JP2004315786A - 導電性ポリマー含有薄膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ナノメートルサイズで構造が制御された導電性ポリマーを含有する薄膜材料を調製する技術を提供する。
【解決手段】 ナノメートルサイズの特定の構造を呈するアニオン性の分子会合体またはマクロ分子から成るテンプレート剤(例えば、ポルフィリン化合物の会合体、カーボンナノチューブまたは脂質)の存在下に酸化重合性モノマーを電解重合する。導電性ポリマーがテンプレート剤に結合され該テンプレート剤に由来する構造(例えば、ロッド状の網目構造、ファイバー状の網目構造または螺旋状の構造)を有する複合体から成る薄膜が得られる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ナノメートルサイズの特定の構造を呈するアニオン性の分子会合体またはマクロ分子から成るテンプレート剤(例えば、ポルフィリン化合物の会合体、カーボンナノチューブまたは脂質)の存在下に酸化重合性モノマーを電解重合する。導電性ポリマーがテンプレート剤に結合され該テンプレート剤に由来する構造(例えば、ロッド状の網目構造、ファイバー状の網目構造または螺旋状の構造)を有する複合体から成る薄膜が得られる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ナノテクノロジーの分野に属し、特に鋳型法を利用してナノメートルサイズで構造が制御された導電性ポリマーを含有する薄膜材料を製造する技術に関する。
ナノテクノロジーは、ナノメートル(nm)のスケールで物質を操作・制御してこれまでにない特性や機能を発現させる技術であり、化学の分野においても新しい機能性材料の開発に資するものとして期待されている。ナノテクノロジーにおいて新規な機能性材料を得るためには、ナノメートルサイズで物質(分子)の構造を制御することのできる成形手段が必須であり、その強力な1例が鋳型法である。
鋳型法とは、鋳型となる基質(テンプレート剤)に、これと相互作用(一般的には静電相互作用)する目的の物質を結合させた状態で重合等を行なうことにより、当該物質をテンプレート剤の構造に応じた空間配置で固定化するものであり、界面活性剤を鋳型とするメソポーラスシリカの合成がよく知られている。
鋳型法は、本来、有機物と有機物とが高い選択性で分子認識することに基づき導き出されたものであるが、現在、応用が試みられているのは、専ら、有機物をテンプレート剤とする無機構造体の作製である。これは、有機物、特に有機ポリマー(有機高分子)は、一般に、やわらかく、鋳型構造を保持するだけの剛直さに欠けるためと考えられる。
しかし、有用な有機ポリマーをナノメートルサイズで構造が制御された形態で調製することができれば、その有用性を高めた新しい機能性材料が得られるものと期待される。特に、導電性ポリマーは、電子を授受する性質に基づき各種の分野における応用が試みられているが、その構造を制御して、例えば、表面積が増大した規則的な構造体を得ることができれば、その特性を著しく向上させることができるものと考えられるが、その具体的な手法は見当らない。
本発明者は、研究を重ねた結果、電解重合を利用することにより、所謂超分子構造体を鋳型にしその構造を反映した有機ポリマー(導電性ポリマー)を含有する薄膜が得られることを発見し、本発明を導き出した。
かくして、本発明は、ナノメートルサイズの特定の構造を呈する分子会合体またはマクロ分子から成るテンプレート剤に導電性ポリマーが結合された複合体であって前記テンプレート剤に由来する構造を有する複合体の薄膜が電極上に形成されていることを特徴とする導電性ポリマー含有薄膜を提供するものである。本発明の導電性ポリマー含有薄膜は必要に応じて電極から剥離することもできる。
本発明に従えば、さらに、そのような導電性ポリマー含有薄膜を製造する方法であって、電解重合溶液に溶解または分散してナノメートルサイズの特定の構造を呈するアニオン性の分子会合体またはマクロ分子から成るテンプレート剤の存在下に、酸化重合性モノマーを電解重合する工程を含むことを特徴とする方法も提供される。
本発明は、超分子(分子会合体またはマクロ分子)を鋳型としてそれに導電性ポリマーが結合されたユニークな構造の導電性ポリマー含有薄膜を初めて実現化したものである。
本発明において用いられるテンプレート剤は、電解重合に際して電解重合溶液に溶解または分散してアニオン性を示すだけでなく、鋳型構造と成るナノメートルサイズの特定の構造、例えば、ロッド状(棒状)、ファイバー状(繊維状)、または螺旋状などの構造を呈するものであり、この点、従来より電解重合において単にイオン電導度を高めるために添加されるアニオン性ドーパントとは異なるものである。
本発明におけるテンプレート剤は、以上のような特性を有する分子会合体またはマクロ分子から成る。ここで、マクロ分子とは、分子量が一般に約500以上の高分子(モノマーが重合したポリマー)および単一分子で高分子に相当するような分子量を有する巨大分子の双方を指称するものとする。
本発明で用いられる分子会合体から成るテンプレート剤として好適な例は、ポルフィリン化合物である。よく知られているように、ポルフィリン類は、ポルフィリン骨格が少しずつずれて積み重なる会合体(J会合体)、ポルフィリン骨格が垂直方向に積み重なる会合体(H会合体)、あるいはポルフィリン骨格が横方向に並ぶ会合体を形成する。
本発明において用いられるのに好適なマクロ分子から成るテンプレート剤の例は、カーボンナノチューブ誘導体である。カーボンナノチューブは、よく知られているように、グラファイトのシート(グラフェンシート)が円筒状に丸まったものであり、一般に、単層カーボンナノチューブは直径1〜2ナノメートル、多層カーボンナノチューブは直径数十ナノメートルのファイバー状を呈する。本発明で用いられるマクロ分子から成るテンプレート剤として好適な他の例は、螺旋状の構造を呈する脂質である。
