JP2004306309A - 発泡材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1に、接着剤としてポリイミドワニスを用いるものの、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが均一に混合され、もってポリイミド発泡材が支障なく製造でき、第2に、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れ、もってポリイミド発泡材の強度が向上し、第3に、ポリイミドワニスの使用量も少量で済む、発泡材の製造方法を提案する。
【解決手段】この製造方法は、未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン2間を結合する接着剤として、ポリイミド前駆体1が溶剤3に溶解された液状のポリイミドワニス4を用いると共に、その溶剤3として、溶解用の高粘度溶剤5と流動性付与用の低粘度溶剤6との混合溶剤を、採用した。つまり、低粘度溶剤6を加えて流動性を付与するようにしたことにより、ポリイミドワニス4を接着剤として用いたポリイミド発泡材7が製造可能となった。
【選択図】 図1
【解決手段】この製造方法は、未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン2間を結合する接着剤として、ポリイミド前駆体1が溶剤3に溶解された液状のポリイミドワニス4を用いると共に、その溶剤3として、溶解用の高粘度溶剤5と流動性付与用の低粘度溶剤6との混合溶剤を、採用した。つまり、低粘度溶剤6を加えて流動性を付与するようにしたことにより、ポリイミドワニス4を接着剤として用いたポリイミド発泡材7が製造可能となった。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡材の製造方法に関する。すなわち、ポリイミドバルーンを使用して成形され、断熱材等として使用される、ポリイミド発泡材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド発泡材は、発泡により内部に空気を含んでおり、断熱性に富んだ樹脂系発泡材の代表例と言えるが、更にポリイミド発泡材は、このような断熱性と共に、250℃以上の耐熱性も備えている。
そしてポリイミド発泡材は、ポリイミド前駆体を加熱して1次発泡させ、もって硬化すると共に相互間が未結合状態で微細気泡状をなすポリイミドバルーン化すると共に、バルーン化した相互間を結合することにより、製造されていた。
そして、このようなポリイミドバルーン間を結合させる接着剤としては、従来、同じポリイミド系のイミド化していないポリイミドワニスやポリイミドパウダーが考えられていた。
【0003】
これらについて更に詳述すると、まず、このようなポリイミド発泡材のポリイミドバルーン間の接着剤として、もしもエポキシ樹脂等の一般的な接着剤を使用すると、ポリイミド発泡材の耐熱性が低下してしまうので、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を備えた同じポリイミド系の接着剤が、使用されていた。
そして、このようなポリイミド系の接着剤としては、ポリイミド前駆体がN−メチルピロリドン(NMP)やテトラヒドロフラン(THF)等の一般的な溶剤に溶解されたポリイミドワニスや、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダーが、考えられていた。
もって、このようなポリイミドワニスやポリイミドパウダーよりなる接着剤を、ポリイミドバルーンと混合して加熱することにより、溶融,硬化させ、もってポリイミドバルーン間を結合させて、ポリイミド発泡材が製造されていた。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような製造方法としては、例えば次の特許文献1に示されたものが挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
特表2002−501573号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなポリイミドバルーンを使用した従来のポリイミド発泡材の製造方法については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点について》
第1に、ポリイミドワニスを接着剤として使用した従来例の製造方法については、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとの混合が容易でない、という致命的な問題が指摘されていた。
すなわちポリイミドバルーンは、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽い気泡状をなすのに対し、その接着剤として使用されるポリイミドワニスの溶剤としては、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフランが使用されており、これらは極性が高く高粘度である。
そこで、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが均一に混合されにくく、ポリイミド発泡材の製造に支障を生じることが多く、ポリイミドバルーン間の接着剤としてポリイミドワニスを用いる従来の製造方法は、実際上採用が困難視されていた。
【0007】
《第2の問題点について》
第2に、ポリイミドパウダーを接着剤として使用した従来例の製造方法は、このような欠陥,困難性がなく、現状では主流的に採用されているが、ポリイミドバルーン間の結合強度が低く、製造されたポリイミド発泡材の強度に不安が指摘されていた。
すなわち、この製造方法では、ポリイミドバルーンに粉末状のポリイミド前駆体つまりポリイミドパウダーを混合して、→その表面に発生する静電気を利用することにより、→ポリイミドバルーン表面にポリイミドパウダーを均一に吸着させていた。
しかしながら、→静電気を利用してポリイミドバルーン表面に吸着されたポリイミドパウダーは、→輸送・搬送過程や作業工程中に、振動等によりポリイミドバルーン表面から容易に脱落し易く、→結局、ポリイミドパウダーの分散が不均一化し、→ポリイミドバルーンとポリイミドパウダーの混合が不均一となり、→接着剤として機能すべきポリイミドパウダーが、輸送・搬送用の容器の底に溜まってしまうことが、多々あった。
→この結果、ポリイミドパウダーを加熱により溶融,硬化させ、ポリイミドバルーン間を結合させて製造されたポリイミド発泡材について、→ポリイミドバルーン相互間の結合強度が低下し、ポリイミド発泡材の強度に問題が生じることが多かった。
【0008】
《第3の問題点について》
第3に、主流的に採用されているポリイミドパウダーを接着剤として使用した従来例の製造方法については、更に、多量のポリイミドパウダーを使用することを要する、という問題が指摘されていた。
すなわち、ポリイミドパウダーは、ポリイミドバルーン間を結合させるべく、加熱して溶融されるが、→その際、流動性が低いので、→ポリイミドバルーンが相互に接する部分、つまりバルーン間の結合部に集まりにくかった。→そこでこの点をカバーするため、ポリイミドパウダーは、ポリイミドバルーンに対し60%〜200%程度の重量比で、多量に使用されていた。
このように、ポリイミド発泡材の製造に際し、必要以上に多量のポリイミドパウダーを、接着剤として混合することが必要であり、コスト面にも問題が指摘されていた。
【0009】
《本発明について》
本発明の発泡材の製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、ポリイミドバルーン間を結合させる接着剤として、ポリイミドワニスを用いると共に、その溶剤として、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤を、採用したことを特徴とする。
つまり、低粘度溶剤を加えて流動性を付与することにより、ポリイミドワニスを接着剤として用いたポリイミド発泡材を、製造可能としたことを特徴とする。
もって本発明は、第1に、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが、均一に混合され、もってポリイミド発泡材が支障なく製造でき、第2に、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れ、もってポリイミド発泡材の強度が向上し、第3に、ポリイミドワニスの使用量も少量で済む、発泡材の製造方法を提案することを、目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の発泡材の製造方法では、まず、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーンに、ポリイミド前駆体が溶剤に溶解された液状のポリイミドワニスを、混合する。その際、該溶剤としては、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤が、使用される。
それから次に、加熱することにより、該ポリイミドワニスが硬化して、該ポリイミドバルーン間を結合させ、もってポリイミド発泡材が成形されること、を特徴とする。
【0011】
請求項2については次のとおり。請求項2の発泡材の製造方法では、請求項1において、該ポリイミドワニスは、該高粘度溶剤として、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等が用いられ、該低粘度溶剤として、メタノールやアセトン等が用いられる。又、該ポリイミドバルーンと該ポリイミドワニスとの混合は、攪拌しつつ行われること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3の発泡材の製造方法では、請求項1において、該ポリイミドワニスは、該ポリイミド前駆体が、該ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有すると共に、20%から70%の重量比よりなり、該溶剤が、80%から30%の重量比よりなる。
更に、該溶剤については、該高粘度溶剤が、20%から80%の重量比よりなり、該低粘度溶剤が、80%から20%の重量比よりなること、を特徴とする。
【0012】
《作用について》
本発明に係る発泡材の製造方法は、このようになっているので、次のようになる。
▲1▼この製造方法では、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスが使用される。
▲2▼ポリイミドワニスは、そのポリイミド前駆体が、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有し、20%から70%の重量比よりなる。溶剤が、80%から30%の重量比よりなる。
更に溶剤は、高粘度溶剤と低粘度溶剤の混合溶剤よりなり、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等の高粘度溶剤が、20%から80%の重量比よりなり、メタノールやアセトン等の低粘度溶剤が、80%から20%の重量比よりなる。
▲3▼そして、この製造方法では、まず、ポリイミドバルーンにポリイミドワニスが、攪拌しつつ混合される。
▲4▼それから、加熱することにより、ポリイミドワニスのポリイミド前駆体が、溶融,硬化して接着剤として機能し、ポリイミドバルーン間を結合させ、もってポリイミド発泡材が成形される。溶剤は、気化して除去される。
【0013】
▲5▼さて、この製造方法において、ポリイミドバルーン間の接着剤たるポリイミドワニスは、極性が高い溶解用の高粘度溶剤と共に、流動性付与用の低粘度溶剤を用いたことにより、低粘度化され流動性を備えている。
