JP2004319222A - 大気圧プラズマ処理装置 - Google Patents

大気圧プラズマ処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】大気圧プラズマによる表面処理等を均一に行なうことができる大気圧プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】大気圧プラズマ用の第1チャンバー内および第2チャンバー内に、複数の丸棒状の電極41,61を平行に並べて略平面状に形成した電極群を2個対設し、この対設した電極群の間に大気圧プラズマ処理用のフィルムを配置するようになっており、隣り合う丸棒状の電極41,61と電極41,61の間に隙間を設け、その隙間に対応する電極群の後方に、ガスの噴出口42,62が多数形成されている。そして、各噴出口42,62から上記隙間を通して電極群の間にガスを噴出するようになっている。
【選択図】図7

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理体を大気圧プラズマにより表面処理や滅菌処理する大気圧プラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、大気圧プラズマ処理装置を用いて、被処理体を表面処理等する場合は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、チャンバー内に設けられた対設する電極の間に上記被処理体を配置する。ついで、チャンバー内を大気圧プラズマに用いるガスの雰囲気にする。そして、電極の間に電圧を印加して大気圧プラズマを発生させ、上記被処理体を表面処理等する。その後、その処理済みの被処理体をチャンバーから取り出す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術では、チャンバー内へのガス供給口が、電極に妨げられないように、チャンバー内の端部等に形成されている。このため、チャンバー内のガスの雰囲気が均一になり難く、大気圧プラズマによる表面処理等も不均一になる傾向にあった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、大気圧プラズマによる表面処理等を均一に行なうことができる大気圧プラズマ処理装置の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の大気圧プラズマ処理装置は、大気圧プラズマ用のチャンバー内に、複数の丸棒状の電極を平行に並べて略平面状に形成した電極群を2個対設し、この対設した電極群の間に大気圧プラズマ処理用の被処理体を配置する大気圧プラズマ処理装置であって、隣り合う丸棒状の電極と電極の間に隙間を設け、その隙間から対設する電極群の間に大気圧プラズマに用いるガスを噴出するようになっているという構成をとる。
【0006】
本発明者らは、大気圧プラズマ処理装置において、大気圧プラズマによる表面処理等を均一に行なうことができるようにすべく、鋭意研究を重ねた。その研究の結果、電極の形状を丸棒状とし、その丸棒状の電極を複数用いて平行に並べて略平面状に形成した電極群を2個対設し、隣り合う丸棒状の電極と電極の間に隙間を設け、その隙間から対設する電極群の間に大気圧プラズマに用いるガスを噴出させ、対設した電極群の間に大気圧プラズマ処理用の被処理体を配置すると、大気圧プラズマによる表面処理等を均一に行なうことができることを見出した。さらに、上記表面処理等では、効率もよく、大気圧プラズマに用いるガスの量を節約することもできることも見出した。このようにして、本発明者らは、本発明に到達した。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0008】
