JP2004276055A - 溶接装置及び溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フィラワイヤの溶融状態を安定化させ、所望の溶接品質を得ることができる溶接装置及び溶接方法を提供する。
【解決手段】消耗電極ワイヤ5からアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを6送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、消耗電極ワイヤ5に電流を供給する消耗電極用電源11と、フィラワイヤ6に電流を供給するフィラ用電源13と、消耗電極用電源11から消耗電極ワイヤ5へ供給される電流値を基に、フィラ用電源13を制御するフィラ制御装置16とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】消耗電極ワイヤ5からアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを6送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、消耗電極ワイヤ5に電流を供給する消耗電極用電源11と、フィラワイヤ6に電流を供給するフィラ用電源13と、消耗電極用電源11から消耗電極ワイヤ5へ供給される電流値を基に、フィラ用電源13を制御するフィラ制御装置16とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、母材と消耗電極ワイヤとの間にアークを発生させ母材及び消耗電極ワイヤを溶融させつつ、溶融池にフィラワイヤを送給するダブルワイヤ方式の溶接装置及び溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダブルワイヤ方式のアーク溶接装置は、消耗電極ワイヤと母材との間にアークを発生させ、そのアーク熱により消耗電極ワイヤ及び母材を溶融させつつ、更にその溶融池に消耗電極ワイヤに後行してフィラワイヤを送給するものである。このフィラワイヤ溶融には、それ自体の通電加熱に加えて溶融池の熱が利用されるので、消耗電極ワイヤのみを用いたアーク溶接装置に対し、さほど変わらない給電量でワイヤの溶融速度を高めることができ、高い作業能率を確保できるメリットがある。また一般に、この種の溶接装置においては、両ワイヤに逆方向の電流を流し両者を互いに反発させる磁界を生じさせることにより、消耗電極ワイヤからのアークを前方(つまりフィラワイヤと反対方向)に向けさせられるので、溶け込み深さを十分に確保することができる。
【0003】
ダブルワイヤ方式の溶接装置では、「溶接電源→消耗電極ワイヤ→母材→フィラワイヤ→溶接電源」といった電流経路で、消耗電極ワイヤ側の母材からの戻り電流をフィラワイヤに一部分流することにより、両ワイヤの溶接電源を共用するのが一般的であるが、この場合、その電流経路中の各所の抵抗によって電流値が変動し易い。そのため、従来、両ワイヤ間に生じる磁界が不規則に変化することにより、消耗電極から発生するアークが振れ、アークを所定の溶接箇所へ発生できない場合があった。そこで、フィラワイヤに給電するフィラ用電源を、消耗電極ワイヤに給電するメインの溶接電源と別電源化し、両ワイヤに安定した電流が流れるよう構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3185071号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ダブルワイヤ方式の溶接装置は、その溶接品質の面でフィラワイヤの溶融状態に大きく依存するが、例えば、外乱によって溶接電流に変動が生じた場合には、溶融池の温度やフィラワイヤの電流値が変化するために、溶接品質が不安定になる場合がある。例えば、消耗電極ワイヤの電流が増大した場合、溶融池の温度が上昇し、フィラワイヤが溶融池に到達する前に軟化してしたり、逆の場合には、溶融池内でフィラワイヤが溶け残る等といった不具合が起こり得る。これに対し、前述した特許文献1に記載の溶接装置では、両ワイヤの溶接電源を別電源化し両ワイヤへの電力供給の安定化を図ったことで、通常時における溶接品質の安定化が期待できるが、外乱により、消耗電極に供給される電流値が変動する場合には、フィラワイヤの溶融状態が大きく変化し、安定した溶接品質を得ることができない。
【0006】
本発明は上記の事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィラワイヤの溶融状態を安定化させ、所望の溶接品質を得ることができる溶接装置及び溶接方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の本発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値を基に、前記フィラ用電源を制御するフィラ制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、フィラワイヤやその送給装置に電力を供給し、フィラワイヤの溶融状態を制御するフィラ用電源を、消耗電極のそれと別電源化しているので、通常の運転状態において、両ワイヤに対し安定した電流を供給することができ、安定した溶接品質を得ることができる。このとき、本発明においては、消耗電極ワイヤへの供給電流を検出し、その検出電流に応じてフィラ用電源を制御することにより、フィラワイヤ側の溶接条件を柔軟に変化させる。これにより、溶接中、何等かの要因により外乱が発生し消耗電極ワイヤの電流が変動したとしても、想定される溶融池の温度変化に応じてフィラワイヤ側の溶接条件が変更され、フィラワイヤの溶融状態を一定に保つことができ、所望の溶接品質を確保することができる。
【0009】
