JP2004317206A - 車速パルスの補正システムおよび車速パルスの補正方法 - Google Patents

車速パルスの補正システムおよび車速パルスの補正方法 Download PDF

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尚司 西田
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Abstract

【課題】車速パルスに基づいた車速などの算出値が実際の値と一致するように、車速パルスを補正する。
【解決手段】パルス検出センサ2は、車輪の回転状態に応じた車速パルスPを出力する。距離検出センサ3は、車両Cから静止した対象物Osまでの第1の距離Z1を検出するとともに、第1の距離Z1の検出位置から車両がある区間だけ走行した際の車両Cから対象物Osまでの第2の距離Z2を検出する。補正部は、第1および第2の距離Z1,Z2に基づいて算出される区間を走行した車両の第1の走行距離Ddと、この区間を車両Cが走行した際に出力される車速パルスPに基づき算出される第2の走行距離Dpとに基づいて、車速パルスPの補正値αを算出し、補正値αに基づいて、車速パルスPを補正する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車速パルスの補正システムおよび車速パルスの補正方法に係り、特に、静止した対象物までの距離を用いて車速パルスを補正する手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車速パルスを検出することにより、車速や走行距離を算出する手法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。車速や走行距離といったパラメータは、単に、スピードメータ或いはトリップメータに指示される値として機能するのみならず、エンジン制御、AT制御といった車両制御のパラメータとしても用いられる。また、例えば、特許文献3には、道路地図上に車両の現在位置を表示したり、目的地までの経路を案内したりするナビゲーション装置が開示されている。このナビゲーション装置でも、車速から得られる車両の移動距離に基づき車両位置を認識する関係上、車速パルスの用途は一層広範囲に及ぶ。これらの装置では、車速などの算出値が正確である程システムとしての信頼性が高くなるので、車速パルスに基づき算出されるこれらの値には誤差が少ないことが望ましい。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−72349号公報
【特許文献2】
特許第2999675号公報
【特許文献3】
特開2000−97713号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、テンパータイヤを装着したり、標準仕様とは異なるタイヤを装着したといったケースでは、検出される車速パルスが、本来検出されるべき車速パルスの波形とはずれて出力されるといった事態が生じる。これにより、車速パルスに基づき算出される車速などの算出値が、これらの実際の値と一致しなくなるという不都合が生じる。そのため、例えば、スピードメータに表示される車速が不正確な値を示していたり、トリップメータに表示される走行距離が不正確な値を示していたりする虞がある。また、このようなケースでは、エンジンの制御が不適切に行われる可能性や、現在の車両位置が地図上の誤った点に表示されてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば、テンパータイヤや標準使用とは異なるタイヤを使用したケースでも、車速パルスに基づいた車速などの算出値が実際の値と一致するように、車速パルスを補正することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、パルス検出センサと、距離検出センサと、補正部とを有する車速パルスの補正システムを提供する。パルス検出センサは、車輪の回転状態を検出することにより、回転状態に応じた車速パルスを出力する。距離検出センサは、車両から静止した対象物までの第1の距離を検出するとともに、第1の距離の検出位置から車両がある区間だけ走行した際の車両から対象物までの第2の距離を検出する。補正部は、第1の距離と第2の距離とに基づいて算出される区間を走行した車両の第1の走行距離と、区間を車両が走行した際に出力される車速パルスの数をカウントすることによって算出される第2の走行距離とに基づいて、車速パルスの補正値を算出し、補正値に基づいて、車速パルスを補正する。