図1は、本発明の大気圧プラズマ処理装置の一実施の形態を示している。この実施の形態において、大気圧プラズマ処理装置は、ロール状のフィルム巻装体10からフィルム10aを帯状に繰り出して走行させながら連続して大気圧プラズマにより表面処理や滅菌処理する装置であり、フレームFに、フィルム10aが走行する順に、フィルム繰り出し部1,第1ガス遮断室2,第1搬送室3,第1チャンバー4,第2ガス遮断室5,第2チャンバー6,第2搬送室7,第3ガス遮断室8,およびフィルム巻き取り部9が設けられている。また、フレームFの略中央高さ位置には、一対のガイドレールRが図示の左右に長く設けられており、第1ガス遮断室2,第1チャンバー4,第2チャンバー6,および第3ガス遮断室8は、そのガイドレールRに乗って図示の左右に移動可能となっている。そして、それぞれの移動は、それぞれの下部の上記ガイドレールRに対応する部分に、車輪(図示せず)が設けられて手動で走行可能となっていたり、滑り部材(図示せず)が設けられて手動で滑動可能となっていたりしている。さらに、フレームFの上部の手前側と奥側には、第1搬送室3および第2搬送室7を貫通するガイド棒Bが上下に長く設けられているとともに、上記第1搬送室3および第2搬送室7を上下動させるエアシリンダ(図示せず)等が設けられており、そのエアシリンダ等の作動により上記第1搬送室3および第2搬送室7がガイド棒Bに沿って上下に移動可能となっている。または、上記ガイド棒Bに雄ねじを螺刻し、そのガイド棒Bに対応する第1搬送室3および第2搬送室7の部分に雌ねじを螺刻し、上記ガイド棒Bを回転させることにより、上記第1搬送室3および第2搬送室7がガイド棒Bに沿って上下に移動可能となるようにしてもよい。さらに、フレームFの下部には、空気圧リフトや油圧リフト等のリフト機構Lが設けられており、第2ガス遮断室5は、そのリフト機構Lにより上下に移動可能となっている。そして、上記第1搬送室3の上下移動により、第1搬送室3と第1ガス遮断室2とが接離自在となっているとともに、第1搬送室3と第1チャンバー4とが接離自在となっている。同様に、第2搬送室7の上下移動により、第2搬送室7と第2チャンバー6とが接離自在となっているとともに、第2搬送室7と第3ガス遮断室8とが接離自在となっている。さらに、第2ガス遮断室5の上下移動により、第2ガス遮断室5と第1チャンバー4とが接離自在となっているとともに、第2ガス遮断室5と第2チャンバー6とが接離自在となっている。これら接離自在となっているそれぞれの両者が接している状態では、その両者は、接している部分が外部の空気と気密状態にあり、内部が連通するように接続されている。
【0009】
より詳しく説明すると、上記フィルム繰り出し部1は、ロール状のフィルム巻装体10の芯となっている円筒状の芯体101を軸支する軸支体11と、そのフィルム巻装体10を回転駆動させるモーター等の駆動源12とを備えている。
【0010】
上記第1ガス遮断室2は、図1および図2に示すように、略密閉型の略箱状体であり、その底部には、フィルム巻装体10から繰り出されたフィルム10aを導入する入口25が形成されており、その天井部には、その導入されたフィルム10aを第1搬送室3に排出し第1搬送室3を介して第1チャンバー4の導入口45(図5参照)に連通する出口26が形成されている。そして、第1ガス遮断室2の内部では、平行に対設される左右2本一組の自由回転可能な遮断ローラ21が、上記入口25側と出口26側とにそれぞれ一組ずつ設けられ、これら2組の間に、1本の自由回転可能なガイドローラ22が設けられている。そして、各遮断ローラ21およびガイドローラ22は、第1ガス遮断室2の手前側の壁面から奥側の壁面に延びている。また、第1ガス遮断室2の内周部では、図示の左右の各壁部から各遮断ローラ21に向かってそれぞれ1枚以上の遮断板が各遮断ローラ21に沿って突設されており、各遮断板の先端と各遮断ローラ21の外周面との隙間が0.2mm程度に設定されている。その隙間は、上記遮断板の突出量を調節することにより、適宜変えることができるようになっている。さらに、第1ガス遮断室2は、一組の遮断ローラ21の間隔を開け、フィルム10aの装着や第1ガス遮断室2の内部のメンテナンス等をし易くするため、上記ガイドレールRに沿って、図示の左右に手動で分割されるようになっている。そして、第1ガス遮断室2は、分割されていない状態では、分割面が気密に当接している。なお、図において、23は手動分割するための把手である。そして、上記入口25から導入されたフィルム10aは、各組の2本の遮断ローラ21の間を各遮断ローラ21と接した状態で走行するとともに、ガイドローラ22の外周面に接した状態で走行して、上記出口26に導かれるようになっており、そのフィルム10aの走行により、各遮断ローラ21およびガイドローラ22が連れ回り、フィルム10aに帯同する外部の空気が殆ど遮断されるようになっている。すなわち、各遮断ローラ21の外周面およびガイドローラ22の外周面は、フィルム10aに接し、それ以外の第1ガス遮断室2の内壁面や上記遮断板等には接しないようになっている。
