JP2004315730A - 曇り止め剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期保存安定性を有し、常温での作業性に優れ、かつ形成される被膜の常温での耐水性が充分な曇り止め剤を提供することを目的とする。
【課題の解決手段】(イ)水ガラスなどの親水性無機非晶質物質と、溶媒を含む液、(ロ)親水性金属酸化物粒子および親水性無機非晶質物質の硬化促進剤が少なくとも分散され、pH8.0〜12.0である液、の2液を使用時に混合して使用することを特徴とする曇り止め剤。前記硬化促進剤はZnOが好ましい。
【選択図】なし
【課題の解決手段】(イ)水ガラスなどの親水性無機非晶質物質と、溶媒を含む液、(ロ)親水性金属酸化物粒子および親水性無機非晶質物質の硬化促進剤が少なくとも分散され、pH8.0〜12.0である液、の2液を使用時に混合して使用することを特徴とする曇り止め剤。前記硬化促進剤はZnOが好ましい。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曇り止め剤に関わり、特にガラス・鏡の防曇処理や防曇機能の消失した流滴防曇鏡の現場での補修に最適な曇り止め剤に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、鏡は、表面温度が露点温度以下になると、空気中の水分が表面で凝集して曇りが発生しやすい。また、これらの部材の表面に雨水や水しぶきが付着すると、水膜としてよりも水滴として付着しやすい。このように、曇りや水滴が部材表面に存在すると、その部材の本来の機能を発揮できなくなったり、光の散乱により部材の外観や意匠性が低下したりすることがある。 このような曇りや光の散乱を解消するために、基材表面を親水性にする技術として、親水性金属酸化物と親水性無機非晶質物質からなる膜を鏡表面に形成した親水性部材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、3〜100nmの粒径を有する金属酸化物粒子と金属酸化物からなる膜を形成し、大小の凹凸を形成する方法が開示されている。
一方、常温で無機物の膜をつくる方法として、水ガラスを主成分とする膜の硬化促進剤にケイ化物、金属酸化物、ポリリン酸、金属粉末などを使用することが開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。
水ガラスを含む1液タイプのコーティング剤としてアルコキシシラン類と水を無機強酸または有機酸からなる触媒存在下で混合し、加水分解・重縮合させて得たアルコール性シリカゾル溶液を混合してなる低温度硬化性組成物について開示されている (例えば、特許文献4参照) 。
【0003】
【特許文献1】特開2002−80830号公報
【特許文献2】特開昭49−16690号公報
【特許文献3】特開昭50−2031号公報
【特許文献4】特開平8−188442公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1記載の製法にある液は加熱硬化することを前提としており、曇り止め剤として常温で用いると、硬化不足により耐水性が不十分で実使用に耐えなかった。
また、水ガラスを含む液に特許文献2、3に記載の硬化促進剤を添加した場合、液の保存安定性が低下し、使い勝手が悪いと言う課題があった。
一方、特許文献4記載のアルコール性シリカゾル溶液と水ガラスを混合した液でも、加熱乾燥した膜は耐水性があるが、常温製膜した膜の耐水性は充分ではなかった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、長期保存安定性を有し、常温での作業性に優れ、かつ形成される被膜の常温での耐水性が充分な鏡用曇り止め剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明は以下の2液を使用時に混合して使用することを特徴とする曇り止め剤を提供する。
(イ)親水性無機非晶質物質と、溶媒を含む液
(ロ)親水性金属酸化物粒子および親水性無機非晶質物質の硬化促進剤が少なくとも分散され、pH8.0〜12である液
【0006】
このような2液構成にし、使用時に混ぜることと、(ロ)液のpHを8〜12とすることで液の保存安定性は非常によくなる。硬化促進剤の入っていない(イ)液は安定性が高く、(ロ)液もpHを8.0〜12.0とすることで、硬化促進剤、親水性金属酸化物ともに良好に分散させることができる。さらに、(イ)液と(ロ)液を混合後も、親水性無機非晶質物質の硬化も緩やかに進行するために、塗装時の取り扱いが容易である。硬化促進剤が入っているため、基材に塗布後は常温で数時間養生するだけで浴室等で使うのに充分な耐温水性のある被膜を形成することが出来る。pHの上限については皮膚についたときの影響などの点から12.0以下が好ましく、11.0以下がさらに好ましい。
【0007】本発明の好ましい態様においては、前記硬化促進剤がZnOである。ZnOはpH8〜12の範囲で安定に分散するゾルが入手可能で、親水性金属酸化物粒子と一緒に分散させても安定性は非常に高い。
【0008】本発明の好ましい態様においては、前記親水性無機非晶質物質が、アルカリ珪酸塩、アルカリホウ珪酸塩、アルカリジルコン酸塩、およびリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0009】アルカリ珪酸塩などのいわゆる水ガラスは常温で液状である、常温でも比較的容易に硬化させることができるなどの特長を有する。
【0010】本発明の好ましい態様においては、前記親水性金属酸化物粒子が、SiO2 、ZrO2 、およびSnO2 からなる群から選択される一種以上を含んでなる。これらの酸化物は、高い親水性を示すと共に、pH8〜12の領域で安定なゾルを入手可能である。
【0011】本発明の好ましい態様においては、浴室鏡用に使用される。浴室においては防曇のニーズが非常に高いが、反面、非常に汚れやすい環境であるために、防曇加工の効果が長続きしにくい。したがって、本発明の曇り止め剤は浴室において特に好適に用いられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(溶媒)
溶媒の主成分としては、水を用いるが、展開剤、レベリング剤、分散剤を加えても良い。例えば、アルコール類はレベリング剤として添加できる。特に浴室で作業することを考えると、安全性の面から水と添加剤としてはエタノールが好ましい。
【0013】(i)親水性無機非晶質物質 本発明において親水性無機非晶質物質とは、表面に化学吸着水を形成し親水性を呈することができる無機非晶質物質である。アルカリ珪酸塩、アルカリホウ珪酸塩、アルカリジルコン酸塩、およびアルカリリン酸塩等のリン酸金属塩からなる群から選択される一種以上を用いることが出来る。これらの物質は水の存在により容易に化学吸着水層を形成し、高度かつ長期的にわたって親水性を呈すことができる。これらの中でもアルカリ珪酸塩が好ましく、より好ましくは、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムである。一般に接着性は珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの順に強く、耐水性は珪酸アンモニウム、珪酸リチウムの順に強いと考えられるが、被膜性、膜硬度、耐水性等を考慮すると珪酸リチウムを含むのがより好ましい。
【0014】
本発明による親水性部材の被膜には、ホウ酸および/またはホウ酸化合物を含有させることができる。これにより、被膜の耐水性、化学的耐久性を向上させることができる。ホウ酸またはホウ酸化合物の好ましい例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸エステル等が挙げられる。
