JP2004314164A - 溶接装置及び溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ルートギャップによらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、高い品質の裏ビードを得ることができる溶接装置及び溶接方法を提供する。
【解決手段】突合せ継手8の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤ3に電力を供給する溶接電源装置7と、この溶接電源装置7の電源特性を、上記突合せ継手8のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する制御装置10とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】突合せ継手8の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤ3に電力を供給する溶接電源装置7と、この溶接電源装置7の電源特性を、上記突合せ継手8のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する制御装置10とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、片側突合せ溶接の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置及び溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
片側突合せ溶接の初層溶接を行う場合、ルートギャップ部分に裏当て材を当て、この状態で開先部分に溶融金属を流し込んでいくことが一般的に行われるが、裏当て材を用いた場合、裏当て材を取り付けるための工数が増加し、また鋼裏当て材を用いた場合には、継手の強度が低下する恐れがある。更に、箱型構造物においては、溶接後の裏当て材の除去が困難な場合が多い。そこで溶接線とほぼ直交方向に消耗電極ワイヤをウィービングさせることで、突合せ継手を構成する対向した2つの母材間に溶融金属をブリッジさせ、裏当て材を用いずに突合せ継手を溶接しなおかつ良好な裏ビードを形成する技術が既に提唱されている(例えば非特許文献1等参照)。
【0003】
【非特許文献1】
山本 光、外5名、“バッキングレスV開先継手におけるルートギャップ変動に対する裏ビードのフィードフォワード制御”、溶接学会論文集、平成14年11月、第20巻、第4号、p499−505
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の溶接法を用いる場合、消耗電極ワイヤからの溶滴の離脱を規則的に行うために、溶接電源装置の電源特性にはパルス特性が用いられる。上記の溶接法では、突合せ継手のルートギャップに応じ、溶接電流のパルス期間(ピーク電流期間)が操作されている。例えば、ルートギャップが小さい場合、裏ビードを形成するためにはパルス期間を長めに設定し、平均電流値を上げる必要がある。
【0005】
しかしながら、ルートギャップが小さくパルス期間を長く設定せざるを得ず、結果的にパルス期間がパルス周期に近づくと、ピーク電流値からベース電流値への立下がりの不均一によって、立下り中にパルス周期に到達し、ベース電流値に移行しきる前に再びピーク電流値に戻ってしまう場合がある。このように、ベース電流期間が消失してしまうと、上記した溶接電流の立下りの不均一によるパルス周期毎の平均電流値が変動し、安定した裏ビードが形成できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記の事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、ルートギャップによらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、高い品質の裏ビードを得ることができる溶接装置及び溶接方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、この溶接電源装置の電源特性を、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、例えば、ルートギャップが小さく、パルス期間をパルス周期に近い値に設定しなければばらないような場合、溶接電源特性として定電圧特性を採用する。これにより、溶接電源の立下りの不均一による平均電流値の変動もなく、溶接電流を安定させ、良好な裏ビードを有する高品質な溶接が可能となる。また、ルートギャップが大きく、パルス期間(ピーク電流期間)を短く設定し、ベース電流期間が確保されるような場合は、通常通り、溶接電源特性をパルス特性として良好な裏ビードを得ることができる。このように、ルートギャップによらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、高い品質の裏ビードを得ることができる。
【0009】
また、第2の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値より小さい場合には、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性に設定し、前記ルートギャップ量が前記しきい値より大きい場合には、前記電源特性をパルス特性に設定する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、溶接中に前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、前記溶接電源装置の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、前記ルートギャップ量が前記しきい値を超えた場合、前記電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換える制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤを挿通した溶接トーチと、この溶接トーチをウィービングさせながら溶接線に沿って移動させるマニピュレータと、前記溶接トーチに前記消耗電極ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じ、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する手順、前記突合せ継手のルートギャップを基に溶接条件を設定する手順、及び、これら設定条件に従って前記溶接電源装置、前記マニピュレータ及び前記ワイヤ送給装置を制御する手順を実行可能な制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤを挿通した溶接トーチと、この溶接トーチをウィービングさせながら溶接線に沿って移動させるマニピュレータと、前記溶接トーチに前記消耗電極ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、前記突合せ継手のルートギャップを検出するギャップセンサと、このギャップセンサからの検出信号に応じ、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する手順、前記検出信号を基に溶接条件を設定する手順、及び、これら設定条件に従って前記溶接電源装置、前記マニピュレータ及び前記ワイヤ送給装置を制御する手順を実行可能な制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、上記第1乃至第5の発明において、前記制御装置は、前記消耗電極ワイヤを溶接線方向に繰り返し進退させつつ、前記溶接線に沿って移動させるスイッチバック動作を併せて実行可能なプログラムを格納していることを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じ、溶接電源装置の電源特性を、定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定することを特徴とする。