【0011】
上記第1搬送室3は、図1および図3に示すように、略密閉型の略箱状体であり、上記第1ガス遮断室2および第1チャンバー4の上部に配置されている。そして、第1搬送室3の底部には、上記第1ガス遮断室2の出口26(図2参照)からフィルム10aを導入する入口35と、その導入されたフィルム10aを第1チャンバー4に排出する出口36とが形成されている。また、第1搬送室3の内部には、2本の自由回転可能な搬送ローラ31が平行に設けられており、各搬送ローラ31は、第1搬送室3の手前側の壁面から奥側の壁面に延びている。そして、上記入口35から導入されたフィルム10aは、2本の搬送ローラ31の外周面に接した状態で走行して、上記出口36に導かれるようになっており、そのフィルム10aの走行により、各搬送ローラ31が連れ回り、フィルム10aの走行方向が転換するようになっている。
【0012】
上記第1チャンバー4は、図1および図4に示すように、略密閉型の略箱状体であり、その天井部には、上記第1搬送室3の出口36(図3参照)からフィルム10aを導入する導入口45が形成されており、その底部には、その導入されたフィルム10aを上記第2ガス遮断室5に排出する排出口46が形成されている。また、第1チャンバー4の内部には、図示の左右に2個の電極群が対設しており、対設する各側の電極群は、複数(図では、5本)の丸棒状の電極41が隙間をあけて平行に並べられて略平面状に形成されている。丸棒状の電極41の長手方向は、第1チャンバー4の手前側の壁面から奥側の壁面に延びており、各側の電極群では、丸棒状の電極41が縦(上下)に整列している。さらに、第1チャンバー4は、対設する電極群の間隔を開け、フィルム10aの装着や第1チャンバー4の内部のメンテナンス等をし易くするため、上記ガイドレールRに沿って、図示の左右に手動で分割されるようになっている。そして、第1チャンバー4は、分割されていない状態では、分割面が気密に当接している。なお、図において、43は手動分割するための把手である。また、第1チャンバー4の左右に分割された少なくとも一方の部材は、奥側の壁面部分において、大気圧プラズマに用いるガスの供給源と接続されており(図6参照:図6において、47はその接続部分)、そのガスを対設する電極群の間に噴出できるよう、図5〜図7に示すように、上下に隣り合う丸棒状の電極41と電極41との隙間に対応する電極群の後方(図6および図7では、左方)に、ガスの噴出口42が多数形成され、それら噴出口42と上記接続部分47(図6参照)との間に、それらを連通させる流通路48(図6および図7参照)が形成されている。そして、その噴出口42から電極41間の隙間を通して電極群の間にガスを噴出することにより、第1チャンバー4内をそのガス雰囲気にするようになっている。そして、図1に示すように、上記導入口45から導入されたフィルム10aは、対設する電極群の間を通って走行して、排出口46に導かれるようになっている。
【0013】
上記第2ガス遮断室5は、図1および図8に示すように、略密閉型の略箱状体であり、上記第1チャンバー4および第2チャンバー6の下部に配置されている。そして、第2ガス遮断室5の天井部には、上記第1チャンバー4の排出口46(図4参照)からフィルム10aを導入する入口55と、その導入されたフィルム10aを第2チャンバー6に排出する出口56とが形成されている。また、第2ガス遮断室5の内部には、2本の自由回転可能な遮断ローラ51が平行に設けられ、これら2本の遮断ローラ51の間に、モーター等の駆動源53により回転駆動される駆動ローラ52が設けられている。そして、各遮断ローラ51および駆動ローラ52は、第2ガス遮断室5の手前側の壁面から奥側の壁面に延びている。また、第2ガス遮断室5の内周部では、天井部から各遮断ローラ51に向かってそれぞれ1枚以上の遮断板が各遮断ローラ51に沿って突設されており、各遮断板の先端と各遮断ローラ51の外周面との隙間が0.2mm程度に設定されている。その隙間は、上記遮断板の突出量を調節することにより、適宜変えることができるようになっている。