞれ受光される。なお、発光素子78の発光する光の波長は上記の値に限られず、第1発光素子78aは酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの吸光係数が大きく異なる波長の光を、第2発光素子78bはそれらの吸光係数が略同じとなる波長の光をそれぞれ発光するものであればよい。
【0027】
受光素子80は、その受光量に対応した大きさの光電脈波信号SMLをローパスフィルタ82に出力する。なお、受光素子80とローパスフィルタ82との間には増幅器等が適宜設けられる。ローパスフィルタ82は、入力された光電脈波信号SMLから脈波の周波数よりも高い周波数を有するノイズを除去し、そのノイズが除去された信号SMLをデマルチプレクサ84に出力する。この光電脈波信号SMLは、指尖部(末梢部)における動脈血管の血液容積の変動すなわち末梢脈波を表している。
【0028】
デマルチプレクサ84は、電子制御装置74からの切替信号SCにより第1発光素子78a及び第2発光素子78bの発光に同期して切り換えられ、赤色光の後方散乱光を表す第1光電脈波信号SML1および赤外光の後方散乱光を表す第2光電脈波信号SML2をA/D変換器86および88を介して電子制御装置74の図示しないI/Oポートに逐次供給する。なお、デマルチプレクサ84とA/D変換器86、88との間には、A/D変換器86、88において前回供給された第1光電脈波信号SML1および第2光電脈波信号SML2の変換作動が終了するまで第1光電脈波信号SML1および第2光電脈波信号SML2を保持するための図示しないサンプルホールド回路が設けられている。
【0029】
駆動回路90は、電子制御装置74からの制御信号SLVに従って、第1発光素子78aおよび第2発光素子78bを順次所定の周波数で一定時間づつ発光させる。
【0030】
上記電子制御装置74は、CPU92、ROM94、RAM96および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータであり、CPU92は、通常の携帯電話機に備えられたCPUと同様の機能を備えていることに加え、生体情報を測定するための特別の機能を備える。すなわち、CPU92は、RAM96の一時記憶機能を利用しつつROM94に記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、心音図、心電図、橈骨動脈波を決定してRAM96に記憶させるとともに、その決定した心音図および橈骨動脈波に基づいて、中枢側脈波伝播速度PWVcおよび末梢側脈波伝播速度PWVpを決定する。また、CPU92は、プローブ46から供給される光電脈波信号SMLに基づいて血中の酸素飽和度SPO2を算出する。さらに、入力キー14から、RAM96に記憶された生体情報を所定の医療機関の端末装置へ送信させることを指示する信号が供給された場合には、CPU92は、RAM96に記憶されている生体情報を送受信回路98へ出力するとともに、送受信回路98を制御してその生体情報をアンテナ18から出力させる。なお、上記送受信回路98は、通常の携帯電話機10に備えられているものと同様の構成であり、変復調回路や発振回路などを備えている。
【0031】
図7は、上記電子制御装置74の生体情報を測定するための制御機能の要部を示す機能ブロック線図である。心音抽出手段100は、圧電シート34から出力される振動信号SVをデジタルフィルタ処理することにより、その振動信号SVから、一般的に心音が有する周波数帯域に予め設定された周波数帯域の成分を心音成分として抽出する。たとえば、上記周波数帯域は30〜600Hzの帯域に設定される。圧電シート34は橈骨に向かって押圧させられており、心臓の弁の開閉によって発生する音すなわち心音は骨を伝って手首にも伝播しているので、振動信号SVには心音成分が含まれている。従って、振動信号SVから心音が有する周波数帯域の信号を抽出すれば、手首において心音が検出できるのである。
【0032】
最適素子決定手段102は、第1押圧面38に備えられた複数の感圧素子40から、橈骨動脈波の検出に最も適している感圧素子40(以下、これを最適素子Aという)を一つ決定する。橈骨動脈波を検出するためには、感圧素子40を橈骨動脈の直上部に位置させることが好ましく、感圧素子40が橈骨動脈の直上部に位置している場合には検出される橈骨動脈波の振幅が最も大きくなることから、最適素子決定手段102では、振幅が最も大きい圧脈波信号SMPを出力した感圧素子40を、橈骨動脈の真上に位置している最適素子Aに決定する。