また、第2の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、このフィラ用電源からの指令値に応じた速度で、前記フィラワイヤを送給するフィラワイヤ送給装置と、前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値を基に、フィラワイヤ送給速度を設定し、この設定に応じた前記フィラワイヤ送給速度の指令値が前記フィラワイヤ送給装置に出力されるよう、前記フィラ用電源に指令信号を出力するフィラ制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、このフィラ用電源からの指令値に応じた速度で、前記フィラワイヤを送給するフィラワイヤ送給装置と、前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じたフィラワイヤ送給速度、及び、このフィラワイヤ送給速度の設定値及び前記消耗電極ワイヤへの供給電流値に応じた電流を設定し、これらの設定に基づき、前記フィラ用電源に指令信号を出力するフィラ制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれかの発明において、前記フィラ制御手段は、前記フィラ用電源に設けてあることを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接方法において、前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じ、前記フィラワイヤの溶接条件を設定することを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接方法において、前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じ、フィラワイヤ送給速度を設定する手順と、この設定したフィラワイヤ送給速度と前記消耗電極ワイヤへの供給電流値とに応じ、フィラワイヤへの供給電流を設定する手順とを有することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶接装置及び溶接方法の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の溶接装置の一実施の形態の全体構成を表す概略図である。この図1において、1は多関節型のアーム1aを有する溶接ロボット(マニピュレータ)、2はアーム1a先端のハンド部1bに設けた溶接トーチ、3,4はこの溶接トーチ2に送給する消耗電極ワイヤ5及びフィラワイヤ6をそれぞれガイドする供給チューブである。7,8はそれぞれリール9,10に巻回されたワイヤ5,6を溶接トーチ2を介して溶接箇所に送給するワイヤ5,6の送給装置(送給モータ)である。また、特に図示していないが、溶接トーチ2には、シールドガスを噴射するガスノズルが設けてある。
【0015】
11は消耗電極ワイヤ5に電力供給する消耗電極用電源で、この消耗電極用電源11のプラス端子11aは消耗電極ワイヤ5に、マイナス端子11bは溶接対象である母材12に、それぞれ接続している。13はフィラワイヤ6に電力供給するフィラ用電源で、このフィラ用電源13のプラス端子13aは母材12に、マイナス端子13bはフィラワイヤ6に、それぞれ接続している。また、これら消耗電極用電源11及びフィラ用電源13は、それぞれ消耗電極ワイヤ送給装置7及びフィラワイヤ送給装置8と電気的に接続しており、これら両電源11,13からそれぞれ両ワイヤ送給装置7,8に供給される電圧(指令値)の大きさにより、送給装置7,8によるワイヤ5,6の送給速度がそれぞれ調整される。
【0016】
14はロボット制御盤、15は溶接条件等の入力データをこのロボット制御盤14に入力するための入力装置(ティーチングペンダント)である。ロボット制御盤14は、溶接ロボット1、消耗電極用電源11、入力装置15に対し、電気的に接続している。16はフィラワイヤ6側の溶接条件を設定しフィラ用電源13を制御するフィラ制御装置で、このフィラ制御装置16は、消耗電極用電源11及びフィラ用電源13と電気的に接続している。また、フィラ制御装置16には、フィラワイヤ6の送給速度を適正範囲(後述)内で任意に調整するためのフィラワイヤ送給調整器17が設けられている。なお、本実施の形態においては、このフィラ制御装置16をフィラ用電源13に一体的に設けてあるが、フィラ用電源13と別構成としても良く、またロボット制御盤14にその機能を組み込む構成としても構わない。
【0017】
図2は、このフィラ制御装置16の概略構成を表すブロック図である。この図2において、18は消耗電極用電源11からの消耗電極ワイヤ5の印加電流の検出値やフィラワイヤ供給調整器17からの操作信号を入力しディジタル信号化するA/D変換器である。19はフィラ用電源13の制御手順のプログラムやフィラワイヤ6側の溶接条件のテーブル、演算処理に必要な定数等を格納するリードオンリーメモリー(ROM)、20は時間計測を行うタイマ、21はROM19に格納したプログラムやテーブルに順じてフィラ用電源13への指令信号演算する中央演算処理装置(CPU)である。また、22は入力値やCPU21の演算結果、演算途中の数値等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、23はCPU21で演算された指令信号をアナルグ信号化しフィラ用電源13のドライバ(図示せず)に出力するD/A変換器である。
【0018】
次に、以上の本実施の形態の溶接装置の動作及び作用を説明する。
上記構成の溶接装置により溶接作業を行う際には、まず入力装置15によって消耗電極ワイヤ5に印加する電流値、電圧値、溶接開始点、溶接終了点、溶接速度といった溶接条件を入力する。この入力データは、ロボット制御盤14に出力される。消耗電極ワイヤ5の送給速度は、入力装置15によって電流値及び電圧値を設定すると、ロボット制御盤14によって一意的に決定される。
【0019】
ロボット制御盤14は、消耗電極用電源11には、消耗電極ワイヤ5へ供給電力及び送給速度の指令信号(アーク制御信号)を、溶接ロボット1には、溶接速度、溶接経路を指令する指令信号(動作制御信号)を出力する。ロボット制御盤14からの指令信号が出力されると、溶接ロボット1によって溶接線に沿って溶接トーチ2が移動し始め、消耗電極用電源11によって消耗電極ワイヤ5に設定の電力が供給され、そして、消耗電極ワイヤ送給装置7が、消耗電極用電源11から出力された指令値に応じた駆動速度で駆動し、消耗電極ワイヤ5が、溶接トーチ2を介し溶接箇所に送給される。
【0020】