【0015】
また、第8の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値より小さい場合には溶接電源装置の電源特性を定電圧特性に設定し、前記ルートギャップ量が前記しきい値より大きい場合には前記電源特性をパルス特性に設定することを特徴とする。
【0016】
また、第9の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、溶接中に前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、溶接電源装置の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、前記ルートギャップ量が前記しきい値を超えた場合、前記電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換えることを特徴とする。
【0017】
また、第10の発明は、上記第7乃至第9の発明において、前記消耗電極ワイヤを、溶接線方向に繰り返し進退させつつ、前記溶接線に沿って移動させるスイッチバック動作を併せて行うことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶接装置及び溶接方法の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の溶接装置の一実施形態の全体構成を表す概略図である。この図1において、1は多関節型のアーム1aを有するマニピュレータ(溶接ロボット)、2はそのアーム1a先端に設けた溶接トーチで、マニピュレータ1は、溶接線に対しほぼ直交する方向にウィービングさせつつ溶接トーチ2を溶接線に沿って移動させる。3は溶接トーチ2に挿通された消耗電極ワイヤ、4は溶接トーチ2に消耗電極ワイヤ3を導くチューブ、5はリール6に巻回された消耗電極ワイヤ3を溶接トーチ2に順次送給するワイヤ送給装置である。なお、特に図示していないが、溶接トーチ2には、シールドガスを噴射するガスノズルが設けてある。
【0019】
7は消耗電極ワイヤ3に電力(電流・電圧)を供給する溶接電源装置で、この溶接電源装置7のプラス端子7aは消耗電極ワイヤ3(厳密にはチューブ4)に、マイナス端子7bは溶接対象である突合せ継手8に、それぞれ接続している。また、溶接電源装置7の図示しない出力端子は、ワイヤ送給装置5に接続しており、溶接電源装置7からワイヤ送給装置5に供給される指令信号(電力)の大きさを基に、消耗電極ワイヤ3の送給速度が調整される。
【0020】
9はロボット制御盤で、このロボット制御盤9は、マニピュレータ1、溶接電源装置7に対する指令信号を演算する制御装置10と、この制御装置10で演算された各指令信号をマニピュレータ1及び溶接電源装置7にそれぞれ出力するロボットドライバ11及び電源ドライバ12とを内蔵している。13は突合せ継手8のルートギャップを検出し制御装置10に出力するギャップセンサで、このギャップセンサ13は、マニピュレータ1のアーム1aの先端において、溶接トーチ2の近傍(図1に矢印で図示した溶接線方向前方側)に設けてある。このギャップセンサ13としては、例えば公知のレーザセンサや超音波センサ等を用いれば足りる。
【0021】
このような構成により、図1の溶接装置は、制御装置10に溶接開始点及び終了点が入力されると、溶接開始の指示を機に、制御装置10によって、ギャップセンサ13からの検出信号に基づき、溶接電源装置7の電源特性を含む溶接条件を逐次設定し、マニピュレータ1及び溶接電源装置7を制御する(制御装置10による制御フローについては後述する)ようになっている。
【0022】
マニピュレータ1は、ロボットドライバ11を介して出力される制御装置10からの指令信号を入力すると、その指令信号に応じたウィービング幅及び移動速度(溶接速度)で、溶接トーチ2をウィービングさせつつ、溶接線に沿って図中矢印方向に移動させるよう、アーム1aを動作させる。一方、これと同時に溶接電源装置7は、制御装置10から出力される電源特性(後述)の指令信号を、電源ドライバ12を介して入力すると、その指令値に応じた電圧・電流を消耗電極ワイヤ3に印加する。消耗電極ワイヤ3に印加される電流は、溶接電源装置7のプラス端子7a→消耗電極ワイヤ3→突合せ継手8→溶接電源装置7のマイナス端子7bといった順に流れる。これにより、消耗電極ワイヤ3の先端から突合せ継手8の溶接箇所までの間にアーク20が発生し、そのアーク熱により消耗電極ワイヤ3の先端部と突合せ継手8の溶接箇所とが溶融し、突合せ継手8に溶融金属が付着形成される。また、こうした消耗電極ワイヤ3の消耗(溶融)に伴い、溶接電源装置7は、制御装置10からの指令信号に応じた大きさのワイヤ送給信号(電圧)をワイヤ送給装置5に出力し、ワイヤ送給装置5の駆動速度を制御することにより、消耗電極ワイヤ3を順次溶接トーチ2に送給する。
【0023】
図2は、溶接電源装置7が、制御装置10から電源ドライバ12を介して指令信号を入力した際に出力する電流波形の一例を表す図である。まず、この図2において、消耗電極ワイヤ3に流れる電流値が、ピーク電流(この例では300A)のときには、消耗電極ワイヤ3から溶滴が安定して離脱し、ベース電流(この例では100A)のときには溶滴の離脱が抑制される。そのため、突合せ継手8にルートギャップがある場合、そのギャップ中心付近で溶滴が離脱すると、溶滴が突合せ継手8に付着せず落下してしまう恐れがあるので、消耗電極ワイヤ3に対し、ウィービング1/2周期に対応するパルス周期のパルス電流を供給し、突合せ継手8を構成する両母材に近付いたときに溶滴が離脱して、溶滴がルートエッジに付着するようにする。このときには、溶接電源装置7に対しては、制御装置10からパルス特性の指令信号が出力され、これを受けて溶接電源装置7は、消耗電極ワイヤ3にパルス電流を供給する。
【0024】
ここで、突合せ継手8のルートギャップが比較的広い場合、ウィービング幅をルートギャップに合わせて広くすることで、アーク熱及び離脱した溶滴がルートエッジ付近に到達し易くなる。これにより、ルートエッジが十分に溶融されるので、図2(a)に示すように、比較的平均電流値を抑えることができ、パルス期間(ピーク電流期間)tpをそれだけ短く設定できる。この場合、ルートギャップに対して設定されるパルス電流波形は、パルス周期Tがパルス期間(ピーク電流期間)tpに対し十分大きくなるため、十分なベース電流期間が得られ、安定した裏ビードを得ることができる。
【0025】
しかしながら、ルートギャップが狭くなると、アーク熱及び溶滴がルートエッジ付近に到達し難くなるので、ルートエッジを十分に溶融させ良好な裏ビードを形成するには、ウィービング幅を狭めるとともに、平均電流値を高める、すなわちパルス期間tpを大きくする必要がある。ところが、図2(b)に示すように、パルス期間tpがパルス周期Tに近づくと、溶接電源装置7から出力される溶接電流は、立下りの不均一によってベース電流(この例では100A)に移行しきる前にピーク電流(この例では300A)に戻ってしまうことがあり、結果的にベース期間が消失してしまう場合がある。ベース期間がなくなると、立下りの不均一に起因するパルス周期毎の平均電流値の変動が裏ビードの形成状態に与える影響が顕著化し、裏ビードの形成状態が不安定になる恐れがある。
【0026】
そこで、本発明においては、ルートギャップがある値よりも小さく、パルス期間tpをパルス期間Tに近い値に設定せざるを得ず、結果的にベース期間が消失する可能性がある場合、上記電源ドライバ12を通して制御装置10から出力される溶接電源装置7への制御信号を、図2(c)のようにパルス特性から定電圧特性に切換える。このときの電流値は、ピーク電流よりは小さくベース電流よりは大きい値である。この定電圧特性への切換え時は、十分な値を確保した状態で平均電流値が安定しており、更に突き合せ継手8のルートギャップが小さく、かつウィービング幅も小さいので、ルートエッジ付近にアーク熱と溶滴とを十分に与えることができ、安定な裏ビードを形成することができる。