【0033】
橈骨動脈波決定手段として機能するノイズ除去手段104は、最適素子Aから出力された圧脈波信号SMPから橈骨動脈波を抽出するために、その圧脈波信号SMPから橈骨動脈波にとってはノイズとなる成分をデジタルフィルタ処理によって除去する。橈骨動脈波は脈拍周期の脈波であることから、たとえば、このノイズ除去手段104では、圧脈波信号SMPから50Hz以上の高周波数成分を除去する。
【0034】
測定データ記憶手段106は、心電信号SEすなわち心電図、心音抽出手段100により抽出された心音波形、ノイズ除去手段104により決定された橈骨動脈波を、RAM96の所定の記憶領域に記憶する。
【0035】
中枢側脈波伝播速度算出手段108は、まず、心音抽出手段100によって抽出された心音の所定部位を一方の基準点とし、ノイズ除去手段104により決定された橈骨動脈波の所定部位を他方の基準点として、上記2つの基準点の検出時間差(sec)を算出する。この時間差は、心臓から手首までを脈波が伝播する時間すなわち中枢側脈波伝播時間DTcを表す。また、上記心音の所定部位には、たとえば心音のI音の開始点(立ち上がり点)、I音のピーク、II音の開始点、II音のピークなどを用い、上記橈骨動脈波の所定部位には、橈骨動脈波の立ち上がり点やピークなどを用いる。
【0036】
前記入力キー14からは被測定者の身長が入力されるようになっており、中枢側脈波伝播速度算出手段108は、さらに、その入力キー14から供給される被測定者の身長Tを、身長Tと中枢側伝播距離Lcとの間の予め記憶された関係である式1に代入することにより、脈波が心臓から手首まで伝播する経路の距離を表す中枢側伝播距離Lcを求め、得られた中枢側伝播距離Lcと上記中枢側脈波伝播時間DTcとを式2に代入することにより中枢側脈波伝播速度PWVc(cm/sec)を算出する。
(式1) Lc=a1T+b1
(a1,b1は、実験に基づいて決定された定数)
(式2) PWVc=Lc/DTc
なお、中枢側脈波伝播速度PWVcの算出は一回のみでもよいが、信頼性を高めるためには複数の中枢側脈波伝播速度PWVc算出して平均することが好ましいので、本実施例では、10拍分の信号に基づいて中枢側脈波伝播速度PWVcを10回算出し、それら10拍分の中枢側脈波伝播速度PWVcを平均した平均中枢側脈波伝播速度PWVcAVを算出して、その平均中枢側脈波伝播速度PWVcAVを表示器12に表示する。
【0037】
末梢側脈波伝播速度算出手段110は、ノイズ除去手段104により決定された橈骨動脈波およびプローブ46から供給される末梢脈波に基づいて、上記中枢側脈波伝播速度算出手段108と同様にして、末梢側脈波伝播速度PWVpを算出する。すなわち、末梢側脈波伝播速度算出手段110は、まず、橈骨動脈波の所定部位と末梢脈波の所定部位との検出時間差、すなわち、手首から指先までを脈波が伝播する時間を、末梢側脈波伝播時間DTpとして算出するとともに、入力キー14から供給される被測定者の身長Tを、身長Tと末梢側伝播距離Lpとの間の予め記憶された関係である式3に代入することにより、脈波が手首から指先まで伝播する経路の距離を表す末梢側伝播距離Lpを求め、得られた末梢側伝播距離Lpと上記末梢側脈波伝播時間DTpとを式4に代入することにより末梢側脈波伝播速度PWVp(cm/sec)を算出する。
(式3) Lp=a2T+b2
(a2,b2は、実験に基づいて決定された定数)
(式4) PWVp=Lp/DTp
そして、信頼性を高めるために、10拍分の末梢側脈波伝播速度PWVpを算出して、それら10拍分の末梢側脈波伝播速度PWVpを平均した平均末梢側脈波伝播速度PWVpAVを算出して、その平均末梢側脈波伝播速度PWVpAVを表示器12に表示する。
【0038】
酸素飽和度決定手段112は、駆動回路90に制御信号SLVを出力して、第1発光素子78aおよび第2発光素子78bを順次所定の周波数で一定時間づつ発光させつつ、それら発光素子78a、78bの発光に同期して切換信号SCを出力してデマルチプレクサ84を切り換える。そして、受光素子80から交互に得られた第1光電脈波信号SML1および第2光電脈波信号SML2の振幅値に基づいて、血中の酸素飽和度を算出するために予め記憶された演算式から、酸素飽和度SPO2(%)を算出する。そして、信頼性を高めるために、10拍分の酸素飽和度SPO2をを算出して、それら10拍分の酸素飽和度SPO2を平均した平均酸素飽和度SPO2AVを算出して、その平均酸素飽和度SPO2AVを表示器12に表示する。