【0015】本発明による親水性部材の被膜には、リン酸および/またはリン酸化合物を含有させることができる。これにより、被膜の硬化を促進し、膜の耐久性を向上させることができる。リン酸またはリン酸化合物の好ましい例としては、無水リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素リチウム、リン酸エステル等が挙げられる。
【0016】
(親水性金属酸化物粒子) 本発明において親水性金属酸化物粒子の好ましい例としては、SiO2 、ZrO2 、およびSnO2 からなる群から選択される一種以上を含んでなるものが挙げられる。高度な親水性を発揮するSiO2 はコロイダルシリカとして、ZrO2 はジルコニアゾルとして、SnO2 は酸化スズゾルとして入手することができる。また、これらは市販されており、容易に入手できる。また、上記以外であっても、少なくとも液のpHが8以上で表面に酸化物が形成されうる粒子であればよく、例えば窒化物、ホウ化物、炭化物の粒子などが挙げられる。 また、粒子の形状は球状、直方状、平板状、羽毛状、鎖状など種々の形状であることができ、凹凸構造の形成のしやすさから球状または直方状が好ましい。
【0017】
親水性金属酸化物粒子が第一の親水性金属性酸化物粒子と第二の親水性金属酸化物粒子からなり、前記第一の親水性金属酸化物粒子の粒径の最頻値が10〜30nmであり、第二の親水性金属酸化物粒子の粒径の最頻値が40〜100nmであることが好ましい。この比率にすることで高い曇り止め性能を得ることが出来る。これにより大小の凸凹ができ、小さい凸凹により表面に水膜が形成されやすくなると共に、大きい凸凹により保持できる水量が大きくなると考えられる。
【0018】
アルカリ珪酸塩を用いた場合、アルカリ珪酸塩のSiO2 量と前記親水性金属酸化物粒子との重量比が10:1〜1:4の範囲が好ましく、かつ、前記第一の親水性金属酸化物粒子量と前記第二の親水性金属酸化物粒子量との重量比が40:1〜1:4であることが好ましい。この比率のとき、高い曇り止め性能を得ることが出来る。
【0019】
本発明において曇り止め液(ロ)に添加する親水性無機非晶質物質の硬化促進剤は液のpHが8〜12の範囲で、塗膜の透明性に影響がないような分散、溶解状態になるものが好ましい。例えば、ケイ化物、金属酸化物、ポリリン酸、金属粉末が挙げられるが、好ましい例として、ZnO微粒子分散ゾルが挙げられる。無機非晶質物質、例えば、珪酸ソーダは、水と反応して、水酸化ナトリウムと珪酸になる。この反応では、水酸化ナトリウムが生成する為、酸性の硬化促進剤を用いると速やかに反応が進行するが、pH8以上の硬化促進剤だと反応が遅くなり取り扱いが容易になる。
【0020】
液(ロ)には分子量60〜300、好ましくは分子量60〜100、の常温で液体のアルコールを展開剤として加えることが好ましい。アルコール類を加える事により、塗膜時の液の展開性が良くなり、且つ乾燥時間が早くなり乾燥途中段階での汚れの付着を少なく抑える事ができる。添加量としては、水を主成分とする全溶媒量の20%以下が好ましい。中でも、15%〜20%が特に好ましい。 アルコールの好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、モノアセトンアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。 安全性、入手しやすさからエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールが特に好ましい。また、溶媒としての水の添加は、親水性無機非晶質物質の加水分解を促進する観点から好ましいことがある。
【0021】
液(ロ)には、部材の表面に適用されたとき平滑な表面を形成できるよう、レベリング剤を添加してもよい。レベリング剤の好ましい例としては、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−プロポキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングコリールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0022】
液(ロ)には親水性金属酸化物の分散剤として界面活性剤を添加できる。添加が可能な界面活性剤の例としては、スルホン酸ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウム塩、スルホン酸ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルナトリウム塩、脂肪酸ナトリウムセッケン、脂肪酸カリセッケン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェートソーダ塩、アルキルエーテルサルフェートソーダ塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートソーダ塩、アルキルサルフェートTEA塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートTEA塩、2−エチルヘキシルアルキル硫酸エステルナトリウム塩、アシルメチルタウリン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリン酸ナトリウム、ドデルシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリカルボン酸、オレオイルザルコシン、アミドエーテルサルフェート、ラウロイルザルコシネート、スルホFAエステルナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウラート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ソルビタンラウラート、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンラウラート、ポリオキシエレチンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、グリセロールステアレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアルキロールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンステアレート等のノニオン性界面活性剤;ジメチルアルキルベタイン、アルキルグリシン、アミドベタイン、イミダゾリン等の両性界面活性剤、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン4級塩、アルキルイソキノリニウムブロマイド、高分子アミン、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルイミダゾリン4級塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、アルキルプロピレンジアミン酢酸塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
(親水性被膜の表面形状)