本発明において用いられるテンプレート剤は、以上に例示したものに限られず、鋳型となり得るナノメートルサイズの明確な構造を呈する各種の分子会合体やマクロ分子が使用でき、例えば、上述したものの他、核酸類(DNA,RNA)、糖類、タンパク質もしくはペプチド類、抗体類なども本発明で使用されるテンプレート剤として挙げられる。原料となる物質は、必要に応じて、電解重合溶液に溶解または分散してアニオン性を示すように適当な処理を施す。例えば、カーボンナノチューブは、種々の溶媒に不溶であるので、SDS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)などで処理した複合体(カーボンナノチューブ誘導体)とすることにより、本発明におけるテンプレート剤として供することができる。
本発明に従い電解重合により導電性ポリマーを得るための酸化重合性モノマーとは、電解重合溶液として調製されたときにカチオンと成るか、電解重合時カチオンラジカルを発生するものであり、従来より酸化的電解重合によりポリマーを形成するものとして知られる各種のモノマーを使用することができる。特に限定されるものではないが、本発明で用いられる酸化重合性モノマーの好ましい例としては、アニリン、チオフェンもしくはピロール、またはこれらの誘導体が挙げられる。アニリンまたはその誘導体は溶液調製時にすでにカチオンと成り、また、チオフェンやピロールまたはそれらの誘導体は重合時にカチオンラジカルを発生する。
本発明の導電性ポリマー含有薄膜を得るには、既述のテンプレート剤の存在下に、以上のような酸化重合性モノマーを電解重合する。電解重合は、当該分野でよく知られているように、電極(作用電極または作用極)として、ITO(indium tin oxide)透明電極、グラファイト、あるいは白金や金などの金属を用い、白金や炭素電極などを対極、また、銀/塩化銀電極や飽和カロメル電極などを参照極とし、適当な支持電解質(例えば、塩化リチウムLiClなど)を加えて、電位掃引電解、定電位電解または定電流電解により行なうが、後述するように特に好ましいのは電位掃引電解である。また、電極の表面を適切な置換基(例えば、白金や金などの金属電極の場合はチオール基、ITOの場合は、トリエトキシシリル基など)を持つ化合物で被覆した電極を用いて電解重合を行うことにより、電解重合後、適切な処理(例えば、チオールの場合はメルカプトエタノールに電極を浸す処理や、トリエトキシシリルの場合はフッ化水素溶液に電極を浸す処理など)を施すことにより電極から導電性ポリマー含有薄膜を剥離することができる。さらに、電極(作用電極)として櫛型電極を用いれば、得られる導電性ポリマー含有薄膜の導電性を直接測定することもできる。
かくして、本発明に従えば、上述のようにして電解重合を行なうことにより、それぞれのモノマーから生成された導電性ポリマーがテンプレート剤の表面に結合された複合体の薄膜が電極(作用電極)上に形成される。この複合体は、用いたテンプレート剤の当初の構造を反映したナノメートルサイズの特定の規則的な構造を有していることが電子顕微鏡による観察などで確認されている。
例えば、テンプレート剤としてポリフィリン化合物の会合体を用いた場合にはロッド状(棒状)の構造から成る複合体が形成され、テンプレート剤がカーボンナノチューブ誘導体である場合にはファイバー状(繊維状)の構造を有する複合体が形成され、さらに、テンプレート剤として螺旋状構造を呈する脂質を用いた場合には螺旋状の構造を有する複合体が形成される。そして、ポルフィリン化合物をテンプレート剤とするロッド状およびカーボンナノチューブ誘導体をテンプレート剤とするファイバー状の構造は、ロッドまたはファイバーが互いに絡み合った網目構造(ネットワーク)を構成しており、表面積の大きな多孔質構造である。なお、本発明における複合体に関して用いているロッドおよびファイバーという語は、いずれもナノメートルサイズの直径(一般に20〜100nm程度)を有しているが、長さが直径よりも大略20倍以下のものをロッド、それよりも長いものをファイバーと称している。
このように規則的な構造体が形成されるのは、本発明に従う電解重合においては、従来の電解重合のように電極(作用極)表面上で電解重合が起こるのでなはなく、酸化重合性モノマーがアニオン性のテンプレート剤と静電的相互作用しながらテンプレート剤の表面で重合が進行し、生成したテンプレート剤/導電性ポリマーの複合体が作用電極表面に沈積するためと理解される。特に既述のような電解方式のうち、必要な電解電位(酸化電位)が繰り返し実現される電位掃引電解方式〔所謂、サイクリックボルタンメトリー(CV)方式〕は、電極(作用電極)表面ではなく、テンプレート剤の周りで選択的に重合を起こし当該テンプレート剤の構造に応じた規則的な構造体を可及的に形成させることから好ましい。
以下に本発明の特徴をさらに具体的に示すため実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
以下に本発明の特徴をさらに具体的に示すため実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
ポルフィリン化合物をテンプレート剤とする導電性ポリマー含有薄膜(1)
テンプレート剤として下記の式(I)で表わされるテトラフェニルポルフィリンテトラスルホン酸(以下TPPSと記す)を用い、下記の式(II)で表わされるエチレンジオキシチオフェン(以下EDOTと記す)の電解重合を行ない、そのポリマーを含有する薄膜を調製した。