【0039】
駆出時間算出手段114は、ノイズ除去手段104により決定された橈骨動脈波の立ち上がり点とノッチとの時間差を駆出時間ETとして算出して、その算出した駆出時間ETを表示器12に表示する。そして、信頼性を高めるために、10拍分の駆出時間ETをを算出して、それら10拍分の駆出時間ETを平均した平均駆出時間ETAVを算出して、その平均駆出時間ETAVを表示器12に表示する。なお、上記駆出時間ETは、大動脈弁が解放され、左室駆血が始まってから大動脈弁が閉鎖されるまでの時間であり、脈波の立ち上がり点は大動脈弁の解放による駆血の開始によって形成され、脈波のノッチは大動脈弁の閉鎖によって形成されるので、立ち上がり点とノッチとの時間差は駆出時間ETを表すのである。
【0040】
中枢側脈波伝播速度算出手段108、末梢側脈波伝播速度算出手段110、酸素飽和度決定手段112、駆出時間算出手段114が実行されることにより、表示器12に、平均中枢側脈波伝播速度PWVcAV、平均末梢側脈波伝播速度PWVpAV、平均酸素飽和度SPO2AV、および平均駆出時間ETAVが表示されると、被測定者すなわち携帯電話機10の操作者は、表示されたそれらの生体情報を自分の正常時あるいは基準時の生体情報と比較して、自分の容態を判断することができる。
【0041】
たとえば、中枢側の脈波伝播速度PWVは血圧に対応して変化するので、平均中枢側脈波伝播速度PWVcAVが遅くなっている場合には、血圧が低下していると判断することができ、循環器系の異常により末梢血管が収縮すると、末梢側の脈波伝播速度PWVが遅くなるので、平均末梢側脈波伝播速度PWVpAVが遅くなっている場合には、循環器系の異常の可能性があると判断できる。また、平均中枢側脈波伝播速度PWVcAVと平均末梢側脈波伝播速度PWVpAVから、循環動態における中枢側と末梢側のバランスが正常かどうかを評価することもできる。さらに、平均酸素飽和度SPO2AVが低くなっている場合には、呼吸器系に異常があると判断でき、平均駆出時間ETAVが長くなっている場合には、心臓にかかる負荷が大きくなっていると判断できる。
【0042】
そして、表示されたそれらの生体情報から自分の容態を判断して、医師等の専門家による診断結果が必要と判断した場合には、測定した生体情報を予め登録した医療機関へ送信するために、入力キー14を予め定められた送信指示操作に従って操作する。この送信指示操作が行われると、送信指示信号が電子制御装置74に供給される。
【0043】
生体情報伝送手段114は、上記送信指示信号が供給された場合に、RAM96に記憶されている心電図、心音、橈骨動脈波、平均中枢側脈波伝播速度PWVcAV、平均末梢側脈波伝播速度PWVpAV、平均酸素飽和度SPO2AV、および平均駆出時間ETAVを、送受信回路98へ出力するとともに、送受信回路98を制御して、それらの生体情報を所定の医療機関へ送信する。なお、上記医療機関へ心電図等の生体情報が送信されると、医療機関では、送信された生体情報に基づいて、担当医による診断、またはコンピュータによる自動診断が行われ、診断結果が携帯電話機10に返信されるようになっている。
【0044】
図8は、図7に示した電子制御装置74の制御機能のうち、生体情報伝送手段116を除く機能をフローチャートにして示す図である。なお、図8のフローチャートは、入力キー14から患者の身長Tを表す信号が予め供給されていることを条件として、その入力キー14により所定の測定開始操作がされることにより開始するようになっている。
【0045】
図8において、まず、ステップS1(以下、ステップを省略する。)では、プローブ46の発光素子78を所定の周波数で発光させるために、駆動回路90に制御信号SLVを逐次出力するとともに、電極36、44の電位差すなわち心電図である心電信号SE、圧電シート34から供給される振動信号SV、複数の感圧素子40からそれぞれ供給される圧脈波信号SMP、およびプローブ46の受光素子80からローパスフィルタ82等を介して供給される光電脈波信号SML1、SML2を所定のサンプリング周期毎に10拍分読み込み、それら読み込んだ信号をRAM96の所定の記憶領域に記憶する。なお、この10拍分の信号を読み込んだ否かは、ここでは、心電図のR波の検出回数に基づいて判断する。
【0046】