本発明の曇り止め剤の塗布によって得られる表面は、比較的平滑な部分と、この平滑部分に比較して隆起した部分とを有する。そして、前記隆起部分を含まない平滑部分のみに線分を設定したとき(図1における線分A)、その線分における断面曲線が示すRz(十点平均粗さ)およびSm(凹凸の平均間隔)が、それぞれ10nm≦Rz≦40nmおよび10nm≦Sm≦300nmであり、かつ、前記隆起部分を通るように線分を設定したとき(図1における線分B)、その線分における断面曲線が示すRz(十点平均粗さ)およびSm(凹凸の平均間隔)が、それぞれ40nm≦Rz≦200nmおよび300nm≦Sm≦1500nmであるようにするのが好ましい。このような表面は、湿潤条件下において速やかに水膜を形成するという優れた親水性を発揮する。例えば、本発明による親水性部材である鏡を浴室に配設したとき、その表面に蒸気や水しぶきが付着すると、表面の親水性被膜が付着した水を水膜として保持し続ける。この状態において、表面温度が露点温度以下であっても水蒸気が表面に触れる状態であれば、または水しぶきの付着によって水滴が付着する状態であれば、親水性被膜上の水膜は維持され続ける。 親水性被膜上に形成される水膜は均質なものであるため、光は散乱されずに直線的に透過する。鏡またはガラスが曇るとは、付着した水が微細な水滴となって表面に付着し、光が散乱される現象をいう。本発明による親水性部材にあっては、付着した水が水滴とならず、均質な水膜となるため、この「曇る」という現象を生じさせない。さらに、付着した水が微細ではなく、比較的大きな水滴となる場合もあり、このような水滴は鏡に写った像を歪める。また、透明ガラスにあっては透過して見える像を歪める。本発明による親水性部材にあっては、比較的大きな水滴も生じさせないため、このような像の歪みを生じさせない。また、水が過剰に付着した場合には水は流下していくが、基材上の親水性被膜は水膜を一定の範囲で保持し続けるため、防曇性を維持できる。 さらに、この均質な水膜によって、汚れ物質が基材表面に直接触れにくくなるため、汚れが付着しにくくなる。すなわち、本発明による親水性部材は優れた防汚性をも発揮する。例えば、浴室環境においては金属石鹸やリンス成分の付着防止効果を発揮する。
【0024】
(親水性金属酸化物の形状)
親水性金属酸化物粒子を、10〜30nmに粒径の最頻値を有する第一の親水性金属酸化物粒子と、40〜100nmに粒径の最頻値を有する第二の親水性金属酸化物粒子とを含んでなるように構成するのが好ましい。なお、ここで粒径はMERVERN社製Zetasizer3000HSにより測定される。
すなわち、親水性金属酸化物粒子として、上記2種類の粒径範囲のものを合わせて用いる。これにより、上述したRzおよびSmの条件を比較的容易に実現することができる。 図1に、本発明の第一の態様による親水性部材の一例の概略断面図を示す。図1に示される親水性被膜は、第一の親水性金属酸化物粒子1、第二の親水性金属酸化物粒子2、および親水性無機非晶質物質3により、前述のRzおよびSmが実現されている。図1に示されるように、第一の態様の親水性部材表面は大小の凹凸が基材4の表面に形成されている。この大小の凹凸が親水性被膜の表面積を大きくし、親水性被膜表面の親水性を最大限に発揮させるものと考えられる。すなわち、親水性部材表面に水膜が容易に形成されるとともに、十分な量の水膜を均質に保持することができると考えられ、また、付着した水滴が凹凸の凸部に引き付けられ、水膜の広がりが促進されると考えられる。また、親水性被膜の水の静止接触角を20度以下とすることにより、迅速な水膜形成が可能になるのでより好ましい。さらに好ましくは10度以下である。
【0025】
(塗布方法)
本発明の曇り止め剤の塗布には、スプレーコーティング、ワイピングなどの方法が使用できる。親水性被膜においては、膜厚の微妙なばらつきが白濁や干渉色を生じる原因になりやすい性質を有する為、ワイピングによる塗布が好ましい。具体的には、曇り止め剤を不織布に適量染み込ませ、この不織布を用いてワイピング塗布し、5℃以上の室温環境で5h以上養生する。
【0026】
本発明の曇り止め剤の塗布に用いる不織物は吸水性にとみ、目が細かく、目付量の多いものが望ましい。具体的には、ベンリーゼTS100(旭化成製)、サンパクト(旭化成製)等が挙げられるがこれに限定されない。
【0027】
本発明の曇り止め剤の塗布後、すぐに1200W程度の家庭用ドライヤーで鏡表面より10cm離して、900cm2当り10秒間熱風により加熱する事が好ましい。この加熱により、耐水性を向上する事ができる。
【0028】
親水性皮膜の保水量
本発明の曇り止め剤により形成された親水性皮膜に水を付着させ、かつ該皮膜を垂直に保持することにより余剰の水を除去した状態における、前記親水性皮膜に付着した水膜の重量は10cm2 あたり0.25〜0.50g、より好ましくは0.25〜0.35gである。このような範囲とすることで、表面に均質化された、一様かつ充分な水膜を形成して、優れた防曇性を発揮させることができる。また、それと同時に高い硬度を実現して、優れた耐久性をも得ることができる。このような水膜重量は、親水性金属酸化物を、親水性金属酸化物の形状の項で述べたように組み合わせることによって実現することができる。 ここで、上記水膜重量は具体的には次のようにして測定される。まず、室温が15〜25℃に設定され、かつ相対湿度が30〜80%の環境において、同環境にてあらかじめ1時間以上安定化させた親水性部材を、天秤にて質量を測定し、これをX(g)とする。測定後、部材の親水性表面がほぼ垂直になるように設置し、水温が15〜25度の室温とほぼ同じにされた水で親水性被膜のみを濡らして全体が濡れて水膜が形成されることを確認する。15秒経過後に下部にたまった水を除去して天秤にて全体重量を測定し、これをY(g)とする。使用した部材の親水性表面の面積をZ(cm2 )とすると、10cm2 あたりの水膜の重量は(Y−X)×10/Z(g)となる。
【0029】
(実施例1)
液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。なお、部とは特に断わりが無ければ重量部を指す。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製 粒径50〜80nm)を7部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製 粒径10〜20nm)を5部、ZnOゾル(シーアイ化成製 粒径15nm)を5部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。液(ロ)のpHは9.0であった。これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
なお、pHの測定には堀場製作所(株)のTWIN pH B−212を使用した。
【0030】
(実施例2)
液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を7.2部、イオン交換水を92.8部混合して調整した。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を1.4部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製)を1部、ZnOゾル(シーアイ化成製)を1部、非イオン系界面活性剤エマルミン240(三洋化成製)を0.006部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を74.6部混合して調整した。液(ロ)のpHは8.9であった。これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0031】
(実施例3) 小コロイダルシリカを変更
曇り止め液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
曇り止め液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカ ST−30(日産化学製 粒径10〜20nm)を3.3部、ZnOゾル(シーアイ化成製)を5部、非イオン系界面活性剤サンノニックSS−120(セイミケミカル製)を0.03部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した(pH 9.0)。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0032】
