JP2004314561A - 積層材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維強化プラスチック板の成形工程と、ポリイミド発泡材の成形工程と、繊維強化プラスチック板とポリイミド発泡材の接合工程とが、一度に同時に実施され、もって、工程が大幅に削減されて、積層材が簡単容易に製造され、ポリイミド発泡材が、必要寸法形状に成形され寸法加工も不要化される、積層材の製造方法を提案する。
【解決手段】この製造方法では、まずプリプレグ板7間に、ポリイミドバルーン9と、ポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12よりなるバインダー10との混合物が、充填される。次に加熱が行われ、プリプレグ板7が硬化されて繊維強化プラスチック板が成形され、又、バインダー10が硬化して、ポリイミドバルーン9間を結合させポリイミド発泡材が成形されると共に、ポリイミド発泡材を繊維強化プラスチック板に接合させ、もって積層材が製造される。
【選択図】 図1
【解決手段】この製造方法では、まずプリプレグ板7間に、ポリイミドバルーン9と、ポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12よりなるバインダー10との混合物が、充填される。次に加熱が行われ、プリプレグ板7が硬化されて繊維強化プラスチック板が成形され、又、バインダー10が硬化して、ポリイミドバルーン9間を結合させポリイミド発泡材が成形されると共に、ポリイミド発泡材を繊維強化プラスチック板に接合させ、もって積層材が製造される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層材の製造方法に関する。すなわち、繊維強化プラスチック(FRP)板間に、ポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
このような積層材は、従来、繊維強化プラスチック板にポリイミド発泡材を接合させることにより、製造されていた。
すなわち、予め加熱発泡成形されたポリイミド発泡材を使用し、これを寸法加工してから、繊維強化プラスチック板やそのプリプレグ板に接合することにより、この積層材は製造されていた。
例えば、予め発泡成形,寸法加工されたポリイミド発泡材に対し、→接着剤が塗布された繊維強化プラスチック板を、張り合わせた後、→加熱して接着剤を溶融,硬化させて接合させる製造方法により、→積層材が製造されていた。
又例えば、予め発泡成形,寸法加工されたポリイミド発泡材に対し、→熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板(繊維強化プラスチック板の前段階にあり完全硬化していないプリプレグ板)を、配した後、→加熱することにより、プリプレグ板を繊維強化プラスチック板化しつつ、ポリイミド発泡材と接合する製造方法により、→積層材が製造されていた。
【0003】
《先行技術文献情報》
このような製造方法としては、例えば次の特許文献1,特許文献2に示されたものが、挙げられる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−77709号公報
【0005】
【特許文献2】
実開昭58−15035号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の積層材の製造方法については、次の問題が指摘されていた。
すなわち、従来の製造方法では、前述したように、予め発泡成形されて寸法加工されたポリイミド発泡材が使用されており、事後、繊維強化プラスチック板等が接合されていた。
このように、事前のポリイミド発泡材の製造工程と、事後の接合工程とが、別工程で行われていた。更に、繊維強化プラスチック板の製造工程(プリプレグ板の完全硬化工程)も、別工程で行われることが多かった。
もって、積層材の製造工程が複雑であり多岐にわたり、その分、手間がかかり設備負担が大となり、コスト高となる、という問題が指摘されていた。
【0007】
《本発明について》
本発明の積層材の製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、なされたものである。
そして本発明は、繊維強化プラスチック板の成形と、ポリイミド発泡材の成形と、両者間の接合とを、一度で同時に行うようにしたこと、を特徴とする。
もって本発明は、このようなコ・キュア成形の採用により、大幅な工程削減が実現されコスト面に優れた、積層材の製造方法を提案すること、を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。この請求項1の製造方法は、繊維強化プラスチック板間にポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材の製造方法に関する。
そしてまず、繊維基材に樹脂が付着,含浸されたプリプレグ板を、相互間に間隔を存しつつ位置決めする。次に、該プリプレグ板間の間隔に、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーンと、バインダーとの混合物を充填する。
それから、全体を加熱することにより、該プリプレグ板が完全硬化され、又、該バインダーが硬化して、該ポリイミドバルーン間を結合させると共に、該プリプレグ板と接合せしめる。
もって、該プリプレグ板による該繊維強化プラスチック板の成形と、結合された該ポリイミドバルーンによる該ポリイミド発泡材の成形と、該繊維強化プラスチック板と該ポリイミド発泡材間の接合とが、一度に行われること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については次のとおり。請求項2の積層材の製造方法は、請求項1において、該バインダーとして、該ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有すると共に、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダー、又はポリイミド前駆体が溶剤に溶解された液状のポリイミドワニスが、用いられること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3の積層材の製造方法は、請求項1において、位置決めされた該プリプレグ板間の間隔に、これを多数の小区画空間に仕切る桁やハニカムコア等の補強材が、該混合物の充填前又は充填と共に、予め介装されること、を特徴とする。
【0010】
《作用について》
本発明に係る積層材の製造方法は、このようになっているので、次のようになる。
▲1▼この製造方法では、まずプリプレグ板が、相互間に一定の間隔を存しつつ位置決めされる。
▲2▼次に、プリプレグ板間の間隔に、ポリイミドバルーンとバインダーの混合物が、充填される。
▲3▼バインダーは、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有する、ポリイミドパウダー又はポリイミドワニスよりなる。
▲4▼なお、混合物の充填前又は充填と共に、プリプレグ板間の間隔に桁やハニカムコア等の補強材が、介装される場合もある。
▲5▼それから、加熱が実施され、もって第1に、プリプレグ板が完全硬化されて、繊維強化プラスチック板が成形される。第2に、バインダーのポリイミドパウダーやポリイミドワニスのポリイミド前駆体が、溶融,硬化して、ポリイミドバルーン間を結合させ、ポリイミド発泡材が成形されると共に、第3に、ポリイミド発泡材を繊維強化プラスチック板に接合させる。
▲6▼このようにして、繊維強化プラスチック板間にポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材が製造される。
【0011】
▲7▼この製造方法では、このように、繊維強化プラスチック板の成形と、ポリイミド発泡材の成形と、両者間の接合とが、一度に行われるので、大幅に工程が削減され、積層材が簡単容易に製造される。ポリイミド発泡材は、必要な寸法形状にて成形され、寸法加工の必要もない。
▲8▼なお、製造された積層材は、バインダーに、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有するポリイミドパウダーやポリイミドワニスを用いたので、耐熱性に優れている。
▲9▼又、繊維強化プラスチック板間に、ポリイミド発泡材と共に、桁やハニカムコア等の補強材が介装され場合は、圧縮強度や曲げ剛性に特に優れている。
【0012】
【発明の実施の形態】
《図面について》
以下、本発明の積層材の製造方法を、図面に示す発明の実施の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3,図4,図5等は、本発明の実施の形態の説明に供する。