また、これと同時に、消耗電極用電源11からは、フィラ制御装置16に対してアークスタート信号が出力される。すると、フィラ制御装置16内のCPU21は、A/D変換器18を介しディジタル信号化された消耗電極ワイヤ5の電流及びフィラワイヤ送給調整器17の操作信号を基に、フィラワイヤ6側の溶接条件を設定する(設定の詳細に関しては後述する)。そして、タイマ20によって、予めROM22内に格納されたフィラワイヤ6の送給開始時間が計測された後、フィラ用電源13のドライバ(図示せず)に対し、フィラワイヤ6の供給電力及び送給速度を指令する指令信号を、D/A変換器23を介してアナログ信号化して出力する。これにより、この指令信号に応じ、フィラ用電源13からフィラワイヤ6に所要の電力が供給されるとともに、フィラワイヤ送給装置8に設定に応じた指令値が出力され、フィラワイヤ送給装置8がこの指令値に応じた駆動速度で駆動することにより、フィラワイヤ6が、溶接トーチ2を介して溶融池に送給される。
【0021】
ここで、本実施の形態における、フィラワイヤ6側の溶接条件(送給速度、電流)の設定に係る概念を、図3及び図4を用いて説明する。
図3はフィラワイヤ送給速度Vfの適正範囲を消耗電極電流Iaとの相関関係で表す図、図4はフィラワイヤ6の供給電流Ibの適正値を消耗電極電流Iaとフィラワイヤ送給速度Vfとの相関関係で表す図である。
【0022】
まず、フィラワイヤ送給速度が必要以上に速いと、単位時間当りに供給されるフィラワイヤ6の量が増大するため、溶融池の温度低下の作用も働き、フィラワイヤ6が軟化されないまま溶融池へ供給され、振動等を起こし溶融現象が不安定となったり、フィラワイヤ6が溶け残る等といった溶接不良が発生し易くなる。逆に、フィラワイヤ送給速度が必要以上に遅いと、溶融池からの熱によって、フィラワイヤ6が溶融池へ供給される前に軟化され溶け始め、同様に溶融現象が不安定となり易い。
【0023】
図3に示した適正範囲は、このことに鑑み、検出された消耗電極ワイヤ5の電流値に対し、フィラワイヤ6の安定した溶融状態を確保できる範囲を較正したものである。つまり、点(Ia1,Vf1u)を通る適正範囲の上限線は、これを超えると、供給されたフィラワイヤ6が溶融池内に溶け残り易くなるという境界線であり、点(Ia1,Vf1d)を通る適正範囲の下限線は、これを下回ると、供給されるフィラワイヤ6が溶融池に到達する前に軟化し易くなるという境界線である。したがって、フィラワイヤ送給速度Vfは、図3において、例えば、消耗電極ワイヤ5に供給される電流がIa1である場合、適正範囲であるVf1d≦Vf≦Vf1uの値となる。このとき、フィラワイヤ送給速度の適正範囲には幅があるが、この範囲内におけるフィラワイヤ送給速度の設定は、フィラワイヤ送給調整器17によって行われ、例えば、フィラワイヤ送給調整器17の設定値を最大にするとVf1uに、またフィラワイヤ送給調整器17の設定値を最小にするとVf1dに設定される。図3においては、消耗電極ワイヤ5に供給される電流がIa1の場合、フィラワイヤ送給調整器17の設定値により、フィラワイヤ送給速度はVf1に設定されている。
【0024】
また、こうして設定したフィラワイヤ送給速度Vfに対するフィラワイヤ6への供給電流Ibの適正値は、図4の相関関係から定まる。例えば、図3におけるフィラワイヤ送給速度Vf1に対するフィラワイヤ6の電流の適正値は、このフィラワイヤ送給速度Vf1と消耗電極電流Ia1とを基に、図4の相関関係からIb1となる。例えば、外乱により消耗電極ワイヤ5に供給される電流Iaが、図3に示すように、Ia1からIa2(Ia1>Ia2)に変化したとすると、フィラワイヤ送給速度VfはVf2(Vf1>Vf2)に設定される。また設定されたフィラワイヤ送給速度Vf2に対するフィラワイヤ送給速度6への供給電流は、図4からIb2に設定される。この図4で設定されるフィラワイヤ6の供給電流は、例えばIb1を例に挙げると、消耗電極電流Ia1及びフィラワイヤ送給速度Vf1の条件下において、フィラワイヤ6の溶融状態を安定させ所望の溶接品質を確保できる値であり、それより過大であるとフィラワイヤ6が溶融池に到達する前に軟化し易くなり、過小であると溶融池内にフィラワイヤ6が溶け残り易くなる。
【0025】
以上の図3及び図4の概念に基づき、上記ROM19には、消耗電極電流と、この消耗電極電流とフィラワイヤ送給調整器17からの操作信号とに応じたフィラワイヤ送給速度と、このフィラワイヤ送給速度及び消耗電極電流に応じたフィラワイヤ6の電流値との組合せパターンを多数有するフィラワイヤ側の溶接条件テーブルが格納されている。
【0026】
つまり、フィラ制御装置16は、溶接中、タイマ20によりカウントされる制御周期(設定値)毎に、消耗電極用電源11からの消耗電極ワイヤ5の電流値(検出値)及びフィラワイヤ送給調整器17からの操作信号を、A/D変換器18を介して入力し、ディジタル信号化してRAM22に格納する。すると、CPU21は、ROM22内の消耗電極ワイヤ5の電流値及びフィラワイヤ送給調整器17からの操作信号を読み出し、これらの値を基に、ROM19に格納されている溶接条件テーブルから、フィラワイヤ6の送給速度、電流値を設定し、この設定に応じた指令信号を、前述した通りフィラ用電源13に出力する。このような手順を、タイマ20による計測時間に基づき、設定された制御周期毎に繰り返すことにより、フィラワイヤ6側の溶接条件が、消耗電極ワイヤ5の電流値に応じて、順次変更される。
なお、フィラ制御装置16においては、ROM19に消耗電極ワイヤ5の供給電流の許容範囲が予め格納されており、CPU21は、消耗電極用電源11から入力された消耗電極ワイヤ5の電流値がその許容範囲外の値(異常値)と判断した場合、直ちにフィラ用電源13に停止信号を出力し、フィラワイヤ6の送給、フィラワイヤヘの電力供給を直ちに停止させる。
【0027】
以上のように、ロボット制御盤14及びフィラ制御装置16によって各機器が制御され、消耗電極ワイヤ5と母材12との間に発生するアークによって、消耗電極ワイヤ5と母材12が溶け合って母材12に溶融池が形成されるとともに、この溶融池に送給されるフィラワイヤ6が、それ自体に供給された電力及び溶融池の熱によって溶融され、溶接線に沿って溶接ビードが形成される。
【0028】