(比較例1) 硬化促進剤未添加
曇り止め液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
曇り止め液(ロ)として、コロイダルシリカゾルST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカゾルシリカドール20Al(日本化学製)を5部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。液(ロ)のpHは9.0であった。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0033】
(比較例2) 硬化促進剤にリン酸アルミ粉末を使用
液(イ)として、リチウムシリケート75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製)を5部、AlPO3 粉末(和光純薬工業製)を0.75部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を60.23部混合して調整した。ただし、攪拌してもAlPO3 は分散せず、すぐに沈殿した。液(ロ)のpHは8.7であった。これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0034】
(比較例3) 硬化促進剤に第一リン酸アルミ水溶液を使用
液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。なお、部とは特に断わりが無ければ重量部を指す。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製 粒径50〜80nm)を7部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製 粒径10〜20nm)を5部、第一リン酸アルミ水溶液(多木化学製)を15部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。(pH 7.5)これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0035】
(比較例4) 1液タイプの液
メチルシリケート51(三菱化成社製)25gに水25gと0.1Nの塩酸1mlを混合し、室温で約150分マグネットスターラで攪拌した。最初油滴状に分散していたメチルシリケート51が加水分解・縮重合されて、無色透明性の均一なアルコール性シリカゾル溶液が形成された。このアルコール性シリカゾル1部、リチウムシリケート75(日産化学製)を5部、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を4.5部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製)を3部、ZnOゾル(シーアイ化成製)を1部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.04部、イソプロピルアルコールを35部、イオン交換水を130部混合して調整した。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0036】
(参考例) 膜を加熱硬化
曇り止め液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
曇り止め液(ロ)として、コロイダルシリカゾルST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカゾルシリカドール20Al(日本化学製)を5部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
この液をスプレーコートで基材に吹き付け、160℃で30分加熱した。
【0037】
(安定性)
上記実施例1〜3及び、比較例1〜3で作製した、それぞれの液(イ)と液(ロ)、比較例4の曇り止め剤を、室温で放置し、液の性状変化を粒径、pH、粘性、塗布膜の鏡への密着性で確認した。実施例1〜3、比較例1のそれぞれの液(イ)と液(ロ)は常温で1年程度の保存安定性を確認できた。比較例2では液(ロ)中のAlPO3 は調整後、すぐに沈殿し、更にシリカ分の凝集を助長してしまった。比較例3では液(ロ)が数時間の間に徐々にゲル化し、不溶成分の沈殿が生じた。比較例4では、曇り止め剤の保管時間とともに、被膜の耐温水性が低下していった。
【0038】
(塗膜の外観)
基材として新しい浴室用鏡をダイヤモンド入り研磨スポンジ(キョーエイ製 ダイヤモンドマジック
II 鏡・ガラス用)で表面を十分に研磨洗浄し、全面的に水はじき部分のない状態にしたものを用いた。上記実施例1〜3及び、比較例1〜3で作製した曇り止め剤を不織布(旭化成製 ベンリーゼTS−100)に15g染み込ませ、基材に塗布した。塗膜が自然乾燥後、40cm離れた場所より、塗膜の外観を目視観察した。結果は、塗膜の白濁度合で判定し、明らかに使用上支障があると思われる場合×とした。比較例2、3では、液中に凝集成分、硬化促進剤沈殿成分が存在する為に、外観が良好な膜を得ることができなかった。
【0039】
(耐温水性)
上記実施例1〜3及び、比較例1〜3で作製した曇り止め剤を基材に塗布し、常温で5時間乾燥した。各基材を35℃の温水に連続浸漬させ、所定時間後、サンプルを取り出し、水を十分含んだウレタンスポンジ(住友3M製 スコッチブライト バスシャインのウレタンスポンジ面)に25g/cm2 の荷重を加え5往復摺動を繰返し、その後、走査型電子顕微鏡で観察した。2時間浸漬後塗膜の存在が確認できた場合を○、確認できない場合を×、更に24時間浸漬後、塗膜の存在が確認できた場合を◎とした。比較例1では、30分の処理後膜が確認できなくなった。
【0040】
(防曇性)
上記実施例1 ̄3及び、比較例1〜3で作製した曇り止め剤を基材に塗布し、常温で5時間乾燥したサンプルを浴室に設置して曇り具合の観察を行った。
入浴時、浴室鏡全面にお湯を散水し、入浴前に調整した0.1%のリンス希釈液(資生堂製 スーパーマイルドリンス)を浴室鏡に霧吹きにより塗布し、温水シャワーで十分濯ぎ、その後水膜の張り具合を観察した。観察時、水膜が全面的に形成された場合を○とし、水膜が形成できない部分がある場合を×とした。比較例1以外は同様に曇りにくいという結果となった。
【0041】
以上の結果を表1にまとめた。適切な硬化促進剤を添加する事により、焼き付けた場合と同様の実用レベルの性能を有する事がわかり、一般鏡の防曇化のみならず、初期に焼き付け防曇機能膜を施した流滴防曇鏡が防曇機能を焼失した場合の補修剤として機能する事が確認できた。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れた曇り止め剤を提供することが出来る。この曇り止め剤は塗布後、常温で硬化できる。特に浴室鏡においては、毎日の入浴に支障を与えることなく、且つ現在使用中の浴室鏡を取り外す事無く、現場で、一般鏡及び防曇機能を焼失した流滴防曇鏡の表面の防曇加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の曇り止め剤を塗布した鏡の断面を示す概念図である。
【符号の説明】
1…第一の親水性金属酸化物粒子1、2…第二の親水性金属酸化物粒子2、3…硬化促進剤粒子、4…、親水性無機非晶質物質、5…鏡
【発明の属する技術分野】