テンプレート剤として下記の式(I)で表わされるテトラフェニルポルフィリンテトラスルホン酸(以下TPPSと記す)を用い、下記の式(II)で表わされるエチレンジオキシチオフェン(以下EDOTと記す)の電解重合を行ない、そのポリマーを含有する薄膜を調製した。
EDOT0.5gをトリエチレングリコール(TEG)5mlに溶解させ、得られた溶液100μlを蒸留水10mlに超音波照射しながら溶解させた。このEDOTが溶解した水溶液に、TPPS1mgを加え溶解させ、さらに塩化リチウム21mgを添加し溶解させることにより電解重合溶液を調製した。したがって、各成分の濃度は、[EDOT]=7.1mM、[LiCl]=50mM、TEG:1vol%、および[TPPS]=0.11mMである。
電解重合は、作用電極としてITO透明電極、対極として白金ワイヤ、参照極としてAg/AgCl電極を用い、開放系で、掃引範囲0〜1.0V(参照極に対し)、掃引速度0.05V/秒の条件で、電位掃引電解(CV方式)により行なった。
図1に掃引回数が30回の場合のCV曲線(サイクリックボルタモグラム)を示している。CVの掃引回数が増すに従い電流値が増加していることから、EDOTのポリマー(pEDOT)を含有する薄膜が生成していることが示されている。
図2は、電解重合で得られた薄膜の紫外−可視吸収スペクトルである。500nm弱にTPPSのJ会合における吸収が確認でき、また、ソーレー体の吸収やレッドシフトも確認できる。このことから、ポルフィリンのJ会合体が薄膜中に存在することが示唆される。
図1に掃引回数が30回の場合のCV曲線(サイクリックボルタモグラム)を示している。CVの掃引回数が増すに従い電流値が増加していることから、EDOTのポリマー(pEDOT)を含有する薄膜が生成していることが示されている。
図2は、電解重合で得られた薄膜の紫外−可視吸収スペクトルである。500nm弱にTPPSのJ会合における吸収が確認でき、また、ソーレー体の吸収やレッドシフトも確認できる。このことから、ポルフィリンのJ会合体が薄膜中に存在することが示唆される。
図3は、得られた薄膜のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。電極のほぼ全域においてロッド状(棒状)構造の絡み合った網目構造が形成されていることが観察される。ロッドのサイズは、長さ:300〜500nm、直径:30〜50nm程度である。上述のスペクトルの結果などを考慮するとTPPSのJ会合体がテンプレート(鋳型)になっていることが理解される。なお、この図3を含め、以下に示す顕微鏡写真(図5、図8、図10、図12および図15)においては、各像の特徴を明示するため写真像の輪郭をなぞって描写した模式図を併せて載せている(各図の右側の図)。
本発明に従えば、電解重合の条件を変えることにより、薄膜を構成する複合体の構造(モルホロジー)を変化させることができる。例えば、上述のCV方式による電解重合において掃引回数を10回にすると少数で且つ細いナノロッドが形成され、また、60回にすると非常に太いナノロッドが形成されることが見出されている。
本発明に従えば、電解重合の条件を変えることにより、薄膜を構成する複合体の構造(モルホロジー)を変化させることができる。例えば、上述のCV方式による電解重合において掃引回数を10回にすると少数で且つ細いナノロッドが形成され、また、60回にすると非常に太いナノロッドが形成されることが見出されている。
比較例:テンプレート剤非存在下の電解重合
実施例1で観察された規則的なロッド状の網目構造がTPPSのJ会合体をテンプレート(鋳型)とすることに因ることを確認するため、TPPSを添加しないこと以外は実施例1と同じ条件で電解重合を行なった。
電解重合におけるCV変化(CV曲線)はTPPSを添加した実施例1と同様であった。また、得られた薄膜の紫外−可視吸収スペクトルを測定したところ、図4の結果が得られた。図に示されるように、還元状態において可視光領域の吸収が増加し、酸化状態において長波長領域の吸収が増大しており、この変化は、これまでのpEDOTの変化と同様でありpEDOT薄膜の形成が確認できた。また、ソーレー帯やQ帯の存在する波長にピークは確認できず、このことからも既述の図2における特徴的なピークがTPPS由来のものであると帰属できる。さらに、図5は、得られた薄膜のSEM写真である。図に示されるように、不定形の構造体しか存在せず、TPPS添加系に見られているような特徴的な規則的なロッド状の網目構造は確認できなかった。このことからもTPPSが鋳型として働いていることが理解される。
実施例1で観察された規則的なロッド状の網目構造がTPPSのJ会合体をテンプレート(鋳型)とすることに因ることを確認するため、TPPSを添加しないこと以外は実施例1と同じ条件で電解重合を行なった。
電解重合におけるCV変化(CV曲線)はTPPSを添加した実施例1と同様であった。また、得られた薄膜の紫外−可視吸収スペクトルを測定したところ、図4の結果が得られた。図に示されるように、還元状態において可視光領域の吸収が増加し、酸化状態において長波長領域の吸収が増大しており、この変化は、これまでのpEDOTの変化と同様でありpEDOT薄膜の形成が確認できた。また、ソーレー帯やQ帯の存在する波長にピークは確認できず、このことからも既述の図2における特徴的なピークがTPPS由来のものであると帰属できる。さらに、図5は、得られた薄膜のSEM写真である。図に示されるように、不定形の構造体しか存在せず、TPPS添加系に見られているような特徴的な規則的なロッド状の網目構造は確認できなかった。このことからもTPPSが鋳型として働いていることが理解される。
ポルフィリン化合物をテンプレート剤とする導電性ポリマー含有薄膜(2)