そして、図1の(1)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(3)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、それぞれ示す。
図2は、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、加熱炉を用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。図3も、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、ホットプレスを用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。
図4の(1)図は、製造された積層材の1例の正断面説明図、(2)図は、桁が介装された例の正断面説明図、(3)図は、ハニカムコアが介装された例の正断面説明図、(4)図は、ハニカムコアの斜視図である。
図5は、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図はポリイミドバルーンを、(2)図はポリイミドパウダーを、(3)図はポリイミドワニスを、(4)図はポリイミド発泡材を示す。
【0013】
《製造方法の概要について》
最初に、製造方法の概要について述べる。この製造方法は、例えば図4の(1)に示したように、繊維強化プラスチック板1間にポリイミド発泡材2が芯材として介装された、積層材3の製造方法に関する。
そして、この製造方法では、図1中に示したように、まず、繊維基材4に樹脂5,6が付着,含浸されたプリプレグ板7が、複数組、相互間に間隔8を存しつつ位置決めされる。それから、プリプレグ板7間の間隔8に、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン9と、バインダー10との混合物が、充填される。
バインダー10としては、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を有すると共に、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダー11、又は、ポリイミド前駆体が溶剤13に溶解された液状のポリイミドワニス12が、用いられる。
【0014】
それから、図2,図3に示したように、全体を加熱することにより、プリプレグ板7が完全硬化され、又、バインダー10が硬化して、ポリイミドバルーン9間を結合させると共に、プリプレグ板7と接合せしめる。
もって、プリプレグ板7による繊維強化プラスチック板1の成形と、結合されたポリイミドバルーン9によるポリイミド発泡材2の成形と、プリプレグ板7そして繊維強化プラスチック板1とポリイミド発泡材2間の接合とが、一度に行われる。
このようにして、積層材3が製造される。この積層材3は、繊維強化プラスチック板1とポリイミド発泡材2の特性を生かし、強度,断熱性,耐熱性,軽量性等に優れており、各種構造材その他に広く使用される。
製造方法の概要は、このようになっている。
【0015】
《ポリイミドパウダー11について》
まず、ポリイミド素材として準備され、ポリイミドバルーン9の原材料となると共に、ポリイミドバルーン9間のバインダー10として必須的に使用される、ポリイミドパウダー11について述べる。図5の(2)図に示したように、ポリイミドパウダー11は、粉末状のポリイミド前駆体よりなる。
つまりポリイミドパウダー11は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等の分子間が未結合状態で、イミド化していないポリイミド前駆体よりなると共に、粉末状・固体状の集合体よりなる。このようなポリイミドパウダー11は、例えば、特表2000−515584号公報中にも示されている。
そして、このようなポリイミドパウダー11は、後述するように、加熱することによりイミド化して発泡し、もってポリイミドバルーン9となるが、ポリイミドバルーン9は未だバルーン相互間は未結合状態にあり、更に加熱することにより、バルーン相互間が結合されてポリイミド発泡材2となる。
なお本発明では、このようなポリイミドバルーン9相互間の結合用のバインダー10として、別途準備されたポリイミドパウダー11やポリイミドワニス12が混合され、その加熱,硬化によりポリイミドバルーン9相互間が結合される。なお、このように結合用として用いられるポリイミドパウダー11は、ほとんど発泡せず、例え発泡してもすぐに潰れて、バインダー10として機能する。
【0016】
このようなポリイミドパウダー11は、特表2000−515584号公報中にも記載されているが、例えば次のように製造される。
まず、次式(1)で示される芳香族酸ニ無水物又は芳香族酸ニ無水物誘導体である芳香族化合物Aと、次式(2)で示される芳香族ジアミン又は芳香族ジアミン誘導体である芳香族化合物Bとの、略等モル(モル比0.95〜1.05)の混合物と、この混合物と水素結合によって錯体を形成し得る錯形成剤Cと、溶剤Dと、からなる混合溶剤を調整する。
それから、この混合溶剤を加熱して、過剰となった分の錯形成剤Cと揮発性の溶剤Dとを除去して、固体化したポリイミド前駆体を得た後、これを粉砕して粉末状とすることにより、ポリイミドパウダー11が製造される。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
式中nは、0〜3の整数であり、R1は、水素原子もしくはアルキル基であり、R2は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個持つ4価の芳香族残基であり、R3は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個有する2価の芳香族残基である。
芳香族化合物Aの芳香族酸ニ無水物としては、3,3’,4,4’,−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物等が、代表的である。
芳香族化合物Bの芳香族ジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、P−フェニレンジアミン等が、代表的である。
【0020】
錯形成剤Cは、ポリイミド前駆体を事後に発泡させる作用を有し、テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル化合物が代表的である。この錯形成剤Cの沸点は、200℃以下のものが好ましく、沸点が200℃を越えると、均一な発泡が起こりにくくなる。
又、固体化したポリイミド前駆体つまりポリイミドパウダー11中における錯形成剤Cの含有量は、合計量の1重量%〜15重量%程度であることが好ましい。1重量%未満では、ポリイミド前駆体を事後十分に発泡させることが困難化し、又、15重量%を超えると、均一な発泡が起こりにくくなる。ポリイミドパウダー11は、例えばこのようにして製造される。
そしてポリイミドパウダー11は、次に述べるポリイミドバルーン9の発泡製造用に使用される外、製造されたポリイミドバルーン9間の結合用のバインダー10としても使用される。
後者のポリイミドパウダー11は、事後のポリイミド発泡材2のバインダー10としての耐熱性に鑑み、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を備えたポリイミド前駆体が選択使用され、例えば、ポリイミドバルーン9用のポリイミド前駆体と同一のポリイミド前駆体が使用される。又、発泡の必要がないので、溶剤Dの含有率は低く抑えられる。
【0021】
《ポリイミドバルーン9について》
次に、ポリイミド素材として必須的に準備される、ポリイミドバルーン9について述べる。図5の(1)図に示したように、ポリイミドバルーン9は、ポリイミド前駆体が、1次発泡しイミド化して硬化すると共に、相互間が未結合状態・独立状態にあり、フライアブルな微細気泡状をなす。
すなわちポリイミドバルーン9は、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽いバルーン状・粉状の集合体よりなり、いわば、図5の(2)図に示したポリイミドパウダー11と、図5の(4)図に示したポリイミド発泡材2との中間物質と考えてもよい。
【0022】
このようなポリイミドバルーン9は、例えば、次のように製造される。まず、前述により得られたポリイミドパウダー11、つまり発泡性を有するポリイミド前駆体の粉末を、容器に入れた後、100℃〜170℃程度の温度で加熱しつつ攪拌することにより、粉末が膨らみ1次発泡・バルーン化される。