本発明は、曇り止め剤に関わり、特にガラス・鏡の防曇処理や防曇機能の消失した流滴防曇鏡の現場での補修に最適な曇り止め剤に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、鏡は、表面温度が露点温度以下になると、空気中の水分が表面で凝集して曇りが発生しやすい。また、これらの部材の表面に雨水や水しぶきが付着すると、水膜としてよりも水滴として付着しやすい。このように、曇りや水滴が部材表面に存在すると、その部材の本来の機能を発揮できなくなったり、光の散乱により部材の外観や意匠性が低下したりすることがある。 このような曇りや光の散乱を解消するために、基材表面を親水性にする技術として、親水性金属酸化物と親水性無機非晶質物質からなる膜を鏡表面に形成した親水性部材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、3〜100nmの粒径を有する金属酸化物粒子と金属酸化物からなる膜を形成し、大小の凹凸を形成する方法が開示されている。
一方、常温で無機物の膜をつくる方法として、水ガラスを主成分とする膜の硬化促進剤にケイ化物、金属酸化物、ポリリン酸、金属粉末などを使用することが開示されている(例えば、特許文献2,3参照)。
水ガラスを含む1液タイプのコーティング剤としてアルコキシシラン類と水を無機強酸または有機酸からなる触媒存在下で混合し、加水分解・重縮合させて得たアルコール性シリカゾル溶液を混合してなる低温度硬化性組成物について開示されている (例えば、特許文献4参照) 。
【0003】
【特許文献1】特開2002−80830号公報
【特許文献2】特開昭49−16690号公報
【特許文献3】特開昭50−2031号公報
【特許文献4】特開平8−188442公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1記載の製法にある液は加熱硬化することを前提としており、曇り止め剤として常温で用いると、硬化不足により耐水性が不十分で実使用に耐えなかった。
また、水ガラスを含む液に特許文献2、3に記載の硬化促進剤を添加した場合、液の保存安定性が低下し、使い勝手が悪いと言う課題があった。
一方、特許文献4記載のアルコール性シリカゾル溶液と水ガラスを混合した液でも、加熱乾燥した膜は耐水性があるが、常温製膜した膜の耐水性は充分ではなかった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、長期保存安定性を有し、常温での作業性に優れ、かつ形成される被膜の常温での耐水性が充分な鏡用曇り止め剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明は以下の2液を使用時に混合して使用することを特徴とする曇り止め剤を提供する。
(イ)親水性無機非晶質物質と、溶媒を含む液
(ロ)親水性金属酸化物粒子および親水性無機非晶質物質の硬化促進剤が少なくとも分散され、pH8.0〜12である液
【0006】
このような2液構成にし、使用時に混ぜることと、(ロ)液のpHを8〜12とすることで液の保存安定性は非常によくなる。硬化促進剤の入っていない(イ)液は安定性が高く、(ロ)液もpHを8.0〜12.0とすることで、硬化促進剤、親水性金属酸化物ともに良好に分散させることができる。さらに、(イ)液と(ロ)液を混合後も、親水性無機非晶質物質の硬化も緩やかに進行するために、塗装時の取り扱いが容易である。硬化促進剤が入っているため、基材に塗布後は常温で数時間養生するだけで浴室等で使うのに充分な耐温水性のある被膜を形成することが出来る。pHの上限については皮膚についたときの影響などの点から12.0以下が好ましく、11.0以下がさらに好ましい。
【0007】本発明の好ましい態様においては、前記硬化促進剤がZnOである。ZnOはpH8〜12の範囲で安定に分散するゾルが入手可能で、親水性金属酸化物粒子と一緒に分散させても安定性は非常に高い。
【0008】本発明の好ましい態様においては、前記親水性無機非晶質物質が、アルカリ珪酸塩、アルカリホウ珪酸塩、アルカリジルコン酸塩、およびリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0009】アルカリ珪酸塩などのいわゆる水ガラスは常温で液状である、常温でも比較的容易に硬化させることができるなどの特長を有する。
【0010】本発明の好ましい態様においては、前記親水性金属酸化物粒子が、SiO2 、ZrO2 、およびSnO2 からなる群から選択される一種以上を含んでなる。これらの酸化物は、高い親水性を示すと共に、pH8〜12の領域で安定なゾルを入手可能である。
【0011】本発明の好ましい態様においては、浴室鏡用に使用される。浴室においては防曇のニーズが非常に高いが、反面、非常に汚れやすい環境であるために、防曇加工の効果が長続きしにくい。したがって、本発明の曇り止め剤は浴室において特に好適に用いられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(溶媒)
溶媒の主成分としては、水を用いるが、展開剤、レベリング剤、分散剤を加えても良い。例えば、アルコール類はレベリング剤として添加できる。特に浴室で作業することを考えると、安全性の面から水と添加剤としてはエタノールが好ましい。
【0013】(i)親水性無機非晶質物質 本発明において親水性無機非晶質物質とは、表面に化学吸着水を形成し親水性を呈することができる無機非晶質物質である。アルカリ珪酸塩、アルカリホウ珪酸塩、アルカリジルコン酸塩、およびアルカリリン酸塩等のリン酸金属塩からなる群から選択される一種以上を用いることが出来る。これらの物質は水の存在により容易に化学吸着水層を形成し、高度かつ長期的にわたって親水性を呈すことができる。これらの中でもアルカリ珪酸塩が好ましく、より好ましくは、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムである。一般に接着性は珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの順に強く、耐水性は珪酸アンモニウム、珪酸リチウムの順に強いと考えられるが、被膜性、膜硬度、耐水性等を考慮すると珪酸リチウムを含むのがより好ましい。
【0014】
本発明による親水性部材の被膜には、ホウ酸および/またはホウ酸化合物を含有させることができる。これにより、被膜の耐水性、化学的耐久性を向上させることができる。ホウ酸またはホウ酸化合物の好ましい例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸エステル等が挙げられる。
【0015】本発明による親水性部材の被膜には、リン酸および/またはリン酸化合物を含有させることができる。これにより、被膜の硬化を促進し、膜の耐久性を向上させることができる。リン酸またはリン酸化合物の好ましい例としては、無水リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素リチウム、リン酸エステル等が挙げられる。
【0016】
(親水性金属酸化物粒子) 本発明において親水性金属酸化物粒子の好ましい例としては、SiO2 、ZrO2 、およびSnO2 からなる群から選択される一種以上を含んでなるものが挙げられる。高度な親水性を発揮するSiO2 はコロイダルシリカとして、ZrO2 はジルコニアゾルとして、SnO2 は酸化スズゾルとして入手することができる。また、これらは市販されており、容易に入手できる。また、上記以外であっても、少なくとも液のpHが8以上で表面に酸化物が形成されうる粒子であればよく、例えば窒化物、ホウ化物、炭化物の粒子などが挙げられる。 また、粒子の形状は球状、直方状、平板状、羽毛状、鎖状など種々の形状であることができ、凹凸構造の形成のしやすさから球状または直方状が好ましい。
【0017】