テンプレート剤としてTPPSを用い、以下のようにピロールの電解重合を行ないポリピロール(以下、pPyrrと記すことがある)含有薄膜を調製した。
蒸留後のピロール0.5gをトリエチレングリコール(TEG)5mlに溶解させ、この溶液100μlを蒸留水10mlに超音波照射しながら溶解させた。ピロールが溶解した水溶液に、TPPS1mgを加え溶解させ、さらに塩化リチウム21mgを添加し溶解させることにより、電解重合溶液とした。したがって、各成分の濃度は、[ピロール]=15mM、[LiCl]=50mM、TEG=1wt%および[TPPS]=0.11mMである。電解(CV)条件は、作用極:ITO基板、対極:白金ワイヤー、参照極:Ag/AgCl、掃引速度:0.1V/秒、Ar雰囲気下、掃引範囲:−0.2〜0.8Vとした。
図6にCV曲線を示す。掃引回数とともに電流量が増加しており、この変化はEDOT重合と同様であり、ピロールにおいてもポリピロールを含有する薄膜が形成されていることが確認された。比較のために、TPPSを添加せずピロールのみのCV重合も行なった。
テンプレート剤としてTPPSを用い、以下のようにピロールの電解重合を行ないポリピロール(以下、pPyrrと記すことがある)含有薄膜を調製した。
蒸留後のピロール0.5gをトリエチレングリコール(TEG)5mlに溶解させ、この溶液100μlを蒸留水10mlに超音波照射しながら溶解させた。ピロールが溶解した水溶液に、TPPS1mgを加え溶解させ、さらに塩化リチウム21mgを添加し溶解させることにより、電解重合溶液とした。したがって、各成分の濃度は、[ピロール]=15mM、[LiCl]=50mM、TEG=1wt%および[TPPS]=0.11mMである。電解(CV)条件は、作用極:ITO基板、対極:白金ワイヤー、参照極:Ag/AgCl、掃引速度:0.1V/秒、Ar雰囲気下、掃引範囲:−0.2〜0.8Vとした。
図6にCV曲線を示す。掃引回数とともに電流量が増加しており、この変化はEDOT重合と同様であり、ピロールにおいてもポリピロールを含有する薄膜が形成されていることが確認された。比較のために、TPPSを添加せずピロールのみのCV重合も行なった。
図7は、TPPSを使用して得られた薄膜(TPPS/pPyrr)とピロールのみのCV重合による薄膜(pPyrr)の紫外−可視吸収スペクトルである。TPPS/pPyrr薄膜においては500nmのエキサイトンの吸収とソーレー帯のレッドシフトが確認でき、このことによりTPPSがポリピロール薄膜中においてもJ会合していることが理解される。
図8は、TPPS/pPyrr薄膜のSEM写真である。実施例1の場合と同様にロッド状の網目構造が認められる。構造帯の大きさは長さ:300〜500nm、直径:50〜80nm程度であり実施例1のEDOT系と同様の大きさであった。他方、TPPSを用いないpPyrr薄膜では欠陥がないと気付かないくらい非常に滑らかな表面の薄膜が形成され、ロッド状の網目構造は見られない。これらの結果より、ピロールを用いた場合でもTPPSを鋳型とするナノロッドが形成されることが理解される。
図8は、TPPS/pPyrr薄膜のSEM写真である。実施例1の場合と同様にロッド状の網目構造が認められる。構造帯の大きさは長さ:300〜500nm、直径:50〜80nm程度であり実施例1のEDOT系と同様の大きさであった。他方、TPPSを用いないpPyrr薄膜では欠陥がないと気付かないくらい非常に滑らかな表面の薄膜が形成され、ロッド状の網目構造は見られない。これらの結果より、ピロールを用いた場合でもTPPSを鋳型とするナノロッドが形成されることが理解される。
ポルフィリン化合物をテンプレート剤とする導電性ポリマー含有薄膜(3)
テンプレート剤としてTPPSを用い、以下の条件下でアニリンの電解重合を行なった。電解重合溶液:[アニリン硫酸塩]=5mM(アニリン濃度で10mM)、[Na2SO4]=50mM、[H2SO4]=50mM、[TPPS]=0.11mM。電解(CV)条件:作用極(ITO基板)、対極(白金ワイヤー)、参照極(Ag/AgCl)、掃引速度(0.1V/秒)、Ar雰囲気下、掃引範囲(−0.2〜1.1V)。
図9にCV曲線を示す。種々の酸化に由来する複数のピークが認められ、掃引回数の増加に伴ないそれらのピークの電流値が増加しており、ポリアニリン含有薄膜が形成されていることが示された。
テンプレート剤としてTPPSを用い、以下の条件下でアニリンの電解重合を行なった。電解重合溶液:[アニリン硫酸塩]=5mM(アニリン濃度で10mM)、[Na2SO4]=50mM、[H2SO4]=50mM、[TPPS]=0.11mM。電解(CV)条件:作用極(ITO基板)、対極(白金ワイヤー)、参照極(Ag/AgCl)、掃引速度(0.1V/秒)、Ar雰囲気下、掃引範囲(−0.2〜1.1V)。
図9にCV曲線を示す。種々の酸化に由来する複数のピークが認められ、掃引回数の増加に伴ないそれらのピークの電流値が増加しており、ポリアニリン含有薄膜が形成されていることが示された。
紫外−可視吸収スペクトルを測定したところ、500nm弱に明瞭なTPPSのJ会合体に由来する吸収が見られ、アニリンは溶液中においてカチオンであるため重合前に既にTPPS会合体の近傍に組織化してTPPSの構造を硬く固めていることが示唆された。さらに、電位をかけて紫外−可視吸収スペクトルを測定したところ、電位上昇により可視光領域の吸収の増加が見られ、ポリアニリン含有薄膜の形成が確認された。
図10は、電解重合で得られた薄膜のSEM写真である。長さ100〜1000nm、直径30〜50nm程度のロッドから成る網目構造が認められる。なお、TPPSを使用しないことを除いては上述と同じ条件で電解重合(CV重合)して得られた薄膜についてSEM観察したところ、実施例2のポリピロールの場合と同様に単に滑らかな表面が得られているのみで、ロッド状の網目構造は形成されていなかった。これらの結果から、ポリアニリン含有薄膜の調製においてもTPPSがテンプレート(鋳型)となっていることが理解される。