本実施の形態によれば、フィラ用電源13を消耗電極用電源11と別電源化し両ワイヤ5,6に安定した電力を供給するので、通常の運転状態において安定した溶接品質が得られる。そして、これに加え、消耗電極用電源11からの消耗電極ワイヤ5への供給電流を基に、フィラ制御装置16によって、フィラワイヤ6側の溶接条件を順次柔軟に変化させ、フィラ用電源13を制御することにより、溶接中、何等かの要因により外乱が発生し消耗電極ワイヤ5の電流が変動したとしても、フィラワイヤ6の溶融状態を一定に保つことができる。これにより、所望の溶接品質を確保することができ、安定した溶接作業を行うことができる。
【0029】
また、本実施の形態においては、消耗電極ワイヤ5とフィラワイヤ6に互いに逆向きの電流を供給することによって、消耗電極ワイヤ5とフィラワイヤ6の周辺に発生する磁界により両者が互いに反発するので、消耗電極ワイヤ5から発生するアークに対し、フィラワイヤ6から遠ざかる方向に力が作用する。これにより、消粍電極ワイヤ5にフィラワイヤ6を近接配置しても、フィラワイヤ6がアークによって吹き飛ばされることなく、フィラワイヤ6を溶融池に確実に安定供給することができる。その結果、例えば、炭素鋼、合金鋼、アルミニウム等を溶接対象としても、高速かつ高能率な作業が可能となる。また、フィラワイヤ6を溶融池に挿入することにより、溶融池の温度を低く抑え、溶接ビードに乱れが生じるいわゆるパッカリング現象の発生や、黒紛付着(酸化物付着)、凝固割れ等といった不具合も抑制される。
但し、外乱による消耗電極の電流変動によらず、フィラワイヤ6の溶融状態を安定化し、所望の溶接品質を得るという本発明の本質的目的を達成する限りにおいては、必ずしも両ワイヤ5,6の電流を逆向きにしなくても良い。
【0030】
なお、本実施の形態においては、ROM19に、予め較正した消耗電極電流に応じたフィラワイヤ側の溶接条件テーブルを格納し、消耗電極電流及びフィラワイヤ送給調整器17の操作信号に基づいて、フィラワイヤ側の溶接条件を設定する例を説明したが、例えば、フィラワイヤ送給調整器17を省略しても、図3のフィラワイヤ送給速度を、消耗電極電流に対する適正範囲ではなく、適正値を表す関係式に置きかえれば、消耗電極電流のみから、フィラワイヤ側の溶接条件を設定することができる。また、溶接条件テーブルを用いなくても、まず、図3の相関関係に従って、消耗電極ワイヤの電流値及びフィラワイヤ送給調整器17の操作信号(又は消耗電極電流のみ)から、フィラワイヤ送給速度を設定する手順と、続いて図4の相関関係に従って、先に設定したフィラワイヤ送給速度と消耗電極ワイヤの電流値とからフィラワイヤの電流を設定する手順と、を有するプログラムをROM19に格納しておき、消耗電極ワイヤの電流変動に応じ、無段階にフィラワイヤ側の溶接条件を変更可能な構成としても良い。これらの場合も、同様の効果を得る。
【0031】
また、本実施の形態においては、本発明を、溶接トーチ2の移動及びその速度制御をも自動で行ういわゆる全自動式の溶接装置に適用した場合を説明したが、これに限られず、本発明は、例えば、溶接ロボット1を省略し、消耗電極ワイヤ5及びフィラワイヤ6の供給電力及び送給速度のみを自動で行ういわゆる半自動式の溶接装置にも適用可能である。また、両ワイヤ5,6の送給装置7,8は、リール側に配置したプッシュ方式のワイヤ送給装置でなくとも、例えば、溶接トーチ側にあるプル方式やプッシュプル方式のワイヤ送給装置であっても良い。また、溶接ロボットは、多関節型のアームを有するものでなくとも、例えば、レールにより多軸方向に溶接トーチを移動させられるもの等でも良い。更に、溶接トーチを溶接方向にほぼ直角に往来させるウィービング溶接を行う溶接装置にも、本発明は適用可能である。これらの場合も同様の効果を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、消耗電極ワイヤへの供給電流に応じてフィラワイヤ側の溶接条件を柔軟に変化させることにより、溶接中、何等かの要因により外乱が発生し消耗電極ワイヤの電流が変動したとしても、フィラワイヤの溶融状態を一定に保つことができ、所望の溶接品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接装置の一実施の形態の全体構成を表す概略図である。
【図2】本発明の溶接装置の一実施の形態に備えられたフィラ制御手段の概略構成を表すブロック図である。
【図3】フィラワイヤ送給速度の適正範囲を消耗電極ワイヤの電流との相関関係で表す図である。
【図4】フィラワイヤの供給電流の適正値を、消耗電極ワイヤの電流とフィラワイヤ送給速度との相関関係で表す図である。
【符号の説明】
5 消耗電極ワイヤ
6 フィラワイヤ
8 フィラワイヤ送給装置
11 消耗電極用電源
13 フィラ用電源
16 フィラ制御装置(フィラ制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、母材と消耗電極ワイヤとの間にアークを発生させ母材及び消耗電極ワイヤを溶融させつつ、溶融池にフィラワイヤを送給するダブルワイヤ方式の溶接装置及び溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダブルワイヤ方式のアーク溶接装置は、消耗電極ワイヤと母材との間にアークを発生させ、そのアーク熱により消耗電極ワイヤ及び母材を溶融させつつ、更にその溶融池に消耗電極ワイヤに後行してフィラワイヤを送給するものである。このフィラワイヤ溶融には、それ自体の通電加熱に加えて溶融池の熱が利用されるので、消耗電極ワイヤのみを用いたアーク溶接装置に対し、さほど変わらない給電量でワイヤの溶融速度を高めることができ、高い作業能率を確保できるメリットがある。また一般に、この種の溶接装置においては、両ワイヤに逆方向の電流を流し両者を互いに反発させる磁界を生じさせることにより、消耗電極ワイヤからのアークを前方(つまりフィラワイヤと反対方向)に向けさせられるので、溶け込み深さを十分に確保することができる。
【0003】