親水性金属酸化物粒子が第一の親水性金属性酸化物粒子と第二の親水性金属酸化物粒子からなり、前記第一の親水性金属酸化物粒子の粒径の最頻値が10〜30nmであり、第二の親水性金属酸化物粒子の粒径の最頻値が40〜100nmであることが好ましい。この比率にすることで高い曇り止め性能を得ることが出来る。これにより大小の凸凹ができ、小さい凸凹により表面に水膜が形成されやすくなると共に、大きい凸凹により保持できる水量が大きくなると考えられる。
【0018】
アルカリ珪酸塩を用いた場合、アルカリ珪酸塩のSiO2 量と前記親水性金属酸化物粒子との重量比が10:1〜1:4の範囲が好ましく、かつ、前記第一の親水性金属酸化物粒子量と前記第二の親水性金属酸化物粒子量との重量比が40:1〜1:4であることが好ましい。この比率のとき、高い曇り止め性能を得ることが出来る。
【0019】
本発明において曇り止め液(ロ)に添加する親水性無機非晶質物質の硬化促進剤は液のpHが8〜12の範囲で、塗膜の透明性に影響がないような分散、溶解状態になるものが好ましい。例えば、ケイ化物、金属酸化物、ポリリン酸、金属粉末が挙げられるが、好ましい例として、ZnO微粒子分散ゾルが挙げられる。無機非晶質物質、例えば、珪酸ソーダは、水と反応して、水酸化ナトリウムと珪酸になる。この反応では、水酸化ナトリウムが生成する為、酸性の硬化促進剤を用いると速やかに反応が進行するが、pH8以上の硬化促進剤だと反応が遅くなり取り扱いが容易になる。
【0020】
液(ロ)には分子量60〜300、好ましくは分子量60〜100、の常温で液体のアルコールを展開剤として加えることが好ましい。アルコール類を加える事により、塗膜時の液の展開性が良くなり、且つ乾燥時間が早くなり乾燥途中段階での汚れの付着を少なく抑える事ができる。添加量としては、水を主成分とする全溶媒量の20%以下が好ましい。中でも、15%〜20%が特に好ましい。 アルコールの好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、ペンタノール、エチレングリコール、モノアセトンアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。 安全性、入手しやすさからエタノール、イソプロパノール、n−プロパノールが特に好ましい。また、溶媒としての水の添加は、親水性無機非晶質物質の加水分解を促進する観点から好ましいことがある。
【0021】
液(ロ)には、部材の表面に適用されたとき平滑な表面を形成できるよう、レベリング剤を添加してもよい。レベリング剤の好ましい例としては、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−プロポキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングコリールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0022】
液(ロ)には親水性金属酸化物の分散剤として界面活性剤を添加できる。添加が可能な界面活性剤の例としては、スルホン酸ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウム塩、スルホン酸ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルナトリウム塩、脂肪酸ナトリウムセッケン、脂肪酸カリセッケン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェートソーダ塩、アルキルエーテルサルフェートソーダ塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートソーダ塩、アルキルサルフェートTEA塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートTEA塩、2−エチルヘキシルアルキル硫酸エステルナトリウム塩、アシルメチルタウリン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリン酸ナトリウム、ドデルシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリカルボン酸、オレオイルザルコシン、アミドエーテルサルフェート、ラウロイルザルコシネート、スルホFAエステルナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウラート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ソルビタンラウラート、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンラウラート、ポリオキシエレチンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、グリセロールステアレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアルキロールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンステアレート等のノニオン性界面活性剤;ジメチルアルキルベタイン、アルキルグリシン、アミドベタイン、イミダゾリン等の両性界面活性剤、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン4級塩、アルキルイソキノリニウムブロマイド、高分子アミン、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルイミダゾリン4級塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、アルキルプロピレンジアミン酢酸塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
(親水性被膜の表面形状)
本発明の曇り止め剤の塗布によって得られる表面は、比較的平滑な部分と、この平滑部分に比較して隆起した部分とを有する。そして、前記隆起部分を含まない平滑部分のみに線分を設定したとき(図1における線分A)、その線分における断面曲線が示すRz(十点平均粗さ)およびSm(凹凸の平均間隔)が、それぞれ10nm≦Rz≦40nmおよび10nm≦Sm≦300nmであり、かつ、前記隆起部分を通るように線分を設定したとき(図1における線分B)、その線分における断面曲線が示すRz(十点平均粗さ)およびSm(凹凸の平均間隔)が、それぞれ40nm≦Rz≦200nmおよび300nm≦Sm≦1500nmであるようにするのが好ましい。このような表面は、湿潤条件下において速やかに水膜を形成するという優れた親水性を発揮する。例えば、本発明による親水性部材である鏡を浴室に配設したとき、その表面に蒸気や水しぶきが付着すると、表面の親水性被膜が付着した水を水膜として保持し続ける。この状態において、表面温度が露点温度以下であっても水蒸気が表面に触れる状態であれば、または水しぶきの付着によって水滴が付着する状態であれば、親水性被膜上の水膜は維持され続ける。 親水性被膜上に形成される水膜は均質なものであるため、光は散乱されずに直線的に透過する。鏡またはガラスが曇るとは、付着した水が微細な水滴となって表面に付着し、光が散乱される現象をいう。本発明による親水性部材にあっては、付着した水が水滴とならず、均質な水膜となるため、この「曇る」という現象を生じさせない。さらに、付着した水が微細ではなく、比較的大きな水滴となる場合もあり、このような水滴は鏡に写った像を歪める。また、透明ガラスにあっては透過して見える像を歪める。本発明による親水性部材にあっては、比較的大きな水滴も生じさせないため、このような像の歪みを生じさせない。また、水が過剰に付着した場合には水は流下していくが、基材上の親水性被膜は水膜を一定の範囲で保持し続けるため、防曇性を維持できる。 さらに、この均質な水膜によって、汚れ物質が基材表面に直接触れにくくなるため、汚れが付着しにくくなる。すなわち、本発明による親水性部材は優れた防汚性をも発揮する。例えば、浴室環境においては金属石鹸やリンス成分の付着防止効果を発揮する。