図10は、電解重合で得られた薄膜のSEM写真である。長さ100〜1000nm、直径30〜50nm程度のロッドから成る網目構造が認められる。なお、TPPSを使用しないことを除いては上述と同じ条件で電解重合(CV重合)して得られた薄膜についてSEM観察したところ、実施例2のポリピロールの場合と同様に単に滑らかな表面が得られているのみで、ロッド状の網目構造は形成されていなかった。これらの結果から、ポリアニリン含有薄膜の調製においてもTPPSがテンプレート(鋳型)となっていることが理解される。
カーボンナノチューブをテンプレート剤とする導電性ポリマー含有薄膜
単層カーボンナノチューブ(SWCN)をテンプレート剤としてエチレンジオキシチオフェン(EDOT)の電解重合を行ない、そのポリマー(pEDOT)含有薄膜を調製した。
SWCNは溶媒に不溶であるので、以下のようにSDSで処理してSWCN−SDS複合体にして溶媒に分散できるようにした:1mgのSWCNと200mgのSDSとの混合物に蒸留水20mlを加え、視覚的に散乱光が見えなくなるまで充分に超音波照射を行ない、ストック溶液とした。
このSDS−SWCN複合体ストック溶液2mlを蒸留水10mlに希釈し、これにEDOT14mgを入れ超音波照射して溶解させる。この溶液にLiCl21mgを入れ溶解させることにより、電解重合溶液とした。したがって、各成分の濃度は、[EDOT]=10mM、[LiCl]=0.05M、SDS:0.2wt%、SWCN:10μg/mlである。
電解重合は、作用極としてITO透明電極、対極として白金ワイヤー、参照極としてAg/AgClを用い、開放系において、掃引範囲0〜0.9V、掃引速度50mV/秒の条件で電位掃引電解(CV方式)により行なった。
単層カーボンナノチューブ(SWCN)をテンプレート剤としてエチレンジオキシチオフェン(EDOT)の電解重合を行ない、そのポリマー(pEDOT)含有薄膜を調製した。
SWCNは溶媒に不溶であるので、以下のようにSDSで処理してSWCN−SDS複合体にして溶媒に分散できるようにした:1mgのSWCNと200mgのSDSとの混合物に蒸留水20mlを加え、視覚的に散乱光が見えなくなるまで充分に超音波照射を行ない、ストック溶液とした。
このSDS−SWCN複合体ストック溶液2mlを蒸留水10mlに希釈し、これにEDOT14mgを入れ超音波照射して溶解させる。この溶液にLiCl21mgを入れ溶解させることにより、電解重合溶液とした。したがって、各成分の濃度は、[EDOT]=10mM、[LiCl]=0.05M、SDS:0.2wt%、SWCN:10μg/mlである。
電解重合は、作用極としてITO透明電極、対極として白金ワイヤー、参照極としてAg/AgClを用い、開放系において、掃引範囲0〜0.9V、掃引速度50mV/秒の条件で電位掃引電解(CV方式)により行なった。
図11にCV曲線を示す。実施例1〜3の場合と同様に、CV重合において掃引回数が増すに従い電流が増加しておりpEDOT含有薄膜が形成されていることが理解される。また、得られた薄膜のラマンスペクトルを測定したところ、1593cm‐1付近にピークが見られ、SWCNの存在が確認できた。
図12にCV電解薄膜のSEM写真を示す。長さ数μm以上、直径100nm以下のファイバーから成る網目構造が観察される。なお、従来から知られているSDSを鋳型とするファイバー構造体は図11とは全く異なる針状の構造体であり〔N. Sakmeche他、Langmuir, 15,
2566(1999)〕、図11に示されるファイバー構造体はSWCNをテンプレート剤とするものと理解される。
図12にCV電解薄膜のSEM写真を示す。長さ数μm以上、直径100nm以下のファイバーから成る網目構造が観察される。なお、従来から知られているSDSを鋳型とするファイバー構造体は図11とは全く異なる針状の構造体であり〔N. Sakmeche他、Langmuir, 15,
2566(1999)〕、図11に示されるファイバー構造体はSWCNをテンプレート剤とするものと理解される。
脂質をテンプレート剤とする導電性ポリマー含有薄膜(1)
脂質をテンプレート剤としピロールの電解重合を行ない、ポリピロール含有薄膜を調製した。用いた脂質は下記の式(III)で表わされる2本の長鎖アルキル鎖を含む骨格に不斉性のグルタミン酸を持ち、アニオン性のカルボキシル基を有するものである(H. Ihara他、J. Chem. Soc.,
Perkin Trans. 2, 1999, 2569)。この脂質は、TEM写真(D−Glu骨格)によると、直径20〜40nm、ピッチ100nm、右巻きの螺旋構造から成る。以下、式(III)の脂質をc-lipidと記すことがある。
脂質をテンプレート剤としピロールの電解重合を行ない、ポリピロール含有薄膜を調製した。用いた脂質は下記の式(III)で表わされる2本の長鎖アルキル鎖を含む骨格に不斉性のグルタミン酸を持ち、アニオン性のカルボキシル基を有するものである(H. Ihara他、J. Chem. Soc.,
Perkin Trans. 2, 1999, 2569)。この脂質は、TEM写真(D−Glu骨格)によると、直径20〜40nm、ピッチ100nm、右巻きの螺旋構造から成る。以下、式(III)の脂質をc-lipidと記すことがある。