そして、もしも更にそのまま発泡を進行させると、バルーン化した粉末同士が結合して、ポリイミド発泡材2へと進行してしまうので、これを回避するため、温度を制御し急激な発泡を抑制しながら攪拌して、バルーン化した粉同士の結合を回避する。この間、空気やガスを、バルーン化した粉間に流入させるとよい。
この状態で30分〜60分間程度、加熱しながら攪拌すると、バルーン化した粉内部の溶剤(前記溶剤D)が気化し、もって発泡が止まると共に、事後、バルーン化した粉間の結合の虞はなくなる。それから、容器内の温度を170℃以上に上げるべく加熱すると、バルーン化した粉がそのまま硬化し、もって所望のポリイミドバルーン9が製造される。
ポリイミドバルーン9の硬化程度は、加熱温度と時間によって決定されるが、硬化程度が低いと、保存性が悪く早期使用が必要となる。そこで、ポリイミドバルーン9の硬化程度は、加熱に要するコストと使用の仕方により、決定される。ポリイミドバルーン9は、例えばこのようにして製造される。
ポリイミドバルーン9は、このようになっている。
【0023】
《ポリイミドワニス12について》
次に、バインダー10として必須的に準備される、ポリイミドワニス12について述べる。図5の(3)図に示したように、ポリイミドワニス12は、イミド化していないポリイミド前駆体が、溶剤13に溶解されてなり、液状をなす。
つまりポリイミドワニス12は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等のイミド化していないポリイミド前駆体を、溶剤13中に溶解せしめたものであり、代表例としては、前述したポリイミドパウダー11を溶剤13中に溶解したものが挙げられる。
そして、ポリイミドワニス12中のポリイミド前駆体、例えばポリイミドパウダー11は、事後のポリイミド発泡材2のバインダー10としての耐熱性に鑑み、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を備えたものが、選択使用され、例えば、ポリイミドバルーン9用のポリイミド前駆体と同一のポリイミド前駆体が使用される。
溶剤13としては、N−メチルピロリドン(NMP)やテトラヒドロフラン(THF)等の高粘度溶剤が代表的に使用されるが、メタノールやアセトン等の低粘度溶剤を混合したものが、使用される場合もある。
ポリイミドワニス12は、このようになっている。
【0024】
《プリプレグ板7について》
次に、準備されるプリプレグ板7について述べる。図1中に示したプリプレグ板7は、補強繊維たる繊維基材4に、マトリックスとして樹脂が付着,含浸されてなり、図4の(1)図に示した繊維強化プラスチック板1として、完全硬化され成形される前の段階のものを示す。
繊維基材4としては、カーボン,ガラス等を含むセラミック繊維や、ステンレス,その他の金属繊維や、樹脂繊維、その他の各種繊維が使用される。
樹脂としては、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド、全芳香族ポリイミド等のポリイミド系樹脂、その他の熱硬化性樹脂5、更には、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ナイロン系樹脂、その他の熱可塑性樹脂6が使用される。
熱硬化性樹脂5をマトリックスとして使用したプリプレグ板7は、かなりの柔軟性を帯びた半硬化状態にあり、又、熱可塑性樹脂6をマトリックスとして使用したプリプレグ板7も、未だ完全硬化状態には至っていない(なお本明細書では、熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたものも、繊維強化プラスチック板1の前段階状態にあるものとして、プリプレグ板7と称する)。
プリプレグ板7は、このようになっている。
【0025】
《充填工程について》
本発明の製造方法では、まず、図1中に示したように、このようなプリプレグ板7が、間隔8を存しつつ位置決めされる。
プリプレグ板7は、1枚、又は数枚が張り合わされた積層板として使用され、このようなプリプレグ板7が、相互間に一定の間隔8を置いて位置決めされる。
図1の(1)図の例では、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で使用され、図1の(2)図の例では、熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で使用されている。図1の(3)図の例では、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で複数組使用され、図1の(4)図の例では、熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で複数組使用されている。
なお、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしてプリプレグ板7は、柔軟性を帯びており形状を保持しにくいので、外側に金属等の治具を沿わせて置くか、又は、張り合わせ枚数を増やして剛性を高めるようにする。
【0026】
そして、この製造方法では、図1に示したように、このようなプリプレグ板7間の間隔8に、前述により予め準備されていたポリイミドバルーン9(図5の(1)図を参照)とバインダー10との混合物が、充填される。
バインダー10としては、前述により予め準備されていたポリイミドパウダー11(図5の(2)図を参照)、又はポリイミドワニス12(図5の(3)図を参照)が、用いられる。
そして、ポリイミドバルーン9とバインダー10とは、十分に攪拌・混合された状態で、充填される。
【0027】
《加熱工程について》
この製造方法では、次に、図2,図3に示したように、加熱が実施される。すなわち、前述によりポリイミドバルーン9とバインダー10が間隔8に充填されたプリプレグ板7は、枠14で固定された後、図2に示した加熱炉15に収納されたり、図3に示したホットプレス16間に挟み込まれたり、ヒーターが取り付けられて、加熱される。
なお、ポリイミドバルーン9は、発泡により内部にそれぞれ空気を含んでおり、断熱性に富んでいる。そこで加熱効率を高めるために、上述した熱伝導による加熱に、図2の(2)図や図3の(2)図に示したように、高周波誘電加熱を組み合せて併用すると、短時間のうちに温度上昇,加熱が実現される。
図2の(2)図や図3の(2)図の例では、高周波電極17が対をなして周りに配設されており、高周波電源18からの高周波電流により、高周波電極17間に磁束が形成され、ジュール熱による加熱が実施される。
【0028】
そして、このような加熱により、まず、プリプレグ板7が繊維強化プラスチック板1として完全硬化される。
すなわち、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしたプリプレグ板7は、熱硬化性樹脂5が加熱により硬化して、繊維強化プラスチック板1となる。熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたプリプレグ板7は、加熱後の冷却により硬化して、繊維強化プラスチック板1となる。
これと共に、このような加熱により、バインダー10のポリイミドパウダー11やポリイミドワニス12中のポリイミド前駆体が、溶融,硬化して、接着剤として機能する。
これにより、まず図4の(4)図に示したように、ポリイミドバルーン9間の接触箇所に結合部19が形成され、もってポリイミドバルーン9間が結合されて、ポリイミド発泡材2となる。これと共に、このようなポリイミド発泡材2と上述した繊維強化プラスチック板1間が接合される。
【0029】
繊維強化プラスチック板1間の芯材となるポリイミド発泡材2は、断熱性,耐熱性,軽量性等に優れており、250℃程度以上の熱にも十分耐えることができ、質量は4kgf/m3〜130kgf/m3程度である。
なお、バインダー10としてポリイミドワニス12が使用された場合、その溶剤13は、加熱により、気化,ガス化して除去される。
これらにより、例えば図4の(1)図に示したように、繊維強化プラスチック板1間に、ポリイミド発泡材2が少なくとも一層以上一体化されつつ介装された、積層材3が製造される。
加熱工程は、このようになっている。
【0030】
《補強材の介装について》
なお、図4の(2)図,(3)図に示したように、補強用の桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等の補強材が、繊維強化プラスチック板1の間隔8間に、ポリイミド発泡材2と共に介装される場合もある。