【0027】
図3は、上記制御装置10の概略構成を表すブロック図である。この図3において、14は信号の入力部であるA/D変換器14で、このA/D変換器14を介して、ギャップセンサ13からの検出信号や溶接電源装置7によって消耗電極ワイヤ3に供給された電力(電流・電圧)の値が、制御装置10に入力されディジタル信号化される。15は所定の制御手順のプログラムや制御に必要な定数を格納するリードオンリーメモリー(ROM)で、このROM15には、溶接電源装置7の電源特性を切換え判断ための、突合せ継手8のルートギャップのしきい値(設定値)が格納されている。また、突合せ継手8のルートギャップ毎に、予め実験的(又は理論的)に求められた溶接条件(消耗電極ワイヤ3の印加電力、送給速度、ウィービング幅、溶接速度、及び電源特性)の組合せパターンをまとめた溶接条件テーブルが格納されている。
【0028】
16は時間計測を行うタイマ、17はROM15に格納したプログラムや溶接条件テーブルから選定した溶接条件に順じ、マニピュレータ1や溶接電源装置7に対する所定の指令信号を演算する中央演算処理装置(CPU)である。18はCPU17の演算結果や演算途中の数値を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、19はCPU17で演算された指令信号をアナログ信号に変換し、対応のドライバ(上記ロボットドライバ11、電源ドライバ12)に出力するD/A変換器である。
【0029】
図4は、制御装置10に格納したプログラムによる制御手順を表すフローチャートで、上記構成の制御装置10は、この図4のフローに基づき、マニピュレータ1、ワイヤ送給装置5、溶接電源装置7を制御する。図4において、まずステップ100にて、ロボット制御盤9に設けた(或いは別途設けた)図示しない設定部より、操作者により設定された溶接開始点及び終了点を制御装置10に入力する。入力された溶接開始点・終了点は、A/D変換器14を介してディジタル信号化され、RAM18に格納される。
【0030】
ステップ101に移り、ギャップセンサ13からの突合せ継手8のルートギャップの検出信号をA/D変換器14を介して入力し、ディジタル信号化してRAM18に格納し、ステップ102に手順を移行する。
【0031】
ステップ102では、ギャップセンサ13からの検出信号を基に演算した突合せ継手8のルートギャップに応じ、溶接電源装置7の電源特性を、突合せ継手8のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する。具体的には、演算したルートギャップ量をROM15に格納したしきい値と比較し、しきい値よりも大きければ溶接電源装置7の電源特性をパルス特性に、しきい値よりも小さければ定電圧特性に設定し、その設定をRAM18に格納する。
【0032】
続くステップ103では、CPU17によって、ステップ101で入力されたルートギャップ及びステップ102で設定された電源特性に対し、適切な溶接条件(消耗電極ワイヤ3の印加電力、送給速度、ウィービング条件、溶接速度)が、ROM15に格納した溶接条件テーブルの中から1つ選定(設定)され、この溶接条件の設定がRAM18に格納される。
【0033】
上記のように、溶接条件及び溶接電源装置7の電源特性が設定されたら、CPU17は、その設定条件で溶接を実行するための指令信号を演算し、ロボットドライバ11及び電源ドライバ12を介しマニピュレータ1及び溶接電源装置7に出力する。マニピュレータ1には、溶接トーチ2の移動速度(溶接速度)及びウィービング幅が指令され、溶接電源装置7には、消耗電極ワイヤ3の送給速度及び電源特性(パルス特性又は定電圧特性)に応じた溶接電力(電流・電圧)が指令される。
【0034】
続いて、ステップ104では、溶接中に溶接電源装置7から消耗電極ワイヤ3に印加された電流・電圧の測定値を入力し、A/D変換器14を介してディジタル信号化してRAM18に格納し、ステップ105に移る。ステップ105では、タイマ16による現在時刻がウィービング周期に達したかどうかを判定し、判定が満たされない場合、ステップ104に戻って、更に電流・電圧の測定値を入力する。現在時刻がウィービング周期に達し、ステップ105の判定が満たされた場合、ステップ106に手順を移行する。
【0035】
ステップ106では、ウィービング1周期の電圧値を積分しRAM18に格納すると共に、この値を、RAM18に格納してある直前の1周期分の電圧積分値と比較し、電源制御データの補正量を演算してRAM18に格納する。具体的には、アーク長が一定となるよう、前周期よりも電圧の積分値が大きければ、その差分に応じてワイヤ送給速度を上げる(逆に小さければその差分に応じてワイヤ送給速度を下げる)ために、ワイヤ送給装置5に対する指令値が変化するよう、溶接電源装置7への指令信号の補正量を演算・格納する。
【0036】
ステップ107では、消耗電極ワイヤ3に印加された電流・電圧の測定値を、ウィービング中心から左側、右側それぞれにおいて積分し、それら積分値の偏差を補正するよう(つまり、アーク長がウィービング左右で同等になるよう)、現在のウィービング中心位置から適正なウィービング中心位置までの補正量(距離)を演算し、RAM18に格納する。
【0037】
次のステップ108では、CPU17は、タイマ16による計測時刻が、所定の周期(ウィービング周期の1/m倍,m:整数)に達すると、ステップ106,107にて演算された補正量を基に、マニピュレータ1及び溶接電源装置7に対する指令信号を補正し、D/A変換器19を介してアナログ信号化して、それぞれに対応するロボットドライバ11及び電源ドライバ12を介して出力する。
【0038】
続いてステップ109に移行し、タイマ16による現在時刻が、ギャップセンサ13による所定のギャップ検出周期(ウィービング周期のn倍,n:整数)に達したかどうかを判定し、判定が満たされない場合、ステップ102〜108の手順を再度実行する。現在時刻がギャップ検出周期に達し、ステップ109の判定が満たされた場合、ステップ110に移る。
【0039】
ステップ110では、現在位置が、ステップ100で入力された溶接終了点に到達したかどうかを判定し、判定が満たされない場合、ステップ101に戻って、上記のステップ101〜109の手順を繰り返す。つまり、溶接終了点に達するまでは、ギャップ検出周期毎に、ギャップセンサ13からのルートギャップの検出信号を基に、溶接条件(消耗電極ワイヤ3の印加電力、送給速度、ウィービング条件、溶接速度)を更新し、マニピュレータ1及び溶接電源装置7の制御を繰り返す。また、これとともに、ギャップ検出周期毎に、検出されたルートギャップをROM15の格納値と比較し、溶接中にルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、溶接電源装置7の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、逆に、ルートギャップ量がしきい値を超えた場合、電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換える。そして、最終的に、溶接終了点に到達し、ステップ110の判定が満たされると、マニピュレータ1及び溶接電源装置7に対する指令信号をOFFにして図4の制御手順を終了する。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、片側突合せ溶接の初層溶接を行う場合、ルートギャップ量に応じ、溶接電源装置7の電源特性がパルス特性又は定電圧特性のうちから選択され、ルートギャップ量がしきい値より大きな場合には溶接電源装置7の電源特性がパルス特性に、ルートギャップ量がしきい値以下の場合には溶接電源装置7の電源特性が定電圧特性に切換わる。したがって、ルートギャップ量によらず、平均電流値の不均一による影響を低減し、突合せ継手に裏当て材を使用せずにアーク溶接をする場合であっても、安定した突合せ継手8の初層溶接を行うことができ、良好な裏ビードを有する高品質な溶接を行うことができる。
【0041】