そこで、混合対象のポリイミドバルーンが、極小で軽い気泡状をなすものの、均一に分散,混合される。
▲6▼更に、この製造方法では、接着剤として、粉末状のポリイミドパウダーではなく、液状のポリイミドワニスを用いたので、ポリイミドバルーン間に、混合により容易かつ確実に浸透,含浸,付着した後、加熱により硬化する。
そこで、ポリイミドバルーン間が確実に結合され、その結合強度に優れ、ポリイミド発泡材の強度が向上する。
▲7▼又、この製造方法では、接着剤として、ポリイミドパウダーではなくポリイミドワニスが用いられており、ポリイミドワニスは、そのポリイミド前駆体の希釈率や、高粘度溶剤と低粘度溶剤の割合を調節することにより、その流動性を備えると共に、その流動性を適切に変化させることができる。
そこでポリイミドワニスを、ポリイミドバルーンの結合部に対し、容易かつ確実に浸透,含浸,付着させ集めることができるので、ポリイミドワニスの使用量は、少量で済む。
【0014】
【発明の実施の形態】
《図面について》
以下、本発明の発泡材の製造方法を、図面に示す発明の実施の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3は、本発明の実施の形態の説明に供する。
そして図1は、正断面説明図であり、(1)図は混合工程を、(2)図は型工程を、(3)図は加熱工程の1例を、(4)図は、加熱工程の他の例を示す。
図2の(1)図は、ポリイミド発泡材の正断面説明図、(2)図は、パネルの表面板間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(3)図は、容器の内外壁間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(4)図は、桁と共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(5)図は、ハニカムコアと共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(6)図は、ハニカムコアの斜視図である。
図3は、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図は、ポリイミドパウダーを示し、(2)図は、ポリイミドバルーンを示し、(3)図は、ポリイミドワニスを示し、(4)図は、ポリイミド発泡材を示す。
【0015】
《製造方法の概要について》
最初に、この製造方法の概要について述べる。この製造方法では、まず、ポリイミド前駆体1が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン2に、ポリイミド前駆体1が溶剤3に溶解された液状のポリイミドワニス4を、混合する。
その際、溶剤3としては、溶解用の高粘度溶剤5と流動性付与用の低粘度溶剤6との混合溶剤が使用される。
そして次に、加熱することにより、ポリイミドワニス4が硬化して、ポリイミドバルーン2間を結合させ、もってポリイミド発泡材7が成形される。
このように製造されたポリイミド発泡材7は、断熱性,耐熱性,軽量性等に優れており、250℃程度以上の熱にも十分耐え得ることができ、質量は、4kgf/m3〜130kgf/m3程度である。そしてポリイミド発泡材7は、断熱材その他の用途に広く使用される。
製造方法の概要は、このようになっている。
【0016】
《ポリイミドパウダー8について》
まず、ポリイミド素材として準備され、ポリイミドバルーン2の原材料となるポリイミドパウダー8について述べる。図3の(1)図に示したように、ポリイミドパウダー8は、粉末状のポリイミド前駆体1よりなる。
つまりポリイミドパウダー8は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等の分子間が未結合状態で、イミド化していないポリイミド前駆体1よりなると共に、粉末状・固体状の集合体よりなる。このようなポリイミドパウダー8は、例えば、特表2000−515584号公報中にも示されている。
このようなポリイミドパウダー8は、加熱することによりイミド化して発泡し、ポリイミドバルーン2となるが、ポリイミドバルーン2は、未だバルーン相互間は未結合状態にあり、更に加熱することにより、バルーン相互間が結合されてポリイミド発泡材7となる。なお本発明では、この加熱に際し、接着剤としてポリイミドワニス4が混合され、硬化によりポリイミドバルーン2相互間が結合される。
【0017】
このようなポリイミドパウダー8は、特表2000−515584号公報中にも記載されているが、例えば次のように製造される。
まず、次式(1)で示される芳香族酸ニ無水物又は芳香族酸ニ無水物誘導体である芳香族化合物Aと、次式(2)で示される芳香族ジアミン又は芳香族ジアミン誘導体である芳香族化合物Bとの、略等モル(モル比0.95〜1.05)の混合物と、この混合物と水素結合によって錯体を形成し得る錯形成剤Cと、溶剤Dと、からなる混合溶剤を調整する。
それから、この混合溶剤を加熱して、過剰となった分の錯形成剤Cと揮発性の溶剤Dとを除去して、固体化したポリイミド前駆体1を得た後、これを粉砕して粉末状とすることにより、ポリイミドパウダー8が製造される。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
式中nは、0〜3の整数であり、R1は、水素原子もしくはアルキル基であり、R2は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個持つ4価の芳香族残基であり、R3は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個有する2価の芳香族残基である。
芳香族化合物Aの芳香族酸ニ無水物としては、3,3’,4,4’,−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物等が、代表的である。
芳香族化合物Bの芳香族ジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、P−フェニレンジアミン等が、代表的である。
【0021】
錯形成剤Cは、ポリイミド前駆体1を事後に発泡させる作用を有し、テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル化合物が代表的である。この錯形成剤Cの沸点は、200℃以下のものが好ましく、沸点が200℃を越えると、均一な発泡が起こりにくくなる。
又、固体化したポリイミド前駆体1つまりポリイミドパウダー8中における錯形成剤Cの含有量は、合計量の1重量%〜15重量%程度であることが好ましい。1重量%未満では、ポリイミド前駆体1を事後十分に発泡させることが困難化し、又、15重量%を超えると、均一な発泡が起こりにくくなる。ポリイミドパウダー8は、例えばこのようにして製造される。
そしてポリイミドパウダー8は、次に述べるポリイミドバルーン2の製造用に使用される。
ポリイミドパウダー8は、このようになっている。
【0022】
《ポリイミドバルーン2について》
次に、ポリイミド素材として必須的に準備される、ポリイミドバルーン2について述べる。図3の(2)図に示したように、ポリイミドバルーン2は、ポリイミド前駆体1が、1次発泡しイミド化して硬化すると共に、相互間が未結合状態・独立状態にあり、フライアブルな微細気泡状をなす。
すなわちポリイミドバルーン2は、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽いバルーン状・粉状の集合体よりなり、いわば、ポリイミドパウダー8とポリイミド発泡材7間の中間物質と考えてもよい。
【0023】
このようなポリイミドバルーン2は、例えば、次のように製造される。まず、前述により得られたポリイミドパウダー8、つまり発泡性を有するポリイミド前駆体1の粉末を、容器に入れた後、100℃〜170℃程度の温度で加熱しつつ攪拌することにより、粉末が膨らみ1次発泡・バルーン化される。
そして、もしも更にそのまま発泡を進行させると、バルーン化した粉末同士が結合して、ポリイミド発泡材7へと進行してしまうので、これを回避するため、温度を制御し急激な発泡を抑制しながら攪拌して、バルーン化した粉同士の結合を回避する。この間、空気やガスを、バルーン化した粉間に流入させるとよい。
この状態で30分〜60分間程度、加熱しながら攪拌すると、バルーン化した粉内部の溶剤(前記溶剤D)が気化し、もって発泡が止まると共に、事後、バルーン化した粉間の結合の虞はなくなる。それから、容器内の温度を170℃以上に上げるべく加熱すると、バルーン化した粉がそのまま硬化し、もって所望のポリイミドバルーン2が製造される。
ポリイミドバルーン2の硬化程度は、加熱温度と時間によって決定されるが、硬化程度が低いと、保存性が悪く早期使用が必要となる。そこで、ポリイミドバルーン2の硬化程度は、加熱に要するコストと使用の仕方により、決定される。ポリイミドバルーン2は、例えばこのようにして製造される。
ポリイミドバルーン2は、このようになっている。
【0024】
《ポリイミドワニス4について》
次に、接着剤として必須的に準備される、ポリイミドワニス4について述べる。図3の(3)図に示したように、ポリイミドワニス4は、イミド化していないポリイミド前駆体1が、有機溶剤3に溶解されてなり、液状をなす。
つまりポリイミドワニス4は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等のイミド化していないポリイミド前駆体1を、溶剤3中に溶解せしめたものであり、代表例としては、前述したポリイミドパウダー8を溶剤3中に溶解したものが挙げられる。
【0025】
このようなポリイミドワニス4について、更に詳述する。まず、ポリイミドワニス4中のポリイミド前駆体1、例えばポリイミドパウダー8は、事後のポリイミド発泡材7としての耐熱性に鑑み、ポリイミドバルーン2と同程度の耐熱性を備えたものが、選択使用されている。
そして、このポリイミド前駆体1は、ポリイミドワニス4全体の20%以上で70%以下の重量比・固形分量で使用され、残が溶剤3となり、80%以下で30%以上の重量比で使用される。
ポリイミド前駆体1の重量比が70%を越えると(溶剤3の重量比が30%未満の場合は)、ポリイミドワニス4が液状となりにくく固形状に近い状態(略ダンゴ状)となってしまう。又、ポリイミド前駆体1の重量比が20%未満の場合は(溶剤3の重量比が80%を越えると)、ポリイミドワニス4が、事後の加熱に際しポリイミドバルーン2間から流れ落ちてしまい、接着剤として機能しなくなる。
【0026】
次に、ポリイミドワニス4中の溶剤3は、高粘度溶剤5と低粘度溶剤6との混合溶剤よりなる。
高粘度溶剤5としては、従来より使用されているN−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等が用いられ、低粘度溶剤6としては、メタノールやアセトン等が用いられる。
そして高粘度溶剤5は、溶剤3全体の20%以上で80%以下の重量比で使用され、低粘度溶剤6は、溶剤3全体の80%以下で20%以上の重量比で使用される。
高粘度溶剤5の重量比が80%を越えたり、低粘度溶剤5の重量比が20%未満の場合は、粘度が高過ぎ流動性が不足して、ポリイミドワニス4が液状とはならず、固形状に近い状態(略ダンゴ状)となってしまう。逆に、高粘度溶剤5の重量比が20%未満の場合や、低粘度溶剤6の重量比が80%を越えると、粘度が低過ぎ流動性が過多となり、ポリイミドワニス4が、事後の加熱に際し、ポリイミドバルーン2間から流れ落ちてしまい、接着剤として機能しなくなる。
【0027】
ポリイミドワニス4は、ポリイミド前駆体1を、このような高粘度溶剤5と低粘度溶剤6との混合溶剤に、溶解してなる。
具体的に使用される高粘度溶剤5や低粘度溶剤6の種類や重量比・割合は、使用されるポリイミド前駆体1の種類によって異なり、2種類以上の高粘度溶剤5や、2種類以上の低粘度溶剤6が併用されることもある。