【0024】
(親水性金属酸化物の形状)
親水性金属酸化物粒子を、10〜30nmに粒径の最頻値を有する第一の親水性金属酸化物粒子と、40〜100nmに粒径の最頻値を有する第二の親水性金属酸化物粒子とを含んでなるように構成するのが好ましい。なお、ここで粒径はMERVERN社製Zetasizer3000HSにより測定される。
すなわち、親水性金属酸化物粒子として、上記2種類の粒径範囲のものを合わせて用いる。これにより、上述したRzおよびSmの条件を比較的容易に実現することができる。 図1に、本発明の第一の態様による親水性部材の一例の概略断面図を示す。図1に示される親水性被膜は、第一の親水性金属酸化物粒子1、第二の親水性金属酸化物粒子2、および親水性無機非晶質物質3により、前述のRzおよびSmが実現されている。図1に示されるように、第一の態様の親水性部材表面は大小の凹凸が基材4の表面に形成されている。この大小の凹凸が親水性被膜の表面積を大きくし、親水性被膜表面の親水性を最大限に発揮させるものと考えられる。すなわち、親水性部材表面に水膜が容易に形成されるとともに、十分な量の水膜を均質に保持することができると考えられ、また、付着した水滴が凹凸の凸部に引き付けられ、水膜の広がりが促進されると考えられる。また、親水性被膜の水の静止接触角を20度以下とすることにより、迅速な水膜形成が可能になるのでより好ましい。さらに好ましくは10度以下である。
【0025】
(塗布方法)
本発明の曇り止め剤の塗布には、スプレーコーティング、ワイピングなどの方法が使用できる。親水性被膜においては、膜厚の微妙なばらつきが白濁や干渉色を生じる原因になりやすい性質を有する為、ワイピングによる塗布が好ましい。具体的には、曇り止め剤を不織布に適量染み込ませ、この不織布を用いてワイピング塗布し、5℃以上の室温環境で5h以上養生する。
【0026】
本発明の曇り止め剤の塗布に用いる不織物は吸水性にとみ、目が細かく、目付量の多いものが望ましい。具体的には、ベンリーゼTS100(旭化成製)、サンパクト(旭化成製)等が挙げられるがこれに限定されない。
【0027】
本発明の曇り止め剤の塗布後、すぐに1200W程度の家庭用ドライヤーで鏡表面より10cm離して、900cm2当り10秒間熱風により加熱する事が好ましい。この加熱により、耐水性を向上する事ができる。
【0028】
親水性皮膜の保水量
本発明の曇り止め剤により形成された親水性皮膜に水を付着させ、かつ該皮膜を垂直に保持することにより余剰の水を除去した状態における、前記親水性皮膜に付着した水膜の重量は10cm2 あたり0.25〜0.50g、より好ましくは0.25〜0.35gである。このような範囲とすることで、表面に均質化された、一様かつ充分な水膜を形成して、優れた防曇性を発揮させることができる。また、それと同時に高い硬度を実現して、優れた耐久性をも得ることができる。このような水膜重量は、親水性金属酸化物を、親水性金属酸化物の形状の項で述べたように組み合わせることによって実現することができる。 ここで、上記水膜重量は具体的には次のようにして測定される。まず、室温が15〜25℃に設定され、かつ相対湿度が30〜80%の環境において、同環境にてあらかじめ1時間以上安定化させた親水性部材を、天秤にて質量を測定し、これをX(g)とする。測定後、部材の親水性表面がほぼ垂直になるように設置し、水温が15〜25度の室温とほぼ同じにされた水で親水性被膜のみを濡らして全体が濡れて水膜が形成されることを確認する。15秒経過後に下部にたまった水を除去して天秤にて全体重量を測定し、これをY(g)とする。使用した部材の親水性表面の面積をZ(cm2 )とすると、10cm2 あたりの水膜の重量は(Y−X)×10/Z(g)となる。
【0029】
(実施例1)
液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。なお、部とは特に断わりが無ければ重量部を指す。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製 粒径50〜80nm)を7部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製 粒径10〜20nm)を5部、ZnOゾル(シーアイ化成製 粒径15nm)を5部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。液(ロ)のpHは9.0であった。これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
なお、pHの測定には堀場製作所(株)のTWIN pH B−212を使用した。
【0030】
(実施例2)
液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を7.2部、イオン交換水を92.8部混合して調整した。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を1.4部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製)を1部、ZnOゾル(シーアイ化成製)を1部、非イオン系界面活性剤エマルミン240(三洋化成製)を0.006部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を74.6部混合して調整した。液(ロ)のpHは8.9であった。これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0031】
(実施例3) 小コロイダルシリカを変更
曇り止め液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
曇り止め液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカ ST−30(日産化学製 粒径10〜20nm)を3.3部、ZnOゾル(シーアイ化成製)を5部、非イオン系界面活性剤サンノニックSS−120(セイミケミカル製)を0.03部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した(pH 9.0)。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0032】
(比較例1) 硬化促進剤未添加
曇り止め液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
曇り止め液(ロ)として、コロイダルシリカゾルST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカゾルシリカドール20Al(日本化学製)を5部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。液(ロ)のpHは9.0であった。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0033】
(比較例2) 硬化促進剤にリン酸アルミ粉末を使用
液(イ)として、リチウムシリケート75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製)を5部、AlPO3 粉末(和光純薬工業製)を0.75部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を60.23部混合して調整した。ただし、攪拌してもAlPO3 は分散せず、すぐに沈殿した。液(ロ)のpHは8.7であった。これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0034】