【0007】
ここで、第1の発明において、補正値は、第1の走行距離と、第2の走行距離との比であることが好ましい。また、第1の発明において、補正部は、第1の走行距離と、第2の走行距離とが相違している判定した場合には、ドライバーに対して所定の注意喚起を促すことが望ましい。
【0008】
また、第2の発明は、車速パルスの補正方法を提供する。かかる補正方法は、車両から静止した対象物までの第1の距離を検出する第1のステップと、第1の距離の検出位置から車両がある区間だけ走行した際の車両から対象物までの第2の距離を検出する第2のステップと、第1の距離と第2の距離とに基づいて算出される区間を走行した車両の第1の走行距離と、区間を車両が走行した際に出力される車速パルスの数をカウントすることによって算出される第2の走行距離とに基づいて、車速パルスの補正値を算出する第3のステップと、補正値に基づいて、車速パルスを補正する第4のステップとを有する。
【0009】
ここで、第2の発明において、補正値は、第1の走行距離と、第2の走行距離との比であることが好ましい。また、第2の発明において、第1の走行距離と、第2の走行距離とが相違している判定した場合には、ドライバーに対して所定の注意喚起を促す第5のステップをさらに有することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、車両Cに搭載された、本実施形態にかかる車速パルスの補正システムが適用された全体構成を示したブロック図である。この補正システムは、車速パルスPを補正する補正部1と、対象物Oまでの距離を検出する距離検出センサ(以下、「距離センサ」という)3とを主体に構成されている。補正部1としては、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等で構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0011】
この補正部1には、パルス検出センサ2から出力される車速パルスPが入力される。例えば、パルス検出センサ2は、車輪の中心に取付けられた歯車の回転を磁気センサによって検出することにより、車輪の回転状態を検出する。また、車輪の回転状態の検出は、歯車の歯を予め磁化させておき、コイルによる電磁誘導を用いて歯車の回転を検出することにより、行ってもよい。そして、この歯車の回転に応じて出力される電気的なアナログ信号をパルス整形することにより、車輪の回転状態に応じた電気的な車速パルスPが出力される。なお、車輪の回転状態は、車輪の回転を直接的に検出するのみならず、例えば、トランスミッションにおける車軸またはギヤの回転を検出することにより、間接的に検出してもよい。
【0012】
補正部1は、車速パルスPの立ち上り(または立ち下り)のエッジを検出するとともに、このエッジ数をカウントすることにより、例えば、数式1に基づき走行距離(積算距離)Dを算出する。同様に、例えば、数式2に基づき車速Vを算出する。
【数1】
Dp=α(p/q)・d
【数2】
V=α((p/q)/t)・d
【0013】
数式1および数式2において、pはある経過時間tにおいてカウントされた車速パルスPのエッジ数、qは車輪が1回転した際に生じる車速パルスPのエッジ数、dは車輪が1回転した際に車両Cが移動する距離である。これらの定数q,dは、車両Cの設計・製造段階において初期的に設定される定数である。ところが、例えば、タイヤがスペアタイヤ(テンパータイヤ)に交換されているケースでは、タイヤを含む車輪の直径が設計・製造段階において規定された値からずれることがある。この場合、車輪が1回転した際に車両Cが実際に移動する距離d’が定数d(初期値)からずれるため、算出される車速V,走行距離Dの値も実際の値からからずれてしまうといった不都合が生じる。
【0014】
そこで、本実施形態では、数式1および数式2に設定された補正値αによって、車速Vなどの算出値に生じるずれを補正する。この補正値αは、数式1および数式2において、初期的に設定された定数dを、車両Cが実際に進む距離d’に一致させるような値である。補正値αは初期的には「1.0」に設定されており、必要に応じて、補正部1によってその値が随時更新される。なお、補正値αに関する詳細な算出手法については、後述する補正部1のシステム処理において説明する。
【0015】