このような積層材3の製造方法について述べておくと、この場合には、まず、前述により位置決めされたプリプレグ板7間の間隔8に、これを多数の小区画空間に仕切る桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等の補強材が、ポリイミドバルーン9とバインダー10の混合物の充填前又は充填と共に、介装される。ハニカムコア21は、図4の(4)図に示したように、セル壁22にて区画形成された中空柱状の多数のセル23の集合体よりなる。
そして、これらの補強材は、混合物の充填前にプリプレグ板7間の間隔8に介装され、事後に混合物が充填されるか、又は、予め混合物が充填せしめられてから間隔8に介装されるか、その他により、加熱に先立ってプリプレグ板7間に介装される。なお、この製造方法について、事後の加熱等に関しては、前述したところに準じる。
このようにして、桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等の補強材が、ポリイミド発泡材2と共に繊維強化プラスチック板1の間隔8に介装された、積層材3が製造される。
補強材の介装は、このように行われる。
【0031】
《作用等》
本発明に係る積層材3の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
▲1▼この製造方法では、まずプリプレグ板7が、相互間に一定の間隔8を存しつつ位置決めされる(図1を参照)。プリプレグ板7は、繊維基材4に熱硬化性樹脂5や熱可塑性樹脂6等の樹脂が付着,含浸されてなり、繊維強化プラスチック板1として完全硬化される以前の前段階状態にある。
▲2▼次に、プリプレグ板7間の間隔8に、ポリイミドバルーン9とバインダー10との混合物が、流し込み等により充填される(図1を参照)。
▲3▼混合物のポリイミドバルーン9は、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に、相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなす(図5の(1)図を参照)。
バインダー10としては、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を有する、ポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12が用いられる。ポリイミドパウダー11は、ポリイミド前駆体が粉末状とされてなり、ポリイミドワニス12は、ポリイミド前駆体が溶剤13に溶解されてなり、液状をなす(図5の(2)図,(3)図を参照)。
▲4▼なお、このような混合物の充填前又は充填と共に、プリプレグ板7間の間隔8に、これを多数の小区画空間に仕切る桁20やハニカムコア21等の補強材が、予め介装される場合もある(図4の(2)図,(3)図を参照)。
【0032】
▲5▼それから、全体が加熱される(図2,図3を参照)。そして、この加熱により、第1に、プリプレグ板7が完全硬化され、もって繊維強化プラスチック板1が成形される。
第2に、バインダー10のポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12のポリイミド前駆体が、溶融,硬化して、ポリイミドバルーン9間を結合させ、もってポリイミド発泡材2が成形される。
第3に、溶融,硬化した、バインダー10のポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12のポリイミド前駆体が、ポリイミド発泡材2を、プリプレグ板7そして繊維強化プラスチック板1に接合させる。
▲6▼このようにして、繊維強化プラスチック板1間にポリイミド発泡材2が芯材として介装された、積層材3が製造される(図4の(1)図を参照)。
【0033】
▲7▼この製造方法では、このように、繊維強化プラスチック板1の成形工程と、ポリイミド発泡材2の成形工程と、繊維強化プラスチック板1とポリイミド発泡材2との接合工程とが、一度に同時に行われる。
もって、これらが一体化された積層材3が、大幅に工程が削減された製造方法により、簡単容易に製造される。ポリイミド発泡材2は、自然に必要な寸法形状にて成形され、事前に寸法加工する必要はない。
【0034】
▲8▼なお、製造された積層材3は、ポリイミド発泡材2のポリイミドバルーン9間のバインダー10として、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を有するポリイミドパウダー11やポリイミドワニス12を用いているので、耐熱性に優れている。
▲9▼又、前述により桁20やハニカムコア21等の補強材が介装された場合は、繊維強化プラスチック板1間に、このような補強材がポリイミド発泡材2と共に介装された、積層材3が製造される(図4の(2)図,(3)図を参照)。
この積層材3は、繊維強化プラスチック板1間が、補強材にて複雑で小さな多数の小区画空間に仕切られているので、圧縮強度や曲げ剛性に特に優れている。
なお、この積層材3において、ポリイミド発泡材2は、この複雑で小さな多数の各小区画空間内に、それぞれ確実に充填,介装されると共に、溶融,硬化したバインダー10のポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12のポリイミド前駆体により、補強材とも確実に接合される。
【0035】
【発明の効果】
《本発明の特徴》
本発明に係る積層材の製造方法は、以上説明したように、繊維強化プラスチック板の成形と、ポリイミド発泡材の成形と、両者間の接合とを、一度に同時に行うようにしたこと、を特徴とする。
そこで本発明は、次の効果を発揮する。
【0036】
《効果について》
このようなコ・キュア成形の採用により、大幅な工程削減が実現され、コスト面に優れている。
すなわち、本発明の製造方法では、1つの加熱工程により、2つの成形工程と1つの接合工程とが、合体して一度に実施される。
前述したこの種従来例の製造方法のように、これらの工程を前後に分けて別々に実施すると共に、ポリイミド発泡材を事前に寸法加工していたのに比べ、製造工程が大幅に簡略化される。もってその分、手間が省け製造設備が簡略化される等、コスト面に優れつつ積層材が製造される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層材の製造方法について、発明の実施の形態の説明に供し、充填工程の各例の正断面説明図である。そして(1)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(3)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、それぞれ示す。
【図2】同発明の実施の形態の説明に供し、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、加熱炉を用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。
【図3】同発明の実施の形態の説明に供し、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、ホットプレスを用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。
【図4】同発明の実施の形態の説明に供し、(1)図は、製造された積層材の1例の正断面説明図、(2)図は、桁が介装された例の正断面説明図、(3)図は、ハニカムコアが介装された例の正断面説明図、(4)図は、ハニカムコアの斜視図である。
【図5】同発明の実施の形態の説明に供し、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図は、ポリイミドバルーンを示し、(2)図は、ポリイミドパウダーを示し、(3)図は、ポリイミドワニスを示し、(4)図は、ポリイミド発泡材を示す。
【符号の説明】
1 繊維強化プラスチック板
2 ポリイミド発泡材
3 積層材
4 繊維基材
5 熱硬化性樹脂
6 熱可塑性樹脂
7 プリプレグ板
8 間隔
9 ポリイミドバルーン
10 バインダー
11 ポリイミドパウダー
12 ポリイミドワニス
13 溶剤
14 枠
15 加熱炉
16 ホットプレス
17 高周波電極
18 高周波電源
19 結合部
20 桁
21 ハニカムコア
22 セル壁
23 セル
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層材の製造方法に関する。すなわち、繊維強化プラスチック(FRP)板間に、ポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
このような積層材は、従来、繊維強化プラスチック板にポリイミド発泡材を接合させることにより、製造されていた。