なお、以上においては、単にウィービング動作を伴う消耗電極式アーク溶接に本発明を適用した場合を説明したが、図5に示したように、ウィービング動作(図5中矢印26参照)に加え、いわゆるスイッチバック動作(図5中矢印25参照)を組合せて動作させる場合にも、本発明は適用可能である。ここで言うスイッチバックとは、矢印25で示したように、溶接線に沿って、前進→後退→前進という動作を繰り返しながら、溶接トーチ2を移動させ溶接ビードを重畳させていく動作である。
【0042】
このスイッチバック動作は、例えば、ROM15(図3参照)に溶接線方向に前進・後退を繰り返しながら溶接トーチ2を移動させるよう、マニピュレータ1を動作制御するためのプログラムを格納しておけば実現可能である。そして、スイッチバック動作を組合せた溶接を行う場合の制御手順は、先の図4と概ね同様であるが、ステップ102,103では、溶接線方向に対する「前進→後退→前進」の動作を1サイクルとし、この1サイクル毎に溶接電源の電源特性を含む溶接条件が設定される。また、この場合、ステップ109におけるギャップ検出周期を、前述した1サイクルの動作に要する時間に設定することが望ましい。
【0043】
このような要領で、スイッチバック動作を行うウィービング溶接に本発明を適用した場合、溶接線方向に入熱を分散させ、溶融金属の溶け落ちを防止すると共に、ルートギャップ量に応じて電源特性を制御することにより、更に良好な裏ビードを形成することができ、溶接品質をより向上させることができる。
【0044】
また、以上において、ルートギャップの検出データが、ギャップセンサ13により、オンラインで制御装置10に入力される例を説明してきたが、これに限られず、オフラインで予め測定しておき、それを事前に入力する構成としても良い。この場合、例えば、突合せ継手のルートギャップを事前に測定した結果、溶接線に沿って各箇所のルートギャップが既知である場合、ギャップセンサ13の検出信号に基づいて溶接条件や電源特性をオンラインで設定しなくとも、その事前測定結果を入力しておき、その入力に応じて溶接条件や電源特性が制御されるようにすれば良い。また、開先加工精度及び突合せ精度が十分に高い場合には、溶接開始点及び終了点のルートギャップを測定し事前に入力しておけば、ルートギャップはほぼ線形的に変化することから、CPU17により、その線形変化を入力値から演算し、更にルートギャップのしきい値に対する大小関係が変化する溶接開始点からの距離(又は溶接開始後の経過時間)を演算して電源特性を切換える構成としても良い。これらの場合も、同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、図4のステップ106におけるワイヤ送給速度の補正は、突合せ継手8に目違い(段差)があった場合でも、次のステップ107のウィービング中心制御と併せて、消耗電極ワイヤ3の先端位置を、ルートエッジ付近に溶接金属を付着させるのに適当な位置に補正する役割を果たしているが、目違いのない場合には、省略しても構わない。また、母材同士の突合せ精度が高く、ウィービング中心が、溶接線全長に亘って母材間中心と一致するような場合には、ウィービング中心位置の補正は必ずしも必要なく、このような場合には、ステップ107を省略することもでき、これに伴ってステップ105,108も省略可能である。この場合も同様の効果を得る。
【0046】
また、以上においては、消耗電極ワイヤ3をウィービングさせる消耗電極式アーク溶接に適用した場合を例に説明したが、ルートギャップによっては、ウィービング幅を0(ゼロ)としても(ウィービングさせなくても)良い。図4の制御フローでは、ウィービング周期の整数倍をギャップ検出周期に設定したが、この場合には、ギャップ検出周期を別途設定しておく。この場合も同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、消耗電極ワイヤ3のみでアーク溶接する場合を例に挙げたが、例えば、消耗電極ワイヤ3に加えてフィラワイヤを設けたいわゆるダブルワイヤ方式の溶接装置にも、本発明は適用可能である。また、図1において、ワイヤ送給装置5をリール6側に設けたいわゆるプッシュ方式のものとして説明したが、溶接トーチ2側に設けるいわゆるプル方式のものとしても、これらを組合せたものとしても構わない。これらの場合も上記同様の効果を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、裏当て材を使用しない片側突合せ溶接を行う場合であっても、突合せ継手のルートギャップ量に応じた電源特性を設定し安定した溶接電流を得ることができるので、ルートギャップ量に関わらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、良好な裏ビードを有する高品質な溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接装置の一実施形態の全体構成を表す概略図である。
【図2】本発明の溶接装置の一実施形態に備えられた溶接電源装置が、制御装置から指令信号を入力した際に出力する電流波形の一例を表す図である。
【図3】本発明の溶接装置の一実施形態に備えられた制御装置の概略構成を表すブロック図である。
【図4】本発明の溶接装置の一実施形態に備えられた制御装置による制御手順を表すフローチャートである。
【図5】消耗電極ワイヤをウィービングとスイッチバックとを組合せて動作させた場合の動作を、概念的に説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 マニピュレータ
2 溶接トーチ
3 消耗電極ワイヤ
5 ワイヤ送給装置
7 溶接電源装置
8 突合せ継手
10 制御装置
13 ギャップセンサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、片側突合せ溶接の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置及び溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
片側突合せ溶接の初層溶接を行う場合、ルートギャップ部分に裏当て材を当て、この状態で開先部分に溶融金属を流し込んでいくことが一般的に行われるが、裏当て材を用いた場合、裏当て材を取り付けるための工数が増加し、また鋼裏当て材を用いた場合には、継手の強度が低下する恐れがある。更に、箱型構造物においては、溶接後の裏当て材の除去が困難な場合が多い。そこで溶接線とほぼ直交方向に消耗電極ワイヤをウィービングさせることで、突合せ継手を構成する対向した2つの母材間に溶融金属をブリッジさせ、裏当て材を用いずに突合せ継手を溶接しなおかつ良好な裏ビードを形成する技術が既に提唱されている(例えば非特許文献1等参照)。
【0003】
【非特許文献1】
山本 光、外5名、“バッキングレスV開先継手におけるルートギャップ変動に対する裏ビードのフィードフォワード制御”、溶接学会論文集、平成14年11月、第20巻、第4号、p499−505
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の溶接法を用いる場合、消耗電極ワイヤからの溶滴の離脱を規則的に行うために、溶接電源装置の電源特性にはパルス特性が用いられる。上記の溶接法では、突合せ継手のルートギャップに応じ、溶接電流のパルス期間(ピーク電流期間)が操作されている。例えば、ルートギャップが小さい場合、裏ビードを形成するためにはパルス期間を長めに設定し、平均電流値を上げる必要がある。
【0005】