又、溶解態様としては、まずポリイミド前駆体1を高粘度溶剤5に溶解しておいてから、低粘度溶剤6を添加する場合もあり、他方、まず高粘度溶剤5と低粘度溶剤6とを混合しておいてから、ポリイミド前駆体1を溶解せしめる場合もある。
ポリイミドワニス4は、このようになっている。
【0028】
《混合工程について》
この製造方法では、まず、前述により予め準備されたポリイミドバルーン2に、このようなポリイミドワニス4が、攪拌しつつ混合される。例えば、図1の(1)図に示したように、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4とが、容器9の中で混合される。
混合・攪拌方式としては、攪拌腕が容器9内部で回転する方式、容器9自体が回転して攪拌する方式、容器9自体が振動して攪拌する方式、容器9内にガスを送り込んで攪拌する方式、その他の攪拌方式が採用される。
混合工程は、このようになっている。
【0029】
《加熱工程について》
この製造方法では、次に、このように混合されたポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4の混合物は、例えば図1の(2)図に示したように型10に充填された後、図3の(3)図や(4)図に示したように、加熱される。
このような加熱により、ポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、ポリイミドバルーン2間を結合させ、もって、ポリイミド発泡材7が成形される(図2の(1)図を参照)。
そして、このような加熱は、加熱炉11,ヒーター,ホットプレス,高周波誘電加熱等により、実施される。
すなわち、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物は、型10その他に入れられて、図1の(3)図のように加熱炉11に収納されたり、ホットプレス間に挟み込まれたり、ヒーターが取り付けられたり、図1の(4)図のように高周波電極12が配設されることにより、加熱キュアーされる。
【0030】
ここで、高周波誘電加熱について、更に詳述しておく。ポリイミドバルーン2は、発泡により内部にそれぞれ空気を含んでおり、断熱性に富んでいる。
そこで、混合物の厚みが厚い場合において、加熱炉11やホットプレス等の熱伝導による加熱方式では、混合物の内部まで、ポリイミドワニス4の硬化に必要な温度まで加熱するのに、長時間を要することになる。
そして特に、使用されるポリイミドワニス4の粘度が低く流動性が高い場合は、このような長時間にわたる温度上昇の過程で、ポリイミドワニス4が一段と軟化し、粘度が極めて低くなり流動性が極端に高くなって、ポリイミドバルーン2間から流れ落ちてしまい、接着剤として機能しなくなってしまう虞がある。
【0031】
そこで、このような場合には、高周波誘電加熱を組み合わせて併用すると、短時間での温度上昇,加熱が実現され、もってポリイミドワニス4の流れ落ちも、防止される。ポリイミドワニス4が流れ出す前に、溶剤3が気化すると共に、ポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、ポリイミドバルーン2間が結合される。
例えば、図1の(4)図に示したように加熱炉11内において、収納されたポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物を挟むように、高周波電極12を、その周りに対をなして配設する。図中13は、高周波電流を流す高周波電源である。そして、高周波電極12間に形成される磁束により、渦電流が流れ、もってジュール熱による加熱が実施される。
他方、例えばホットプレスの場合には、対をなす両ホットプレス面と混合物との間に、対をなす高周波電極12を配設するか、又は、対をなすホットプレス面自体に、高周波電流を流すようにする。
加熱工程は、このようになっている。
【0032】
《作用等》
本発明に係る発泡材の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
▲1▼この製造方法では、まず、ポリイミド前駆体1が1次発泡して未結合状態の微細気泡状をなすポリイミドバルーン2(図3の(2)図を参照)と、ポリイミド前駆体1が溶剤3に溶解された液状のポリイミドワニス4(図3の(3)図を参照)とが、使用される。
▲2▼ポリイミドワニス4において、そのポリイミド前駆体1は、ポリイミドバルーン2と同程度の耐熱性を有し、20%から70%の重量比よりなる。
ポリイミドワニス4において、溶剤3は、80%から30%の重量比よりなると共に、高粘度溶剤5と低粘度溶剤6との混合溶剤よりなる。そして、溶解用の高粘度溶剤5は、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等よりなり、溶剤3中、20%から80%の重量比よりなる。流動性付与用の低粘度溶剤6は、メタノールやアセトン等よりなり、溶剤3中、80%から20%の重量比よりなる。
【0033】
▲3▼そして、この製造方法では、まず混合工程において、ポリイミドバルーン2にポリイミドワニス4が、攪拌しつつ混合される(図1の(1)図,(2)図を参照)。
▲4▼それから、この製造方法では、加熱工程において、加熱することにより(図1の(3)図,(4)図を参照)、ポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して接着剤として機能し、ポリイミドバルーン2間を結合して、結合部14を形成する(図3の(4)図を参照)。
このようにして、ポリイミド発泡材7が成形される(図2の(1)図を参照)。なお、ポリイミドワニス4の溶剤3、つまり高粘度溶剤5と低粘度溶剤6は、加熱により気化,ガス化して、ポリイミドバルーン2間から抜けることにより、除去される。
【0034】
▲5▼さて、この製造方法では、前述したように、ポリイミドバルーン2間の接着剤たるポリイミドワニス4は、極性が高くポリイミド前駆体1の溶解用として機能する高粘度溶剤5と共に、流動性付与用として機能する低粘度溶剤6を用いたことにより、全体的に流動性を備えている(図3の(3)図を参照)。
このように、流動化・低粘度化されたポリイミドワニス4を用いたので、混合対象のポリイミドバルーン2が、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽い気泡状をなすものの、両者は均一に分散された状態で混合される。溶剤3として高粘度溶剤5のみを用いた場合のように、混合工程が困難化することはない。
【0035】
▲6▼更に、この製造方法では、ポリイミドバルーン2間の接着剤として、粉末状のポリイミドパウダー8(図3の(1)図を参照)ではなく、液状のポリイミドワニス4を用いたので(図3の(3)図,図1の(1)図を参照)、混合により、フライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン2(図3の(2)図を参照)間に、容易に浸透,含浸,付着する。
そしてポリイミドワニス4は、その後も脱落等することなく、ポリイミドバルーン間に確実に浸透,含浸,付着しており、事後の加熱により、そのポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、結合部14(図3の(4)図を参照)を形成し、ポリイミドバルーン2間を結合する。
このようにして、ポリイミドバルーン2間が所期の通り確実に結合され、もって、ポリイミドバルーン2間の結合強度に優れ、製造されたポリイミド発泡材7の強度が向上する。
【0036】
▲7▼この製造方法では、ポリイミドバルーン2間の接着剤として、粉末状のポリイミドパウダー8ではなく、液状のポリイミドワニス4を用いてなる(図3の(3)図,図1の(1)図を参照)。そしてポリイミドワニス4は、そのポリイミド前駆体1の重量比・希釈率を調節したり、高粘度溶剤5と低粘度溶剤6の重量比・割合を調節することにより、流動性を備えると共に、その流動性を適切に変化させることができる。
そこで、接着剤として機能するポリイミドワニス4を、ポリイミドバルーン2が相互に接する部分に対し、つまりポリイミドバルーン2間の結合対象部に対し、容易かつ確実に浸透,含浸,付着させて、集めさせることができ、もって結合部14が形成される。
従って、ポリイミドワニス4の使用量が、少量で済むようになる。すなわち、接着剤としてポリイミドパウダー8を用いた場合は、その使用量が、ポリイミドバルーン2に対し60%〜200%程度の重量比となっていたが、このポリイミドワニスの場合は、その使用量が、20%程度の重量比で済むようになる。
なお、接着剤たるポリイミドワニス4の使用量を少なくするには、低粘度溶剤6の重量比・割合を増加させることが有効であるが、この場合には、前述したように高周波誘電加熱を併用するとよい。
【0037】
《適用例1》
ここで、本発明の適用例について、述べておく。まず、図2の(2)図に示した例では、表面板15間にポリイミド発泡材7が一体的に介装された、(断熱)パネル16が製造される。
表面板15としては、アルミニウム,ステンレス,チタン,その他の金属板や、ポリイミド発泡材7と同じポリイミド樹脂板や、その他の耐熱系樹脂板や、このような樹脂と繊維材とを組み合せた繊維強化プラスチック製(FRP)板、等が使用される。
【0038】
そして、このパネル16の製造方法では、予め間隔を存して配置され閉じられた内部空間を形成する2板の表面板15間に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が、充填される。表面板15は、治具により固定配置されており、混合物の挿入により変位することはない。
それから、これらを例えば加熱炉11やホットプレスに入れて加熱することにより、パネル16が製造される。すなわち加熱により、混合物中のポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、まず、ポリイミドバルーン2間を結合させて、ポリイミド発泡材7が成形されると共に、同時に、成形されたポリイミド発泡材7を、両表面板15に対して接合する。
つまり、このパネル16の製造方法では、接着剤として機能するポリイミドワニス4により、ポリイミド発泡材7の成形,介装と、その表面板15への接合とが、一度に一体的に実現される利点がある。
適用例1は、このようになっている。
【0039】
《適用例2について》
次に、図2の(3)図に示した例では、内壁17と外壁18との間に、ポリイミド発泡材7が一体的に介装された耐熱保温用の容器19が製造される。
内壁(内容器)17と外壁(外容器)18とは、大小の相似形状をなし、内側の内壁17内には、保温対象物が収納される内部空間が形成され、内壁17と外側の外壁18間には、断熱芯材としてポリイミド発泡材7が介装されるに足る間隔空間が形成されている。
内壁17や外壁18の材質については、表面板15について前述したところに準じる。
【0040】
そして、この容器19の製造方法では、内壁17と外壁18間の間隔空間に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が、充填される。
それから、加熱することにより、200℃程度以上の使用に耐える容器19が製造される。すなわち加熱により、混合物中のポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して、まず、ポリイミドバルーン2間を結合させて、ポリイミド発泡材7が成形されると共に、同時に、成形されたポリイミド発泡材7を、内壁17と外壁18に対して接合する。
つまり、この容器19の製造方法では、接着剤として機能するポリイミドワニス4により、断熱芯材たるポリイミド発泡材7の成形,介装と、その内壁17や外壁18への接合とが、一度に一体的に実現される利点がある。