さらに、第2ガス遮断室5の内周部では、図示の下側左右角部に、斜板が手前側の壁面から奥側の壁面に延びており、各斜板と各遮断ローラ51の外周面との隙間が狭く(1mm〜10mm程度)設定されている。さらに、第2ガス遮断室5の内周部では、天井部および底部から駆動ローラ52に向かって遮断部材が駆動ローラ52に沿って突設されており、下側の遮断部材の先端面と駆動ローラ52の外周面との隙間が0.2mm程度に設定され、上側の遮断部材の先端面と駆動ローラ52の外周面との隙間も狭く(1mm〜10mm程度)設定されている。上下各遮断部材と駆動ローラ52の外周面との各隙間も、上記遮断部材59の突出量を調節することにより、適宜変えることができるようになっている。そして、上記入口55から導入されたフィルム10aは、各遮断ローラ51と駆動ローラ52との間を各遮断ローラ51の外周面および駆動ローラ52の外周面と接した状態で走行して、出口56に導かれるようになっており、そのフィルム10aの走行により、各遮断ローラ51が連れ回り、フィルム10aに帯同するガスが殆ど遮断されるとともに、フィルム10aの走行方向が転換するようになっている。すなわち、各遮断ローラ51の外周面および駆動ローラ52の外周面は、フィルム10aに接し、それ以外の第2ガス遮断室5の内壁面や上記遮断板や斜板や遮断部材等には接しないようになっている。
【0014】
上記第2チャンバー6は、上記第1チャンバー4と同様のものである。すなわち、上記第2チャンバー6は、図1および図4に示すように、略密閉型の略箱状体であり、その底部には、上記第2ガス遮断室5の出口56(図8参照)からフィルム10aを導入する導入口65が形成されており、その天井部には、その導入されたフィルム10aを上記第2搬送室7に排出する排出口66が形成されている。また、第2チャンバー6の内部には、図示の左右に2個の電極群が対設しており、対設する各側の電極群は、複数(図では、5本)の丸棒状の電極61が隙間をあけて平行に並べられて略平面状に形成されている。丸棒状の電極61の長手方向は、第2チャンバー6の手前側の壁面から奥側の壁面に延びており、各側の電極群では、丸棒状の電極61が縦(上下)に整列している。さらに、第2チャンバー6は、対設する電極群の間隔を開け、フィルム10aの装着や第2チャンバー6の内部のメンテナンス等をし易くするため、上記ガイドレールRに沿って、図示の左右に手動で分割されるようになっている。そして、第2チャンバー6は、分割されていない状態では、分割面が気密に当接している。なお、図において、63は手動分割するための把手である。また、第2チャンバー6の左右に分割された少なくとも一方の部材は、奥側の壁面部分において、大気圧プラズマに用いるガスの供給源と接続されており(図6参照:図6において、67はその接続部分)、そのガスを対設する電極群の間に噴出できるよう、図5〜図7に示すように、上下に隣り合う丸棒状の電極61と電極61との隙間に対応する電極群の後方(図6および図7では、左方)に、ガスの噴出口62が多数形成され、それら噴出口62と上記接続部分67(図6参照)との間に、それらを連通させる流通路68(図6および図7参照)が形成されている。そして、その噴出口62から電極61間の隙間を通して電極群の間にガスを噴出することにより、第2チャンバー6内をそのガスの雰囲気にするようになっている。そして、図1に示すように、上記導入口65から導入されたフィルム10aは、対設する電極群の間を通って走行して、排出口66に導かれるようになっている。
【0015】
上記第2搬送室7は、上記第1搬送室3と同様のものである。すなわち、上記第2搬送室7は、図1および図3に示すように、略密閉型の略箱状体であり、上記第2チャンバー6および第3ガス遮断室8の上部に配置されている。そして、第2搬送室7の底部には、上記第2チャンバー6の排出口66(図4参照)からフィルム10aを導入する入口75と、その導入されたフィルム10aを第3ガス遮断室8に排出する出口76とが形成されている。また、第2搬送室7の内部には、2本の自由回転可能な搬送ローラ71が平行に設けられており、各搬送ローラ71は、第2搬送室7の手前側の壁面から奥側の壁面に延びている。そして、上記入口75から導入されたフィルム10aは、2本の搬送ローラ71の外周面に接した状態で走行して、上記出口76に導かれるようになっており、そのフィルム10aの走行により、各搬送ローラ71が連れ回り、フィルム10aの走行方向が転換するようになっている。