図2は、距離センサ3の詳細な構成を示したブロック図である。この距離センサ3は、ステレオカメラを用いて、車両周囲(本実施形態では、前方)に写し出された対象物Oを認識することにより、対象物Oまでの距離を検出する。ステレオカメラは、例えば、ルームミラー近傍に取付けられて、車両前方の景色を撮像する。このステレオカメラは、一対のカメラ4,5で構成されており、それぞれのカメラ4,5には、イメージセンサ(例えば、CCDまたはCMOSセンサ等)が内蔵されている。メインカメラ4は、ステレオ画像処理を行う際に必要な基準画像(右画像)を撮像し、サブカメラ5は、比較画像(左画像)を撮像する。互いの同期が取れている状態において、カメラ4,5から出力された各アナログ画像は、A/Dコンバータ6,7により、所定の輝度階調(例えば、256階調のグレースケール)のデジタル画像に変換される。
【0016】
デジタル化された一対の画像データは、画像補正部8において、輝度の補正や画像の幾何学的な変換等が行われる。通常、一対のカメラ4,5の取付位置は、程度の差はあるものの誤差が存在するため、それに起因したずれが左右の各画像に生じている。このずれを補正するために、アフィン変換等を用いて、画像の回転や平行移動等の幾何学的な変換が行われる。
【0017】
このような画像処理を経て、メインカメラ4より基準画像データが得られ、サブカメラ5より比較画像データが得られる。これらの画像データは、各画素の輝度値(0〜255)の集合である。ここで、画像データによって規定される画像平面は、i−j座標系で表現され、画像の左下隅を原点として、水平方向をi座標軸、垂直方向をj座標軸とする。一フレーム相当のステレオ画像データは、後段のステレオ画像処理部9に出力されるとともに、画像データメモリ10に格納される。
【0018】
ステレオ画像処理部9は、基準画像データと比較画像データとに基づいて、一フレーム相当の撮像画像に関する距離データを算出する。ここで、「距離データ」とは、画像データによって規定される画像平面において小領域毎に算出された視差dの集合であり、個々の視差dは画像平面上の位置(i,j)と対応付けられている。換言すれば、距離データは、車両前方における距離の二次元的な分布である。それぞれの視差dは、基準画像の一部を構成する所定面積(例えば、4×4画素)の画素ブロック毎に1つ算出される。
【0019】
ある画素ブロックPBij(相関元)に関する視差dを算出する場合、この画素ブロックPBijの輝度特性と相関を有する領域(相関先)を比較画像において特定する。カメラ4,5から対象物までの距離は、基準画像と比較画像との間における水平方向のずれ量として現れる。したがって、比較画像において相関先を探索する場合、相関元となる画素ブロックPijのj座標と同じ水平線(エピポーラライン)上を探索すればよい。ステレオ画像処理部9は、相関元のi座標を基準に設定された所定の探索範囲内において、エピポーラライン上を一画素ずつシフトしながら、相関元と相関先の候補との間の相関性を順次評価する(ステレオマッチング)。そして、原則として、最も相関が高いと判断される相関先(相関先の候補の内のいずれか)の水平方向のずれ量を、その画素ブロックPBijの視差dとする。ステレオ画像処理部9のハードウェア構成については、特開平5−114099号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。このような処理を経て算出された距離データ、すなわち、画像上の位置(i,j)と対応付けられた視差dの集合は、距離データメモリ11に格納される。
【0020】
マイクロコンピュータ12は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等で構成されている。このマイクロコンピュータ12は、画像データメモリ10に格納された画像データ、および距離データメモリ11に格納された距離データの一方(或いは両方)を用いて、車両前方の対象物Oの認識を行う。対象物Oの認識には、補正部1から得られる車両Cの速度、或いは、ナビゲーション情報等も必要に応じて参照される。本実施形態における対象物Oとは、典型的に、立体物であり、先行車、信号機、歩道橋などがこれに該当する。
【0021】
ここで、対象物Oの認識処理について具体的に説明する。まず、対象物(特に、立体物)Oを認識する前に、画像データまたは距離データに基づき、道路形状が特定される。この処理では、道路モデルのパラメータを実際の道路形状に対応するよう補正・変更することで、道路形状が特定される。この道路モデルは、実空間の座標系において、水平方向の直線式および垂直方向の直線式により特定される。この直線式は、道路上の自車線を、設定した距離によって複数個の区間に分け、区間毎に左右の白線等を三次元の直線式で近似して折れ線状に連結することにより、算出可能である。なお、道路モデルの詳細については、本出願人によって既に出願されている特開2001−160137号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。