なお、容器19が3次元的形状をなす場合は、加熱により気化,ガス化したポリイミドワニス4中の溶剤3が噴出することがあり、換気に留意することが必要である。
適用例2は、このようになっている。
【0041】
《適用例3について》
次に、図2の(4)図や(5)図に示した例では、ポリイミド発泡材7が、補強材たる桁20やハニカムコア21(図3の(6)図も参照)と共に介装された、パネル16や容器19が製造される。
すなわち、前述したパネル16や容器19について、構造体としての強度を高めるため、表面板15間の間隔や内壁17と外壁18間の間隔空間について、ポリイミド発泡材7と共に、補強用の桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等が、一体的に介装されたパネル16や容器19も考えられる。
なおハニカムコア21は、セル壁22にて区画形成された、中空柱状の多数のセル23空間の集合体よりなる。
【0042】
そして、この製造方法にあっては、桁20を介装するケースでは、まず、桁20間の各区画空間に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が、充填される。それから、パネル16の場合は、このような桁20の両端に表面板15を組み付け、容器19の場合は、このような桁20を内壁17と外壁18間に挿入する。
なお、パネル16の場合はこれによらず、まず、桁20の一端側に表面板15を組み付けておき、次に桁20間の各区画空間に混合物を充填してから、桁20の他端側に、表面板15を組み付けるようにしてもよい。
【0043】
又、ハニカムコア21を介装するケースでは、まず、ハニカムコア21の各セル23内に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が充填される。それから、パネル16の場合は、ハニカムコア21の両開口端面に表面板15を組み付け、容器19の場合は、このようなハニカムコア21を内壁17と外壁18間に挿入する。
なお、パネル16の場合はこれによらず、まず、ハニカムコア21の一方の開口端面側に表面板15を組み付けておき、次に、ハニカムコア21の各セル23内に混合物を充填してから、ハニカムコア21の他方の開口端面側に、表面板15を組み付けるようにしてもよい。
【0044】
しかる後、この製造方法では、これらを加熱することにより、図2の(4)図に示したように、桁20がポリイミド発泡材7と共に介装されたパネル16や容器19や、図2の(5)図に示したように、ハニカムコア21がポリイミド発泡材7と共に介装されたパネル16や容器19が製造される。
すなわち加熱により、混合物中のポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して、まず、ポリイミドバルーン2間を結合させて、ポリイミド発泡材7が成形されると共に、同時に、成形されたポリイミド発泡材7を、パネル16の場合は両表面板15に対して接合し、容器19の場合は内壁17と外壁18に対して接合すると共に、更に、桁20やハニカムコア21のセル壁22に対しても接合する。
つまり、このパネル16や容器19の製造方法では、接着剤として機能するポリイミドワニス4により、介装されるポリイミド発泡材7の成形,介装と、その表面板15,内壁17,外壁18等への接合と、その桁20,ハニカムコア21への接合とが、一度に一体的に実現される利点がある。
適用例3は、このようになっている。
【0045】
《適用例4について》
更に、上述した適用例1,2,3において、成形,介装されたポリイミド発泡材7と、表面板15や内壁17,外壁18との接合強度を、より一層強化したい場合は、予め、表面板15や内壁17,外壁18にポリイミドワニス4を塗布しておくと、効果的である。
すなわち、この第4例の製造方法にあっては、パネル16の場合は両表面板15の対向面に、容器19の場合は内壁17と外壁18の対向面に、それぞれ事前に予め、ポリイミドワニス4を塗布しておく。
それから、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物を、上述により塗布されたポリイミドワニス4に接するように、充填した後、加熱する。
そして、このような加熱により、ポリイミド発泡材7の成形と、その表面板15,内壁17,外壁18等への接合と、更には、桁20やハニカムコア21への接合とが、一度に行われることに関しては、前述した通りである。
【0046】
そして、この第4例の製造方法では、上述した加熱により、上述した所と同時に、更に、予め塗布されていたポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化し接着剤として機能する。
そこで、パネル16の場合は、成形,介装されたポリイミド発泡材7と、表面板15間の接合強度が、一段と向上する。又、容器19の場合は、成形,介装されたポリイミド発泡材7と、内壁17や外壁18との間の接合強度が、一段と向上する。
適用例4は、このようになっている。
【0047】
《適用例5について》
又、上述した適用例1,2,3において、成形,介装されたポリイミド発泡材7自体の強度と、表面板15や内壁17,外壁18との接合強度とを、共に、より一層強化したい場合は、製造されたパネル16や容器19を、事後、ポリイミドワニス4に浸漬してから、再加熱する後工程を付加すると、効果的である。
すなわち、この第5例の製造方法では、製造されたパネル16や容器19を、雰囲気ガスが残らないように留意しつつ、ポリイミドワニス4に浸漬して引き上げる。これにより、成形,介装されていたポリイミド発泡材7に、ポリイミドワニス4が浸透,含浸,付着させる。なお、ポリイミドワニス4が浸透,含浸,付着してほしくない箇所については、マスキングしてから浸漬するか、浸漬後に拭き取るようにする。
ポリイミド発泡材7は、ポリイミドバルーン2間の隙間について、前述により結合部14(図3の(4)図を参照)にて結合された残りの空間が、独立気孔,連続気孔,凹凸等となっている。そこで、ここにポリイミドワニス4が浸透,含浸せしめられて、被膜状に付着する。
【0048】
そして、このようにポリイミドワニス4が付着したパネル16や容器19を加熱することにより、付着したポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して接着剤として機能する。
そこで、このような接着機能により、まず、成形,介装されていたポリイミド発泡材7自体について、前述した結合部14の周囲に追加された補強結合部が形成される。もって、この面からポリイミドバルーン2間の結合強度が、一段と強化され、ポリイミド発泡材7の強度が一段と向上する。
これと共に、このような接着機能により、パネル16の場合は、成形,介装されていたポリイミド発泡材7と、表面板15間の接合強度が、一段と向上する。容器19の場合は、成形,介装されていたポリイミド発泡材7と、内壁17や外壁18間の接合強度が、一段と向上する。
このように、事後のポリイミドワニス4への浸漬,加熱により、ポリイミド樹脂がパネル16全体や容器19全体に行き渡り、より一体化された製品が得られるようになる。
適用例5は、このようになっている。
【0049】
【発明の効果】
《本発明の特徴》
本発明に係る発泡材の製造方法は、以上説明したように、ポリイミドバルーン間を結合させる接着剤として、ポリイミドワニスを用いると共に、その溶剤として、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤を、採用したことを特徴とする。
つまり、低粘度溶剤に加えて流動性を付与することにより、ポリイミドワニスを接着剤として用いたポリイミド発泡材を、製造可能としたことを特徴とする。
そこで、本発明の発泡材の製造方法は、次の第1,第2,第3の効果を発揮する。
【0050】
《第1の効果》
第1に、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが、均一に混合され、もってポリイミド発泡材が、支障なく製造される。
すなわち、この製造方法では、接着剤として用いられるポリイミドワニスについて、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤を採用したので、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが、均一に混合されるようになる。
前述した従来例の製造方法、つまり溶剤が高粘度溶剤のみからなるポリイミドワニスを用いた製造方法のように、混合が困難化して、製造に支障が生じるようなことはない。
このように、接着剤としてポリイミドワニスを用いるものの、ポリイミド発泡材が支障なく製造されるようになる。
【0051】
《第2の効果》
第2に、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れており、ポリイミド発泡材の強度が向上する。
すなわち、この製造方法では、接着剤としてポリイミドワニスを用いたので、接着対象のポリイミドバルーン間に、容易かつ確実に浸透,含浸,付着するようになる。
前述した従来例の製造方法、つまりポリイミドパウダーを接着剤として用いた製造方法のように、静電気を利用して吸着されていたポリイミドパウダーが、途中で脱落してしまい、結果的に、ポリイミドバルーン間の結合強度が低下してしまうようなことは、回避される。
このように、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れており、製造されたポリイミド発泡材の強度が向上する。
【0052】
《第3の効果》
第3に、ポリイミドワニスの使用量も少量で済み、コスト面に優れている。すなわち、この製造方法では、ポリイミドバルーン間の接着剤としてポリイミドワニスを用い、そのポリイミド前駆体の希釈率や、高粘度溶剤と低粘度溶剤の割合を調節することにより、適切な流動性を得ることができる。
もって、ポリイミドバルーン間の結合部に、ポリイミドワニスを集めさせることができる。
前述した従来例の製造方法、つまりポリイミドパウダーを接着剤として用いた製造方法のように、結合部へ集めさせるために、多量のポリイミドパウダーを使用する必要はなく、ポリイミドワニスは少量の使用量で済み、その分、コスト面にも優れている。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発泡材の製造方法について、発明の実施の形態の説明に供する、正断面説明図であり、(1)図は、混合工程を、(2)図は、型工程を、(3)図は、加熱工程の1例を、(4)図は、加熱工程の他の例を示す。
【図2】同発明の実施の形態の説明に供し、(1)図は、ポリイミド発泡材の正断面説明図、(2)図は、パネルの表面板間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(3)図は、容器の内外壁間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(4)図は、桁と共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(5)図は、ハニカムコアと共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(6)図は、ハニカムコアの斜視図である。
【図3】同発明の実施の形態の説明に供し、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図は、ポリイミドパウダーを示し、(2)図は、ポリイミドバルーンを示し、(3)図は、ポリイミドワニスを示し、(4)図は、ポリイミド発泡材を示す。
【符号の説明】
1 ポリイミド前駆体
2 ポリイミドバルーン
3 溶剤
4 ポリイミドワニス
5 高粘度溶剤
6 低粘度溶剤
7 ポリイミド発泡材