【0016】
上記第3ガス遮断室8は、図1に示すように、略密閉型の略箱状体であり、その天井部には、第2チャンバー6の排出口66(図4参照)から第2搬送室7を介して連通し第2搬送室7の出口76(図3参照)からフィルム10aを導入する入口が形成されており、その底部には、その導入されたフィルム10aを排出する出口が形成されている。そして、第3ガス遮断室8の内部では、上記入口側に、上記第1ガス遮断室2と同様にして、平行に対設される左右2本一組の自由回転可能な遮断ローラ81が設けられ、上記出口側に、1本の自由回転可能なガイドローラ82が設けられている。そして、各遮断ローラ81およびガイドローラ82は、第3ガス遮断室8の手前側の壁面から奥側の壁面に延びている。また、第3ガス遮断室8の内周部では、図示の左右の各壁部から各遮断ローラ81に向かってそれぞれ1枚以上の遮断板が各遮断ローラ81に沿って突設されており、各遮断板の先端と各遮断ローラ81の外周面との隙間が0.2mm程度に設定されている。その隙間は、上記遮断板の突出量を調節することにより、適宜変えることができるようになっている。さらに、第3ガス遮断室8は、一組の遮断ローラ81の間隔を開け、フィルム10aの装着や第3ガス遮断室8の内部のメンテナンス等をし易くするため、上記ガイドレールRに沿って、図示の左右に手動で分割されるようになっている。そして、第3ガス遮断室8は、分割されていない状態では、分割面が気密に当接している。なお、図において、83は手動分割するための把手である。そして、上記入口から導入されたフィルム10aは、2本の遮断ローラ81の間を各遮断ローラ81と接した状態で走行するとともに、ガイドローラ82の外周面に接した状態で走行して、上記出口に導かれるようになっており、そのフィルム10aの走行により、各遮断ローラ81が連れ回り、フィルム10aに帯同するガスが殆ど遮断されるようになっている。すなわち、各遮断ローラ81の外周面およびガイドローラ82の外周面は、フィルム10aに接し、それ以外の第3ガス遮断室8の内壁面や上記遮断板等には接しないようになっている。
【0017】
上記フィルム巻き取り部9は、フィルム10aをロール状に巻き取る際の芯となる円筒状の芯体102を軸支する軸支体91と、その芯体102を回転駆動させるモーター等の駆動源92とを備えている。
【0018】
そして、このような大気圧プラズマ処理装置を用いて、例えば、つぎのようにしてフィルム10aを表面処理等することができる。すなわち、まず、図9に示すように、フィルム繰り出し部1の軸支体11にフィルム巻装体10の芯体101を軸支するとともに、フィルム巻き取り部9の軸支体91に芯体102を軸支する。ついで、第1搬送室3および第2搬送室7を上昇させるとともに、第2ガス遮断室5を下降させることにより、接離自在の第1ガス遮断室2と第1搬送室3,第1搬送室3と第1チャンバー4等をそれぞれ分離する。つぎに、分割可能な第1ガス遮断室2,第3ガス遮断室8,第1チャンバー4,および第2チャンバー6を図示の左右に分割する。つぎに、フィルム巻装体10からフィルム10aを帯状に繰り出し、フレームFに設けられている所定のガイドローラ103にかけ、第1ガス遮断室2,第1搬送室3,第1チャンバー4,第2ガス遮断室5,第2チャンバー6,第2搬送室7,第3ガス遮断室8の順でそれぞれの内部にフィルム10aを通し、さらに、フレームFに設けられている他の所定のガイドローラ104にかけ、そのフィルム10aの先端部をフィルム巻き取り部9の芯体102の外周面に固定する。つぎに、図1に示すように、分割した第1ガス遮断室2,第3ガス遮断室8,第1チャンバー4,および第2チャンバー6をそれぞれ元の分割されていない状態にした後、分離した第1ガス遮断室2と第1搬送室3,第1搬送室3と第1チャンバー4等をそれぞれ接している状態に接続する。この状態では、第1ガス遮断室2から、第1搬送室3,第1チャンバー4,第2ガス遮断室5,第2チャンバー6,第2搬送室7を経て,第3ガス遮断室8までは、それぞれの内部空間が連通して1つの空間となっている。
【0019】