すなわち、予め加熱発泡成形されたポリイミド発泡材を使用し、これを寸法加工してから、繊維強化プラスチック板やそのプリプレグ板に接合することにより、この積層材は製造されていた。
例えば、予め発泡成形,寸法加工されたポリイミド発泡材に対し、→接着剤が塗布された繊維強化プラスチック板を、張り合わせた後、→加熱して接着剤を溶融,硬化させて接合させる製造方法により、→積層材が製造されていた。
又例えば、予め発泡成形,寸法加工されたポリイミド発泡材に対し、→熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板(繊維強化プラスチック板の前段階にあり完全硬化していないプリプレグ板)を、配した後、→加熱することにより、プリプレグ板を繊維強化プラスチック板化しつつ、ポリイミド発泡材と接合する製造方法により、→積層材が製造されていた。
【0003】
《先行技術文献情報》
このような製造方法としては、例えば次の特許文献1,特許文献2に示されたものが、挙げられる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−77709号公報
【0005】
【特許文献2】
実開昭58−15035号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の積層材の製造方法については、次の問題が指摘されていた。
すなわち、従来の製造方法では、前述したように、予め発泡成形されて寸法加工されたポリイミド発泡材が使用されており、事後、繊維強化プラスチック板等が接合されていた。
このように、事前のポリイミド発泡材の製造工程と、事後の接合工程とが、別工程で行われていた。更に、繊維強化プラスチック板の製造工程(プリプレグ板の完全硬化工程)も、別工程で行われることが多かった。
もって、積層材の製造工程が複雑であり多岐にわたり、その分、手間がかかり設備負担が大となり、コスト高となる、という問題が指摘されていた。
【0007】
《本発明について》
本発明の積層材の製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、なされたものである。
そして本発明は、繊維強化プラスチック板の成形と、ポリイミド発泡材の成形と、両者間の接合とを、一度で同時に行うようにしたこと、を特徴とする。
もって本発明は、このようなコ・キュア成形の採用により、大幅な工程削減が実現されコスト面に優れた、積層材の製造方法を提案すること、を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。この請求項1の製造方法は、繊維強化プラスチック板間にポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材の製造方法に関する。
そしてまず、繊維基材に樹脂が付着,含浸されたプリプレグ板を、相互間に間隔を存しつつ位置決めする。次に、該プリプレグ板間の間隔に、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーンと、バインダーとの混合物を充填する。
それから、全体を加熱することにより、該プリプレグ板が完全硬化され、又、該バインダーが硬化して、該ポリイミドバルーン間を結合させると共に、該プリプレグ板と接合せしめる。
もって、該プリプレグ板による該繊維強化プラスチック板の成形と、結合された該ポリイミドバルーンによる該ポリイミド発泡材の成形と、該繊維強化プラスチック板と該ポリイミド発泡材間の接合とが、一度に行われること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については次のとおり。請求項2の積層材の製造方法は、請求項1において、該バインダーとして、該ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有すると共に、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダー、又はポリイミド前駆体が溶剤に溶解された液状のポリイミドワニスが、用いられること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3の積層材の製造方法は、請求項1において、位置決めされた該プリプレグ板間の間隔に、これを多数の小区画空間に仕切る桁やハニカムコア等の補強材が、該混合物の充填前又は充填と共に、予め介装されること、を特徴とする。
【0010】
《作用について》
本発明に係る積層材の製造方法は、このようになっているので、次のようになる。
▲1▼この製造方法では、まずプリプレグ板が、相互間に一定の間隔を存しつつ位置決めされる。
▲2▼次に、プリプレグ板間の間隔に、ポリイミドバルーンとバインダーの混合物が、充填される。
▲3▼バインダーは、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有する、ポリイミドパウダー又はポリイミドワニスよりなる。
▲4▼なお、混合物の充填前又は充填と共に、プリプレグ板間の間隔に桁やハニカムコア等の補強材が、介装される場合もある。
▲5▼それから、加熱が実施され、もって第1に、プリプレグ板が完全硬化されて、繊維強化プラスチック板が成形される。第2に、バインダーのポリイミドパウダーやポリイミドワニスのポリイミド前駆体が、溶融,硬化して、ポリイミドバルーン間を結合させ、ポリイミド発泡材が成形されると共に、第3に、ポリイミド発泡材を繊維強化プラスチック板に接合させる。
▲6▼このようにして、繊維強化プラスチック板間にポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材が製造される。
【0011】
▲7▼この製造方法では、このように、繊維強化プラスチック板の成形と、ポリイミド発泡材の成形と、両者間の接合とが、一度に行われるので、大幅に工程が削減され、積層材が簡単容易に製造される。ポリイミド発泡材は、必要な寸法形状にて成形され、寸法加工の必要もない。
▲8▼なお、製造された積層材は、バインダーに、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有するポリイミドパウダーやポリイミドワニスを用いたので、耐熱性に優れている。
▲9▼又、繊維強化プラスチック板間に、ポリイミド発泡材と共に、桁やハニカムコア等の補強材が介装され場合は、圧縮強度や曲げ剛性に特に優れている。
【0012】
【発明の実施の形態】
《図面について》
以下、本発明の積層材の製造方法を、図面に示す発明の実施の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3,図4,図5等は、本発明の実施の形態の説明に供する。
そして、図1の(1)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(3)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、それぞれ示す。
図2は、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、加熱炉を用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。図3も、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、ホットプレスを用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。
図4の(1)図は、製造された積層材の1例の正断面説明図、(2)図は、桁が介装された例の正断面説明図、(3)図は、ハニカムコアが介装された例の正断面説明図、(4)図は、ハニカムコアの斜視図である。
図5は、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図はポリイミドバルーンを、(2)図はポリイミドパウダーを、(3)図はポリイミドワニスを、(4)図はポリイミド発泡材を示す。
【0013】
《製造方法の概要について》
最初に、製造方法の概要について述べる。この製造方法は、例えば図4の(1)に示したように、繊維強化プラスチック板1間にポリイミド発泡材2が芯材として介装された、積層材3の製造方法に関する。
そして、この製造方法では、図1中に示したように、まず、繊維基材4に樹脂5,6が付着,含浸されたプリプレグ板7が、複数組、相互間に間隔8を存しつつ位置決めされる。それから、プリプレグ板7間の間隔8に、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン9と、バインダー10との混合物が、充填される。