続くS2は最適素子決定手段102に相当し、上記S1で読み込んだ圧脈波信号SMPに基づいて、以下のようにして第1押圧面38に備えられている複数の感圧素子40から最適感圧素子Aを決定する。すなわち、複数の感圧素子40からそれぞれ供給された圧脈波信号SMPから、それら複数の感圧素子40がそれぞれ検出した10拍分の橈骨動脈波の振幅を決定し、感圧素子40毎に振幅を平均し、振幅の平均値が最も大きくなる橈骨動脈波を検出した感圧素子40を最適素子Aに決定する。
【0047】
続くS3はノイズ除去手段104に相当し、前記S1においてRAM96に記憶されている圧脈波信号SMPのうち、上記S2で決定した最適素子Aにより検出された圧脈波信号SMPから50Hz以上の周波数成分を除去するデジタルフィルタ処理を施すことによってその圧脈波信号SMPからノイズを除去し、ノイズ除去後の信号を橈骨動脈波に決定する。そして、続くS4では、上記S3で決定した橈骨動脈波をRAM96の所定の記憶領域に記憶する。
【0048】
続いて心音抽出手段100に相当するS5を実行する。S5では、前記S1で読み込んだ振動信号SVを、30〜600Hzの周波数成分を抽出するデジタルフィルタ処理することによって、振動信号SVから心音成分を抽出する。そして、続くS6において、S5で抽出した心音をRAM96の所定の記憶領域に記憶する。本フローチャートでは、前記S1で心電図を記憶し、S4で橈骨動脈波を記憶し、S6で心音を記憶するので、S1、S4およびS6が測定データ記憶手段106に相当する。
【0049】
続いて、中枢側脈波伝播速度算出手段108に相当するS7乃至S8を実行する。まず、S7では、S5で抽出した心音成分からI音の開始点を一拍毎に決定するとともに、S3で決定した橈骨動脈波の立ち上がり点を一拍毎に決定し、その一拍毎に決定したI音の開始点と橈骨動脈波の立ち上がり点との時間差を、中枢側脈波伝播時間DTcとして一拍毎に算出する。そして、予め供給されている被測定者の身長Tを前記式1に代入することにより中枢側伝播距離Lcを算出し、その中枢側伝播距離Lcと上記中枢側脈波伝播時間DTcを前記式2に代入して、10拍分の中枢側脈波伝播速度PWVcを算出する。
【0050】
そして、S8では、上記S7で算出した10拍分の中枢側脈波伝播速度PWVcを平均して平均中枢側脈波伝播速度PWVcAVを算出し、算出した平均中枢側脈波伝播速度PWVcAVを表示器12に表示する。
【0051】
続いて、末梢側脈波伝播速度算出手段110に相当するS9乃至S10を実行する。まず、S9では、S1で読み込んだ光電脈波信号SMLが表す末梢脈波の立ち上がり点を一拍毎に決定するとともに、その一拍毎に決定した末梢脈波の立ち上がり点と、前記S7で一拍毎に決定した橈骨動脈波の立ち上がり点との時間差を、末梢側脈波伝播時間DTpとして一拍毎に算出する。そして、予め供給されている被測定者の身長Tを前記式3に代入することにより末梢側伝播距離Lpを算出し、その末梢側伝播距離Lpと上記末梢側脈波伝播時間DTpを前記式4に代入して、10拍分の末梢側脈波伝播速度PWVpを算出する。
【0052】
そして、S10では、上記S9で算出した10拍分の末梢側脈波伝播速度PWVpを平均して平均末梢側脈波伝播速度PWVpAVを算出し、算出した平均末梢側脈波伝播速度PWVpAVを表示器12に表示する。
【0053】
続いて、酸素飽和度決定手段112に相当するS11乃至S12を実行する。まず、S11では、S1で読み込んだ第1光電脈波信号SML1および第2光電脈波信号SML2の一拍毎の振幅値に基づいて、血中の酸素飽和度を算出するために予め記憶された演算式から、酸素飽和度SPO2(%)を一拍毎に算出する。そして、S12では、上記S11で算出した10拍分の酸素飽和度SPO2を平均して平均酸素飽和度SPO2AVを算出し、算出した平均酸素飽和度SPO2AVを表示器12に表示する。
【0054】
続いて、駆出時間決定手段114に相当するS13乃至S14を実行する。まず、S13では、S3で決定した橈骨動脈波の立ち上がり点とノッチとの時間差を駆出時間ETとして一拍毎に算出し、続くS14では、そのS13で算出した10拍分の駆出時間ETを平均して平均駆出時間ETAVを算出し、算出した平均駆出時間ETAVを表示器12に表示する。
【0055】
被測定者すなわち携帯電話機10の操作者は、このようにして表示器12に表示された平均中枢側脈波伝播速度PWVcAV、平均末梢側脈波伝播速度PWVpAV、平均酸素飽和度SPO2AV、平均駆出時間ETAVから自分の容態を判断し、必要に応じて、測定した生体情報を予め登録した医療機関へ送信することにより、専門家による診断を受けることができる。