そして、フィルム繰り出し部1の駆動源12およびフィルム巻き取り部9の駆動源92ならびに第2ガス遮断室5の駆動源53を駆動させる。このとき、フィルム繰り出し部1では、フィルム巻装体10にフィルム10aを巻き取る方向(繰り出す方向とは逆の方向)に回転トルクをかけるとともに、フィルム巻き取り部9では、芯体102にフィルム10aを巻き取る方向に回転トルクをかけるが、芯体102に巻き取る回転トルクの方を大きくする。さらに、第2ガス遮断室5の駆動ローラ52の回転トルクは、フィルム巻装体10に巻き取る回転トルクよりも大きく、芯体102に巻き取る回転トルクよりも小さくする。このようにすることにより、芯体102にフィルム10aを巻き取りながら、フィルム巻装体10と芯体102の間でフィルム10aに適度な張力をかけてフィルム10aを走行させることができる。
【0020】
そして、大気圧プラズマを発生させる際には、第1チャンバー4および第2チャンバー6内に大気圧プラズマに用いるガスを供給し、第1チャンバー4および第2チャンバー6に形成された噴出口42,62から電極群の間にガスを噴出することにより、第1チャンバー4および第2チャンバー6内をそのガスの雰囲気にするとともに、対設する電極41,61に電圧を印加することにより、第1チャンバー4および第2チャンバー6内で大気圧プラズマを発生させ、フィルム10aを表面処理等する。このようにして、フィルム10aを走行させながら連続して大気圧プラズマにより表面処理等することができる。なお、この表面処理等では、フィルム10aが走行する第1ガス遮断室2から第3ガス遮断室8までの連通する1つの空間内は、略大気圧に保持されている。
【0021】
このような大気圧プラズマによる表面処理等において、上記第1チャンバー4および第2チャンバー6では、複数の丸棒状の電極41,61を平行に並べて略平面状に形成した電極群を2個対設することにより、各丸棒状の電極41,61を、従来の平板状の電極よりも小さくできる。これにより、電極41,61の取り扱い性がよくなり、対設する電極41,61間の距離の調整やメンテナンスが簡単にできるようになる。例えば、従来の平板状の電極に不具合が発生すると、その平板状の電極全体を交換する必要があるが、上記実施の形態では、丸棒状の電極41,61に不具合が発生しても、その不具合を発生している丸棒状の電極41,61だけを交換すればよく、電極群全体を交換する必要がないため、コストの低減にもなる。
【0022】
また、上記第1チャンバー4および第2チャンバー6では、上下に隣り合う丸棒状の電極41,61と電極41,61の間に隙間を設け、その隙間から対設する電極群の間に大気圧プラズマに用いるガスを噴出するようにしているため、大気圧プラズマによる表面処理等を効率よくかつ均一に行うことができるようになる。その結果、大気圧プラズマに用いるガスの量を節約することができるようになる。
【0023】
さらに、上記第1ガス遮断室2では、フィルム10aに帯同して外部の空気が入口25から入り込むが、その入口25側に設けられた2本の遮断ローラ21により、そのフィルム10aに帯同する空気が殆ど遮断される。すなわち、上記入口25から導入されたフィルム10aは、2本の遮断ローラ21が連れ回るようにその2本の遮断ローラ21の間を走行するため、その2本の遮断ローラ21が障壁となってフィルム10aに帯同する空気が殆ど遮断される。しかも、第1ガス遮断室2の内周部では、図示の左右部で、各遮断板の先端と各遮断ローラ21の外周面との隙間を0.2mm程度に設定することにより、フィルム10aに帯同する空気以外の空気も殆ど遮断されるようになっている。
【0024】
一般に、外部から最初にフィルム10aが導入される上記第1ガス遮断室2には、外部からフィルム10aに帯同して空気が入り込み易いが、その第1ガス遮断室2では、出口26側にも入口25側と同様に2本一組の遮断ローラ21および上記遮断板を設けることにより、フィルム10aに帯同する空気およびそれ以外の空気をより確実に遮断している。
【0025】
そして、それにつづく第1搬送室3では、第1チャンバー4から大気圧プラズマに用いているガスが入り込んできている状態になっている。しかも、上記第1ガス遮断室2に設けられた遮断ローラ21の作用により、外部の空気が殆ど入り込んでいない状態になっている。また、上述したように、第1チャンバー4と第2ガス遮断室5とが接している状態では、その接している部分が外部の空気と気密状態にある。これらのため、第1チャンバー4内では、ガス雰囲気が殆ど変わらず、所望する処理効果を得ることができる。