【0022】
道路形状が特定されると、つぎに、対象物Oが特定される。まず、距離データによって規定されるij平面が所定の間隔(例えば、水平方向に8〜20画素間隔)で分割され、格子状(縦短冊状)の複数の区分に分けられる。そして、分割されたそれぞれの区分について、立体物データが抽出される。ここで、「立体物データ」とは、距離データから周知の座標変換式に基づき算出される三次元位置データ(X,Y,Z)のうち、高さYが道路面(道路モデルの直線式)よりも上に存在するデータをいう。車両Cの位置を基準に設定された実空間の座標系(XYZ系)は、メインカメラ4の中央真下の道路面を原点として、車幅方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向(距離方向)をZ軸とする。
【0023】
各区分内において立体物データの抽出処理が完了すると、抽出された立体物データに基づき距離Zに関するヒストグラムが区分毎に作成される。このヒストグラムにおいて、度数が所定のしきい値以上で、かつ、最頻距離となる距離Zが存在すれば、その区分には対象物Oが存在すると判断する。そして、この距離Zが区分を代表する距離に特定されるとともに、距離Zに関する存在位置(X,Y)が特定される。
【0024】
つぎに、特定された距離Zが距離データの左から右にかけて順次比較され、隣接区分において距離Zが接近している区分同士がグループにまとめられる。つぎに、各グループにおいて、距離Zに関するX方向およびY方向の並びがチェックされる。このチェックでは、並び方向が大きく変化する部分でグループが分割され、この分割されたグループの一つ一つが対象物Oとなる。そして、グループに含まれる距離Zの平均値、および(左右)端部の位置(X,Y)等が、対象物Oに関するパラメータとして算出される。なお、立体物の関する詳細な検出手法は、本出願によって既に出願されている特開平10−283461号公報に開示されているので、必要ならば参照されたい。マイクロコンピュータ12は補正部1に指示される毎に上述した処理を繰り返し、この処理を経て認識された対象物Oの実空間上の位置(対象物データ)が補正部1に対して出力される。換言すれば、この対象物データは、車両Cと対象物Oとの間の距離Zを検出した距離データである。
【0025】
つぎに、本実施形態にかかるシステム処理について説明する。図3は、補正値αの算出手順を示したフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、所定の間隔で呼び出され、補正部1によって実行される。まず、ステップ1において、静止物フラグFstaが「1」であるか否かが判定される。静止物フラグFstaは、初期的には「0」に設定されており、「1」は、距離センサ3(正確には、マイクロコンピュータ12)によって認識された対象物Oの中に、停止車両、信号機または歩道橋といった静止している対象物Os(以下、「静止物」という)が存在することを意味する。
【0026】
このような判定を設ける理由は、後述する補正値αの算出精度を向上させるためである。本実施形態では、車両Cから静止物Osまでの距離Zに基づいて車両Cの走行距離Ddが算出され、この算出された走行距離Ddが補正値αを算出する際の基準値となる(以下、走行距離Ddを「基準距離Dd」という)。静止物Osを基準に基準距離Ddを算出する場合、基本的に、ある区間の始点と終点とで距離Zをそれぞれ検出し、一方の距離から他方の距離を減じることにより、その区間の基準距離Ddが算出される。そのため、移動する対象物Oを基準に基準距離Ddを算出した場合、静止物Osと同様な手法で基準距離Ddを算出したとしても、対象物Oの移動にともない、算出された値に誤差が生じる。このようなケースでは、基準距離Ddの信頼性が低いので、補正値αの算出精度が低下するという不都合を招く。そのため、静止物Osのみ用いて基準距離Ddを算出すべく、ステップ1での判定が設けられている。
【0027】
補正部1は、このような判定を行う前提として、認識された対象物Oの相対速度を算出している。具体的には、現在取得した立体物データに含まれる対象物Oの中から対象物Oが任意に選択され、所定時間前に取得した立体物データの中から、選択された対象物Oと同一の対象物が特定される。異なる時間で認識された対象物Oが同一であるか否かの判断は、例えば、対象物OのX方向への移動量(更にはY方向への移動量)が最も小さい対象物同士を同一の対象物Oと判定するといった如くである。そして、特定された同一の対象物Oについて、現在の位置と、所定時間前の位置とに基づき、相対速度(Z方向の相対速度VzおよびX方向の相対速度Vx)が算出される。そして、対象物Oに対する相対速度(特に、z方向の相対的な速度)が、車速Vと一致した対象物Oが存在すると、静止物フラグFstaが初期値「0」から「1」にセットされ、その対象物Oが静止物Osとして特定される。