8 ポリイミドパウダー
9 容器
10 型
11 加熱炉
12 高周波電極
13 高周波電源
14 結合部
15 表面板
16 パネル
17 内壁
18 外壁
19 容器
20 桁
21 ハニカムコア
22 セル壁
23 セル
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡材の製造方法に関する。すなわち、ポリイミドバルーンを使用して成形され、断熱材等として使用される、ポリイミド発泡材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド発泡材は、発泡により内部に空気を含んでおり、断熱性に富んだ樹脂系発泡材の代表例と言えるが、更にポリイミド発泡材は、このような断熱性と共に、250℃以上の耐熱性も備えている。
そしてポリイミド発泡材は、ポリイミド前駆体を加熱して1次発泡させ、もって硬化すると共に相互間が未結合状態で微細気泡状をなすポリイミドバルーン化すると共に、バルーン化した相互間を結合することにより、製造されていた。
そして、このようなポリイミドバルーン間を結合させる接着剤としては、従来、同じポリイミド系のイミド化していないポリイミドワニスやポリイミドパウダーが考えられていた。
【0003】
これらについて更に詳述すると、まず、このようなポリイミド発泡材のポリイミドバルーン間の接着剤として、もしもエポキシ樹脂等の一般的な接着剤を使用すると、ポリイミド発泡材の耐熱性が低下してしまうので、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を備えた同じポリイミド系の接着剤が、使用されていた。
そして、このようなポリイミド系の接着剤としては、ポリイミド前駆体がN−メチルピロリドン(NMP)やテトラヒドロフラン(THF)等の一般的な溶剤に溶解されたポリイミドワニスや、ポリイミド前駆体が粉末状とされたポリイミドパウダーが、考えられていた。
もって、このようなポリイミドワニスやポリイミドパウダーよりなる接着剤を、ポリイミドバルーンと混合して加熱することにより、溶融,硬化させ、もってポリイミドバルーン間を結合させて、ポリイミド発泡材が製造されていた。
【0004】
《先行技術文献情報》
このような製造方法としては、例えば次の特許文献1に示されたものが挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
特表2002−501573号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなポリイミドバルーンを使用した従来のポリイミド発泡材の製造方法については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点について》
第1に、ポリイミドワニスを接着剤として使用した従来例の製造方法については、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとの混合が容易でない、という致命的な問題が指摘されていた。
すなわちポリイミドバルーンは、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽い気泡状をなすのに対し、その接着剤として使用されるポリイミドワニスの溶剤としては、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフランが使用されており、これらは極性が高く高粘度である。
そこで、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが均一に混合されにくく、ポリイミド発泡材の製造に支障を生じることが多く、ポリイミドバルーン間の接着剤としてポリイミドワニスを用いる従来の製造方法は、実際上採用が困難視されていた。
【0007】
《第2の問題点について》
第2に、ポリイミドパウダーを接着剤として使用した従来例の製造方法は、このような欠陥,困難性がなく、現状では主流的に採用されているが、ポリイミドバルーン間の結合強度が低く、製造されたポリイミド発泡材の強度に不安が指摘されていた。
すなわち、この製造方法では、ポリイミドバルーンに粉末状のポリイミド前駆体つまりポリイミドパウダーを混合して、→その表面に発生する静電気を利用することにより、→ポリイミドバルーン表面にポリイミドパウダーを均一に吸着させていた。
しかしながら、→静電気を利用してポリイミドバルーン表面に吸着されたポリイミドパウダーは、→輸送・搬送過程や作業工程中に、振動等によりポリイミドバルーン表面から容易に脱落し易く、→結局、ポリイミドパウダーの分散が不均一化し、→ポリイミドバルーンとポリイミドパウダーの混合が不均一となり、→接着剤として機能すべきポリイミドパウダーが、輸送・搬送用の容器の底に溜まってしまうことが、多々あった。
→この結果、ポリイミドパウダーを加熱により溶融,硬化させ、ポリイミドバルーン間を結合させて製造されたポリイミド発泡材について、→ポリイミドバルーン相互間の結合強度が低下し、ポリイミド発泡材の強度に問題が生じることが多かった。
【0008】
《第3の問題点について》
第3に、主流的に採用されているポリイミドパウダーを接着剤として使用した従来例の製造方法については、更に、多量のポリイミドパウダーを使用することを要する、という問題が指摘されていた。
すなわち、ポリイミドパウダーは、ポリイミドバルーン間を結合させるべく、加熱して溶融されるが、→その際、流動性が低いので、→ポリイミドバルーンが相互に接する部分、つまりバルーン間の結合部に集まりにくかった。→そこでこの点をカバーするため、ポリイミドパウダーは、ポリイミドバルーンに対し60%〜200%程度の重量比で、多量に使用されていた。
このように、ポリイミド発泡材の製造に際し、必要以上に多量のポリイミドパウダーを、接着剤として混合することが必要であり、コスト面にも問題が指摘されていた。
【0009】
《本発明について》
本発明の発泡材の製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、ポリイミドバルーン間を結合させる接着剤として、ポリイミドワニスを用いると共に、その溶剤として、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤を、採用したことを特徴とする。
つまり、低粘度溶剤を加えて流動性を付与することにより、ポリイミドワニスを接着剤として用いたポリイミド発泡材を、製造可能としたことを特徴とする。
もって本発明は、第1に、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが、均一に混合され、もってポリイミド発泡材が支障なく製造でき、第2に、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れ、もってポリイミド発泡材の強度が向上し、第3に、ポリイミドワニスの使用量も少量で済む、発泡材の製造方法を提案することを、目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の発泡材の製造方法では、まず、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーンに、ポリイミド前駆体が溶剤に溶解された液状のポリイミドワニスを、混合する。その際、該溶剤としては、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤が、使用される。
それから次に、加熱することにより、該ポリイミドワニスが硬化して、該ポリイミドバルーン間を結合させ、もってポリイミド発泡材が成形されること、を特徴とする。
【0011】
請求項2については次のとおり。請求項2の発泡材の製造方法では、請求項1において、該ポリイミドワニスは、該高粘度溶剤として、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等が用いられ、該低粘度溶剤として、メタノールやアセトン等が用いられる。又、該ポリイミドバルーンと該ポリイミドワニスとの混合は、攪拌しつつ行われること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3の発泡材の製造方法では、請求項1において、該ポリイミドワニスは、該ポリイミド前駆体が、該ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有すると共に、20%から70%の重量比よりなり、該溶剤が、80%から30%の重量比よりなる。
更に、該溶剤については、該高粘度溶剤が、20%から80%の重量比よりなり、該低粘度溶剤が、80%から20%の重量比よりなること、を特徴とする。
【0012】
《作用について》
本発明に係る発泡材の製造方法は、このようになっているので、次のようになる。
▲1▼この製造方法では、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスが使用される。
▲2▼ポリイミドワニスは、そのポリイミド前駆体が、ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有し、20%から70%の重量比よりなる。溶剤が、80%から30%の重量比よりなる。
更に溶剤は、高粘度溶剤と低粘度溶剤の混合溶剤よりなり、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等の高粘度溶剤が、20%から80%の重量比よりなり、メタノールやアセトン等の低粘度溶剤が、80%から20%の重量比よりなる。
▲3▼そして、この製造方法では、まず、ポリイミドバルーンにポリイミドワニスが、攪拌しつつ混合される。
▲4▼それから、加熱することにより、ポリイミドワニスのポリイミド前駆体が、溶融,硬化して接着剤として機能し、ポリイミドバルーン間を結合させ、もってポリイミド発泡材が成形される。溶剤は、気化して除去される。
【0013】
▲5▼さて、この製造方法において、ポリイミドバルーン間の接着剤たるポリイミドワニスは、極性が高い溶解用の高粘度溶剤と共に、流動性付与用の低粘度溶剤を用いたことにより、低粘度化され流動性を備えている。
そこで、混合対象のポリイミドバルーンが、極小で軽い気泡状をなすものの、均一に分散,混合される。
▲6▼更に、この製造方法では、接着剤として、粉末状のポリイミドパウダーではなく、液状のポリイミドワニスを用いたので、ポリイミドバルーン間に、混合により容易かつ確実に浸透,含浸,付着した後、加熱により硬化する。
そこで、ポリイミドバルーン間が確実に結合され、その結合強度に優れ、ポリイミド発泡材の強度が向上する。
▲7▼又、この製造方法では、接着剤として、ポリイミドパウダーではなくポリイミドワニスが用いられており、ポリイミドワニスは、そのポリイミド前駆体の希釈率や、高粘度溶剤と低粘度溶剤の割合を調節することにより、その流動性を備えると共に、その流動性を適切に変化させることができる。
そこでポリイミドワニスを、ポリイミドバルーンの結合部に対し、容易かつ確実に浸透,含浸,付着させ集めることができるので、ポリイミドワニスの使用量は、少量で済む。
【0014】
【発明の実施の形態】
《図面について》
以下、本発明の発泡材の製造方法を、図面に示す発明の実施の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3は、本発明の実施の形態の説明に供する。
そして図1は、正断面説明図であり、(1)図は混合工程を、(2)図は型工程を、(3)図は加熱工程の1例を、(4)図は、加熱工程の他の例を示す。