ダブルワイヤ方式の溶接装置では、「溶接電源→消耗電極ワイヤ→母材→フィラワイヤ→溶接電源」といった電流経路で、消耗電極ワイヤ側の母材からの戻り電流をフィラワイヤに一部分流することにより、両ワイヤの溶接電源を共用するのが一般的であるが、この場合、その電流経路中の各所の抵抗によって電流値が変動し易い。そのため、従来、両ワイヤ間に生じる磁界が不規則に変化することにより、消耗電極から発生するアークが振れ、アークを所定の溶接箇所へ発生できない場合があった。そこで、フィラワイヤに給電するフィラ用電源を、消耗電極ワイヤに給電するメインの溶接電源と別電源化し、両ワイヤに安定した電流が流れるよう構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3185071号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ダブルワイヤ方式の溶接装置は、その溶接品質の面でフィラワイヤの溶融状態に大きく依存するが、例えば、外乱によって溶接電流に変動が生じた場合には、溶融池の温度やフィラワイヤの電流値が変化するために、溶接品質が不安定になる場合がある。例えば、消耗電極ワイヤの電流が増大した場合、溶融池の温度が上昇し、フィラワイヤが溶融池に到達する前に軟化してしたり、逆の場合には、溶融池内でフィラワイヤが溶け残る等といった不具合が起こり得る。これに対し、前述した特許文献1に記載の溶接装置では、両ワイヤの溶接電源を別電源化し両ワイヤへの電力供給の安定化を図ったことで、通常時における溶接品質の安定化が期待できるが、外乱により、消耗電極に供給される電流値が変動する場合には、フィラワイヤの溶融状態が大きく変化し、安定した溶接品質を得ることができない。
【0006】
本発明は上記の事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィラワイヤの溶融状態を安定化させ、所望の溶接品質を得ることができる溶接装置及び溶接方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の本発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値を基に、前記フィラ用電源を制御するフィラ制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、フィラワイヤやその送給装置に電力を供給し、フィラワイヤの溶融状態を制御するフィラ用電源を、消耗電極のそれと別電源化しているので、通常の運転状態において、両ワイヤに対し安定した電流を供給することができ、安定した溶接品質を得ることができる。このとき、本発明においては、消耗電極ワイヤへの供給電流を検出し、その検出電流に応じてフィラ用電源を制御することにより、フィラワイヤ側の溶接条件を柔軟に変化させる。これにより、溶接中、何等かの要因により外乱が発生し消耗電極ワイヤの電流が変動したとしても、想定される溶融池の温度変化に応じてフィラワイヤ側の溶接条件が変更され、フィラワイヤの溶融状態を一定に保つことができ、所望の溶接品質を確保することができる。
【0009】
また、第2の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、このフィラ用電源からの指令値に応じた速度で、前記フィラワイヤを送給するフィラワイヤ送給装置と、前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値を基に、フィラワイヤ送給速度を設定し、この設定に応じた前記フィラワイヤ送給速度の指令値が前記フィラワイヤ送給装置に出力されるよう、前記フィラ用電源に指令信号を出力するフィラ制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、このフィラ用電源からの指令値に応じた速度で、前記フィラワイヤを送給するフィラワイヤ送給装置と、前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じたフィラワイヤ送給速度、及び、このフィラワイヤ送給速度の設定値及び前記消耗電極ワイヤへの供給電流値に応じた電流を設定し、これらの設定に基づき、前記フィラ用電源に指令信号を出力するフィラ制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれかの発明において、前記フィラ制御手段は、前記フィラ用電源に設けてあることを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接方法において、前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じ、前記フィラワイヤの溶接条件を設定することを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接方法において、前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じ、フィラワイヤ送給速度を設定する手順と、この設定したフィラワイヤ送給速度と前記消耗電極ワイヤへの供給電流値とに応じ、フィラワイヤへの供給電流を設定する手順とを有することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶接装置及び溶接方法の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の溶接装置の一実施の形態の全体構成を表す概略図である。この図1において、1は多関節型のアーム1aを有する溶接ロボット(マニピュレータ)、2はアーム1a先端のハンド部1bに設けた溶接トーチ、3,4はこの溶接トーチ2に送給する消耗電極ワイヤ5及びフィラワイヤ6をそれぞれガイドする供給チューブである。7,8はそれぞれリール9,10に巻回されたワイヤ5,6を溶接トーチ2を介して溶接箇所に送給するワイヤ5,6の送給装置(送給モータ)である。また、特に図示していないが、溶接トーチ2には、シールドガスを噴射するガスノズルが設けてある。
【0015】
11は消耗電極ワイヤ5に電力供給する消耗電極用電源で、この消耗電極用電源11のプラス端子11aは消耗電極ワイヤ5に、マイナス端子11bは溶接対象である母材12に、それぞれ接続している。13はフィラワイヤ6に電力供給するフィラ用電源で、このフィラ用電源13のプラス端子13aは母材12に、マイナス端子13bはフィラワイヤ6に、それぞれ接続している。また、これら消耗電極用電源11及びフィラ用電源13は、それぞれ消耗電極ワイヤ送給装置7及びフィラワイヤ送給装置8と電気的に接続しており、これら両電源11,13からそれぞれ両ワイヤ送給装置7,8に供給される電圧(指令値)の大きさにより、送給装置7,8によるワイヤ5,6の送給速度がそれぞれ調整される。