バインダー10としては、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を有すると共に、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダー11、又は、ポリイミド前駆体が溶剤13に溶解された液状のポリイミドワニス12が、用いられる。
【0014】
それから、図2,図3に示したように、全体を加熱することにより、プリプレグ板7が完全硬化され、又、バインダー10が硬化して、ポリイミドバルーン9間を結合させると共に、プリプレグ板7と接合せしめる。
もって、プリプレグ板7による繊維強化プラスチック板1の成形と、結合されたポリイミドバルーン9によるポリイミド発泡材2の成形と、プリプレグ板7そして繊維強化プラスチック板1とポリイミド発泡材2間の接合とが、一度に行われる。
このようにして、積層材3が製造される。この積層材3は、繊維強化プラスチック板1とポリイミド発泡材2の特性を生かし、強度,断熱性,耐熱性,軽量性等に優れており、各種構造材その他に広く使用される。
製造方法の概要は、このようになっている。
【0015】
《ポリイミドパウダー11について》
まず、ポリイミド素材として準備され、ポリイミドバルーン9の原材料となると共に、ポリイミドバルーン9間のバインダー10として必須的に使用される、ポリイミドパウダー11について述べる。図5の(2)図に示したように、ポリイミドパウダー11は、粉末状のポリイミド前駆体よりなる。
つまりポリイミドパウダー11は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等の分子間が未結合状態で、イミド化していないポリイミド前駆体よりなると共に、粉末状・固体状の集合体よりなる。このようなポリイミドパウダー11は、例えば、特表2000−515584号公報中にも示されている。
そして、このようなポリイミドパウダー11は、後述するように、加熱することによりイミド化して発泡し、もってポリイミドバルーン9となるが、ポリイミドバルーン9は未だバルーン相互間は未結合状態にあり、更に加熱することにより、バルーン相互間が結合されてポリイミド発泡材2となる。
なお本発明では、このようなポリイミドバルーン9相互間の結合用のバインダー10として、別途準備されたポリイミドパウダー11やポリイミドワニス12が混合され、その加熱,硬化によりポリイミドバルーン9相互間が結合される。なお、このように結合用として用いられるポリイミドパウダー11は、ほとんど発泡せず、例え発泡してもすぐに潰れて、バインダー10として機能する。
【0016】
このようなポリイミドパウダー11は、特表2000−515584号公報中にも記載されているが、例えば次のように製造される。
まず、次式(1)で示される芳香族酸ニ無水物又は芳香族酸ニ無水物誘導体である芳香族化合物Aと、次式(2)で示される芳香族ジアミン又は芳香族ジアミン誘導体である芳香族化合物Bとの、略等モル(モル比0.95〜1.05)の混合物と、この混合物と水素結合によって錯体を形成し得る錯形成剤Cと、溶剤Dと、からなる混合溶剤を調整する。
それから、この混合溶剤を加熱して、過剰となった分の錯形成剤Cと揮発性の溶剤Dとを除去して、固体化したポリイミド前駆体を得た後、これを粉砕して粉末状とすることにより、ポリイミドパウダー11が製造される。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
式中nは、0〜3の整数であり、R1は、水素原子もしくはアルキル基であり、R2は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個持つ4価の芳香族残基であり、R3は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個有する2価の芳香族残基である。
芳香族化合物Aの芳香族酸ニ無水物としては、3,3’,4,4’,−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物等が、代表的である。
芳香族化合物Bの芳香族ジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、P−フェニレンジアミン等が、代表的である。
【0020】
錯形成剤Cは、ポリイミド前駆体を事後に発泡させる作用を有し、テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル化合物が代表的である。この錯形成剤Cの沸点は、200℃以下のものが好ましく、沸点が200℃を越えると、均一な発泡が起こりにくくなる。
又、固体化したポリイミド前駆体つまりポリイミドパウダー11中における錯形成剤Cの含有量は、合計量の1重量%〜15重量%程度であることが好ましい。1重量%未満では、ポリイミド前駆体を事後十分に発泡させることが困難化し、又、15重量%を超えると、均一な発泡が起こりにくくなる。ポリイミドパウダー11は、例えばこのようにして製造される。
そしてポリイミドパウダー11は、次に述べるポリイミドバルーン9の発泡製造用に使用される外、製造されたポリイミドバルーン9間の結合用のバインダー10としても使用される。
後者のポリイミドパウダー11は、事後のポリイミド発泡材2のバインダー10としての耐熱性に鑑み、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を備えたポリイミド前駆体が選択使用され、例えば、ポリイミドバルーン9用のポリイミド前駆体と同一のポリイミド前駆体が使用される。又、発泡の必要がないので、溶剤Dの含有率は低く抑えられる。
【0021】
《ポリイミドバルーン9について》
次に、ポリイミド素材として必須的に準備される、ポリイミドバルーン9について述べる。図5の(1)図に示したように、ポリイミドバルーン9は、ポリイミド前駆体が、1次発泡しイミド化して硬化すると共に、相互間が未結合状態・独立状態にあり、フライアブルな微細気泡状をなす。
すなわちポリイミドバルーン9は、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽いバルーン状・粉状の集合体よりなり、いわば、図5の(2)図に示したポリイミドパウダー11と、図5の(4)図に示したポリイミド発泡材2との中間物質と考えてもよい。
【0022】
このようなポリイミドバルーン9は、例えば、次のように製造される。まず、前述により得られたポリイミドパウダー11、つまり発泡性を有するポリイミド前駆体の粉末を、容器に入れた後、100℃〜170℃程度の温度で加熱しつつ攪拌することにより、粉末が膨らみ1次発泡・バルーン化される。
そして、もしも更にそのまま発泡を進行させると、バルーン化した粉末同士が結合して、ポリイミド発泡材2へと進行してしまうので、これを回避するため、温度を制御し急激な発泡を抑制しながら攪拌して、バルーン化した粉同士の結合を回避する。この間、空気やガスを、バルーン化した粉間に流入させるとよい。
この状態で30分〜60分間程度、加熱しながら攪拌すると、バルーン化した粉内部の溶剤(前記溶剤D)が気化し、もって発泡が止まると共に、事後、バルーン化した粉間の結合の虞はなくなる。それから、容器内の温度を170℃以上に上げるべく加熱すると、バルーン化した粉がそのまま硬化し、もって所望のポリイミドバルーン9が製造される。
ポリイミドバルーン9の硬化程度は、加熱温度と時間によって決定されるが、硬化程度が低いと、保存性が悪く早期使用が必要となる。そこで、ポリイミドバルーン9の硬化程度は、加熱に要するコストと使用の仕方により、決定される。ポリイミドバルーン9は、例えばこのようにして製造される。
ポリイミドバルーン9は、このようになっている。
【0023】
《ポリイミドワニス12について》
次に、バインダー10として必須的に準備される、ポリイミドワニス12について述べる。図5の(3)図に示したように、ポリイミドワニス12は、イミド化していないポリイミド前駆体が、溶剤13に溶解されてなり、液状をなす。
つまりポリイミドワニス12は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等のイミド化していないポリイミド前駆体を、溶剤13中に溶解せしめたものであり、代表例としては、前述したポリイミドパウダー11を溶剤13中に溶解したものが挙げられる。
そして、ポリイミドワニス12中のポリイミド前駆体、例えばポリイミドパウダー11は、事後のポリイミド発泡材2のバインダー10としての耐熱性に鑑み、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を備えたものが、選択使用され、例えば、ポリイミドバルーン9用のポリイミド前駆体と同一のポリイミド前駆体が使用される。