【0028】
そのため、静止物Osが存在しない、すなわち、静止物フラグFstaが「0」にセットされている限り、ステップ1の否定判定に従い、後段のステップ2以降の処理をスキップすることになる。一方、静止物Osが存在し、静止物フラグFstaが「0」から「1」に変更されると、ステップ1の肯定判定に従い、続くステップ2に進む。
【0029】
ステップ2において、距離検出フラグFdetが「1」であるか否かが判定される。この距離検出フラグFdetは、同一の静止物Osを2回以上検出したか否かを判別するフラグであり、初期的には「0」に設定されている。そのため、ステップ1の判定結果が否定から肯定に切り替わった直後、すなわち、静止物Oを1回目に検出した場合には、このステップ2の否定判定に従い、ステップ3に進む。一方、同一の静止物Oが2回以上に検出されている場合には、ステップ3の肯定判定に従いステップ6に進む。
【0030】
ステップ3において、対象物データに基づき、静止物Osまでの距離Z1(以下、「第1の距離」という)が特定される。この第1の距離Z1は、図4に示すように、距離センサ3によって定義される座標系のZ軸、すなわち、車長方向を基準とした静止物Osまでの距離を示している。そして、ステップ3に続くステップ4において、車速パルスPのカウントが開始される。この車速パルスPのカウントは、静止物Osまでの距離(第1の距離Z1)の検出位置から開始されることになる。そして、ステップ5において、距離検出フラグFdetが「1」にセットされ、本ルーチンを抜ける。よって、次回のサイクルでは、ステップ2の判定結果が否定から肯定に変わるため、ステップ6以降の処理が実行される。
【0031】
ステップ6では、距離センサ3から取得した対象物データに基づき、第1の距離Z1が特定されている静止物Osの距離Z2(以下、「第2の距離」という)が特定される。ステップ2における距離検出フラグFdetの判定が行われる関係上、第1の距離Z1の特定処理と、第2の距離Z2の特定処理とが同一サイクルにおいて実行されることはない。具体的には、第2の距離Z2の特定処理は、ステップ2の判定結果が否定から肯定に変わる場合、すなわち、第1の距離Z1の特定処理よりも後に実行されることになる。そのため、第2の距離Z2は、図4に示す、先に特定されている第1の距離Z1の検出位置から車両Cがある区間だけ走行した際の車両Cから静止物Osまでの距離となる。この第1の距離から第2の距離Z2を減じた値(Z1−Z2)は、基本的に、距離検出の開始位置から終了位置までに車両Cが走行した区間の走行距離、すなわち、基準距離Ddに相当する。
【0032】
ステップ7において、車速パルスPのカウントが終了される。静止物Osに対する第1の距離Z1の検出位置から開始された車速パルスPのカウントは、第2の距離Z2の検出位置に到達することにより、終了する。そのため、車速パルスPをカウントしたカウント値pには、上述の基準距離Ddを車両Cが走行した際に出力される車速パルスPの数がカウントされていることになる。
【0033】
ステップ8において、このカウント値pに基づき、上記の数式1に基づき、車速パルスPに基づく走行距離(以下、「パルス距離」という)Dpが算出される。この際、数式1における補正値αは、基本的に初期値(「1」)が用いられるが、本ルーチンに示す処理が既に実行されているケースでは、前回に算出された補正値αが用いられる。
【0034】
ステップ9において、基準距離Ddとパルス距離Dpとを比較することにより、車速パルスPの補正値を算出する必要があるか否かが判定される。具体的には、基準距離Ddとパルス距離Dpとの比に基づき(Dd/Dp)、この値が第1の判定値Dth1以上、かつ、第2の判定値Dth2以下であるか否かが判定される。この第1判定値Dthは、補正の必要がないと認められる程度にパルス距離Dpが基準距離Ddと近似している場合の、基準距離Ddとパルス距離Dpとの比(Dd/Dp)の最小値(第1の判定値Dth1)および最大値(第2の判定値Dth2)であり、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。そのため、このステップ9において肯定判定された場合、すなわち、基準距離Ddとパルス距離Dpとの比が判定値Dth1以上、かつ、第2の判定値Dth2以下の場合(Dth1 ≦ Dd/Dp ≦Dth2)、ステップ10をスキップして、ステップ11に進む。一方、このステップ9において否定判定された場合、続くステップ10に進む。