【0026】
また、それにつづく第2ガス遮断室5では、フィルム10aに帯同して第1チャンバー4から大気圧プラズマに用いているガスが入り込んできているが、上記第1ガス遮断室2における遮断ローラ21や遮断板と同様に、第2ガス遮断室5においては、遮断ローラ51や駆動ローラ52や遮断板や遮断部材により、そのフィルム10aに帯同するガスおよびそれ以外のガスが殆ど遮断されるようになっている。また、上述したように、第2ガス遮断室5と第2チャンバー6とが接している状態では、その接している部分が外部の空気と気密状態にある。また、第2チャンバー6より後の第2搬送室7には、第2チャンバー6で大気圧プラズマに用いているガスがフィルム10aに帯同して入り込んできている状態になっている。しかも、第2搬送室7より後の第3ガス遮断室8では、フィルム10aの走行方向と、外部の空気が内部に入り込む方向とが異なっているため、一組の遮断ローラ81や遮断板で充分に外部の空気を遮断することができ、外部の空気が第3ガス遮断室8および第2搬送室7を通過して第2チャンバー6内に入り込むことは殆どない。したがって、第2チャンバー6内では、ガス雰囲気が殆ど変わらず、所望する処理効果を得ることができる。
【0027】
また、上記第2ガス遮断室5には、第1チャンバー4からだけでなく、第2チャンバー6からも、大気圧プラズマに用いているガスが入り込んでくる状態にあり、しかも、上記のようにフィルム10aに帯同するガスおよびそれ以外のガスが殆ど遮断されるようになっている。このため、上記第2ガス遮断室5には、ガスが溜まる傾向にある。そこで、第2ガス遮断室5の内圧が大気圧程度になるように、そのガスをエジェクター等で外部に放出することが好ましい。また、そのガスの放出は、第2ガス遮断室5の内部空間が中央部の駆動ローラ52と遮断部材により分けられているため、第2ガス遮断室5のうち第1チャンバー4側の底部と第2チャンバー6側の底部とから行なうことがより好ましい。
【0028】
さらに、第1ガス遮断室2においては、各遮断ローラ21の外周面と遮断板の先端と隙間により、各遮断ローラ21が、その外周面と遮断板と非接触状態で回転するため、その回転抵抗が小さく、フィルム10aの走行が流暢になっている。これは、第2ガス遮断室5における遮断ローラ51,および第3ガス遮断室8における遮断ローラ81についても言えることである。
【0029】
また、第1ガス遮断室2,第3ガス遮断室8,第1チャンバー4,および第2チャンバー6が手動で分割可能になっているため、これら第1ガス遮断室2等の各内部にフィルム10aを通し易くすることができたり、各内部のメンテナンスも簡単にできたりする。
【0030】
さらに、第1ガス遮断室2と第1搬送室3,第1搬送室3と第1チャンバー4,第1チャンバー4と第2ガス遮断室5,第2ガス遮断室5と第2チャンバー6,第2チャンバー6と第2搬送室7,第2搬送室7と第3ガス遮断室8が、それぞれ接離自在となっているため、この点からも、これら第1ガス遮断室2等の各内部にフィルム10aを通し易くすることができたり、各内部のメンテナンスも簡単にできたりする。
【0031】
なお、本発明の大気圧プラズマ処理装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施の形態では、フィルム10aを表面処理等するチャンバーを2個設けたが、1個でもよいし3個以上でもよい。また、第1ガス遮断室2および第3ガス遮断室8ならびに第1チャンバー4および第2チャンバー6は、フィルム10aが縦方向(上下方向)に走行するように配置したが、横方向に走行するように配置してもよい。さらに、第1ガス遮断室2と第1チャンバー4の間に第1搬送室3を設けたが、第1搬送室3を設けることなく、第1ガス遮断室2と第1チャンバー4を直接接続するようにしてもよい。これと同様に、第2チャンバー6と第3ガス遮断室8も直接接続するようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、第1ガス遮断室2,第3ガス遮断室8,第1チャンバー4,および第2チャンバー6を分割可能としたが、分割可能としなくてもよい。さらに、第1搬送室3と第1チャンバー4,第1チャンバー4と第2ガス遮断室5,第2ガス遮断室5と第2チャンバー6,第2チャンバー6と第2搬送室7等を、それぞれ接離自在としたが、接離自在としなくてもよい。