【0016】
14はロボット制御盤、15は溶接条件等の入力データをこのロボット制御盤14に入力するための入力装置(ティーチングペンダント)である。ロボット制御盤14は、溶接ロボット1、消耗電極用電源11、入力装置15に対し、電気的に接続している。16はフィラワイヤ6側の溶接条件を設定しフィラ用電源13を制御するフィラ制御装置で、このフィラ制御装置16は、消耗電極用電源11及びフィラ用電源13と電気的に接続している。また、フィラ制御装置16には、フィラワイヤ6の送給速度を適正範囲(後述)内で任意に調整するためのフィラワイヤ送給調整器17が設けられている。なお、本実施の形態においては、このフィラ制御装置16をフィラ用電源13に一体的に設けてあるが、フィラ用電源13と別構成としても良く、またロボット制御盤14にその機能を組み込む構成としても構わない。
【0017】
図2は、このフィラ制御装置16の概略構成を表すブロック図である。この図2において、18は消耗電極用電源11からの消耗電極ワイヤ5の印加電流の検出値やフィラワイヤ供給調整器17からの操作信号を入力しディジタル信号化するA/D変換器である。19はフィラ用電源13の制御手順のプログラムやフィラワイヤ6側の溶接条件のテーブル、演算処理に必要な定数等を格納するリードオンリーメモリー(ROM)、20は時間計測を行うタイマ、21はROM19に格納したプログラムやテーブルに順じてフィラ用電源13への指令信号演算する中央演算処理装置(CPU)である。また、22は入力値やCPU21の演算結果、演算途中の数値等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、23はCPU21で演算された指令信号をアナルグ信号化しフィラ用電源13のドライバ(図示せず)に出力するD/A変換器である。
【0018】
次に、以上の本実施の形態の溶接装置の動作及び作用を説明する。
上記構成の溶接装置により溶接作業を行う際には、まず入力装置15によって消耗電極ワイヤ5に印加する電流値、電圧値、溶接開始点、溶接終了点、溶接速度といった溶接条件を入力する。この入力データは、ロボット制御盤14に出力される。消耗電極ワイヤ5の送給速度は、入力装置15によって電流値及び電圧値を設定すると、ロボット制御盤14によって一意的に決定される。
【0019】
ロボット制御盤14は、消耗電極用電源11には、消耗電極ワイヤ5へ供給電力及び送給速度の指令信号(アーク制御信号)を、溶接ロボット1には、溶接速度、溶接経路を指令する指令信号(動作制御信号)を出力する。ロボット制御盤14からの指令信号が出力されると、溶接ロボット1によって溶接線に沿って溶接トーチ2が移動し始め、消耗電極用電源11によって消耗電極ワイヤ5に設定の電力が供給され、そして、消耗電極ワイヤ送給装置7が、消耗電極用電源11から出力された指令値に応じた駆動速度で駆動し、消耗電極ワイヤ5が、溶接トーチ2を介し溶接箇所に送給される。
【0020】
また、これと同時に、消耗電極用電源11からは、フィラ制御装置16に対してアークスタート信号が出力される。すると、フィラ制御装置16内のCPU21は、A/D変換器18を介しディジタル信号化された消耗電極ワイヤ5の電流及びフィラワイヤ送給調整器17の操作信号を基に、フィラワイヤ6側の溶接条件を設定する(設定の詳細に関しては後述する)。そして、タイマ20によって、予めROM22内に格納されたフィラワイヤ6の送給開始時間が計測された後、フィラ用電源13のドライバ(図示せず)に対し、フィラワイヤ6の供給電力及び送給速度を指令する指令信号を、D/A変換器23を介してアナログ信号化して出力する。これにより、この指令信号に応じ、フィラ用電源13からフィラワイヤ6に所要の電力が供給されるとともに、フィラワイヤ送給装置8に設定に応じた指令値が出力され、フィラワイヤ送給装置8がこの指令値に応じた駆動速度で駆動することにより、フィラワイヤ6が、溶接トーチ2を介して溶融池に送給される。
【0021】
ここで、本実施の形態における、フィラワイヤ6側の溶接条件(送給速度、電流)の設定に係る概念を、図3及び図4を用いて説明する。
図3はフィラワイヤ送給速度Vfの適正範囲を消耗電極電流Iaとの相関関係で表す図、図4はフィラワイヤ6の供給電流Ibの適正値を消耗電極電流Iaとフィラワイヤ送給速度Vfとの相関関係で表す図である。
【0022】
まず、フィラワイヤ送給速度が必要以上に速いと、単位時間当りに供給されるフィラワイヤ6の量が増大するため、溶融池の温度低下の作用も働き、フィラワイヤ6が軟化されないまま溶融池へ供給され、振動等を起こし溶融現象が不安定となったり、フィラワイヤ6が溶け残る等といった溶接不良が発生し易くなる。逆に、フィラワイヤ送給速度が必要以上に遅いと、溶融池からの熱によって、フィラワイヤ6が溶融池へ供給される前に軟化され溶け始め、同様に溶融現象が不安定となり易い。
【0023】
図3に示した適正範囲は、このことに鑑み、検出された消耗電極ワイヤ5の電流値に対し、フィラワイヤ6の安定した溶融状態を確保できる範囲を較正したものである。つまり、点(Ia1,Vf1u)を通る適正範囲の上限線は、これを超えると、供給されたフィラワイヤ6が溶融池内に溶け残り易くなるという境界線であり、点(Ia1,Vf1d)を通る適正範囲の下限線は、これを下回ると、供給されるフィラワイヤ6が溶融池に到達する前に軟化し易くなるという境界線である。したがって、フィラワイヤ送給速度Vfは、図3において、例えば、消耗電極ワイヤ5に供給される電流がIa1である場合、適正範囲であるVf1d≦Vf≦Vf1uの値となる。このとき、フィラワイヤ送給速度の適正範囲には幅があるが、この範囲内におけるフィラワイヤ送給速度の設定は、フィラワイヤ送給調整器17によって行われ、例えば、フィラワイヤ送給調整器17の設定値を最大にするとVf1uに、またフィラワイヤ送給調整器17の設定値を最小にするとVf1dに設定される。図3においては、消耗電極ワイヤ5に供給される電流がIa1の場合、フィラワイヤ送給調整器17の設定値により、フィラワイヤ送給速度はVf1に設定されている。