(比較例3) 硬化促進剤に第一リン酸アルミ水溶液を使用
液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。なお、部とは特に断わりが無ければ重量部を指す。
液(ロ)として、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製 粒径50〜80nm)を7部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製 粒径10〜20nm)を5部、第一リン酸アルミ水溶液(多木化学製)を15部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。(pH 7.5)これらの液(イ)と液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0035】
(比較例4) 1液タイプの液
メチルシリケート51(三菱化成社製)25gに水25gと0.1Nの塩酸1mlを混合し、室温で約150分マグネットスターラで攪拌した。最初油滴状に分散していたメチルシリケート51が加水分解・縮重合されて、無色透明性の均一なアルコール性シリカゾル溶液が形成された。このアルコール性シリカゾル1部、リチウムシリケート75(日産化学製)を5部、コロイダルシリカ ST−YL(日産化学製)を4.5部、コロイダルシリカ シリカドール20Al(日本化学製)を3部、ZnOゾル(シーアイ化成製)を1部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.04部、イソプロピルアルコールを35部、イオン交換水を130部混合して調整した。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
【0036】
(参考例) 膜を加熱硬化
曇り止め液(イ)として、リチウムシリケートLSS―75(日産化学製)を36部、イオン交換水を64部混合して調整した。
曇り止め液(ロ)として、コロイダルシリカゾルST−YL(日産化学製)を7部、コロイダルシリカゾルシリカドール20Al(日本化学製)を5部、フッ素樹脂系界面活性剤S−145(セイミケミカル製)を0.02部、イソプロピルアルコールを22部、イオン交換水を62部混合して調整した。これらの曇り止め液(イ)と曇り止め液(ロ)を1:4の比率で混合して曇り止め剤を作製した。
この液をスプレーコートで基材に吹き付け、160℃で30分加熱した。
【0037】
(安定性)
上記実施例1〜3及び、比較例1〜3で作製した、それぞれの液(イ)と液(ロ)、比較例4の曇り止め剤を、室温で放置し、液の性状変化を粒径、pH、粘性、塗布膜の鏡への密着性で確認した。実施例1〜3、比較例1のそれぞれの液(イ)と液(ロ)は常温で1年程度の保存安定性を確認できた。比較例2では液(ロ)中のAlPO3 は調整後、すぐに沈殿し、更にシリカ分の凝集を助長してしまった。比較例3では液(ロ)が数時間の間に徐々にゲル化し、不溶成分の沈殿が生じた。比較例4では、曇り止め剤の保管時間とともに、被膜の耐温水性が低下していった。
【0038】
(塗膜の外観)
基材として新しい浴室用鏡をダイヤモンド入り研磨スポンジ(キョーエイ製 ダイヤモンドマジック
II 鏡・ガラス用)で表面を十分に研磨洗浄し、全面的に水はじき部分のない状態にしたものを用いた。上記実施例1〜3及び、比較例1〜3で作製した曇り止め剤を不織布(旭化成製 ベンリーゼTS−100)に15g染み込ませ、基材に塗布した。塗膜が自然乾燥後、40cm離れた場所より、塗膜の外観を目視観察した。結果は、塗膜の白濁度合で判定し、明らかに使用上支障があると思われる場合×とした。比較例2、3では、液中に凝集成分、硬化促進剤沈殿成分が存在する為に、外観が良好な膜を得ることができなかった。
【0039】
(耐温水性)
上記実施例1〜3及び、比較例1〜3で作製した曇り止め剤を基材に塗布し、常温で5時間乾燥した。各基材を35℃の温水に連続浸漬させ、所定時間後、サンプルを取り出し、水を十分含んだウレタンスポンジ(住友3M製 スコッチブライト バスシャインのウレタンスポンジ面)に25g/cm2 の荷重を加え5往復摺動を繰返し、その後、走査型電子顕微鏡で観察した。2時間浸漬後塗膜の存在が確認できた場合を○、確認できない場合を×、更に24時間浸漬後、塗膜の存在が確認できた場合を◎とした。比較例1では、30分の処理後膜が確認できなくなった。
【0040】
(防曇性)
上記実施例1 ̄3及び、比較例1〜3で作製した曇り止め剤を基材に塗布し、常温で5時間乾燥したサンプルを浴室に設置して曇り具合の観察を行った。
入浴時、浴室鏡全面にお湯を散水し、入浴前に調整した0.1%のリンス希釈液(資生堂製 スーパーマイルドリンス)を浴室鏡に霧吹きにより塗布し、温水シャワーで十分濯ぎ、その後水膜の張り具合を観察した。観察時、水膜が全面的に形成された場合を○とし、水膜が形成できない部分がある場合を×とした。比較例1以外は同様に曇りにくいという結果となった。
【0041】
以上の結果を表1にまとめた。適切な硬化促進剤を添加する事により、焼き付けた場合と同様の実用レベルの性能を有する事がわかり、一般鏡の防曇化のみならず、初期に焼き付け防曇機能膜を施した流滴防曇鏡が防曇機能を焼失した場合の補修剤として機能する事が確認できた。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れた曇り止め剤を提供することが出来る。この曇り止め剤は塗布後、常温で硬化できる。特に浴室鏡においては、毎日の入浴に支障を与えることなく、且つ現在使用中の浴室鏡を取り外す事無く、現場で、一般鏡及び防曇機能を焼失した流滴防曇鏡の表面の防曇加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の曇り止め剤を塗布した鏡の断面を示す概念図である。
【符号の説明】
1…第一の親水性金属酸化物粒子1、2…第二の親水性金属酸化物粒子2、3…硬化促進剤粒子、4…、親水性無機非晶質物質、5…鏡
Claims (6)
- 下記(イ)、(ロ)を使用時に混合して使用することを特徴とする曇り止め剤。
(イ)親水性無機非晶質物質と、溶媒を含む液
(ロ)親水性金属酸化物粒子と、親水性無機非晶質物質の硬化促進剤とが少なくとも分散され、pHが8.0〜12.0である液 - 前記硬化促進剤がZnOである請求項1記載の曇り止め剤。
- 前記親水性無機非晶質物質が、アルカリ珪酸塩、アルカリホウ珪酸塩、アルカリジルコン酸塩、およびリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載の曇り止め剤。
- 前記親水性金属酸化物粒子が、SiO2 、ZrO2 、およびSnO2 からなる群から選択される一種以上を含んでなる、請求項1〜3いずれか一項に記載の親水性部材。
- 前記親水性金属酸化物粒子が第一の親水性金属性酸化物粒子と第二の親水性金属酸化物粒子からなり、前記第一の親水性金属酸化物粒子の粒径の最頻値が10〜30nmであり、第二の親水性金属酸化物粒子の粒径の最頻値が40〜100nmである、請求項1〜4いずれか一項に記載の親水性部材。
- 浴室鏡用に使用されることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の曇り止め剤。
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- 2003-04-18 JP JP2003114214A patent/JP2004315730A/ja active Pending
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