しかしながら、ルートギャップが小さくパルス期間を長く設定せざるを得ず、結果的にパルス期間がパルス周期に近づくと、ピーク電流値からベース電流値への立下がりの不均一によって、立下り中にパルス周期に到達し、ベース電流値に移行しきる前に再びピーク電流値に戻ってしまう場合がある。このように、ベース電流期間が消失してしまうと、上記した溶接電流の立下りの不均一によるパルス周期毎の平均電流値が変動し、安定した裏ビードが形成できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記の事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、ルートギャップによらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、高い品質の裏ビードを得ることができる溶接装置及び溶接方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、この溶接電源装置の電源特性を、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、例えば、ルートギャップが小さく、パルス期間をパルス周期に近い値に設定しなければばらないような場合、溶接電源特性として定電圧特性を採用する。これにより、溶接電源の立下りの不均一による平均電流値の変動もなく、溶接電流を安定させ、良好な裏ビードを有する高品質な溶接が可能となる。また、ルートギャップが大きく、パルス期間(ピーク電流期間)を短く設定し、ベース電流期間が確保されるような場合は、通常通り、溶接電源特性をパルス特性として良好な裏ビードを得ることができる。このように、ルートギャップによらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、高い品質の裏ビードを得ることができる。
【0009】
また、第2の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値より小さい場合には、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性に設定し、前記ルートギャップ量が前記しきい値より大きい場合には、前記電源特性をパルス特性に設定する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、溶接中に前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、前記溶接電源装置の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、前記ルートギャップ量が前記しきい値を超えた場合、前記電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換える制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤを挿通した溶接トーチと、この溶接トーチをウィービングさせながら溶接線に沿って移動させるマニピュレータと、前記溶接トーチに前記消耗電極ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じ、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する手順、前記突合せ継手のルートギャップを基に溶接条件を設定する手順、及び、これら設定条件に従って前記溶接電源装置、前記マニピュレータ及び前記ワイヤ送給装置を制御する手順を実行可能な制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、消耗電極ワイヤを挿通した溶接トーチと、この溶接トーチをウィービングさせながら溶接線に沿って移動させるマニピュレータと、前記溶接トーチに前記消耗電極ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、前記突合せ継手のルートギャップを検出するギャップセンサと、このギャップセンサからの検出信号に応じ、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する手順、前記検出信号を基に溶接条件を設定する手順、及び、これら設定条件に従って前記溶接電源装置、前記マニピュレータ及び前記ワイヤ送給装置を制御する手順を実行可能な制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、上記第1乃至第5の発明において、前記制御装置は、前記消耗電極ワイヤを溶接線方向に繰り返し進退させつつ、前記溶接線に沿って移動させるスイッチバック動作を併せて実行可能なプログラムを格納していることを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じ、溶接電源装置の電源特性を、定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定することを特徴とする。
【0015】
また、第8の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値より小さい場合には溶接電源装置の電源特性を定電圧特性に設定し、前記ルートギャップ量が前記しきい値より大きい場合には前記電源特性をパルス特性に設定することを特徴とする。
【0016】
また、第9の発明は、突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、溶接中に前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、溶接電源装置の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、前記ルートギャップ量が前記しきい値を超えた場合、前記電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換えることを特徴とする。
【0017】
また、第10の発明は、上記第7乃至第9の発明において、前記消耗電極ワイヤを、溶接線方向に繰り返し進退させつつ、前記溶接線に沿って移動させるスイッチバック動作を併せて行うことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶接装置及び溶接方法の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の溶接装置の一実施形態の全体構成を表す概略図である。この図1において、1は多関節型のアーム1aを有するマニピュレータ(溶接ロボット)、2はそのアーム1a先端に設けた溶接トーチで、マニピュレータ1は、溶接線に対しほぼ直交する方向にウィービングさせつつ溶接トーチ2を溶接線に沿って移動させる。3は溶接トーチ2に挿通された消耗電極ワイヤ、4は溶接トーチ2に消耗電極ワイヤ3を導くチューブ、5はリール6に巻回された消耗電極ワイヤ3を溶接トーチ2に順次送給するワイヤ送給装置である。なお、特に図示していないが、溶接トーチ2には、シールドガスを噴射するガスノズルが設けてある。
【0019】
7は消耗電極ワイヤ3に電力(電流・電圧)を供給する溶接電源装置で、この溶接電源装置7のプラス端子7aは消耗電極ワイヤ3(厳密にはチューブ4)に、マイナス端子7bは溶接対象である突合せ継手8に、それぞれ接続している。また、溶接電源装置7の図示しない出力端子は、ワイヤ送給装置5に接続しており、溶接電源装置7からワイヤ送給装置5に供給される指令信号(電力)の大きさを基に、消耗電極ワイヤ3の送給速度が調整される。
【0020】
9はロボット制御盤で、このロボット制御盤9は、マニピュレータ1、溶接電源装置7に対する指令信号を演算する制御装置10と、この制御装置10で演算された各指令信号をマニピュレータ1及び溶接電源装置7にそれぞれ出力するロボットドライバ11及び電源ドライバ12とを内蔵している。13は突合せ継手8のルートギャップを検出し制御装置10に出力するギャップセンサで、このギャップセンサ13は、マニピュレータ1のアーム1aの先端において、溶接トーチ2の近傍(図1に矢印で図示した溶接線方向前方側)に設けてある。このギャップセンサ13としては、例えば公知のレーザセンサや超音波センサ等を用いれば足りる。
【0021】
このような構成により、図1の溶接装置は、制御装置10に溶接開始点及び終了点が入力されると、溶接開始の指示を機に、制御装置10によって、ギャップセンサ13からの検出信号に基づき、溶接電源装置7の電源特性を含む溶接条件を逐次設定し、マニピュレータ1及び溶接電源装置7を制御する(制御装置10による制御フローについては後述する)ようになっている。