図2の(1)図は、ポリイミド発泡材の正断面説明図、(2)図は、パネルの表面板間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(3)図は、容器の内外壁間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(4)図は、桁と共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(5)図は、ハニカムコアと共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(6)図は、ハニカムコアの斜視図である。
図3は、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図は、ポリイミドパウダーを示し、(2)図は、ポリイミドバルーンを示し、(3)図は、ポリイミドワニスを示し、(4)図は、ポリイミド発泡材を示す。
【0015】
《製造方法の概要について》
最初に、この製造方法の概要について述べる。この製造方法では、まず、ポリイミド前駆体1が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン2に、ポリイミド前駆体1が溶剤3に溶解された液状のポリイミドワニス4を、混合する。
その際、溶剤3としては、溶解用の高粘度溶剤5と流動性付与用の低粘度溶剤6との混合溶剤が使用される。
そして次に、加熱することにより、ポリイミドワニス4が硬化して、ポリイミドバルーン2間を結合させ、もってポリイミド発泡材7が成形される。
このように製造されたポリイミド発泡材7は、断熱性,耐熱性,軽量性等に優れており、250℃程度以上の熱にも十分耐え得ることができ、質量は、4kgf/m3〜130kgf/m3程度である。そしてポリイミド発泡材7は、断熱材その他の用途に広く使用される。
製造方法の概要は、このようになっている。
【0016】
《ポリイミドパウダー8について》
まず、ポリイミド素材として準備され、ポリイミドバルーン2の原材料となるポリイミドパウダー8について述べる。図3の(1)図に示したように、ポリイミドパウダー8は、粉末状のポリイミド前駆体1よりなる。
つまりポリイミドパウダー8は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等の分子間が未結合状態で、イミド化していないポリイミド前駆体1よりなると共に、粉末状・固体状の集合体よりなる。このようなポリイミドパウダー8は、例えば、特表2000−515584号公報中にも示されている。
このようなポリイミドパウダー8は、加熱することによりイミド化して発泡し、ポリイミドバルーン2となるが、ポリイミドバルーン2は、未だバルーン相互間は未結合状態にあり、更に加熱することにより、バルーン相互間が結合されてポリイミド発泡材7となる。なお本発明では、この加熱に際し、接着剤としてポリイミドワニス4が混合され、硬化によりポリイミドバルーン2相互間が結合される。
【0017】
このようなポリイミドパウダー8は、特表2000−515584号公報中にも記載されているが、例えば次のように製造される。
まず、次式(1)で示される芳香族酸ニ無水物又は芳香族酸ニ無水物誘導体である芳香族化合物Aと、次式(2)で示される芳香族ジアミン又は芳香族ジアミン誘導体である芳香族化合物Bとの、略等モル(モル比0.95〜1.05)の混合物と、この混合物と水素結合によって錯体を形成し得る錯形成剤Cと、溶剤Dと、からなる混合溶剤を調整する。
それから、この混合溶剤を加熱して、過剰となった分の錯形成剤Cと揮発性の溶剤Dとを除去して、固体化したポリイミド前駆体1を得た後、これを粉砕して粉末状とすることにより、ポリイミドパウダー8が製造される。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
式中nは、0〜3の整数であり、R1は、水素原子もしくはアルキル基であり、R2は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個持つ4価の芳香族残基であり、R3は、6つの炭素原子からなる不飽和ベンゼン環を1個〜5個有する2価の芳香族残基である。
芳香族化合物Aの芳香族酸ニ無水物としては、3,3’,4,4’,−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物等が、代表的である。
芳香族化合物Bの芳香族ジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、P−フェニレンジアミン等が、代表的である。
【0021】
錯形成剤Cは、ポリイミド前駆体1を事後に発泡させる作用を有し、テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル化合物が代表的である。この錯形成剤Cの沸点は、200℃以下のものが好ましく、沸点が200℃を越えると、均一な発泡が起こりにくくなる。
又、固体化したポリイミド前駆体1つまりポリイミドパウダー8中における錯形成剤Cの含有量は、合計量の1重量%〜15重量%程度であることが好ましい。1重量%未満では、ポリイミド前駆体1を事後十分に発泡させることが困難化し、又、15重量%を超えると、均一な発泡が起こりにくくなる。ポリイミドパウダー8は、例えばこのようにして製造される。
そしてポリイミドパウダー8は、次に述べるポリイミドバルーン2の製造用に使用される。
ポリイミドパウダー8は、このようになっている。
【0022】
《ポリイミドバルーン2について》
次に、ポリイミド素材として必須的に準備される、ポリイミドバルーン2について述べる。図3の(2)図に示したように、ポリイミドバルーン2は、ポリイミド前駆体1が、1次発泡しイミド化して硬化すると共に、相互間が未結合状態・独立状態にあり、フライアブルな微細気泡状をなす。
すなわちポリイミドバルーン2は、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽いバルーン状・粉状の集合体よりなり、いわば、ポリイミドパウダー8とポリイミド発泡材7間の中間物質と考えてもよい。
【0023】
このようなポリイミドバルーン2は、例えば、次のように製造される。まず、前述により得られたポリイミドパウダー8、つまり発泡性を有するポリイミド前駆体1の粉末を、容器に入れた後、100℃〜170℃程度の温度で加熱しつつ攪拌することにより、粉末が膨らみ1次発泡・バルーン化される。
そして、もしも更にそのまま発泡を進行させると、バルーン化した粉末同士が結合して、ポリイミド発泡材7へと進行してしまうので、これを回避するため、温度を制御し急激な発泡を抑制しながら攪拌して、バルーン化した粉同士の結合を回避する。この間、空気やガスを、バルーン化した粉間に流入させるとよい。
この状態で30分〜60分間程度、加熱しながら攪拌すると、バルーン化した粉内部の溶剤(前記溶剤D)が気化し、もって発泡が止まると共に、事後、バルーン化した粉間の結合の虞はなくなる。それから、容器内の温度を170℃以上に上げるべく加熱すると、バルーン化した粉がそのまま硬化し、もって所望のポリイミドバルーン2が製造される。
ポリイミドバルーン2の硬化程度は、加熱温度と時間によって決定されるが、硬化程度が低いと、保存性が悪く早期使用が必要となる。そこで、ポリイミドバルーン2の硬化程度は、加熱に要するコストと使用の仕方により、決定される。ポリイミドバルーン2は、例えばこのようにして製造される。
ポリイミドバルーン2は、このようになっている。
【0024】
《ポリイミドワニス4について》
次に、接着剤として必須的に準備される、ポリイミドワニス4について述べる。図3の(3)図に示したように、ポリイミドワニス4は、イミド化していないポリイミド前駆体1が、有機溶剤3に溶解されてなり、液状をなす。
つまりポリイミドワニス4は、芳香族ポリイミド系、例えばポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ビスマレイミド等のイミド化していないポリイミド前駆体1を、溶剤3中に溶解せしめたものであり、代表例としては、前述したポリイミドパウダー8を溶剤3中に溶解したものが挙げられる。
【0025】
このようなポリイミドワニス4について、更に詳述する。まず、ポリイミドワニス4中のポリイミド前駆体1、例えばポリイミドパウダー8は、事後のポリイミド発泡材7としての耐熱性に鑑み、ポリイミドバルーン2と同程度の耐熱性を備えたものが、選択使用されている。
そして、このポリイミド前駆体1は、ポリイミドワニス4全体の20%以上で70%以下の重量比・固形分量で使用され、残が溶剤3となり、80%以下で30%以上の重量比で使用される。
ポリイミド前駆体1の重量比が70%を越えると(溶剤3の重量比が30%未満の場合は)、ポリイミドワニス4が液状となりにくく固形状に近い状態(略ダンゴ状)となってしまう。又、ポリイミド前駆体1の重量比が20%未満の場合は(溶剤3の重量比が80%を越えると)、ポリイミドワニス4が、事後の加熱に際しポリイミドバルーン2間から流れ落ちてしまい、接着剤として機能しなくなる。
【0026】
次に、ポリイミドワニス4中の溶剤3は、高粘度溶剤5と低粘度溶剤6との混合溶剤よりなる。
高粘度溶剤5としては、従来より使用されているN−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等が用いられ、低粘度溶剤6としては、メタノールやアセトン等が用いられる。
そして高粘度溶剤5は、溶剤3全体の20%以上で80%以下の重量比で使用され、低粘度溶剤6は、溶剤3全体の80%以下で20%以上の重量比で使用される。
高粘度溶剤5の重量比が80%を越えたり、低粘度溶剤5の重量比が20%未満の場合は、粘度が高過ぎ流動性が不足して、ポリイミドワニス4が液状とはならず、固形状に近い状態(略ダンゴ状)となってしまう。逆に、高粘度溶剤5の重量比が20%未満の場合や、低粘度溶剤6の重量比が80%を越えると、粘度が低過ぎ流動性が過多となり、ポリイミドワニス4が、事後の加熱に際し、ポリイミドバルーン2間から流れ落ちてしまい、接着剤として機能しなくなる。
【0027】
ポリイミドワニス4は、ポリイミド前駆体1を、このような高粘度溶剤5と低粘度溶剤6との混合溶剤に、溶解してなる。
具体的に使用される高粘度溶剤5や低粘度溶剤6の種類や重量比・割合は、使用されるポリイミド前駆体1の種類によって異なり、2種類以上の高粘度溶剤5や、2種類以上の低粘度溶剤6が併用されることもある。
又、溶解態様としては、まずポリイミド前駆体1を高粘度溶剤5に溶解しておいてから、低粘度溶剤6を添加する場合もあり、他方、まず高粘度溶剤5と低粘度溶剤6とを混合しておいてから、ポリイミド前駆体1を溶解せしめる場合もある。
ポリイミドワニス4は、このようになっている。
【0028】
《混合工程について》
この製造方法では、まず、前述により予め準備されたポリイミドバルーン2に、このようなポリイミドワニス4が、攪拌しつつ混合される。例えば、図1の(1)図に示したように、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4とが、容器9の中で混合される。
混合・攪拌方式としては、攪拌腕が容器9内部で回転する方式、容器9自体が回転して攪拌する方式、容器9自体が振動して攪拌する方式、容器9内にガスを送り込んで攪拌する方式、その他の攪拌方式が採用される。
混合工程は、このようになっている。
【0029】
《加熱工程について》
この製造方法では、次に、このように混合されたポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4の混合物は、例えば図1の(2)図に示したように型10に充填された後、図3の(3)図や(4)図に示したように、加熱される。
このような加熱により、ポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、ポリイミドバルーン2間を結合させ、もって、ポリイミド発泡材7が成形される(図2の(1)図を参照)。