【0056】
上述の実施例によれば、プローブ46を指先の表皮に装着した後、押圧面38に設けられた感圧素子40が橈骨動脈56を押圧し、押圧面42に設けられた圧電シート34が橈骨58を押圧するように、生体信号センサユニット22の押圧面38、42を手首60に押圧した状態では、感圧素子40により橈骨動脈波が検出され、圧電シート34により骨を媒体として手首60に伝播した心音を含む振動が検出され、プローブ46により末梢脈波が検出され、心音抽出手段100(S5)により、その圧電シート34により検出された振動から心音が抽出されるので、簡単に、心音、橈骨動脈波、および末梢脈波を同時に測定することができる。そして、中枢側脈波伝播速度算出手段108(S7乃至S8)により、その心音と橈骨動脈波から中枢側脈波伝播速度PWVcが算出され、末梢側脈波伝播速度算出手段110(S9乃至S10)により、その橈骨動脈波と末梢脈波から末梢側脈波伝播速度PWVpが算出されるので、簡単に、中枢側と末梢側の脈波伝播速度PWVを得ることができる。
【0057】
また、上述の実施例によれば、末梢脈波センサとして酸素飽和度測定用のプローブ46が用いられているので、末梢脈波を検出するためのセンサとは別に酸素飽和度測定用センサを追加することなく、末梢側の生体情報として酸素飽和度SPO2をさらに得ることができる。
【0058】
また、上述の実施例によれば、駆出時間算出手段114(S13乃至S14)により、感圧素子40によって検出された橈骨動脈波の立ち上がり点とノッチとの時間差から駆出時間ETが算出されるので、中枢側の生体情報として駆出時間ETをさらに得ることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0060】
たとえば、前述の実施例では、中枢側脈波伝播速度PWVcは心音と橈骨動脈波とから算出していたが、心音に代えて心電図を用いても良い。この場合、一方の基準点としては、たとえば、心電図のR波やQ波を用いる。なお、心電図のR波やQ波が発生してから、実際に大動脈弁から血液が駆出されるまでには前駆出期間PEPとよばれる時間差が存在するので、前記式2に代えて、式5に示すような前駆出期間PEPが考慮された算出式を用いて脈波伝播速度PWVを算出することが好ましい。
(式5) PWVc=Lc/(DTc−PEP)
(PEPは予め設定された定数)
【0061】
このように、心電図と橈骨動脈波を用いて中枢側脈波伝播速度PWVcを算出しても、前述の実施例と同様に、簡単に、中枢側と末梢側の脈波伝播速度PWVを得ることができる。
【0062】
また、前述の実施例では、圧電シート34を橈骨に向かって押圧することにより橈骨の振動を検出し、心音は、その橈骨の振動から抽出していたが、心音は血管および血液を媒体としても伝播するので、橈骨動脈56に向かって押圧させられる感圧素子40から出力される圧脈波信号SMPから音を抽出しても良い。
【0063】
また、前述の実施例の装置10は、第1押圧面38と第2押圧面42とを備え、第1押圧面38に感圧素子40を設け、第2押圧面42に圧電シート34および第1電極36を設けていたが、一つの押圧面にそれら感圧素子40、圧電シート34、第1電極36を設けてもよい。
【0064】
また、前述の実施例では、生体から心音および心電図を検出していたが、心音および心電図は、いずれか一方を測定するようになっていてもよい。
【0065】
また、前述の実施例では、プローブ46は指先を挟持する型式であったが、掌、手の甲などの表皮に貼り付けられる型式であっても良い。
【0066】
また、脈波伝播速度PWVは血圧に関連して変化するので、脈波伝播速度PWVと推定血圧値との関係が予め記憶されており、前述の実施例で算出した中枢側脈波伝播速度PWVc(または平均中枢側脈波伝播速度PWVcAV)から、さらに推定血圧値を算出するようになっていてもよい。
【0067】
また、前述の実施例では、携帯電話機10は、生体信号測定装置として機能するとともに、その電話機10の本体部21には、図7に示した各手段を実行する電子制御装置74が収容されていたが、図7に示した各手段を実行するための装置が携帯電話機10とは別に設けられていてもよい。なお、その装置は、据え置き型であってもよいし、腰等に装着される携帯型であってもよい。
【0068】