【0022】
マニピュレータ1は、ロボットドライバ11を介して出力される制御装置10からの指令信号を入力すると、その指令信号に応じたウィービング幅及び移動速度(溶接速度)で、溶接トーチ2をウィービングさせつつ、溶接線に沿って図中矢印方向に移動させるよう、アーム1aを動作させる。一方、これと同時に溶接電源装置7は、制御装置10から出力される電源特性(後述)の指令信号を、電源ドライバ12を介して入力すると、その指令値に応じた電圧・電流を消耗電極ワイヤ3に印加する。消耗電極ワイヤ3に印加される電流は、溶接電源装置7のプラス端子7a→消耗電極ワイヤ3→突合せ継手8→溶接電源装置7のマイナス端子7bといった順に流れる。これにより、消耗電極ワイヤ3の先端から突合せ継手8の溶接箇所までの間にアーク20が発生し、そのアーク熱により消耗電極ワイヤ3の先端部と突合せ継手8の溶接箇所とが溶融し、突合せ継手8に溶融金属が付着形成される。また、こうした消耗電極ワイヤ3の消耗(溶融)に伴い、溶接電源装置7は、制御装置10からの指令信号に応じた大きさのワイヤ送給信号(電圧)をワイヤ送給装置5に出力し、ワイヤ送給装置5の駆動速度を制御することにより、消耗電極ワイヤ3を順次溶接トーチ2に送給する。
【0023】
図2は、溶接電源装置7が、制御装置10から電源ドライバ12を介して指令信号を入力した際に出力する電流波形の一例を表す図である。まず、この図2において、消耗電極ワイヤ3に流れる電流値が、ピーク電流(この例では300A)のときには、消耗電極ワイヤ3から溶滴が安定して離脱し、ベース電流(この例では100A)のときには溶滴の離脱が抑制される。そのため、突合せ継手8にルートギャップがある場合、そのギャップ中心付近で溶滴が離脱すると、溶滴が突合せ継手8に付着せず落下してしまう恐れがあるので、消耗電極ワイヤ3に対し、ウィービング1/2周期に対応するパルス周期のパルス電流を供給し、突合せ継手8を構成する両母材に近付いたときに溶滴が離脱して、溶滴がルートエッジに付着するようにする。このときには、溶接電源装置7に対しては、制御装置10からパルス特性の指令信号が出力され、これを受けて溶接電源装置7は、消耗電極ワイヤ3にパルス電流を供給する。
【0024】
ここで、突合せ継手8のルートギャップが比較的広い場合、ウィービング幅をルートギャップに合わせて広くすることで、アーク熱及び離脱した溶滴がルートエッジ付近に到達し易くなる。これにより、ルートエッジが十分に溶融されるので、図2(a)に示すように、比較的平均電流値を抑えることができ、パルス期間(ピーク電流期間)tpをそれだけ短く設定できる。この場合、ルートギャップに対して設定されるパルス電流波形は、パルス周期Tがパルス期間(ピーク電流期間)tpに対し十分大きくなるため、十分なベース電流期間が得られ、安定した裏ビードを得ることができる。
【0025】
しかしながら、ルートギャップが狭くなると、アーク熱及び溶滴がルートエッジ付近に到達し難くなるので、ルートエッジを十分に溶融させ良好な裏ビードを形成するには、ウィービング幅を狭めるとともに、平均電流値を高める、すなわちパルス期間tpを大きくする必要がある。ところが、図2(b)に示すように、パルス期間tpがパルス周期Tに近づくと、溶接電源装置7から出力される溶接電流は、立下りの不均一によってベース電流(この例では100A)に移行しきる前にピーク電流(この例では300A)に戻ってしまうことがあり、結果的にベース期間が消失してしまう場合がある。ベース期間がなくなると、立下りの不均一に起因するパルス周期毎の平均電流値の変動が裏ビードの形成状態に与える影響が顕著化し、裏ビードの形成状態が不安定になる恐れがある。
【0026】
そこで、本発明においては、ルートギャップがある値よりも小さく、パルス期間tpをパルス期間Tに近い値に設定せざるを得ず、結果的にベース期間が消失する可能性がある場合、上記電源ドライバ12を通して制御装置10から出力される溶接電源装置7への制御信号を、図2(c)のようにパルス特性から定電圧特性に切換える。このときの電流値は、ピーク電流よりは小さくベース電流よりは大きい値である。この定電圧特性への切換え時は、十分な値を確保した状態で平均電流値が安定しており、更に突き合せ継手8のルートギャップが小さく、かつウィービング幅も小さいので、ルートエッジ付近にアーク熱と溶滴とを十分に与えることができ、安定な裏ビードを形成することができる。
【0027】
図3は、上記制御装置10の概略構成を表すブロック図である。この図3において、14は信号の入力部であるA/D変換器14で、このA/D変換器14を介して、ギャップセンサ13からの検出信号や溶接電源装置7によって消耗電極ワイヤ3に供給された電力(電流・電圧)の値が、制御装置10に入力されディジタル信号化される。15は所定の制御手順のプログラムや制御に必要な定数を格納するリードオンリーメモリー(ROM)で、このROM15には、溶接電源装置7の電源特性を切換え判断ための、突合せ継手8のルートギャップのしきい値(設定値)が格納されている。また、突合せ継手8のルートギャップ毎に、予め実験的(又は理論的)に求められた溶接条件(消耗電極ワイヤ3の印加電力、送給速度、ウィービング幅、溶接速度、及び電源特性)の組合せパターンをまとめた溶接条件テーブルが格納されている。
【0028】
16は時間計測を行うタイマ、17はROM15に格納したプログラムや溶接条件テーブルから選定した溶接条件に順じ、マニピュレータ1や溶接電源装置7に対する所定の指令信号を演算する中央演算処理装置(CPU)である。18はCPU17の演算結果や演算途中の数値を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、19はCPU17で演算された指令信号をアナログ信号に変換し、対応のドライバ(上記ロボットドライバ11、電源ドライバ12)に出力するD/A変換器である。
【0029】
図4は、制御装置10に格納したプログラムによる制御手順を表すフローチャートで、上記構成の制御装置10は、この図4のフローに基づき、マニピュレータ1、ワイヤ送給装置5、溶接電源装置7を制御する。図4において、まずステップ100にて、ロボット制御盤9に設けた(或いは別途設けた)図示しない設定部より、操作者により設定された溶接開始点及び終了点を制御装置10に入力する。入力された溶接開始点・終了点は、A/D変換器14を介してディジタル信号化され、RAM18に格納される。
【0030】
ステップ101に移り、ギャップセンサ13からの突合せ継手8のルートギャップの検出信号をA/D変換器14を介して入力し、ディジタル信号化してRAM18に格納し、ステップ102に手順を移行する。
【0031】
ステップ102では、ギャップセンサ13からの検出信号を基に演算した突合せ継手8のルートギャップに応じ、溶接電源装置7の電源特性を、突合せ継手8のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する。具体的には、演算したルートギャップ量をROM15に格納したしきい値と比較し、しきい値よりも大きければ溶接電源装置7の電源特性をパルス特性に、しきい値よりも小さければ定電圧特性に設定し、その設定をRAM18に格納する。
【0032】
続くステップ103では、CPU17によって、ステップ101で入力されたルートギャップ及びステップ102で設定された電源特性に対し、適切な溶接条件(消耗電極ワイヤ3の印加電力、送給速度、ウィービング条件、溶接速度)が、ROM15に格納した溶接条件テーブルの中から1つ選定(設定)され、この溶接条件の設定がRAM18に格納される。
【0033】
上記のように、溶接条件及び溶接電源装置7の電源特性が設定されたら、CPU17は、その設定条件で溶接を実行するための指令信号を演算し、ロボットドライバ11及び電源ドライバ12を介しマニピュレータ1及び溶接電源装置7に出力する。マニピュレータ1には、溶接トーチ2の移動速度(溶接速度)及びウィービング幅が指令され、溶接電源装置7には、消耗電極ワイヤ3の送給速度及び電源特性(パルス特性又は定電圧特性)に応じた溶接電力(電流・電圧)が指令される。