超純水(脱イオン水)に1NのNaOH水溶液20μlと脂質2mgを入れ、超音波照射し溶解させた。得られた溶液にピロール10mgおよびトリエチレングリコール(TEG)100μlを入れ、超音波照射で溶解させ、さらに、LiCl21mgを加え溶解させることにより電解重合溶液とした。したがって、各成分の濃度は、[脂質]=0.33mM、[NaOH]=20mM、[LiCl]=50mM、[ピロール]=15mMおよびTEG:1vol%となる。
電解重合は、作用極としてITO透明電極、対極として白金ワイヤー、参照極としてAg/AgClを用い、開放系において、掃引範囲0.4〜1.15V,掃引速度50mV/秒の条件で電位掃引電解(CV方式)により行なった。
電解重合は、作用極としてITO透明電極、対極として白金ワイヤー、参照極としてAg/AgClを用い、開放系において、掃引範囲0.4〜1.15V,掃引速度50mV/秒の条件で電位掃引電解(CV方式)により行なった。
図13にCV曲線を示す。掃引回数の増加とともに得られる電流値が増加しており、ポリピロールを含有する薄膜が形成されていることが理解される。また、図14に示す紫外−可視吸収スペクトル測定の結果においても既述の実施例で作製されたポリピロール含有薄膜と同様の波形が得られており、このことからも、ポリピロールを含有する薄膜が電極上に形成していることが理解される。
図15に電極上に形成された薄膜(掃引40回)のSEM写真を示す。螺旋状の構造体が観察されているが、ポリピロールに脂質は非特異吸着しないことは確認できているので、ここで見られる構造は、脂質にポリピロールが結合された複合体から成るものであると考えられる。図に示されるように、ポリピロール/脂質複合体は右巻きの二重螺旋構造をとっている。2本が絡まっているためにピッチは50nm程度になっているが、二重螺旋の一本に対するピッチは100nm程度となっている。当初の脂質は、ピッチが100nm程度の右巻き螺旋のリボン構造を呈しており、ピロールが脂質をテンプレート(鋳型)として脂質リボンの角の部分で選択的に重合が進行して上記のような構造が得られたと考えられる。
図15に電極上に形成された薄膜(掃引40回)のSEM写真を示す。螺旋状の構造体が観察されているが、ポリピロールに脂質は非特異吸着しないことは確認できているので、ここで見られる構造は、脂質にポリピロールが結合された複合体から成るものであると考えられる。図に示されるように、ポリピロール/脂質複合体は右巻きの二重螺旋構造をとっている。2本が絡まっているためにピッチは50nm程度になっているが、二重螺旋の一本に対するピッチは100nm程度となっている。当初の脂質は、ピッチが100nm程度の右巻き螺旋のリボン構造を呈しており、ピロールが脂質をテンプレート(鋳型)として脂質リボンの角の部分で選択的に重合が進行して上記のような構造が得られたと考えられる。
脂質をテンプレート剤とする導電性ポリマー含有薄膜(2)
テンプレート剤として、実施例5で用いた脂質(c-lipid)から合成された下記の式(IV)で表されるスルホン酸脂質(以下、s-lipidと記すことがある)を用い、EDOTの電解重合を行なった。
テンプレート剤として、実施例5で用いた脂質(c-lipid)から合成された下記の式(IV)で表されるスルホン酸脂質(以下、s-lipidと記すことがある)を用い、EDOTの電解重合を行なった。
脂質(s-lipid)の合成は次のように行なった:脂質(c-lipid)0.15 g(0.25mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、トリエチルアミン(TEA)を数滴滴下した。ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)0.22g(0.5mmol、2eq./c-lipid)を加え、DMF・H2O・TEA混合溶媒に溶解させたアミノエタンスルホン酸63mg(0.5mmol、2eq./c-lipid)を滴下した。一晩撹拌の後、反応液を減圧留去した。残渣を水に溶解させ、オクチルトリメチルアンモニウムブロミドを加え沈殿を析出させた。塩化メチレンで抽出を数回行った後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。過塩素酸ナトリウム
アセトニトリル溶液を有機相に滴下して沈殿を析出させ、塩化メチレン、アセトニトリルで洗浄した。乾燥させることで白色固体を得た(100mg、55%)。同定はMALDI−TOF MSにおいて原料の消失、ATR−IRにおいてカルボン酸のピークの消失を確認することによって行い、さらに、1H−NMRにて行った。
アセトニトリル溶液を有機相に滴下して沈殿を析出させ、塩化メチレン、アセトニトリルで洗浄した。乾燥させることで白色固体を得た(100mg、55%)。同定はMALDI−TOF MSにおいて原料の消失、ATR−IRにおいてカルボン酸のピークの消失を確認することによって行い、さらに、1H−NMRにて行った。
化合物の同定
1H-NMR(r.t.,600MHz,DMSO-d6,TMS
standard);δ/ppm 0.85(6H,t,-CH3)、1.20-1.28(36H,brd,-(CH2)9-)、1.30-1.40(4H,brd,-NH-CH2-CH 2-)、1.62-1.81(4H,m,-CH2-CH 2-CH2-,-CH-CH 2-CH2-)、1.99(2H,t,-CH2-CH2-CH 2-)、2.05-2.14(4H,m,-CH 2-CH2-CH2-,-CH-CH2-CH 2-)、2.53-2.61(2H,m,-CH2-CH 2-SO3Na)、2.92-3.01(4H,brd,NH-CH 2-(CH2)9-)、3.24-3.30(2H,m,-CH 2-CH2-SO3Na)、4.11-4.15(1H,m,-(C=O)-CH(NH)-)、7.77-7.80(2H,m,-NH-(CH2)11-)、7.85(1H,t,-(C=O)-CH(NH)-)、8.02(1H,d,-NH-)、mp 230℃で分解、MALDI-TOF MS(matrix:CHCA)実測値726、理論値=726([s-lipid+H]+);実測値748、理論値=748([s-lipid+Na]+)、ATR-IR/cm1 1060(nS=O:スルホン酸)、1177(nS=O:スルホン酸)、1639(nC=O:アミド)