また、前述の実施例の携帯電話機10は、手に把持して生体信号を測定する型式であったが、腕時計型のようにベルトで固定されて生体信号を測定する型式であってもよい。また、ベルトに替えて、クリップで固定されてもよい。そのように、測定時に手に把持する必要がない型式の装置により心電図を測定する場合には、押圧面とは異なる面すなわち手首の表皮に接触させられない面に第2電極44を設け、装置が装着されていない側の手をその第2電極44に接触させて心電図を測定する。
【0069】
また、前述の実施例では、圧電シート34は橈骨に向かって押圧させられるようになっていたが、橈骨ではなく手首における他方の骨すなわち尺骨に向かって押圧させられても良い。
【0070】
また、前述の実施例では、心音抽出手段100はソフトウェアによるデジタルフィルタ処理であったが、抵抗、コンデンサ等によって構成されるアナログフィルタを心音抽出手段として用いてもよい。
【0071】
また、前述の実施例では、圧電シート34としてポリフッ化ビニリデン樹脂製の圧電シート34を用いていたが、圧電シートは、ポリフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンあるいはテトラフルオロエチレンとの共重合体製であってもよい。また、前述の実施例の圧電シート34は圧電式加速度センサに分類されるセンサであるので、前述の実施例の圧電シート34に代えて、チタン酸バリウムなどの圧電セラミックスや水晶などの他の圧電式加速度センサを用いても良い。また、歪みゲージ式加速度センサを用いても良い。さらに、加速度センサではなく、変位センサ、速度センサを圧電シート34として用いても良い。変位センサには、圧力センサが含まれ、圧力センサとしては、前述の実施例の感圧素子42や、ダイヤフラムに形成した歪みゲージが圧力によって変位して抵抗値が変化することを利用する薄膜式圧力センサなどがある。
【0072】
また、前述の実施例では、感圧素子42は複数個設けられていたが、一つのみであってもよい。
【0073】
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であって、脈波伝播速度測定機能を備えた携帯電話機を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯電話機に備えられた生体信号センサユニットの正面図である。
【図3】図1の携帯電話機に備えられた生体信号センサユニットの底面図である。
【図4】図1の携帯電話機に備えられた酸素飽和度測定用のプローブの斜視図である。
【図5】図1の携帯電話機により脈波伝播速度PWVなどの生体情報を測定している状態を示す図である。
【図6】図1の携帯電話機の内部の回路構成を概略的に示す図である。
【図7】図6の電子制御装置の生体情報を測定するための制御機能の要部を示す機能ブロック線図である。
【図8】図7に示した電子制御装置の制御機能のうち、生体情報伝送手段を除く機能をフローチャートにして示す図である。
【符号の説明】
10:携帯電話機(生体信号測定装置、脈波伝播速度測定装置)
34:圧電シート(振動センサ)
36:第1電極
38:第1押圧面
40:半導体感圧素子(圧力検出素子)
42:第2押圧面
44:第2電極
46:プローブ(酸素飽和度測定用センサ、末梢脈波センサ)
58:橈骨(手首の骨)
60:手首
78:発光素子
80:受光素子
100:心音抽出手段
108:中枢側脈波伝播速度算出手段(中枢側脈波伝播速度情報算出手段)
110:末梢側脈波伝播速度算出手段(末梢側脈波伝播速度情報算出手段)
112:酸素飽和度決定手段
114:駆出時間算出手段
Claims (5)
- 手首に向かって押圧させられる押圧面を備えた生体信号測定装置と、
該押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、
該押圧面に設けられ、表皮と接触させられる第1電極と、
前記生体信号測定装置において該押圧面とは異なる面に設けられ、前記手首とは反対側の手に接触させられるための第2電極と、
前記手首よりも末梢側の表皮に装着されて、末梢脈波を検出する末梢脈波センサと、
前記第1電極と前記第2電極との電位差が表す心電波形において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、心臓から手首までの動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である中枢側脈波伝播速度情報を算出する中枢側脈波伝播速度情報算出手段と、