【0034】
続いて、ステップ104では、溶接中に溶接電源装置7から消耗電極ワイヤ3に印加された電流・電圧の測定値を入力し、A/D変換器14を介してディジタル信号化してRAM18に格納し、ステップ105に移る。ステップ105では、タイマ16による現在時刻がウィービング周期に達したかどうかを判定し、判定が満たされない場合、ステップ104に戻って、更に電流・電圧の測定値を入力する。現在時刻がウィービング周期に達し、ステップ105の判定が満たされた場合、ステップ106に手順を移行する。
【0035】
ステップ106では、ウィービング1周期の電圧値を積分しRAM18に格納すると共に、この値を、RAM18に格納してある直前の1周期分の電圧積分値と比較し、電源制御データの補正量を演算してRAM18に格納する。具体的には、アーク長が一定となるよう、前周期よりも電圧の積分値が大きければ、その差分に応じてワイヤ送給速度を上げる(逆に小さければその差分に応じてワイヤ送給速度を下げる)ために、ワイヤ送給装置5に対する指令値が変化するよう、溶接電源装置7への指令信号の補正量を演算・格納する。
【0036】
ステップ107では、消耗電極ワイヤ3に印加された電流・電圧の測定値を、ウィービング中心から左側、右側それぞれにおいて積分し、それら積分値の偏差を補正するよう(つまり、アーク長がウィービング左右で同等になるよう)、現在のウィービング中心位置から適正なウィービング中心位置までの補正量(距離)を演算し、RAM18に格納する。
【0037】
次のステップ108では、CPU17は、タイマ16による計測時刻が、所定の周期(ウィービング周期の1/m倍,m:整数)に達すると、ステップ106,107にて演算された補正量を基に、マニピュレータ1及び溶接電源装置7に対する指令信号を補正し、D/A変換器19を介してアナログ信号化して、それぞれに対応するロボットドライバ11及び電源ドライバ12を介して出力する。
【0038】
続いてステップ109に移行し、タイマ16による現在時刻が、ギャップセンサ13による所定のギャップ検出周期(ウィービング周期のn倍,n:整数)に達したかどうかを判定し、判定が満たされない場合、ステップ102〜108の手順を再度実行する。現在時刻がギャップ検出周期に達し、ステップ109の判定が満たされた場合、ステップ110に移る。
【0039】
ステップ110では、現在位置が、ステップ100で入力された溶接終了点に到達したかどうかを判定し、判定が満たされない場合、ステップ101に戻って、上記のステップ101〜109の手順を繰り返す。つまり、溶接終了点に達するまでは、ギャップ検出周期毎に、ギャップセンサ13からのルートギャップの検出信号を基に、溶接条件(消耗電極ワイヤ3の印加電力、送給速度、ウィービング条件、溶接速度)を更新し、マニピュレータ1及び溶接電源装置7の制御を繰り返す。また、これとともに、ギャップ検出周期毎に、検出されたルートギャップをROM15の格納値と比較し、溶接中にルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、溶接電源装置7の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、逆に、ルートギャップ量がしきい値を超えた場合、電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換える。そして、最終的に、溶接終了点に到達し、ステップ110の判定が満たされると、マニピュレータ1及び溶接電源装置7に対する指令信号をOFFにして図4の制御手順を終了する。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、片側突合せ溶接の初層溶接を行う場合、ルートギャップ量に応じ、溶接電源装置7の電源特性がパルス特性又は定電圧特性のうちから選択され、ルートギャップ量がしきい値より大きな場合には溶接電源装置7の電源特性がパルス特性に、ルートギャップ量がしきい値以下の場合には溶接電源装置7の電源特性が定電圧特性に切換わる。したがって、ルートギャップ量によらず、平均電流値の不均一による影響を低減し、突合せ継手に裏当て材を使用せずにアーク溶接をする場合であっても、安定した突合せ継手8の初層溶接を行うことができ、良好な裏ビードを有する高品質な溶接を行うことができる。
【0041】
なお、以上においては、単にウィービング動作を伴う消耗電極式アーク溶接に本発明を適用した場合を説明したが、図5に示したように、ウィービング動作(図5中矢印26参照)に加え、いわゆるスイッチバック動作(図5中矢印25参照)を組合せて動作させる場合にも、本発明は適用可能である。ここで言うスイッチバックとは、矢印25で示したように、溶接線に沿って、前進→後退→前進という動作を繰り返しながら、溶接トーチ2を移動させ溶接ビードを重畳させていく動作である。
【0042】
このスイッチバック動作は、例えば、ROM15(図3参照)に溶接線方向に前進・後退を繰り返しながら溶接トーチ2を移動させるよう、マニピュレータ1を動作制御するためのプログラムを格納しておけば実現可能である。そして、スイッチバック動作を組合せた溶接を行う場合の制御手順は、先の図4と概ね同様であるが、ステップ102,103では、溶接線方向に対する「前進→後退→前進」の動作を1サイクルとし、この1サイクル毎に溶接電源の電源特性を含む溶接条件が設定される。また、この場合、ステップ109におけるギャップ検出周期を、前述した1サイクルの動作に要する時間に設定することが望ましい。
【0043】
このような要領で、スイッチバック動作を行うウィービング溶接に本発明を適用した場合、溶接線方向に入熱を分散させ、溶融金属の溶け落ちを防止すると共に、ルートギャップ量に応じて電源特性を制御することにより、更に良好な裏ビードを形成することができ、溶接品質をより向上させることができる。
【0044】
また、以上において、ルートギャップの検出データが、ギャップセンサ13により、オンラインで制御装置10に入力される例を説明してきたが、これに限られず、オフラインで予め測定しておき、それを事前に入力する構成としても良い。この場合、例えば、突合せ継手のルートギャップを事前に測定した結果、溶接線に沿って各箇所のルートギャップが既知である場合、ギャップセンサ13の検出信号に基づいて溶接条件や電源特性をオンラインで設定しなくとも、その事前測定結果を入力しておき、その入力に応じて溶接条件や電源特性が制御されるようにすれば良い。また、開先加工精度及び突合せ精度が十分に高い場合には、溶接開始点及び終了点のルートギャップを測定し事前に入力しておけば、ルートギャップはほぼ線形的に変化することから、CPU17により、その線形変化を入力値から演算し、更にルートギャップのしきい値に対する大小関係が変化する溶接開始点からの距離(又は溶接開始後の経過時間)を演算して電源特性を切換える構成としても良い。これらの場合も、同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、図4のステップ106におけるワイヤ送給速度の補正は、突合せ継手8に目違い(段差)があった場合でも、次のステップ107のウィービング中心制御と併せて、消耗電極ワイヤ3の先端位置を、ルートエッジ付近に溶接金属を付着させるのに適当な位置に補正する役割を果たしているが、目違いのない場合には、省略しても構わない。また、母材同士の突合せ精度が高く、ウィービング中心が、溶接線全長に亘って母材間中心と一致するような場合には、ウィービング中心位置の補正は必ずしも必要なく、このような場合には、ステップ107を省略することもでき、これに伴ってステップ105,108も省略可能である。この場合も同様の効果を得る。
【0046】