そして、このような加熱は、加熱炉11,ヒーター,ホットプレス,高周波誘電加熱等により、実施される。
すなわち、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物は、型10その他に入れられて、図1の(3)図のように加熱炉11に収納されたり、ホットプレス間に挟み込まれたり、ヒーターが取り付けられたり、図1の(4)図のように高周波電極12が配設されることにより、加熱キュアーされる。
【0030】
ここで、高周波誘電加熱について、更に詳述しておく。ポリイミドバルーン2は、発泡により内部にそれぞれ空気を含んでおり、断熱性に富んでいる。
そこで、混合物の厚みが厚い場合において、加熱炉11やホットプレス等の熱伝導による加熱方式では、混合物の内部まで、ポリイミドワニス4の硬化に必要な温度まで加熱するのに、長時間を要することになる。
そして特に、使用されるポリイミドワニス4の粘度が低く流動性が高い場合は、このような長時間にわたる温度上昇の過程で、ポリイミドワニス4が一段と軟化し、粘度が極めて低くなり流動性が極端に高くなって、ポリイミドバルーン2間から流れ落ちてしまい、接着剤として機能しなくなってしまう虞がある。
【0031】
そこで、このような場合には、高周波誘電加熱を組み合わせて併用すると、短時間での温度上昇,加熱が実現され、もってポリイミドワニス4の流れ落ちも、防止される。ポリイミドワニス4が流れ出す前に、溶剤3が気化すると共に、ポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、ポリイミドバルーン2間が結合される。
例えば、図1の(4)図に示したように加熱炉11内において、収納されたポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物を挟むように、高周波電極12を、その周りに対をなして配設する。図中13は、高周波電流を流す高周波電源である。そして、高周波電極12間に形成される磁束により、渦電流が流れ、もってジュール熱による加熱が実施される。
他方、例えばホットプレスの場合には、対をなす両ホットプレス面と混合物との間に、対をなす高周波電極12を配設するか、又は、対をなすホットプレス面自体に、高周波電流を流すようにする。
加熱工程は、このようになっている。
【0032】
《作用等》
本発明に係る発泡材の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
▲1▼この製造方法では、まず、ポリイミド前駆体1が1次発泡して未結合状態の微細気泡状をなすポリイミドバルーン2(図3の(2)図を参照)と、ポリイミド前駆体1が溶剤3に溶解された液状のポリイミドワニス4(図3の(3)図を参照)とが、使用される。
▲2▼ポリイミドワニス4において、そのポリイミド前駆体1は、ポリイミドバルーン2と同程度の耐熱性を有し、20%から70%の重量比よりなる。
ポリイミドワニス4において、溶剤3は、80%から30%の重量比よりなると共に、高粘度溶剤5と低粘度溶剤6との混合溶剤よりなる。そして、溶解用の高粘度溶剤5は、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等よりなり、溶剤3中、20%から80%の重量比よりなる。流動性付与用の低粘度溶剤6は、メタノールやアセトン等よりなり、溶剤3中、80%から20%の重量比よりなる。
【0033】
▲3▼そして、この製造方法では、まず混合工程において、ポリイミドバルーン2にポリイミドワニス4が、攪拌しつつ混合される(図1の(1)図,(2)図を参照)。
▲4▼それから、この製造方法では、加熱工程において、加熱することにより(図1の(3)図,(4)図を参照)、ポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して接着剤として機能し、ポリイミドバルーン2間を結合して、結合部14を形成する(図3の(4)図を参照)。
このようにして、ポリイミド発泡材7が成形される(図2の(1)図を参照)。なお、ポリイミドワニス4の溶剤3、つまり高粘度溶剤5と低粘度溶剤6は、加熱により気化,ガス化して、ポリイミドバルーン2間から抜けることにより、除去される。
【0034】
▲5▼さて、この製造方法では、前述したように、ポリイミドバルーン2間の接着剤たるポリイミドワニス4は、極性が高くポリイミド前駆体1の溶解用として機能する高粘度溶剤5と共に、流動性付与用として機能する低粘度溶剤6を用いたことにより、全体的に流動性を備えている(図3の(3)図を参照)。
このように、流動化・低粘度化されたポリイミドワニス4を用いたので、混合対象のポリイミドバルーン2が、直径0.1mm〜0.8mm程度と極小で、非常に軽い気泡状をなすものの、両者は均一に分散された状態で混合される。溶剤3として高粘度溶剤5のみを用いた場合のように、混合工程が困難化することはない。
【0035】
▲6▼更に、この製造方法では、ポリイミドバルーン2間の接着剤として、粉末状のポリイミドパウダー8(図3の(1)図を参照)ではなく、液状のポリイミドワニス4を用いたので(図3の(3)図,図1の(1)図を参照)、混合により、フライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーン2(図3の(2)図を参照)間に、容易に浸透,含浸,付着する。
そしてポリイミドワニス4は、その後も脱落等することなく、ポリイミドバルーン間に確実に浸透,含浸,付着しており、事後の加熱により、そのポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、結合部14(図3の(4)図を参照)を形成し、ポリイミドバルーン2間を結合する。
このようにして、ポリイミドバルーン2間が所期の通り確実に結合され、もって、ポリイミドバルーン2間の結合強度に優れ、製造されたポリイミド発泡材7の強度が向上する。
【0036】
▲7▼この製造方法では、ポリイミドバルーン2間の接着剤として、粉末状のポリイミドパウダー8ではなく、液状のポリイミドワニス4を用いてなる(図3の(3)図,図1の(1)図を参照)。そしてポリイミドワニス4は、そのポリイミド前駆体1の重量比・希釈率を調節したり、高粘度溶剤5と低粘度溶剤6の重量比・割合を調節することにより、流動性を備えると共に、その流動性を適切に変化させることができる。
そこで、接着剤として機能するポリイミドワニス4を、ポリイミドバルーン2が相互に接する部分に対し、つまりポリイミドバルーン2間の結合対象部に対し、容易かつ確実に浸透,含浸,付着させて、集めさせることができ、もって結合部14が形成される。
従って、ポリイミドワニス4の使用量が、少量で済むようになる。すなわち、接着剤としてポリイミドパウダー8を用いた場合は、その使用量が、ポリイミドバルーン2に対し60%〜200%程度の重量比となっていたが、このポリイミドワニスの場合は、その使用量が、20%程度の重量比で済むようになる。
なお、接着剤たるポリイミドワニス4の使用量を少なくするには、低粘度溶剤6の重量比・割合を増加させることが有効であるが、この場合には、前述したように高周波誘電加熱を併用するとよい。
【0037】
《適用例1》
ここで、本発明の適用例について、述べておく。まず、図2の(2)図に示した例では、表面板15間にポリイミド発泡材7が一体的に介装された、(断熱)パネル16が製造される。
表面板15としては、アルミニウム,ステンレス,チタン,その他の金属板や、ポリイミド発泡材7と同じポリイミド樹脂板や、その他の耐熱系樹脂板や、このような樹脂と繊維材とを組み合せた繊維強化プラスチック製(FRP)板、等が使用される。
【0038】
そして、このパネル16の製造方法では、予め間隔を存して配置され閉じられた内部空間を形成する2板の表面板15間に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が、充填される。表面板15は、治具により固定配置されており、混合物の挿入により変位することはない。
それから、これらを例えば加熱炉11やホットプレスに入れて加熱することにより、パネル16が製造される。すなわち加熱により、混合物中のポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が溶融,硬化して、まず、ポリイミドバルーン2間を結合させて、ポリイミド発泡材7が成形されると共に、同時に、成形されたポリイミド発泡材7を、両表面板15に対して接合する。
つまり、このパネル16の製造方法では、接着剤として機能するポリイミドワニス4により、ポリイミド発泡材7の成形,介装と、その表面板15への接合とが、一度に一体的に実現される利点がある。
適用例1は、このようになっている。
【0039】
《適用例2について》
次に、図2の(3)図に示した例では、内壁17と外壁18との間に、ポリイミド発泡材7が一体的に介装された耐熱保温用の容器19が製造される。
内壁(内容器)17と外壁(外容器)18とは、大小の相似形状をなし、内側の内壁17内には、保温対象物が収納される内部空間が形成され、内壁17と外側の外壁18間には、断熱芯材としてポリイミド発泡材7が介装されるに足る間隔空間が形成されている。
内壁17や外壁18の材質については、表面板15について前述したところに準じる。
【0040】
そして、この容器19の製造方法では、内壁17と外壁18間の間隔空間に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が、充填される。
それから、加熱することにより、200℃程度以上の使用に耐える容器19が製造される。すなわち加熱により、混合物中のポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して、まず、ポリイミドバルーン2間を結合させて、ポリイミド発泡材7が成形されると共に、同時に、成形されたポリイミド発泡材7を、内壁17と外壁18に対して接合する。
つまり、この容器19の製造方法では、接着剤として機能するポリイミドワニス4により、断熱芯材たるポリイミド発泡材7の成形,介装と、その内壁17や外壁18への接合とが、一度に一体的に実現される利点がある。
なお、容器19が3次元的形状をなす場合は、加熱により気化,ガス化したポリイミドワニス4中の溶剤3が噴出することがあり、換気に留意することが必要である。
適用例2は、このようになっている。
【0041】
《適用例3について》
次に、図2の(4)図や(5)図に示した例では、ポリイミド発泡材7が、補強材たる桁20やハニカムコア21(図3の(6)図も参照)と共に介装された、パネル16や容器19が製造される。
すなわち、前述したパネル16や容器19について、構造体としての強度を高めるため、表面板15間の間隔や内壁17と外壁18間の間隔空間について、ポリイミド発泡材7と共に、補強用の桁20,ハニカムコア21,アイソグリット片等が、一体的に介装されたパネル16や容器19も考えられる。
なおハニカムコア21は、セル壁22にて区画形成された、中空柱状の多数のセル23空間の集合体よりなる。
【0042】
そして、この製造方法にあっては、桁20を介装するケースでは、まず、桁20間の各区画空間に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が、充填される。それから、パネル16の場合は、このような桁20の両端に表面板15を組み付け、容器19の場合は、このような桁20を内壁17と外壁18間に挿入する。
なお、パネル16の場合はこれによらず、まず、桁20の一端側に表面板15を組み付けておき、次に桁20間の各区画空間に混合物を充填してから、桁20の他端側に、表面板15を組み付けるようにしてもよい。
【0043】