【0024】
また、こうして設定したフィラワイヤ送給速度Vfに対するフィラワイヤ6への供給電流Ibの適正値は、図4の相関関係から定まる。例えば、図3におけるフィラワイヤ送給速度Vf1に対するフィラワイヤ6の電流の適正値は、このフィラワイヤ送給速度Vf1と消耗電極電流Ia1とを基に、図4の相関関係からIb1となる。例えば、外乱により消耗電極ワイヤ5に供給される電流Iaが、図3に示すように、Ia1からIa2(Ia1>Ia2)に変化したとすると、フィラワイヤ送給速度VfはVf2(Vf1>Vf2)に設定される。また設定されたフィラワイヤ送給速度Vf2に対するフィラワイヤ送給速度6への供給電流は、図4からIb2に設定される。この図4で設定されるフィラワイヤ6の供給電流は、例えばIb1を例に挙げると、消耗電極電流Ia1及びフィラワイヤ送給速度Vf1の条件下において、フィラワイヤ6の溶融状態を安定させ所望の溶接品質を確保できる値であり、それより過大であるとフィラワイヤ6が溶融池に到達する前に軟化し易くなり、過小であると溶融池内にフィラワイヤ6が溶け残り易くなる。
【0025】
以上の図3及び図4の概念に基づき、上記ROM19には、消耗電極電流と、この消耗電極電流とフィラワイヤ送給調整器17からの操作信号とに応じたフィラワイヤ送給速度と、このフィラワイヤ送給速度及び消耗電極電流に応じたフィラワイヤ6の電流値との組合せパターンを多数有するフィラワイヤ側の溶接条件テーブルが格納されている。
【0026】
つまり、フィラ制御装置16は、溶接中、タイマ20によりカウントされる制御周期(設定値)毎に、消耗電極用電源11からの消耗電極ワイヤ5の電流値(検出値)及びフィラワイヤ送給調整器17からの操作信号を、A/D変換器18を介して入力し、ディジタル信号化してRAM22に格納する。すると、CPU21は、ROM22内の消耗電極ワイヤ5の電流値及びフィラワイヤ送給調整器17からの操作信号を読み出し、これらの値を基に、ROM19に格納されている溶接条件テーブルから、フィラワイヤ6の送給速度、電流値を設定し、この設定に応じた指令信号を、前述した通りフィラ用電源13に出力する。このような手順を、タイマ20による計測時間に基づき、設定された制御周期毎に繰り返すことにより、フィラワイヤ6側の溶接条件が、消耗電極ワイヤ5の電流値に応じて、順次変更される。
なお、フィラ制御装置16においては、ROM19に消耗電極ワイヤ5の供給電流の許容範囲が予め格納されており、CPU21は、消耗電極用電源11から入力された消耗電極ワイヤ5の電流値がその許容範囲外の値(異常値)と判断した場合、直ちにフィラ用電源13に停止信号を出力し、フィラワイヤ6の送給、フィラワイヤヘの電力供給を直ちに停止させる。
【0027】
以上のように、ロボット制御盤14及びフィラ制御装置16によって各機器が制御され、消耗電極ワイヤ5と母材12との間に発生するアークによって、消耗電極ワイヤ5と母材12が溶け合って母材12に溶融池が形成されるとともに、この溶融池に送給されるフィラワイヤ6が、それ自体に供給された電力及び溶融池の熱によって溶融され、溶接線に沿って溶接ビードが形成される。
【0028】
本実施の形態によれば、フィラ用電源13を消耗電極用電源11と別電源化し両ワイヤ5,6に安定した電力を供給するので、通常の運転状態において安定した溶接品質が得られる。そして、これに加え、消耗電極用電源11からの消耗電極ワイヤ5への供給電流を基に、フィラ制御装置16によって、フィラワイヤ6側の溶接条件を順次柔軟に変化させ、フィラ用電源13を制御することにより、溶接中、何等かの要因により外乱が発生し消耗電極ワイヤ5の電流が変動したとしても、フィラワイヤ6の溶融状態を一定に保つことができる。これにより、所望の溶接品質を確保することができ、安定した溶接作業を行うことができる。
【0029】
また、本実施の形態においては、消耗電極ワイヤ5とフィラワイヤ6に互いに逆向きの電流を供給することによって、消耗電極ワイヤ5とフィラワイヤ6の周辺に発生する磁界により両者が互いに反発するので、消耗電極ワイヤ5から発生するアークに対し、フィラワイヤ6から遠ざかる方向に力が作用する。これにより、消粍電極ワイヤ5にフィラワイヤ6を近接配置しても、フィラワイヤ6がアークによって吹き飛ばされることなく、フィラワイヤ6を溶融池に確実に安定供給することができる。その結果、例えば、炭素鋼、合金鋼、アルミニウム等を溶接対象としても、高速かつ高能率な作業が可能となる。また、フィラワイヤ6を溶融池に挿入することにより、溶融池の温度を低く抑え、溶接ビードに乱れが生じるいわゆるパッカリング現象の発生や、黒紛付着(酸化物付着)、凝固割れ等といった不具合も抑制される。
但し、外乱による消耗電極の電流変動によらず、フィラワイヤ6の溶融状態を安定化し、所望の溶接品質を得るという本発明の本質的目的を達成する限りにおいては、必ずしも両ワイヤ5,6の電流を逆向きにしなくても良い。
【0030】
なお、本実施の形態においては、ROM19に、予め較正した消耗電極電流に応じたフィラワイヤ側の溶接条件テーブルを格納し、消耗電極電流及びフィラワイヤ送給調整器17の操作信号に基づいて、フィラワイヤ側の溶接条件を設定する例を説明したが、例えば、フィラワイヤ送給調整器17を省略しても、図3のフィラワイヤ送給速度を、消耗電極電流に対する適正範囲ではなく、適正値を表す関係式に置きかえれば、消耗電極電流のみから、フィラワイヤ側の溶接条件を設定することができる。また、溶接条件テーブルを用いなくても、まず、図3の相関関係に従って、消耗電極ワイヤの電流値及びフィラワイヤ送給調整器17の操作信号(又は消耗電極電流のみ)から、フィラワイヤ送給速度を設定する手順と、続いて図4の相関関係に従って、先に設定したフィラワイヤ送給速度と消耗電極ワイヤの電流値とからフィラワイヤの電流を設定する手順と、を有するプログラムをROM19に格納しておき、消耗電極ワイヤの電流変動に応じ、無段階にフィラワイヤ側の溶接条件を変更可能な構成としても良い。これらの場合も、同様の効果を得る。
【0031】