また、以上においては、消耗電極ワイヤ3をウィービングさせる消耗電極式アーク溶接に適用した場合を例に説明したが、ルートギャップによっては、ウィービング幅を0(ゼロ)としても(ウィービングさせなくても)良い。図4の制御フローでは、ウィービング周期の整数倍をギャップ検出周期に設定したが、この場合には、ギャップ検出周期を別途設定しておく。この場合も同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、消耗電極ワイヤ3のみでアーク溶接する場合を例に挙げたが、例えば、消耗電極ワイヤ3に加えてフィラワイヤを設けたいわゆるダブルワイヤ方式の溶接装置にも、本発明は適用可能である。また、図1において、ワイヤ送給装置5をリール6側に設けたいわゆるプッシュ方式のものとして説明したが、溶接トーチ2側に設けるいわゆるプル方式のものとしても、これらを組合せたものとしても構わない。これらの場合も上記同様の効果を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、裏当て材を使用しない片側突合せ溶接を行う場合であっても、突合せ継手のルートギャップ量に応じた電源特性を設定し安定した溶接電流を得ることができるので、ルートギャップ量に関わらず、安定した突合せ継手の初層溶接を行うことができ、良好な裏ビードを有する高品質な溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接装置の一実施形態の全体構成を表す概略図である。
【図2】本発明の溶接装置の一実施形態に備えられた溶接電源装置が、制御装置から指令信号を入力した際に出力する電流波形の一例を表す図である。
【図3】本発明の溶接装置の一実施形態に備えられた制御装置の概略構成を表すブロック図である。
【図4】本発明の溶接装置の一実施形態に備えられた制御装置による制御手順を表すフローチャートである。
【図5】消耗電極ワイヤをウィービングとスイッチバックとを組合せて動作させた場合の動作を、概念的に説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 マニピュレータ
2 溶接トーチ
3 消耗電極ワイヤ
5 ワイヤ送給装置
7 溶接電源装置
8 突合せ継手
10 制御装置
13 ギャップセンサ
Claims (10)
- 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、
消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、
この溶接電源装置の電源特性を、前記突合せ継手のルートギャップ量に応じて定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する制御装置と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、
消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、
前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値より小さい場合には、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性に設定し、前記ルートギャップ量が前記しきい値より大きい場合には、前記電源特性をパルス特性に設定する制御装置とを備えたことを特徴とする溶接装置。 - 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、
消耗電極ワイヤに電力を供給する溶接電源装置と、
溶接中に前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、前記溶接電源装置の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、前記ルートギャップ量が前記しきい値を超えた場合、前記電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換える制御装置と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、
消耗電極ワイヤを挿通した溶接トーチと、
この溶接トーチをウィービングさせながら溶接線に沿って移動させるマニピュレータと、
前記溶接トーチに前記消耗電極ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、
前記突合せ継手のルートギャップ量に応じ、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する手順、前記突合せ継手のルートギャップを基に溶接条件を設定する手順、及び、これら設定条件に従って前記溶接電源装置、前記マニピュレータ及び前記ワイヤ送給装置を制御する手順を実行可能な制御装置と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接装置において、
消耗電極ワイヤを挿通した溶接トーチと、
この溶接トーチをウィービングさせながら溶接線に沿って移動させるマニピュレータと、
前記溶接トーチに前記消耗電極ワイヤを送給するワイヤ送給装置と、
前記突合せ継手のルートギャップを検出するギャップセンサと、
このギャップセンサからの検出信号に応じ、前記溶接電源装置の電源特性を定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する手順、前記検出信号を基に溶接条件を設定する手順、及び、これら設定条件に従って前記溶接電源装置、前記マニピュレータ及び前記ワイヤ送給装置を制御する手順を実行可能な制御装置と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 前記制御装置は、前記消耗電極ワイヤを溶接線方向に繰り返し進退させつつ、前記溶接線に沿って移動させるスイッチバック動作を併せて実行可能なプログラムを格納していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の溶接装置。
- 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、
消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、
前記突合せ継手のルートギャップ量に応じ、溶接電源装置の電源特性を、定電圧特性又はパルス特性のいずれかから選択し設定する
ことを特徴とする溶接方法。 - 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、
消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、
前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値より小さい場合には溶接電源装置の電源特性を定電圧特性に設定し、前記ルートギャップ量が前記しきい値より大きい場合には前記電源特性をパルス特性に設定する
ことを特徴とする溶接方法。 - 突合せ継手の初層溶接に用いる消耗電極式アーク溶接方法において、
消耗電極ワイヤを、溶接線に対しほぼ直交方向にウィービングさせつつ、前記溶接線に沿って移動させていくとともに、
溶接中に前記突合せ継手のルートギャップ量が設定のしきい値を下回った場合、溶接電源装置の電源特性をパルス特性から定電圧特性に切換え、前記ルートギャップ量が前記しきい値を超えた場合、前記電源特性を定電圧特性からパルス特性に切換える
ことを特徴とする溶接方法。 - 前記消耗電極ワイヤを、溶接線方向に繰り返し進退させつつ、前記溶接線に沿って移動させるスイッチバック動作を併せて行うことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の溶接方法。
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JP2003115380A JP2004314164A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 溶接装置及び溶接方法 |
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