前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間と、前記末梢脈波センサにより検出された末梢脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、手首よりも末梢側の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である末梢側脈波伝播速度情報を算出する末梢側脈波伝播速度情報算出手段と
を含むことを特徴とする脈波伝播速度情報測定装置。 - 手首に向かって押圧させられる押圧面を備えた生体信号測定装置と、
該押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、
該押圧面に設けられ、前記手首の骨に向かって押圧させられる振動センサと、
該振動センサから出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、
前記手首よりも末梢側の表皮に装着されて、末梢脈波を検出する末梢脈波センサと、
前記心音抽出手段により抽出された心音において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、心臓から手首までの動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である中枢側脈波伝播速度情報を算出する中枢側脈波伝播速度情報算出手段と、
前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間と、前記末梢脈波センサにより検出された末梢脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、手首よりも末梢側の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である末梢側脈波伝播速度情報を算出する末梢側脈波伝播速度情報算出手段と
を含むことを特徴とする脈波伝播速度情報測定装置。 - 手首に向かって押圧させられる押圧面を備えた生体信号測定装置と、
該押圧面に設けられ、表皮上から橈骨動脈に向かって押圧させられて橈骨動脈波を検出する圧力検出素子と、
該圧力検出素子から出力される信号から心音を抽出する心音抽出手段と、
前記手首よりも末梢側の表皮に装着されて、末梢脈波を検出する末梢脈波センサと、
前記心音抽出手段により抽出された心音において所定部位が発生した時間と、前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、心臓から手首までの動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である中枢側脈波伝播速度情報を算出する中枢側脈波伝播速度情報算出手段と、
前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波において所定部位が発生した時間と、前記末梢脈波センサにより検出された末梢脈波において所定部位が発生した時間との時間差に基づいて、手首よりも末梢側の動脈内を脈波が伝播する速度に関連した情報である末梢側脈波伝播速度情報を算出する末梢側脈波伝播速度情報算出手段と
を含むことを特徴とする脈波伝播速度情報測定装置。 - 前記末梢脈波センサは、酸素飽和度によってヘモグロビンの吸光係数が変化する第1波長の照射光および該第1波長よりも酸素飽和度によるヘモグロビンの吸光係数の変化が少ない第2波長の照射光を生体組織へ向かって照射する発光素子と、該第1波長の二次光および該第2波長の二次光をそれぞれ検出してそれら第1波長の二次光および第2波長の二次光をそれぞれ表す第1光電脈波信号および第2光電脈波信号を出力する受光素子とを備えた酸素飽和度測定用センサであり、
該第1光電脈波信号の強度と該第2光電脈波信号の強度に基づいて、予め定められた関係から酸素飽和度を算出する酸素飽和度算出手段をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の脈波伝播速度情報測定装置。 - 前記圧力検出素子により検出された橈骨動脈波の立ち上がり点とノッチとの時間差から駆出時間を算出する駆出時間算出手段をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の脈波伝播速度情報測定装置。
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