また、本実施の形態においては、本発明を、溶接トーチ2の移動及びその速度制御をも自動で行ういわゆる全自動式の溶接装置に適用した場合を説明したが、これに限られず、本発明は、例えば、溶接ロボット1を省略し、消耗電極ワイヤ5及びフィラワイヤ6の供給電力及び送給速度のみを自動で行ういわゆる半自動式の溶接装置にも適用可能である。また、両ワイヤ5,6の送給装置7,8は、リール側に配置したプッシュ方式のワイヤ送給装置でなくとも、例えば、溶接トーチ側にあるプル方式やプッシュプル方式のワイヤ送給装置であっても良い。また、溶接ロボットは、多関節型のアームを有するものでなくとも、例えば、レールにより多軸方向に溶接トーチを移動させられるもの等でも良い。更に、溶接トーチを溶接方向にほぼ直角に往来させるウィービング溶接を行う溶接装置にも、本発明は適用可能である。これらの場合も同様の効果を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、消耗電極ワイヤへの供給電流に応じてフィラワイヤ側の溶接条件を柔軟に変化させることにより、溶接中、何等かの要因により外乱が発生し消耗電極ワイヤの電流が変動したとしても、フィラワイヤの溶融状態を一定に保つことができ、所望の溶接品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接装置の一実施の形態の全体構成を表す概略図である。
【図2】本発明の溶接装置の一実施の形態に備えられたフィラ制御手段の概略構成を表すブロック図である。
【図3】フィラワイヤ送給速度の適正範囲を消耗電極ワイヤの電流との相関関係で表す図である。
【図4】フィラワイヤの供給電流の適正値を、消耗電極ワイヤの電流とフィラワイヤ送給速度との相関関係で表す図である。
【符号の説明】
5 消耗電極ワイヤ
6 フィラワイヤ
8 フィラワイヤ送給装置
11 消耗電極用電源
13 フィラ用電源
16 フィラ制御装置(フィラ制御手段)
Claims (6)
- 消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、
前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、
前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、
前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値を基に、前記フィラ用電源を制御するフィラ制御手段と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、
前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、
前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、
このフィラ用電源からの指令値に応じた速度で、前記フィラワイヤを送給するフィラワイヤ送給装置と、
前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値を基に、フィラワイヤ送給速度を設定し、この設定に応じた前記フィラワイヤ送給速度の指令値が前記フィラワイヤ送給装置に出力されるよう、前記フィラ用電源に指令信号を出力するフィラ制御手段と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接装置において、
前記消耗電極ワイヤに電流を供給する消耗電極用電源と、
前記フィラワイヤに電流を供給するフィラ用電源と、
このフィラ用電源からの指令値に応じた速度で、前記フィラワイヤを送給するフィラワイヤ送給装置と、
前記消耗電極用電源から前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じたフィラワイヤ送給速度、及び、このフィラワイヤ送給速度の設定値及び前記消耗電極ワイヤへの供給電流値に応じた電流を設定し、これらの設定に基づき、前記フィラ用電源に指令信号を出力するフィラ制御手段と
を備えたことを特徴とする溶接装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項記載の溶接装置において、前記フィラ制御手段は、前記フィラ用電源に設けてあることを特徴とする溶接装置。
- 消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接方法において、
前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じ、前記フィラワイヤの溶接条件を設定することを特徴とする溶接方法。 - 消耗電極ワイヤからアークを発生させ溶融池を形成しつつ、その溶融池にフィラワイヤを送給して溶接ビードを形成する溶接方法において、
前記消耗電極ワイヤへ供給される電流値に応じ、フィラワイヤ送給速度を設定する手順と、
この設定したフィラワイヤ送給速度と前記消耗電極ワイヤへの供給電流値とに応じ、フィラワイヤへの供給電流を設定する手順と
を有することを特徴とする溶接方法。
Priority Applications (1)
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JP2003069164A JP2004276055A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 溶接装置及び溶接方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN100354064C (zh) * | 2005-06-20 | 2007-12-12 | 北京工业大学 | 一种双丝mag焊接控制方法及其焊接电源 |
JP2009154173A (ja) * | 2007-12-26 | 2009-07-16 | Daihen Corp | 2ワイヤ溶接の終了制御方法 |
CN109552938A (zh) * | 2017-09-27 | 2019-04-02 | 株式会社达谊恒 | 丝传送装置以及校正方法 |
-
2003
- 2003-03-14 JP JP2003069164A patent/JP2004276055A/ja active Pending
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