【0035】
そして、ステップ10において、基準距離Ddとパルス距離Dpとの比(Dd/Dp)が補正値αとして算出される。そして、補正値αの現在値が、このステップ10で算出された値に更新される。そして、ステップ11において、各フラグFsta,Fdetが「0」にリセットされ、本ルーチンを抜ける。
【0036】
このように、本実施形態によれば、距離センサ3の距離検出に基づき、所定の走行区間の距離の基準値(基準距離Dd)を算出する。補正部1は、この基準距離Ddと、この基準距離Ddを走行した際に出力される車速パルスPにより算出される走行距離(パルス距離Dp)とに基づき、補正値αを算出する。この補正値αは、車速パルスPをベースとした走行距離Dpと、基準距離Ddとの比であり、パルス距離Dpを基準距離Ddに一致させる値である(Dd=Dp×α)。換言すれば、この補正値αは、数式1および数式2に示した定数d(初期値)を、車輪が1回転した際に車両Cが実際に移動する距離d’に一致させるような値となる。そのため、算出される車速V、走行距離Dに含まれるテンパータイヤの装着等に起因した誤差が補正されるので、車速・走行距離の検出精度の向上を図ることができる。また、距離センサ3から得られた情報に基づき補正値αを算出することで、リアルタイム処理的に車速・走行距離の補正を行うことができる。
【0037】
また、補正された車速V,走行距離Dは、その値としての信頼性が高いため、種々な用途に適用することができる。これらの算出された値は、スピードメータまたはトリップメータといったパラメータ表示部13、ナビゲーション装置14、エンジン制御といった各種制御機構(図示せず)に対して出力される。ナビゲーション装置17は、現在位置を検出するに際しては、ジャイロスコープなどから得られる車両Cの方位変化量および車速Vから得られる車両Cの移動距離に基づいて、推測航法演算を行う。そのため、補正された車速Vを用いることで、位置の認識精度の向上を図ることができ、表示装置15を介して正確な現在位置をドライバーに表示することができる。さらに、補正された値を用いることにより、エンジン制御といった各種制御の精度を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、補正部1が、パラメータ表示部13、ナビゲーション装置14またはエンジン制御といった各種制御機構の車速・走行距離検出の機能を果たしているが、本発明はかかる形態に限定されるものでない。例えば、これらの装置に対して算出された補正値αを設定し、それぞれの装置が車速パルスPを自ら読み込み、補正値αを考慮したうえで車速・走行距離を検出してもよい。
【0039】
また、補正部1は、パルス距離Dpと、基準距離Ddとが相違していると判定した場合には(例えば、上述したステップ9で肯定判定された場合)、ドライバーに対して、所定の注意喚起を促してもよい。このような注意喚起は、スピーカー16を用いて警報を鳴らしたり、パラメータ表示部13または表示装置15に警告ランプを点灯または表示させたりするといった手法が挙げられる。このような注意喚起を行うことにより、ドライバーに車速パルスの異常を認識させることができる。
【0040】
また、距離検出の対象となる静止物Osは、停止車両、信号機、歩道橋といった他にも、道路標識といった道路およびその近傍に存在する静止した立体物のすべてを検出対象とすることができる。また、ステレオカメラを用いた距離検出では、立体物以外にも、道路上に描かれた模様を用いてもよい。この模様は、例えば、横断歩道などが挙げられる。横断歩道は、画像のj座標上に複数のエッジが存在するという知得に基づき、輝度エッジを検出することにより、特定可能である。
【0041】
また、距離センサ3を用いて算出される基準距離Ddは直線的な距離であるため、車両がカーブを走行している際には、この基準距離が本来の走行距離と一致しないおそれがある。そのため、特定された道路モデルを参照し、走行車線が直線の道路上を走行している場合に限り、上述した処理を行ってもよい。また、基準距離Dpをより細かな連続した周期で算出し、これらの値を加算することにより、カーブなどの道路形状による誤差の発生を抑制した上で、基準距離Dpを算出すれば、この問題を解決することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、補正値αを算出するために、距離センサ3としてステレオカメラを用いたが本発明がこれに限定されるものではない。距離センサ3は、ステレオカメラ以外にも、レーザレーダ、ミリ波レーダといった距離検出機能を有する各種のセンサを使用することができる。ただし、図5に示すように、レーザレーダやミリ波レーダは、その特性として静止物Osまでの直線距離を検出する関係上、対象物までの第1および第2の距離L1,L2を検出した場合には、下式に基づいて、基準距離Ddを算出することが好ましい。