溶剤13としては、N−メチルピロリドン(NMP)やテトラヒドロフラン(THF)等の高粘度溶剤が代表的に使用されるが、メタノールやアセトン等の低粘度溶剤を混合したものが、使用される場合もある。
ポリイミドワニス12は、このようになっている。
【0024】
《プリプレグ板7について》
次に、準備されるプリプレグ板7について述べる。図1中に示したプリプレグ板7は、補強繊維たる繊維基材4に、マトリックスとして樹脂が付着,含浸されてなり、図4の(1)図に示した繊維強化プラスチック板1として、完全硬化され成形される前の段階のものを示す。
繊維基材4としては、カーボン,ガラス等を含むセラミック繊維や、ステンレス,その他の金属繊維や、樹脂繊維、その他の各種繊維が使用される。
樹脂としては、エポキシ樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド、全芳香族ポリイミド等のポリイミド系樹脂、その他の熱硬化性樹脂5、更には、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ナイロン系樹脂、その他の熱可塑性樹脂6が使用される。
熱硬化性樹脂5をマトリックスとして使用したプリプレグ板7は、かなりの柔軟性を帯びた半硬化状態にあり、又、熱可塑性樹脂6をマトリックスとして使用したプリプレグ板7も、未だ完全硬化状態には至っていない(なお本明細書では、熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたものも、繊維強化プラスチック板1の前段階状態にあるものとして、プリプレグ板7と称する)。
プリプレグ板7は、このようになっている。
【0025】
《充填工程について》
本発明の製造方法では、まず、図1中に示したように、このようなプリプレグ板7が、間隔8を存しつつ位置決めされる。
プリプレグ板7は、1枚、又は数枚が張り合わされた積層板として使用され、このようなプリプレグ板7が、相互間に一定の間隔8を置いて位置決めされる。
図1の(1)図の例では、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で使用され、図1の(2)図の例では、熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で使用されている。図1の(3)図の例では、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で複数組使用され、図1の(4)図の例では、熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたプリプレグ板7が、2枚1組で複数組使用されている。
なお、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしてプリプレグ板7は、柔軟性を帯びており形状を保持しにくいので、外側に金属等の治具を沿わせて置くか、又は、張り合わせ枚数を増やして剛性を高めるようにする。
【0026】
そして、この製造方法では、図1に示したように、このようなプリプレグ板7間の間隔8に、前述により予め準備されていたポリイミドバルーン9(図5の(1)図を参照)とバインダー10との混合物が、充填される。
バインダー10としては、前述により予め準備されていたポリイミドパウダー11(図5の(2)図を参照)、又はポリイミドワニス12(図5の(3)図を参照)が、用いられる。
そして、ポリイミドバルーン9とバインダー10とは、十分に攪拌・混合された状態で、充填される。
【0027】
《加熱工程について》
この製造方法では、次に、図2,図3に示したように、加熱が実施される。すなわち、前述によりポリイミドバルーン9とバインダー10が間隔8に充填されたプリプレグ板7は、枠14で固定された後、図2に示した加熱炉15に収納されたり、図3に示したホットプレス16間に挟み込まれたり、ヒーターが取り付けられて、加熱される。
なお、ポリイミドバルーン9は、発泡により内部にそれぞれ空気を含んでおり、断熱性に富んでいる。そこで加熱効率を高めるために、上述した熱伝導による加熱に、図2の(2)図や図3の(2)図に示したように、高周波誘電加熱を組み合せて併用すると、短時間のうちに温度上昇,加熱が実現される。
図2の(2)図や図3の(2)図の例では、高周波電極17が対をなして周りに配設されており、高周波電源18からの高周波電流により、高周波電極17間に磁束が形成され、ジュール熱による加熱が実施される。
【0028】
そして、このような加熱により、まず、プリプレグ板7が繊維強化プラスチック板1として完全硬化される。
すなわち、熱硬化性樹脂5をマトリックスとしたプリプレグ板7は、熱硬化性樹脂5が加熱により硬化して、繊維強化プラスチック板1となる。熱可塑性樹脂6をマトリックスとしたプリプレグ板7は、加熱後の冷却により硬化して、繊維強化プラスチック板1となる。
これと共に、このような加熱により、バインダー10のポリイミドパウダー11やポリイミドワニス12中のポリイミド前駆体が、溶融,硬化して、接着剤として機能する。
これにより、まず図4の(4)図に示したように、ポリイミドバルーン9間の接触箇所に結合部19が形成され、もってポリイミドバルーン9間が結合されて、ポリイミド発泡材2となる。これと共に、このようなポリイミド発泡材2と上述した繊維強化プラスチック板1間が接合される。
【0029】
繊維強化プラスチック板1間の芯材となるポリイミド発泡材2は、断熱性,耐熱性,軽量性等に優れており、250℃程度以上の熱にも十分耐えることができ、質量は4kgf/m3〜130kgf/m3程度である。
なお、バインダー10としてポリイミドワニス12が使用された場合、その溶剤13は、加熱により、気化,ガス化して除去される。
これらにより、例えば図4の(1)図に示したように、繊維強化プラスチック板1間に、ポリイミド発泡材2が少なくとも一層以上一体化されつつ介装された、積層材3が製造される。
加熱工程は、このようになっている。
【0030】
《補強材の介装について》
なお、図4の(2)図,(3)図に示したように、補強用の桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等の補強材が、繊維強化プラスチック板1の間隔8間に、ポリイミド発泡材2と共に介装される場合もある。
このような積層材3の製造方法について述べておくと、この場合には、まず、前述により位置決めされたプリプレグ板7間の間隔8に、これを多数の小区画空間に仕切る桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等の補強材が、ポリイミドバルーン9とバインダー10の混合物の充填前又は充填と共に、介装される。ハニカムコア21は、図4の(4)図に示したように、セル壁22にて区画形成された中空柱状の多数のセル23の集合体よりなる。
そして、これらの補強材は、混合物の充填前にプリプレグ板7間の間隔8に介装され、事後に混合物が充填されるか、又は、予め混合物が充填せしめられてから間隔8に介装されるか、その他により、加熱に先立ってプリプレグ板7間に介装される。なお、この製造方法について、事後の加熱等に関しては、前述したところに準じる。
このようにして、桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等の補強材が、ポリイミド発泡材2と共に繊維強化プラスチック板1の間隔8に介装された、積層材3が製造される。
補強材の介装は、このように行われる。
【0031】
《作用等》
本発明に係る積層材3の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
▲1▼この製造方法では、まずプリプレグ板7が、相互間に一定の間隔8を存しつつ位置決めされる(図1を参照)。プリプレグ板7は、繊維基材4に熱硬化性樹脂5や熱可塑性樹脂6等の樹脂が付着,含浸されてなり、繊維強化プラスチック板1として完全硬化される以前の前段階状態にある。
▲2▼次に、プリプレグ板7間の間隔8に、ポリイミドバルーン9とバインダー10との混合物が、流し込み等により充填される(図1を参照)。
▲3▼混合物のポリイミドバルーン9は、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に、相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなす(図5の(1)図を参照)。
バインダー10としては、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を有する、ポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12が用いられる。ポリイミドパウダー11は、ポリイミド前駆体が粉末状とされてなり、ポリイミドワニス12は、ポリイミド前駆体が溶剤13に溶解されてなり、液状をなす(図5の(2)図,(3)図を参照)。