【0033】
さらに、上記実施の形態では、第1ガス遮断室2において、遮断ローラ21の外周面と遮断板の先端との隙間を0.2mm程度に設定したが、フィルム10aに帯同するガス以外のガスも遮断できれば、他でもよく、上記隙間を0mm以上5mm以下の範囲に設定してもよい。遮断板が遮断ローラ21の回転を妨げなければ、遮断板は遮断ローラ21に接していてもよい(上記隙間=0mmでもよい)。また、フィルム10aの走行速度が遅い程、上記隙間を上記範囲内で大きくできる。同様に、第2ガス遮断室5においても、遮断ローラ51の外周面と遮断板の先端との隙間および駆動ローラ52と下側の遮断部材の先端面との隙間を0mm以上5mm以下の範囲に設定してもよく、第3ガス遮断室8においても、遮断ローラ81の外周面と遮断板の先端との隙間を0mm以上5mm以下の範囲に設定してもよい。なお、フィルム10aに帯同するガスのみを遮断する場合やフィルム10aに帯同するガス以外のガスを遮断する必要がない場合等には、上記遮断板や斜板や遮断部材を設けなくてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態において、大気圧プラズマに用いるガスとしては、大気圧プラズマが発生すれば、特に限定されるものではないが、通常、ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドン,および窒素からなる不活性ガス群から選ばれる少なくとも一つが用いられる。そして、印加する電圧も、大気圧プラズマが発生すれば、特に限定されるものではないが、通常、1kV〜10kVの範囲である。また、その電源の周波数も、大気圧プラズマが発生すれば、特に限定されるものではないが、通常、1kHz〜20kHzの範囲である。そして、第1チャンバー4および第2チャンバー6で処理する時間は、特に限定されないが、通常、それぞれ0.1秒〜10分の範囲である。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明の大気圧プラズマ処理装置によれば、大気圧プラズマ用のチャンバー内に、複数の丸棒状の電極を平行に並べて略平面状に形成した電極群を2個対設し、この対設した電極群の間に大気圧プラズマ処理用の被処理体を配置する大気圧プラズマ処理装置であって、隣り合う丸棒状の電極と電極の間に隙間を設け、その隙間から対設する電極群の間に大気圧プラズマに用いるガスを噴出するようになっているため、大気圧プラズマによる表面処理等を効率よくかつ均一に行うことができる。その結果、大気圧プラズマに用いるガスの量を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の大気圧プラズマ処理装置の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】上記大気圧プラズマ処理装置における第1ガス遮断室を示す説明図である。
【図3】上記大気圧プラズマ処理装置における第1および第2搬送室ならびにガイド棒を示す説明図である。
【図4】上記大気圧プラズマ処理装置における第1および第2チャンバーを示す説明図である。
【図5】図4に示す第1および第2チャンバーを矢視X方向から見た矢視図である。
【図6】図5に示す第1および第2チャンバーのY−Y断面図である。
【図7】図5に示す第1および第2チャンバーのZ−Z断面図である。
【図8】上記大気圧プラズマ処理装置における第2ガス遮断室を示す説明図である。
【図9】上記大気圧プラズマ処理装置の使用方法を示す説明図である。
【符号の説明】
41,61 電極
42,62 噴出口

Claims (1)

  1. 大気圧プラズマ用のチャンバー内に、複数の丸棒状の電極を平行に並べて略平面状に形成した電極群を2個対設し、この対設した電極群の間に大気圧プラズマ処理用の被処理体を配置する大気圧プラズマ処理装置であって、隣り合う丸棒状の電極と電極の間に隙間を設け、その隙間から対設する電極群の間に大気圧プラズマに用いるガスを噴出するようになっていることを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
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