【数3】
Dd=L1cosθ1−L2cosθ2
【0043】
ここで、θ1は、車長方向(Z方向)を基準とした第1の距離L1の検出位置における静止物Osの向きであり、θ2は、車長方向(Z方向)を基準とした第2の距離L2の検出位置における静止物Osの向きである。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、静止した対象物の距離を検出することにより、ある区間の走行距離が算出される。また、この走行区間を走行した際に出力される車速パルスに基づき車速パルスをベースとした走行距離が算出される。そして、これらの走行距離に基づき、補正パラメータが算出される。この補正パラメータにより、車速パルスをベースに算出される走行距離を、実際の走行距離と一致するように補正することができる。そのため、この補正パラメータを用いることにより、車速や走行距離の検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態にかかる車速パルスの補正システムの全体構成を示したブロック図
【図2】距離センサの詳細な構成を示したブロック図
【図3】補正値の算出手順を示したフローチャート
【図4】基準距離を示した説明図
【図5】基準距離を示した別な説明図
【符号の説明】
1 補正部
2 パルス検出センサ
3 距離センサ
4 メインカメラ
5 サブカメラ
6 A/Dコンバータ
7 A/Dコンバータ
8 画像補正部
9 ステレオ画像処理部
10 画像データメモリ
11 距離データメモリ
12 マイクロコンピュータ
13 パラメータ表示部
14 ナビゲーション装置
15 表示装置
16 スピーカー

Claims (6)

  1. 車速パルスの補正システムにおいて、
    車輪の回転状態を検出することにより、前記回転状態に応じた車速パルスを出力するパルス検出センサと、
    車両から静止した対象物までの第1の距離を検出するとともに、前記第1の距離の検出位置から前記車両がある区間だけ走行した際の当該車両から前記対象物までの第2の距離を検出する距離検出センサと、
    前記第1の距離と前記第2の距離とに基づいて算出される前記区間を走行した前記車両の第1の走行距離と、前記区間を前記車両が走行した際に出力される前記車速パルスの数をカウントすることによって算出される第2の走行距離とに基づいて、前記車速パルスの補正値を算出し、当該補正値に基づいて、前記車速パルスを補正する補正部と
    を有することを特徴とする車速パルスの補正システム。
  2. 前記補正値は、前記第1の走行距離と、前記第2の走行距離との比であることを特徴とする請求項1に記載された車速パルスの補正システム。
  3. 前記補正部は、前記第1の走行距離と、前記第2の走行距離とが相違している判定した場合には、ドライバーに対して所定の注意喚起を促すことを特徴とする請求項1または2に記載された車速パルスの補正システム。
  4. 車速パルスの補正方法において、
    車両から静止した対象物までの第1の距離を検出する第1のステップと、
    前記第1の距離の検出位置から前記車両がある区間だけ走行した際の当該車両から前記対象物までの第2の距離を検出する第2のステップと、
    前記第1の距離と前記第2の距離とに基づいて算出される前記区間を走行した前記車両の第1の走行距離と、前記区間を車両が走行した際に出力される前記車速パルスの数をカウントすることによって算出される第2の走行距離とに基づいて、前記車速パルスの補正値を算出する第3のステップと、
    前記補正値に基づいて、前記車速パルスを補正する第4のステップと
    を有することを特徴とする車速パルスの補正方法。
  5. 前記補正値は、前記第1の走行距離と、前記第2の走行距離との比であることを特徴とする請求項4に記載された車速パルスの補正方法。
  6. 前記第1の走行距離と、前記第2の走行距離とが相違している判定した場合には、ドライバーに対して所定の注意喚起を促す第5のステップをさらに有することを特徴とする請求項4または5に記載された車速パルスの補正方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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