又、ハニカムコア21を介装するケースでは、まず、ハニカムコア21の各セル23内に、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物が充填される。それから、パネル16の場合は、ハニカムコア21の両開口端面に表面板15を組み付け、容器19の場合は、このようなハニカムコア21を内壁17と外壁18間に挿入する。
なお、パネル16の場合はこれによらず、まず、ハニカムコア21の一方の開口端面側に表面板15を組み付けておき、次に、ハニカムコア21の各セル23内に混合物を充填してから、ハニカムコア21の他方の開口端面側に、表面板15を組み付けるようにしてもよい。
【0044】
しかる後、この製造方法では、これらを加熱することにより、図2の(4)図に示したように、桁20がポリイミド発泡材7と共に介装されたパネル16や容器19や、図2の(5)図に示したように、ハニカムコア21がポリイミド発泡材7と共に介装されたパネル16や容器19が製造される。
すなわち加熱により、混合物中のポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して、まず、ポリイミドバルーン2間を結合させて、ポリイミド発泡材7が成形されると共に、同時に、成形されたポリイミド発泡材7を、パネル16の場合は両表面板15に対して接合し、容器19の場合は内壁17と外壁18に対して接合すると共に、更に、桁20やハニカムコア21のセル壁22に対しても接合する。
つまり、このパネル16や容器19の製造方法では、接着剤として機能するポリイミドワニス4により、介装されるポリイミド発泡材7の成形,介装と、その表面板15,内壁17,外壁18等への接合と、その桁20,ハニカムコア21への接合とが、一度に一体的に実現される利点がある。
適用例3は、このようになっている。
【0045】
《適用例4について》
更に、上述した適用例1,2,3において、成形,介装されたポリイミド発泡材7と、表面板15や内壁17,外壁18との接合強度を、より一層強化したい場合は、予め、表面板15や内壁17,外壁18にポリイミドワニス4を塗布しておくと、効果的である。
すなわち、この第4例の製造方法にあっては、パネル16の場合は両表面板15の対向面に、容器19の場合は内壁17と外壁18の対向面に、それぞれ事前に予め、ポリイミドワニス4を塗布しておく。
それから、ポリイミドバルーン2とポリイミドワニス4との混合物を、上述により塗布されたポリイミドワニス4に接するように、充填した後、加熱する。
そして、このような加熱により、ポリイミド発泡材7の成形と、その表面板15,内壁17,外壁18等への接合と、更には、桁20やハニカムコア21への接合とが、一度に行われることに関しては、前述した通りである。
【0046】
そして、この第4例の製造方法では、上述した加熱により、上述した所と同時に、更に、予め塗布されていたポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化し接着剤として機能する。
そこで、パネル16の場合は、成形,介装されたポリイミド発泡材7と、表面板15間の接合強度が、一段と向上する。又、容器19の場合は、成形,介装されたポリイミド発泡材7と、内壁17や外壁18との間の接合強度が、一段と向上する。
適用例4は、このようになっている。
【0047】
《適用例5について》
又、上述した適用例1,2,3において、成形,介装されたポリイミド発泡材7自体の強度と、表面板15や内壁17,外壁18との接合強度とを、共に、より一層強化したい場合は、製造されたパネル16や容器19を、事後、ポリイミドワニス4に浸漬してから、再加熱する後工程を付加すると、効果的である。
すなわち、この第5例の製造方法では、製造されたパネル16や容器19を、雰囲気ガスが残らないように留意しつつ、ポリイミドワニス4に浸漬して引き上げる。これにより、成形,介装されていたポリイミド発泡材7に、ポリイミドワニス4が浸透,含浸,付着させる。なお、ポリイミドワニス4が浸透,含浸,付着してほしくない箇所については、マスキングしてから浸漬するか、浸漬後に拭き取るようにする。
ポリイミド発泡材7は、ポリイミドバルーン2間の隙間について、前述により結合部14(図3の(4)図を参照)にて結合された残りの空間が、独立気孔,連続気孔,凹凸等となっている。そこで、ここにポリイミドワニス4が浸透,含浸せしめられて、被膜状に付着する。
【0048】
そして、このようにポリイミドワニス4が付着したパネル16や容器19を加熱することにより、付着したポリイミドワニス4のポリイミド前駆体1が、溶融,硬化して接着剤として機能する。
そこで、このような接着機能により、まず、成形,介装されていたポリイミド発泡材7自体について、前述した結合部14の周囲に追加された補強結合部が形成される。もって、この面からポリイミドバルーン2間の結合強度が、一段と強化され、ポリイミド発泡材7の強度が一段と向上する。
これと共に、このような接着機能により、パネル16の場合は、成形,介装されていたポリイミド発泡材7と、表面板15間の接合強度が、一段と向上する。容器19の場合は、成形,介装されていたポリイミド発泡材7と、内壁17や外壁18間の接合強度が、一段と向上する。
このように、事後のポリイミドワニス4への浸漬,加熱により、ポリイミド樹脂がパネル16全体や容器19全体に行き渡り、より一体化された製品が得られるようになる。
適用例5は、このようになっている。
【0049】
【発明の効果】
《本発明の特徴》
本発明に係る発泡材の製造方法は、以上説明したように、ポリイミドバルーン間を結合させる接着剤として、ポリイミドワニスを用いると共に、その溶剤として、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤を、採用したことを特徴とする。
つまり、低粘度溶剤に加えて流動性を付与することにより、ポリイミドワニスを接着剤として用いたポリイミド発泡材を、製造可能としたことを特徴とする。
そこで、本発明の発泡材の製造方法は、次の第1,第2,第3の効果を発揮する。
【0050】
《第1の効果》
第1に、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが、均一に混合され、もってポリイミド発泡材が、支障なく製造される。
すなわち、この製造方法では、接着剤として用いられるポリイミドワニスについて、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤を採用したので、ポリイミドバルーンとポリイミドワニスとが、均一に混合されるようになる。
前述した従来例の製造方法、つまり溶剤が高粘度溶剤のみからなるポリイミドワニスを用いた製造方法のように、混合が困難化して、製造に支障が生じるようなことはない。
このように、接着剤としてポリイミドワニスを用いるものの、ポリイミド発泡材が支障なく製造されるようになる。
【0051】
《第2の効果》
第2に、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れており、ポリイミド発泡材の強度が向上する。
すなわち、この製造方法では、接着剤としてポリイミドワニスを用いたので、接着対象のポリイミドバルーン間に、容易かつ確実に浸透,含浸,付着するようになる。
前述した従来例の製造方法、つまりポリイミドパウダーを接着剤として用いた製造方法のように、静電気を利用して吸着されていたポリイミドパウダーが、途中で脱落してしまい、結果的に、ポリイミドバルーン間の結合強度が低下してしまうようなことは、回避される。
このように、ポリイミドバルーン間の結合強度に優れており、製造されたポリイミド発泡材の強度が向上する。
【0052】
《第3の効果》
第3に、ポリイミドワニスの使用量も少量で済み、コスト面に優れている。すなわち、この製造方法では、ポリイミドバルーン間の接着剤としてポリイミドワニスを用い、そのポリイミド前駆体の希釈率や、高粘度溶剤と低粘度溶剤の割合を調節することにより、適切な流動性を得ることができる。
もって、ポリイミドバルーン間の結合部に、ポリイミドワニスを集めさせることができる。
前述した従来例の製造方法、つまりポリイミドパウダーを接着剤として用いた製造方法のように、結合部へ集めさせるために、多量のポリイミドパウダーを使用する必要はなく、ポリイミドワニスは少量の使用量で済み、その分、コスト面にも優れている。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発泡材の製造方法について、発明の実施の形態の説明に供する、正断面説明図であり、(1)図は、混合工程を、(2)図は、型工程を、(3)図は、加熱工程の1例を、(4)図は、加熱工程の他の例を示す。
【図2】同発明の実施の形態の説明に供し、(1)図は、ポリイミド発泡材の正断面説明図、(2)図は、パネルの表面板間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(3)図は、容器の内外壁間に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(4)図は、桁と共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(5)図は、ハニカムコアと共に介装された例を示し、要部の正断面説明図、(6)図は、ハニカムコアの斜視図である。
【図3】同発明の実施の形態の説明に供し、顕微鏡拡大した模式説明図であり、(1)図は、ポリイミドパウダーを示し、(2)図は、ポリイミドバルーンを示し、(3)図は、ポリイミドワニスを示し、(4)図は、ポリイミド発泡材を示す。
【符号の説明】
1 ポリイミド前駆体
2 ポリイミドバルーン
3 溶剤
4 ポリイミドワニス
5 高粘度溶剤
6 低粘度溶剤
7 ポリイミド発泡材
8 ポリイミドパウダー
9 容器
10 型
11 加熱炉
12 高周波電極
13 高周波電源
14 結合部
15 表面板
16 パネル
17 内壁
18 外壁
19 容器
20 桁
21 ハニカムコア
22 セル壁
23 セル
Claims (3)
- まず、ポリイミド前駆体が1次発泡して硬化すると共に相互間が未結合状態でフライアブルな微細気泡状をなすポリイミドバルーンに、ポリイミド前駆体が溶剤に溶解された液状のポリイミドワニスを、混合し、
その際、該溶剤としては、溶解用の高粘度溶剤と流動性付与用の低粘度溶剤との混合溶剤が使用され、
次に、加熱することにより、該ポリイミドワニスが硬化して、該ポリイミドバルーン間を結合させ、もってポリイミド発泡材が成形されること、を特徴とする発泡材の製造方法。 - 請求項1に記載した発泡材の製造方法において、該ポリイミドワニスは、該高粘度溶剤として、N−メチルピロリドンやテトラヒドロフラン等が用いられ、該低粘度溶剤として、メタノールやアセトン等が用いられており、又、該ポリイミドバルーンと該ポリイミドワニスとの混合は、攪拌しつつ行われること、を特徴とする発泡材の製造方法。
- 請求項1に記載した発泡材の製造方法において、該ポリイミドワニスは、該ポリイミド前駆体が、該ポリイミドバルーンと同程度の耐熱性を有すると共に、20%から70%の重量比よりなり、該溶剤が、80%から30%の重量比よりなり、
更に該溶剤については、該高粘度溶剤が、20%から80%の重量比よりなり、該低粘度溶剤が、80%から20%の重量比よりなること、を特徴とする発泡材の製造方法。
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JP2006188023A (ja) * | 2005-01-07 | 2006-07-20 | Taisei Laminator Co Ltd | 構造体 |
JP2009066784A (ja) * | 2007-09-11 | 2009-04-02 | Showa Aircraft Ind Co Ltd | ハニカムパネルの製造方法 |
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