1H-NMR(r.t.,600MHz,DMSO-d6,TMS
standard);δ/ppm 0.85(6H,t,-CH3)、1.20-1.28(36H,brd,-(CH2)9-)、1.30-1.40(4H,brd,-NH-CH2-CH 2-)、1.62-1.81(4H,m,-CH2-CH 2-CH2-,-CH-CH 2-CH2-)、1.99(2H,t,-CH2-CH2-CH 2-)、2.05-2.14(4H,m,-CH 2-CH2-CH2-,-CH-CH2-CH 2-)、2.53-2.61(2H,m,-CH2-CH 2-SO3Na)、2.92-3.01(4H,brd,NH-CH 2-(CH2)9-)、3.24-3.30(2H,m,-CH 2-CH2-SO3Na)、4.11-4.15(1H,m,-(C=O)-CH(NH)-)、7.77-7.80(2H,m,-NH-(CH2)11-)、7.85(1H,t,-(C=O)-CH(NH)-)、8.02(1H,d,-NH-)、mp 230℃で分解、MALDI-TOF MS(matrix:CHCA)実測値726、理論値=726([s-lipid+H]+);実測値748、理論値=748([s-lipid+Na]+)、ATR-IR/cm1 1060(nS=O:スルホン酸)、1177(nS=O:スルホン酸)、1639(nC=O:アミド)
以上のようにして合成した脂質(s-lipid)の電解重合を実施例5と同様に行なった。試料条件は、[s-lipid]=0.3mM、[NaClO4]=50mM、[EDOT]=9.4mM、10%MeOHとした。また、重合条件は、作用極(ITO電極)、対極(Pt線)、参照極(Ag/AgCl)、掃引速度(50mV/s)、掃引範囲(-0.5〜0.9V vs.Ag/AgCl)であり、開放系で、掃引回数60回、測定温度(25℃)とした。重合後、NaClO4(50mM)水溶液で電極のCVを5回行い、非特異吸着種やモノマーの洗浄を行った。
図16にCV曲線を示す。弱くブロードであるものの、明確なpEDOT(EDOTポリマー)由来の酸化還元ピークが重合時に確認された。CV形状はSDS−pEDOT系と類似しており、アニオン性脂質/導電性高分子複合体の形成が示唆された。pEDOTの酸化状態において、可視領域の弱い吸収と近IR領域に強い吸収が存在した。また、還元状態において可視領域に強い吸収が発生しピークトップは587nmであった。得られたスペクトルは、SDS−pEDOT系と非常に類似している。これらの結果は、電解重合においてpEDOTが生成したことを示している。
脂質分子が薄膜中に存在していることを確認するために、得られたpEDOT薄膜のATR−IR測定を行ったところ、ピーク強度は弱いが、アミドに由来するピークが1641cm‐1に観察された。また、1050〜1200cm‐1にかけてスルホン酸由来と思われるピークも確認された。この2点より、pEDOT薄膜中への脂質分子の存在が確認できた。
図17は、得られた薄膜のSEM写真であり、左巻きの螺旋構造を持つ構造体が薄膜の上で観察された。鋳型のみを観察したSEM写真において脂質(s-lipid)の左巻き構造が観察されていることから、この構造体は脂質が基になっていることが理解される。
脂質分子が薄膜中に存在していることを確認するために、得られたpEDOT薄膜のATR−IR測定を行ったところ、ピーク強度は弱いが、アミドに由来するピークが1641cm‐1に観察された。また、1050〜1200cm‐1にかけてスルホン酸由来と思われるピークも確認された。この2点より、pEDOT薄膜中への脂質分子の存在が確認できた。
図17は、得られた薄膜のSEM写真であり、左巻きの螺旋構造を持つ構造体が薄膜の上で観察された。鋳型のみを観察したSEM写真において脂質(s-lipid)の左巻き構造が観察されていることから、この構造体は脂質が基になっていることが理解される。
導電性の測定
本発明に従う導電性ポリマー含有薄膜が導電性を有することを確認するため電極(作用電極)として櫛型電極を用いて電解重合を行なった。用いた電極は、ビー・エー・エス社のPt製のもので、図18に模式的に示す形状を有する(電極間の距離:5μm)。図中(A)のように導電性ポリマー含有薄膜が形成されると、櫛型電極(B)間が架橋されて矢印方向に電流(C)が流れるので、当該薄膜の導電性を測定することが可能になる。
この櫛型電極を用いて、実施例6と同様の手法により、脂質(s-lipid)をテンプレート剤としEDOTについて、対極(Pt線)、参照極(Ag/AgCl)、掃引速度(50mV/s)、掃引範囲(-0.5〜0.9V vs.Ag/AgCl)で、開放系において、掃引回数(50回)、測定温度(25℃)の条件下に電解重合を行なった。
図19に重合CV曲線を示すが、ITOを作用電極とした実施例6の場合と同様のCV応答が得られており、pEDOT含有薄膜が櫛型電極上に形成されたことが示唆される。この櫛型電極のAFM観察の結果を図20に示す。図中、Dの部分がPt電極であり、Eの部分が電極間の溝である。図に示されるように、多数の螺旋ファイバー(実施例6と同様に左巻き)が電極上に担持されている。また、電極間はバルクの導電性高分子で架橋されるのではなく、ほぼ、ファイバーのみで架橋されていることが明らかとなった。