▲4▼なお、このような混合物の充填前又は充填と共に、プリプレグ板7間の間隔8に、これを多数の小区画空間に仕切る桁20やハニカムコア21等の補強材が、予め介装される場合もある(図4の(2)図,(3)図を参照)。
【0032】
▲5▼それから、全体が加熱される(図2,図3を参照)。そして、この加熱により、第1に、プリプレグ板7が完全硬化され、もって繊維強化プラスチック板1が成形される。
第2に、バインダー10のポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12のポリイミド前駆体が、溶融,硬化して、ポリイミドバルーン9間を結合させ、もってポリイミド発泡材2が成形される。
第3に、溶融,硬化した、バインダー10のポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12のポリイミド前駆体が、ポリイミド発泡材2を、プリプレグ板7そして繊維強化プラスチック板1に接合させる。
▲6▼このようにして、繊維強化プラスチック板1間にポリイミド発泡材2が芯材として介装された、積層材3が製造される(図4の(1)図を参照)。
【0033】
▲7▼この製造方法では、このように、繊維強化プラスチック板1の成形工程と、ポリイミド発泡材2の成形工程と、繊維強化プラスチック板1とポリイミド発泡材2との接合工程とが、一度に同時に行われる。
もって、これらが一体化された積層材3が、大幅に工程が削減された製造方法により、簡単容易に製造される。ポリイミド発泡材2は、自然に必要な寸法形状にて成形され、事前に寸法加工する必要はない。
【0034】
▲8▼なお、製造された積層材3は、ポリイミド発泡材2のポリイミドバルーン9間のバインダー10として、ポリイミドバルーン9と同程度の耐熱性を有するポリイミドパウダー11やポリイミドワニス12を用いているので、耐熱性に優れている。
▲9▼又、前述により桁20やハニカムコア21等の補強材が介装された場合は、繊維強化プラスチック板1間に、このような補強材がポリイミド発泡材2と共に介装された、積層材3が製造される(図4の(2)図,(3)図を参照)。
この積層材3は、繊維強化プラスチック板1間が、補強材にて複雑で小さな多数の小区画空間に仕切られているので、圧縮強度や曲げ剛性に特に優れている。
なお、この積層材3において、ポリイミド発泡材2は、この複雑で小さな多数の各小区画空間内に、それぞれ確実に充填,介装されると共に、溶融,硬化したバインダー10のポリイミドパウダー11又はポリイミドワニス12のポリイミド前駆体により、補強材とも確実に接合される。
【0035】
【発明の効果】
《本発明の特徴》
本発明に係る積層材の製造方法は、以上説明したように、繊維強化プラスチック板の成形と、ポリイミド発泡材の成形と、両者間の接合とを、一度に同時に行うようにしたこと、を特徴とする。
そこで本発明は、次の効果を発揮する。
【0036】
《効果について》
このようなコ・キュア成形の採用により、大幅な工程削減が実現され、コスト面に優れている。
すなわち、本発明の製造方法では、1つの加熱工程により、2つの成形工程と1つの接合工程とが、合体して一度に実施される。
前述したこの種従来例の製造方法のように、これらの工程を前後に分けて別々に実施すると共に、ポリイミド発泡材を事前に寸法加工していたのに比べ、製造工程が大幅に簡略化される。もってその分、手間が省け製造設備が簡略化される等、コスト面に優れつつ積層材が製造される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層材の製造方法について、発明の実施の形態の説明に供し、充填工程の各例の正断面説明図である。そして(1)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとしたプリプレグ板が用いられた例を、(3)図は、熱硬化性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、(2)図は、熱可塑性樹脂をマトリックスとした複数組のプリプレグ板が用いられた例を、それぞれ示す。
【図2】同発明の実施の形態の説明に供し、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、加熱炉を用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。
【図3】同発明の実施の形態の説明に供し、加熱工程の正断面説明図であり、(1)図は、ホットプレスを用いた例を、(2)図は、高周波誘電加熱を併用した例を示す。
【図4】同発明の実施の形態の説明に供し、(1)図は、製造された積層材の1例の正断面説明図、(2)図は、桁が介装された例の正断面説明図、(3)図は、ハニカムコアが介装された例の正断面説明図、(4)図は、ハニカムコアの斜視図である。
【図5】同発明の実施の形態の説明に供し、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図は、ポリイミドバルーンを示し、(2)図は、ポリイミドパウダーを示し、(3)図は、ポリイミドワニスを示し、(4)図は、ポリイミド発泡材を示す。
【符号の説明】
1 繊維強化プラスチック板
2 ポリイミド発泡材
3 積層材
4 繊維基材
5 熱硬化性樹脂
6 熱可塑性樹脂
7 プリプレグ板
8 間隔
9 ポリイミドバルーン
10 バインダー
11 ポリイミドパウダー
12 ポリイミドワニス
13 溶剤
14 枠
15 加熱炉
16 ホットプレス
17 高周波電極
18 高周波電源
19 結合部
20 桁
21 ハニカムコア
22 セル壁
23 セル
Claims (3)
- 繊維強化プラスチック板間にポリイミド発泡材が芯材として介装された、積層材の製造方法であって、
まず、繊維基材に樹脂が付着,含浸されたプリプレグ板を、相互間に間隔を存しつつ位置決めしてから、
次に、該プリプレグ板間の間隔に、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーンと、バインダーとの混合物を、充填した後、
全体を加熱することにより、該プリプレグ板が完全硬化され、又、該バインダーが硬化して、該ポリイミドバルーン間を結合させると共に、該プリプレグ板と接合せしめ、
もって、該プリプレグ板による該繊維強化プラスチック板の成形と、結合された該ポリイミドバルーンによる該ポリイミド発泡材の成形と、該繊維強化プラスチック板と該ポリイミド発泡材間の接合とが、一度に行われること、を特徴とする積層材の製造方法。 - 請求項1に記載した積層材の製造方法において、該バインダーとして、該ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有すると共に、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダー、又はポリイミド前駆体が溶剤に溶解された液状のポリイミドワニスが、用いられること、を特徴とする積層材の製造方法。
- 請求項1にに記載した積層材の製造方法おいて、位置決めされた該プリプレグ板間の間隔に、これを多数の小区画空間に仕切る桁やハニカムコア等の補強材が、該混合物の充填前又は充填と共に、予め介装されること、を特徴とする積層材の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006188023A (ja) * | 2005-01-07 | 2006-07-20 | Taisei Laminator Co Ltd | 構造体 |
JP2009019107A (ja) * | 2007-07-11 | 2009-01-29 | Ube Ind Ltd | 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分からなるポリイミド発泡体及びその製造方法 |
JP2009066784A (ja) * | 2007-09-11 | 2009-04-02 | Showa Aircraft Ind Co Ltd | ハニカムパネルの製造方法 |
JP2009513437A (ja) * | 2005-10-25 | 2009-04-02 | ゼフィロス インコーポレイテッド | パネル構造体 |
-
2003
- 2003-04-21 JP JP2003115234A patent/JP2004314561A/ja active Pending
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