本発明に従う導電性ポリマー含有薄膜が導電性を有することを確認するため電極(作用電極)として櫛型電極を用いて電解重合を行なった。用いた電極は、ビー・エー・エス社のPt製のもので、図18に模式的に示す形状を有する(電極間の距離:5μm)。図中(A)のように導電性ポリマー含有薄膜が形成されると、櫛型電極(B)間が架橋されて矢印方向に電流(C)が流れるので、当該薄膜の導電性を測定することが可能になる。
この櫛型電極を用いて、実施例6と同様の手法により、脂質(s-lipid)をテンプレート剤としEDOTについて、対極(Pt線)、参照極(Ag/AgCl)、掃引速度(50mV/s)、掃引範囲(-0.5〜0.9V vs.Ag/AgCl)で、開放系において、掃引回数(50回)、測定温度(25℃)の条件下に電解重合を行なった。
図19に重合CV曲線を示すが、ITOを作用電極とした実施例6の場合と同様のCV応答が得られており、pEDOT含有薄膜が櫛型電極上に形成されたことが示唆される。この櫛型電極のAFM観察の結果を図20に示す。図中、Dの部分がPt電極であり、Eの部分が電極間の溝である。図に示されるように、多数の螺旋ファイバー(実施例6と同様に左巻き)が電極上に担持されている。また、電極間はバルクの導電性高分子で架橋されるのではなく、ほぼ、ファイバーのみで架橋されていることが明らかとなった。
このようにして薄膜が形成された櫛型電極について導電性の測定を行なった。測定は、作用極(Pt櫛型電極)、対極(Pt線)、参照極(Ag/AgC)とし、支持電解質(50mM NaClO4水溶液)、測定温度(25℃)の条件下で、バイポテンシオスタットを用いて行った。櫛型電極の両端をそれぞれ作用極1、2とし、その間に小さな電圧差(オフセット電圧:20mVと40mVに設定して測定)を印加し固定する。その状態でクロノアンペアメトリー測定法を用い作用極1に参照電極に対し一定の電圧(ゲート電圧)を印加した。70秒間静置し電流が安定したところで、作用極1、2間の電流(ドレーン電流)を読み取った。
図21に、pEDOT含有薄膜のCV曲線(a)とともに、ドレーン電流−作用電極電位の測定結果(b)を示している。pEDOTは非ドープ状態では導電性がほとんど発生しないことが知られているが、UV−VISスペクトルでpEDOTの非ドープ状態が確認されている-0.6V近辺では、この薄膜における導電性もほとんど無いことが認められる。電位を酸化側に振っていきpEDOTが酸化される領域にするに従って、電流(ドレーン電流)が増大し導電性が向上している。図20の観察結果から、この導電性は、脂質(s-lipid)の螺旋構造にpEDOTが結合した複合体から成る薄膜に由来するものであることが理解される。
以上のようにして得られる本発明の導電性ポリマー含有薄膜は、導電性ポリマー薄膜あるいは導電性ポリマー被覆電極の用途として従来から知られ検討されているポリマー電池(スーパーキャパシタ)、電磁シールド材、帯電防止剤、エレクトロクロミック素子、化学センサー、電子素子などの各種の分野において特性の改変された新しい材料として使用が期待される。例えば、キャパシタに用いられる場合、キャパシタの容量は電極の表面積が大きいほど大きくなるので、ロッド状またはファイバー状の網目構造を呈する複合体から成る本発明の導電性ポリマー含有薄膜は、このような用途に好適であると考えられる。また、導電性ポリマーが螺旋状の構造を呈する複合体から成る本発明の導電性ポリマー含有薄膜は、電磁シールド材として使用するのに適していると考えられる。
Claims (8)
- ナノメートルサイズの特定の構造を呈する分子会合体またはマクロ分子から成るテンプレート剤に導電性ポリマーが結合された複合体であって前記テンプレート剤に由来する構造を有する複合体の薄膜が電極上に形成されていることを特徴とする導電性ポリマー含有薄膜。
- テンプレート剤がポルフィリン化合物の会合体であり、複合体がロッド状の網目構造を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー含有薄膜。
- テンプレート剤がカーボンナノチューブ誘導体であり、複合体がファイバー状の網目構造を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー含有薄膜。
- テンプレート剤が脂質であり、複合体が螺旋状の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー含有薄膜。
- 導電性ポリマーが、アニリン、チオフェンもしくはピロール、またはこれらの誘導体のポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ポリマー含有薄膜。
- 複合体の薄膜が電極から剥離されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ポリマー含有薄膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ポリマー含有薄膜を製造する方法であって、電解重合溶液に溶解または分散してナノメートルサイズの特定の構造を呈するアニオン性の分子会合体またはマクロ分子から成るテンプレート剤の存在下に、酸化重合性モノマーを電解重合する工程を含むことを特徴とする導電性ポリマー含有薄膜の製造方法。
- 電位掃引電解により電解重合を行なうことを特徴とする請求項7に記載の導電性ポリマー含有薄膜の製造方法。
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2004
- 2004-01-13 JP JP2004005238A patent/JP2004315786A/ja active Pending
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